(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770653
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】超伝導電気導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20150806BHJP
H01B 12/10 20060101ALI20150806BHJP
C01G 29/00 20060101ALI20150806BHJP
C01G 1/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
H01B13/00 565D
H01B12/10ZAA
C01G29/00
C01G1/00 S
【請求項の数】6
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-26110(P2012-26110)
(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公開番号】特開2012-169272(P2012-169272A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2014年8月12日
(31)【優先権主張番号】11305159.3
(32)【優先日】2011年2月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501044725
【氏名又は名称】ネクサン
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・ゾイカ
【審査官】
和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−287772(JP,A)
【文献】
特表2009−545120(JP,A)
【文献】
特開平05−294630(JP,A)
【文献】
特開2009−187743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
C01G 1/00
C01G 29/00
H01B 12/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物(BSCCO)をベースとする超伝導電気導体の製造方法であって、
最初に、複数のあらかじめ製造されたBSCCOフィラメントを、銀または銀の合金からなる、共通の、管状の閉じた覆いへ入れるステップと、
その後、該フィラメントを備えた、該覆いを帯状体に変形するステップと、
引き続いて、該帯状体の厚さを所定の厚さへ減少させるステップと、
該帯状体の製造中に連続的に該帯状体の電流容量を測定するステップと、
該帯状体の製造中に、低下した電流容量の領域に、少なくとも、欠陥個所として目印を付けるステップと、を含み、
欠陥個所の該領域において、該帯状体(2)の少なくとも一方の面に、高温超伝導材料(HTSL材料)で被覆した、帯状の担体からなり、該帯状体(2)と実質的に同じ幅を有し、0.1mmの最大厚さを有するストリップ(7)を、該HTSL材料を該帯状体(2)の方に向けて、固着するように付ける製造方法。
【請求項2】
0.05mmの厚さのHTSL材料からなるストリップ(7)を使用する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
HTSL材料からなるストリップ(7)を、銀または銀合金からなる覆いに直接付ける請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
欠陥個所において、該帯状体(2)の両面に、それぞれ、HTSL材料を備えたストリップ(7,8)を付ける請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
連続製造中に、HTSL材料を備えたストリップ(7,8)を付ける、請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
HTSL材料として、イットリウム・バリウム・銅酸化物(YBCO)を使用する、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマス・ストロンチウム・
カルシウム・
銅酸化物(BSCCO)をベースとした超伝導電気導体の製造方法であって、最初に、
複数の予め製造されたBSCCOフィラメントを、銀または銀合金からなる、共通の、管状の閉じた覆いに入れ、その後、フィラメントを備えた覆いを帯状体に変形し、続いて、帯状体の厚さを所定の値まで減少させ、
該帯状体の製造中に、
該帯状体の電流容量を継続的に測定し、
該帯状体の製造中に電流容量が減少した領域に、少なくとも欠陥箇所として目印をつける、超伝導電気導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日使用されている超伝導導体は、高温超
伝導体(HTSL)とも呼ばれる。それらは、セラミックス材料を含む合成材料から構成される。そのようなセラミックス材料は、たとえば、第1世代の材料としてのBSCCO(ビスマス・ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物)、または第2世代の材料としてのReBCO(希土・バリウム・
銅酸化物)、特にYBCO(イットリウム・バリウム・
銅酸化物)である。そのような超伝導導体の直流抵抗は、所定の電流強度を超えない限り、十分に冷却すればゼロである。そのような材料を超伝導状態にするための、十分に低い温度は、たとえば、67Kと90Kとの間である。適切な冷媒は、たとえば、窒素、ヘリウム、ネオン及び水素、またはこれらの物質の混合物である。
【0003】
BSCCOのベースの超伝導導体は、上記の基本的に公知の方法によって、比較的簡単に製造される。そのために、BSCCOを充填した、銀の管から構成されるフィラメントが製造され、
複数のフィラメントが、銀からなる共通の覆いの中に入れられる。フィラメントを充填した覆いは、帯状体に変形され、該帯状体の厚さを、最終的に、通常の技術で加工されうる導体となるまで減少させる。その厚さは、約0.25mmである。そのような内側導体と名付けた、フィラメントを充填した覆いを機械的に安定化するために、その両面に、たとえば、特殊鋼または銅合金からなる層をさらに付けることができる。それによって、帯状体の厚さは、約0.45mmに増加する。そのようなBSCCO帯状体から構成される導体は、両方の実施形態において、超伝導ケーブル内の導体の損傷が、導体の完全な欠損に至らないという利点を有する。その理由は、
複数のフィラメントが存在し、通常はその一部のみが損傷されるからであり、さらに、銀は、その高い電気伝導性に基づいて、有効な代替導体だからである。それでも、供給される状態のBSCCO帯状体は、電気導体として欠陥のない状態である必要がある。そのために、BSCCO帯状体の電流容量は、連続的に測定される。さらに、確認された欠陥箇所には、公知の技術で目印が付けられ、帯状体から取り除かれる。それによって発生した帯状体の断片の端部は、その後、互いに重ね合わせて配置され、しっかりと互いに結合される。このため、帯状体は、結合箇所において、二重に存在し、結合箇所の厚さは、約0.5mmまたは0.9mmである。それによって、ケーブル内の導体としてのBSCCO帯状体をさらに加工することは困難となる。その理由は、結合箇所が、邪魔な厚い部分であるだけではなく、さらに、導体の可撓性を損なうからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の方法を、欠陥箇所におけるBSCCO帯状体の必要な電流容量を簡単なやり方で調整することができるように改良するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明にしたがって、欠陥箇所の領域において、少なくとも帯状体の一つの面に、高温超
伝導材料(HTSL材料)によって被覆された帯状の担体から構成され、BSCCO帯状体と実質的に同じ幅、及び0.1mmの最大厚を有するストリップを、HTSL材料を該帯状体の方に向けて、固着するように付けることによって解決される。
【0006】
この方法を使用する場合に、欠陥を確認した際にBSCCO帯状体を切断する必要はない。そのため、BSCCO帯状体の製造は、ずっと簡単になる。対応する帯状体から製造された電気導体の、必要な電流容量は、確認された欠陥箇所に付けられた、HTSL材料を示すストリップによって確保される。HTSL材料を備えた、そのようなストリップは、BSCCO帯状体の製造中にすでに付けることができるが、後の工程で付けることもできる。帯状体が、安定した被覆を得られない場合には、HTSL材料からなるストリップを、HTSL材料が直接帯状体に密着するように付けることができる。HTSL材料を備えたこのようなストリップは、公知であり、市販されている。ストリップは、0.1mmの最大厚さを有し、0.05mmの厚さで使用されるのが好ましい。ストリップが、0.25mmの厚さの帯状体の片面だけに付けられれば、この方法によって「修理された」欠陥箇所において、BSCCO帯状体は、0.3mmの厚さを有する。厚さは、ストリップによってわずかしか増加しないので、超伝導ケーブルの導体としてのBSCCO帯状体をさらに加工することが妨げられることはない。
【0007】
ストリップ用のHTSL材料として、YBCOを使用するのが有利である。
【0008】
本発明の方法は、実施例の図面に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】BSCCO帯状体の製造のための構成を示す図である。
【
図4】
図3に対して補足した、帯状体の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
さらに、上記の記載によれば、本発明の方法によって、銀または銀合金からなる覆いが、さらに被覆されないように、BSCCO帯状体を製造することができる。しかし、BSCCO帯状体の安定化のために、たとえば、特殊鋼または銅合金からなる層を、両面からBSCCO帯状体上に付けることもできる。BSCCO帯状体の電流容量は、被覆されていない生産品においても被覆された生産品においても測定することができる。上記の意味で被覆されたBSCCO帯状体においては、少なくともHTSL材料を示すストリップを、欠陥箇所において、安定化のために機能する層の欠陥箇所へ付ける。すべての考えられる実施形態の代わりに、銀または銀合金からなる被覆されていない覆いを有するBSCCO帯状体の製造及び「修理」のための方法を以下に説明する。
【0011】
図1による構成によって、
複数の予め製造されたBSCCOフィラメント1が、銀または銀合金からなる共通の覆いに入れられる。覆いは、つぎに、包み込まれたフィラメント1とともに、BSCCO帯状体2に変形される。BSCCO帯状体2は、以下において、単に「帯状体2」と呼称する。帯状体2は、装置3において、約0.25mmの厚さを有するようになるまで、その寸法が低減される。製造中に帯状体は、継続的な送りで、矢印4の方向へ移動させられる。帯状体2は、装置3の後で、測定装置5を通り抜け、そこで、帯状体の電流容量が測定される。電流容量が所定の値よりも小さい欠陥箇所には目印が付けられる。帯状体2は、最終的に単に図によって示された巻枠6に巻き取ることができる。
【0012】
帯状体2の製造中に、
図3にしたがって、帯状体2上の、測定装置5において確認された、電流容量が減少した欠陥個所に、特に、YBCOを被覆した担体からなるストリップ7を付けることができる。ストリップ7の厚さは、好ましくは、0.05mmである。ストリップ7は、帯状体2に付けられしっかりと結合されるので、YBCOが、直接またはじかに帯状体2上に位置する。帯状体2の厚さが0.25mmであれば、対応する「修理箇所」の厚さは0.3mmである。
【0013】
帯状体2の欠陥個所は、
図4にしたがって、ストリップ7の他に、帯状体の他方の面上にも、YBCOを備えたストリップ8を付けることによって「修理する」こともできる。その場合にも、「修理箇所」の厚さは、大幅に、あるいは、邪魔になるように増加することはない。厚さは、0.35mmである。
【0014】
上述の帯状体2の修理は、連続製造とは無関係に、後の時点で行ってもよい。