(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係るについて、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明の異常検出装置、ハイブリッド自動車および異常検出方法、並びにプログラムは、図面に示した構成に限定されるものではない。
【0015】
(構成)
図1は、本発明の実施の形態のハイブリッド自動車1の要部ブロック構成図である。
図1に示すように、ハイブリッド自動車1は、エンジン10、エンジンECU(Electronic Control Unit)11、クラッチ12、電動機13、インバータ14、バッテリ15、トランスミッション16、電動機ECU17、ハイブリッドECU18、温度センサ19および車輪20が設けられている。なお、
図1の構成では、直接説明に関わらない構成の図示は省略してある。
【0016】
(概要)
ハイブリッド自動車1は、インバータ14の温度変化を検出する温度センサ19を有しており、この温度センサ19自体の異常をハイブリッドECU18が検出する。
【0017】
エンジン10は、内燃機関の一例であり、エンジンECU11によって制御される。エンジン10は、ガソリン、軽油、CNG(Compressed Natural Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、または代替燃料等を内部で燃焼させて、軸を回転させる動力を発生させ、発生した動力をクラッチ12に伝達する。
【0018】
エンジンECU11は、ハイブリッドECU18からの指示に従うことにより、電動機ECU17と連携動作するコンピュータである。エンジンECU11は、たとえば、燃料噴射量やバルブタイミングなど、エンジン10の動作を制御する。エンジンECU11は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/O(Input/Output)ポートなどを有する。
【0019】
クラッチ12は、ハイブリッドECU18によって制御される。クラッチ12は、エンジン10からの軸出力を、電動機13およびトランスミッション16を介して車輪20に伝達させる。すなわち、クラッチ12は、エンジン10の回転軸と電動機13の回転軸とを機械的に接続することにより、エンジン10の軸出力を電動機13に伝達させる。また、クラッチ12は、エンジン10の回転軸と電動機13の回転軸との機械的な接続を切断することにより、エンジン10の軸と、電動機13の回転軸とが互いに異なる回転速度で回転できるようにする。たとえば、クラッチ12は、エンジン10の動力によって電動機13に発電させる場合、電動機13の駆動力によってエンジン10がアシストされる場合、または電動機13によってエンジン10を始動させる場合などに、エンジン10の回転軸と電動機13の回転軸とを機械的に接続する。また、たとえば、クラッチ12は、エンジン10が停止またはアイドリング状態にあり、電動機13の駆動力によってハイブリッド自動車1が走行している場合、またはエンジン10が停止またはアイドリング状態にあり、ハイブリッド自動車1が減速中または下り坂を走行中であり、電動機13が発電している(電力回生している)場合、エンジン10の回転軸と電動機13の回転軸との機械的な接続を切断する。なお、クラッチ12は、運転者がクラッチペダルを操作して動作しているクラッチとは異なるものである。
【0020】
電動機13は、いわゆる電動機ジェネレータである。電動機13は、インバータ14から供給された電力により、軸を回転させる動力を発生させて、その軸出力をトランスミッション16に供給する。また、電動機13は、トランスミッション16から供給された軸を回転させる動力によって発電し、その電力をインバータ14に供給する。たとえば、ハイブリッド自動車1が加速しているときまたは定速で走行しているときにおいて、電動機13は、軸を回転させる動力を発生させて、その軸出力をトランスミッション16に供給し、エンジン10と協働してハイブリッド自動車1を走行させる。また、たとえば、電動機13がエンジン10によって駆動されているとき、またはハイブリッド自動車1が減速しているとき、もしくは下り坂を走行しているときなどにおいて、電動機13は、発電機として動作する。電動機13が発電機として動作する場合、トランスミッション16から供給された軸を回転させる動力によって発電し、電力をインバータ14に供給する。
【0021】
インバータ14は、電動機ECU17によって制御される。インバータ14は、バッテリ15からの直流電圧を交流電圧に変換する。また、インバータ14は、電動機13からの交流電圧を直流電圧に変換する。電動機13が動力を発生させる場合、インバータ14は、バッテリ15の直流電圧を交流電圧に変換して、電動機13に電力を供給する。電動機13が発電する場合、インバータ14は、電動機13からの交流電圧を直流電圧に変換する。すなわち、この場合、インバータ14は、バッテリ15に直流電圧を供給するための整流器および電圧調整装置としての役割を果たす。
【0022】
バッテリ15は、充放電可能な二次電池である。バッテリ15は、電動機13が動力を発生させるとき、電動機13にインバータ14を介して電力を供給する。また、バッテリ15は、電動機13が発電しているとき、電動機13が発電する電力によって充電される。
【0023】
トランスミッション16は、ハイブリッドECU18からの変速指示信号に従って、複数のギア比(変速比)のいずれかを選択する半自動トランスミッション(不図示)を有する。トランスミッション16は、半自動トランスミッションにより変速比を切り換えて、変速されたエンジン10の動力および電動機13の動力を車輪20に伝達する。または、トランスミッション16は、半自動トランスミッションにより変速比を切り換えて、変速されたエンジン10の動力または電動機13の動力を車輪20に伝達する。また、減速しているとき、もしくは下り坂を走行しているときなど、トランスミッション16は、車輪20からの動力を電動機13に伝達する。なお、半自動トランスミッションは、運転者がシフト部23を操作して手動で任意のギア段にギア位置を変更することもできる。
【0024】
電動機ECU17は、ハイブリッドECU18の制御に従って、エンジンECU11と連携動作するコンピュータである。電動機ECU17は、インバータ14を制御することによって電動機13を制御する。たとえば、電動機ECU17は、CPU、ASIC、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSPなどにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/Oポートなどを有する。
【0025】
ハイブリッドECU18は、コンピュータの一例である。ハイブリッドECU18は、ハイブリッド走行のために必要となる各種情報(たとえば、アクセル開度情報、ブレーキ操作情報、車速情報、ギア位置情報、エンジン回転速度情報、充電状態など)などを取得する。ハイブリッドECU18は、取得したこれらの情報に基づいて、クラッチ12を制御すると共に、変速指示信号を供給することでトランスミッション16を制御し、電動機ECU17に対して電動機13およびインバータ14の制御指示を与え、エンジンECU11に対してエンジン10の制御指示を与える。また、ハイブリッドECU18は、電動機ECU17を介してインバータ14の温度情報、インバータ14へ入力される電流値情報などを取得し、取得したこれらの情報に基づいて、温度センサ19の異常を検出する。なおこの処理(以下、異常検出処理の詳細については後述する。ハイブリッドECU18は、CPU、ASIC、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSPなどにより構成され、内部に、演算部、メモリ、およびI/Oポートなどを有する。
【0026】
なお、ハイブリッドECU18によって実行されるプログラムは、ハイブリッドECU18の内部の不揮発性のメモリにあらかじめ記憶しておくことで、コンピュータであるハイブリッドECU18にあらかじめインストールしておくことができる。
【0027】
エンジンECU11、電動機ECU17、およびハイブリッドECU18は、CAN(Control Area Network)などの規格に準拠したバスなどにより相互に接続されている。
【0028】
温度センサ19は、インバータ14を構成する主回路素子(たとえば、IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などの温度を測定するためのセンサである。温度センサ19からの検出出力は電動機ECU17を介してハイブリッドECU18に取り込まれる。なお、温度センサ19からの検出出力を直接ハイブリッドECU18が取り込むように構成してもよい。温度センサ19は、たとえば熱電対、サーミスタ、感温ダイオード(ダイオード温度計)などの感温素子によって構成される。
【0029】
車輪20は、路面に駆動力を伝達する駆動輪である。なお、
図1において、1つの車輪20のみが図示されているが、実際には、ハイブリッド自動車1は、複数の車輪20を有する。
【0030】
図2は、異常検出処理を実現するための
図1に示すハイブリッドECU18の機能構成例を示すブロック図である。ハイブリッドECU18が所定のプログラムを実行すると、情報取得部31、熱量推定部32(請求項でいう熱量算出手段)、温度偏差算出部33(請求項でいう温度変化算出手段)、座標値算出部34(請求項でいる座標算出手段)、および異常検出部35(請求項でいう異常検出手段)の機能が実現される。なお、異常検出部35が参照する異常判定領域データ36は、ハイブリッドECU18の内部の不揮発性のメモリに記憶されている。
【0031】
情報取得部31は、温度センサ19の異常を判定するために必要な情報を取得する。具体的には、情報取得部31は、所定時間におけるインバータ14に入力された所定時間内の電流値の推移を示す情報、所定時間においてインバータ14に電流が入力された時間(通電時間)情報および所定時間における温度センサ19の温度情報を取得する。ここでいう所定時間とは、たとえば10秒間、20秒間などである。情報取得部31は、取得したこれらの情報のうち、所定時間における電流値情報(A)、所定時間における通電時間情報(S)を熱量推定部32へ出力する。また、情報取得部31は、所定時間における温度センサ19が検出する温度の推移を示す情報(Te)を温度偏差算出部33へ出力する。
【0032】
熱量推定部32は、インバータ14へ流入する熱量を推定する。熱量推定部32は、情報取得部31が出力した所定時間における電流値情報(A)および所定時間における通電時間情報(S)から、インバータ14から発生する熱量を算出する。熱量は、たとえば、電流値の二乗と通電時間を積算した時間積算値として算出する。なお、電流値は三乗であってもよい。熱量推定部32は、算出した時間積算値情報(Y〔A
2・S〕)を座標値算出部33へ出力する。
【0033】
温度偏差算出部33は、インバータ14の温度変化を把握するため、温度センサ19が検出した所定時間における温度の偏差を算出する。温度偏差算出部33は、情報取得部31が出力した温度情報(T)から所定時間における温度センサ19が検出した最高温度(Max)と最低温度(Min)を特定し、これらの差分の絶対値を温度偏差情報(ΔT|Max−Min|)として算出する。温度偏差算出部33は、算出した温度偏差情報(ΔT|Max−Min|)を座標値算出部34へ出力する。
【0034】
座標値算出部34は、時間積算値(Y)をX軸とし、温度偏差(ΔT)をY軸とした場合の座標値を算出する。座標値算出部34は、熱量推定部32が出力した時間積算値情報(Y〔A
2・S〕)と、温度偏差算出部33が出力した温度偏差情報(ΔT|Max−Min|)から座標値(Xn,Ym)を算出する。座標値算出部34は、算出した座標値(Xn,Ym)を異常検出部35へ出力する。
【0035】
異常検出部35は、座標値算出部34が出力した座標値(Xn,Ym)をメモリに記録していき、一定時間継続して異常判定領域データ36に座標値(Xn,Ym)が含まれている場合には温度センサ19の異常を検出する。異常検出部35は、温度センサ19の異常を検出すると、異常検出信号SGを出力する。異常を検出したハイブリッド自動車1は、たとえば、専用のLEDランプなどを点灯させる、または音などを発報し、温度センサ19の異常をドライバーに知らせる。
【0036】
(動作)
図3は、
図1のハイブリッドECU18により実行される温度センサ19の異常検出処理を示すフローチャートである。なお、
図3のフローチャートの「START」から「END」までの工程は、1周期分の処理を示したものであり、処理がいったん「END」になっても「START」の条件が整っている場合、再び処理は開始される。
【0037】
START:たとえば、運転キーが操作されて、ハイブリッドECU18が起動されると、ハイブリッドECU18は所定のプログラムを実行し、
図2に示した機能が実現可能となると、ステップS1の処理へ移行する。
【0038】
ステップS1:ハイブリッドECU18の情報取得部31は、温度センサ19から通知される温度情報に基づきインバータ14を構成する主回路素子の所定時間の温度の変移を取得するとともに、インバータ14に所定時間の間に入力される電流値の変移を取得する。インバータ14を構成する主回路素子の温度およびインバータ14に入力される電流値を所定時間取得すると、ハイブリッドECU18は、ステップS2の処理へ移行する。
【0039】
ステップS2:ハイブリッドECU18の熱量推定部32は、ステップS1で取得した電流値と通電時間からインバータ14に入力される熱量を推定する。インバータ14に入力される熱量は、上述した時間積算値情報(Y〔A
2・S〕)を算出することで求められる。
【0040】
ステップS3:ハイブリッドECU18の温度偏差算出部33は、ステップS1で取得したインバータ14の温度変化量を算出する。温度変化量は、上述した温度偏差情報(ΔT|Max−Min|)を算出することで求められる。なお、ステップS2とステップS3の実行される順番は逆の順番で実行されてもよいし、並列的に実行されてもよい。
【0041】
ステップS4:ハイブリッドECU18の座標値算出部34は、ステップS2で算出された時間積算値情報(Y〔A
2・S〕)をX軸とし、ステップS3で算出した温度偏差情報(ΔT|Max−Min|)をY軸として表される座標系における座標値(Xn,Ym)を内部のメモリに記録していく。
【0042】
ステップS5:ハイブリッドECU18の異常検出部35は、ステップS4で内部のメモリに記録した座標値(Xn,Ym)が一定時間継続して異常判定領域データ36に含まれるか否かを判定する。
【0043】
ステップS6:ハイブリッドECU18の異常検出部35は、ステップS5で含まれると判定した場合(ステップS5でYES)には、異常検出信号SGを出力することで、温度センサ19の異常を通知する専用のLEDランプなどを点灯させる、あるいは音などでハイブリッド自動車1の運転者に知らせ、異常検出処理を終了する(END)。なお、運転キーが操作されて、ハイブリッドECU18が停止される場合でも、異常検出処理を終了する(END)。
【0044】
ステップS7:ハイブリッドECU18の異常検出部35は、ステップS5で含まれないと判定した場合(ステップS5でNo)には、温度センサ19に異常はないと判断して、異常検出処理を終了する(END)。
【0045】
図4は、X軸を
図1に示すインバータ14の主回路素子への通電時間(TIME)とし、Y軸をインバータ14の主回路素子に流入される電流値の2乗(A
2)として表した図の一例である。インバータ14の主回路素子に所定の時間T1に流入される熱量(エネルギー)は、
図4に示す斜線部分Sの面積に相当するものである。
【0046】
図5は、X軸を時間積算値情報(Y〔A
2・S〕)とし、Y軸を温度偏差情報(ΔT|Max−Min|)として表した図の一例である。
図5に正常動作パターン領域Aは、ハイブリッド自動車1での様々な走行パターンによる実験から得られた複数の座標値の外延を結んだ座標領域である。また、
図5に示す異常判定領域B,Cは、正常動作パターン領域A以外の領域であり、これらのいずれかの領域に一定時間継続して含まれている場合にはハイブリッドECU18の異常検出部35が温度センサ19の異常を検出する領域である。
【0047】
ハイブリッドECU18の座標値算出部34が算出した座標値が
図5に示す異常判定領域Bに含まれる場合は、正常時の温度変化と比較して大きな温度変化が見られるということを意味する。すなわち、インバータ14を流れる電流が少なくインバータ14の主回路素子に対してエネルギー(熱量)があまり流入されていないにもかかわらず、温度センサ19が検出する温度の変化が正常時と比較して大きい場合である。
【0048】
図6は、
図5に示す異常判定領域Bに含まれる場合の温度変化の一例を示す図である。
図6のX軸は
図1に示すインバータ14の主回路素子への通電時間(Time)であり、Y軸は温度センサ19が検出したインバータ14の主回路素子の温度(℃)の変化を示している。
【0049】
図6に示すT1は、
図4に示すT1と同一の所定の時間である。
図6に示すTe2は、異常判定閾値である。この異常判定閾値は、
図5に示した異常判定領域Bに対応しており、温度センサ19が正常に動作する際に、様々な走行パターンによる実験から得られた複数の座標値の外延を結んだ座標領域に基づいて定められている。
図6に示すTe3は、所定の時間T1において、温度センサ19が検出したインバータ14の主回路素子の温度の最低温度(Min)と最高温度(Max)の差分である。
図6に示す例では、Te2の領域範囲を超える温度変化が見られる。したがって、
図6に示す挙動が一定時間継続して確認された場合には
図5に示した異常判定領域Bに含まれることになるため、ハイブリッドECU18の異常検出部35が温度センサ19の異常を検出する。
【0050】
図5に戻り、ハイブリッドECU18が算出した座標値が異常判定領域Cに含まれる場合は、正常時の温度変化と比較して小さな温度変化が見られるということを意味する。すなわち、インバータ14の主回路素子に対して大きなエネルギーが流入されているにもかかわらず、温度センサ19が検出する温度の変化が正常時と比較して小さい場合である。
【0051】
図7は、
図5に示す異常判定領域Cに含まれる場合の温度変化の一例を示す図である。
図7のX軸は
図1に示すインバータ14の主回路素子への通電時間(Time)であり、Y軸は温度センサ19が検出したインバータ14の主回路素子の温度(℃)の変化を示している。
【0052】
図7に示すT1は、
図4に示すT1と同一の所定の時間である。
図7に示すTe4は、異常判定閾値である。この異常判定閾値は、
図5に示した異常判定領域Cに対応しており、温度センサ19が正常に動作する際に、様々な走行パターンによる実験から得られた複数の座標値の外延を結んだ座標領域に基づいて定められている。
図7に示すTe5は、所定の時間T1において、温度センサ19が検出したインバータ14の主回路素子の温度の最低温度(Min)と最高温度(Max)の差分である。
図7に示す例では、Te4の領域範囲を超えない温度変化が一定時間継続して確認された場合には
図5に示した異常判定領域Cに含まれることになるため、ハイブリッドECU18の異常検出部35が温度センサ19の異常を検出する。
【0053】
(効果)
以上により、温度センサ19の異常を検出する異常検出装置の一例であるハイブリッドECU18は、温度センサ19の温度検出対象であるインバータ14の主回路素子から発生する所定時間における熱量を算出する熱量算出部32(熱量算出手段)と、インバータ14の主回路素子の所定時間における温度変化量を算出する温度偏差算出部33(温度変化算出手段)と、熱量算出部32により算出される熱量情報を一つの座標軸とし、温度偏差算出部33により算出される温度センサ19の温度偏差情報(ΔT|Max−Min|、温度変化量情報)をもう一つの座標軸として表される座標系における座標値を算出する座標値算出部34(座標値算出手段)と、座標値算出部34により算出された座標値が座標系における異常判定領域BまたはC(所定の異常検出判定領域)に一定時間継続して含まれている場合に温度センサ19の異常を検出する異常検出部35(異常検出手段)とを有するものである。これによれば、一定時間継続して異常な温度変化が見られる場合に異常を検出することから、誤検出を低減させ、温度センサ19の異常を適切に検出させることができる。
【0054】
また、異常判定領域BまたはCは、温度センサ19が正常に動作する際の、インバータ14の主回路素子から発生する所定時間における電流値および通電時間から求められる時間積算値情報(Y〔A
2・S〕)(時間積算値)と、インバータ14の主回路素子の所定時間における温度偏差情報(ΔT|Max−Min|)(温度変化量)の関係から求められる複数の座標値から形成される正常動作パターン領域A(正常動作パターン領域)には含まれない座標領域である。そして、異常検出部35は、座標値算出部34により算出された座標値が正常動作パターン領域Aに含まれる座標値と比較して、温度偏差算出部33により算出された温度の変化量が大きい異常判定領域B(第1の温度変化異常領域)に一定時間継続して含まれている場合、または、座標値算出部34により算出された座標値が正常動作パターン領域に含まれる座標値と比較して、温度偏差算出部33により算出された温度の変化量が小さい異常判定領域C(第2の温度変化異常領域)に一定時間継続して含まれている場合、温度センサ19の異常を検出するものである。これによれば、インバータ14の主回路素子に対してエネルギー(熱量)があまり流入されていないにもかかわらず、温度センサ19が検出する温度の変化が正常時と比較して異常に大きい場合、または、インバータ14の主回路素子に対して大きなエネルギー(熱量)が流入されているにもかかわらず、温度センサ19が検出する温度の変化が正常時と比較して異常に小さい場合に温度センサ19の異常を検出することが可能となる。すなわち、温度センサ19の異常を、正常時の動作における挙動パターンと比較して検出するようにしているため、より適切に温度センサ19の異常を検出することができる。なお、
図3で説明した異常検出判定処理では、異常検出判定領域Bおよび異常検出判定領域Cの2つを用いたが、1つのみを用いて異常検出判定処理を実行するようにしてもよい。なお、温度センサ19としてサーミスタを利用すると、精度よく検出できる範囲が限られてしまい、その範囲外では正常時も故障時も変わらない挙動を示すおそれがある場合には、温度センサ19は感温ダイオード(ダイオード温度計)を採用すると、サーミスタを利用する場合と比較して誤検出のおそれがより低減される。
【0055】
また、上述したハイブリッドECU18を有するハイブリッド自動車1、ハイブリッドECU18が実行する異常検出方法、およびコンピュータをハイブリッドECU18として機能させるための各種プログラムは、上述した各効果と同様の効果を奏するものである。
【0056】
(プログラムを用いた実施の形態について)
また、ハイブリッドECU18は、所定のプログラムにより動作する汎用の情報処理装置によって構成されてもよい。例えば、汎用の情報処理装置は、メモリ、CPU、入出力ポートなどを有する。汎用の情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、汎用の情報処理装置には、ハイブリッドECU18の機能が実現される。また、その他の機能についてもソフトウェアにより実現可能な機能については汎用の情報処理装置とプログラムとによって実現することができる。なお、上述したCPUの代わりにASIC、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSPなどを用いてもよい。
【0057】
なお、汎用の情報処理装置が実行する制御プログラムは、ハイブリッドECU18の出荷前に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、ハイブリッドECU18の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、制御プログラムの一部が、ハイブリッドECU18の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。ハイブリッドECU18の出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶される制御プログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0058】
また、制御プログラムは、汎用の情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0059】
このように、汎用の情報処理装置とプログラムによってハイブリッドECU18の機能を実現することにより、大量生産や仕様変更(または設計変更)に対して柔軟に対応可能となる。
【0060】
(その他の実施の形態)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り様々に変更が可能である。たとえば、温度センサ19をインバータ14の内部に図示したが、これは温度センサ19の設置位置をインバータ14の内部に限定するものではない。たとえば温度センサ19をインバータ14の外部に設置し、インバータ14の筐体の温度を測定することによって間接的にインバータ14の温度を推定してもよい。あるいは、温度センサ19は、インバータ14が設置されている周辺の気温を測定するようにし、インバータ14が設置されている周囲の気温を測定することによって間接的にインバータ14の温度を推定することができる。また、インバータ14の外部からインバータ14の筐体の温度を測定するために、温度センサ19に代えてカメラ装置を設け、サーモグラフィーのような画像解析手法を用いてもよい。
【0061】
また、インバータ14の温度センサ19の異常検出としたが、インバータ14以外に設置される温度センサの異常検出についても適用可能である。たとえば、電動機13を構成する素子の温度検出をするための温度センサ(不図示)の異常検出にも同様に適用できる。
【0062】
なお、温度センサ19の温度検出対象が電動機13の場合には、電動機13に入力される電流値から推定するようにしてもよいし、電動機13の回転数、トルクの積に所定の係数を乗じて算出された機械的出力から電動機13から発生する熱量の推定をするようにしてもよい。
【0063】
また、エンジン10は、内燃機関であると説明したが、外燃機関を含む熱機関であってもよい。
【0064】
また、各ECU(エンジンECU11、電動機ECU17、およびハイブリッドECU18)は、これらを1つにまとめたECUにより実現してもよいし、あるいは、各ECUの機能をさらに細分化したECUを新たに設けてもよい。また、
図2に示したハイブリットECU18において実現する機能は電動機ECU17において実現するようにしてもよい。
【0065】
また、ハイブリッド自動車1は、いわゆるパラレル方式のものとしたが、エンジンを発電のみに使用し、モータを車軸の駆動と回生のみに使用するシリーズ方式、エンジンからの動力をプラネタリーギアなどを用いた動力分割機構により分割し、発電機とモータに振り分けるスプリット方式などであってもよい。
【0066】
また、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。