(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770661
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】視界情報取得方法、及び視界情報取得装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20150806BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G01M17/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-62318(P2012-62318)
(22)【出願日】2012年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-195218(P2013-195218A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】土井 裕太
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗男
(72)【発明者】
【氏名】中野 倫明
(72)【発明者】
【氏名】山本 新
(72)【発明者】
【氏名】北山 隆
【審査官】
小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−221467(JP,A)
【文献】
特開2010−271139(JP,A)
【文献】
特開2011−169686(JP,A)
【文献】
特開2009−180583(JP,A)
【文献】
特表2004−538481(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0100217(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/01 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G01M 17/007
G01M 11/00 − G01M 11/08
B60S 1/00 − B60S 1/68
G06T 1/00 − G06T 1/40
G06T 3/00 − G06T 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被評価ガラスの背景として異なる明度を含む一定間隔の模様を有した背景部材を配置し、前記被評価ガラスを前記一定間隔の模様に向かって撮像し撮像画像を得る撮像工程と、
前記撮像画像を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な空間周波数情報を得る第1定量化工程と、
前記フーリエ変換結果を周波数毎に逆フーリエ変換し、その逆フーリエ変換結果に基づいて周波数毎のコントラスト値を演算し、その周波数毎のコントラスト値を定量的なコントラスト情報として得る第2定量化工程と
を備え、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいて視界状態を評価することを特徴とする視界情報取得方法。
【請求項2】
請求項1に記載の視界情報取得方法において、
前記第2定量化工程は、逆フーリエ変換結果である波形の最小値と最大値から輝度の最小値と最大値を算出して、その輝度の最小値と最大値から周波数毎のコントラスト値を演算し、その周波数毎のコントラスト値を定量的なコントラスト情報として得ることを特徴とする視界情報取得方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の視界情報取得方法において、
前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいた合否判定用のしきい値を予め設定しておき、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報が組み合わされた総合情報が前記しきい値を越えるか否かで視界状態を合否判定して評価する合否評価工程を備えたことを特徴とする視界情報取得方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の視界情報取得方法における前記背景部材と、
前記撮像工程を行うための撮像手段と、
前記第1定量化工程を行うための第1定量化手段と、
前記第2定量化工程を行うための第2定量化手段と
を備えたことを特徴とする視界情報取得装置。
【請求項5】
請求項4に記載の視界情報取得装置において、
前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいた合否判定用のしきい値を記憶するための記憶手段と、
前記空間周波数情報と前記コントラスト情報が組み合わされた総合情報が前記しきい値を越えるか否かで視界状態を合否判定して評価するための合否判定手段と
を備えたことを特徴とする視界情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両に備えられるウォッシャ装置やワイパ装置等の性能を解析して評価すべく視界の状態を判別するための視界情報取得方法、及び視界情報取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両に備えられるワイパ装置の性能は、払拭範囲の性能の他に、フロントガラスへの降雨(水滴)に対して運転者等の視界がどれほど良好なものになるかといった性能が上げられる。即ち、ワイパにてフロントガラスの水滴(雨滴)をどれだけ綺麗に払拭して視界を向上できるかといった性能、具体的には、例えば車線や標識を容易に認識できる視界を維持できるかといった性能がある。
【0003】
しかし、これらの性能の評価は、一般的に目視により官能評価見本(基準の見本)と比較するといった程度しか行われていない。
又、ガラス越しの視界を評価(検出)する方法としては、フロントガラスを撮像した画像を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて評価する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4226775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような公報に開示された方法は、そのときの気候に応じたガラス越しの視界を評価(ガラスに曇りがあるか否かを検出)するためのものであって、視界の状態を高精度に評価するものではなく、例えば、ウォッシャ装置やワイパ装置の性能を高精度に評価することはできなかった。具体的には、例えば、車両試作段階等におけるワイパの駆動速度の最適設定やワイパの形状の最適設計等に用いるための評価はできなかった。
【0006】
又、勿論、官能評価においても、主観的となり、評価者によって評価が異なってしまう等、視界の状態を高精度に評価できず、ウォッシャ装置やワイパ装置の性能を高精度に評価することはできない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、視界の状態を高精度で客観的に評価することを可能とする視界情報取得方法、及び視界情報取得装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明では、被評価ガラスの背景として異なる明度を含む一定間隔の模様を有した背景部材を配置し、前記被評価ガラスを前記一定間隔の模様に向かって撮像し撮像画像を得る撮像工程と、前記撮像画像を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な空間周波数情報を得る第1定量化工程と、前記フーリエ変換結果を周波数毎に逆フーリエ変換し、その逆フーリエ変換結果に基づいて周波数毎のコントラスト値を演算し、その周波数毎のコントラスト値を定量的なコントラスト情報として得る第2定量化工程とを備え、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいて視界状態を評価することを要旨とする。
【0009】
同発明によれば、撮像工程にて、被評価ガラスの背景として異なる明度を含む一定間隔の模様を有した背景部材が配置され、前記被評価ガラスが前記一定間隔の模様に向かって撮像され撮像画像が得られる。そして、第1定量化工程においては、前記撮像画像が2次元フーリエ変換され、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な空間周波数情報が得られる。このとき、被評価ガラスの背景として一定間隔の模様が撮像されているため、水滴等が被評価ガラスに付着していない状態ではフーリエ変換結果(パワースペクトル分散図であって空間周波数領域)における特定の周波数の強さ(パワー)が強くなる(集中する)。又、水滴等が被評価ガラスに付着した状態ではフーリエ変換結果における強さ(パワー)が前記特定の周波数以外の周波数の領域に分散することになり、水滴による影響が強く表れることになる。
【0010】
又、第2定量化工程では、前記フーリエ変換結果が周波数毎に逆フーリエ変換され、その逆フーリエ変換結果に基づいて周波数毎のコントラスト値が演算され、その周波数毎のコントラスト値が定量的なコントラスト情報として得られる。このようにして得られたコントラスト情報は、周波数毎のコントラスト値を有するため、例えば、撮像画像の特定の一部分をサンプリングして単一のコントラスト値を演算するものに比べて、より細やかな情報となる。
【0011】
そして、共に定量的な前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいて視界状態を評価するため、高精度で客観的な評価が可能となる。又、特に、空間周波数情報とコントラスト情報が組み合わされた情報は、物や文字、具体的には車線や標識等を認識できるか否かに大きく関与する情報であることが分かっており、本発明では視界状態の意義の大きな評価を高精度で客観的に行うことが可能となる。よって、例えば、ワイパ装置やウォッシャ装置の性能等を高精度且つ客観的に評価することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の視界情報取得方法において、前記第2定量化工程は、逆フーリエ変換結果である波形の最小値と最大値から輝度の最小値と最大値を算出して、その輝度の最小値と最大値から周波数毎のコントラスト値を演算し、その周波数毎のコントラスト値を定量的なコントラスト情報として得ることを要旨とする。
【0013】
同発明によれば、第2定量化工程は、逆フーリエ変換結果である波形の最小値と最大値から輝度の最小値と最大値が算出されて、その輝度の最小値と最大値から周波数毎のコントラスト値が演算され、その周波数毎のコントラスト値が定量的なコントラスト情報として得られる。よって、具体的に請求項1に記載の発明の効果を得ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の視界情報取得方法において、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいた合否判定用のしきい値を予め設定しておき、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報が組み合わされた総合情報が前記しきい値を越えるか否かで視界状態を合否判定して評価する合否評価工程を備えたことを要旨とする。
【0015】
同発明によれば、合否評価工程では、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいた合否判定用のしきい値が予め設定されており、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報が組み合わされた総合情報が前記しきい値を越えるか否かで視界状態が合否判定されて評価されるため、高精度で客観的な合否の評価が可能となる。例えば、しきい値をワイパ装置の合否に対応したものとすることで、車両試作段階等におけるワイパの駆動速度の最適設定やワイパの形状の最適設計等に容易に役立てることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1又は2に記載の視界情報取得方法における前記背景部材と、前記撮像工程を行うための撮像手段と、前記第1定量化工程を行うための第1定量化手段と、前記第2定量化工程を行うための第2定量化手段とを備えたことを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、請求項1又は2に記載の視界情報取得方法を容易に実行することができ、請求項1又は2に記載の発明の効果を得ることができる視界情報取得装置を提供することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の視界情報取得装置において、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいた合否判定用のしきい値を記憶するための記憶手段と、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報が組み合わされた総合情報が前記しきい値を越えるか否かで視界状態を合否判定して評価するための合否判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0019】
同構成によれば、請求項3に記載の視界情報取得方法を容易に実行することができ、請求項3に記載の発明の効果を得ることができる視界情報取得装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、視界の状態を高精度で客観的に評価することを可能とする視界情報取得方法、及び視界情報取得装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施の形態における視界情報取得装置の模式図。
【
図2】本実施の形態における背景部材の部分正面図。
【
図4】(a)水滴の付着が少ない場合のパワースペクトル分散図。(b)水滴の付着が多い場合のパワースペクトル分散図。
【
図5】(a)しきい値を説明するための特性図。(b)(a)の空間周波数とコントラスト値(コントラスト感度)の関係を視覚的にイメージするためのイメージ画像。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1〜
図5に従って説明する。
図1に示すように、本実施の形態の視界情報取得装置は、背景部材11と、撮像手段としてのビデオカメラ12と、第1及び第2定量化手段、記憶手段及び合否判定手段としてのパソコン等の演算装置13とを備える。
【0023】
背景部材11は、状態が変化しない固定した背景であり、異なる明度を含む一定間隔の模様11a(
図2参照)を有し、被評価ガラスとしてのフロントガラス21の背景とすべく、車両22の前方に配置される。尚、一定間隔の模様11a(
図2参照)とは、撮像した画像の輝度が前記一定間隔内で大きく変化するとともに一定間隔毎に同じパターンを繰り返す模様であって、本実施の形態では一定間隔(本実施の形態では4cm)の半分の幅(本実施の形態では2cm)で明度が明るい部分(白色)と暗い部分(黒色)が並設される縦縞模様とされている。又、この一定間隔の模様11a(
図2参照)は、言い換えると、2次元フーリエ変換した際に特定の周波数の強さ(パワー)が強くなる(集中する)模様であって、本実施の形態では水平方向の特定の周波数の強さ(パワー)が強くなる縦縞模様(白黒交互の縦縞模様)とされている。
【0024】
ビデオカメラ12は、前記フロントガラス21を介して前記一定間隔の模様11aを向くように車両運転席24内に(ドライバーのアイポイントEP(
図3参照)を想定して)配置される。このビデオカメラ12は、フロントガラス21を一定間隔の模様11aに向かって動画撮像した動画データを得ることが可能とされている。尚、本実施の形態のビデオカメラ12は、1秒間毎に30フレーム(30個)の静止画像である撮像画像(
図3参照)からなる動画データを得ることが可能とされている。又、本実施の形態のビデオカメラ12は、有効画素数が数十万〜数百万画素であって、本実施の形態では約200万画素の前記撮像画像を得ることが可能とされている。
【0025】
演算装置13は、後述する種々の処理を行う。
又、演算装置13には、演算装置13の演算結果等の種々の情報を表示可能なディスプレー14が接続されている。
【0026】
ここで、視界情報取得方法について説明しながら、演算装置13が行う種々の処理について詳しく説明する。
視界情報取得方法は、「撮像工程」と「第1定量化工程」と「第2定量化工程」と「合否評価工程」とを備える。
【0027】
まず「撮像工程」では、
図1に示すようにフロントガラス21の背景として一定間隔の模様11a(
図2参照)を有した背景部材11を配置し、水滴が掛けられるとともに駆動されたワイパ23にて払拭されるフロントガラス21を一定間隔の模様11aに向かって動画撮像し動画データ(多数の静止画像である撮像画像)を得る。
【0028】
次に、「第1定量化工程」では、演算装置13によって、動画データの静止画像である撮像画像を2次元フーリエ変換し、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な空間周波数情報を得る。尚、本実施の形態で使用(処理)する撮像画像は、
図3に示すように、運転席正面に位置する予め設定した設定範囲(所謂アイポイントEP)の画像である。
【0029】
詳しくは、本実施の形態の「第1定量化工程」では、まず動画データにおける一定時間毎(例えば0.05秒毎)の静止画像である撮像画像をそれぞれ2次元フーリエ変換して、そのフーリエ変換結果としてそれぞれのパワースペクトル分散図(空間周波数領域のことであり、例えば、
図4(a),(b)参照)を得る。尚、
図4(a)は、水滴の付着が少ない(払拭直後の)場合のパワースペクトル分散
図P1であって、
図4(b)は、水滴の付着が多い(払拭直前の)場合のパワースペクトル分散
図P2である。
【0030】
そして、「第1定量化工程」では、フーリエ変換結果における強さ(パワー)が、どこからどこまでの周波数の領域に分散しているかを算出して空間周波数情報を得ている。具体的には、本実施の形態では、フーリエ変換結果における強さ(パワー)が予め設定された基準値を越えているか否かを判定し、越えている周波数の範囲(分散範囲)を空間周波数情報としている。
【0031】
次に「第2定量化工程」では、演算装置13は、前記フーリエ変換結果を周波数毎(予め設定した周波数範囲毎)に逆フーリエ変換し、その逆フーリエ変換結果に基づいて周波数毎のコントラスト値を演算し、その周波数毎のコントラスト値を定量的なコントラスト情報として得る。具体的には、演算装置13は、前記逆フーリエ変換結果である波形の最小値と最大値から輝度の最小値と最大値を算出して、その輝度の最小値と最大値から周波数毎のコントラスト値を演算し、その周波数毎のコントラスト値を定量的なコントラスト情報として得る。尚、本実施の形態では、逆フーリエ変換結果である波形自体を特にディスプレー14に表示させずに波形の最小値と最大値から輝度の最小値と最大値を算出してコントラスト値を演算する。又、本実施の形態のコントラスト値は、Michelsonコントラストを用い、詳しくは最大の輝度値をLmax、最小の輝度値をLminとして、「(Lmax−Lmin)/(Lmax+Lmin)」の式にてコントラスト値を演算する。
【0032】
そして、「合否評価工程」では、空間周波数情報とコントラスト情報とに基づいた合否判定用のしきい値Z(
図5(a)参照)を演算装置13(記憶手段)に予め設定(記憶)しておき、第1及び第2定量化工程で得た空間周波数情報とコントラスト情報が組み合わされた総合情報S1〜S4がしきい値Zを越えるか否かで視界状態(ひいてはワイパ装置)を合否判定して評価する。
【0033】
詳しくは、
図5(a)に示すように、しきい値Zは、コントラスト感度と空間周波数とを組み合わせた情報について設定された値であって、コントラスト感度と空間周波数とを変化させつつ物や文字が判別できるか否かのアンケートを多数の人に行わせ、そのアンケート結果から事前に設定した値である。
【0034】
そして、「合否評価工程」では、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報が組み合わされた総合情報S1〜S4の少なくとも一部が前記しきい値Zを越えるか否かで視界情報を合否判定して評価する。尚、本実施の形態では、雨量数十ミリの雨を想定して「撮像工程」で対応した水滴を掛けつつ、ワイパ23を高速で駆動させ、常に(払拭直前でも)最低限度の視界が保てているかの合否判定を行うことにしている。ここで総合情報S1は払拭直後のものであって
図4(a)と対応した状態のものである。又、総合情報S2は払拭直前のものであって
図4(b)と対応した状態のものである。これら総合情報S1,S2は、一部も前記しきい値Zを越えていないため、演算装置13(合否判定手段)は合格判定とする。尚、総合情報S3は、別の(例えばワイパ23の形状や駆動装置(駆動速度)が異なる)ワイパ装置における払拭直前のものであって、コントラスト値(情報)は前記総合情報S2よりも高いが空間周波数(情報)が前記総合情報S2よりも広範囲に渡り一部がしきい値Zを越えているため、この場合、演算装置13(合否判定手段)は不合格判定とする。又、総合情報S4は、別の(例えばワイパ23の形状や駆動装置(駆動速度)が異なる)ワイパ装置における払拭直前のものであって、全体が前記しきい値Zを越えているため、この場合、演算装置13(合否判定手段)は不合格判定とする。又、
図5(b)は、
図5(a)の空間周波数とコントラスト値(コントラスト感度)の関係を視覚的にイメージするためのイメージ画像である。
【0035】
次に、上記実施の形態(方法及び装置)の特徴的な作用効果を以下に記載する。
(1)「撮像工程」にて、フロントガラス21の背景として異なる明度を含む一定間隔の模様11aを有した背景部材11が配置され、フロントガラス21が一定間隔の模様11aに向かって撮像され撮像画像が得られる。そして、「第1定量化工程」においては、前記撮像画像が2次元フーリエ変換され、そのフーリエ変換結果に基づいて定量的な空間周波数情報が得られる。このとき、フロントガラス21の背景として一定間隔の模様11aが撮像されているため、水滴等がフロントガラス21に付着していない状態ではフーリエ変換結果(パワースペクトル分散図であって空間周波数領域)における特定の周波数の強さ(パワー)が強くなる(集中する)。又、水滴等がフロントガラス21に付着した状態ではフーリエ変換結果における強さ(パワー)が前記特定の周波数以外の周波数の領域に分散することになり、水滴による影響が強く表れることになる。
【0036】
又、「第2定量化工程」では、前記フーリエ変換結果が周波数毎に逆フーリエ変換され、その逆フーリエ変換結果に基づいて周波数毎のコントラスト値が演算され、その周波数毎のコントラスト値が定量的なコントラスト情報として得られる。具体的には、本実施の形態では、前記逆フーリエ変換結果である波形の最小値と最大値から輝度の最小値と最大値が算出されて、その輝度の最小値と最大値から周波数毎のコントラスト値が演算され、その周波数毎のコントラスト値が定量的なコントラスト情報として得られる。このようにして得られたコントラスト情報は、周波数毎のコントラスト値を有するため、例えば、撮像画像の特定の一部分をサンプリングして単一のコントラスト値を演算するものに比べて、より細やかな情報となる。
【0037】
そして、共に定量的な前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいて視界状態を評価するため、高精度で客観的な評価が可能となる。又、特に、空間周波数情報とコントラスト情報が組み合わされた情報(総合情報S1〜S4)は、物や文字、具体的には車線や標識等を認識できるか否かに大きく関与する情報であることが分かっており、本発明では視界状態の意義の大きな評価を高精度で客観的に行うことが可能となる。よって、例えば、ワイパ装置やウォッシャ装置の性能等を高精度且つ客観的に評価することが可能となる。
【0038】
(2)「合否評価工程」では、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいた合否判定用のしきい値Zが予め設定されており、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報が組み合わされた総合情報S1〜S4が前記しきい値Zを越えるか否かで視界状態が合否判定されて評価されるため、高精度で客観的な合否の評価が可能となる。例えば、本実施の形態のように、しきい値Zをワイパ装置の合否に対応したものとすることで、車両試作段階等におけるワイパの駆動速度の設定やワイパの形状の設計等に容易に役立てることができる。
【0039】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、演算装置13による「合否評価工程」で前記空間周波数情報と前記コントラスト情報が組み合わされた総合情報S1〜S4が前記しきい値Zを越えるか否かで視界状態(ひいてはワイパ装置)を合否判定して評価するとしたが、演算装置13による合否判定に限らず、異なる観点で視界状態を評価するようにしてもよい。即ち、前記空間周波数情報と前記コントラスト情報とに基づいて視界状態を評価すれば、特に演算装置13による合否判定を行わせなくてもよく、各タイミングにおいてどの程度の視界状態となるか等の評価を行うようにしてもよい。尚、上記実施の形態のように動画データにおける一定時間毎(例えば0.05秒毎)の静止画像である撮像画像について各情報を得ておけば、各タイミングにおける視界状態をそれぞれ評価することができ、例えば、ウォッシャ装置自体(例えば、ウォッシャ液の着水による視界状態)やウォッシャ装置とワイパ装置を組み合わせたものの性能(例えば、ウォッシャ液噴射後のワイパによる拭き取り状態)を評価することができる。又、このように異なる評価を行う場合等、前記しきい値Zを異なる基準で設定してもよいし、段階的なしきい値を複数設定して合否判定のみでなくレベル判定を行うようにしてもよい。
【0040】
・上記実施の形態では、一定間隔の模様11a(
図2参照)を、一定間隔(本実施の形態では4cm)の半分の幅(本実施の形態では2cm)で明度が明るい部分(白色)と暗い部分(黒色)が並設される縦縞模様としたが、これに限定されず、例えば、横縞模様としてもよい。
【0041】
・上記実施の形態の「第2定量化工程」では、逆フーリエ変換結果である波形の最小値と最大値から輝度の最小値と最大値を算出して、その輝度の最小値と最大値から周波数毎のコントラスト値を演算するとしたが、逆フーリエ変換結果に基づいて周波数毎のコントラスト値を演算できれば他の方法に変更してもよい。例えば、逆フーリエ変換結果である波形の最小値と最大値の差、即ち逆フーリエ変換結果である波形の振幅から直接コントラスト値を演算するようにしてもよい。
【0042】
・上記実施の形態では、Michelsonコントラスト「(Lmax−Lmin)/(Lmax+Lmin)」を用いるとしたが、他の式で計算されるコントラスト値を用いてもよい。例えば、コントラスト値は、「Lmax−Lmin」にて計算されるものとしてもよいし、「Lmax−T(Tは予め設定した値)」にて計算されるものとしてもよい。
【0043】
・上記実施の形態では、撮像手段をビデオカメラ12としたが、これに限定されず、静止画像のみを撮像可能なカメラに変更してもよい。
【符号の説明】
【0044】
11…背景部材、11a…一定間隔の模様、12…ビデオカメラ(撮像手段)、13…演算装置(第1及び第2定量化手段、記憶手段、及び合否判定手段)、21…フロントガラス(被評価ガラス)、S1〜S4…総合情報、Z…しきい値。