(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗体が、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体およびイムノトキシンから選択される、請求項1から9の何れか一項に記載の抗TIGIT抗体又はそのTIGIT結合断片。
TIGIT及び/又はPVRの発現及び/又は活性を調整することによる、または、PVRに結合するTIGITによって媒介される細胞内シグナル伝達を調整することによる、免疫細胞機能および/または活性を調整するための抗TIGIT抗体又はそのTIGIT結合断片であって、
前記抗TIGIT抗体は請求項1から10の何れか一項に記載の抗体であり、前記抗TIGIT抗体又はそのTIGIT結合断片は、PVR、PVRL3、及びPVRL2の一又は複数に対するTIGITの結合を阻害する、抗TIGIT抗体又はそのTIGIT結合断片。
抗TIGIT抗体又はそのTIGIT結合断片が、一又は複数の免疫細胞の増殖を増加又は刺激するか、又は一又は複数の免疫細胞による炎症誘発性サイトカイン放出を増加又は刺激する、請求項12に記載の抗TIGIT抗体又はそのTIGIT結合断片。
抗TIGIT抗体又はそのTIGIT結合断片が、炎症誘発性サイトカイン産生を刺激及び/又は増大する、請求項15に記載の抗TIGIT抗体又はそのTIGIT結合断片。
【発明を実施するための形態】
【0019】
TIGITは免疫機能の予測されるモジュレーターとして同定された(例として、出典明記によって本明細書中に援用される米国公開特許US20040121370を参照のこと)。本明細書において、出願人は、TIGITが、ポリオウイルスレセプター(PVR、NECL5又はCD155としても知られる)、PVR様タンパク質1−4(PVRL1−4)、CD96およびCD226を含む免疫関連タンパク質の新規に記載されたファミリーのメンバーであることを示す。出願人は、メンバーが免疫の調節及び機能に役割を有するこの新規なファミリの保存された構造的成分を示し、更なるファミリメンバーを同定するための方法を提供する。
【0020】
出願人は、TIGITがPVRと強く結合し、PVRL3(別名ネクチン-3又はCD113)およびPVRL2(別名ネクチン-2又はCD112)に小さいKdで結合することを示す。PVRは、樹状細胞(DC)、並びにFDC、線維芽細胞、内皮細胞、及びいくつかの腫瘍細胞上で高く発現される細胞表面レセプターである(Sakisaka, T. & Takai, Y., Curr Opin Cell Biol 16, 513-21 (2004);Fuchs, A. & Colonna, M., Semin Cancer Biol 16, 359-66 (2006))。出願人は、TIGITが主に様々な活性化されたT細胞、特に調節T細胞(Treg)、メモリーT細胞、NK細胞および濾胞性Tヘルパー細胞(Tfh)に発現することをmRNAおよびFACS分析によって示す。本明細書において記述される試験は、DC上のPVRとTIGITとの相互作用を示し、この結合相互作用がDC機能、特にサイトカイン産生を調整することを示唆する。TIGITが結合したヒトのDCは、高いレベルのIL−10と僅かな炎症誘発性サイトカイン(例えばIL−12p40およびIL−12p70)を分泌した。未成熟T細胞にTIGITが結合すると(TIGIT融合コンストラクトを使用して評価される)、T細胞活性化および増殖が阻害された。特に、この阻害はERK阻害剤がある場合に逆転したことから、ERK活性化がDC活性を調整するTIGITの機能において重要な工程でありうることを示唆する。出願人は、本明細書において、TIGIT+T細胞が他のTIGIT−T細胞だけでなく、免疫細胞の混合種群に存在する場合には抗原提示細胞の増殖を抑制すること、そして、混合物中にブロック抗TIGIT抗体が含まれると観察される抑制は大きく低減するのでTIGIT自体がこの抑制効果の原因であることを示す。
【0021】
本明細書において示されるように、TIGITは、正常コントロール組織と比較して、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患および乳癌組織において発現が増加される。また、出願人は、TIGIT融合タンパク質が遅延型過敏症インビボアッセイにおいてインビトロのヒトのT細胞応答とマウスのT細胞活性化を阻害したことを示すことによって、免疫応答を調節するTIGITの能力を直接示す。TIGITが有意に成熟DCを変更し、未成熟DCを僅かにしか変更しなかったことから、いったんDCが完全に活性化された抗原提供細胞になると、TIGIT−PVR相互作用は調節免疫応答を微調整するのに重要であることを示唆する。本明細書において提示される実験は、TIGITがDCでのIL−10を誘導することによる阻害性フィードバックループによってT細胞活性化を阻害するメカニズムを示唆する。したがって、本発明はさらに、特定のサブセットのサイトカイン又は特定のサブセットの免疫細胞を調節することによる、免疫機能を調節する新規の方法を提供する。これら及び他の態様の本発明は、以下により詳細に記述される。
【0022】
I.定義
「TIGITポリペプチド」、「TIGITタンパク質」および「TIGIT」なる用語は、本明細書において交換可能に用いられ、本明細書において記述されるように特定のポリペプチド配列を指す。本明細書において記述されるTIGITポリペプチドは、ヒト組織ないしは非ヒト生物の組織といった、様々な供与源から単離してもよいし、または組換え又は合成方法によって調製されてもよい。一実施態様では、TIGITポリペプチドは、配列番号:1−4のいずれかに示すアミノ酸を有する。「TIGITポリペプチド」に関する本明細書中のすべての開示は、各々のポリペプチドを個々に並びにまとめて指す。例えば、〜の調製、〜の精製、〜の誘導体、〜へないしはに対する抗体の形成、〜の投与、〜を含有する組成物、〜を有する疾患の治療などの記載は、本発明の各々のポリペプチドに別々に関連する。また、「TIGITポリペプチド」、「TIGITタンパク質」又は「TIGIT」なる用語には、本明細書において開示されるかまたは当分野で公知のTIGITポリペプチドの変異体が含まれる。
【0023】
「天然配列TIGITポリペプチド」は、天然由来の対応するTIGITポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでいる。このような天然配列TIGITポリペプチドは、自然から単離することもできるし、組換え又は合成手段により生産することもできる。「天然配列TIGITポリペプチド」という用語には、特に、特定のTIGITポリペプチドの自然に生じる切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及びそのポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体が含まれる。本発明の種々の実施態様において、ここに開示されている天然配列TIGITポリペプチドは、完全長アミノ酸配列を含有する成熟又は完全長天然配列ポリペプチドである。しかし、関連する図に開示されているTIGITポリペプチドは、該図においてアミノ酸位置1と称されているメチオニン残基で開始することが示されている一方で、図のアミノ酸位置1より上流又は下流のいずれかに位置する他のメチオニン残基が、TIGITポリペプチドの開始アミノ酸残基として用いられることも考えられるし可能である。
【0024】
TIGITポリペプチド「細胞外ドメイン」又は「ECD」は、膜貫通及び細胞質ドメインを実質的に有しないTIGITポリペプチドの形態を意味する。通常、TIGITポリペプチドECDは、それらの膜貫通及び/又は細胞質ドメインを1%未満、好ましくはそのようなドメインを0.5%未満しか持たない。本発明のTIGITポリペプチドについて同定された任意の膜貫通ドメインは、疎水性ドメインのその型を同定するために当該分野において日常的に使用される基準に従い同定されることが理解されるであろう。膜貫通ドメインの厳密な境界は変わり得るが、ここで同定されたドメインのいずれかの末端から約5アミノ酸を超えない可能性が高い。従って、TIGITポリペプチド細胞外ドメインは、場合によっては、膜貫通ドメイン/細胞外ドメインの境界のいずれかの末端から約5を超えないアミノ酸を含みうるし、付着のシグナルペプチドを有する又は有しないそのようなポリペプチド及びそれらをコードする核酸は、本発明において考慮される。一実施態様では、TIGIT ECDは配列番号:1に示すヒトTIGITタンパク質のアミノ酸1−139を包含する。
【0025】
本明細書中に開示される様々なTIGITポリペプチドの「シグナルペプチド」のおよその位置は、当分野で公知の方法を用いて同定されうる。例えば、配列番号:1に示すヒトTIGITポリペプチドのシグナル配列は、アミノ酸1−15にわたると予測される(例として米国公開特許20040121370を参照)。しかしながら、シグナルペプチドのC末端境界は変化してもよいが、本明細書中で最初に同定したシグナルペプチドのC末端境界のいずれかの端でおよそ5以下が異なる可能性が高く、このときシグナルペプチドのC末端境界は、アミノ酸配列エレメントの種類を同定するために当分野で関連的に用いられる基準に従って同定されてよい(例として、Nielsen et al., Prot. Eng. 10: 1-6 (1997)及びvon Heinje et al., Nucl. Acids. Res. 14: 4683-4690 (1986))。さらに、場合によって、分泌されたポリペプチドからのシグナル配列の切断は完全に一定ではないので、2以上の分泌された部分が生じる。シグナルペプチドが本明細書中で同定されたシグナルペプチドのC末端境界のいずれかの端でおよそ5以下のアミノ酸内で切断されている成熟ペプチド及びこれをコードするポリヌクレオチドは、本発明によって考慮される。
【0026】
「TIGITポリペプチド変異体」とは、上記又は下記に定義されるように、ここに開示される完全長天然配列TIGITポリペプチド、ここに開示されたシグナルペプチドを欠くTIGITポリペプチド配列、シグナルペプチド有無のここに開示されたTIGITポリペプチドの細胞外ドメイン又は完全長TIGITポリペプチド配列の他の断片と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する活性TIGITポリペプチドを意味する。このようなTIGITポリペプチド変異体には、例えば、完全長天然アミノ酸配列のN-又はC-末端において一つ又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたTIGITポリペプチドが含まれる。通常、TIGITポリペプチド変異体は、ここに開示される完全長天然配列TIGITポリペプチド、ここに開示されたシグナルペプチドを欠くTIGITポリペプチド配列、シグナルペプチドを有する又は有しないここに開示されたTIGITポリペプチドの細胞外ドメイン又は完全長TIGITポリペプチド配列の特に同定された他の断片と、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約81%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約82%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約83%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約84%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約86%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約87%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約88%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約89%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約91%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約92%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約93%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約94%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約96%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約97%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約98%のアミノ酸配列同一性、そして、或いは少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有している。通常は、TIGIT変異体ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長、或いは少なくとも約20アミノ酸長、或いは少なくとも約30アミノ酸長、或いは少なくとも約40アミノ酸長、或いは少なくとも約50アミノ酸長、或いは少なくとも約60アミノ酸長、或いは少なくとも約70アミノ酸長、或いは少なくとも約80アミノ酸長、或いは少なくとも約90アミノ酸長、或いは少なくとも約100アミノ酸長、或いは少なくとも約150アミノ酸長、或いは少なくとも約200アミノ酸長、或いは少なくとも約300アミノ酸長、又はそれ以上である。
【0027】
ここに定義されるTIGITポリペプチドに対してここで同定されている「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした、TIGITポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2プログラム用の完全なソースコードが公的に入手可能である配列比較プログラムALIGN-2を使用することによって得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁、ワシントンD.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2もまた、ジェネンテック社、サウスサンフランシスコ、カリフォルニアから公的に入手可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0028】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(或いは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2のA及びBのアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。この方法を用いた%アミノ酸配列同一性の計算の例として、表1及び2に、「比較タンパク質」と称されるアミノ酸配列の「TIGIT」と称されるアミノ酸配列に対する%アミノ酸配列同一性の計算方法を示す。「TIGIT」は対象となる仮説的TIGITポリペプチドのアミノ酸配列を表し、「比較タンパク質」は対象となる「TIGIT」ポリペプチドが比較されているポリペプチドのアミノ酸配列を表し、そして「X」、「Y」及び「Z」の各々は異なった仮説的アミノ酸残基を表している。
【0029】
表1
対象のタンパク質 XXXXXXXXXXXXXXX (長さ=15アミノ酸)
比較タンパク質 XXXXXYYYYYYY (長さ=12アミノ酸)
% アミノ酸配列同一性=
(ALIGN−2によって決定される2つのポリペプチド配列間の同一に一致するアミノ酸残基の数)÷(対象のタンパク質のアミノ酸残基の総数)=5÷15=33.3%
表2
対象のタンパク質 XXXXXXXXXX (長さ=10アミノ酸)
比較タンパク質 XXXXXYYYYYYZZYZ (長さ=15アミノ酸)
% アミノ酸配列同一性=
(ALIGN−2によって決定される2つのポリペプチド配列間の同一に一致するアミノ酸残基の数)÷(対象のタンパク質のアミノ酸残基の総数)=5÷10=50%
【0030】
特に断らない限りは、ここでの全ての%アミノ酸配列同一性値は、前段及び表1と2に記載のようにALIGN-2配列比較コンピュータプログラムを用いて得られる。しかしながら、%アミノ酸配列同一性値は、WU-BLAST-2コンピュータプログラム(Altschul等, Methods in Enzymology 266:460-480 (1996))を用いて決定してもよい。更に、殆どのWU-BLAST-2検索パラメータは初期値に設定される。初期値に設定されない、即ち調節可能なパラメータは以下の値に設定する:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62。WU-BLAST-2が用いられた場合には、%アミノ酸配列同一性値は、(a)天然TIGITポリペプチドから誘導された配列を有する対象とするTIGITポリペプチドのアミノ酸配列と、対象とする比較アミノ酸配列(即ち、対象とするTIGITポリペプチドが比較されるTIGITポリペプチド変異体であってもよい配列)との間の、WU-BLAST-2によって決定した一致する同一アミノ酸残基の数を、(b)対象とするTIGITポリペプチドの残基の総数で除した商によって決定される。例えば、「アミノ酸配列Bに対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を持つ又は持っているアミノ酸配列Aを含んでなるポリペプチド」という表現では、アミノ酸配列Aが対象である比較アミノ酸配列であり、アミノ酸配列Bが対象であるTIGITポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0031】
また、%アミノ酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI-BLAST2(Altschul等, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997))を用いて決定してもよい。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードでき、又は別な方法で米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランドから得ることができる。NCBI-BLAST2は幾つかの検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全ては初期値に設定され、例えば、unmask=可、鎖=全て、予測される発生=10、最小低複合長=15/5、マルチパスe-値=0.01、マルチパスの定数=25、最終ギャップアラインメントのドロップオフ=25、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62を含む。
アミノ酸配列比較にNCBI-BLAST2が用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(或いは、与えられたアミノ酸配列Bと、又はそれに対して或る程度の%アミノ酸配列同一性を持つ又は含む与えられたアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2のA及びBのアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。
【0032】
「TIGITポリヌクレオチド」及び「TIGITヌクレオチド」なる用語は、本明細書中で交換可能に用いられ、TIGITポリペプチドをコードする特定のポリヌクレオチド配列を指す。これらのポリヌクレオチドは、DNA又はRNAあるいはDNAとRNAの両方を含んでよい。本明細書中に記載されるTIGITポリヌクレオチドは、ヒト組織又は非ヒト生物からの組織といった様々な供与源から単離されても、又は組み換えないし合成方法によって調製されてもよい。「TIGITポリヌクレオチド」に関する本明細書中のすべての開示は、各々のポリヌクレオチドを個々に並びにまとめて指す。例えば、〜の調製、〜の精製、〜の誘導体、〜の投与、〜を含有する組成物、〜を有する疾患の治療などの記載は、本発明の各々のポリペプチドに別々に関連する。また、「TIGITポリヌクレオチド」及び「TIGITヌクレオチド配列」なる用語には、本明細書において開示されるTIGITポリヌクレオチドの変異体が含まれる
「天然配列TIGITポリヌクレオチド」は、天然由来の対応するTIGITポリヌクレオチドと同じ核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む。このような天然配列TIGITポリヌクレオチドは、天然から単離されてもよいし、組換え又は合成手段によって製造されてもよい。「天然配列TIGITポリヌクレオチド」なる用語には、特に、特定のTIGITポリペプチドの自然に生じる切断又は分泌形態(例えば、細胞外ドメイン配列)、自然に生じる変異形態(例えば、選択的にスプライシングされた形態)及びそのポリペプチドの自然に生じる対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチドが含まれる。本発明の種々の実施態様において、ここに開示されている天然配列TIGITポリヌクレオチドは、完全長核酸配列を含有する成熟又は完全長天然配列ポリヌクレオチドである。
【0033】
「TIGIT変異体ポリヌクレオチド」又は「TIGIT変異体核酸配列」とは、下記に定義されるように、活性TIGITポリペプチドをコードする核酸分子であり、ここに開示する完全長天然配列TIGITポリペプチド配列、ここに開示するシグナルペプチドを欠いた完全長天然配列TIGITポリペプチド配列、シグナルペプチドを有する又は有しないここに開示するTIGITポリペプチドの細胞外ドメイン、又は完全長TIGITポリペプチド配列の他の任意の断片をコードする核酸配列と少なくとも約80%の核酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を意味する。通常、TIGIT変異体ポリヌクレオチドは、完全長天然配列TIGITポリペプチド配列、シグナルペプチドを欠いた完全長天然配列TIGITポリペプチド配列、シグナルペプチドを有する又は有しないTIGITポリペプチドの細胞外ドメイン、又は完全長TIGITポリペプチド配列の他の任意の断片をコードする核酸配列と、少なくとも約80%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約81%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約82%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約83%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約84%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約85%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約86%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約87%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約88%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約89%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約90%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約91%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約92%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約93%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約94%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約95%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約96%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約97%の核酸配列同一性、或いは少なくとも約98%の核酸配列同一性、そして、或いは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有している。変異体は、天然ヌクレオチド配列を含まない。
【0034】
通常は、TIGIT変異体ポリヌクレオチドは、少なくとも約30ヌクレオチド長、或いは少なくとも約60ヌクレオチド長、或いは少なくとも約90ヌクレオチド長、或いは少なくとも約120ヌクレオチド長、或いは少なくとも約150ヌクレオチド長、或いは少なくとも約180ヌクレオチド長、或いは少なくとも約210ヌクレオチド長、或いは少なくとも約240ヌクレオチド長、或いは少なくとも約270ヌクレオチド長、或いは少なくとも約300ヌクレオチド長、或いは少なくとも約450ヌクレオチド長、或いは少なくとも約600ヌクレオチド長、或いは少なくとも約900ヌクレオチド長、又はそれ以上である。
【0035】
ここで同定されるTIGITコード核酸配列に対する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、対象のTIGIT核酸配列のヌクレオチドと同一である候補配列中のヌクレオチドのパーセントとして定義される。パーセント核酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当業者の知る範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN−2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成可能である。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁、ワシントンD.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2はジェネンテック社、サウス サン フランシスコ, カリフォルニアから好適に入手可能であり、公的に入手可能なソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX(登録商標) V4.0Dでの使用のためにコンパイルされる。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。
【0036】
核酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、与えられた核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(或いは、与えられたアミノ酸配列Dと、又はそれに対して或る程度の%核酸配列同一性を持つ又は含む与えられた核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムALIGN-2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアの核酸残基の数であり、ZはDの全核酸残基数である。核酸配列Cの長さがアミノ酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。この方法を用いた%核酸配列同一性の計算の例として、表3及び4に「比較DNA」と称される核酸配列の「TIGIT-DNA」と称される核酸配列に対する%核酸配列同一性の計算方法を示す。「TIGIT-DNA」は対象となる仮説的TIGITコード化核酸配列を表し、「比較DNA」は対象となる「TIGIT-DNA」核酸分子が比較されている核酸配列を表し、そして「N」、「L」及び「V」の各々は異なった仮説的アミノ酸残基を表している。
【0037】
表3
対象のDNA NNNNNNNNNNNNNN (長さ=14ヌクレオチド)
比較DNA NNNNNNLLLLLLLLLL (長さ=16ヌクレオチド)
%核酸配列同一性=
(ALIGN−2によって決定される2つの核酸配列間の同一に一致するヌクレオチドの数)÷(対象のDNAのヌクレオチドの総数)=6÷14=42.9%
表4
対象のDNA NNNNNNNNNNNN (長さ=12ヌクレオチド)
比較DNA NNNNLLLVV (長さ=9ヌクレオチド)
%核酸配列同一性=
(ALIGN−2によって決定される2つの核酸配列間の同一に一致するヌクレオチドの数)÷(対象のDNAのヌクレオチドの総数)=4÷12=33.3%
【0038】
特に断らない限りは、ここでの全ての%核酸配列同一性値は、直上のパラグラフ及び表3と4に示したようにALIGN-2配列比較コンピュータプログラムを用いて得られる。しかしながら、%核酸配列同一性値は、WU-BLAST-2コンピュータプログラム(Altschul等, Methods in Enzymology 266:460-480 (1996))を用いて決定してもよい。更に、殆どのWU-BLAST-2検索パラメータは初期値に設定される。初期値に設定されない、即ち調節可能なパラメータは以下の値に設定する:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62。WU-BLAST-2が用いられた場合、%核酸配列同一性値は、(a)天然配列TIGITポリペプチドコード化核酸から誘導された配列を有する対象とするTIGITポリペプチドコード化核酸分子の核酸配列と、対象とする比較核酸配列(即ち、対象とするTIGITポリペプチドコード化核酸分子が比較されるTIGITポリペプチド変異体であってもよい配列)との間の、WU-BLAST-2によって決定した一致する同一核酸残基の数を、(b)対象とするTIGITポリペプチドコード化核酸分子のヌクレオチドの総数で除した商によって決定される。例えば、「核酸配列Bに対して少なくとも80%の核酸配列同一性を持つ又は持っている核酸配列Aを含んでなるポリペプチド」という表現では、核酸配列Aが対象とする比較核酸配列であり、核酸配列Bが対象とするTIGITポリペプチドコード化核酸分子の核酸配列である。
【0039】
また、%核酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI-BLAST2(Altschul等, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997))を用いて決定してもよい。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、http://www.ncbi.nlm.nih.govからダウンロードでき、又は別な方法で米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランドから得ることができる。NCBI-BLAST2は幾つかの検索パラメータを使用し、それら検索パラメータの全ては初期値に設定され、例えば、unmask=可、鎖=全て、予測される発生=10、最小低複合長=15/5、マルチパスe-値=0.01、マルチパスの定数=25、最終ギャップアラインメントのドロップオフ=25、及びスコアリングマトリクス=BLOSUM62を含む。
【0040】
核酸配列比較にNCBI-BLAST2が用いられる状況では、与えられた核酸配列Cの、与えられた核酸配列Dとの、又はそれに対する%核酸配列同一性(或いは、与えられた核酸配列Dと、又はそれに対して或る程度の%核酸配列同一性を持つ又は含む与えられた核酸配列Cと言うこともできる)は次のように計算される:
分率W/Zの100倍
ここで、Wは配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2のC及びDのアラインメントによって同一であると一致したスコアの核酸残基の数であり、ZはDの全核酸残基数である。核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと異なる場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。
他の実施態様では、TIGIT変異体ポリペプチドヌクレオチドは、活性TIGITポリペプチドをコードし、好ましくはストリンジェンシーハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、ここに開示する完全長TIGITポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする核酸分子である。TIGIT変異体ポリペプチドは、TIGIT変異体ポリヌクレオチドにコードされるものであってもよい。
【0041】
「単離された」とは、ここで開示された種々のポリペプチドを記述するために使用するときは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。その自然環境の汚染成分とは、そのポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端或いは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、或いは、(2)クーマシーブルー或いは好ましくは銀染色を用いた非還元或いは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離されたポリペプチドには、ポリペプチドの自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツのタンパク質が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも一つの精製工程により調製される。
「単離された」TIGITポリペプチドコード化核酸は、同定され、ポリペプチドをコードする核酸の天然源に通常付随している少なくとも一つの汚染核酸分子から分離された核酸分子である。単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、天然に見出される形態或いは設定以外のものである。ゆえに、単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、天然の細胞中に存在する特定のポリペプチドコード化核酸分子とは区別される。しかし、単離されたポリペプチドコード化核酸分子は、例えば、核酸分子が天然細胞のものとは異なった染色体位置にあるポリペプチドを通常発現する細胞に含まれるポリペプチドコード化核酸分子を含む。
【0042】
「コントロール配列」という表現は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適なコントロール配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、及びリボソーム結合部位を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用可能に結合し」ている。例えば、プレ配列或いは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、そのポリペプチドのDNAに作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合したDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプター或いはリンカーが使用される。
【0043】
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、例えば、単一の抗TIGITモノクローナル抗体又は本明細書中に記載するいずれか他のポリペプチドを特異的に結合する抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、及び中和抗体を含む)、多エピトープ特異性を持つ抗TIGIT抗体ないし抗体組成物、一本鎖抗TIGIT抗体ないし他の抗体、及び抗TIGIT抗体ないし他の抗体の断片を包含している(下記参照)。ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団、すなわち、構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である集団から得られる抗体を称する。
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定され、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、プローブが長くなると適切なアニーリングのための温度が高くなり、プローブが短くなると温度は低くなる。ハイブリダイゼーションは、一般的に、相補的鎖がその融点に近いがそれより低い環境に存在する場合における変性DNAの再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイゼーション可能な配列との間の所望の相同性の程度が高くなると、使用できる相対温度が高くなる。その結果、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェンシーにするが、低い温度はストリンジェンシーを低下させる。更に、ストリンジェンシーは塩濃度に逆比例する。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーの更なる詳細及び説明は、Ausubel等, Current protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers, (1995)を参照のこと。
【0044】
ここで定義される「ストリンジェンシー条件」又は「高度のストリンジェンシー条件」は、(1)洗浄のために低イオン強度及び高温度を用いるもの、例えば、50℃において0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウムを用いるもの;(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いるもの、例えば、42℃において50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファーに750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを添加したもの;又は(3)42℃において50%ホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハード液、超音波処理サケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%のデキストラン硫酸を用い、42℃において0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中で、55℃において50%ホルムアミド中で洗浄した後、55℃においてEDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を用いるものによって同定できる。
【0045】
「中程度のストリンジェンシー条件」は、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Press, 1989に記載されているように特定され、上記のものよりストリンジェンシーが低い洗浄液及びハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度及び%SDS)の使用を含む。中程度のストリンジェンシー条件は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%デキストラン硫酸、及び20mg/mLの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中の37℃での終夜インキュベーション後に、37〜50℃にて1×SSC中でフィルター洗浄を行うという条件である。プローブ長などの因子に必要に応じて適合させるには、どのようにして温度、イオン強度等を調節するかは当業者であれば分かるであろう。
【0046】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合した対象のポリペプチド(ある非限定的な例として、TIGITポリペプチド)を含んでなるキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープ、又は幾つかの他の試薬によって同定できるエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、その長さは融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインとを結合した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0047】
ここでの目的に対する「活性な」又は「活性」とは、そのポリペプチドの天然又は天然に生じる形態の生物学的及び/又は免疫学的活性(先の例では、TIGIT活性)を保持するポリペプチド(非限定的な例として、TIGITポリペプチド)の形態を意味し、ここで、「生物学的」活性とは、天然又は天然に生じるポリペプチドが保持する抗原性エピトープに対する抗体の生産を誘発する能力以外の、天然又は天然に生じるポリペプチドによって引き起こされる生物機能(阻害又は刺激)を意味し、「免疫」活性とは、天然又は天然に生じるポリペプチドが保持する抗原性エピトープ(先の例では、TIGIT抗原性エピトープ)に対する抗体の生産を誘発する能力を意味する。
【0048】
「アプタマー」なる用語は、ポリペプチドなどの標的分子に結合することができる核酸分子を指す。例えば、本発明のアプタマーは、TIGITポリペプチド、又はTIGITの発現を調節するシグナル経路内の分子に特異的に結合することができる。アプタマーの生成および治療的使用は当分野において十分に確立されている。例として、加齢性黄斑変性症の治療については、米国特許第5475096号及びMacugen(登録商標)(Eyetech, New York)の治療効率を参照のこと。
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、ここに開示した天然ポリペプチドの生物学的活性を阻止、阻害、又は中和する任意の分子を指す。同様に「アゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、ここに開示した天然ポリペプチドの生物学的活性を模倣する任意の分子を指す。好適なアゴニスト又はアンタゴニスト分子は特に、アゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、天然ポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、有機小分子、などを含む。ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの同定方法は、ポリペプチドを候補アンタゴニスト又はアゴニストと接触させ、ポリペプチドに正常に関連している一又は複数の生物学的活性の変化を測定することを含んでもよい。
【0049】
「TIGITアンタゴニスト」及び「TIGIT活性又はTIGIT発現のアンタゴニスト」なる用語は、交換可能に用いられ、TIGITコード核酸の転写ないし翻訳を低減するか又はTIGITポリペプチド活性を阻害するかないしはブロックする、又はその両方によって、TIGITの正常な機能を干渉する化合物を指す。TIGITアンタゴニストの例には、限定するものではないが、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、RNA−DNAキメラ、TIGIT特異的アプタマー、抗TIGIT抗体、抗TIGIT抗体のTIGIT結合断片、TIGIT結合小分子、TIGIT結合ペプチド、及びTIGIT(限定するものではないが、場合によって一又は複数の他のドメインと融合した、一又は複数のTIGITリガンドのTIGIT結合断片を含む)を特異的に結合し、TIGITアンタゴニストとTIGITとの相互作用によりTIGITの活性又は発現の低減又は停止を生じさせる他のポリペプチドが含まれる。場合によって、TIGITアンタゴニストが他のTIGIT活性に作用することなく1つのTIGIT活性を中和しうることは、当分野の技術者に理解されている。例えば、本明細書中のある方法に使用するための望ましいTIGITアンタゴニストは、例えば他のいずれかのTIGIT相互作用に影響しないか又は最小限の影響で、PVR相互作用、PVRL3相互作用又はPVRL2相互作用のうちの一つに応答してTIGIT活性を中和するTIGITアンタゴニストである。
【0050】
「PVRアンタゴニスト」及び「PVR活性又はPVR発現のアンタゴニスト」なる用語は、交換可能に用いられ、PVRコード核酸の転写ないし翻訳を低減するか又はPVRポリペプチド活性を阻害するかないしはブロックする、又はその両方によって、PVRの正常な機能を干渉する化合物を指す。PVRアンタゴニストの例には、限定するものではないが、アンチセンスポリヌクレオチド、干渉RNA、触媒RNA、RNA−DNAキメラ、PVR特異的アプタマー、抗PVR抗体、抗PVR抗体のPVR結合断片、PVR結合小分子、PVR結合ペプチド、及びPVR(限定するものではないが、場合によって一又は複数の他のドメインと融合した、一又は複数のPVRリガンドのPVR結合断片を含む)を特異的に結合し、PVRアンタゴニストとPVRとの相互作用によりPVRの活性又は発現の低減又は停止を生じさせる他のポリペプチドが含まれる。場合によって、PVRアンタゴニストが他のPVR活性に作用することなく1つのPVR活性を中和しうることは、当分野の技術者に理解されている。例えば、本明細書中のある方法に使用するための望ましいPVRアンタゴニストは、PVR−CD96及び/又はPVR−CD226の相互作用に影響することなく、TIGIT相互作用に応答してPVR活性を中和するPVRアンタゴニストである。
【0051】
「TIGITアゴニスト」及び「TIGIT活性又はTIGIT発現のアゴニスト」なる用語は、交換可能に用いられ、TIGITコード核酸の転写ないし翻訳を増加させることにより、及び/又はTIGIT発現又はTIGIT活性を阻害する分子の活性を妨げるかないしはブロックすることにより、及び/又は正常なTIGIT活性を亢進させる(限定するものではないが、TIGITの安定性を亢進させる又は一又は複数の標的リガンドへのTIGITの結合を亢進させることを含む)ことによって、TIGITの正常な機能を亢進させる又は刺激する化合物を指す。例えば、TIGITアゴニストは、抗体、抗原結合断片、アプタマー、干渉RNA、小分子、ペプチド、アンチセンス分子、及び他の結合ポリペプチドから選択されてよい。他の例では、TIGITアゴニストは、アプタマー、干渉RNA、又はTIGIT阻害性分子の転写および/または翻訳に干渉するアンチセンス分子から選択されるポリヌクレオチドであってよい。場合によって、TIGITアゴニストが他のTIGIT活性に影響することなく1つのTIGIT活性をアゴナイズしうることは、当分野の技術者に理解されている。例えば、本明細書中のある方法に使用するための望ましいTIGITアゴニストは、例えば他のいずれかのTIGIT相互作用に影響しないか又は最小限の影響で、PVR相互作用、PVRL3相互作用又はPVRL2相互作用のうちの一つに応答してTIGIT活性をアゴナイズするTIGITアゴニストである。
【0052】
「PVRアゴニスト」及び「PVR活性又はPVR発現のアゴニスト」なる用語は、交換可能に用いられ、PVRコード核酸の転写ないし翻訳を増加させることにより、及び/又はPVR発現又はPVR活性を阻害する分子の活性を妨げるかないしはブロックすることにより、及び/又は正常なPVR活性を亢進させる(限定するものではないが、PVRの安定性を亢進させる又は一又は複数の標的リガンドへのPVRの結合を亢進させることを含む)ことによって、PVRの正常な機能を亢進させる又は刺激する化合物を指す。例えば、PVRアゴニストは、抗体、抗原結合断片、アプタマー、干渉RNA、小分子、ペプチド、アンチセンス分子、及び他の結合ポリペプチドから選択されてよい。他の例では、PVRアゴニストは、アプタマー、干渉RNA、又はPVR阻害性分子の転写および/または翻訳に干渉するアンチセンス分子から選択されるポリヌクレオチドであってよい。場合によって、PVRアゴニストが他のPVR活性に影響することなく1つのPVR活性をアゴナイズしうることは、当分野の技術者に理解されている。例えば、本明細書中のある方法に使用するための望ましいPVRアゴニストは、例えばPVR−CD96ないしはPVR−CD226の結合相互作用に影響しないか又は最小限の影響で、TIGIT相互作用に応答してPVR活性をアゴナイズするか又はPVRに干渉する際にTIGITを模倣するPVRアゴニストである。
【0053】
「治療」とは、治癒的処置、予防的療法及び防止的療法の両方を意味し、患者は標的とする病理学的状態又は疾患を防止又は低下(減少)させられる。治療が必要なものとは、既に疾患に罹っているもの、並びに疾患に罹りやすいもの又は疾患が予防されるべきものを含む。
「慢性」投与とは、急性様式とは異なり連続的な様式での薬剤を投与し、初期の治療効果(活性)を長時間に渡って維持することを意味する。「間欠」投与とは、中断無く連続的になされるのではなく、むしろ本質的に周期的になされる処理である。
治療の対象のための「哺乳動物」は、ヒト、家庭及び農業用動物、動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギなどを含む哺乳類に分類される任意の動物を意味する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
一又は複数の治療薬と「組み合わせた」投与とは、同時(同時期)及び任意の順序での連続した投与を含む。
【0054】
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる用量及び濃度でそれらに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。生理学的に許容されうる担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン;グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又は祖ルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商品名)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商品名)を含む。
【0055】
「抗体断片」は、原型の抗体の一部、好ましくは原型の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)
2、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies);直鎖状抗体(Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062 [1995]);一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる二つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab’)
2断片を生じ、それは二つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。この配置において各ドメインの三つのCDRが相互作用してV
H−V
Lに量体の表面に抗原結合部位を決定する。正しくは、6つのCDRが抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な三つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
【0056】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)も含む。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの一つ又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab’断片と相違する。ここで、Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を持つFab’を表す。F(ab’)
2抗体断片は、最初はFab’断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる二つの明らかに異なる型の一方に分類される。
【0057】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、免疫グロブリンは異なるクラスに分類できる。免疫グロブリンの五つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらの幾つかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分類される。
「一本鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のV
H及びV
Lドメインを含む抗体断片を含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合とって望ましい構造の形成を可能にする、V
H及びV
Lドメイン間のポリペプチドリンカーを更に含む。sFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)のPluckthunを参照のこと。
【0058】
「ダイアボディ(diabodies)」という用語は、二つの抗原結合部位を持つ小型の抗体断片を指し、その断片は同じポリペプチド鎖(V
H-V
L)内で軽鎖可変ドメイン(V
L)に結合した重鎖可変ドメイン(V
H)を含む。同じ鎖の二つのドメイン間に対形成するには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインは強制的に他の鎖の相補的ドメインと対形成して二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)に、より十分に記載されている。
【0059】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から同定され分離及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、その抗体の診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。ある実施態様において、抗体は、(1)ローリー法で測定した場合95%を越える抗体、最も好ましくは99重量%を越えるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、少なくとも15残基のN末端或いは内部アミノ酸配列を得るのに充分なほど、或いは、(3)限定するものではないがクーマシーブルー或いは銀染色といった色素又は染色を用いた非還元或いは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも一つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一つの精製工程により調製される。
「特異的に結合する」抗体、又は特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープへ特異的な抗体とは、他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープとは実質的に結合せずに、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープへ結合するものである。
【0060】
本明細書中で使用される「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列が高頻度に変化する、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は6つのHVR、つまり、VHに3つ(H1、H2、H3)、及びVLに3つ(L1、L2、L3)を含む。天然の抗体では、H3及びL3は6つのHVRのうちで最も高い多様性を示す、特にH3は抗体に良好な特異性を与える際に特有の役割を果たすように思われる。例として、Xu等 (2000) Immunity 13:37-45;Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ)のJohnson and Wu (2003)を参照。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は機能的であり、軽鎖が無い状態で安定である。Hamers-Casterman等 (1993) Nature 363:446-448;Sheriff等 (1996) Nature Struct. Biol. 3:733-736。
多数のHVRの描写が使用され、ここに含まれる。カバット相補性決定領域(CDR)は配列変化に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットHVRとChothia構造的ループとの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRのそれぞれからの残基を以下に示す。
ループ カバット AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B (カバット番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35 (Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0061】
HVRは、次のような「伸展したHVR」を含んでもよい、即ち、VLの24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VHの26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)である。可変ドメイン残基には、これら各々を規定するために、上掲のKabat等に従って番号を付した。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義されるHVR以外の可変ドメイン残基である。
【0062】
「カバット(Kabat)による可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットに記載のアミノ酸位番号付け」なる用語及びその異なる言い回しは、上掲のKabat et al.の抗体の編集の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVR内の短縮又は挿入に相当する2、3のアミノ酸又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインには、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばカバットによる残基82a、82b及び82cなど)と、H2の残基52の後に単一アミノ酸の挿入(Kabatによる残基52a)を含んでもよい。残基のKabat番号は、「標準の」カバット番号付け配列によって抗体の配列の相同領域でアライメントすることによって与えられる抗体について決定してもよい。
カバット番号付けシステムは一般に、可変ドメイン内の残基を指す場合に用いられる(軽鎖のおよそ残基1−107及び重鎖の残基1−113)(例えばKabat et al., Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は一般に、イムノグロブリン重鎖定常領域を指す場合に用いられる(例えば上掲のKabat et al.において報告されたEUインデックス)。「カバットにおけるEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けする残基を意味する。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号の参照は、EU番号付けシステムによって番号付けする残基を意味する(例えば、米国特許仮出願第60/640323号のEU番号付けに関する図を参照のこと)。
【0063】
「親和性成熟した」抗体は、その一又は複数のHVRに一又は複数の変更を有する抗体であって、そのような変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性を向上させる。一実施態様では、親和性成熟した抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知のある方法により生産されうる。例えば、Marks等は、Bio/Technology, 10:779-783(1992年)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を開示している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発が、例としてBarbas et al. Proc Nat. Acad. Sci, USA 91:3809-3813 (1994);Schier et al. Gene 169:147-155 (1995);Yelton et al. J. Immunol. 155:1994-2004 (1995);Jackson et al., J. Immunol. 154(7): 3310-9 (1995);及びHawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)に開示されている。
【0064】
「遮断(ブロッキング)」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低減するものである。ある遮断抗体又はアンタゴニスト抗体は、実質的又は完全に、抗原の生物学的活性を阻害する。本明細書中で用いる「アゴニスト抗体」は、対象のポリペプチドの機能的な活性の少なくとも一を部分的ないし完全に模倣する抗体である。
「標識」なる語は、ここで用いられる場合、「標識」抗体が生成されるように、抗体に直接又は間接的に抱合している検出可能な化合物又は組成物を意味する。標識は、それ自身検出可能でもよく(例えば、放射性標識又は蛍光標識)、又は酵素標識の場合、検出可能な基質化合物又は組成物の化学変換を触媒してもよい。
【0065】
「固相」とは、本発明の抗体がそれに付着することのできる非水性マトリクスを意味する。ここに意図する固相の例は、部分的又は全体的に、ガラス(例えば、孔制御ガラス)、多糖類(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンから形成されたものを含むがこれらには限定されない。或る種の実施態様では、内容に応じて、固相はアッセイプレートのウェルを構成することができ;その他では精製カラム(例えばアフィニティークロマトグラフィーカラム)とすることもできる。また、この用語は、米国特許第4275149号に記載されたような、別個の粒子の不連続な固相も包含する。
「リポソーム」は、種々の型の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小型の小胞であり、哺乳動物への薬物(本明細書中に記載のポリペプチド又はその抗体など)の輸送に有用である。リポソームの成分は、通常は生体膜の脂質配列に類似する二層形式に配列させる。
「小分子」とは、ここで、約500ダルトン未満の分子量を持つと定義される。
【0066】
「免疫関連疾患」という用語は、哺乳動物の免疫系の構成成分が哺乳動物の病的状態を引き起こし、媒介し、或いは寄与する疾患を意味する。また、免疫反応の刺激又は処置が、疾患の進行に対して改善的な効果を有するような疾患をも含む。この用語には、免疫媒介炎症性疾患、非免疫媒介炎症性疾患、感染性疾患、免疫不全性疾患、腫瘍形成等が含まれる。
「T細胞媒介疾患」という用語は、T細胞が哺乳動物の病的状態を直接、又は間接に媒介する、或いは寄与する免疫関連疾患を意味する。T細胞媒介疾患は、細胞媒介効果、リンホカイン媒介効果等、そして例えば、T細胞によって分泌されたリンホカインによってB細胞が刺激された場合に、B細胞と関連している効果にさえも関連している。
【0067】
免疫関連疾患及び炎症性疾患は、免疫又はT細胞媒介性のものを含み、本発明により治療可能である。それらの疾患には、全身性エリテマトーデス、リウマチ様関節炎、若年性慢性関節炎、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症性筋疾患(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫性汎血球減少症、発作性夜間血色素尿)、自己免疫性血小板減少症(特発的血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少症)、甲状腺炎(グレーブ疾患、ハシモト甲状腺炎、若年性リンパ性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、真性糖尿病、免疫性腎臓疾患(糸状体腎炎、尿細管間質性腎炎)、中枢及び末梢神経系の脱髄性疾患、例えば多発性硬化症、特発性脱髄性多発神経障害、又はギランバレー症候群、及び慢性炎症脱髄性多発神経障害、肝胆道疾患、例えば感染性肝炎(A、B、C、D、E型肝炎及びその他の非肝性ウイルス)、自己免疫慢性活性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、肉芽腫性肝炎、硬化性胆管炎、炎症性腸疾患(IBD)(潰瘍性大腸炎:クローン病)、グルテン感受性腸疾患、フィップル疾患、自己免疫性又は免疫媒介性皮膚疾患、水泡性皮膚疾患、多形滲出性紅斑、接触皮膚炎、乾癬、アレルギー性疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症、蕁麻疹、肺の免疫学的疾患、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、高感受性間質性肺炎、移植片拒絶及び移植片対宿主病を含む移植関連疾患が含まれる。AIDS(HIV感染)、A、B、C、D、及びE型肝炎等、細菌感染症、真菌感染症、原生動物感染症、及び寄生虫感染症といったウイルス性疾患を含む感染性疾患もまた免疫及び/又は炎症性の成分及び/又は病因でありうる。
【0068】
いくつかの皮膚疾患は、異常な免疫応答及び自己免疫状態に関連する。乾癬のような疾患は、皮膚水疱形成、皮膚白点形成、浮腫および皮膚タンパク質に結合する自己抗体の存在といった特徴がある。本出願では、実験によりTIGIT発現が正常皮膚に対して乾癬皮膚では上方制御されることを決定する。TIGITの発現および/または活性の調節は、乾癬の症状又は根本的な原因を治療する際に有用となりうる。
【0069】
炎症性腸疾患(「IBD」)という用語は、腸管(腸)に炎症を起こし、時に反復性の腹痛又は下痢を起こす原因不明の慢性炎症性障害の一群を意味する。米国におけるIBDの罹患率は、人口10万人あたり約200人と推定されている。IBD患者は、潰瘍性大腸炎(「UC」)を伴うグループ、及びクローン病(「CD」)を伴うグループの、2つの主要グループに分けられる。
UC患者には、主に結腸粘膜の炎症性反応が見られる。通常炎症は均一且つ連続的で、部分的にしろ途中に正常粘膜は見られない。陰窩上皮および粘膜下、並びに表面の粘膜細胞に、好中球の浸潤による炎症反応が起こっている。通常最終的にこのような状況は上皮の損傷へと進行し、上皮細胞が失われてその結果複数の潰瘍形成、繊維症、異形成、及び縦方向の大腸退縮が起こる。
CDは、炎症が腸壁の全ての層に亘る点でUCとは異なり、またリンパ節だけでなく腸管壁にも炎症が起こる。CDは、口から肛門までに亘る、消化管のいずれの部分にも起こり得る。この疾病は不連続性であることが多く、つまり腸の重症部分と明らかに疾病を有さない領域とが分離している。CDではまた、腸壁が厚くなり、閉塞に繋がることがあり得る。加えて、瘻孔及び亀裂が珍しくない。
【0070】
臨床的に、IBDは、慢性の予測不能な経過に繋がることが多い多様な症状を特徴とする。観血的な下痢、及び腹痛は、多くの場合発熱と体重減少を伴う。重度の疲労感と同様に貧血も多い。関節痛から急性関節炎に亘る関節症状や、肝機能の異常も一般にIBDと関連しているとされる。また、IBD患者が大腸癌にかかる危険は平均より大きい。IBDの急性の「発作」が起こっている間は、仕事やその他の日常活動は通常不可能であり、患者が入院することも多い。
IBDの原因は依然として不明であるが、遺伝、感染、及び免疫的感受性等の複数の要因が関係していると思われている。IBDは白人に多く、特にユダヤ系の白人に多い。症状が慢性的炎症性の性質であることにより、感染的原因の可能性に対する熱心な調査が急ぎ行われた。急性炎症を刺激する薬剤が見つかったものの、IBDに関連して慢性的炎症の原因となるものは見つかっていない。IBDが自己免疫性疾患であるという仮説は、関節炎など前述したようにIBDが腸以外に症状を有すること、並びに、免疫反応を抑制することが知られている副腎性グルココルチコイド、シクロスポリン及びアザチオプリン等の治療薬によりIBDにポジティブな反応が見られることが既知であることにより支持されている。加えて、胃腸管は、身体の他のどの器官よりも、連続的に食物由来のタンパク質、細菌性副産物(LPS)等の抗原性物質の可能性に曝されている。
【0071】
さらに、重度の潰瘍性大腸炎を持つ患者では、特に疾病が複数年に亘る場合、大腸癌の危険が大きく上昇する。大量出血、慢性的衰弱性の病気、大腸の穿孔、又は癌の危険のため、約20〜25%のIBD患者に最終的に大腸切除手術が必要になる。他の形態の医学的処置が失敗した場合、或いは、ステロイドの副作用や他の薬物適用により患者の健康が脅かされる場合にも手術が行われる場合がある。手術は侵襲性であり、劇的に人生を変えるので、あまり望ましい治療方式ではなく、通常は最後の処置である。この疾病に対する理解を深め、治療を可能にするための実験を行い、正常組織と比較した場合にCDとUCの両方においてTIGITが上方制御されることが確認された。TIGITの発現及び/又は活性の調整は一又は複数のIBDの形態の治療に有用であろう。
【0072】
リウマチ様関節炎(RA)は、主に複数の関節の滑膜に関連する慢性全身性自己免疫炎症疾患であり、結果として関節軟骨に傷害が生じる。病原はTリンパ球依存性であり、リウマチ因子、自己IgGに対する自己抗体の生成に付随し、結果として滑液及び血液において高レベルに達する免疫複合体を生成する。関節中のこれらの複合体は、滑膜中へのリンパ球及び単球の顕著な浸潤と、続いての顕著な滑膜変化を誘発し;多数の好中球の添加により同様の細胞で浸潤されるならば、関節空間/液でもしかりである。罹患組織は、多くの場合対称的なパターンで、主に関節である。しかしながら、2つの主な形態の関節外疾患もまた生じる。一形態は進行中の進行性関節疾患及び肺線維症の典型的病巣、血管炎、及び皮膚潰瘍を伴う関節外障害の発生である。関節外疾患の第2の形態はいわゆるフェルティー症候群であり、これは、RA疾患過程の末期、時には関節疾患が鎮静した後に生じ、好中球減少、血小板減少及び脾肥大の存在に関与する。これには、梗塞、皮膚潰瘍及び壊疽の形成を伴う複数の器官において血管炎が付随する。多くの場合、患者には、発病している関節上にある皮下組織にリウマチ様小結節が発達し;その小結節は、末期には混合炎症細胞浸潤に包囲された壊死性中心を有する。RAにおいて生じる可能性のある他の徴候には:心外膜炎、胸膜炎、冠動脈炎、肺線維症を伴う間質性肺炎、乾性角結膜炎、及びリウマチ様小結節が含まれる。
【0073】
若年性慢性関節炎は、多くの場合16歳未満で発症する慢性特発性炎症疾患である。その表現型はRAといくつかの類似点があり;リウマチ因子が陽性である患者の中には若年性リウマチ様関節炎に分類されるものもいる。この疾患は3つの主要なカテゴリー:小関節(pauarticular)、多関節及び全身性に細分類される。関節炎は重度で典型的には破壊的であり、関節強直症及び遅延成長に至る。他の徴候には慢性前部ブドウ膜炎及び全身性アミロイド症が含まれる。
【0074】
「有効量」とは、特に定まった目的を達成することを引き起こすポリペプチド及び/又はアゴニスト/アンタゴニストの濃度又は量である。ポリペプチド又はアゴニスト又はアンタゴニストの「有効量」は経験的に決定されうる。更には、「治療的有効量」とは、定まった治療的有効量を達成するために効果的なポリペプチド及び/又はアゴニスト/アンタゴニストの濃度又は量である。また、この量は経験的に決定されうる。
ここで用いられる「細胞傷害性剤」は、細胞の機能を阻害又は抑制し、及び/又は細胞破壊を起こす物質を意味する。この用語は、放射性同位元素(例えば、I
131、I
125、Y
90及びRe
186)、化学治療薬、及び細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素又はその断片を意味する。
【0075】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、タキソイド類、例えばパクリタキセル(タキソール, Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)及びドセタキセル(docetaxel)(タキソテール(Taxotere), Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France)、トキソテール、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン(vinorelbine)、カルボプラチン、テニポシド(teniposide)、ダウノマイシン、カルミノマイシン(carminomycin)、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラミシン(esperamicins)(米国特許第4675187号参照)、メルファラン、及び他の関連したナイトロジェンマスタードが含まれる。またこの定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働くホルモン剤、例えばタモキシフェン及びオナプリストーン(onapristone)も含まれる。
【0076】
ここで使用される場合の「増殖阻害剤」とは、インビトロ又はインビボのいずれかにおいて、特にここで同定された任意の遺伝子を過剰発現する細胞の増殖を阻害する化合物又は組成物を指すものである。よって、増殖阻害剤とは、S期におけるそのような遺伝子の過剰発現細胞のパーセンテージを有意に低減させるものである。増殖阻害剤の例には、細胞分裂周期の進行をブロックする薬剤(S期以外の場所において)、例えばG1停止及びM期停止を誘発する薬剤が含まれる。伝統的なM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキソール、及びトポIIインヒビター、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。G1を停止させるこれらの薬剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニソン、ダカーバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CがS期停止へ波及する。更なる情報は、例えば、Murakamiらにより「細胞分裂周期の調節、オンコジーン、及び抗新生物薬(Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs)」と題された、癌の分子的基礎(The Molecular Basis of Cancer)、Mendelsohn及びIsrael編、第1章(WB Saunders;Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。
【0077】
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。このようなサイトカインのある例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、例えば、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質ホルモン、副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミュラー阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-αあるいはTGF-βのような形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子-I及び-II;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロン-α、-β、及び-γのようなインターフェロン;マクロファージCSF(M-CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)及び顆粒球CSF(G-CSF);IL-1、IL-1a、IL-2、IL-3、 IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、 IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、又はIL-17等のインターロイキン(IL);腫瘍壊死因子、例えばTNF-α又はTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。ここで使用される場合、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。
【0078】
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインとを結合した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
ここで用いられる「炎症性細胞」という用語は、単核細胞、好酸球、マクロファージ、及び多形核球好中球(PMN)等の炎症性反応を増強する細胞を意味する。
【0079】
II.本発明の組成物及び方法
TIGITは免疫機能の予測されるモジュレーターとして同定された(例として、出典明記によって本明細書中に援用される米国公開特許US20040121370を参照のこと)。本明細書において、出願人は、TIGITが、ポリオウイルスレセプター(PVR、NECL5又はCD155としても知られる)、PVR様タンパク質1−4(PVRL1−4)、CD96およびCD226を含む、「TIGIT様タンパク質」(TLP)ファミリと称する免疫関連タンパク質の新規に記載されたファミリーのメンバーであることを示す。出願人は、メンバーが免疫の調節及び機能に役割を有するこの新規なTLPファミリの保存された構造的成分を示し、更なるファミリメンバーを同定するための方法を提供する。PVRL1−4およびPVRは共通のドメインアーキテクチャ(IgV−IgC−IgV)を共有するのに対して、CD226およびCD96は膜近位のIgVドメインを欠いている。これら8つのタンパク質の細胞内セグメントは、PVRL1−3間で共有されるafadin結合モチーフの外で、互いに限られた類似性を示し、PVRL4はこの配列を欠いているが、afadinを結合することが知られている。NECL-1の関連するIgVドメインの結晶構造に基づいて(Dong, X. et al., J Biol Chem 281, 10610-7 (2006))、第一及び第3のモチーフは、それぞれBとCの間およびFとGβ-鎖の間のヘアピンループにあることが予測される。これら2つのループは、IgVホールドの一端で互いに隣接している。第二のモチーフは、NECL−1のためのホモ二量体界面の一部を形成するのに関与するC'とC''β鎖を含む。ゆえに、これら配列のモチーフは、PVRファミリメンバー間で観察される特定のホモおよびヘテロ型の相互作用において機能しうる。
【0080】
TLPファミリは、アラニン
67、グリシン
74、プロリン
114およびグリシン
116を含む多くの完全に保存されたアミノ酸を含む。さらに、TLPファミリは、位置54にバリン、イソロイシンおよびロイシンから選択されるアミノ酸、位置55にセリンおよびスレオニンから選択されるアミノ酸、位置56にグルタミン、位置112にスレオニン、および位置113にフェニルアラニンおよびチロシンから選択されるアミノ酸を含む、実質的に保存されている(例えばファミリメンバーの多くに見られるが、すべてのファミリメンバーに見られるわけではない)いくつかのアミノ酸を含む。また、TLPファミリのメンバーは、3つの構造的サブモチーフ:バリン/イソロイシン
54−セリン/スレオニン
55−グルタミン
56;アラニン
67−X
68−73−グリシン
74(Xは任意のアミノ酸である);及び、スレオニン
112−フェニルアラニン/チロシン
113−プロリン
114−X
115−グリシン
116(Xは任意のアミノ酸である)を含む。上で使用する番号付けはヒトTIGITタンパク質配列に関するものであり、これらの保存された残基の相対的な位置やTLPタンパク質ファミリの異なるメンバーにあるモチーフがヒトTIGIT配列のこれらアミノ酸の位置と同一であるが、他のTLPファミリのこれら残基の絶対的な番号付けは異なりうることは、当分野の技術者は理解している。
【0081】
免疫の調節および機能に同定されたTLPファミリメンバーが関与しているので、このタンパク質ファミリの他のメンバーも免疫の調節及び機能に関与しているようである。したがって、本発明は、ポリペプチドの配列を、一又は複数の先に同定したファミリメンバーの配列に整列配置することと、先に同定した完全に保存された残基、先に同定された実質的に保存された残基及び/又は先に同定された構造上のサブモチーフの、あるタンパク質配列における有無を評価することによる、あるポリペプチドがTLPファミリのメンバーであるか否かを決定する方法を提供する。また、本発明は、アミノ酸配列に先に同定した完全に保存された残基、先に同定された実質的に保存された残基及び/又は先に同定された構造上のサブモチーフが含まれているタンパク質について、一又は複数の配列データベースを検索することによる、TLPタンパク質ファミリの他のメンバーの同定方法を提供する。
【0082】
また、本明細書において出願人によるTLPファミリの同定は、TLPファミリの共通の構造的特徴によりTLPファミリの2以上のメンバーは同じように調節されうるという可能性を示唆する。例えば、各々のTLPファミリメンバーで保存された及び実質的に保存されたアミノ酸残基とサブモチーフが各タンパク質の一又は複数のドメインでこれらファミリメンバーに類似の三次元構造を生じさせている場合、これら類似の三次元構造は、同時に、2以上のTLPファミリメンバー又はすべてのTLPファミリメンバーを同時に調節するために標的とされうる。したがって、本発明はまた、TLPファミリメンバーのこのような保存された又は実質的に保存された領域と特異的に相互作用する薬剤(「TLP相互作用剤」)を提供する。このような薬剤を用いて、候補タンパク質がTLP相互作用剤と相互作用するか否かを評価することによってTLPファミリの一又は複数の更なるメンバーを同定してよい。候補タンパク質のTLP相互作用剤との相互作用は、タンパク質がTLPファミリメンバーでありうることを示す。TLP相互作用剤はTLP活性を調整しうる。例えば、TLP相互作用剤は、限定するものではないが、小分子阻害因子、阻害性抗体ないしその抗原結合断片、アプタマーおよび阻害性ペプチドを含む、TLP活性のアンタゴニストであってよい。他の例では、TLP相互作用剤は、限定するものではないが、アゴナイズ抗体ないしその抗原結合断片、アゴナイズペプチド、及びTLPタンパク質の構造を安定化してTLPタンパク質活性を容易にさせる小分子を含む、TLP活性のアゴニストであってよい。TLP相互作用剤は、当分野で公知の様々な方法、例えば本明細書において記述されるスクリーニング法を用いて同定されうる。
【0083】
出願人は、TIGITが主に様々な活性化されたT細胞、特に扁桃腺組織から単離した調節T細胞(T
reg)、メモリーT細胞、NK細胞および濾胞性B細胞ヘルパーT細胞(T
fh)に発現することをmRNAおよびFACS分析によって示す。ゆえに、本発明は、細胞がTIGITを発現するか否かに基づく、選択された細胞がT
reg、メモリーT細胞、NK細胞又はT
Fh細胞であるか否かを識別する方法を提供する。また、本発明は、当分野で公知及び/又は本明細書中に記載されるいずれかの精製方法(非限定的な例としてフローサイトメトリー)を用いて、TIGITを発現しない他の種類の免疫細胞からT
reg、メモリーT細胞、NK細胞及びT
Fh細胞を精製するためにTIGITを使用する方法を提供する。また、出願人は、これらの細胞群の中で活性化されたT
regsにおいて最も高いTIGIT発現が生じることを示す。ゆえに、本発明はまた、一又は複数のコントロール試料でのTIGITの発現レベルと比較したTIGITの発現レベルに基づいて、ある細胞が活性化されたT
regsであるか否かを同定する方法を提供する(ここで、コントロール試料は例示的なT細胞サブセット群からの既定値でってもよいし、コントロール試料は活性化されたT
reg、非活性化T
reg、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、NK細胞、T
Fh細胞又は他のT細胞群といった既知の細胞サブ集団からの他の試料であってもよい)。また、一又は複数のコントロール活性化ないしは非活性化T
reg試料におけるTIGIT発現レベルと比較して、又は既知の活性化ないしは非活性化のT
reg細胞群における既定のTIGIT発現値と比較して、TIGITの発現レベルを決定することによる、あるTreg細胞が活性化されているか否かを決定する方法も提供される。さらに、細胞において発現されるTIGITの量を用いて他の細胞から細胞を分離する、当分野で公知及び/又は本明細書中に記載されるいずれかの精製方法(非限定的な例として、フローサイトメトリー)を用いて、他のT細胞から活性化されたTregを別々に単離する方法を提供する。
【0084】
出願人は、TIGITがPVRと強く結合し、PVRL3(別名ネクチン-3又はCD113)およびPVRL2(別名ネクチン-2又はCD112)に小さいKdで結合することを示す。出願人によって例証されるように、PVRに結合するTIGITはCD226及びCD96といった2つの他のリガンドとPVRとの相互作用を遮断し、CD226は、PVR−CD226相互作用のTIGITよりも効果の低い、TIGIT−PVR相互作用の阻害因子である。出願人は、細胞表面に発現されるPVRに対するTIGIT又はTIGIT融合タンパク質の結合を阻害する抗TIGIT抗体(例えば本明細書において記述される抗TIGIT抗体10A7)を製造した。出願人は、さらに、10A7とは異なるTIGIT上のエピトープ特異性を有する、本明細書中に記載の抗体1F4といった他の抗体を製造した。特に、CD226は、TIGITを高く発現する細胞種であるT
regs又はT
Fhでは有意に発現されない。
【0085】
これらの所見によって裏付けられるように、本発明は、TIGIT−PVR相互作用、TIGIT−PVRL2相互作用及びTIGIT−PVRL3相互作用のアゴニスト及びアンタゴニスト、並びにこのアゴニスト及びアンタゴニストを用いたインビトロ又はインビボでのTIGIT−PVR結合、TIGIT−PVRL2結合及びTIGIT−PVRL3結合の調節方法を提供する。また、インビトロ又はインビボでTIGIT(PVR結合の競合物質)又は抗TIGIT抗体ないしはその抗原結合断片を投与することによる、CD226−PVR相互作用及び/又はCD96−PVR相互作用の調節方法を提供する。さらに、本発明は、アゴナイズ及びアンタゴナイズする抗TIGIT抗体及びその断片、特に抗TIGIT抗体10A7及び1F4と、抗TIGIT抗体10A7及び/又は1F4のCDRを含む代替的種類の抗体を包含する。
【0086】
本明細書において記述される試験は、DC上のPVRとTIGITとの相互作用を示し、この結合相互作用がDC機能、特にサイトカイン産生を調整することを示唆する。PVRは、樹状細胞(DC)、並びにFDC、線維芽細胞、内皮細胞、及びいくつかの腫瘍細胞上で高く発現されることが知られている細胞表面レセプターである(Sakisaka, T. & Takai, Y., Curr Opin Cell Biol 16, 513-21 (2004);Fuchs, A. & Colonna, M., Semin Cancer Biol 16, 359-66 (2006))。TIGITが結合したヒトのDCは、IL−10を高レベルに分泌したが、炎症誘発性及び他のサイトカイン(例えばIL−12p40、IL−12p70、IL−6、IL−18およびIFNγ)は僅かにしか分泌しなかった。TIGITはIL−23といった特定のサイトカインの産生には作用しなかった。TIGIT結合時のこのサイトカインの歪みは、TNFα又はCD40/LPSによって刺激された細胞にのみ観察され、TLR2−又はPam3CSK4−刺激細胞では観察されなかったことから、TIGITは免疫系がDC機能を微調節しうる一つの手段であることを示唆する。未成熟T細胞にTIGITが結合すると(TIGIT融合コンストラクトを使用して評価される)、T細胞活性化および増殖が阻害された。しかしながら、TIGIT処置は、未成熟単核球由来DC(iMDDC)の成熟能には影響せず、この細胞の成熟を直接誘導しなかったとりわけ、この阻害はERK阻害因子の存在下で逆転したことから、ERK活性化は、TIGITのDC活性を調節する機能において重要な工程であることを示す。実際に、出願人は、PVRにTIGITが結合すると、PVRのリン酸化とpERK単量体でなくpERK二量体のリン酸化の増加が生じることを示す。これは、例えばp38細胞内シグナル伝達経路が細胞のTIGIT−Fc処理により調節されなかったので、一般的な作用ではなかった。出願人は、本明細書において、TIGIT+T細胞が他のTIGIT−T細胞だけでなく、免疫細胞の混合種群に存在する場合には抗原提示細胞の増殖も抑制することを示す。出願人はさらに、実験に抗TIGIT抗体又は抗PVR抗体を含めると、観察される増殖の抑制、DCサイトカイン産生の調節、及び他の免疫細胞の増殖の抑制が大幅に低減したので、TIGIT−PVR相互作用が先に観察された効果を媒介することを示す。まとめると、本出願人によって示されたデータは、TIGITが免疫応答をネガティブに調節することによって免疫系のフィードバック機構を提供することを示唆する。
【0087】
したがって、本発明は、TIGIT又はPVRの発現および/または活性を調整することによる免疫細胞(例えばDC)機能を調整する方法を提供する。例えば、インビトロ又はインビボで、TIGIT、TIGITの発現および/または活性のアゴニスト又はPVRの発現および/または活性のアゴニストにて免疫細胞を処置することによる、免疫細胞(例えばDC又は抗原提示細胞)の増殖の低減ないし阻害方法が提供される。また、インビトロ又はインビボで、TIGITの発現および/または活性のアンタゴニスト又はPVRの発現および/または活性のアンタゴニストにて免疫細胞を処置することによる、免疫細胞(例えばDC又は抗原提示細胞)の増殖の増加方法が提供される。また、本発明は、TIGITの発現および/または活性のアンタゴニスト又はPVRの発現および/または活性のアンタゴニストを投与することによる免疫応答の増加/刺激方法を提供する。同様に、TIGIT、TIGITの発現および/または活性のアゴニスト又はPVRの発現および/または活性のアゴニストを投与することによる、免疫応答の低減/阻害方法が提供される。
【0088】
また、本発明は、TIGIT又はPVRの発現及び/又は活性を調節することによる、免疫細胞(例えばDC)からのサイトカイン産生の種類および/または量の調節方法を提供する。具体的には、本発明は、インビトロ又はインビボで、TIGIT、TIGITの発現および/または活性のアゴニスト又はPVRの発現および/または活性のアゴニストにて細胞を処置することによる、免疫細胞、例えばDCによるIL−10産生を増やす方法を提供する。また、インビトロ又はインビボで、TIGIT、TIGITの発現および/または活性のアゴニスト又はPVRの発現および/または活性のアゴニストにて細胞を処置することによる、免疫細胞、例えばDCによる炎症誘発性サイトカイン産生及び/又は放出を低減する方法が提供される。同様に、インビトロ又はインビボで、TIGITの発現及び/又は活性のアンタゴニスト又はPVRの発現及び/又は活性のアンタゴニストにて細胞を処置することによる、免疫細胞、例えばDCによるIL−10産生を低減させる方法も提供される。本発明は、さらに、インビトロ又はインビボで、TIGITの発現及び/又は活性のアンタゴニスト又はPVRの発現及び/又は活性のアンタゴニストにて細胞を処置することによる、免疫細胞、例えばDCによる炎症誘発性サイトカイン産生及び/又は放出を増加させる方法を提供する。また、TIGIT、TIGITの発現及び/又は活性のアゴニスト、又はPVRの発現及び/又は活性のアゴニストにより細胞を処理することによる、一又は複数の細胞におけるERK経路による細胞内シグナル伝達及び/又はERKリン酸化の刺激方法が提供される。同様に、本発明は、TIGITの発現及び/又は活性のアンタゴニスト、又はPVRの発現及び/又は活性のアンタゴニストにより細胞を処理することによる、一又は複数の細胞におけるERK経路による細胞内シグナル伝達及び/又はERKリン酸化を阻害する又は低減させる方法を提供する。
【0089】
本明細書において示されるように、TIGITは、正常コントロール組織と比較して、関節炎、乾癬、炎症性腸疾患および乳癌組織において発現が増加される。乳癌組織に関して、出願人は、TIGITの発現が腫瘍細胞自体と相関するのではなく、むしろ腫瘍中のCD4+免疫細胞浸潤物と相関することを示す。また、出願人は、TIGIT融合タンパク質が遅延型過敏症インビボアッセイにおいてインビトロのヒトのT細胞応答とマウスのT細胞活性化を阻害したことを示すことによって、免疫応答を調節するTIGITの能力を直接示す。したがって、本発明は、被検体からの試料におけるTIGITの発現及び/又は活性を評価することと、その発現及び/又は活性をTIGITの発現及び/又は活性の対照量あるいは正常被検体の試料におけるTIGITの発現及び/又は活性の量と比較することによる、被検体の異常な免疫細胞応答に関連する疾患/障害の診断方法を提供する。また、本発明は、被検体からの試料におけるTIGITの発現及び/又は活性を評価することと、その発現及び/又は活性をTIGITの発現及び/又は活性の対照量あるいは正常被検体の試料におけるTIGITの発現及び/又は活性の量と比較することによる、被検体の異常な免疫細胞応答に関連する疾患ないし障害(すなわち免疫関連疾患)の重症度の評価方法を提供する。また、TIGITの発現及び/又は活性を調節することによる、異常な免疫細胞応答に関連する疾患ないし障害(すなわち免疫関連疾患)の予防方法が提供される。さらに、TIGITの発現及び/又は活性を調節することによる、異常な免疫細胞応答に関連する疾患ないし障害(すなわち免疫関連疾患)の重症度の治療ないし低減方法が提供される。TIGITのネガティブ調節活性が疾患状態に貢献する場合には、TIGITの発現および/または活性の調節は、(すなわち、TIGITアンタゴニスト又はPVRアンタゴニストによって)TIGITの活性および/または発現を阻害するという形態を取ってよい。例えば、DC増殖の増加および/またはDCによる炎症誘発性サイトカイン産生の増加が望ましい場合には、TIGITの発現および/または活性を中和する(アンタゴナイズする)ことが望ましい。疾患状態を制御するためにTIGITのネガティブ調節活性が望ましい場合には、TIGITの発現および/または活性の調節は、(すなわち、TIGIT、TIGITアゴニスト又はPVRアゴニストを投与することによって)TIGITの発現及び/又は活性を活性化するないしは増加させるという形態を取ってよい。例えば、DC増殖の減少および/またはDCによる炎症誘発性サイトカイン放出の減少が望ましい場合には、TIGITの発現および/または活性をアゴナイズすることが望ましい。これら及び他の本発明の態様は、以下により詳細に記述される。
【0090】
A.完全長TIGITポリペプチド
本発明は、TIGITポリペプチドとして本出願において称されるポリペプチドをコードする単離されたヌクレオチド配列を提供する。特に、以降の本明細書中及び実施例中にさらに詳細に開示されるように、様々なTIGITポリペプチドをコードするcDNAが同定され、単離された。本発明は本発明の方法に有用な他のポリペプチド(すなわちPVR)も提供すること、そして、TIGITポリペプチドの創造、製造、標識、翻訳後修飾、使用の方法又は他の態様について具体的に記載された本明細書中のいずれの記載もTIGITでない他のポリペプチドにも適用できることは、当分野の技術者は理解している。
【0091】
B.TIGITポリペプチド変異体
ここに記載した完全長天然配列TIGITポリペプチドに加えて、TIGIT変異体も調製できると考えられる。TIGIT変異体は、TIGITポリヌクレオチドに適当なヌクレオチド変化を導入することにより、及び/或いは所望のTIGITポリペプチドを合成することにより調製できる。当業者は、ポリペプチドのグリコシル化部位の数又は位置の変化或いは膜固着特性の変化などのアミノ酸変化がTIGITポリペプチドの翻訳後プロセスを変えうることを理解するであろう。
天然完全長配列TIGIT又はここに記載したTIGITポリペプチドの種々のドメインにおける変異は、例えば、米国特許第5364934号に記載されている保存的及び非保存的変異についての任意の技術及び指針を用いてなすことができる。変異は、結果として天然配列TIGITと比較してTIGITポリペプチドのアミノ酸配列が変化するTIGITポリペプチドをコードする一又は複数のコドンの置換、欠失及び/又は挿入であってよい。場合によっては、変異は少なくとも一のアミノ酸のTIGITの一又は複数のドメインの任意の他のアミノ酸による置換である。いずれのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失されるかの指針は、TIGITの配列を相同性の知られたタンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域内でなされるアミノ酸配列変化を最小にすることによって見出される。アミノ酸置換は、一のアミノ酸の類似した構造及び/又は化学特性を持つ他のアミノ酸での置換、例えばロイシンのセリンでの置換、即ち保存的アミノ酸置換の結果とすることができる。挿入及び欠失は、場合によっては1から5のアミノ酸の範囲内とすることができる。許容される変異は、配列においてアミノ酸の挿入、欠失又は置換を系統的に作製し、得られた変異体を完全長又は成熟天然タンパク質によって提示された活性について試験することにより決定される。
【0092】
また、TIGITポリペプチド断片がここに提供される。このような断片は、例えば、完全長天然タンパク質と比較した際に、N-末端又はC-末端で切断されてもよく、又は内部残基を欠いていてもよい。或る種の断片は、TIGITポリペプチドの所望の生物学的活性に必須ではないアミノ酸残基を欠いている。
TIGIT断片は、多くの従来技術の任意のものによって調製してよい。所望のペプチド断片は化学合成してもよい。代替的方法は、酵素的消化、例えば特定のアミノ酸残基によって決定される部位のタンパク質を切断することが知られた酵素でタンパク質を処理することにより、或いは適当な制限酵素でDNAを消化して所望の断片を単離することによるTIGIT断片の生成を含む。更に他の好適な技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、所望のポリペプチド断片をコードするDNA断片を単離し増幅することを含む。DNA断片の所望の末端を決定するオリゴヌクレオチドは、PCRの5’及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、TIGITポリペプチド断片は、ここに開示した天然TIGITポリペプチドと少なくとも一の生物学的及び/又は免疫学的活性を共有する。
ある実施態様では、対象とする保存的置換を、好ましい置換と題して表5に示す。このような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表5に例示的置換と名前を付けた又は以下にアミノ酸分類で更に記載するように、より実質的な変化が導入され生成物がスクリーニングされる。
【0094】
ポリペプチドの機能及び免疫学的同一性の実質的修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又は螺旋配置、(b)標的部位の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持しながら、それらの効果において実質的に異なる置換基を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン, met, ala, val, leu, ile;
(2)中性の親水性:cys, ser, thr;
(3)酸性:asp, glu;
(4)塩基性:asn, gln, his, lys, arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly, Pro;及び
(6)芳香族:trp, tyr, phe。
【0095】
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とする。また、そのように置換された残基は、保存的置換部位、好ましくは残された(非保存)部位に導入されうる。
変異は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャンニング、及びPCR突然変異誘発といったこの分野で知られた方法を用いてなすことができる。部位特異的突然変異誘発[Carter等, Nucl. Acids Res., 13:4331 (1986);Zoller等, Nucl. Acids Res., 10:6487 (1987)]、カセット突然変異誘発[Wells等, Gene, 34:315 (1985)]、制限的選択突然変異誘発[Wells等, Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317:415 (1986)]又は他の知られた技術をクローニングしたDNAに実施して変異体DNAを作製することもできる。
【0096】
また、隣接配列に沿って一つ又は複数のアミノ酸を同定するのにスキャンニングアミノ酸分析を用いることができる。好ましいスキャンニングアミノ酸は比較的小さく、中性のアミノ酸である。そのようなアミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、及びシステインを含む。アラニンは、ベータ炭素を越える側鎖を排除し変異体の主鎖構造を変化させにくいので、この群の中で典型的に好ましいスキャンニングアミノ酸である[Cunningham及びWells, Science, 244:1081-1085 (1989)]。また、アラニンは最もありふれたアミノ酸であるため典型的には好ましい。更に、それは埋もれた及び露出した位置の両方に見られることが多い[Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150:1(1976)]。アラニン置換が十分な量の変異体を生じない場合は、アイソテリック(isoteric)アミノ酸を用いることができる。
【0097】
C.TIGITの修飾
TIGITポリペプチドの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。共有結合的修飾の一つの型は、ポリペプチドの標的とするアミノ酸残基を、TIGITポリペプチドの選択された側鎖又はN又はC末端残基と反応できる有機誘導体化試薬と反応させることである。二官能性試薬での誘導体化が、例えばTIGITポリペプチドを、抗TIGIT抗体の精製方法に用いる水不溶性支持体マトリクス又は表面に架橋させるのに有用であり、またその逆も可である。通常用いられる架橋剤は、例えば、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸とのエステル、3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、ビス-N-マレイミド-1,8-オクタン等の二官能性マレイミド、及びメチル-3-[(p-アジドフェニル)-ジチオ]プロピオイミダート等の試薬を含む。
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular TIGITperties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp.79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0098】
本発明の範囲内に含まれるTIGITポリペプチドの共有結合的修飾の他の型は、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンの変更を含む。「天然グリコシル化パターンの変更」とは、天然配列TIGITに見られる一又は複数の炭水化物部分の欠失(存在するグリコシル化部位の除去又は化学的及び/又は酵素的手段によるグリコシル化の削除のいずれかによる)、及び/又は天然配列TIGITに存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加をここでは意味する。更に、この語句は、天然タンパク質のグリコシル化における定性的変化を含み、そこには、存在する種々の炭水化物部分の性質及び特性の変化も含まれる。
ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加はアミノ酸配列の変更を伴ってもよい。この変更は、例えば、一又は複数のセリン又はトレオニン残基の天然配列ポリペプチド(O-結合グリコシル化部位)への付加、又は置換によってなされてもよい。ポリペプチドアミノ酸配列は、場合によっては、DNAレベルでの変化、特に、ポリペプチドをコードするDNAを予め選択された塩基において変異させ、所望のアミノ酸を翻訳するようにコドンを生成することによって変更されてもよい。
【0099】
ポリペプチド上に炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的又は酵素的結合による。このような方法は、この技術分野において、例えば、1987年9月11日に公開されたWO87/05330、及びAplin及びWriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)に記載されている。
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、或いはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、例えば、Hakimuddi等, Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)により、及びEdge等, Anal. Biochem., 118: 131 (1981)により記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura等, Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成される。
本明細書中で開示されるポリペプチドの共有結合的修飾の他の型は、ポリペプチドの、種々の非タンパク質様ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンの一つへの、米国特許第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号又は第4179337号に記載された方法での結合を含む。
また、本発明のポリペプチドは、他の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合したポリペプチドを含むキメラ分子を形成する方法で修飾してもよい。
【0100】
一実施態様では、このようなキメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドと対象のポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般的には対象のポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このような対象のポリペプチドのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によって対象のポリペプチドを容易に精製できるようにする。種々のタグポリペプチド及びそれら各々の抗体はこの分野で良く知られている。実施例は、ポリ−ヒスチジン(ポリ-his)又はポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-his-gly)タグ;flu HAタグポリペプチド及びその抗体12CA5[Fieldら, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988)];c-mycタグ及びそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体[Evan等, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985)];及び単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ及びその抗体[Paborsky等, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)]を含む。他のタグポリペプチドは、フラッグペプチド[Hopp等, BioTechnology, 6:1204-1210(1988)];KT3エピトープペプチド[Martin等, Science, 255:192-194 (1992)];α-チューブリンエピトープペプチド[Skinner等, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991)];及びT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lutz-Freyermuth等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397(1990)]を含むがこれらに限定しない。
それに代わる実施態様では、キメラ分子は免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体はIgG分子のFc領域であり得る。Ig融合体は、好ましくはIg分子内の少なくとも一つの可変領域に換えてポリペプチドの可溶化(膜貫通ドメイン欠失又は不活性化)形態を含む。一実施態様では、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合体の製造については、1995年6月27日発行の米国特許第5428130号を参照のこと。
【0101】
D.ポリペプチドの調製
以下の説明は、主として、対象のポリペプチドをコードする核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することによりポリペプチドを製造する方法に関する。もちろん、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてポリペプチドを調製することができると考えられる。例えば、ポリペプチド配列、又はその一部は、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生産してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., サン フランシスコ, カリフォルニア (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動によるインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(フォスターシティー, カリフォルニア)を用いて、製造者の指示により実施してもよい。ポリペプチドの種々の部分は、別々に化学的に合成され、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて完全長ポリペプチドを生産してもよい。
【0102】
1.ポリペプチドをコードするDNAの単離
対象のポリペプチドをコードするDNAは、ポリペプチドmRNAを保有していてそれを検出可能なレベルで発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリから得ることができる。従って、ヒトのポリペプチドをコードするDNAは、ヒトの組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。またポリペプチド-コード化遺伝子は、ゲノムライブラリから又は公知の合成方法(例えば、自動化核酸合成)により得ることもできる。
ライブラリは、対象となる遺伝子或いはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(ポリペプチドに対する抗体又は少なくとも約20−80塩基のオリゴヌクレオチド等)によってスクリーニングできる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングは、例えばSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている標準的な手順を使用して実施することができる。ポリペプチドをコードする遺伝子を単離する他の方法はPCR法を使用するものである[Sambrook等,上掲;Dieffenbach等, PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995)]。
【0103】
下記の実施例には、cDNAライブラリのスクリーニング技術を記載している。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、疑陽性が最小化されるよう充分に明瞭でなければならない。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAとのハイブリダイゼーション時に検出可能であるように標識されていることが好ましい。標識化の方法は当該分野において良く知られており、
32P標識されたATPのような放射線標識、ビオチン化或いは酵素標識の使用が含まれる。中程度のストリンジェンシー及び高度のストリンジェンシーを含むハイブリダイゼーション条件は、上掲のSambrook等,に示されている。
このようなライブラリスクリーニング法において同定された配列は、Genbank等,の公共データベース又は個人の配列データベースに寄託され公衆に利用可能とされている周知の配列と比較及びアラインメントすることができる。分子の決定された領域内又は完全長に渡っての(アミノ酸又は核酸レベルのいずれかでの)配列同一性は、当該分野で知られた、及びここに記載した方法を用いて決定することができる。
タンパク質コード化配列を有する核酸は、初めてここで開示された推定アミノ酸配列を使用し、また必要ならば、cDNAに逆転写されていないmRNAの生成中間体及び先駆物質を検出する上掲のSambrook等,に記述されているような従来のプライマー伸展法を使用して選択されたcDNA又はゲノムライブラリをスクリーニングすることによって得られる。
【0104】
2.宿主細胞の選択及び形質転換
宿主細胞を、ここに記載したポリペプチド製造のための発現又はクローニングベクターで形質移入又は形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養する。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編(IRL Press, 1991)及びSambrook等, 上掲に見出すことができる。
原核生物細胞形質移入及び真核生物細胞形質移入の方法、例えば、CaCl
2、CaPO
4、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrook等,に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)による感染が、Shaw等, Gene, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開のWO89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、未処理の細胞、又はポリブレン、ポリオルニチン等のポリカチオンを用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0105】
ここに記載のベクターにDNAをクローニング或いは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えば大腸菌のような腸内細菌科を含む。種々の大腸菌株が公衆に利用可能であり、例えば、大腸菌K12株MM294(ATCC31,446);大腸菌X1776(ATCC31,537);大腸菌株W3110(ATCC27,325)及びK5772(ATCC53,635)である。他の好ましい原核動物宿主細胞は、大腸菌、例えば、E. coli、エンテロバクター、エルビニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えば、ネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチアマルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバチルス・スブチルス(B. subtilis)及びバチルス・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日発行のDD266710に記載されたバチルス・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセスなどの腸内細菌科を含む。これらの例は限定ではなく例示である。株W3110は、組換えDNA生産発行のための共通の宿主株であるので一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110は、細胞に外来のタンパク質をコードする遺伝子における遺伝子変異をするように修飾してもよく、そのような宿主の例としては、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA prt3 phoA E15 (argF-lac) 169 degP ompT kan
rを有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (algF-lac) 169 degP ompT rbs7 ilvG kan
rを有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を持つ37D6株である大腸菌W3110株40B4;及び1990年8月7日発行の米国特許第4946783号に開示された変異周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株を含む。或いは、クローニングのインビトロ法、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応が好ましい。
【0106】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、ポリペプチドコード化ベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシアは、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。他に、シゾサッカロミセス・プロンブ(Schizosaccharomyces Prombe)(Beach及びNurse, Nature, 290:140 [1981];1985年5月2日発行のEP139,383);クルベロミセス宿主(Kluveromyces hosts)(米国特許第4,943,529号;Fleer等, Bio/Technology, 9:968-975 (1991))、例えばクルベロミセスラクチス(K. lactis)(MW98-8C, CBS683, CBS4574;Louvencourt等, J. Bacteriol.154(2):737-742 [1983])、クルベロミセス・フラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、クルベロミセス・ブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC 16,045)、クルベロミセス・ウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24,178)、クルベロミセスワルチイ(K. waltii)(ATCC 56,500)、クルベロミセス・ドロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906;Van den Berg等, Bio/Technology, 8:135 (1990))、クルベロミセス・テモトレランス(K. thermotolerans)及びクルベロミセス・マルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(EP402,226);ピチア・パストリス(Pichia pastoris)(EP183,070;Sreekrishna等, J. Basic Microbiol, 28:265-278 [1988]);カンジダ;トリコデル・マレーシア(Trichoderma reesia)(EP244,234);アカパンカビ(Case等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5259-5263 [1979]);シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセスオクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(1990年10月31日発行のEP394,538);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)(1991年1月10日発行のWO91/00357);及びアスペルギルス宿主、例えばアスペルギルス・ニダランス(Balance等, Biochem. Biophys. Res. Commun., 112:284-289 [1983];Tilburn等, Gene, 26:205-221 [1983];Yelton等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:1470-1474 [1984])、及びアスペルギルス・ニガー(Kelly及びHynes, EMBO J., 4:475-479 [1985])が含まれる。ここで好ましいメチロトロピック(C1化合物資化性、Methylotropic)酵母は、これらに限られないが、ハンセヌラ(Hansenula)、カンジダ、クロエケラ(Kloeckera)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス、トルロプシス(Torulopsis)、及びロドトルラ(Rhodotorula)からなる属から選択されたメタノールで成長可能な酵母を含む。この酵母の分類の例示である特定の種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)に記載されている。
【0107】
グリコシル化ポリペプチドの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、ショウジョウバエS2及びスポドスペラSf9等の昆虫細胞並びに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCOS細胞を含む。より詳細な例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7,ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4,Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980))ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝細胞 (Hep G2,HB 8065);及びマウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562,ATCC CCL51)を含む。適切な宿主細胞の選択は、この分野の技術常識内にある。
【0108】
3.複製可能なベクターの選択及び使用
ポリペプチドをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)は、クローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で周知の技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一つ又は複数のシグナル配列、複製開始点、一つ又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一つ又は複数を含む適当なベクターの作製には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
ポリペプチドは直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列或いは成熟タンパク質或いはポリペプチドのN-末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入されるポリペプチド-コード化DNAの一部である。シグナル配列は、例えばアルカリフォスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp或いは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択された原核生物シグナル配列であってよい。酵母の分泌に関しては、シグナル配列は、酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(サッカロミセス(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含み、後者は米国特許第5010182号に記載されている)、又は酸ホスファターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行のEP362179)、又は1990年11月15日に公開された国際公開90/13646に記載されているシグナルであり得る。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳動物シグナル配列は、同一或いは関連ある種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダーのようなタンパク質の直接分泌に使用してもよい。
【0109】
発現及びクローニングベクターは、共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。そのような配列は多くの細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
発現及びクローニングベクターは、典型的には、選べるマーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート或いはテトラサイクリンのような抗生物質或いは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素、例えば桿菌のD-アラニンラセマーゼをコードしている遺伝子を供給するタンパク質をコードする。
【0110】
哺乳動物細胞に適切な選択マーカーの例は、DHFR或いはチミジンキナーゼのようにポリペプチド-コード化核酸を取り込むことのできる細胞成分の同定を可能にするものである。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaub等により Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)に記載されているように調製され増殖された、DHFR活性に欠陥のあるCHO細胞株である。酵母菌中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcomb等, Nature, 282:39 (1979);Kingsman等, Gene, 7:141 (1979);Tschemper等, Gene, 10:157 (1980)]。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076或いはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する[Jones, Genetics, 85:12 (1977)]。
発現及びクローニングベクターは、通常、ポリペプチドコード化核酸配列に作用可能に結合し、mRNA合成を制御するプロモーターを含む。種々の可能な宿主細胞により認識される好適なプロモーターが知られている。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターはβ-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系[Chang等, Nature, 275:615 (1978); Goeddel等, Nature, 281:544 (1979)]、アルカリフォスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系[Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776]、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーター[deBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)]を含む。細菌系で使用するプロモーターもまたポリペプチドをコードするDNAと作用可能に結合したシャイン-ダルガーノ(S.D.)配列を有する。
【0111】
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1987)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸フォスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモーターはEP73,657に更に記載されている。
【0112】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのTIGIT転写は、例えば、ポリオーマウイルス、伝染性上皮腫ウイルス(1989年7月5日公開のUK2211504)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及びサルウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
より高等の真核生物によるポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強され得る。エンハンサーは、通常は約10から300塩基対で、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、ポリペプチドコード配列の5’又は3’位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
【0113】
また、真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウイルスのDNA又はcDNAの通常は5’、時には3’の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、ポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
組換え脊椎動物細胞培養での対象のポリペプチドの合成に適応化するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981);Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979);EP117,060;及びEP117,058に記載されている。
【0114】
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここで提供された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来よりのサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法[Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980)]、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。或いは、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA-RNAハイブリッド二本鎖又はDNA-タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。次いで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
或いは、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば細胞又は組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の哺乳動物で調製することができる。簡便には、抗体は、天然配列ポリペプチドに対して、又はここで提供されるDNA配列をベースとした合成ペプチドに対して、又はポリペプチドをコードするDNAに融合し特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して調製され得る。
【0115】
5.ポリペプチドの精製
対象のポリペプチドの形態は、培地又は宿主細胞の溶菌液から回収することができる。膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断を用いて膜から引き離すことができる。ポリペプチドの発現に用いられる細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤などの種々の化学的又は物理的手段によって破壊することができる。
ポリペプチドを、組換え細胞タンパク又はポリペプチドから精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラム;及びポリペプチドのエピトープタグ形態を結合させる金属キレート化カラムである。この分野で知られ、例えば、Deutscher, Methodes in Enzymology, 182 (1990);Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, New York (1982)に記載された多くのタンパク質精製方法を用いることができる。選ばれる精製過程は、例えば、用いられる製造方法及び特に製造される特定のポリペプチドの性質に依存する。
【0116】
E.組織分布
本発明のポリペプチドを発現する組織の位置は、種々のヒト組織でのmRNA発現の測定により確認できる。そのような遺伝子の位置は、ポリペプチドの活性の刺激及び阻害によって最も影響を受けやすい組織に関する情報を提供する。また、特定の組織中の遺伝子の位置は、下記において論じる活性遮断/活性化アッセイのための試料組織を提供する。
上記したように、種々の組織における遺伝子増幅又は遺伝子発現は、mRNAの転写の定量化のための従来のサザンブロット、ノーザンブロット(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 [1980])、ドットブロット(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーションによって、ここに提供する配列に基づき、適切な標識プローブを用いて測定できる。或いは、DNA二重鎖、RNA二重鎖、及びDNA-RNAハイブリッド二重鎖又はDNA-タンパク質二重鎖を含む特定の二重鎖を認識する抗体を用いてもよい。
或いは、種々の組織における遺伝子発現は、遺伝子産物を直接定量化するための、組織断片及び細胞培地又は体液の免疫組織学的染色などの免疫的方法によっても測定できる。免疫組織学的染色又は試料液のアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、任意の動物から調製される。都合良く、抗体は、ポリペプチドの天然配列に対して、又はポリペプチドをコードするDNA配列に基づく合成ペプチドに対して、或いはポリペプチドをコードし、特異的抗体エピトープをコードするDNAと融合した外来配列に対して調製してもよい。下記に、抗体を生成するための一般的な技術、並びにノーザンブロット及びインサイツハイブリダイゼーションのプロトコールを提供する。
【0117】
F.抗体結合の研究
本発明のポリペプチドの活性は、組織細胞に対するポリペプチドの効果を阻害する抗ポリペプチド抗体の能力が試験される抗体結合の研究によって更に確認できる。例示的な抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性、及びへテロコンジュゲート抗体を含み、その調製は以下に記載する。
抗体結合の研究は、競合的結合アッセイ、直接及び間接サンドウィッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイなどの既知のアッセイ法で実施してよい。例としてZola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc., 1987)を参照。
競合的結合アッセイは、標識標準物の、限られた量の抗体との結合について試験分析物と競合する能力による。試験試料中の(腫瘍細胞で増幅された遺伝子にコードされる)標的タンパク質の量は、抗体に結合し始める標準物の量に逆比例する。結合し始める標準物の量の測定を促進するために、抗体は好ましくは競合の前又は後に固定化し、抗体に結合した標準品及び分析物が未結合で残っている標準物及び分析物から容易に分離できるようにする。
サンドウィッチアッセイは二つの抗体の使用を含み、各々が検出すべきタンパク質の異なる免疫原部分、又はエピトープに結合できる。サンドウィッチアッセイにおいて試験試料分析物は固体支持体上に固定化された第一の抗体に結合し、その後第二の抗体が分析物に結合し、よって不溶性の3成分複合体が形成される。例えば米国特許第4376110号参照。第二の抗体は検出可能部分で標識され(直接サンドウィッチアッセイ)、或いは検出可能部分で標識された抗免疫グロブリン抗体を用いて測定してもよい(間接サンドウィッチアッセイ)。例えば、サンドウィッチアッセイの一形態はELISAアッセイであり、この場合の検出可能部分は酵素である。
免疫組織学のためには、腫瘍試料は新鮮でも凍結したものでもよく、パラフィンに包埋して、例えばホルマリン等の保存剤で固定してもよい。
【0118】
G.細胞ベースアッセイ
細胞ベースアッセイ及び乾癬等の免疫関連疾患の動物モデルを、ここで同定された遺伝子とポリペプチド、並びに乾癬の発達と病原性との関係を更に理解するのに用いることができる。
異なる方法では、免疫関連疾患に関与することが知られている或る細胞型の細胞へここに記載されたcDNAを形質移入し、これらのcDNAの免疫関連疾患を刺激又は阻害する能力を分析する。適当な細胞は所望の遺伝子で形質移入し、そしてそのような機能活性をモニターすることができる。このような形質移入された細胞株は、乾癬を阻害又は刺激するポリ−又はモノクローナル抗体又は抗体組成物の能力を試験するのに用いることができる。ここに同定した遺伝子のコード化配列で形質移入した細胞は、更に、免疫関連疾患の治療の候補薬の同定に用いることができる。
更には、当分野では安定な細胞株がより一般的に用いられるが、トランスジェニック動物から誘導された一次培地を(下記のような)、ここでの細胞ベースアッセイに使用することができる。トランスジェニック動物から連続細胞株を誘導する技術は、この分野で良く知られている(Small等, Mol. Cell. Biol. 5, 642-648 [1985]参照)。
【0119】
一つの適切な細胞ベースアッセイは、混合リンパ球反応(MLR)である。Current Protocols in Immunology, unit3.12;J E Coligan, A M Kruisbeek, D H Marglies, E M Shevach, W Strober編, 国立衛生研究所, John Wiley & Sons, Inc。このアッセイでは、活性T細胞の増殖を刺激又は阻害する試験化合物の能力が評価される。レスポンダーT細胞の懸濁液を同種刺激細胞と培養し、T細胞の増殖をトリチウム化チミジンの取り込みによって測定する。このアッセイは、T細胞反応性の一般的な測定法である。活性化によって、T細胞の大多数がIL-2へ応答し、IL-2を生産することから、このアッセイでの応答性の相違の一部は、応答細胞によるIL-2生産の違いを反映する。MLRの結果は、標準的なリンフォカイン(IL-2)検出アッセイによって確かめられる。Current Protocols in Immunology, 上掲, 3.15,6.3。
MLRアッセイにおける増殖性のT細胞応答は、アッセイされた分子の直接的な分裂促進特性又は外来性の抗原誘導活性化に起因する。また、共刺激アッセイによりポリペプチドのT細胞刺激活性が検証されうる。T細胞活性化には、T細胞レセプター(TCR)を通して媒介される抗原特異性シグナルと二番目のリガンド結合による相互作用を通して媒介される同時刺激シグナル、例えばB7(CD80,CD86)/CD28結合相互作用が必要される。CD28架橋は、活性化T細胞によるリンフォカインの分泌を増加させる。T細胞活性化は、ネガティブ又はポジティブ効果のあるリガンド結合を通して、ネガティブ及びポジティブコントロールの両方を有する。CD28及びCTLA-4はB7と結合するIgスーパーファミリーの関連する糖タンパク質である。B7へのCD28の結合には、T細胞活性化のポジティブ同時刺激効果がある;逆を言えば、B7へのCTLA-4の結合には、T細胞非活性化効果がある。Chambers, C.A.及びAllison, J.P., Curr. Opin. Immunol.(1997) 9:396;Schwartz, R.H., Cell(1992) 71: 1065;Linsey, P.S.及びLedbetter, J.A., Annu. Rev. Immunol.(1993) 11:191;June, C.H.ら., Immunol. Today(1994) 15:321;Jenkins, M.K., Immunity(1994) 1:405。同時刺激アッセイでは、T細胞同時刺激性又は阻害活性についてポリペプチドをアッセイする。
【0120】
本発明におけるような刺激化合物の直接的用途は、初期T細胞上に発現するリガンド(4-1BBL)と結合し、T細胞活性化と成長の信号を伝達する、腫瘍壊死因子レセプターファミリーのメンバーである4-1BB糖タンパク質をともなう実験において確かめられている。Alderson, M.E.ら., J. Immunol. (1994) 24:2219。
アゴニスト刺激性化合物の用途も実験的に確かめられている。一例として、アゴニスト抗-4-1BB抗体による治療での4-1BBの活性化は、腫瘍の根絶を促進する。Hellstrom, I.及びHellstrom, K.E., Crit. Rev. Immunol. (1998) 18:1。下記により詳しく記載されている免疫吸着剤療法による腫瘍の治療は、本発明の刺激性化合物の用途のもう一つの例である。
あるいは、免疫刺激又は増強効果は、また、血管透過性を高める特性を有するポリペプチドの投与によって達成することができる。高まった血管透過性は、免疫細胞(例えば、単球、好酸球、PMN)の局所的な浸潤によって和らげることが可能な疾患に対して有益である。
【0121】
一方では、T細胞増殖/活性化、炎症誘発性サイトカイン分泌、及び/又は血管透過性の直接的阻害剤である本発明の他の化合物と同様にTIGITポリペプチドは、免疫応答を抑制へ直接に用いることができる。これらの化合物は、免疫応答の程度を減じること、並びに異常に活発な、並外れに最適な、又は自己免疫性の応答によって特徴付けられる免疫関連疾患を治療するのに有用である。本発明のこの化合物の用途は、レセプターB7へのCTLA-4の結合がT細胞を不活性化させる上記に記載の実験によって確認されている。本発明の直接的阻害性化合物は、類似の方法で機能する。血管透過性を抑制する化合物の用途は、炎症を減じることが期待できる。そのような用途は、過度の炎症に関連する症状を治療するのに有益である。
同様に、例えば、本発明のTIGIT阻害性ポリペプチドと結合し、TIGIT阻害性ポリペプチドの効果を遮断する抗体は、正味の阻害性効果を生成し、T細胞増殖/活性化及び/又はリンフォカイン分泌を阻害するためにTIGITを遊離することによってT細胞性免疫応答を抑制することにも用いることができる。このポリペプチドの阻害性効果を遮断することにより、哺乳動物の免疫応答が抑制される。
あるいは、不十分なT細胞媒介免疫応答および/または炎症と関係している状態のために、TIGITの活性および/または発現を阻害することまたは少なくすること、またはPVRに結合しておよび/またはPVRによりシグナルを送るTIGITの能力に干渉することは、治療に有益である。このような阻害又は少なくすることは、TIGITの発現および/または活性のアンタゴニストおよび/またはPVRの発現および/または活性のアンタゴニストの投与によって提供されうる。
【0122】
H.動物モデル
更に、インビトロにおける細胞ベースアッセイの結果は、インビボ動物モデル及びT細胞機能のアッセイにより証明することができる。免疫関連疾患の進行及び病因におけるここに同定される遺伝子の役割を更に理解するために、そして抗体、及び小分子アンタゴニストを含む天然ポリペプチドの他のアゴニストを含む候補治療薬の有効性を試験するために、種々の良く知られた動物モデルが使用できる。これらのモデルのインビボ性質により、ヒト患者における反応を予測できる。免疫関連疾患の動物モデルは、非組換え及び組換え(トランスジェニック)動物の両方を含む。非組換え動物モデルは、例えば、齧歯類、例えばマウスモデルを含む。このようなモデルは、標準的な技術、例えば、皮下注射、尾部静脈注射、脾臓移植、腹膜内移植、腎被膜下移植等により、細胞を同系マウスに導入することにより作製される。
移植片対宿主病は、免疫適格細胞が免疫抑制され又は耐性のある患者に移植された場合に生じる。ドナー細胞は宿主抗原を認識しそれに反応する。反応は生命に危険性のある重度の炎症から、下痢や体重の減少等の軽度のケースまで多様である。移植片対宿主病モデルはMHC抗原及び少量の移植抗原に対するT細胞反応性を評価する手段を提供する。適切な手順は上記のCurrent protocols in Immunology, unit4.3.に詳細に記載されている。
皮膚同種移植片拒絶のための動物モデルは、T細胞がインビボで組織の破壊を媒介する能力を試験する手段であり、移植拒絶におけるそれらの役割の指標である。最も一般的で容認されているモデルではマウスの尾の皮膚の移植片が使用される。繰り返し実験により、皮膚同種移植片拒絶がT細胞、ヘルパーT細胞及びキラー-エフェクターT細胞により媒介されるが、抗体では媒介されないことが分かった。Auchincloss, H. Jr.及びSachs, D.H., Fundamental Immunology, 2nd ed., W.E.Paul ed., Raven Press, NY, 1989, 889-992。適切な手順は上掲のCurrent protocols in Immunology, unit4.4.に詳細に記載されている。本発明の化合物の試験に使用可能な他の移植拒絶モデルは、Tanabe, M.等, Transplantation (1994) 58:23及びTinubu, S.A.等, J. Immunol. (1994) 4330-4338により記載されている同種心臓移植片モデルである。
【0123】
遅延型過敏症の動物モデルは、同様に細胞媒介免疫機能のアッセイ法を提供する。詳細な型の過敏症反応は、抗原負荷後時間が経過するまでピークに達しない炎症を特徴とするT細胞媒介免疫反応である。これらの反応はまた、組織特異的自己免疫疾患、例えば多発性硬化症(MS)及び実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE、MSのモデル)を起こす。好適な手法は、上記のCurrent Protocols in Immunology, unit 4.5に詳細に記載されている。
EAEは、T細胞及び単核球炎症、及びその結果生じた中枢神経系の軸索の脱髄によって特徴付けられるT細胞性自己免疫疾患である。EAEは、一般的には、ヒトのMSの関連する動物モデルであると考えられる。Bolton, C., Multiple Sclerosis(1995) 1: 143。急性及び再発性軽減モデルの両方が開発されている。Current Protocols in Immunology, unit 15.1及び15.2に記載のプロトコールを用いて、本発明の化合物は、免疫性脱髄疾患に対するT細胞刺激性又は阻害性活性について試験することができる。Duncan, I.D.ら, Molec. Med. Today(1997) 554-561に記載されている、オリゴデンドログリア又はシュワン細胞が中枢神経系へ移植されるミエリン疾患のモデルも参照のこと。
【0124】
接触性過敏症は、細胞媒介免疫機能の単純な遅発型過敏インビボアッセイである。この手順において、遅発型過敏反応を生じさせる外因性ハプテンに皮膚を暴露し、反応を測定して定量する。接触過敏症は最初の感作段階に顕在化段階が続く。顕在化段階はTリンパ球が過去に接触したことのある抗原に遭遇したときに生じる。腫れと炎症が生じ、ヒトアレルギー性接触皮膚炎の優れたモデルが作製される。適切な手順は、Current protocols in Immunology, J.E. Coligan, A.M.Kruisbeek, D.H.Marglies, E. M.Shevach, 及びW.Strober編, John Wiley & Sons, Inc, unit4.2に詳細に記載されている。また、Grabbe, S.及びSchwarz, T. Immun. Today 19(1):37-44(1998)も参照のこと。
関節炎の動物モデルはコラーゲン誘発関節炎である。このモデルは、ヒトの自己免疫性慢性関節リウマチと臨床的、組織学的及び免疫学的特徴を共有し、ヒトの自己免疫性関節炎の許容されるモデルである。マウス及びラットモデルは、滑膜炎、軟骨及び肋軟骨下骨の浸食を特徴とする。本発明の化合物は、上記のCurrent Protocols in Immunology, unit 15.5に記載されているプロトコールを用いて、自己免疫性関節炎に対する活性について試験できる。また、Issekutz, A.C.ら, Immunology 88: 569 (1996)に記載されているCD18及びVLA-4インテグリンに対するモノクローナル抗体を用いたモデルも参照のこと。
【0125】
コラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルは、ヒト関節リウマチ(RA)に対する多くの免疫学的及び病理学的な類似性、局所的腫瘍組織適合性の関与、完全クラスII限局性Tヘルパーリンパ球活性化及び組織病変の類似性があるので、ヒト関節炎における候補薬剤又は生物活性を研究するための好適なモデルであるとされている。RA患者に見られる特徴と類似するこのCIAモデルの特徴には、関節領域の軟骨及び骨の浸食(X線像に見られる)、増殖性滑膜炎、軸や骨格ではなく付属器官(四肢)の小及び中型の末梢関節の対称的な併発が含まれる。Jamieson et al., Invest.Radiol. 20: 324-9 (1985)。さらに、IL-1およびTN-αはRAのようにCIAにおいて関連しているようである。Joosten et al., J. Immunol. 163: 5049-5055 (1999)。TNF-中和抗体及びTNFR:FcはそれぞれこのモデルのRAの症状を低減した(Williams et al., PNAS, 89:9784-9788 (1992);Wooley et al., J. Immunol.151: 6602-6607 (1993))。
RAのこのモデルにおいて、タイプIIコラーゲンは、ウシ関節軟骨から精製され(Miller, Biochemistry 11:4903 (1972))、免疫マウスに用いられる(Williams et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:2762 (1994))。関節炎の症状には、組織学によって決定されるように、四肢の紅斑および/または腫脹並びに軟骨及び骨の浸食又は欠損が含まれる。この広く用いられるモデルは、例としてHolmdahl et al., APMIS 97:575 (1989)、そして、Current Protocols in Immunology, supra, units 15.5、そして、Issekutz et al., Immunology, 88:569 (1996)、並びに本明細書中の以降の実施例にも記載される。
【0126】
喘息のモデルは記載され、そこでは抗原誘発気道過剰反応性、肺性好酸球増加症及び炎症が、動物をオボアルブミンで感作し、次いで動物にエアロゾルで運ばれる同じタンパク質を負荷することにより誘発される。幾つかの動物モデル(モルモット、ラット、非ヒト霊長類)は、エアロゾル抗原で負荷した際にヒトのアトピー性喘息に似た徴候を示す。マウスモデルは、ヒト喘息の多くの特徴を持つ。本発明の化合物の喘息治療における活性及び有効性を試験するための好適な方法は、Wolyniec, W.W.ら, Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., 18: 777(1998) 及びその引用文献に記載されている。
【0127】
更に、本発明の化合物は乾癬様疾患の動物モデルにおいて試験することができる。ある証拠によりT細胞が乾癬の病原であることが示唆されている。本発明の化合物は、Schon. M.P.等, Nat. Med. (1997) 3:183により記載されているscid/scidマウスモデルにおいて試験することができ、そのモデルではマウスは乾癬に類似した組織病理学的皮膚病巣を示す。他の適切なモデルはNickoloff, B.J.等, Am. J. Path. (1995) 146:580に記載されているようにして調製されたヒトskin/scidマウスキメラである。
組換え(トランスジェニック)動物モデルは、ここに同定された遺伝子のコード部分を、トランスジェニック動物作製のための標準的技術を用いて、対象とする動物のゲノムに導入することにより加工できる。トランスジェニック操作の標的として提供できる動物は、限定されないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、及び非-ヒト霊長類、例えばヒヒ、チンパンジー及びサルを含む。これらの動物に導入遺伝子を導入するのにこの分野で知られた技術は、全核マイクロインジェクション(Hoppe及びWanger, 米国特許第4,873,191号);胚系列へのレトロウイルス媒介遺伝子転移(例えば、Van der Putten等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82, 6148-615 [1985]);胚性肝細胞での遺伝子標的化(Thompson等, Cell 56, 313-321 [1989]);胚のエレクトロポレーション(Lo, Mol. Cel. Biol. 3, 1803-1814 [1983]);精子媒介遺伝子転移(Lavitrano等, Cell 57, 717-73 [1989])を含む。概説としては、例えば、米国特許第4,736,866号を参照のこと。
本発明の目的のために、トランスジェニック動物は、その一部にのみ導入遺伝子を有するもの(「モザイク動物」)を含む。導入遺伝子は、単一の導入遺伝子として、又はコンカテマー、例えば頭部と頭部又は頭部と尾部の直列型として組み込まれる。特定の細胞型への導入遺伝子の選択的導入も、例えばLasko等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 6232-636 (1992)の技術に従って可能である。
【0128】
トランスジェニック動物における導入遺伝子の発現は、標準的技術によってモニターできる。例えば、導入遺伝子の組み込みの確認にサザンブロット分析又はPCR増幅が用いられる。次いで、mRNA発現のレベルは、インサイツハイブリダイゼーション、ノーザンブロット分析、PCR、又は免疫組織化学などの技術を用いて分析できる。
例えば免疫細胞の特定の細胞への浸潤を確定するための組織学的検査によって、免疫疾患病理の兆候に関してこの動物を更に調べてもよい。本発明の化合物によるT細胞増殖の刺激又は阻害の程度を確定するために、この化合物で処理したトランスジェニック動物で遮断実験をも行うことができる。これらの実験では、上記に記載のようにして調製した本発明のポリペプチドと結合する遮断抗体が動物へ投与され、そして免疫機能への影響が測定される。
【0129】
或いは、「ノックアウト」動物は、ここで同定されたポリペプチドをコードする内在性の遺伝子と、動物の胚性細胞へ導入されたそのポリペプチドをコードする改変ゲノムDNAとの間の相同組換えの結果として、ここで同定されたポリペプチドをコードする欠陥又は改変遺伝子を有するものとして構築することができる。例えば、ある特定ポリペプチドをコードするcDNAは、確立されている技術によって、そのポリペプチドをコードするゲノムDNAのクローニングに利用できる。ある特定のポリペプチドをコードするゲノムDNAの一部は、その他の遺伝子、例えば組み込みをモニターするために利用できる選択可能なマーカーをコードする遺伝子によって置き換え又は除去できる。概して、ベクターは無変化のフランキングDNA(5'と3'末端の両方)を数キロベース含む[例えば、相同的組換えベクターについてはThomas及びCapecchi, Cell, 51:503 (1987)を参照のこと]。ベクターを胚性幹細胞へ(例えば電気穿孔法等によって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に組換えられた細胞を選択する[例えば、Li等, Cell, 69:915 (1992)参照]。選択された細胞は次に動物(例えばマウス又はラット)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する[例えば、Bradley, Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照]。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、期間をおいて「ノックアウト」動物をつくり出す。胚細胞に相同的に組換えられたDNAを有する子孫は標準的な技術により同定され、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は、例えば腫瘍の発達を含む、ポリペプチドが不在であることによるある種の病理的状態及びその病理的状態の発達に対する防御能力によって特徴付けられる。
【0130】
I.免疫アジュバント治療
一実施態様では、本発明の免疫刺激化合物は腫瘍(癌)治療における免疫アジュバント治療に使用することができる。T細胞がヒト腫瘍特異的抗原を認識することは十分に確立されている。遺伝子のMAGE、BAGE及びGAGEファミリーによりコードされる腫瘍抗原の一グループは全ての成人の正常組織においてサイレントであるが、腫瘍、例えばメラノーマ、肺腫瘍、頭部及び頸部の腫瘍、膀胱癌においては有意の量で発現している。DeSmet. C.等, (1996) Proc. Natl. Acad. Sci.93:7149。T細胞の共刺激により、インビトロ及びインビボの双方において、腫瘍の退行及び抗腫瘍反応が誘発されることが示されている。Melero. I.等, Nature Medicine (1997) 3:682;Kwon. E.D.等, Proc. Natl. Acad. Sci.USA (1997) 94:8099;Lynch. D.H.等, Nature Medicine (1997) 3:625;Finn. O.J.及びLotze. M.T., J. Immunol. (1998) 21:114。本明細書中で示すデータは、TIGIT発現が乳癌腫瘍の免疫細胞浸潤と相関していることを示す。また、TIGITは本明細書中で、DC及び他の免疫細胞の増殖を阻害すること、そしてこれら細胞からの炎症誘発性サイトカイン産生を阻害することが示される。よって、腫瘍でのT細胞活性の減少は望ましくないので、腫瘍免疫浸潤細胞におけるTIGITの発現は異常でありうる。TIGITアンタゴニスト及び/又はTIGIT−PVRシグナル相互作用のアンタゴニスト(すなわちPVRアンタゴニスト)はアジュバントとして単独で又は成長調節剤、細胞障害性薬又は化学療法剤と共に投与することができ、T細胞増殖/活性化及び腫瘍抗原に対する抗腫瘍反応を刺激する。成長調節剤、細胞障害性薬又は化学療法剤は既知の投与方法で使用されている従来からの量で投与することができる。本発明のTIGITアンタゴニスト性及びTIGIT活性アンタゴニスト性の化合物による免疫刺激活性により、成長調節剤、細胞障害性薬又は化学療法剤の量を減らすことができ、よって、潜在的に患者に対する毒性を低下させることができる。
【0131】
J.候補薬ためのスクリーニングアッセイ
候補薬のスクリーニングアッセイは、ここで同定された遺伝子によってコードされているポリペプチド、或いはその生物活性断片と結合又は複合化する化合物、或いはそうでなければコードされているポリペプチドと他の細胞性タンパク質の相互作用を妨害する化合物を同定するように設計されている。このようなスクリーニングアッセイは、化学的ライブラリの高スループットスクリーニングに従うアッセイを含み、特に、小分子候補薬の同定に適している。考えられる小分子には、ペプチド、好ましくは可溶性ペプチド、(ポリ)ペプチド-免疫グロブリン融合物を含む合成有機又は無機化合物を含み、そして特に限定することなく、ヒト抗体及び抗体断片と並んで、ポリ-及びモノクローナル抗体及び抗体断片、一本鎖抗体、抗イディオタイプ抗体、及びそのような抗体又は断片のキメラ又はヒト化異形を含む抗体を含む。このアッセイは、この分野で良く特徴付けられているタンパク質−タンパク質結合アッセイ、生物学的スクリーニングアッセイ、免疫検定及び細胞ベースのアッセイを含む種々の型式で実施される。すべてのアッセイは、候補薬とここで同定された核酸によってコードされているポリペプチドの相互作用を可能にする条件下及び十分な時間に渡って、これら二つの分子を接触させることを必要とするという点で共通である。
結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、形成された複合体は単離されるか、或いは反応混合物中で検出することができる。特別な実施態様では、ここに同定された遺伝子にコードされるポリペプチド又は候補薬が、共有又は非共有結合により固相、例えばマイクロタイタープレートに固定化される。非共有結合は、一般的に固体表面をポリペプチドの溶液で被覆し乾燥させることにより達成される。或いは、固定化すべきペプチドに特異的な固定化抗体、例えばモノクローナル抗体を、そのペプチドを固体表面に固着させるために用いることができる。アッセイは、固定化成分、例えば固着成分を含む被覆表面に、検出可能な標識で標識されていてもよい非固定化成分を添加することにより実施される。反応が完了したとき、未反応成分を例えば洗浄により除去し、固体表面に固着した複合体を検出する。最初の非固定化成分が検出可能な標識を有している場合、表面に固定化された標識の検出は複合体形成が起こったことを示す。最初の非固定化成分が標識を持たない場合は、複合体形成は、例えば、固定化された複合体に特異的に結合する標識抗体によって検出できる。
【0132】
候補化合物が相互作用するが特定のタンパク質に結合しない場合、そのレセプターとの相互作用は、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するために良く知られた方法によってアッセイすることができる。そのようなアッセイは、架橋、同時免疫沈降、及び勾配又はクロマトグラフィーカラムを通す同時精製などの伝統的な手法を含む。更に、タンパク質−タンパク質相互作用は、Fields及び共同研究者等[Fiels及びSong, Nature(London) 340, 245-246 (1989);Chien等, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 88, 9578-9582 (1991)]に記載された酵母菌ベースの遺伝子系を用いることにより、Chevray及びNathans[Proc.Natl. Acad. Sci. USA 89, 5789-5793 (1991)]に開示されているようにモニターすることができる。酵母菌GAL4などの多くの転写活性化剤は、二つの物理的に別個のモジュラードメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、他方は転写活性化ドメインとして機能する。以前の文献に記載された酵母菌発現系(一般に「ツーハイブリッド系」と呼ばれる)は、この特性の長所を利用して、二つのハイブリッドタンパク質を用い、一方では標的タンパク質がGAL4のDNA結合ドメインに融合し、他方では、候補となる活性化タンパク質が活性化ドメインに融合している。GAL1-lacZリポーター遺伝子のGAL4活性化プロモーターの制御下での発現は、タンパク質-タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含むコロニーは、β-ガラクトシダーゼに対する色素生産性物質で検出される。ツーハイブリッド技術を用いた二つの特定なタンパク質間のタンパク質-タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER(商品名))は、Clontechから商業的に入手可能である。この系は、特定のタンパク質相互作用に含まれるタンパク質ドメインのマッピング、並びにこの相互作用にとって重要なアミノ酸残基の特定にも拡張することができる。
ここで同定された遺伝子の相互作用を妨害する化合物と、試験が可能な他の細胞内又は細胞外成分を見出すために、二つの産物の相互作用と結合を可能にする条件と時間の下で、遺伝子の生産物、並びに細胞内又は細胞外成分を含有するように、反応混合物は、通常は調製される。試験化合物の結合を阻害する能力を試験するためには、反応を試験化合物が存在する場合と存在しない場合で実施する。更に、第三の反応混合物へプラシーボを添加してポジティブコントロールとしてもよい。コントロール反応において複合体の形成があり、試験化合物を含有しない反応混合物では複合体の形成がないことは、試験化合物が、試験化合物とその反応パートナーとの相互作用を妨害することを示す。
【0133】
K.免疫関連疾患の治療のための組成物及び方法
免疫関連疾患の治療に有用な組成物は、限定されないが、タンパク質、抗体、小有機分子、ペプチド、ホスホペプチド、アンチセンス及びリボザイム分子、三重螺旋分子などを含み、免疫機能、例えばT細胞増殖/活性化、リンホカイン放出、又は免疫細胞の浸潤を阻害する。
例えば、アンチセンスRNA及びRNA分子は、標的mRNAにハイブリダイゼーションしてタンパク質翻訳を防止することによりmRNAの翻訳を直接阻止する。アンチセンスDNAが用いられる場合、翻訳開始部位、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の−10から+10位置の間から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒できる酵素的RNA分子である。リボザイムは、相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、次いでヌクレオチド鎖切断的切断により作用する。潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、既知の技術で同定できる。更なる詳細は、例えば、Rossi, Current Biology 4:469-471 (1994)及びPCT公報番号WO97/33551(1997年9月18日公開)を参照。
転写阻害に用いられる三重螺旋形成における核酸分子は一本鎖でデオキシヌクレオチドからなる。これらのオリゴヌクレオチドの基本組成は、フーグスチン塩基対則を介する三重螺旋形成を促進するように設計され、それは一般に二重鎖の一方の鎖上のプリン又はピリミジンのサイズ変更可能な伸展を必要とする。更なる詳細は、例えば、PCT公報番号WO97/33551, 上掲を参照。
これらの分子は上記のスクリーニングアッセイの任意のもの又は任意の組み合わせにより、又は当業者に知られた他のスクリーニング技術により同定できる。
【0134】
L.抗TIGIT抗体
本発明は、更に抗TIGIT抗体を提供するものである。抗体の例としては、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異性及びヘテロコンジュゲート抗体が含まれる。当業者は、本発明が他のポリペプチドに対する抗体(すなわち、抗PVR抗体)を提供すること、そして、抗TIGIT抗体の製造、産生、種類、使用の方法又は他の態様についての本明細書中の具体的な記載は他のTIGIT以外のポリペプチドに特異的な抗体にも適用されうることを理解するであろう。
【0135】
1.ポリクローナル抗体
抗TIGIT抗体はポリクローナル抗体を含む。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に知られている。哺乳動物においてポリクローナル抗体は、例えば免疫剤、及び所望するのであればアジュバントを、一又は複数回注射することで発生させることができる。典型的には、免疫剤及び/又はアジュバントを複数回皮下又は腹腔内注射により、哺乳動物に注射する。免疫剤は、TIGITポリペプチド又はその融合タンパク質を含みうる。免疫剤を免疫化された哺乳動物において免疫原性が知られているタンパク質に抱合させるのが有用である。このような免疫原タンパク質の例は、これらに限られないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン及び大豆トリプシンインヒビターが含まれる。使用され得るアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコラート)が含まれる。免疫化プロトコールは、過度の実験なく当業者により選択されるであろう。
【0136】
2.モノクローナル抗体
或いは、抗TIGIT抗体はモノクローナル抗体であってもよい。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein, Nature, 256:495 (1975)に記載されているようなハイブリドーマ法を使用することで調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物を典型的には免疫剤により免疫化することで、免疫剤に特異的に結合する抗体を生成するか或いは生成可能なリンパ球を誘発する。或いは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。
免疫剤は、典型的には対象とするTIGITポリペプチド又はその融合タンパク質を含む。一般にヒト由来の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、或いは非ヒト哺乳動物源が望まれている場合は、脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を不死化細胞株と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する[Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103]。不死化細胞株は、通常は、形質転換した哺乳動物細胞、特に齧歯動物、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞である。通常、ラット又はマウスの骨髄腫細胞株が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、未融合の不死化細胞の生存又は成長を阻害する一又は複数の物質を含有する適切な培地で培養される。例えば、親細胞が、酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は、典型的には、ヒポキサチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(「HAT培地」)、この物質がHGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止する。
【0137】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体発現を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である。より好ましい不死化細胞株はマウス骨髄腫株であり、これは例えばカリフォルニア州サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerやメリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションより入手可能である。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株も開示されている[Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63]。
次いでハイブリドーマ細胞が培養される培養培地を、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって測定する。このような技術及びアッセイは、当該分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson及びPollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード解析法によって測定することができる。
【0138】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる[Goding, 上掲]。この目的のための適当な培地には、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地及びRPMI-1640倍地が含まれる。或いは、ハイブリドーマ細胞は哺乳動物においてインビボで腹水として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA−セファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培養培地又は腹水液から単離又は精製される。
【0139】
また、モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載された方法により作製することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常套的な方法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)、容易に単離し配列決定することができる。本発明のハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、これが宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、或いは免疫グロブリンタンパク質を生成等しない骨髄腫細胞内に形質移入され、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成をすることができる。また、DNAは、例えば相同マウス配列に換えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより[米国特許第4,816,567号;Morrison等, 上掲]、又は免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することにより修飾することができる。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換でき、或いは本発明の抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインに置換でき、キメラ性二価抗体を生成する。
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は当該分野においてよく知られている。例えば、一つの方法は免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は一般的に、重鎖の架橋を防止するようにFc領域の任意の点で切断される。或いは、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか欠失させて架橋を防止する。
一価抗体の調製には、同じくインビトロ法が適している。抗体の消化による、その断片、特にFab断片の生成は、当該分野において知られている慣用的技術を使用して達成が可能である。
【0140】
3.ヒト及びヒト化抗体
本発明の抗TIGIT抗体は、更にヒト化抗体又はヒト抗体を含む。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖或いはその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)
2或いは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全て或いはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全て或いはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる[Jones等, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature, 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一つ又は複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりウィンター(Winter)及び共同研究者[Jonesら, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmannら, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyenら, Science, 239:1534-1536 (1988)]の方法に従って、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。よって、このような「ヒト化」抗体は、原型のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0141】
また、ヒト抗体は、ファージ表示ライブラリ[Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381(1991);Marks等, J. Mol. Biol., 222:381 (1991)]を含むこの分野で知られた種々の方法を用いて作製することもできる。また、Cole等及びBoerner等の方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる[Cole等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss. p.77 (1985)及びBoerner等, J. Immunol., 147(1):86-95 (1991) ]。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子は部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することにより産生することができる。投与の際に、遺伝子再配列、組立、及び抗体レパートリーを含むあらゆる観点においてヒトに見られるものに非常に類似しているヒト抗体の生産が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、及び次の科学文献:Marks等, Bio/Technology 10, 779-783 (1992);Lonberg等, Nature 368 856-859 (1994);Morrison, Nature 368, 812-13 (1994);Fishwild等, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);Lonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
また、抗体は、上記に記載のような既知の選択及び/又は突然変異誘発法を利用して親和的に成熟している。好ましい親和性成熟抗体は、5倍、より好ましくは10倍、更により好ましくは20又は30倍も成熟抗体の調製の元である出発抗体(一般的には、マウス、ヒト化又はヒト)より高い親和性を有する。
【0142】
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトもしくはヒト化抗体である。本発明の場合においては、結合特異性の一方はTIGITに対してであり、他方は任意の他の抗原、好ましくは細胞表面タンパク質又はレセプター又はレセプターサブユニットに対してである。
二重特異性抗体を作製する方法は当該技術分野において周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく[Milstein及びCuello, Nature, 305:537-539 (1983)]。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内の一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常達成される。同様の手順が1993年5月13日公開の国際公開93/08829、及びTraunecker等, EMBO J.,10:3655-3656 (1991)に開示されている。
【0143】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。二重特異性抗体を作製するための更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
国際公開96/27011に記載された他の方法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収される異種二量体の割合を最大にすることができる。好適な界面は抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第二の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0144】
二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)として調製できる。抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science, 229:81 (1985) は原型の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab’)
2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab’断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab’-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab’-チオールに再転換し、他のFab’-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
大腸菌からFab’フラグメントを直接回収でき、これは化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalaby等, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)
2分子の製造を記述している。各Fab’フラグメントは大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学共役を受けて二重特異性抗体を形成する。このようにして形成された二重特異性抗体は、正常なヒトT細胞及びErbB2レセプターを過剰発現する細胞に結合可能で、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の細胞溶解活性の誘因となる。
【0145】
また、組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作製し分離する様々な方法が記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生産されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab’部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生産に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作製する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の二つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V
L)に重鎖可変ドメイン(V
H)を結合してなる。従って、一つの断片のV
H及びV
Lドメインは他の断片の相補的V
L及びV
Hドメインと強制的に対形成させられ、二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。非限定的な例として、三重特異性抗体を調製することができる。例としてTutt等, J.Immunol. 147:60 (1991)を参照。
例示的な二重特異性抗体は、ここに与えられたTIGITポリペプチドの二つの異なるエピトープに結合しうる。或いは、抗TIGITポリペプチドのアームは、特定のTIGITポリペプチド発現細胞に細胞防御メカニズムを集中させるように、T細胞レセプター分子(例えばCD2、CD3、CD28、又はB7)等の白血球上のトリガー分子又はFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプターに結合するアームと結合しうる。また、二重特異性抗体は特定のTIGITポリペプチドを発現する細胞に細胞障害性薬を局在化させるためにも使用されうる。これらの抗体はTIGIT結合アーム及び細胞障害性薬又は放射性キレート化剤、例えばEOTUBE、DPTA、DOTA、又はTETAと結合するアームを有する。興味の対象となる他の二重特異性抗体はTIGITポリペプチドを結合し、そして更に組織因子(TF)に結合する。
【0146】
5.ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体もまた本発明の範囲に入る。ヘテロコンジュゲート抗体は、二つの共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため[米国特許第4676980号]及びHIV感染の治療のために[国際公開91/00360;国際公開92/200373;欧州特許03089]提案されている。この抗体は、架橋剤に関連したものを含む合成タンパク化学における既知の方法を使用して、インビトロで調製することができると考えられる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用するか又はチオエーテル結合を形成することにより、免疫毒素を作製することができる。この目的に対して好適な試薬の例には、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチリミデート、及び例えば米国特許第4676980号に開示されたものが含まれる。
【0147】
6.エフェクター機能の加工
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えば癌治療における抗体の有効性を向上させることが望ましい。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、向上した内部移行能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体−依存性細胞性細胞障害性(ADCC)を有する可能性がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体は、Wolff等, Cancer research 53: 2560-2565 (1993)に記載されている異種二官能性架橋を用いて調製することができる。或いは、抗体は、二つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
【0148】
7.イムノコンジュゲート
また、本発明は、化学療法剤、毒素(例えば、細菌、糸状菌、植物又は動物由来の酵素活性性毒素ないしその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの細胞障害性剤にコンジュゲートした抗体を含む、免疫コンジュゲートに関連する。
また、本発明は、化学療法剤、薬剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒、細菌、糸状菌、植物又は動物由来の酵素活性性毒素ないしその断片)、又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)などの一又は複数の細胞毒性剤にコンジュゲートした抗体を含む、免疫コンジュゲート(「抗体−薬剤コンジュゲート」又は「ADC」と交換可能に称される)を提供する。
【0149】
免疫コンジュゲートは、細胞障害性剤、すなわち癌治療における細胞を殺す又は増殖ないし成長を阻害するための薬剤の局部運搬に有用である(Lambert, J. (2005) Curr. Opinion in Pharmacology 5:543-549;Wu et al (2005) Nature Biotechnology 23(9): 1137-1146;Payne, G. (2003) i 3:207-212;Syrigos and Epenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614;Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drug Deliv. Rev. 26: 151-172;米国特許第4975278号)。イムノコンジュゲートは、腫瘍への薬剤成分の標的とする運搬とそこでの細胞内集積が可能となるものであり、この非コンジュゲート薬剤の全身投与により除去しようとする腫瘍細胞だけでなく正常細胞への毒性が容認できないレベルとなりうる(Baldwin等, (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986):603-05; Thorpe, (1985) 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,」 in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, A. Pincheraら. (ed.s), pp. 475-506)。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体はこの方策に有用であるとして報告されている(Rowland等, (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。この方法に用いる薬物には、ダウノマイシン、ドキソルビジン、メトトレキサート及びビンデジンが含まれる(Rowland等, (1986)、上掲)。抗体−毒素コンジュゲートに用いる毒素には、ジフテリア毒素などの細菌性毒素、ゲルダナマイシン(Mandlerら(2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581;Mandlerら(2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028;Mandlerら(2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(EP 1391213;Liu等, (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lode等, (1998) Cancer Res. 58:2928;Hinman等, (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)などのリシン、小分子毒素などの植物毒が含まれる。該毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機能によりその細胞障害性作用を及ぼす。ある種の細胞障害性剤は、大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートした場合に、不活性又は活性が低減する傾向がある。
【0150】
ゼバリン(ZEVALIN)(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン(ibritumomab tiuxetan), Biogen/Idec)は正常及び悪性のBリンパ球の細胞表面上にみられるCD20抗原に対するマウスIgG1κモノクローナル抗体と
111In又は
90Y放射性同位体とがチオウレアリンカーキレート剤にて結合した抗体−放射性同位体コンジュゲートである(Wiseman等, (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77;Wiseman等, (2002) Blood 99(12):4336-42;Witzig等, (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63;Witzig等, (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69)。ゼバリンはB細胞非ホジキン性リンパ球(NHL)に対して活性を有するが、投与によってほとんどの患者に重症で長期の血球減少を引き起こす。カリケアマイシンに連結したhuCD33抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるマイロターグ(MYLOTARG)(登録商標)(ゲムツズマブオゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin), Wyeth Pharmaceuticals)は、急性骨髄性白血病の治療用注射剤として2000年に認可された(Drugs of the Future (2000) 25(7):686;米国特許第4970198号;同第5079233号;同第5585089号;同第5606040号;同第5693762号;同第5739116号;同第5767285号;同第5773001号)。ジスルフィドリンカーSPPを介してメイタンシノイド薬剤分子DM1と連結しているhuC242抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるカンツズマブメルタンシン(Cantuzumab mertansine)(Immunogen, Inc.)は、CanAgを発現する癌、例として大腸、膵臓、胃及びその他の癌の治療用に第II相試験へと進んでいる。メイタンシノイド薬剤分子DM1と連結している抗前立腺特異的膜抗原(PSMA)モノクローナル抗体からなる抗体薬剤コンジュゲートであるMLN−2704(Millennium Pharm., BZL Biologics, Immunogen Inc.)は、前立腺癌の潜在的治療の開発段階にある。アウリスタチン(auristatin)ペプチド、アウリスタチンE(AE)及びモノメチルアウリスタチン(MMAE)、ドラスタチン(dolastatin)の合成類似体は、キメラモノクローナル抗体cBR96(癌細胞上のルイスYに特異的)及びcAC10(血液系悪性腫瘍上のCD30に特異的)(Doronina等, (2003) Nature Biotechnology 21(7):778-784)にコンジュゲートしており、治療的開発段階にある。
【0151】
ある実施態様では、イムノコンジュゲートは抗体と化学療法剤又は他の毒素を含む。免疫複合体(イムノコンジュゲート)の生成に有用な化学治療薬を本明細書中(例えば、上記)に記載した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。例として1993年10月28日に公開の国際公開公報93/21232を参照のこと。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、
212Bi、
131I、
131In、
90Y及び
186Reが含まれる。抗体及び細胞障害性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。国際公開94/11026参照。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウロスタチン、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
【0152】
a.メイタンシン及びメイタンシノイド
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している抗体(完全長又は断片)を含んでなる。メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4137230号;同4248870号;同4256746号;同4260608号;同4265814号;同4294757号;同4307016号;同4308268号;同4308269号;同4309428号;同4313946号;同4315929号;同4317821号;同4322348号;同4331598号;同4361650号;同4364866号;同4424219号;同4450254号;同4362663号;及び同4371533号に開示されている。
メイタンシノイド薬剤成分は、(i) 発酵又は化学修飾、発酵産物の誘導体化によって調製するために相対的に利用可能である(ii) 抗体に対する非ジスルフィドリンカーによる共役に好適な官能基による誘導体化に従う、(iii) 血漿中で安定、そして(iv) 様々な腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体薬剤コンジュゲートの魅力的な薬剤成分である。
【0153】
メイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲート、その作製方法及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5208020号、同5416064号、欧州特許第0425235号B1に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞障害性を有することが見出されており、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示す。Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィド結合を介して、ヒト結腸癌株化細胞の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合しているイムノコンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞障害性はヒト乳癌株化細胞SK-BR-3におけるインビトロで試験され、細胞当たり3×10
5HER-2表面抗原が発現した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞障害度が達成され、該細胞障害度は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加する。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞障害性を示した。
【0154】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性もほとんど低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。例えば、米国特許第5208020号(この開示内容は出典明記により特別に組み込まれる)を参照。1分子の毒素/抗体は、裸抗体の使用において細胞障害性を高めることが予期されているが、抗体分子当たり、平均3−4のメイタンシノイド分子が結合したものは、抗体の機能又は溶解性に悪影響を与えることなく、標的細胞に対する細胞障害性を向上させるといった効力を示す。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、公知の技術で合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5208020号、及び他の特許、及び上述した特許ではない刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び種々のメイタンシノールエステル等の、メイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノール類似体である。
【0155】
例えば、米国特許第5208020号又は欧州特許第0425235号B1、Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)、及び2004年10月8日に出願の米国特許出願番号10/960602(これらの開示内容は出典明記により特別に組み込まれる)に開示されているもの等を含め、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。リンカー成分SMCCを含んでなる抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、2004年10月8日に出願の米国特許出願番号10/960602に開示されるように調製されうる。結合基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。更なる結合基を本願明細書中に記載し、例示する。
【0156】
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合により提供されるN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737[1978])が含まれる。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施形態において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
【0157】
b.アウリスタチン類及びドラスタチン類
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチンペプチジル類似体及び誘導体、アウリスタチン(auristatin) (米国特許第5635483号;同第5780588号)にコンジュゲートした抗体を含んでなる。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke 等 (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580-3584)、抗癌活性(米国特許第5663149号)及び抗真菌性活性(Pettit 等 (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬剤成分は、ペプチジル薬剤分子のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端により抗体に接着しうる(国際公開公報02/088172)。
例示的なアウリスタチンの実施態様は、N末端連結モノメチルアウリスタチン薬剤成分DE及びDFを含み、2004年11月5日に出願の米国特許出願番号10/983340、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"に開示される。この開示内容は出典明記によってその全体が特別に組み込まれる。
【0158】
一般的に、ペプチドベースの薬剤成分は、2以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間でペプチド結合を形成することによって調製されうる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野において周知の液相合成方法に従って調製することができる(E. Schroder and K. Lubke, "The Peptides", volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Pressを参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬剤成分は、米国特許第5635483号;同第5780588号;Pettit 等 (1989) J. Am. Chem. Soc. 111: 5463-5465;Pettit 等 (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit, G.R., 等 Synthesis, 1996, 719-725;及びPettit 等 (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 5:859-863の方法に従って調製されうる。また、Doronina (2003) Nat Biotechnol 21(7): 778-784; "Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願のUS Ser. No. 10/983,340も参照のこと。これらは出典明記によってその全体が本願明細書中に組み込まれる(例えば、リンカー及びモノメチルバリン化合物、例えばMMAE及びリンカーにコンジュゲートしたMMAFの調整方法を開示している)。
【0159】
c.カリケアマイシン
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した抗体を含んでなる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ
1I、α
2I、α
3I、N-アセチル-γ
1I、PSAG及びθ
I1(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
【0160】
d.他の細胞障害剤
抗体にコンジュゲート可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成されるイムノコンジュゲートをさらに考察する。
【0161】
腫瘍を選択的に破壊するため、抗体は高い放射性を有する原子を含有してよい。放射性コンジュゲートした抗体を生成するために、種々の放射性同位体が利用される。例には、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが検出に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc
99m又はI
123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含有し得る。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc
99m又はI
123、Re
186、Re
188及びIn
111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
【0162】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
化合物は、限定するものではないが、架橋剤:市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB (succinimidyl-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)にて調製したADCが特に考えられる。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467-498頁を参照。
【0163】
e.抗体薬剤コンジュゲートの調製
抗体薬剤コンジュゲート(ADC)において、抗体(Ab)を、リンカー(L)を介して、一つ以上の薬剤部分(D)、例えば抗体につき約1〜約20の薬剤部分にコンジュゲートする。式IのADCはいくつかの手段、当業者に公知の有機化学反応、状態及び試薬を用いて調製されうる:(1) 共有結合の後に薬剤部分Dと反応してAb-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた抗体の求核基の反応;及び(2) 共有結合の後に抗体の求核基と反応してD-Lを形成するための、二価のリンカー試薬を用いた薬剤部分の求核基の反応、が含まれる。ADCを調製するための更なる方法は本願明細書中に記載される。
Ab−(L−D)p I
リンカーは、一つ以上のリンカー成分から成ってもよい。例示的なリンカー成分は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボンイル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN-スクシンイミジル(4-イオド-アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)を含む。更なるリンカー成分は当分野で公知であり、そのいくつかは本願明細書において、記述される。また、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、2004年11月5日に出願した米国出願番号10/983340を参照。その内容は出典明記により本願明細書に組み込まれる。
【0164】
いくつかの実施態様では、リンカーはアミノ酸残基を含みうる。例示的なアミノ酸リンカー成分には、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドなどがある。例示的なジペプチドは、バリン-シトルリン(vc又はval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(af又はala-phe)を含む。例示的なトリペプチドは、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)及びグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)を含む。アミノ酸リンカー成分を含んでなるアミノ酸残基は、天然に生じるもの、並びに微量のアミノ酸及び非天然に生じるアミノ酸類似体、例えばシトルリンを含む。アミノ酸リンカー成分は設定され、特に酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD又はプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断の選択性に最適化できる。
【0165】
抗体上の求核基には、限定するものでなく、以下のものを含む:(i) N末端アミン基、(ii) 側鎖アミン基、例えばリシン、(iii) 側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv) 抗体がグリコシル化される糖水酸基又はアミノ基。アミン、チオール及び水酸基は、求核であり、反応して、リンカー部分上の求電子性の群及びリンカー試薬により共有結合を形成することができる:(i) 活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハロゲン化物;(ii) アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii) アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド群、が含まれる。特定の抗体は、還元しうる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)による処置によって、リンカー試薬を用いたコンジュゲート反応を行ってもよい。ゆえに、各々のシステイン架橋は、理論的には、2の反応性のチオール求核基を形成する。チオールにアミンを転換させる2-イミノチオラン(トラウトの試薬)を用いてリシンを反応させることによって抗体に付加的な求核基を導入することができる。反応性のチオール基は、1、2、3、4又はそれ以上のシステイン残基を導入する(例えば、一又は複数の非天然のシステインアミノ酸残基を含んでなる変異体抗体を調製する)ことによって抗体(又は、その断片)に導入されてもよい。
【0166】
また、抗体薬剤コンジュゲートは、抗体を修飾して求電子性の部分を導入する(リンカー試薬又は薬剤上の求核置換基と反応させることができる)ことによって生成してもよい。グリコシル化された抗体の糖質を、例えば過ヨウ素酸塩酸化剤を用いて酸化して、リンカー試薬又は薬剤部分のアミン基と反応するアルデヒド又はケトン基を形成させてもよい。生じたイミンシッフ塩基群が安定結合を形成するか、又は例えば安定アミン結合を形成させるホウ化水素試薬によって、還元してもよい。一実施態様では、ガラクトースオキシダーゼ又はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩の何れかによるグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により、薬剤(Hermanson, Bioconjugate Techniques)上の適当な基と反応することができるタンパク質のカルボニル(アルデヒド及びケトン)基が生じうる。他の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含んでいるタンパク質はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩と反応して、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドを生成する(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬剤部分又はリンカー求核基と反応することができる。
【0167】
同様に、薬剤部分上の求核基には、限定するものではないが、以下のものを含む:反応して、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子性の基と共有結合することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸エステル及びアリールヒドラジド基:(i) 活性エステル(例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハロゲン化物);(ii) アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii) アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基、が含まれる。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0168】
8.免疫リポソーム
また、ここに開示する抗体は、免疫リポソームとして調製してもよい。抗体を含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985);Hwang等, Proc. natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980);及び米国特許第4485045号及び第4544545号に記載されたような、この分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5013556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG−誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成される。リポソームは、所定サイズのフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab’断片は、Martin等, J. Biol. Chem., 257: 286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに抱合され得る。化学治療薬(ドキソルビシン等)は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst., 81(19) 1484 (1989)参照。
【0169】
M.製薬組成物
本発明の活性な分子(例えば、TIGITポリペプチド、抗TIGIT抗体、これらの変異体、TIGITアゴニスト、TIGITアンタゴニスト、PVRアゴニスト及びPVRアンタゴニスト)並びに上記に開示されるスクリーニングアッセイによって同定される他の分子は、薬学的組成物の形態で、免疫関連疾患の治療のために投与されうる。
活性な分子、例えば本発明のポリペプチド又は抗体の治療用製剤は、所望される程度の純度を持つ活性分子を、親油性製剤又は水性溶液の形態で、任意の製薬上許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington's Pharmaceutical Science, 16th edition, Osol, A. Ed. [1980])。許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)又はトゥイーン(TWEEN)
TM、プルロニクス(PLURONICS)
TM、及びポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0170】
本明細書中で開示されるスクリーニングアッセイで同定される化合物は、同様の方式で、この分野で知られた標準技術を用いて製剤される。
リポフェクション又はリポソームもまた、活性分子を細胞に運搬するために用いられうる。抗体断片が用いられる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持したペプチド分子が設計できる。このようなペプチドは、化学的に合成でき、又は組換えDNA技術によって生成できる(例えば、Marasco等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:7889-7893 [1993])。
【0171】
ここでの製剤は、治療すべき特定の徴候に必要な場合に1以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的仮性を持つものも含んでよい。あるいは、又はそれに加えて、組成物は、細胞毒性薬、サイトカイン又は増殖阻害剤を含んでもよい。これらの分子は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
また、活性分子は、例えばコアセルベーション技術により又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、各々ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン小球、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)中、又はマイクロエマルション中に包括されていてもよい。これらの技術は、Remington's Pharmaceutical Science, 16th edition, Osol, A. Ed. [1980]に開示されている。
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなけらばならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成される。
【0172】
活性分子の徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、このマトリクスは成形された物品、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形状である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びγ−エチル−L−グルタメート、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT
TM(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドの注射可能な小球)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリ−(D)−3−ヒドロキシブチル酸を含む。エチレン−酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは分子を100日に渡って放出することができるが、ある種のヒドロゲルはより短時間でタンパク質を放出してしまう。カプセル化された抗体が身体内に長時間残ると、それらは37℃の水分に露出されることにより変性又は凝集し、その結果、生物学的活性の低下及び起こりうる免疫原性の変化をもたらす。合理的な方法は、含まれる機構に依存する安定化について工夫することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を通した分子間S-S結合形成であると発見された場合、安定化はスルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の付加、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発によって達成されうる。
【0173】
N.治療方法
本発明のポリペプチド、抗体及び他の活性物質は、組織への炎症細胞の浸潤、T細胞の増殖の刺激、T細胞の増殖の阻害、サイトカイン産生の増加又は減少、及び/又は血管透過性の増加又は低減又はその阻害によって特徴付けられるものを含む、T細胞媒介疾患等の種々の免疫関連疾患及び病状を治療するために使用できると考えられる。本明細書中でT細胞増殖及びサイトカイン産生の調節におけるTIGITの役割が示されたので、TIGITの発現及び/又は活性の調節はこれら疾患の予防及び/又は治療に有用でありうる。
本発明のポリペプチド、抗体及び他の化合物で治療される病状又は疾患の例には、限定するものではないが、全身性紅斑性狼瘡、リウマチ様関節炎、若年性慢性関節炎、骨関節症、脊椎関節症、全身性硬化症(強皮症)、特発性炎症ミオパシー(皮膚筋炎、多発性筋炎)、シェーグレン症候群、全身性血管炎、サルコイドーシス、自己免疫性溶血性貧血(免疫再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿)、自己免疫性血小板減少(特発性血小板減少性紫斑病、免疫媒介血小板減少)、甲状腺炎(グレーブス疾患、ハシモト甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、萎縮性甲状腺炎)、真性糖尿病、免疫媒介腎疾患(糸球体腎炎、尿細管間質性腎炎)、多発性硬化症、特発性脱随性多発神経障害、又はギラン-バレー症候群、及び慢性炎症脱随性多発神経障害などの中枢及び末梢神経系の脱髄疾患、感染性肝炎(A型、B型、C型、D型、E型肝炎及び他の非肝親和性ウイルス)、自己免疫性慢性活性肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、肉芽腫性肝炎、及び硬化性胆管炎などの肝胆道疾患、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎;クローン病)、グルテン過敏性腸疾患、及びウィップル病、水疱性皮膚疾患、多形性紅斑及び接触性皮膚炎を含む自己免疫又は免疫媒介皮膚疾患、乾癬、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症及び蕁麻疹などのアレルギー性疾患、好球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎などの肺の免疫疾患、拒絶反応及び移植片対宿主疾患を含む移植関連疾患が含まれる。
【0174】
全身性紅斑性狼瘡では、疾患の中心的な媒介物は自己タンパク質/組織に対する自己反応性抗体の産生と、続いての免疫媒介炎症の発生である。抗体は直接的又は間接的に組織傷害を媒介する。Tリンパ球は組織損傷に直接的には関与していることは示されていないが、Tリンパ球は自己反応性抗体の発育に必要である。よって、疾患の発生はTリンパ球に依存している。腎臓、肺、筋骨格、皮膚粘膜、眼、中枢神経系、心臓血管系、胃腸管、骨髄及び血液を含む複数の器官及び系が臨床的に冒される。
リウマチ様関節炎(RA)は、主に複数の関節の滑膜に関連する慢性全身性自己免疫炎症疾患であり、結果として関節軟骨に傷害が生じる。病原はTリンパ球依存性であり、リウマチ因子、自己IgGに対する自己抗体の生成に付随し、結果として滑液及び血液において高レベルに達する免疫複合体を生成する。関節中のこれらの複合体は、滑膜中へのリンパ球及び単球の顕著な浸潤と、続いての顕著な滑膜変化を誘発し;多数の好中球の添加により同様の細胞で浸潤されるならば、関節空間/液でもしかりである。冒されている組織は、多くの場合対称的なパターンで、主に関節である。しかしながら、2つの主な形態の関節外疾患もまた生じる。一形態は進行中の進行性関節疾患及び肺線維症の典型的病巣、血管炎、及び皮膚潰瘍を伴う関節外障害の発生である。関節外疾患の第2の形態はいわゆるフェルティー症候群であり、これは、RA疾患過程の末期、時には関節疾患が鎮静した後に生じ、好中球減少、血小板減少及び脾肥大の存在に関与する。これには、梗塞、皮膚潰瘍及び壊疽の形成を伴う複数の器官において血管炎が付随する。多くの場合、患者には、発病している関節上にある皮下組織にリウマチ様小結節が発達し;その小結節は、末期には混合炎症細胞浸潤に包囲された壊死性中心を有する。RAにおいて生じる可能性のある他の徴候には:心外膜炎、胸膜炎、冠動脈炎、肺線維症を伴う間質性肺炎、乾性角結膜炎、及びリウマチ様小結節が含まれる。
【0175】
若年性慢性関節炎は、多くの場合16歳未満で発症する慢性特発性炎症疾患である。その表現型はRAといくつかの類似点があり;リウマチ因子が陽性である患者の中には若年性リウマチ様関節炎に分類されるものもいる。この疾患は3つの主要なカテゴリー:小関節(pauarticular)、多関節及び全身性に細分類される。関節炎は重度で典型的には破壊的であり、関節強直症及び遅延成長に至る。他の徴候には慢性前部ブドウ膜炎及び全身性アミロイド症が含まれる。
脊椎関節症は、いくつかの共通した臨床的特徴とHLA-B27遺伝子産物の発現との共通の関連性を持つ疾患のグループである。該疾患には:Bechterew氏病(ankylosingsponylitis)、ライター症候群(反応性関節炎)、炎症性大腸疾患に関連した関節炎、乾癬に関連した脊椎炎、若年発生脊椎関節症及び未分化脊椎関節症が含まれる。顕著な特徴には、脊椎炎を伴うか伴わない仙腸関節炎;炎症非対称性関節炎;HLA-B27(クラスIMHCのHLA-B座位にある血清学的に定義された対立遺伝子)との関連;眼の炎症、及び他のリウマチ疾患に関連した自己抗体の不在が含まれる。疾患の誘導に対する鍵として最も関わっている細胞はCD8
+Tリンパ球で、クラスIMHC分子により提示される抗原を標的としている細胞である。CD8
+T細胞は、MHCクラスI分子により発現された外来ペプチドであるかのように、クラスIMHC対立遺伝子HLA-B27に対して反応する。HLA-B27のエピトープが細菌性又は他の微生物の抗原性エピトープを模倣し、よってCD8
+T細胞の反応を誘発すると仮定されている。本明細書中で示されるように、TIGITはCD8
+T細胞で発現され、この細胞でのTIGITの発現及び/又は活性の調節はこの疾患の症状を調節し、及び/又は予防しうる。
【0176】
全身性硬化症(強皮症)は病因がよく知られていない。疾患の顕著な特徴は皮膚の硬結であり;これは活性な炎症プロセスにより誘発されると思われる。強皮症は局部的又は全身性であり:血管病巣が共通しており、微小血管系における内皮細胞傷害が全身性硬化症の発達における初期の重要な事象であり;血管傷害は免疫媒介されうる。免疫学的基準は、皮膚病巣における単核細胞浸潤の存在と、多くの患者において抗細胞核抗体の存在によって導かれる。多くの場合、ICAM-1が皮膚病巣の線維芽細胞の細胞表面でアップレギュレーションされ、これらの細胞とのT細胞の相互作用が疾患の病因においてある役割を担っていることが示唆される。関連する他の器官には:胃腸管:結果的に異常なぜん動/運動性となる平滑筋萎縮症及び線維症:腎臓:小弓形及び小葉間動脈に影響を及ぼし、結果として腎皮質の血流が低下し、タンパク尿、高窒素血尿及び高血圧になる同心性内皮下内膜増殖:骨格筋:萎縮、間質性線維症:炎症:肺:間質性肺炎及び間質性線維症:及び心臓:収縮バンド壊死、瘢痕/線維症が含まれる。
皮膚筋炎、多発性筋炎及び他のものを含む特発性炎症ミオパシーは病因がよく知られていない慢性筋肉炎症疾患であり、筋肉の弱化に至る。筋肉損傷/炎症は多くの場合対照的で進行性である。自己抗体は多くの形態と関連している。これらの筋炎特異的自己抗体は、タンパク質合成に関与する成分、タンパク質及びRNAに対して産生されその機能を阻害する。
【0177】
シェーグレン症候群は、免疫媒介炎症と、涙腺及び唾液腺の続く機能破壊によるものである。この疾患は炎症結合組織疾患に関連するか又はそれに伴なう場合がある。この疾患は、双方とも小さいRNA-タンパク質複合体であるRo及びLa抗原に対する自己抗体産生に関連している。病巣は乾性角結膜炎、口内乾燥症で、胆汁性硬変、末梢又は感覚ニューロパシー、及び明白な紫斑病を含む他の徴候又は関連を伴うものに至る。
全身性血管炎症は一次病巣が炎症で、続いて血管にダメージを受け、結果として冒された脈管により供給される組織に虚血/壊死/変性が生じ、いくつかのケースでは最終的な末端器官機能障害になるといった疾患である。また、血管炎(vasculitides)は他の免疫炎症媒介疾患、例えばリウマチ様関節炎、全身性硬化症等、特に免疫複合体の生成に関連した疾患等の続発症として又は二次病変として生じる場合がある。原発性全身性血管炎症グループの疾患には:全身壊死性血管炎:多動脈炎結節(polyarteritisnodosa)、アレルギー性脈管炎及び肉芽腫症、多脈管炎:ヴェゲナー肉芽腫症;リンパ腫様肉芽腫症:及び巨細胞動脈炎が含まれる。その他の血管炎には:粘膜皮膚リンパ節症候群(MLNS又は川崎病)、隔離されたCNS血管炎、ベヘット(Behet's)病、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)及び皮膚壊死性細静脈炎(venulitis)が含まれる。列挙した血管炎のほとんどの種類の発病メカニズムは、主に脈管壁に免疫グロブリン複合体が付着し、続いてADCC、補体活性又は双方を介して炎症反応が誘発されることによると考えられている。
【0178】
サルコイドーシスは、体内のほとんど全ての組織中における類上皮細胞肉芽腫の存在により特徴づけられる病因がよく知られていない病状であり;肺の関与が最も一般的である。病因は疾患部位に活性マクロファージ及びリンパ球が残留していることに関連しており、続いてこれらの細胞型より放出される局部的又は全身的活性産物の放出の結果として慢性続発症が生じる。
自己免疫性溶血性貧血、免疫再生不良性貧血、及び発作性夜間血色素尿を含む自己免疫溶性血性貧血は、赤血球(いくつかの場合においては血小板もまた含む他の血液細胞)表面で発現した抗原と反応する抗体が産出される結果によるものであり、補体媒介溶解及び/又はADCC/Fc-レセプター-媒介メカニズムを介して、その抗体被覆細胞の除去に反映される。
【0179】
他の臨床的環境における血小板減少性紫斑病及び免疫媒介血小板減少を含む自己免疫性血小板減少では、血小板破壊/除去が、抗体又は補体が血小板に接合し、続いて補体溶解、ADCC又はFc-レセプター-媒介メカニズムにより除去される結果として生じる。
グレーブス疾患、ハシモト甲状腺炎、若年性リンパ球性甲状腺炎、及び萎縮性甲状腺炎を含む甲状腺炎は、甲状腺内に存在し多くの場合甲状腺に特異的なタンパク質と反応する抗体の産生を伴う、甲状腺抗原に対する自己免疫反応の結果によるものである。自然のモデル:ラット(BUF及びBBラット)及びチキン(肥満チキン種);誘導性モデル:サイログロブリン、甲状腺ミクロソーム抗原(甲状腺ペルオキシダーゼ)のいずれかでの動物の免疫化を含む実験用モデルが存在する。
1型真性糖尿病又はインスリン依存性糖尿病は膵臓ランゲルハンス島β細胞の自己免疫破壊であり;この破壊は自己抗体及び自己反応性T細胞により媒介される。また、インスリン又はインスリン様レセプターに対する抗体は、インスリン-非反応性の表現型をつくりだすことができる。
【0180】
糸球体腎炎及び尿細管間質性腎炎を含む免疫媒介腎疾患は、腎抗原に対する自己反応性抗体又はT細胞が産生される結果として直接的に、又は他の非腎抗原に対して反応性である、腎臓中の抗体及び/又は免疫複合体の沈着の結果として間接的に、腎組織に抗体又はT細胞媒介傷害が生じることによるものである。よって、免疫複合体の生成をもたらす他の免疫媒介疾患により、間接的続発症として免疫媒介腎疾患も誘発しうる。直接的及び間接的免疫メカニズムの双方により、結果として、器官機能が損なわれ、いくつかの場合では腎臓機能不全に進行する、病巣発達を腎組織に生じさせ/誘発する炎症反応が生じる。体液及び細胞免疫メカニズムの双方が障害の発病に関与しうる。
多発性硬化症;特発性脱随性多発神経障害又はギラン-バレー症候群;及び慢性炎症脱随性多発神経障害を含む中枢及び末梢神経系の脱髄疾患は、自己免疫に原因を有し、オリゴデンドロサイト又はミエリンに直接的に引き起こされる損傷の結果として神経脱髄が生じると考えられている。MSにおいては、疾患の誘発及び進行がTリンパ球に依存することを示唆する証拠がある。多発性硬化症は、Tリンパ球依存性であり、再発性弛緩経路又は慢性進行経路のいずれかを有する脱髄疾患である。病因はよく知られていないが、ウイルス感染、遺伝的素因、環境及び自己免疫性の全てが寄与している。病巣は優勢なT細胞媒介小膠細胞の湿潤と、浸潤しているマイクロファージを含み;CD4
+Tリンパ球は病巣における優勢な細胞型である。オリゴデンドロサイトの細胞死と続く脱髄のメカニズムはよく知られていないが、Tリンパ球により推進されていると思われる。
【0181】
好球性肺炎;特発性肺線維症及び過敏性肺炎を含む炎症及び線維症の肺疾患には、調節されない免疫炎症反応が関連している。その反応の阻害は治療的に有益であろう。
水疱性皮膚疾患、多形性紅斑及び接触性皮膚炎を含む自己免疫又は免疫媒介皮膚疾患は自己抗体により媒介され、その発病はTリンパ球依存性である。
乾癬はTリンパ球媒介炎症疾患である。病巣にはTリンパ球、マクロファージ及び抗原プロセシング細胞及びある種の好中球の浸潤が含まれる。
喘息;アレルギー性鼻炎;アトピー性皮膚炎;食物過敏症及び蕁麻疹等を含むアレルギー性疾患はTリンパ球依存性である。これらの疾患はTリンパ球誘発性炎症、IgE媒介炎症、又は双方の組合せにより主に媒介される。
拒絶反応及び移植片対宿主疾患(GVHD)を含む移植関連疾患はTリンパ球依存性であり;Tリンパ球の機能を阻害することで改善される。
【0182】
免疫及び/又は炎症反応への介在が有益である他の疾患には、限定するものではないがウイルス感染(限定するものではないがAIDS、A型、B型、C型、D型、E型肝炎及びヘルペス)、細菌感染、真菌感染、原生動物感染及び寄生虫感染(MLRを刺激する分子(又は誘導体/アゴニスト)を治療に利用し、感染要因に対する免疫反応性を増強することができる)を含む感染疾患、MLRを刺激し、治療に利用し、遺伝子し、獲得し、感染誘発された(例えばHIV感染)状態に対する免疫反応を増強するために治療上用いることが可能な免疫欠損疾患(分子/誘導体/アゴニスト)又は医原性(即ち、化学療法からのもの)免疫欠損、及び異常増殖である。
ヒト癌患者の中には、異常増殖細胞上の抗原に反応する抗体及び/又はTリンパ球を発生させるものもいることが証明されている。また、異常増殖のある動物モデルにおいても、免疫反応を増強することで、特定の異常増殖が拒絶又は退行する結果になることも示されている。MLRにおけるTリンパ球反応を増強する分子は、異常増殖に対する免疫反応を増強するインビボでの利用性を有している。MLRにおけるTリンパ球増殖反応を増強する分子(又は拮抗的に同じレセプターに影響を及ぼした小分子アゴニスト又は抗体)は、癌の治療に治療的に使用することができる。また、MLRにおいてリンパ球反応を阻害する分子(すなわちTIGIT)は、異常増殖中に、新生物に対する免疫反応を抑制するように、インビボで機能し;このような分子は新生物細胞自体により発現されうるか、又はその発現は他の細胞中の新生物により誘発されうる。このような阻害分子(抗体、小分子アンタゴニスト又は他の手段による)の拮抗作用により免疫媒介腫瘍拒絶が増強される。
さらに、炎症誘発性特性を有する分子を阻害することは、再灌流傷害;脳卒中;心筋梗塞;アテローム性動脈硬化;急性肺傷害;出血性ショック;火傷;敗血症/敗血症ショック;急性尿細管壊死;子宮内膜症;変性関節疾患及び膵炎(pancreatis)の治療に有益である。
本発明の化合物、例えばポリペプチド、小分子又は抗体は、哺乳動物、好ましくはヒトに、周知の方法、例えば、ボーラスとして又は所定時間に渡る連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹膜内、脳脊髄内、皮下、関節間、滑膜内、鞘内、経口、局所、又は吸入(鼻孔内、肺内)経路などにより投与される。ポリペプチド及び抗体の静脈内、皮下又は吸入投与が最も一般的に用いられる。
【0183】
免疫アジュバント治療において、抗癌剤の投与などの他の投薬計画は、本発明のタンパク質、抗体又は化合物の投与と組み合わされてもよい。例えば、本発明の免疫アジュバントで治療される患者は、抗癌剤(化学療法剤)又は放射線治療を受けてもよい。このような化学療法剤の調製法及び用量スケジュールは、製造者の指示に従って使用されるか、熟練した実務者により経験的に決定される。そのような化学療法に対する調製法及び用量スケジュールはまたChemotherapyServiceEd.M.C.Perry編,Williams&Wilkins,Baltimore,MD(1992)にも記載されている。化学療法剤は、免疫アジュバントの投与に先立って、又は続いて投与してもよく、あるいはそれらと同時に投与してもよい。加えて、タモキシフェン等の抗エストロゲン化合物又はオナプリストンなどの抗プロゲステロン(欧州特許616812号参照)を、それらの分子について知られた用量で付与してもよい。
【0184】
また、他の免疫疾患に関連した、又は腫瘍に関連した抗原に対する抗体、限定するものではないが例えばCD20、CD11a、CD18、ErbB2、EGFR、ErbB3、ErbB4、又は血管内皮因子(VEGF)に結合する抗体を投与することも好ましい。別法として、又は付加的に、同一の抗原又はここに開示した二又はそれ以上の異なる抗原に結合する二又はそれ以上の抗体を患者に同時投与してもよい。しばしば、患者に一又は複数のサイトカインを投与することも有益である。例えば、一実施態様では、TIGITポリペプチドは、増殖阻害剤と同時投与される。例えば、まず増殖阻害剤を投与し、続いてTIGITポリペプチドを投与する。しかしながら、同時投与、又は最初に投与することも考えられる。増殖阻害剤についての適切な用量は現在用いられている量であるが、増殖阻害剤と例えばTIGITポリペプチドとの組み合わせ(相乗)効果により減少させ得る。
【0185】
重篤な免疫関連疾患の治療又は低減のための、本発明の化合物の適切な用量は、上記で定義したような治療される疾患の型、疾患の重篤さ及び経過、防止又は治療目的で薬剤が投与されるか否か、従前の治療、患者の臨床履歴及び化合物に対する反応、及び主治医の裁量に依存する。化合物は、適切には患者に一回又は一連の治療に渡って適切に投与されうる。
例えば、疾患の型及び重篤さに応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば、0.1〜20mg/kg)のポリペプチド又は抗体が、例えば、一又はそれ以上の別々の投与あるいは連続注入のいずれにしても、患者に投与するための最初の候補用量である。典型的な1日の用量は、上記の要因に応じて、約1μg/kgから100mg/kgの範囲又はそれ以上であろう。数日以上に渡る繰り返し投与のためには、状態に応じて、疾患の徴候に所望の抑制が現れるまで治療が続けられる。しかしながら、他の用量計画が有用であることもある。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニターされる。
【0186】
O.製造品
本発明の他の実施態様では、上記の疾患の診断又は治療に有用な物質(例えばTIGIT分子、TIGITアゴニスト、TIGITアンタゴニスト、PVRアゴニスト又はPVRアンタゴニストを含有するもの)を含む製造品が提供される。この製造品は容器と使用説明書とを含んでなる。好適な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、及び試験管を含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から形成されてよい。容器は、状態を診断し治療するのに有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の活性剤は通常、本発明のポリペプチド又は抗体である。容器上又は添付される使用説明書又はラベルは、組成物が選択した状態の診断又は治療のために使用されることを示す。製造品はさらに、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液などの製薬的に許容されるバッファーを含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用上の指示を付けたパッケージ挿入物を含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0187】
P.免疫関連疾患の診断及び予知
ある種の免疫関連疾患で過剰発現されるタンパク質等の細胞表面タンパク質(すなわちTIGIT)は候補薬剤又は疾患治療の優れた調節標的である。同じタンパク質は免疫関連疾患で増幅された遺伝子にコードされる分泌タンパク質とともに、これらの疾患の診断及び予知における付加的な用途が見出される。例えば、関節リウマチ又は他の免疫関連疾患において増幅された遺伝子のタンパク質産物に対する抗体は診断又は予知として使用できる。
例えば、抗体断片を含む抗体は、増幅又は過剰発現された遺伝子にコードされるタンパク質(「マーカー遺伝子産物」)の発現の定性的又は定量的検出に用いることができる。抗体は、好ましくは検出可能な、例えば蛍光標識を備え、結合は光学顕微鏡、フローサイトメトリー、フルオロメトリー、又はこの分野で知られた他の技術によってモニターできる。これらの技術は、過剰発現した遺伝子が細胞表面タンパク質をコードする場合に特に適切である。このような結合アッセイは、本質的に上述したように実施される。
マーカー遺伝子産物に結合する抗体のインサイツ検出は、例えば、免疫蛍光又は免疫電子顕微鏡によって実施できる。この目的のために、組織学的試料を患者から取り出し、好ましくは生物学的試料に抗体を重層することにより、標識抗体をそれに適用する。この手法はまた、試験される組織におけるマーカー遺伝子産物の分布も決定できるようにする。当業者には、インサイツ検出のために広範な組織学的方法が容易に利用できることは明らかであろう。また当分野では、例えば蛍光標示式細胞分取器(FACS)といった他の技術も周知である。
以下の実施例は例示するためにのみ提供されるものであって、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0188】
実施例1:TIGITの他の特徴
TIGITは、細胞外Igドメイン、タイプ1膜貫通領域及び細胞内免疫レセプターチロシンベースの活性化又は阻害(ITAM/ITIM)モチーフ(一又は複数)からなるドメイン構造を有する、免疫細胞によって特異的に発現される遺伝子をターゲットとしたゲノム大規模検索戦略において既に同定された(例えば、出典明記によってその全体が本明細書中に援用される米国公開特許US20040121370を参照)(Abbas, A.R. et al. Genes Immun 6, 319-31 (2005);Burshtyn, D.N. et al., J Biol Chem 272, 13066-72 (1997);Kashiwada, M. et al., J Immunol 167, 6382-7 (2001))。ヒトのTIGITの配列およびマウス(Genbankに提出されたもの)、アカゲザル(Genbank受託番号XP_001107698)およびイヌ(Genbank受託番号XP_545108)のホモログを
図1に示す。免疫機能におけるTIGITの役割を更に説明するために、TIGIT Igドメインが、ポリオウイルスレセプター(PVR)タンパク質およびPVR様タンパク質1−4(PVRL1−4)のN末端IgVドメイン、並びにCD96及びCD226のN末端IgVドメインに類似していることを示すホモロジー検索を行った(
図2A-2Bを参照)。これらのタンパク質のアラインメントにより、標準的なIgVドメインを定める高度に保存された残基がTIGITにおいて保存されることが示され、これら8つのタンパク質がIgファミリの関連したサブセットを含みうることが更に示唆された。保存されたVフレームの残基は、Vフレームホールドを構築するために重要であることが示された(Wiesmann, C. & de Vos, A.M. Cell Mol Life Sci 58, 748-59 (2001))。3つのサブモチーフ(V/I
54−S/T
55−Q
56)、(A
67−X(6)−G
74)及び(T
112−F/Y
113−P
114−X−G
116)を含む、4つの完全に保存された残基(A
67、G
74、P
114およびG
116)および5つの保存された残基(V/I/L
54、S/T
55、Q
56、T
112およびF/Y
113)を含め、多くの残基がVフレームホールド近くで8つのタンパク質間で保存されていたことが同定された。TIGITの場合、これらのサブモチーフは、種間で保存されているようであり(
図1を参照)、他の現在示されているIgVドメイン含有のタンパク質には存在しない。これらの保存された残基は、PVR、PVR様タンパク質1−4、CD96、CD226およびTIGITを含むPVR様タンパク質の種類を定めうる。
【0189】
PVRL1−4およびPVRは共通のドメイン構造(IgV-IgC-IgV)を共有しているのに対して、CD226およびCD96は膜近位のIgVドメインを欠いている。TIGITは、単一のIgVドメインからなる、最も効率的なファミリのメンバーである。これら8つのタンパク質の細胞内セグメントは、PVRL1−3間で共有されるafadin結合モチーフの外で、互いに限られた類似性を示す。NECL-1の関連するIgVドメインの結晶構造に基づいて(Dong, X. et al., J Biol Chem 281, 10610-7 (2006))、第一及び第3のモチーフは、それぞれBとCの間およびFとGβ-鎖の間のヘアピンループにあることが予測される。これら2つのループは、IgVホールドの一端で互いに隣接している。第二のモチーフは、NECL−1のためのホモ二量体界面の一部を形成するのに関与するC'とC''β鎖を含む。ゆえに、TIGIT/PVRファミリにおいて観察される配列のモチーフは、PVRファミリメンバー間で観察される特定のホモおよびヘテロ型の相互作用において機能しうる。PVRはすでに、nectin様タンパク質として特徴が示されていたが、上記の配列分析により、むしろPVRはPVRファミリメンバーと考えられうることが示唆され、あるネクチン(すなわちPVRL1−4)はPVRファミリから枝分かれしたものとして分類される。
【0190】
実施例2:PVRリガンドの同定
固定されたTIGITを結合したタンパク質を探すために、分泌されたタンパク質の大きなライブラリをスクリーニングすることによってTIGITの結合パートナーとなりうる物質を同定した。簡単に言うと、TIGITのFc融合(TIGIT-Fc)は、ヒトIgG1のFc領域(TIGIT-Fc)の直前に、ベクター内へヒトTIGITのアミノ酸1−138をクローニングすることによって構築した。また、標準的な部位特異的突然変異技術を用いてD256AおよびN297AのTIGIT-FcのFcテールに2つの突然変異を導入することによって、FcγR結合が破壊されているTIGIT-Fcの代替バージョンを構築した(TIGIT-Fc-DANA)。結果として生じる融合タンパク質は、CHO細胞で過渡的に発現させ、標準的な親和性クロマトグラフィ技術を用いて精製した。ヘキサヒスチジン又はFcタグに融合した個々の分泌タンパク質のライブラリを、Octetシステム(ForteBio)を用いてTIGIT-Fcへの結合についてスクリーニングした。タンパク質は、HBS−P(10mM Hepes、pH7.4;0.15M NaCl;0.005%SurfactantP20)中での結合について試験した。TIGIT-Fc又はコントロールFc融合タンパク質は、抗ヒトFcバイオセンサーに流し、飽和状態にした。バイオセンサーは、バッファにて洗浄し(30秒)、5μg/mlのタンパク質を含むウェルに3分間置き、再び30秒間洗浄した。センサーをリロードし、それぞれ2回の結合サイクルの後に洗浄した。結合は、0.2nmより大きい応答レベルの増加として示し、特異性は、コントロールFc融合タンパク質と比較することによって決定した。TIGITを結合した単一のタンパク質は、分析した1000以上のタンパク質において同定された。
図3に示すように、抗ヒトFcバイオセンサー上に固定したTIGIT-Fc融合タンパク質は、PVR-Fc融合タンパク質と特異的に相互作用した。この相互作用の特異性は、ライブラリ内の他の任意のタンパク質とはTIGITが特異的に相互作用しないことによって、さらに、他のIgドメイン含有タンパク質をロードしたバイオセンサーがPVRへの応答を誘発しなかったという事実によって裏付けられた。
【0191】
PVR、PVRL1−4、CD96およびCD226が互いに相互作用することが既に知られているので(He, Y. et al., J Virol 77, 4827-35 (2003);Satoh-Horikawa, K. et al., J Biol Chem 275, 10291-9 (2000);Bottino, C. et al. J Exp Med 198, 557-67 (2003);Fuchs, A. et al., J Immunol 172, 3994-8 (2004);Reymond, N. et al., J Exp Med 199, 1331-41 (2004))、各々のこれらタンパク質とのTIGITの相互作用は、上記のバイオセンサーシステムを使用して評価した。TIGIT-Fcについて上記したように、試験した各タンパク質についてFc融合タンパク質を構築し、精製した。具体的には、PVR様タンパク質1(PVRL1)のアミノ酸1−343、PVR様タンパク質2(PVRL2)のアミノ酸1−360、PVR様タンパク質3(PVRL3)のアミノ酸1−411、PVR様タンパク質4(PVRL4)のアミノ酸1−349、CD226のアミノ酸1−259又はCD96のアミノ酸1−500を、ヒトのIgG1のFc領域の直前に融合した。結果として生じるFc融合タンパク質は、TIGIT-Fcへの結合について試験した。PVR-Fc、PVRL3-FcおよびPVRL2-FcはTIGIT-Fcを結合したのに対して、CD226-Fc、CD96-Fc、PVRL1-Fc及びPVRL4-Fcは、TIGIT-Fcを結合しなかった(
図4A)。3つの観察した結合体の中で、PVR-FcはTIGIT-Fcに最も大きな結合を示し、次にPVRL3-Fcが続き、TIGIT-Fcに対して3つの中で最少の結合量はPVRL2-Fcに観察された。
【0192】
また、FACS分析を行って、TIGITを発現するCHO細胞上に構築されるPVRファミリメンバーFc融合の結合を評価した。Fc融合タンパク質は、NHS−PEO4−ビオチン(Pierce)を含むPBSを用いてアミン共役によりビオチン化した。ビオチン−リガンドの結合は、フィコエリトリンコンジュゲートストレプトアビジン(Caltag)を使用して検出した。gDタグ(Genentech)に対するマウスモノクローナル抗体は、AlexaFluor647(Invitrogen)にコンジュゲートした。抗体は、標準的な技術を用いて適切な蛍光標識にコンジュゲートした。製造業者の指示に従って細胞を染色した。染色の前に、適切な血清又は精製したIgGにて細胞をブロックした。FACSCalibur(BD Biosciences)にて獲得し、JoFloソフトウェア(Tree Star, Inc.)にて分析した。前方および側方の散乱生きている細胞をゲート化した。結果は、
図4B−1から4B−6に示し、人工のバイオセンサーアッセイにおいて観察される結合パターンが、細胞表面の生理学的な環境において観察されたものと同じであったことを示す。
【0193】
PVR-TIGIT、PVRL2-TIGITおよびPVRL3-TIGIT結合相互作用の強度を決定するために、これらタンパク質を安定して形質移入したCHO細胞を用いて、直接の放射性リガンド結合アッセイを行った。CHO細胞表面発現のために、TIGIT、PVR、PVRL2、PVRL3、CD226およびCD96の完全長DNAを、ベクター内のgDシグナル配列(MGGTAARLGAVILFVVIVGLHGVRG(配列番号:19))及びgDタグ(KYALADASLKMADPNRFRGKDLPVL(配列番号:20))の直後にクローニングした。プラスミドは、リポフェクタミンLTX(Invitrogen)を用いてCHO細胞に形質移入した。gDタグ付加タンパク質の発現は、Alexa-647抗gDコンジュゲートを使用たフローサイトメトリによって調べた。安定して形質移入した細胞株は、使用前の精製のためにFACSによって2回分類した。上記の通りに構築したFc-融合タンパク質は、Iodogen法を使用してヨウ素化(
125I)した。0.1〜3nMのヨウ素化リガンドを用いて3通りの安定形質移入体を用いて結合試験を行った。ヨウ素化タンパク質は、非標識競合タンパク質(25pM−5μM)の段階希釈液の存在下で1×10
5−2×10
5細胞と共に4℃で4時間インキュベートした。細胞懸濁物をニトロセルロース膜(Millipore)に回収し、十分に洗浄した。乾燥させたフィルターを計数し、NewLigand1.05ソフトウェア(Genentech)を用いてスキャッチャード分析を行い、結合親和性(Kd)を決定した。
【0194】
図5Aおよび5Bは、PVR発現CHO細胞への放射能標識したTIGIT-Fcタンパク質の結合を示す。4つの実験についてのTIGIT-Fc-PVR相互作用の平均Kdは、3.15nMであった。表6は、すべての分析物の結果を表形式で示す。
表6.PVRファミリタンパク質の細胞結合。レセプターはCHO細胞上に発現し、すべてのリガンドは-Fcコンストラクトであった。レセプター陽性細胞のゲート後、ビオチン化したFc-リガンドによるフローサイトメトリーによってMFIを決定した。結合親和性(Kd)は競合放射能リガンド結合アッセイによって決定した。Kdは(nM)で示し、(*)を付したものを除き、少なくとも3つの独立したアッセイの平均値である。
++++ MFI>5000
+++ MFI=1000−4999
++ MFI=100−999
+ MFI<100
- 結合なし
& 特異的な結合であるがKdは不明瞭
* 2つのアッセイの平均
【0195】
TIGITのPVPとの相互作用は最も高い親和性(Kd=1〜3nM)を示したが、TIGITのPVRL3への結合の親和性はおよそ10〜30分の1(Kd=38.9nM)であった(表6を参照)。放射能リガンドアッセイにおける曲線フィッティングが乏しいので、PVRL2-TIGIT相互作用の結合定数は決定できなかったが、それにもかかわらず特定の結合が観察され、PVRL2-FcのCHO-TIGITへの中程度の結合を示す上記FACSデータと一致しており、さらにPVRL2とTIGITとの結合が低親和性相互作用であるという発見を強めた。ヨウ素化Fc融合タンパク質(リガンド)は、示した濃度でレセプター発現CHO細胞に結合し、CD226-Fc(CHO-TIGITの8μM;CHO-PVRの5μM)、TIGIT-Fc(CHO-PVRの2μM;CHO-CD226およびCHO-CD96の6μM)の10-倍階段希釈物と競合した。非特異的結合は2000倍過剰な非標識リガンドを使用して決定し、全結合量から減算した。競合試験は、TIGITはその他のコレセプターであるCD226及びCD96とのPVRの相互作用を効果的にブロックしたのに対して、CD226はTIGIT−PVR相互作用の効果の低い阻害剤であったことを示した(
図6)。このデータは、PVR−CD226相互作用(Tahara-Hanaoka, S. et al. Int Immunol 16, 533-8 (2004)、およそ115nM)と比較して、PVR−TIGIT相互作用(1−3nM)の観察された高い親和性と一致していた。CD96による直接競合試験は、そのタンパク質の発現が低いためにできなかったが、TIGITはCD96発現CHO細胞へのPVR結合を完全に阻害した。前述の競合試験は、TIGIT、CD226及びCD96がPVR上の共通の結合部位又は重なり合う結合部位を共有することを示した。この発見は、PVRのN末端IgVドメインに結合する抗PVR抗体であるD171が、PVRへのTIGIT及びCD226の結合をブロックするという所見により裏付けられた(
図7)。
【0196】
実施例3:TIGIT及びPVRの発現
(A) 休止及び活性化免疫細胞におけるTIGIT及びPVRの発現
免疫細胞上のTIGITおよびPVRの相対的な分布および発現は、正常な免疫機能におけるこれら2つの分子の役割の指標として評価し、インビボでPVRと相互作用することが既に公知であり実施例2において示されている分子であるCD226の発現と比較した。以前の研究は、複数の免疫細胞種並びに組織のアレイにわたって、TIGITの発現がT及びNK細胞に特異的であったことを示した(Abbas, A.R. et al., Genes Immun 6, 319-31 (2005))。様々な免疫細胞およびエクスビボの組織での、そして、活性化後のTIGITの発現を更に分析した。
図8A及び8Bに示すように、TIGITは、調節T細胞(T
reg)において最も強く発現され、また、ヒトの扁桃腺組織からのNK細胞およびT
fh細胞において高く発現される。TIGITは、非刺激NK細胞、活性化及び休止メモリーT細胞、CD8
+T細胞、及びTh2及びTh1細胞においてより小さい範囲で発現される。このデータは米国公開特許20040121370に示されるデータと相関しており、この出願では、TIGITが単離された休止CD4
+T細胞と比較して、抗CD3/ICAM−1および抗CD3/抗CD28によって活性化された単離されたCD4
+T細胞において有意に過剰発現されることが示された。それに反して、PVRは、内皮細胞、線維芽細胞、破骨細胞、濾胞性樹状細胞、樹状細胞、及び腫瘍細胞において発現されることが報告された(Sakisaka, T. & Takai, Y., Curr Opin Cell Biol 16, 513-21 (2004);Fuchs, A. & Colonna, M., Semin Cancer Biol 16, 359-66 (2006))。このデータから、TIGITが免疫応答を抑制しうる調節サイトカインを生産するT細胞と関係していることが強調される。
【0197】
また、実施例2に記載されたのと同じ方法を用いて、補完的フローサイトメトリー分析を行った。ヒトのエクスビボT細胞は、ヒトTIGITに交差反応し、TIGITのPVRとの相互作用を遮断するハムスター抗マウスTIGIT抗体(10A7)を用いて、表面TIGIT発現について活性化後に試験した(
図9を参照)。抗TIGIT抗体は、マウスTIGIT−Fc融合タンパク質によりハムスターを免疫化し、標準的な技術を使用してそこからハムスター抗マウス抗体を得ることによって製造した。10A7および1F4の2つの抗体もまた、ヒトTIGITに特異的に結合し(データは示さない)、更なる実験に用いた。特に、10A7及び1F4はヒトTIGIT上の異なるエピトープに結合する。このことは、TIGITに対する1F4の結合がTIGITを発現する293細胞の表面上のTIGITに対する10A7の結合を遮断しないという事実によって裏付けられる(データは示さない)。10A7の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列は標準的な技術を用いて決定した。この抗体の軽鎖配列は、DIVMTQSPSSLAVSPGEKVTMTC
KSSQSLYYSGVKENLLAWYQQKPGQS PKLLIYY
ASIRFTGVPDRFTGSGSGTDYTLTITSVQAEDMGQYFC
QQGINNPLTFGDGTKLEIKR(配列番号:21)であり、そしてこの抗体の重鎖配列は、EVQLVESGGGLTQPGKSLKLSCEAS
GFTFSSFTMHWVRQSPGKGLEWVA
FIRSGSGIVFYADAVRGRFTISRDNAKNLLFLQMNDLKSEDTAMYYCAR
RPLGHNTFDSWGQGTLVTVSS(配列番号:22)であり、ここで、各鎖の相補性決定領域(CDR)を下線を付して示す。ゆえに、10A7軽鎖のCDR1は配列KSSQSLYYSGVKENLLA(配列番号:23)を有し、10A7軽鎖のCDR2は配列ASIRFT(配列番号:24)を有し、10A7軽鎖のCDR3は配列QQGINNPLT(配列番号:25)を有する。10A7重鎖のCDR1は配列GFTFSSFTMH(配列番号:26)を有し、10A7重鎖のCDR2は配列FIRSGSGIVFYADAVRG(配列番号:27)を有し、10A7重鎖のCDR3は配列RPLGHNTFDS(配列番号:28)を有する。
【0198】
1F4抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列は、5'RACEを用いて決定した(例としてOzawa et al., BioTechniques 40(4): 469-478 (2006)を参照)。この抗体の軽鎖配列は、DVVLTQTPLSLSVSFGDQVSISC
RSSQSLVNSYGNTFLSWYLHKPGQSPQLLIF
GISNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISTIKPEDLGMYYC
LQGTHQPPTFGPGTKLEVK(配列番号:29)であり、そして、この抗体の重鎖配列は、EVQLQQSGPELVKPGTSMKISCKAS
GYSFTGHLMNWVKQSHGKNLEWIG
LIIPYNGGTSYNQKFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSDDSAVYFCSR
GLRGFYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号:30)であり、ここで各鎖の相補性決定領域(CDR)を下線を付して示す。ゆえに、1F4軽鎖のCDR1は配列RSSQSLVNSYGNTFLS(配列番号:31)を有し、1F4軽鎖のCDR2は配列GISNRFS(配列番号:32)を有し、1F4軽鎖のCDR3は配列LQGTHQPPT(配列番号:33)を有する。1F4重鎖のCDR1は配列GYSFTGHLMN(配列番号:34)を有し、1F4重鎖のCDR2は配列LIIPYNGGTSYNQKFKG(配列番号:35)を有し、1F4重鎖のCDR3は配列GLRGFYAMDY(配列番号:36)を有する。RACE配列決定法に使用するプライマーは以下の通りとした。RT−PCR遺伝子特異的プライマー:(i) 重鎖:IgGRace4:TTTYTTGTCCACCKTGGTGCTGC(配列番号:37);IgGRace2:CTGGACAGGGATCCAGAGTTCC(配列番号:38);IgGRace7:CARGTCAMDGTCACTGRCTCAG(配列番号:39);IgGRace1:GAARTARCCCTTGACCAGGC(配列番号:64);(ii) 軽鎖:KapRace3:GTAGAAGTTGTTCAAGAAG(配列番号:40);KapRace2:GAGGCACCTCCAGATGTTAAC(配列番号:41);KapRace7:CTGCTCACTGGATGGTGGGAAG(配列番号:42);KapRace1:GAAGATGGATACAGTTGGTGC(配列番号:43);そして、5'RACEテールPCRプライマー:ODC2:GATTCAAATCTCAATTATATAATCCGAATATGTTTACCGGCTCGCTCATGGACCCCCCCCCCCCDN(配列番号:44);ODC3:GAATTCCCCCCCCCCCCCC(配列番号:45);ODC4:CTCATGGACCCCCCCCCCCC(配列番号:46);ODC5:AAATATAATACCCCCCCCCCCCCC(配列番号:47);ADC5:AAATATAATACCCCCCC(配列番号:48)、およびADC5X:CTCATGGACCCCCCC(配列番号:49)。
【0199】
1F4軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、GATGTTGTGTTGACTCAAACTCCACTCTCCCTGTCTGTCAGCTTTGGAGATCAAGTTTCTATCTCTTGCAGGTCTAGTCAGAGTCTTGTAAACAGTTATGGGAACACCTTTTTGTCTTGGTACCTGCACAAGCCTGGCCAGTCTCCACAGCTCCTCATCTTTGGGATTTCCAACAGATTTTCTGGGGTGCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGTTCAGGGACAGATTTCACACTCAAGATCAGCACAATAAAGCCTGAGGACTTGGGAATGTATTACTGCTTACAAGGTACGCATCAGCCTCCCACGTTCGGTCCTGGGACCAAGCTGGAGGTGAAA(配列番号:50)であることが決定され、1F4重鎖をコードするヌクレオチド配列は、GAGGTCCAGCTGCAACAGTCTGGACCTGAGCTGGTGAAGCCTGGAACTTCAATGAAGATATCCTGCAAGGCTTCTGGTTACTCATTCACTGGCCATCTTATGAACTGGGTGAAGCAGAGCCATGGAAAGAACCTTGAGTGGATTGGACTTATTATTCCTTACAATGGTGGTACAAGCTATAACCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCACATTGACTGTAGACAAGTCATCCAGCACAGCCTACATGGAGCTCCTCAGTCTGACTTCTGATGACTCTGCAGTCTATTTCTGTTCAAGAGGCCTTAGGGGCTTCTATGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA(配列番号:51)であることが決定された。
【0200】
ヒト末梢血液単核細胞(PBMC)は、フィコール-Paqueプラス(Amersham Biosciences)の遠心分離法によって、バフィーコートから単離した。示されたサブセットの細胞は、対応するMACSキット(Miltenyi)にて精製した。分類した細胞の純度はフローサイトメトリによって確認し、磁気細胞分類法によって精製した細胞では93%超からフローサイトメトリによって精製した細胞では98%超の範囲であった。すべての細胞は、染色前に10〜20%の適切な血清又は精製したIgGにて遮断した。定量的PCR分析を行い、分類した細胞群における対象のタンパク質のmRNAレベルを評価した。分類した細胞の総RNAは、RNeasyキット(Qiagen)にて単離して、DNAアーゼI(Qiagen)にて消化した。7500配列検出システム(Applied Biosystems)を用いて製造業者の指示に従って、総細胞RNAを逆転写し、リアルタイムTaqMan
TMPCRによって3通り分析した。任意の発現単位を刺激していない細胞に対する倍数発現とした。TIGITを検出するために用いたフォワード及びリバースのプライマーはそれぞれ、TGCCAGGTTCCAGATTCCA(配列番号:52)および、ACGATGACTGCTGTGCAGATG(配列番号:53)であり、使用するTIGITプローブ配列は、AGCCATGGCCGCGACGCT(配列番号:54)とした。
【0201】
CD4
+T細胞をPBMCから単離し、抗CD3および抗CD8にて活性化した。細胞表面に発現したTIGITが、非刺激ナイーブCD4
+CD45RA+細胞において検出されなかったのに対して、非刺激CD4
+CD45RO
+細胞では低いが発現が検出された(
図10A−1から10A−2)。
図10A−1から10A−2に示されるように、TIGIT発現は、RA
+とRO
+のサブセットのCD4 T細胞では有意に異なっていた。PBMCからエクスビボで直接分類した免疫細胞群のmRNAの分析から、ナイーブCD4+CD45RA+細胞におけるTIGIT発現と比較して、試験した他の細胞種よりもT
reg、ROおよびNK細胞におけるTIGITの発現が大きいことが示された(
図10B)。
図10A−1から10A−2に示すように、抗CD3およびCD28による活性化の後、細胞表面に発現するTIGITは、ナイーブおよびメモリーT細胞群の両方において上方制御されていた。CD4
+CD45RO
+メモリー細胞は、CD4
+CD45RA
+ナイーブ細胞と比較して、活性化の24及び48時間後に発現レベルが有意に高かった(
図10A−1から10A−2)。CD4
+CD45RO
+メモリー細胞が1日目に0日目の5.3倍のTIGIT mRNAを発現したのに対して、ナイーブ細胞は0日目と比較して1.4倍しかTIGITの発現が増えていなかった(
図10C)。TIGIT発現は6日目まで検出できなかった。
【0202】
また、T細胞上のTIGIT発現の安定性も評価した。簡単に言うと、CD4
+CD45RO
+細胞を単離し、抗CD3/抗CD28にて1日活性化した。細胞は、CD4
+およびCD4
+TIGIT
+群についてFACSによってフロー分類した。分類後5日間休止させた後、細胞を抗CD3/抗CD28にて最大3日間再刺激し、細胞表面TIGIT発現をFACSにて測定した。異なる実験において、分類したTIGIT
+細胞およびCD4
+細胞を、様々な濃度の抗CD3(0〜0.8μg/ml)、100μl容量にてコートした96ウェルプレートに、2×10
5細胞/ウェルの密度でプレートし、標準的な条件下で4日間培養した。培養の最後の18時間に
3Hチミジンを添加し、その後洗浄した。4日の終わりに、細胞を可溶化し、各試料と関係する放射能をシンチレーション計数器にて測定した。
図12A及び12Bに示されるように、TIGIT発現はTIGIT
+細胞およびTIGIT
−細胞の両方で誘導された。このことは、TIGIT
−細胞が特定の条件下でTIGITを発現することができること、そしてTIGIT
+細胞が一定の細胞群でないことを示す。
【0203】
エフェクターメモリー細胞上でTIGITの発現が高いことから、T細胞サブセットでの発現を更に調べた。活性化されたエフェクター/メモリーT細胞上で発現される同時刺激又は同時抑制性分子が誘導されるT
regsに発現されることがおおいことから、T
regsのTIGIT発現を評価した。T
regsは、CD25
hi細胞として表現型を定義され、転写因子FoxP3を発現することが知られている(Fontenot, J.D. et al., Immunity 22, 329-41 (2005))。マウスでは、転写因子FoxP3は、Treg群を同時に定義するために用いられる(Linsley, P.S. et al., Science 257, 792-5 (1992))。しかしながら、すべての活性化されたヒトT細胞がFoxP3を発現するので、この関連は、ヒトT細胞において保たれていない(Ziegler SF., Eur J Immunol. 37(1): 21-3 (2007)))。エクスビボで新たに単離したCD4
+CD25
hi細胞がTIGITを発現したのに対して、CD25
−細胞はTIGITの細胞表面発現について陰性であった(
図R(D))。また、TIGIT
+T細胞がFoxP3およびGITRを同時に発現した(
図9および10E)。分類されたCD25
+細胞の活性化により、TIGITタンパク質発現の上方制御(
図10F)とmRNAレベルの6.5倍の増加(
図10Cおよび10F)が生じた。TIGIT mRNAの倍数的な増加は、T
regおよびメモリーT細胞において同等であった。
ドナーPBMCからエクスビボで直接分類した免疫細胞からのmRNAレベルの比較から、CD4
+CD25
hi T
regs、CD4
+CD45RO
+およびNK細胞がそれぞれ有意にTIGITを発現しており、Tregsが最も高い発現を表したことが示された(
図10C)。TIGIT発現は、休止又は活性化されたB細胞又は単核細胞において観察されなかった(
図10Cおよびデータは示さない)。特に、PVRのための他のコレセプターであるCD226がCD4
+CD25
hi T
reg細胞において上方制御されていなかったことから、TIGITとCD226の異なる調節的役割が示唆される(
図11)。
【0204】
他の実験では、ヒト扁桃腺T(T
FH)細胞上のTIGIT発現を、上記のような標準的なプロトコールに従って、フローサイトメトリーを用いて試験した。ただし、FoxP3を用いるアッセイのために、上記のプロトコールに従って抗体にて染色し、その後細胞を固定及び透過処理し、抗FoxP3又はコントロールIgGにて染色した。TIGIT発現は、T
FH細胞において典型的に観察されるマーカーであるCXCR5とICOSのT細胞での高レベルの同時発現と相関していた(
図8A)。それに反して、それら細胞におけるCD226(DNAM)発現は、低いか又は存在しなかった(
図8A)。また、高レベルのTIGIT発現は、CD4
+CCR4
+CCR6
+IL−17産生Th細胞においても観察された(
図14)。総して、TIGITは、休止及び活性化されたT調節細胞、ヒトの扁桃腺のT
fh細胞、IL17を産生するヘルパーT細胞、休止及び活性化されたエフェクター/メモリーTヘルパー細胞(CD4
+CD45RO
+細胞)およびNK細胞によって発現されることが示され、これらの細胞の活性化によりさらに上方制御されうる。また、CD8
+細胞はTIGITを発現し、この発現は細胞活性化時にわずかに上方制御される。CD226は、CD8
+T細胞、CD45RA
+T細胞、マスト細胞、血小板、ナチュラルキラー(NK)細胞、活性化されたCD4
+CD45RA
+T細胞およびCD4
+CD45RO
+T細胞によって発現されることが、本明細書中で示され、当分野で公知でもある。TIGITは、T
regおよびT
Fhおよび休止のエフェクター/メモリーCD4
+CD45RO
+細胞に特異的に発現されるのに対して、CD226は、これらの細胞において発現されない。
【0205】
(B) ヒトの疾患におけるTIGIT及びPVRの発現
次に、TIGITが免疫細胞の特定の集団に高く発現されることがわかっているので、TIGIT、PVRおよびCD226の発現レベルを、乾癬、炎症性腸疾患、関節炎、喘息および癌を含む異なる免疫関連疾患状態からの組織において評価した。試験のためにマイクロアレイベースのシステムを用い、好適なマイクロアレイプロトコールの記載は、例えば、出典明記によって本明細書中に援用される米国公開特許20080038264などの文献に見られる。
図15に示されるように、炎症を起こしていない組織と比較して、炎症を起こしたヒトの滑液組織においてTIGITの有意な発現が観察され、これは特に関節リウマチ組織の場合に顕著であった。炎症を起こした関節炎組織試料内で、TIGIT発現は、マクロファージ又は線維芽細胞とは対照的に、主にT細胞と相関していた(
図15、右パネルを参照)。このデータは、TIGIT mRNAレベルのRT−PCR分析によって、マウスのコラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルにおいてさらに確認された(
図16を参照)。本明細書中で用いられるCIAモデルにおいて、DBA−1Jマウスを、0日目及び21日目に、100μlの完全フロイントアジュバント(CFA)中の100μgのウシコラーゲンタイプIIの皮下接種にて免疫化した。28、30及び40日目に、後足の関節からRNAを抽出し、上記の通りにTIGITおよびCD226発現について評価した。
図16に示されるように、40日目にTIGIT発現の増加が観察されたのに対して、40日目までにCD226発現は有意に下方制御された。
【0206】
正常組織と比較したときのTIGIT発現の僅かな増加は、乾癬組織試料および炎症性腸疾患組織試料において観察された。アカゲザルの喘息組織試料における同種の分析により、TIGIT発現が正常なコントロール組織と比較して、患部組織において有意に上昇されることが示された(
図17)。また、正常な胸部組織と比較して、乳癌試料はTIGIT発現が大きく増加しており、その量は乳癌組織の種類によって異なる。
図18Bの上パネルに示されるように、最も低い割合の腫瘍細胞を有する腫瘍試料において、TIGITの最も大きな発現が観察されたことから、TIGIT発現は、腫瘍細胞自体よりも、腫瘍に浸潤する他の細胞と相関していることが示唆される。
図18Aの下パネルは、低い割合で腫瘍細胞を有する腫瘍試料においてCD4
+細胞が増加していることを示す。T
regおよび他のT細胞サブセット上のTIGITの発現について本明細書中でデータが示されたので、最も低い割合で腫瘍細胞を有する胸部腫瘍試料において観察された高レベルのTIGIT発現は、TIGITが免疫細胞腫瘍浸潤物、たぶんT
reg浸潤物によって発現されていることを示唆する。乳癌試料におけるTIGIT発現とT細胞との相関性は、TIGITが腫瘍調節において役割があることが示唆される。例えば、腫瘍は、TIGIT
+T
regsを補充する/活性化することによって、宿主の免疫応答を回避するかもしれない。
【0207】
実施例4:T細胞活性化におけるTIGITの役割
T
regおよびメモリーT細胞によるTIGITの高レベルの発現が上記に示され、樹状細胞上でのPVRの発現が公知であるので(Pende, D. et al., Blood 107, 2030-6 (2006))、TIGITがDC機能を修飾し、T細胞活性化を生じるかもしれない可能性を調べた。
【0208】
(A) T細胞増殖を調節する際のTIGITの機能
混合リンパ球反応(MLR)増殖アッセイにおけるTIGIT-Fcの作用を、TNFαにて成熟された単球由来のヒトのDCを用いて評価した。簡単に言うと、ヒトの総PBMC(Miltenyi Biotec)のネガティブ選択によって単球を単離した。未成熟の単球由来のDC(iMDDC)は、単球(3×10
5細胞/ml)を、ヒト組換えIL−4(125ng/mL、R&D Biosystems)およびヒト組換えGM−CSF(50ng/mL、R&D Biosystems)を添加し、10%FBS、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含有する完全RPMI1640中で、加湿した空気中、37℃、5%CO
2にて5日間インキュベートすることによって生成した。2日目及び4日目に、GM-CSFおよびIL-4を新鮮な完全RPMI1640培地と共に再び添加した。5日の培養の後、FACS分析にて確認すると、細胞の90%以上が未成熟のDC表現型(CD14
−、MHCクラスII
+、CD80
+、CD86
+およびCD83
low)を表す。これら未成熟DCをここで、LPS、CD40L、TNFα、Pam3CSK4とTSLP、及び示した融合タンパク質による処置のために用いて、その成熟を誘導した。MDDCおよび細胞株の表現型分析は免疫蛍光法によって行った。細胞表面染色のために用いたモノクローナル抗体は、PE標識抗CD83、FITC−HLA−DR、PE−抗CD86およびFITC−抗CD80を含む。すべてのインキュベートは、融合/抗体のFc部分による結合を予防するために、10%ヒトAB血清の存在下で行った。TNFα(0.1μg/mL)による刺激の前に、示した分子を、10μMのMEK1阻害剤(PD98059)、1μg/mLの抗IL−10抗体、10μg/mlの抗CD32抗体又は10μg/mlの抗TIGIT抗体と予めインキュベートすることによって、阻害剤試験を行った。溶媒DMSO又はヒトIgGをコントロールとして用いた。16時間後に細胞培養物上清を回収し、ELISAにてIL−12p40の産生についてアッセイした。
【0209】
T細胞増殖および活性化に対するブロック抗TIGIT抗体10A7の効果を評価した。抗CD3活性化CD4
+CD45RO
+T細胞の10A7とのインキュベートでは効果は観察されなかった。T細胞を自己由来のCD11c
+DCと抗CD3と共に培養すると、T細胞増殖が2倍増加し(p<0.01)、IFNγ産生が4倍増加した(p<0.001)(
図19C)。T細胞活性のこの悪化は、総PBMCにおいて僅かに観察された。対照的に、TIGIT-Fcは、CD11c
+DCの存在下で、T細胞活性化(p<0.01)とIFNγ産生(p<0.001)を有意に阻害した(
図19D)。総PBMCを抗CD3にて活性化したときに、TIGIT-Fcが先の試験において観察された効果よりも軽い効果を示したことから、細胞上に存在するPVRの量は活性に重要である可能性が示唆された。TIGITはT細胞に結合しないので、予測されるとおり、T細胞単独には効果は観察されなかった。また、抗TIGIT抗体処置は、APCの存在下でのみ、T細胞増殖のT
reg抑制をブロックすることが明らかとなった。さらに、TIGIT.Fcは、トランスウェルアッセイにおいてCD11c+細胞機能を制御すること、そしてナイーブT細胞増殖を阻害することが明らかとされたことから、細胞の行動及び増殖における観察された変更は、特にTIGIT結合によるものであることが示された。まとめると、これらのデータから、TIGITがAPCへのリガンド、特にPVRとの相互作用によりT細胞活性化を調節することが示唆された。
【0210】
iMDDCとTNFα成熟MDDCは共に表面PVRを発現し、MDDCはiMDDCよりも高いレベルのPVRを発現した(
図19A)。また、TNFα成熟MDDCは、非刺激iMDDCよりもT細胞の増殖を増加させた(
図19B)。MLRアッセイでは、TIGIT-Fcを添加すると僅かではあるが有意に増殖が減少したのに対して、TNFα成熟MDDCにTIGIT-Fcを添加すると基準レベルに増殖が低減した。TIGITが誘導する増殖の阻害は、抗TIGIT抗体10A7又は抗PVR抗体TX21を更に含めると妨げられた。3日目に測定した分泌されたIL−10のレベルは、アイソタイプコントロールを含む培養物よりも、TIGIT-Fcを含む培養物において有意に高かった(45±5pg/mL対29±8pg/mL、それぞれp=0.04)。また、抗TIGIT抗体又は抗PVR抗体を含めると、分泌されるIL−10のTIGIT-Fcが誘導する増加が妨げられた(データは示さない)。IFNγレベルは、TIGIT-Fc処置によって低減した(データは示さない)。まとめると、このデータから、TIGITがT細胞活性化を調整することが示唆された。
【0211】
さらに、共培養におけるTIGIT
−T細胞増殖に対するTIGIT
+T細胞の効果を調べるために、MLRアッセイを行った。簡単に言うと、ヒトのPBMCからCD4
+CD45RO
+T細胞を単離し、5日間活性化した。6日目に、抗CD3/抗CD28にて細胞を終夜再刺激し、TIGIT
+細胞をFACSによってTIGIT
−細胞と別に分類した。TIGIT
−細胞をCFSE標識し、培養物中に同じ数のTIGIT
+細胞のある場合と無い場合の、第二ドナーから単離したCD11c
+細胞と共に10:1の比で混合した。サイトカイン産生(IFNγ又はIL-17)のルミネックス分析のために7日目に培養物上清を回収した。8日目に、CFSE
+生細胞についてゲートしたFACSにて細胞増殖を分析した。結果は、
図20Aおよび20Bに示す。
図20Aに示されるように、TIGIT
+T細胞は、TIGIT
−T細胞より低いレベルのIFNγおよびIL−17を発現した。TIGIT
+T細胞をTIGIT
−T細胞と混合すると、結果として生じた培養物はこれら2つのサイトカインの産生が有意に低くなったことから、TIGIT
+T細胞はこれら2つのサイトカインのTIGIT
−T細胞産生を阻害することが示された。また、TIGIT
+細胞は、TIGIT
−T細胞の増殖を阻害した(
図20B)。これはさらに、TIGIT
+細胞が実際は調節細胞であって、阻害性サイトカインの分泌により直接か又は抗原提示細胞上のPVRの嵌入を経て間接的にそれらの応答を阻害するようにCD4
+細胞に作用しうるという考えを裏付けるものである。
【0212】
CD4
+CD25
hiT
reg細胞が特に高くTIGITを発現するという実施例3(A)の所見に基づいて、アッセイを行って、T
regT細胞サブユニットの、他の免疫細胞の増殖を阻害する能力を調べた。簡単に言うと、製造業者の指示に従ってMACSキット(Miltenyi)にてバフィーコートからCD4
+CD25
hiT
reg細胞を単離した。また、CD4
+CD25
−細胞は、アッセイに用いるためにエフェクターT細胞として調製した。MACS CD3ミクロビーズ(Miltenyi)を使用してT細胞において予め枯渇させていたPBMCに照射することによって、標準的な方法によって、抗原提供細胞(APC)群を単離した。単離したT
reg、エフェクターT細胞およびAPCを1:4:4の比に混合し、0.5μg/mlの可溶性抗CD3と共にインキュベートした。細胞混合物を、10μg/mlの抗TIGIT抗体10A7又はコントロールIgGにてコートしたウェルに播き、4日間培養し、[
3H]-チミジンを添加して最後に18時間のインキュベートを行った。各ウェルの細胞を可溶化し、各細胞試料の放射能量を定量化した。示された増殖値の割合は、T
reg細胞非存在下でのエフェクター細胞において観察される放射能の量との相対として算出した。結果を
図21Aに示す。TIGIT
+T細胞がTIGIT
−T細胞の増殖を阻害したという前記の実験の所見と一致して、コントロールIgGにてコートしたウェルではおよそ55%の細胞増殖が観察された。ウェルに抗TIGIT抗体を含めると、観察される増殖が有意に増加したことから、TIGITは抑制効果を媒介することが確認された。さらにこの所見は、TIGIT
+T
regが免疫細胞の増殖及び機能のネガティブ調節因子として働きうることを示唆する。実際に、CD4
+CD25
hiTIGIT
+T
regおよびCD4
+CD25
hiTIGIT
−T
regを単離し、ナイーブT細胞増殖を抑制する能力について別々に試験すると、TIGIT
−T
regよりTIGIT
+T
regがナイーブT細胞増殖の抑制に強力であったことが明らかとなった。簡単に言うと、TIGIT
+およびTIGIT
−のT
regをFACSにて単離した。CD11c
+細胞を、CD11c-PE(BD Biosciences)および抗PEミクロビーズ(MACS)を用いて陽性選別した。ナイーブT細胞を、4×10
5の密度で、2×10
5のT
regおよび0.8×10
5のCD11c
+抗原提示細胞とともに、U底96ウェルプレートに播いた。
図21Bに示されるように、ナイーブT細胞増殖の抑制において、TIGIT
+T
regはTIGIT
−T
regのおよそ2倍の強さであったは、TIGIT
+T
regは免疫細胞の増殖及び機能のネガティブ調節因子として働きうるという発見を裏付けるものである。
【0213】
(B) TIGITのノックダウン
前記のように構築したgDタグ付加TIGITを発現する安定細胞株(293-TIGIT細胞)を使用して、これらの細胞が、外因性PVR、架橋抗TIGITモノクローナル抗体10A7との相互作用により、又は過バナジン酸処置によりTIGITのリン酸化を表さなかったことが明らかとなった。加えて、これらの細胞の10A7処置では、TCRシグナル伝達に対する有意な効果は生じなかった。これらのデータは、構築した細胞において発現されるTIGITのいずれかのITIMモチーフが機能していなかった、または、安定細胞株がTIGIT活性化に必要な一又は複数の構成成分を欠いていたことを示唆した。
【0214】
TIGITの細胞内在性機能をさらに説明するために、阻害性RNA(RNAi)研究を実施した。On−Targetplus遺伝子特異的siRNAおよびネガティブコントロールsiRNAは、Dharmacon RNAi Technologyから入手した。MACS
TMキット(Miltenyi Biotec)によりバフィコートからヒトCD45RO
+T細胞を精製し、CFSEにて標識した。製造業者の指示に従って、Nucleofector
TM技術(Amaxxa)にてsiRNA(siRNA
コントロール又はsiRNA
TIGIT)をこれら細胞に形質移入した。24時間後に、形質移入した細胞を、プレート結合抗CD3(5μg/mL)単独又はそれと2μg/mLの可溶化抗CD28にて活性化した。定量的RT−PCR(qRT-PCR)又はFACS分析のために、活性化後2日目又は5日目にいくつかの細胞を採取した。5日目に、T細胞増殖を上記の通りにFACSによって測定した。前記の実施例3(A)に記載のようにqRT-PCRを実施し、各試料のRPL-19mRNAレベルを内部コントロールとして用いた。TIGITプライマーは上記の通りであり、ヒトのCTLA4およびCD226プライマーおよび問題は、Applied Biosystemsから入手した。マウスIL−12およびIL−10の異なる種を検出するために用いたプライマーおよびプローブの配列は以下の通りとした。mIL-12p40:フォワードプライマー:5'-ACATCTACCGAAGTCCAATGCA-3'(配列番号:55);リバースプライマー:5'-GGAATTGTAATAGCGATCCTGAGC-3'(配列番号:56);プローブ:5'-TGCACGCAGACATTCCCGCCT-3'(配列番号:57);mIL-12p35:フォワードプライマー:5'-TCTGAATCATAATGGCGAGACT-3'(配列番号:58);リバースプライマー:5'-TCACTCTGTAAGGGTCTGCTTCT-3'(配列番号:59);プローブ:5'-TGCGCCAGAAACCTCCTGTGG-3'(配列番号:60);mIL-10:フォワードプライマー:5'-TGAGTTCAGAGCTCCTAAGAGAGT-3'(配列番号:61);リバースプライマー:5'-AAAGGATCTCCCTGGTTTCTC-3'(配列番号:62);プローブ:5'-TCCCAAGACCCATGAGTTTCTTCACA-3'(配列番号:63)。
【0215】
TIGITに特異的なRNAiを用いて、通常ではTIGITを高いレベルで発現する原発性ヒトCD45RO
+T細胞においてTIGIT発現を特異的にノックダウンした(
図10A−1から10A−2)。この方法を用いたTIGITノックダウンの有効性を、qRT-PCRおよびFACS分析によって評価した(
図28A、28B及び表7)。処置の2日目までに、TIGIT転写は、スクランブルしたsiRNA
コントロールと比較して、siRNA
TIGIT処置により90%より多く低減したのに対して、CTLA4 mRNA(コントロールタンパク質)はこの処置により変化しなかった。TIGITmRNAの低減により、T細胞の平均25%から2%未満に細胞表面TIGITが減少した(
図28B)。5日目までに、これら同じ細胞でのTIGIT発現は、コントロール細胞での発現と比較して70%減少した(
図28Aおよび28B、および表7)。TIGITのノックダウンは、抗CD3(最適以下又は最適濃度のいずれか)又は抗CD3+抗CD28に応答したT細胞増殖には有意な効果を示さなかった(
図28C)。同様に、TIGITのノックダウンはまた、サイトカインIL−2、IL−4、IL−10又はIFN-γの産生に対しても効果が観察されなかった(
図28E)。さらに、細胞を抗TIGIT抗体10A7にて処置しても、上記と同じ条件下ではTIGITを発現するT細胞の活性化に対する効果は観察されなかった(
図28D)。
表7 TIGIT RNAiノックダウン効果
*C
T値は、TIGIT又はCTLA4のC
T値±標準偏差を示す。
【0216】
実施例5:サイトカイン産生に対するTIGITの効果
TIGITがT細胞成熟に対して上記の全般的な効果以外にDCに対して直接作用したか否かを決定するために、TIGIT-Fcの存在および非存在下でDCの成熟および機能を評価した。混合T細胞群におけるIFNγ及びIL−17の産生を調節するTIGITの能力に関する実施例4の結果から、TIGIT-Fcにて処理したDCによるサイトカイン産生の更なる。無処置のT細胞はネガティブ選択によって精製し(CD4 T細胞単離キット、Miltenyi Biotech)、95%を上回る純度にした。細胞は、標準的な栄養成分を有する完全なRPMI1640培地に再懸濁した。同種異系のT細胞(2×10
5)は、96ウェルU底マイクロプレート(Nunc)に1ウェル当たり200μlの培地中で、示した比率のiMDDC及びMDDCの非存在下(培地のみ)又は存在下で培養した。細胞を72時間培養した後、[
3H]チミジン(Amersham)の1μCi(0.037MBq)にて18時間パルスを与えた。細胞採取器を用いてUnifilter-96プレートGF/Cへ細胞を移し、[
3H]チミジン取込みをシンチレーションカウンター(Canberra Packard Ltd.)を使用したシンチレーション液において測定した。すべての測定は3通り行った。iMDDCによるサイトカイン産生は、培養の5日目に採取し、−80℃に保存した上清で分析した。同じMDDCは、TIGIT-Fc又はTIGIT-Fc-DANAの有無の下で、示した刺激の存在下又は非存在で24時間成熟させた。48時間の刺激の後に、上清を採取し、−80℃に保存した。サイトカイン濃度は、製造業者の指示に従ってELISA (R&D Biosystems)によって、または、製造業者の指示に従ってLuminex100の計測器(Luminex)による検出を有するLINCOplex抗体固定ビーズ(LINCO Research)を用いることによって測定した。
【0217】
TNFα又は可溶性CD40Lによる成熟の間にTIGIT-Fc、TIGIT-Fc-DANA又はCD226-FcをiMDDCに加えると、IL−12/23p40産生およびIL−12p70産生は、アイソタイプ一致のコントロールによる処置と比較して有意に低減し(それぞれp=0.007及びp=0.03)、iMDDCに相当するレベルであった(
図22A−1から22A−3)。反対に、IL−10の分泌は、アイソタイプ一致のコントロールによる処置と比較して、TIGIT-Fc、TIGIT-Fc-DANA又はCD226-Fc処置により増加した(それぞれp=0.027及びp=0.18)(
図22A−1から22A−3)。また、TGFβ分泌は、TIGIT-Fc処置に応答してiMDDCにおいて増加した(
図22Dを参照)。しかしながら、CD80、CD86、CD83およびHLA-DRがアイソタイプコントロール培養物において等しく上方制御されていたので、TIGIT-Fcは、MDDCへ成熟するiMDDCの能力に作用しなかった(
図22B)。特に、TIGIT-PVR相互作用はDC成熟を直接誘導しなかった。
【0218】
また、TLRが媒介するDC成熟経路に対するTIGIT-Fc、TIGIT-Fc-DANAおよびCD226-Fcの効果を調べた。3つのFcタンパク質のそれぞれによって処置すると、LPSからのIL−10産生が僅かに増加したが(TLR4成熟MDDC(p<0.01))類似の、IL−12/23p40の減少(p=0.07〜0.18)およびIL−12p70産生の有意な減少(すべての融合タンパク質についてp<0.05)が現れ(
図22A−1から22A−3を参照)、TLR2成熟経路に対しては効果を示さなかった。DCのTIGIT処置によるIL−10及びIL−12p40産生のこの変更は、GM−CSFおよびIL−4による分化の間にTIGIT-Fcを単球に加えても、または、成熟段階の間に加えたときでも同様であった(データは示さない)。成熟していないiMDDCにおけるIL−10及びIL−12p40の産生に対するTIGIT−Fcの効果は軽度であるが、iMDDCにおいて観察されるこれらサイトカインのレベルは低いので、統計学的に有意な効果は検出が困難であった(
図22B)。特に、これらアッセイにおいてCD226はTIGITと同様に機能した。これは、MDDCのPVRに対する役割を裏付ける。CD226はITAMモチーフを有し、TCRシグナルを亢進するように働くので(Dalhardon et al. J. Immunol. 175: 1558-1565 (2005))、異なるサブセットのT細胞上でのTIGITおよび/またはCD226の発現の程度は、インビボの局所炎症反応の差次的な調節に寄与しうる(
図10、
図29)。
【0219】
また、TIGIT-FcによるDC処置によって他の炎症誘発性サイトカインの産生のレベルを決定した。IL-6及びIL-18の産生は、すべての成熟したMDDC群でのTIGIT-Fc処置によって有意に減少した。IL−12p40はIL−12p70およびIL−23の公知のサブユニットであるので、それら両方のサイトカインの産生のレベルをTIGIT-Fc処置したMDDC培養物において測定した。コントロール培養物と比較して、TIGIT-Fc処置により、TNFα又はCD40Lによって成熟されたMDDCによってIL−12p70の産生が有意に減少した(
図22C)。IL-23レベルは相対的に低く、アッセイ条件下で僅かに検出可能であった。TIGIT-Fcはすべて成熟したMDDCの条件下でIL−6とIL−18を低減したが、ドナーに多様性があるために、観察された減少は統計学的に有意なものでなかった。
【0220】
観察されたTIGIT-Fcの効果がPVRの架橋結合を必要としていたのか否かを調べるために、FcγR結合が完全にされていないTIGIT-FcのFc変異型(実施例1に記載のTIGIT-Fc-DANA)を用いた。
図22A−1から22A−3に示されるように、TIGIT-FcとTIGIT-Fc-DANAは等しく有意にIL−12p40を阻害し、TNFαによって成熟されたDCからのIL−10産生を亢進した。この結果は、TIGIT融合タンパク質によって歪んだサイトカインがFcが媒介する架橋結合に依存していないことを示した。
DCからのサイトカイン産生パターンを変更するTIGITの能力は、すべてのインビトロ成熟条件下で観察されたわけではなかった。効果は、TNFα、可溶性CD40LおよびLPS(TLR4)誘導性成熟経路に対して最も現れたのに対して、TLR2媒介性の成熟は影響を受けないままであった。LPSおよびPam3CSK4が様々な程度にERKおよびp38を活性化し、LPSは主にp38を活性化し、Pam3CSK4処置により高いERKキナーゼ活性が生じることが示された。したがって、Pam3CSK4成熟DCのTIGIT-Fc処置はほとんど効果を示さなかった(
図22A−1から22A−3)。ERK/p38経路を制御するTNFαおよびCD40Lのようなこれらおよび他の刺激の差次的能力は、MDDC機能の結果を決定する際に重要である。DCはTregsを拡大することが示されただけでなく、DCはTreg耐性を壊し、活性化およびIL−2産生を誘導しうる(Fehervari, Z. & Sakaguchi, S., Curr Opin Immunol 16, 203-8 (2004))。他の成熟条件ではなく特定の成熟条件下でTIGITがDCを変更することができることから、TIGIT調節はT
regおよび活性化されたT細胞がDC機能を微調整しうる一つの方法であることが示唆される。
【0221】
また、B細胞及びT細胞を欠いているがマクロファージおよび樹状細胞を有するマウスモデル(scidマウス)においてTIGIT機能の研究を行った。簡単に言うと、CB17/SCIDマウス(6〜8週齢)に、200μgのTIGIT.Fc、TIGIT.DANA又はコントロール抗ブタクサ抗体を1回静脈注射した。抗CD40モノクローナル抗体又はアイソタイプコントロール(200μg/マウス)を6時間後に投与した。血清を16時間後に採取し、ELISAアッセイによってIL-10、MCP-1、IL−12p40およびIL-12p70のレベルを分析した。scidマウスにおけるTIGIT-Fc又はTIGIT-Fc-DANAの投与により、IL−10およびIL−12p40の産生が刺激され、IL−12p70の産生が低減した(
図13A−C)。この所見は、上記のインビトロデータと一致しており、サイトカイン調節効果を発揮するためにTIGITはB細胞又はT細胞を必要としないことを示唆する。
先の実施例から、TIGITの発現はT細胞及びNK細胞に限定されており、T
regsで最も高い発現が見られた。PVRのための低親和性リガンドであるCD226は、活性化されたT細胞上で発現されるにもかかわらず、T
regsでは発現されない(Abbas, A.R. et al., Genes Immun 6, 319-31 (2005);Dardalhon, V. et al., J Immunol 175, 1558-65 (2005))。インビボでのTIGITとCD226のバランスは決定されていないままであるが、PVRに対してTIGITの親和性が高いことから、その両方が同時に発現されると優性の役割を示すことが示唆される。まとめると、活性化されたT細胞およびT
reg上でTIGITの発現が高いこと、そして、IL−10を誘導し、成熟したDCからの炎症誘発性サイトカイン放出を阻害するPVRとTIGITとの相互作用から、TIGITは免疫応答を下方制御するフィードバック機構を提供することが示唆される。
【0222】
実施例6:PVRシグナル伝達に対するTIGITの効果
MAPKシグナル伝達経路がIL−10経路を制御する際に重要であるので(Xia, C.Q. & Kao, K.J., Scand J Immunol 58, 23-32 (2003))、MAPK経路のいくつかのメンバーの活性をTIGITで処置したMDDCにおいて評価した。CHO-PVRを3時間血清飢餓状態にし、その後、50μg/mLのTIGIT-Fcにて37℃で15分間処置するか又は処置しないものを作製した。細胞を均質にし、膜タンパク質を、細胞膜抽出キット(BioVision)を使用して抽出し、非還元条件下でドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行い、その後ニトロセルロースメンブラン(BioRad)に移した。メンブランは、50mM トリス-HCl(pH7.6)、150mM NaCl、0.1%Tween−20中の5%BSAにてブロックし、次いで、抗ホスホチロシン−HRP(BD Bioscience)にてプローブし、Restoreバッファ(Pierce)にて取り除き、そして、抗PVRヤギポリクローナル抗体(R&D Systems)にて再プローブした。5日目にiMDDCを、10μg/mLのTIGIT-Fc又はコントロールヒトIgGにて37℃で示した時間の間処置した。総細胞溶解物はRIPAバッファに調製し、還元条件下でSDS-PAGEを行い、イモビロン重合ビニリデン二フッ化物メンブラン(PVDF、Millipore)へ移した。50mM トリス-HCl、pH7.6、150mM NaCl、0.1%Tween-20中の1%BSAにてブロックした後、化学発光タンパク質検出を行った。再プロービングのために、メンブランを、ストリッピングバッファ(62.5mM トリス-HCl、pH6.7、100mM β-メルカプトエタノール、2%SDS)中で、時々撹拌しながら50℃で30分間インキュベートした。抗ホスホチロシンに特異的なポリクローナル抗体(Upstate)、抗ホスホp38MAPK(Cell Signaling Technology)およびモノクローナル抗ホスホp44/42MAPK(Cell Signaling Technology)を用いて、ホスホチロシン、リン光体-p38MAPKおよびリン光体-ERKの検出を行った。タンパク質負荷のためのコントロールとして、ERK (Cell Signaling Technology)、p38MAPK (Cell Signaling Technology)又はβ-アクチン(NeoMarkers)、β-カテニン(BD Pharmingen)又は活性なβ-カテニン(Upstate)に対するポリクローナル抗血清を用いて再プローブした。
【0223】
図23Aに示されるデータは、TIGITへの結合によりPVRがリン酸化されることを示す(図の下方に同程度に濃いバンドとして示されるようにPVRの全量は一定であったが、TIGIT処置細胞に対してアイソタイプ一致のコントロールで観察されたリン酸化チロシンバンドは比較的僅かであった)。これは、TIGIT結合がPVRによって媒介されるシグナル伝達機能を惹起することを示唆した。TIGIT-FcおよびTIGIT-Fc-DANA処置iMDDCでは、単量体(42KD)ではなくpERK二量体(91KD)のリン酸化の増加が観察された(
図23B)。対照的に、p38活性は影響を受けなかった(
図23B)。最近の報告から、E-カドヘリンの刺激と活性なβ-カテニンの誘導は、マウス骨髄由来のDCを、インビボで免疫応答を阻害することができる免疫寛容誘発DCに成熟させたことが示唆された(Jiang, A. et al., Immunity 27, 610-24 (2007))。ここで、ヒトMDDCをTIGIT-Fcで処置すると、β-カテニン経路の活性型が誘導された。アイソタイプ一致のコントロールでは効果は観察されなかった(
図23C)。
【0224】
これらの結果は、TIGITが、PVRとの相互作用によって、ERK活性を調節し、そしてMDDCによるサイトカイン産生を調整することを示唆した。この所見を確認するために、ERKキナーゼ特異的阻害剤をTIGIT-Fcと共にMDDC培養物に加え、この培養物から分泌されるIL−12のレベルを決定した。TIGIT-Fcが媒介するIL−12p40産生の下方調節は、ERK阻害剤の存在下で逆転した(
図24A)。中和抗IL−10抗体を培養物に含めると、同様な効果が観察された(
図24Bを参照)。また、TIGITが調節するMDDCからのサイトカイン産生は、抗TIGIT抗体10A7又はブロック抗PVR抗体によってもブロックされた(
図24B)。まとめると、これらの結果は、TIGIT-PVRライゲーションは、ERKキナーゼ活性に作用して、他の生産されたサイトカインと比較してDCでのIL−10/IL−12サイトカイン産生の比率を増やすことを示した。
【0225】
実施例7:T細胞活性化に対するTIGIT調節MDDCの影響
DCサイトカイン産生に対するTIGITの影響が機能的な結果であったか否かを決定するために、実験を行い、T細胞増殖及びサイトカイン産生に対するMDDCのTIGIT調節の効果を評価した。TIGIT-Fc処理したMDDC(TNFα又はsCD40Lにて成熟されたもの)を上記のようにMLR応答にあるT細胞と培養した。TIGIT変更DCを含む培養物をコントロールDCと比較すると、T細胞増殖が平均50%(p<0.05)阻害された(
図25A)。加えて、培養物中のIL−2レベルは2分の1に低減した(p<0.01)(
図25B)。このデータは、先の実施例に記載したように、IL−12の減少とTIGITにて処理されたDCでのIL−10産生の増加と相関している。概して、TIGIT変更MDDCがT細胞を阻害したことから、DCが完全に成熟されるとTIGITはDCの機能的能力を制御しうることが示唆される。特に、MDDC-T細胞培養物にTIGIT-Fcを添加するとT細胞の増殖が阻害されることから、TIGIT-Fcは、DCを変更するためのDC成熟の惹起時には必要でないことが示される。
【0226】
また、活性化ヒトMDDCにおける他の細胞表面分子の発現に対するTIGIT処置の影響を調べた。DC上の特定の免疫グロブリン様転写産物(ILT)レセプターの発現はこれら細胞の活性化に応答して調節されることが知られている(Velten et al., Eur. J. Immunol. 34: 2800-2811 (2004);Ju et al., Gene 331: 159-164 (2004))。例えば、ILT2およびILT3レセプターの発現はCpG−DNA活性化DCにおいて下方制御されており、ILT2、ILT3、ILT4及びILT5の発現はIL−10誘導DCにおいて上方制御される。TIGITがDCでのIL−10産生を刺激するので、活性化DCでのILT発現に対するTIGITのの影響を調べた。上記のようにiMDDCを単離した。特定のiMDDC群を、TNF又はCD40Lにて活性化し、また、TIGIT-Fc又はアイソタイプ一致のコントロールにて処置した。処置した細胞は、免疫グロブリン様転写産物2、3又は5(ILT2、ILT3又はILT5)の発現に基づいたFACSにて分類した。
図26に示されるように、iMDDCの活性化は、ILT2、ILT3およびILT5発現を下方制御する。対照的に、TIGIT-Fcによる活性化及び刺激の処置により、TIGIT-Fcにて処置していないが活性化されたiMDDCに見られる下方制御と比較して、ILT2、ILT3及びILT5の発現の下方制御が減少した。この観察された効果は、DCでのIL−10産生を刺激するTIGITの能力によるものであるかもしれない。IL-10を発現するDCは、免疫寛容原性であって、ILTの発現レベルが高いことが知られている。しかしながら、ILT2、3および5のようなILTの下方制御も、TIGITの直接的な効果であり得、TIGITが耐性を誘導するある方法であるかもしれない。
【0227】
T細胞活性化に対する観察されたTIGIT処置のインビトロ効果がインビボ環境に適用しうるか否かを決定するために、TIGIT-Fc処置の効果を、遅発性過敏症(DTH)応答でのT細胞応答の十分に裏付けされた阻害因子である(Linsley, P.S. et al., Science 257, 792-5 (1992))CTLA4-Fcの効果と比較した。簡単に言うと、8〜10週齢のC57BL/6マウスの尾部の底部に、100μlのCFA(Difco Laboratories)中の100μgキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Sigma)を皮下投与することによって該マウスを免疫化した。動物の1コホート(n=10)は、1、4及び6日目に、100μgのマウスのTIGIT-Fc、TIGIT-Fc-DANA、CTLA-4-Fc又はネガティブアイソタイプコントロール抗ブタクサIgG2aを腹腔内投与することによって処置した。6日目に左右の耳厚を計測した。次いで、右耳に25μlの生理食塩水を投与し、左耳に25μlの生理食塩水中の30μgのKLHを投与して抗原刺激した。7日目に、左右の耳厚を再び計測し、7日目と6日目の耳厚の相違を耳腫脹として定めた。各処置群の生理食塩水のみを投与した耳の耳腫脹は0.02mm未満であった。耳腫脹測定の後、マウスを安楽死し、脾臓を採取した。単細胞懸濁液を調製し、10%FBS、2mM グルタミン、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/mL)を含有するDMEM中、1×10
6細胞/ml(200μl/ウェル)の密度で96ウェル平底プレートで培養した。細胞を、培地単独又は様々な濃度のKLHの存在下で培養した。T細胞活性化のためのポジティブコントロールとして、細胞を、2μg/mlの可溶性抗CD28(BD Biosciences)を有する5μg/mlの抗CD3(BD Biosciences)にて予めコートしたウェル上で培養した。増殖分析のために、4日間の培養の最後の18時間に1μCi[
3H]チミジン(Perkin Elmer)を50μlの容量で各ウェルに添加し、細胞を採取して、[
3H]チミジンの取込みを液体シンチレーション計測器にて測定した。
【0228】
TIGIT-FcおよびCTLA4-Fc処置マウスでは、コントロール処置と比較して有意に低い耳腫脹が測定され、強度は両処置群で同じであった(両群、p<0.0001)(
図27A)。TIGIT-FcとCTLA4-Fcとの間に統計的な差はなかった(p=0.07)。意味深いことに、IL-10欠損マウスでは、CTLA4-FcによりDTHが阻害されるにもかかわらず(p=0.004)、TIGIT-FcはDTH応答に対して効果がなかった。これはTIGIT−PVR機能でのIL−10の役割を裏付けるものである。TIGIT-Fc-DANAは、DTHの阻害時の効果において、TIGIT-Fcと類似していたことから、TIGIT-FcはFcが媒介するPVRの架橋結合を必要としなかったことを示す。抗TIGITはDTHに対して効果がなかった(
図27C)。アッセイを行い、処置されたマウスでのKLHに対するインビトロ想起(recall)応答を決定し、増殖、IL−2及びIFNγサイトカイン産生が、IL−10欠損マウスではなくTIGIT−Fc処置野生型において有意に低減していたことが示された(
図27D−G)。
【0229】
試験期間(7日目)にDTHマウスの脾臓からCD11c
+DCを単離し、DC増殖及びサイトカインプロフィールに対するTIGIT-Fcの効果を、上記のようにqRT−PCRによって評価した。TIGIT-FcおよびCTLA4-Fc処置動物から単離した脾臓T細胞は、アイソタイプ処置コントロール動物と比較して、想起アッセイでのKLHに応答して増殖しなかった(両処置群、p<0.001)(
図27B)。この結果は、TIGITがT細胞初回抗原刺激およびT細胞作動性免疫応答のエフェクター段階の間に重要であるかもしれないことを示す。先のMDDC試験から得られたインビトロデータと同様に、TIGIT-Fc処置マウスから単離したCD11c
+細胞は、IL−10のmRNAを増加させ(p<0.05)、IL−12/23p40およびIL−12p35のmRNAを減少させたが、後者の測定値は統計的有意差には至らなかった(それぞれp=0.07及び0.08)(
図27H)。しかしながら、TIGIT-Fc処置は、IL−10KOマウス由来のCD11c
+細胞においてIL−12p40/p35転写に対して僅かな効果しか示さなかったことから、TIGITが媒介するIL−12p40/p35のmRNAレベルの下方制御は特異的であって、TIGITが媒介するIL−10の上方制御はこのモデルでの炎症誘発性サイトカインIL−12の下方制御に必要であることが示された。
【0230】
実施例8:TIGIT欠損マウス
標準的な技術を用いてTIGITノックアウトマウスを作製した。これらのマウスでの機能的TIGIT遺伝子の欠如を確認するために、ノックアウト又は野生型マウスの脾臓から総T細胞を単離し、その後、抗CD3抗体および抗CD28抗体と共に3日間インキュベートした。RNeasyキット(Qiagen)を用いて細胞から総RNAを単離し、リアルタイムRT−PCRを行ってTIGITmRNAを測定した。また、CD96mRNAレベルをコントロールとして評価した。研究の結果は、ノックアウトマウスがTIGIT発現を欠損していることを示した。
【0231】
実施例3Aに記載のようにFACS分析を用いて、腸間膜リンパ節の免疫細胞群を、野生型マウスと比較して9か月齢のTIGITノックアウトマウスにおいて調べた。TIGITノックアウトマウスは、野生型マウスと比較して、メモリーCD4+T細胞、mDC、pDC、単球、CD11c
+PVR
hi T細胞および全B細胞の数の増加を表した。ナイーブおよび成熟したCD4
+細胞の集団は、ノックアウトマウスと野生型マウスの間で類似していた。また、野生型マウスと比較して、ノックアウトマウスは、脾臓のMZB(B220
+CD21
hi)、NKT(DX5
+CD4
+又はDX5
+CD8
+)およびメモリーCD8
+T細胞の数が増加していたことが明らかとなった。また、メモリーCD8
+T細胞レベルの増加は、ノックアウトマウスの腸間膜リンパ節およびパイエル板細胞においても観察された。ノックアウトマウスの腸間膜リンパ節において観察されたpDC及び単球細胞の数の増加は、それらマウスの脾臓およびパイエル板でも観察されたが、野生型マウスと比較したときのレベルの差異は腸間膜リンパ節においてさほど顕著ではなかった。
【0232】
また、TIGIT欠損マウスから単離したT細胞の活性も調べた。簡単に言うと、9か月齢のTIGIT欠損マウスと野生型同腹仔から総脾細胞を単離した。各タイプのマウスの106細胞を、平底96ウェルプレートに播き、プレート結合抗CD3(10μg/ml)+抗CD28(2μg/ml)にて刺激した。2日目に、上清を採取し、サイトカイン産生をLuminexにて分析した。細胞を採取し、FACSを行い、細胞内IFNγおよびIL−4の存在により分類した。実施例3Aに記載したように、
3H−チミジン取込みによって細胞増殖を測定した。全般的に実施例4Aに記載される方法に従ってMLRアッセイを行った。具体的には、ネガティブ単離(MACS)によって、TIGIT欠損マウス又は野生型同腹仔の脾臓からCD4+T細胞を単離した。T細胞枯渇Balb/C脾細胞を3000ラドで照射し、抗原提示細胞として用いた。2×10
5のCD4
+T細胞は、1μg/mlの可溶性抗CD3(T細胞のみ)にて刺激するか、又は同種異系の抗原提示細胞と1:2の比率で混合した。実施例3Aに記載のように、3日目に、
3H−チミジン取込によって増殖を測定した。第二実験では、MLRアッセイを同じように実施したが、Balb/cマウスからCD4
+T細胞を単離し、TIGIT欠損マウス又は野生型マウスから抗原提示細胞を調製した。
【0233】
標準的な増殖アッセイにおいて、TIGIT欠損マウスのT細胞は、野生型マウスのT細胞と同様に増殖した(
図30A、左パネル)。しかしながら、抗原提示細胞がある場合には、TIGIT欠損T細胞は、野生型T細胞と比較して増殖が増加していた(
図30A、中央パネル)。特に、TIGIT欠損マウスの脾臓からの抗原提示細胞は、野生型マウスから得た抗原提示細胞と同じ程度に、野生型T細胞の増殖を刺激した(
図30A、右パネル)。併せて、このデータから、T細胞は、抗原提示細胞上というよりもT細胞上に発現されるTIGITが関与するメカニズムによってそのT細胞の増殖が下方制御されることが示唆され、さらに、T細胞応答の下方制御におけるTIGITの活性が裏付けられる。TIGIT欠損マウスの多くの割合のT細胞は、野生型マウスT細胞よりも細胞内IFNγのレベルが高かった(
図30B)。TIGIT欠損のT細胞及び野生型のT細胞の上清のサイトカイン産生の分析から、IFNγおよびTNFαの産生/分泌が、野生型T細胞と比較してTIGIT欠損T細胞において増加していたのに対して、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10およびIL−12p70レベルは2つの細胞群の間で同じであったことが示された。