(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1〜
図3を参照して、図示する止血器具1は、治療・検査などを行うカテーテル等を血管内に挿入する目的で手首500(「肢体」に相当する)に形成された穿刺部位510(「止血すべき部位」に相当する)に留置していたイントロデューサーシースを抜去した後、その穿刺部位510を止血するために使用される。
【0013】
止血器具1は、概説すれば、手首500の穿刺部位510に巻き付けるための帯体2と、帯体2を手首500に巻き付けた状態に固定する固定部材としての面ファスナー3と、帯体2に取り付けられ流体を注入することによって拡張するバルーン5と、拡張されたバルーン5が穿刺部位510を圧迫する圧力を検出するための圧力センサ110と、を有している。図示する実施形態においては、止血器具1は、圧力センサ110によって検出した圧力を表示する表示部210をさらに有している。表示部210は、帯体2に取り付けられている。さらに、圧力センサ110は、バルーンを穿刺部位510に位置合わせするためのマーカーとして兼用されている。以下、止血器具1について詳述する。
【0014】
帯体2は、可撓性を有する帯状の部材である。
図3に示すように、帯体2は、手首500の外周を一周するように巻き付けられ、その両端付近の部分を互いに重ね合わせるようにして、手首500に装着される。そして、帯体2は、この重ね合わせ部分が後述する面ファスナー3によって固定(接合)される。
【0015】
帯体2の構成材料は、穿刺部位510を視認できる材料であれば特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
【0016】
なお、帯体2は実質的に透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位510を外側から確実に視認することができ、圧力センサ110を穿刺部位510に容易に位置合わせすることができる。
【0017】
帯体2の中央部には、湾曲板4を保持する湾曲板保持部21が形成されている。湾曲板保持部21は、外面側(または内面側)に別個の帯体の部材が融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法により接合されることによって、湾曲板4を挿入するための隙間部が形成されている。帯体2は、湾曲板4をバルーン5と重なるように保持している。
【0018】
帯体2の
図1中の左端付近の部分の内面側(
図1の紙面の表側)には、一般にマジックテープ(登録商標)などと呼ばれる面ファスナー3の雄側31(または雌側)が取り付けられている。一方、帯体2の
図1中の右端付近の部分の外面側(
図1の紙面の裏側)には、面ファスナー3の雌側32(または雄側)が取り付けられている。
図3に示すように、面ファスナー3の雄側31と雌側32とが接合することによって、帯体2が手首500に装着される。なお、帯体2を手首500に巻き付けた状態で固定する固定部材としては、面ファスナー3に限らず、例えば、スナップ、ボタン、クリップ、帯体2の端部を通す枠部材であってもよい。
【0019】
湾曲板4は、湾曲板保持部21の隙間部に挿入されることによって、帯体2に保持されている。湾曲板4は、その少なくとも一部が内周側に向かって湾曲した形状をなしている。この湾曲板4は、帯体2よりも硬質な材料で構成されており、ほぼ一定の形状を保つようになっている。
【0020】
図1に示すように、本実施形態では、湾曲板4は、帯体2の長手方向に長い形状をなしている。
図3に示すように、この湾曲板4の長手方向の中央部41は、ほとんど湾曲せずに平板状になっており、この中央部41の両側には、それぞれ、内周側に向かって、かつ、帯体2の長手方向(手首500の周方向)に沿って湾曲した湾曲部42が形成されている。湾曲部42の曲率半径R2は、中央部41の曲率半径R1(図示の構成では、R1は、ほぼ無限大)より小さい。
【0021】
湾曲板4の構成材料としては、穿刺部位510を視認できる材料であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0022】
なお、湾曲板4は実質的に透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位510を外側から確実に視認することができ、圧力センサ110を穿刺部位510に容易に位置合わせすることができる。
【0023】
湾曲板4は、中央部41のような湾曲していない部分を有さないもの、すなわち、その全長にわたって湾曲しているものであってもよい。
【0024】
帯体2には、可撓性を有する材料で構成されたバルーン5が連結されている。バルーン5は、流体(空気等の気体もしくは液体)を注入することにより拡張し、手首500の穿刺部位510を圧迫する。
【0025】
バルーン5は、帯体2に保持されている湾曲板4の長手方向の一端側に片寄って位置している。図示の構成では、バルーン5は、湾曲板4の
図3中のほぼ右半分側と重なるように位置している。
【0026】
バルーン5の構成材料は、穿刺部位510を視認できる材料であれば特に限定されず、例えば、前述した帯体2の構成材料と同様のものを用いることができる。また、バルーン5は、帯体2と同質または同種の材料で構成されるのが好ましい。これにより、融着による帯体2との接合を容易に行うことができ、容易に製造することができる。
【0027】
なお、バルーン5は実質的に透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位510を外側から確実に視認することができ、圧力センサ110を穿刺部位510に容易に位置合わせすることができる。
【0028】
バルーン5の構造は、例えば、前述したような材料からなるシート材の縁部を融着または接着等の方法によりシールして袋状に形成したものとすることができる。図示の構成では、バルーン5は、拡張していない状態では、四角形をなしている。
【0029】
このようなバルーン5は、可撓性を有する連結部11を介して、帯体2に連結されている。本実施形態では、バルーン5は、湾曲板4に対し片寄った側、すなわち、
図3中の右側のみが連結部11を介して帯体2に連結されている。この連結部11は、その実質的な長さが比較的短くされ、これにより、バルーン5が湾曲板に対し片寄った位置に繁留される。なお、連結部11は、バルーン5と同材質で構成されているのが好ましい。
【0030】
圧力センサ110は、バルーン5の内面側、すなわち穿刺部位510と接触する面側(
図1の紙面の表側)に設けられている。マーカーとして兼用している圧力センサ110をバルーン5に設けることによって、バルーン5を穿刺部位510に容易に位置合わせすることができる。これにより、バルーン5の位置ズレによる血液の漏れや血腫の発生を抑制することができる。
【0031】
図1に示すように、圧力センサ110はバルーン5の中心部、すなわちバルーン5の四角形の対角線の交点を中心として設けることが好ましい。これにより、バルーン5の中心部を穿刺部位510に位置合わせすることが可能であるため、バルーン5を拡張させた際に、バルーン5の押圧(圧迫)力が穿刺部位510に対して確実に作用する。さらに、拡張されたバルーン5が穿刺部位510を圧迫する圧力すなわち実圧力を圧力センサ110によって検出しているので、穿刺部位510を圧迫する圧力そのものを検出することができる。これにより、穿刺部位510を圧迫する圧力に関して術者によってバラツキが生じることを抑制することができる。
【0032】
圧力センサ110における圧力検知の方式は特に限定されない。例えば、外部からの圧力によってダイヤフラムがたわみ、ダイヤフラム上に形成したピエゾ抵抗素子がひずむことで生じる電気抵抗の変化を、電圧信号として読み取ることによって圧力を検知する方式の圧力センサを適用することができる。この方式の圧力センサは、ダイヤフラムのたわみ量を直接ピエゾ抵抗素子の電気抵抗変化として捉えるため、素子構造がシンプルであり、小型化したものが多数存在している。
【0033】
圧力センサ110の形状は、特に限定されず、例えば、円、三角形、四角形等が挙げられ、
図1では四角形をなしている。
【0034】
圧力センサ110の大きさは、特に限定されないが、マーカーとして兼用する観点から定めることができる。例えば、四角形形状をなしている場合、その一辺の長さが1〜4mmの範囲であることが好ましい。一辺の長さが5mm以上であると、穿止部位510の大きさに対してマーカーとして機能する圧力センサ110の大きさが大きくなるため、バルーン5の中心部を穿止部位510に位置合わせし難くなる。
【0035】
圧力センサ110の色も、特に限定されないが、マーカーとして兼用する観点から定めることができる。圧力センサ110の色は、バルーン5を穿刺部位510に位置合わせすることができる色できれば特に限定されないが、緑色系が好ましい。緑色系にすることにより、マーカーとして機能する圧力センサ110を血液や皮膚上で容易に視認することができるため、バルーン5を穿刺部位510に位置合わせすることがより容易となる。
【0036】
バルーン5に圧力センサ110を設ける方法は特に限定されないが、例えば、圧力センサ110の片面に接着剤を塗布してバルーン5に貼り付ける方法を挙げることができる。
【0037】
図1に示すように、バルーン5には、バルーン5内に流体を注入するための注入部8が接続されている。注入部8は、基端部がバルーン5に接続されるとともに内腔がバルーン5の内部に連通する可撓性を有するチューブ81と、チューブ81の先端部に設置された袋体82と、袋体82に接続された管状のコネクタ83とを備えている。
【0038】
バルーン5を拡張(膨張)させる際には、コネクタ83にシリンジ(図示せず)の先端突出部を挿入し、このシリンジの押し子を押して、シリンジ内の流体を注入部8を介してバルーン5内に注入する。バルーン5内に流体を注入した後、コネクタ83からシリンジの先端突出部を抜去すると、コネクタ83に内蔵された逆止弁が閉じて流体の流出が防止され、バルーン5が膨張した状態が維持される。
【0039】
図3に示すように、湾曲板4とバルーン5との間には、可撓性を有する材料で構成された補助バルーン6が、バルーン5と重なるようにして設けられている。この補助バルーン6は、バルーン5を押圧する押圧部材として機能するものである。
【0040】
補助バルーン6は、内部に充填された流体の圧力により、
図3中の矢印fで示すように、バルーン5をほぼ手首500の中心部520に向かう方向に押圧する。このような補助バルーン6からの押圧力を受けることにより、バルーン5は、
図3中の矢印Fで示すように、穿刺部位510を上から下へ垂直な方向(手首500の表面に対して垂直な方向)ではなく、傾斜した方向(手首500の中心部520に向かうような方向)に押圧(圧迫)する。これにより、穿刺部位510を上から下へ垂直な方向に押圧(圧迫)する場合と比べ、より優れた止血効果が得られる。
【0041】
補助バルーン6の構成材料としては、穿刺部位510を視認できる材料であれば特に限定されず、例えば、前述した帯体2の構成材料と同様のものを用いることができる。そして、補助バルーン6は実質的に透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位510を外側から確実に視認することができ、圧力センサ110を穿刺部位510に容易に位置合わせすることができる。
【0042】
補助バルーン6は、帯体2の長手方向についての幅がバルーン5よりも小さくされていることにより、その大きさがバルーン5よりも小さくなっており、バルーン5を局所的に押圧する。これにより、バルーン5から穿刺部位510への押圧力Fの方向をより確実に傾斜させることができる。
【0043】
さらに、前述したように、湾曲板4は、バルーン5が片寄った側(
図3中の右側)に、その中央部41よりも曲率半径が小さい湾曲部42を有している。そして、補助バルーン6は、湾曲板4の湾曲部42またはそれより
図3中の右側の部分に(帯体2を介して)接触する。これにより、補助バルーン6が湾曲板4から受ける力の方向、換言すれば、補助バルーン6が(帯体2を介して)接触する部分の湾曲板4の法線方向は、手首500の中心部520に向かうような方向に傾斜することになる。その結果、押圧力fや押圧力Fの方向をより確実に傾斜させることができる。
【0044】
バルーン5の一部と補助バルーン6の一部とは、互いに融着または接着等の方法により接合されている。そして、その接合部には、バルーン5の内部と補助バルーン6の内部とを連通する連通部(開口部)12が形成されている。これにより、前述したようにしてバルーン5に液体を注入すると、注入された流体の一部が連通部12を介して補助バルーン6内に流入し、バルーン5の拡張に伴って補助バルーン6が拡張する。これにより、1回の操作で両者を拡張させることができ、操作性に優れる。
【0045】
このような補助バルーン6は、固着部13を介して、バルーン5の連結部11と同じ側(
図3中の右側)で帯体2に連結されている。これにより、補助バルーン6がより容易かつ確実に傾斜した姿勢になるため、バルーン5に対する押圧力fが傾斜した方向(バルーン5をほぼ手首500の中心部520に向かわせるような方向)により作用し易くなり、より優れた止血効果が得られる。
【0046】
なお、押圧部材は、補助バルーン6に限らず、例えば、スポンジ状の物質、弾性材料、綿(わた)のような繊維の集合体、またはこれらの組み合わせなどによって形成されたパッドのような部材であっても良い。
【0047】
図4を参照して、本実施形態の表示部210は、たとえば、液晶モニタ211やブザー212を含んでいる。表示部210には、制御部220、記憶部230、操作部240が一体的に組み込まれている。これらは信号をやり取りするためのバス250を介して相互に接続されている。バス250には、圧力センサ110も接続され、圧力センサ110にて検出した信号が制御部220に入力されている。制御部220はCPUを含み、プログラムにしたがって、上記各部の制御や、圧力センサ110からの信号の各種演算処理を行う。記憶部230は、予め各種プログラムや各種データを格納しておくROM、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶するRAM等を備えている。操作部240は、タッチパネル、スタートボタン、ストップボタン等を備えており、各種指示の入力に使用される。表示部210としての液晶モニタ211は、圧力センサ110によって検出した穿刺部位510を圧迫する圧力等の各種の情報を表示することができる。また、表示部210としてのブザー212は、警報音を発することによって情報を表示することができる。
【0048】
制御部220は、穿刺部位510を圧迫する圧力に関して、上限圧力と下限圧力との入力を受け付けることができる。そして、制御部220は、圧力センサ110によって検出した圧力が上限圧力よりも上昇したと判断したとき、あるいは、下限圧力よりも下降したと判断したときに、表示部210によってその旨を表示する。具体的には、液晶モニタ211にメッセージを表示したり、ブザー212の警報音を発したりする。
【0049】
本実施形態の止血器具1にあっては、
図1および
図2に示すように、手首500の体表温度を検出するための温度センサ120をさらに有している。
図4を参照して、バス250には、温度センサ120も接続され、温度センサ120にて検出した信号が制御部220に入力されている。温度センサ120によって検出した体表温度は、表示部210としての液晶モニタ211やブザー212によって表示される。
【0050】
温度センサ120は、バルーン5の外表面の部位のうち、帯体2を穿刺部位510に巻き付けたときに穿刺部位510よりも手のひら側(「肢体の末梢側」に相当する)に位置する部位に取り付けることが好ましい。穿刺部位510よりも手のひら側に温度センサ120を配置することによって、穿刺部位510を圧迫したことによって血流が遮断された場合における体温の低下を確実に検出して予防することができるからである。
【0051】
温度センサ120の種類は特に限定されず、例えば、測温抵抗体、熱電対、あるいはサーミスタ等公知のセンタを用いることができる。
【0052】
本実施形態の止血器具1にあっては、
図1および
図2に示すように、血液の漏れを検出するための液漏れセンサ130を有している。
図5を参照して、液漏れセンサ130は、圧力センサ110を取り囲むように配置した吸水部材131を有している。吸水部材131は、非導電性の吸水性素材、例えば不織布などから形成されている。この吸水部材131には、ブザー212が電気的に接続されている。吸水部材131は、血液の漏れを検出してブザー212を作動させるスイッチング素子として機能する。すなわち、吸水部材131からなるスイッチング素子は、血液を吸収するまでオフであり、漏れ出た血液を吸収すると通電状態となってオンになる。液漏れセンサ130によって検出した血液の漏れは、表示部210としてのブザー212の報知によって表示される。吸水部材131は、例えば、20mm×20mmの矩形形状に配置されているが、その大きさや形状は適宜改変することができる。
【0053】
液漏れセンサ130は、バルーン5の外表面の部位のうち、帯体2を穿刺部位510に巻き付けたときに穿刺部位510の周辺に位置する部位に取り付けることが好ましい。穿刺部位510の周辺に液漏れセンサ130を配置することによって、穿刺部位510からの血液の漏れを確実かつ迅速に検出することができるからである。本実施形態では、圧力センサ110を取り囲むように吸水部材131を配置しているので、穿刺部位510の周辺に液漏れセンサ130を簡単に配置することができる。
【0054】
液漏れセンサは上記の構成に限定されない。例えば、公知の液漏れセンサをバス250(
図4を参照)に接続し、液漏れセンサにて検出した信号を制御部220に入力してもよい。液漏れセンサによって検出した血液の漏れは、表示部210としてのブザー212のみならず、表示部210としての液晶モニタ211によって表示してもよい。
【0055】
次に、止血器具1の使用方法について説明する。
【0056】
止血器具1を手首500に装着する前は、バルーン5および補助バルーン6は、拡張していない状態とされている。手首500の場合、通常、動脈への穿刺部位510は、手首500の内側(腱がある側)の親指側へ片寄った位置にある。通常、穿刺部位510にはイントロデューサーシースが留置されている。このイントロデューサーシースが留置されたままの状態の手首500に帯体2を巻き付け、バルーン5に設けられたマーカー7が穿刺部位510上に重なるようにバルーン5(帯体2)を位置合わせして、帯体2の両端部付近を面ファスナー3にて固定(接合)する。
【0057】
止血器具1を手首500に装着した後、注入部8のコネクタ83にシリンジ(図示せず)を接続し、流体をバルーン5および補助バルーン6内に注入し、バルーン5および補助バルーン6を拡張させる。このときの液体の注入量により、症例に応じて、バルーン5および補助バルーン6の拡張度合い、すなわち、穿刺部位510への圧迫力を容易に調整することができ、操作性に優れる。
【0058】
しかも、拡張されたバルーン5が穿刺部位510を圧迫する圧力を圧力センサ110によって検出し、検出した圧力を表示部210としての液晶モニタ211やブザー212によって表示しているので、穿刺部位510を圧迫する圧力そのものを検出することができる。検出した圧力を観察しながら、液体の注入量を客観的に調整することができる。このため、穿刺部位510を圧迫する圧力に関して術者によってバラツキが生じることを防止することができる。その結果、穿刺部位510を圧迫し過ぎることがなく、かつ、適正な圧迫力を付与して十分かつ適切な止血を施すことができる。
【0059】
バルーン5および補助バルーン6を拡張させたら、コネクタ83からシリンジを離脱させる。そして穿刺部位510からイントロデューサーシースを抜去する。これにより、バルーン5および補助バルーン6は、拡張状態を維持し、穿刺部位510への圧迫状態が維持される(
図3参照)。この状態では、バルーン5が穿刺部位510(およびその周辺)を局所的に押圧するとともに、バルーン5および補助バルーン6の拡張により、湾曲板4は、手首500の表面から離間して、手首500に接触し難くなる。これにより、穿刺部位510(およびその周辺)が集中して圧迫力を受けるので、止血効果が高いとともに、止血を必要としない他の血管や神経等を圧迫するのを回避することができ、手のしびれや血行不良などを生じるのを有効に防止することができる。
【0060】
また、手首500の体表温度を温度センサ120によって検出し、検出した体表温度を表示部210としての液晶モニタ211やブザー212によって表示しているので、穿刺部位510を圧迫したことによって血流が遮断された場合における体温の低下を容易に観察することができる。
【0061】
しかも、穿刺部位510よりも手のひら側に温度センサ120を配置しているので、血流が遮断された場合における体温の低下を確実に検出して予防することができる。
【0062】
また、血液の漏れを液漏れセンサ130によって検出し、検出した血液の漏れを表示部210としてのブザー212によって表示しているので、穿刺部位510からの血液の漏れを容易に観察することができる。液漏れセンサ130は、吸水部材131をスイッチング素子として用いているので、構成が簡素であり、安価な液漏れセンサとすることができる。
【0063】
しかも、穿刺部位510の周辺に液漏れセンサ130を配置しているので、穿刺部位510からの血液の漏れを確実かつ迅速に検出することができる。
【0064】
(改変例)
図6は、改変例に係る止血器具1を手首に装着した状態を断面図である。
【0065】
圧力センサ110を配置する位置は、止血すべき部位を圧迫する圧力そのものを検出することができる限りにおいて、適宜改変することができる。
図6に示すように、バルーン5が穿刺部位510を圧迫する方向に沿う線上であって、かつ、湾曲板4とバルーン5との間(図示例にあっては、湾曲板4と補助バルーン6との間)に配置してもよい。この位置に圧力センサ110を配置しても、穿刺部位510を圧迫する圧力そのものを検出することができ、上述したように、穿刺部位510を圧迫する圧力に関して術者によってバラツキが生じることを防止することができる。
【0066】
この改変例においては、圧力センサ110をマーカーとして用いることができない。このため、止血器具1は、バルーン5を穿刺部位510に位置合わせするための専用のマーカー7を備えている。図示例では、マーカー7を補助バルーン6に設けている。
【0067】
マーカー7の材質は、特に限定されず、例えば、インキ等の油性着色料、色素を混練した樹脂等が挙げられる。
【0068】
マーカー7の色は、バルーン5を穿刺部位510に位置合わせすることができる色できれば特に限定されないが、緑色系が好ましい。緑色系にすることにより、マーカー7を血液や皮膚上で容易に視認することができるため、バルーン5を穿刺部位510に位置合わせすることがより容易となる。
【0069】
また、マーカー7は半透明であることが好ましい。これにより、穿刺部位510をマーカー7の外側から視認することができる。
【0070】
補助バルーン6にマーカー7を設ける方法は特に限定されないが、例えばマーカー7を補助バルーン6に印刷する方法、マーカー7を補助バルーン6に融着する方法、マーカー7の片面に接着剤を塗布して補助バルーン6に貼り付ける方法等が挙げられる。
【0071】
なお、マーカー7を補助バルーン6に設けるのではなく、帯体2、湾曲板4、あるいはバルーン5に設けてもよい。この場合も、マーカー7がバルーン5の中心部に重なるように設けることが好ましい。
【0072】
(その他の改変例)
制御部220等を一体的に組み込んだ表示部210を帯体2の外面側に取り付けた形態を図示したが、表示部210と制御部220等とを分離し、表示部210としての液晶モニタ211やブザー212のみを帯体2に取り付けてもよい。
【0073】
また、液晶モニタ211やブザー212、あるいは制御部220等については、汎用のPC(パーソナルコンピュータ)を使用し、圧力センサ110等のセンサ類だけを止血器具に備える形態でもよい。この場合、センサ類から引き出された制御信号線をPCに接続して、圧力センサ110によって検出した圧力等をPCのモニタやブザー212によって表示する。検出した圧力等を汎用のPCを用いて表示することから、止血器具に表示部210を備える必要がなく、止血器具の構成の簡素化および低コスト化を図ることができる。
【0074】
また、圧力センサ110、温度センサ120、および液漏れセンサ130を備えた止血器具1について説明したが、
圧力センサ110と温度センサ120とを備える止血器具を構成することもできる。
【0075】
また、温度センサ120として、異なる温度によって異なる色を発色する感熱剤が塗布された、温度変化を示すテープを適用してもよい。この形態における表示部210は、温度変化を示すテープが異なる色を発色することに相当する。
【0076】
以上、本発明の止血器具を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、止血器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていても良い。
【0077】
また、本発明の止血器具は、手首に装着して使用するものに限らず、腕または脚(本明細書では、これらを総称して「肢体」という)のいかなる部分に装着して使用する止血器具にも適用することができる。
【0078】
なお、本出願は、2010年2月4日に出願された日本国特許出願第2010−023222号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。