特許第5770658号(P5770658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770658
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】乗場行先階登録装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20150806BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20150806BHJP
   B66B 3/02 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B66B1/14 L
   B66B1/14 K
   B66B3/00 K
   B66B3/02 K
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-51560(P2012-51560)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-184791(P2013-184791A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111110
【弁理士】
【氏名又は名称】美甘 徹也
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100159938
【弁理士】
【氏名又は名称】砂井 正之
(72)【発明者】
【氏名】石井 幸男
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−249072(JP,A)
【文献】 特開2004−115151(JP,A)
【文献】 特開2001−002331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/14
B66B 3/00
B66B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗場に設けられ、エレベータ利用者が行先階の情報を入力する乗場行先階登録装置において、
複数の行先階を表示する行先階指定領域が表示され、乗場からの利用者による情報入力が可能なタッチセンサ機能を有するタッチパネルと、
前記タッチパネルへの入力情報に基づいて乗りかごの呼び登録を行う制御部と、
前記制御部に備えられ、利用者による前記タッチパネルへの接触を検出する接触検出部と、
前記制御部に備えられ、利用者による前記タッチパネルへの接触時間若しくは非接触時間の少なくとも一方を計測するタイマと、
前記制御部に備えられ、前記接触検出部によって検出された接触軌跡及び前記タイマによって計測された接触時間若しくは非接触時間に基づいて入力された情報を認識する情報入力認識部と、
前記タッチパネルに取り付けられ、前記制御部からアンサーバック信号を受信した場合に振動する振動モータと、
を備え、
前記情報入力認識部は、前記タッチパネルへの接触点が2点以上である場合に、文字入力の認識を開始し、
前記制御部は、利用者による情報入力が完了したと判断した場合に前記振動モータにアンサーバック信号を出力することを特徴とする乗場行先階登録装置。
【請求項2】
エレベータの乗場に設けられ、エレベータ利用者が行先階の情報を入力する乗場行先階登録装置において、
複数の行先階を表示する行先階指定領域が表示され、乗場からの利用者による情報入力が可能なタッチセンサ機能を有するタッチパネルと、
前記タッチパネルへの入力情報に基づいて乗りかごの呼び登録を行う制御部と、
前記制御部に備えられ、利用者による前記タッチパネルへの接触を検出する接触検出部と、
前記制御部に備えられ、利用者による前記タッチパネルへの接触時間若しくは非接触時間の少なくとも一方を計測するタイマと、
前記制御部に備えられ、前記接触検出部によって検出された接触軌跡及び前記タイマによって計測された接触時間若しくは非接触時間に基づいて入力された情報を認識する情報入力認識部と、
前記タッチパネルに取り付けられ、前記制御部からアンサーバック信号を受信した場合に振動する振動モータと、
を備え、
前記情報入力認識部は、前記タッチパネルへの接触点が2点以上である場合に、文字入力の認識を開始し、少なくとも1点が接触終了した後、所定時間経過した場合に文字入力が終了したものと判断し、
前記制御部は、利用者による情報入力が完了したと判断した場合に前記振動モータにアンサーバック信号を出力することを特徴とする乗場行先階登録装置。
【請求項3】
前記情報入力認識部は、前記タッチパネルに対する接触開始から接触終了までの間の始点と終点を結んだ軌跡が前記行先階指定領域内に収まっている場合、その行先階指定領域に表示されている行先階への登録があったものと認識する請求項1または2に記載の乗場行先階登録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの乗場に設置される乗場行先階登録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数台のエレベータを群管理制御する場合、利用者の待ち時間を最小とする最適割当を行うためにエレベータの乗場には、利用者が自ら行先階を乗場で登録するための乗場行先階登録装置が設置されている。一般的には、この乗場行先階登録装置の行先階登録は機械式の押釦によるものが多い。
【0003】
しかし、近年乗場行先階登録装置をビルの仕様や客先要求に対応させるため、乗場行先階登録装置の行先階の登録方法として機械的な押釦ではなく、タッチパネル式のものが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−249072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなタッチパネル式の乗場行先階登録装置が採用される場合、弱視者や視覚障がい者にとってはタッチパネル上に表示されている画面が見づらく、また、タッチパネルを操作した場合の操作認識確認動作、いわゆるアンサーバックがないため、操作性が低いものであった。
【0006】
そこで本発明の実施形態は、視覚障がい者等であっても使用しやすいタッチパネル式の乗場行先階登録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係る乗場行先階登録装置は、複数の行先階を表示する行先階指定領域が表示され、乗場からの利用者による情報入力が可能なタッチセンサ機能を有するタッチパネルと、前記タッチパネルへの入力情報に基づいて乗りかごの呼び登録を行う制御部と、前記制御部に備えられ、利用者による前記タッチパネルへの接触を検出する接触検出部と、前記制御部に備えられ、利用者による前記タッチパネルへの接触時間若しくは非接触時間の少なくとも一方を計測するタイマと、前記制御部に備えられ、前記接触検出部によって検出された接触軌跡及び前記タイマによって計測された接触時間若しくは非接触時間に基づいて入力された情報を認識する情報入力認識部と、前記タッチパネルに取り付けられ、前記制御部からアンサーバック信号を受信した場合に振動する振動モータと、を備え、前記情報入力認識部は、前記タッチパネルへの接触点が2点以上である場合に、文字入力の認識を開始し、前記制御部は、利用者による情報入力が完了したと判断した場合に前記振動モータにアンサーバック信号を出力することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る乗場行先階登録装置の設置を示す外観図である。
図2】本発明の実施形態に係る乗場行先階登録装置を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る乗場行先階登録装置の構成を示す縦断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る乗場行先階登録装置の操作を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る乗場行先階登録装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態においては複数のエレベータが群管理制御されており、各階のエレベータの乗場にはエレベータ利用者が乗りかごに乗降するための、複数の乗場ドア1が設置されている。また、乗場にて利用者が行先階を指定登録するための乗場行先階登録装置2が乗場ドア1側の建物壁3に設置される。なお、この乗場行先階登録装置2は各階の乗場に設置される場合や、基準階にのみ設置される場合などがある。また、乗場行先階登録装置2は乗場ドア1側の建物壁3に設置される場合だけでなく、乗場に独立して設置される場合などがある。
【0011】
次に図2を用いて、乗場行先階登録装置2の建物壁3への取り付け及び構成について説明する。乗場行先階登録装置2は建物壁3に取り付けられる筐体4にタッチパネル5が取り付けられてなる。本実施形態においては、図2に示すように建物壁3に設けられた取付空間に筐体底4a方向からはめ込み、筐体底4a、筐体側面4bが埋め込まれるように取り付けられる。
【0012】
そして、建物壁3と並行方向に筐体側面4bから延伸する筐体取付部4cによって、筐体4の埋め込み量が制限されて建物壁3に取り付けられる。なお、建物壁3と筐体4との固定方法は特に限定しないが、筐体側面4bと建物壁3及び、筐体取付部4cと建物壁3をそれぞれボルトなどの締結部材によって取付固定する。
【0013】
また、図2に示すように、乗場行先階登録装置2の取り付けを縦断面でみた場合、筐体側面4bと筐体取付部4cの関係はT字型となっている。筐体取付部4cであって、建物壁3と取付固定されていない側の延伸部分にはゴムやバネなどの弾性部材6が備え付けられる。そしてタッチパネル5はこの弾性部材6を介して筐体4に取り付けられている。弾性部材6による取付方法は特に限定せず、タッチパネル5の四辺全てに取り付けられるものとしてもよいし、タッチパネル5と筐体4の一部に取り付けられるものとしてもよい。
【0014】
タッチパネル5の裏側、すなわち乗場側に露出しない側にはタッチパネル5を振動させるための振動モータ7が設けられている。
【0015】
次に図3を用いて乗場行先階登録装置2の表示画面について説明する。筐体4に取り付けられるタッチパネル5には、利用者による呼び登録への最適な割当号機を表示する乗車号機表示領域9と各行先階を表示する複数の行先階指定領域10が表示される。行先階指定領域10の数は建物の階床数などの建物仕様によって決められる。行先階が表示されている複数の行先階指定領域10の中から利用者が希望する行先階を選択すると、最適な割当号機が乗車号機表示領域9に表示される。
【0016】
次に図3図5を用いて本実施形態に係る乗場行先階登録装置の作用について説明する。まず、一般利用者による図3に示す表示画面を利用した乗場行先階登録について説明する。
【0017】
乗場にいる利用者は乗場行先階登録装置2に表示されている行先階指定領域10の中から希望する行先階を選択する。タッチパネル5には入力電極がマトリックス状に配列されており、タッチセンサ11を構成している。このタッチセンサ11によって利用者がどの領域をタッチしたのかを判断し、利用者による操作情報が制御部12に出力される。制御部12は入力された操作情報からタッチパネル5に表示された行先階指定領域10のうちどれが選択されたのかを把握する。
【0018】
制御部12が利用者による行先階選択完了の認識を行うのは、タッチパネル5に対する接触開始から接触終了までの間の始点と終点を結んだ軌跡が、その行先階指定領域10の範囲内に収まっている場合に、その範囲における行先階への登録がなされたと認識する。登録の認識を終えると、制御部12はアンサーバック信号として、振動指令を振動モータ7に出力し、振動モータ7を振動させる。この振動によって、利用者は自身の登録が正常に認識されたことがわかる。
【0019】
そして、制御部12は、利用者の呼び登録に対して最適な号機を応答させ、乗車号機表示領域9に応答させる最適な号機を表示させる。
【0020】
次に、図4図5を用いて弱視者などの視覚障がい者による乗場行先階登録について説明する。障がい者にとって、乗場行先階登録装置2に表示されている行先階は見づらく、操作しにくい。そこで、本実施形態に係る乗場行先階登録装置2はタッチパネル5上で直接指などによって文字入力を行うことができる構成を有する。
【0021】
上述のようにタッチパネル5には入力電極がマトリックス状に配列されていることから、今回の文字入力の際にも、タッチパネル5に対する接触開始から接触終了までの間の始点と終点を結んだ軌跡の組み合わせ、及び接触時間や接触終了から次の接触開始までの時間間隔等によって、制御部12はその文字入力内容を把握する。
【0022】
このとき、既述のように一般利用者による行先階指定による呼び登録の認識を終えると制御部12はアンサーバック信号として、振動指令を振動モータ7に出力し、振動モータ7を振動させるが、登録の完了を認識するのはタッチパネル5への接触が終了した後であることから、アンサーバック信号によって振動モータ7を振動させるときには、利用者の指はタッチパネル5上から離れていることになる。この場合、一般利用者は視覚的に乗車号機表示領域9に割当号機が表示されることにより、自身の呼び登録が認識されたことを確認することができるが、その一方で弱視者などの視覚障がい者にとっては、自身の登録が制御部12側に認識されたのかを確認することが困難である。
【0023】
したがって、本実施形態に係る乗場行先階登録装置2は、タッチパネル5に対して直接文字入力をする際には片手入力では文字入力受付不可とし、必ず文字入力が完了するときには、入力操作する指以外の指をタッチパネル5上に接触させておく構成とする。
【0024】
すなわち、入力操作する指以外の指がタッチパネル5上に触れていることにより、アンサーバック信号による乗場行先階登録装置2の振動を受けることができ、自身の登録が認識されたことを触覚的に確認することができる。以下、具体的に説明する。
【0025】
本実施形態に係る乗場行先階登録装置2は、利用者による文字入力を認識する条件として、常に文字入力操作をする指以外の指で、タッチパネル5の一部に触れていることを必要とすることとする。つまり図4に示すように、タッチパネル5上に文字入力などの操作をする指以外に画面上の一部に触れている場合に文字入力認識を行う。
【0026】
文字入力の認識は、既述のようにタッチパネル5に対する接触開始から接触終了までの間の始点と終点を結んだ軌跡の組み合わせ、及び接触時間や接触終了から次の接触開始までの時間間隔等によって、制御部12はその文字入力内容を把握する。
【0027】
図5に示すように、まず制御部12に備えられる接触検出部13は、タッチセンサ11からの信号によってタッチパネル5に対する接触開始から接触終了までの軌跡を検出する。また、接触終了から次の接触開始までの時間間隔を制御部12に備えられるタイマ14によって測定する。
【0028】
制御部12に備えられる情報入力識別部15は接触検出部13によって認識された接触軌跡とタイマ14によって測定された時間間隔に基づいて、入力された文字を認識する。つまり、接触終了から所定時間経過した場合は、1文字の入力が終わったものとしてその接触軌跡から文字を認識する。一方、接触終了から所定時間以内にさらなる接触開始があった場合、1文字の入力が継続しているものとして、先ほどの接触開始から接触終了までの軌跡と、次の接触開始から接触終了までの軌跡とを合わせて文字認識を行う。すなわち、情報入力識別部15は接触終了から接触開始までの時間間隔が所定時間以上経過するまでは、連続する1文字として文字認識を継続する。
【0029】
そして、制御部12は利用者による文字入力が完了したと判断した場合、振動モータ7にアンサーバック信号を出力し、振動モータ7を振動させる。
【0030】
なお、操作をする指以外の指がタッチパネル5上に触れていたとしてもその場合、タッチパネル5への接触終了が確認されない限り文字入力とは認識されないため、誤操作を防止することができる。
【0031】
以上のようにして、制御部12はタッチパネル5上への接触継続がある一方で他のマトリックス領域でタッチパネル5への接触を認識した場合、文字入力を許可する。すなわち、文字入力操作する指以外の指でタッチパネル5の一部に触れていることが認識されると、文字入力操作が可能となる。また、振動モータ7を振動させることにより、利用者は自らの文字入力が正常に認識されたことを確認することができる。
【0032】
なお、この文字入力を行う場合、特に表示画面のキャラクタを変更することなく、図3に示すような乗車号機表示領域9や行先階指定領域10を表示させたまま、文字入力を行うことができる点でも有効である。
【0033】
また、本実施形態に係る乗場行先階登録装置の構成によれば、文字入力を行う際に、文字入力を行う指以外にもタッチパネル5に接触させておく必要があるため、通常の呼び登録の際に誤って文字入力が認識される誤操作の防止にもつながる。
【0034】
また、本実施形態においては、タッチパネル5に対して振動モータ7以外に振動計を取り付け、乗場行先階登録装置2への振動を検出する構成とすることもできる。
【0035】
例えば、利用者がタッチパネル5に対して叩くなどの行為により振動を与え、その振動を振動計が検出する構成とする。このとき、例えば振動計によって検出される振動の大きさや振動回数などに応じた呼び登録を行うものとする。
【0036】
この場合、予め制御部12には、外部から乗場行先階登録装置2に対して与えられる振動の大きさや回数に対応した、行先階やエレベータの号機番号などを定めたテーブルが備えられる。例えば、基準階である1階に乗場行先階登録装置2が設置されている場合、利用者が乗場行先階登録装置2を3回叩いて衝撃を与えた場合、制御部12は3階を行先階として呼び登録がなされたものと判断する。
【0037】
以上のような構成とすることによって、弱視者などの視覚障がい者はタッチパネル5上に表示された行先階指定領域に関係なく、呼び登録を行うことができるため、従来のタッチパネル式の乗場行先階登録装置に比べて利便性が向上する。
【符号の説明】
【0038】
1…乗場ドア
2…乗場行先階登録装置
3…建物壁
4…筐体
5…タッチパネル
6…弾性部材
7…振動モータ
9…乗車号機表示領域
10…行先階指定領域
11…タッチセンサ
12…制御部
13…接触検出部
14…タイマ
15…情報入力識別部
図1
図2
図3
図4
図5