(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単純に内側中継部を屈曲させるだけでは内側端子の強度低下を招く虞があるので、剛性の高い端子材料を用いて内側端子を形成すると、内側端子の加工に手間がかかるという問題がある。そこで、封止部材におけるリード線の挿通位置をずらし、内嵌部と内側圧着部の径方向における位置ずれを小さくし、内側中継部の屈曲の度合いを、より小さくすることを検討する。しかし、センサ素子に厚みがあるため、外側端子においても内側端子と同様に構成した場合、外側端子に接続するリード線の挿通位置と、内側端子に接続するリード線の挿通位置とを、軸線に対して等間隔に配置できなくなる。封止部材はガスセンサの後端に加締め保持されるため、位置ずれによって挿通孔内におけるリード線の保持のバランスを保ちにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、内側端子の内嵌部と内側圧着部の径方向における位置合わせを行う上で、内側中継部の屈曲の度合いをより小さくできるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、軸線に沿って延び、先端側が閉じられた有底筒状をな
し、内周面上と外周面上と
に内側電極と外側電極とがそれぞれ形成され
たセンサ素子であり、前記先端側に、検出対象物の検出を行う検出部を有し、前記内側電極と前記外側電極の後端側から前記検出部の出力が取り出されるセンサ素子と、前記内側電極に接続する内側端子と、前記外側電極に接続する外側端子と、前記センサ素子の少なくとも前記後端側の周囲を囲うハウジングと、前記ハウジングの後端を閉塞する弾性部材と、前記弾性部材を貫通し、前記ハウジングの外部と前記内側端子および前記外側端子とをそれぞれ電気的に接続する2つのリード線と、を備えるガスセンサにおいて、前記内側端子は、前記センサ素子の筒内に挿入されて、前記内側電極に少なくとも一部が接触する内嵌部と、前記内嵌部の後端から前記軸線に沿って延びる内側中継部と、前記内側中継部の後端に設けられ、前記リード線を圧着して前記内側中継部の後端に接続する内側圧着部と、を有し、前記外側端子は、前記センサ素子の外側に嵌め込まれ、前記外側電極に少なくとも一部が接触する外嵌部と、前記外嵌部の後端から前記軸線に沿って延びる外側中継部と、前記外側中継部の後端に設けられ、前記リード線を圧着して前記外側中継部の後端に接続する外側圧着部と、を有し、前記内側中継部の後端で、前記リード線の、前記内側圧着部に圧着された部分を向く側の面は、前記軸線に対する径方向の外側に向けられ、前記外側中継部の後端で、前記リード線の、前記外側圧着部に圧着された部分を向く側の面は、前記径方向の内側に向けられ
ており、且つ、前記ハウジングは、前記弾性部材が配置される後端部と、該後端部よりも先端側に設けられ、当該後端部よりも大径な先端部と、前記先端部と前記後端部との間に設けられる段部と、を有しており、前記ガスセンサは、軸線方向に貫通する貫通孔を有し、前記段部に位置決めされつつ前記ハウジングの前記先端部に配置された絶縁性セラミックからなるセパレータを更に備え、前記内側中継部および前記外側中継部は、それぞれ前記セパレータの前記貫通孔に挿通され、互いに非接触の状態で保持されることを特徴とするガスセンサが提供される。
【0008】
第1態様では、内側電極の内側中継部が、内嵌部の後端から軸線に沿って延びるので、内側圧着部に圧着されるリード線がハウジングの外部から引っ張られる外力を受けた場合に内側中継部が引っ張られても、内嵌部にかかる応力の成分が軸線方向に大きく、径方向には小さいか、あるいはないため、内嵌部にも径方向の応力がかかりにくい。よって、内嵌部が内側中継部の引っ張りに伴い、径方向に回動してしまうことを抑制できる。ゆえに、ガスセンサの製造過程で、内嵌部をセンサ素子の筒穴内に挿入する際に、軸線に対し内嵌部が沿っているかについて細心の注意を払う手間を軽減できる。
【0009】
また、第1態様は、内側端子の内側圧着部に圧着されたリード線の部分を向く側の面が、軸線に対する径方向外側を向き、外側端子の外側圧着部に圧着されたリード線の部分を向く側の面が、軸線に対する径方向内側を向く構成である。ゆえに、ガスセンサの製造過程においては、内側端子と外側端子とにそれぞれリード線の圧着を行う場合に、内側端子の上記の面と、外側端子の上記の面とを、同じ側に向けることができる。このため、リード線の圧着作業を、同一方向から行うことができるので、作業効率を高め、ピースタイムを短縮することができる。
【0010】
また、第1態様
の前記内側端子および前記外側端子は、前記外側中継部および前記内側中継部のそれぞれから突出し、前記セパレータに突き当てて、前記内側端子および前記外側端子を前記セパレータ内でそれぞれ位置決
めする位置決部を備えてもよい。第1態様では、前記位置決部が、前記軸線に対し、前記内側中継部から突出する向きと、前記外側中継部から突出する向きとは、互いに逆向きであってもよい。
【0011】
内側端子の位置決部と、外側端子の位置決部とが、軸線に対して互いに逆向きに、それぞれ内側中継部と外側中継部とから突出するので、ガスセンサに内側端子と外側端子とを組み付けた際には、同じ向きに揃って突出する。よって、ガスセンサ内において、内側端子の内側中継部の軸線に対する配置位置と、外側端子の外側中継部の軸線に対する配置位置とを、圧着するリード線の芯線の太さ分、互いに位置ずらしすることができる。このため、センサ素子の厚みに相当する分の位置ずらしを行うことができ、内側中継部の屈曲をごくわずかにすることができる。
【0012】
また、第1態様は、前記内側中継部が、前記内嵌部の後端から前記軸線に沿って真っ直ぐ延びる構成であることが好ましい。この場合、内側圧着部に圧着されるリード線がハウジングの外部から引っ張られる外力を受けた場合に内側中継部が引っ張られても、内嵌部にかかる応力の成分が径方向にはかからない。よって、内嵌部が内側中継部の引っ張りに伴い、径方向に回動してしまうことをより抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化したガスセンサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、
図1,
図2を参照し、本実施の形態のガスセンサ1の構造について説明する。以下では、ガスセンサ1の軸線Oを基準に、排気管内に挿入されるセンサ素子6の先端側(閉じている側であり図中下側)をガスセンサ1の先端側とし、これと反対側(図中上側)を後端側として説明する。
【0015】
図1に示すガスセンサ1は、自動二輪車の排気管(図示外)に取り付けられ、排気管内を流通する排気ガス中の酸素の有無を検出する酸素センサである。ガスセンサ1は、細長で先が閉じられた筒状のセンサ素子6を、筒状の主体金具5で取り囲んで保持した構造を有する。センサ素子6は、ジルコニアを主成分とし、軸線Oに沿って延びる有底筒状に形成した固体電解質体61の外周面上および内周面上に、それぞれ外側電極62および内側電極63を設けたものである。固体電解質体61は、固体電解質体61を挟む一対の電極、すなわち外側電極62と内側電極63とがそれぞれ晒される雰囲気間の酸素濃度差に応じ、両電極間に起電力を発生するものである。本実施の形態では、外側電極62が排気ガスに晒され、内側電極63が大気に晒される。
【0016】
固体電解質体61は、軸線Oに沿う方向において略中央の位置に、径方向外側へ向けて突出する鍔状のフランジ部65を有する。フランジ部65よりも先端側の先端部64は先端へ向けて徐々に縮径し、先端部分が球面状に閉じている。先端部64における固体電解質体61の外周側の表面には、PtまたはPt合金からなる多孔質状の外側電極62が、そのほぼ全面を覆って形成されている。固体電解質体61の内周側の表面にも同様に、PtまたはPt合金からなる多孔質状の内側電極63が、そのほぼ全面を覆って形成されている。すなわち、センサ素子6は先端部64において外側電極62と内側電極63とが固体電解質体61を挟んで対向しており、この部分(つまり先端部64)が酸素の有無を検出可能な部位として機能する。また、外側電極62は、排気ガスによる被毒から保護するための多孔質状の保護層(図示外)に覆われている。
【0017】
ところで、センサ素子6は、先端部64のうち、主体金具5(後述)の先端より先側に突出する部位が、主に、プロテクタ4(後述)を介して排気ガスに晒される。そして、当該部位が、排気ガス中の酸素の有無を検出する部位として、主に、機能する。そこで、本実施の形態では、この部位を、便宜上、排気ガス中の酸素の有無を検出する検出部68とする。
【0018】
センサ素子6は、ガスセンサ1を排気管(図示外)に取り付けるための金具である筒状の主体金具5に保持される。主体金具5は、筒孔55内で軸線Oに沿う方向の略中央付近に、段部59を有する。段部59には、パッキン13を介してセンサ素子6(固体電解質体61)のフランジ部65が係止されている。さらに筒孔55内に、滑石の粉末からなるシール材14が、フランジ部65の後端側から装填されている。そして、シール材14を後端側から押さえるように、アルミナ製のスリーブ15が、筒孔55内に挿入されている。主体金具5の後端に設けられた加締部57が、金属製のリング16を介し、スリーブ15を先端側に向けて押圧するように加締められている。このように、主体金具5の段部59と加締部57との間に、パッキン13、フランジ部65、シール材14、スリーブ15およびリング16が挟まれて、センサ素子6が主体金具5に一体に保持されている。
【0019】
主体金具5は、外周に、ガスセンサ1を排気管に取り付けるためのねじ山が形成された取付部52を有する。取付部52の先端側には、後述するプロテクタ4を組み付ける先端組付部56が形成されている。取付部52の後端側には、排気管への取り付けの際に使用される工具が係合される工具係合部53が設けられている。工具係合部53と取付部52との間には、排気管の取付孔(図示外)を介したガス抜けを防止するための環状のガスケット11が嵌挿されている。工具係合部53の後端側には、後述する外筒3を組み付ける後端組付部58が形成されている。後端組付部58の後端側に、上記の加締部57が設けられている。
【0020】
センサ素子6は、上記したように、先端部64の一部(上記の検出部68)が、主体金具5の先端(先端組付部56)から先方に突出している。先端組付部56には、センサ素子6の先端部64を保護する筒状のプロテクタ4の基端部45が、パッキン54を挟んで加締められて組み付けられている。プロテクタ4は、排気管内に突き出されるセンサ素子6の先端部64を、排気ガス中に含まれる水滴や異物等の衝突から保護する。プロテクタ4の外周面には、内部に排気ガスを導入し、センサ素子6の検出部68へ導く複数の導入孔42が開口されている。
【0021】
次に、センサ素子6の後端部66は、主体金具5の後端(加締部57)よりも後方に突出している。後端部66には、外側端子80と内側端子70とが嵌められ、それぞれ、外側電極62と内側電極63とに電気的に接続されている。外側端子80と内側端子70は、それぞれ、センサ素子6に生ずる起電力を出力として外部に取り出す2本のリード線18に接続されている。
【0022】
図2に示すように、外側端子80は、1枚の板材を打ち抜き、折り曲げ加工して形成した端子である。なお、便宜上、一方の板面を主面84、他方の板面を裏面85とする。外側端子80は、センサ素子6の外側電極62と電気的に接続する外嵌部81を備える。また、外嵌部81の軸線Rに沿って後端側に、外嵌部81に接続する外側中継部82と、外側中継部82に接続する外側圧着部83とを備える。
【0023】
外嵌部81は、主面84側を内側にして軸線Rを取り囲むように板材を折り曲げ、後端部66の外径よりやや小さな内径の筒状に形成した部位である。外嵌部81は、軸線Rと直交する断面がC字状となるように、軸線Rに沿う切れ目を有する。外嵌部81は、後端部66の外周に外嵌めされる場合に、切れ目の幅を広げることにより内径が拡大されて嵌められる。そして、弾性力によって、主面84が外側電極62に当接され、外嵌部81と外側電極62との電気的な接続が維持される。
【0024】
外側圧着部83は、軸線Rと直交する方向の両側が外向きにクシ歯状に形成された板材を、主面84側を内側にして折り曲げ、リード線18の芯線19を圧着できるように形成された部位である。外側圧着部83は、主面84側に配置される芯線19を包むようにクシ歯の部分を内向きに加締めることで、芯線19を圧着する。
図1に示すように、外側端子80の主面84(
図2参照)は、軸線O側、すなわち径方向内側を向いて、ガスセンサ1に組み付けられる。
【0025】
図2に示す、外側中継部82は、軸線Rに沿って延び、外嵌部81と外側圧着部83とを接続する部位である。外側中継部82は、軸線Rと直交する方向の両側に、外向き且つ幅広に突出する突部86を有する。また、外側中継部82は、略中央に、軸線Rに沿って平行に延びる2本の切り込みを外嵌部81側において接続した切欠きを、外嵌部81側を自由端として裏面85側に折り込んだ位置決部87を有する。外側中継部82は、外側圧着部83を外嵌部81と外側中継部82との接続部位よりも軸線Rに近づけるように、突部86よりも外嵌部81側の部位が主面84側に折り曲げられている。
【0026】
内側端子70も同様に、1枚の板材を打ち抜き、折り曲げ加工して形成した端子である。なお、便宜上、一方の板面を主面74、他方の板面を裏面75とする。内側端子70は、センサ素子6の内側電極63と電気的に接続する内嵌部71を備える。また、内嵌部71の軸線Qに沿って後端側に、内嵌部71に接続する内側中継部72と、内側中継部72に接続する内側圧着部73とを備える。
【0027】
内嵌部71は、外嵌部81とは異なり、裏面75側を内側にして軸線Qを取り囲むように板材を折り曲げ、後端部66の内径よりやや大きな外径の筒状に形成した部位である。内嵌部71も、軸線Qと直交する断面がC字状となるように、軸線Qに沿う切れ目を有する。内嵌部71は、センサ素子6の後端部66の筒穴69の内周に内嵌めされる場合に、切れ目の幅を縮めることにより外径が縮小されて挿入される。そして、弾性力によって、外周側に向けられた主面74が内側電極63に当接され、内嵌部71と内側電極63との電気的な接続が維持される。また、内嵌部71は、後端に、後述するセパレータ90の先端面に当接する当接片78が設けられている。
【0028】
内側圧着部73は、外側圧着部83と同様に、クシ歯状の板材を、主面74側を内側にして折り曲げ、リード線18の芯線19を圧着できるように形成された部位である。内側圧着部73は、主面74側に配置される芯線19を包むようにクシ歯の部分を内向きに加締めることで、芯線19を圧着する。
図1に示すように、内側端子70の主面74(
図2参照)は、軸線Oとは反対側、すなわち径方向外側を向いて、ガスセンサ1に組み付けられる。
【0029】
図2に示す、内側中継部72は、軸線Qに沿って延び、内嵌部71と内側圧着部73とを接続する部位である。内側中継部72も同様に、軸線Qと直交する外向きに幅広に突出する突部76と、切欠きの自由端側を裏面75側に折り込んだ位置決部77を有する。内側中継部72は、内嵌部71の内側電極63に接触する部分の外壁の位置から、軸線Q方向後端側へ向けて真っ直ぐ、あるいは若干軸線Qから遠ざける位置にずらして、延びている。言い換えると、
図1に示すように、内嵌部71の当接片78を除く最大外径を有する部位の後端から、内嵌部71の軸線Q(
図2参照)に沿って後端側へ向け、ほぼ真っ直ぐに、あるいは、わずかに屈曲して、内側中継部72が延びている。本実施の形態では、内側中継部72は、内嵌部71の外壁から軸線Qの径方向外向きに若干ずれた状態で、軸線Q方向の後端側へ延びている。
【0030】
次に、
図1に示すように、センサ素子6の後方には、絶縁性セラミックスからなるセパレータ90が配置されている。
図2に示すように、セパレータ90は、セパレータ90の軸線Pと直交する断面が円形で、軸線P方向の後端側の外径が後述する外筒3(
図1参照)の内径に略等しく、先端側の外径が後端側よりも小径に形成された、二段の円柱状をなす。セパレータ90は、軸線O方向に貫通する貫通孔91と貫通孔96とを備える。貫通孔91,96内にはそれぞれ内側端子70と外側端子80とが挿通され、互いに接触しないようにセパレータ90に位置決めされる。
【0031】
貫通孔91は、軸線Pと直交する断面が略矩形に貫通する孔であり、軸線Pに近い側の壁面には、軸線P側に凹み、且つ軸線Pに沿って延びる細幅の溝92が形成されている。また、溝92が形成された壁面に接続する両側の側面に、軸線Pと直交する方向に凹み、且つ軸線Pに沿って延びる細幅の溝93が、それぞれ形成されている。溝93は、それぞれ、溝92が形成された壁面を溝の一方の側壁として形成されている。貫通孔91に内側端子70が挿通された場合に、2つの溝93内には、内側中継部72の2つの突部76がそれぞれ配置される。そして、溝92内には、位置決部77が配置される。位置決部77は、付勢力で、溝92の底に自由端を押しつけた状態に維持する。これにより、突部76が溝93の側壁に押しつけられ、内側中継部72が、セパレータ90の貫通孔91内で位置決めされる。
【0032】
貫通孔96も貫通孔91と同形状でセパレータ90を軸線P方向に貫通する孔であり、軸線Pに遠い側の壁面に、軸線Pから離れる側に凹み、且つ軸線Pに沿って延びる細幅の溝97が形成されている。そして同様に、溝97が形成された壁面に接続する両側の側面に、軸線Pと直交する方向に凹み、且つ軸線Pに沿って延びる細幅の溝98が、それぞれ形成されている。貫通孔96に外側端子80が挿通された場合に、2つの溝98内には、外側中継部82の2つの突部86がそれぞれ配置される。そして、溝97内には、位置決部87が配置される。位置決部87は、付勢力で、溝97の底に自由端を押しつけた状態に維持する。これにより、突部86が溝98の側壁に押しつけられ、外側中継部82が、セパレータ90の貫通孔91内で位置決めされる。
【0033】
図1に示すように、外側中継部82の突部86が配置される貫通孔96の溝98は、ガスセンサ1の軸線Oに対する径方向において、センサ素子6の後端部66における外周面の位置とほぼ同じ位置に形成されている。また、内側中継部72の突部76が配置される貫通孔91の溝93は、径方向において、センサ素子6の後端部66における筒穴69の内周面の位置に近い位置に形成されている。
【0034】
次に、センサ素子6の後端部66とセパレータ90の周囲を囲うように、筒状の外筒3が配設されている。外筒3は、SUS304等のステンレス鋼を軸線Oに沿って延びる筒状に形成し、略中央より先端側の先端部31(
図1において下側)を、後端部32よりも大径に形成したものである。先端部31と後端部32の間には段部33が設けられている。先端部31の開口は、主体金具5の後端組付部58の外周に外嵌めした状態で外周側から加締められ、さらに外周を一周してレーザ溶接が施されており、外筒3と主体金具5とが一体に固定されている。上記のセパレータ90は外筒3内に収容され、段部33と、セパレータ90の先端側に配置され外筒3の先端部31内で加締め保持される保持金具38との間に後端側の大径の部分が挟まれて、外筒3内で位置決め保持される。
【0035】
外筒3の後端部32の開口にはフッ素系ゴムからなる円柱状のグロメット8が配置されている。グロメット8は後端に、鍔状に拡径する部位を有し、外筒3の後端部32の開口端に当接させて、自身を位置決めする。グロメット8には軸線Oに沿う方向に延びる2つの貫通孔9が設けられている。2つの貫通孔9には、内側端子70と外側端子80とのそれぞれに接続された2本のリード線18がそれぞれ挿通され、グロメット8を介してガスセンサ1の外部に引き出されている。
【0036】
外筒3の後端部32の側面には周方向に4つの連通孔34(
図1ではそのうちの3つを図示)が等間隔に形成されており、セパレータ90とグロメット8との間の中空状の部分と外部とを連通する。外筒3の後端部32の径方向外周には、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂を筒状に形成した撥水性のフィルタ35が被せられており、連通孔34ごと後端部32の外周を覆う。さらに、例えばSUS304等のステンレス鋼を筒状に形成した保護外筒36が、フィルタ35ごと外筒3の後端部32の径方向外周を覆って保護する。
【0037】
保護外筒36の側面には、周方向に4つの導入孔37(
図1ではそのうちの2つを図示)が等間隔に形成されており、フィルタ35および連通孔34を介し、外筒3の内部と外部との間で大気を連通する。保護外筒36は、後端側の外周が外筒3ごと加締められており、外筒3の後端部32の開口に配置されたグロメット8がその加締めによって外筒3に保持されている。
【0038】
このような構造を有する本実施の形態のガスセンサ1では、上記したように、内側端子70の内側中継部72が、内嵌部71の当接片78を除く最大外径を有する部位の後端から、内嵌部71の軸線Qに沿って後端側へ向け、わずかに屈曲して、内側中継部72が延びている。当接片78は、セパレータ90の先端面に当接しており、すなわち内嵌部71の後端が、ほぼ一周にわたって、当接片78を介してセパレータ90の先端面に接した状態となっている。
【0039】
この状態で、例えば、リード線18がガスセンサ1の外部側へ引っ張られ、これに伴い、内側端子70の内側圧着部73および内側中継部72が軸線O方向の後端側へ引かれた場合を考える。
図3に示すように、内側中継部72が軸線O方向の後端側へ引かれることによって、内嵌部71も、軸線O方向の後端側へ引かれるが、内嵌部71の後端は、当接片78を介してセパレータ90の先端面に当接している。ゆえに、内嵌部71は、セパレータ90の先端面よりも軸線O方向の後端側へ移動しないため、内側中継部72と内嵌部71との接続部分が、内側中継部72の引っ張りに伴う応力(図中矢印Aで示す)を受ける。
【0040】
ここで、内嵌部71の最大外径部位(図中一点鎖線Xで示す)から後端側へ延びる内側中継部72は、最大外径部位Xよりも径方向にわずかにオフセット(図中矢印OFで示す)した位置に延びるように、内側中継部72をわずかに屈曲させている。このため、内側中継部72の後端側への引っ張りにおいて、内側中継部72と内嵌部71との接続部分(図中点Tで示す)に加わる応力Aの方向は、セパレータ90の先端面に直交する方向以外の方向成分を有する。具体的に、応力Aは、引っ張り方向である軸線O方向への成分(図中矢印Bで示す)だけでなく、内側中継部72を伸ばす方向にオフセットOFがある分、径方向への成分(図中矢印Cで示す)も有する。
【0041】
しかし、上記のように、内側中継部72のオフセットOFによる屈曲はごくわずかであるため、引っ張りによる軸線O方向への成分Bに対し、径方向への成分Cは、ごく小さい。よって、内嵌部71が応力Aの成分Cを受けて点Tを支点に回動するのに十分な応力が、内嵌部71にはかからない。ゆえに、本実施の形態のように、内嵌部71の最大外径部位Xから後端側へ向け軸線O方向にわずかにオフセットOFがあり、内側中継部72がわずかに屈曲して延びる構造であれば、内側中継部72が後端側へ引っ張られても、内嵌部71が点Tを支点に回動することはない。これにより、ガスセンサ1の製造過程においては、内嵌部71をセンサ素子6の筒穴69内に挿入する際に、軸線Oに対する内嵌部71の軸線Qが沿っているかについて細心の注意を払う手間が軽減される。そして、内嵌部71の最大外径部位Xに対する内側中継部72の延びる方向のオフセットOFが小さいほど、点Tにかかる応力Aの成分Cは小さくなる。ゆえに、オフセットOFがない、すなわち、内嵌部71の最大外径部位Xから真っ直ぐ軸線O方向の後端側へ向けて内側中継部72が延びる構造であれば、なおよい。
【0042】
このように、内嵌部71の最大外径部位Xからの内側中継部72の延びる方向のオフセットOFを小さくする上で、本実施の形態では、
図1に示すように、グロメット8を挿通するリード線18の貫通孔9の位置が、軸線Oに対して等間隔である状態を維持できるようにしている。具体的には、
図2に示すように、内側端子70の内側圧着部73のクシ歯部分を折り曲げる向きを、主面74を内側にして折り曲げる一方で、内嵌部71を形成する場合には、裏面75を内側にして、軸線Qを取り囲むように折り曲げている。こうすることにより、内側圧着部73が、軸線Q側に裏面75側を向けた状態で主面74側にリード線18の芯線19を圧着し、芯線19の太さ分、内側圧着部73の主面74を径方向内側の位置(より軸線Qに近い位置)に配置した。これにより、芯線19の太さ分、内嵌部71の最大外径部位Xに対する内側中継部72の延びる方向のオフセットOFを小さくすることができ、センサ素子6の厚みに相当する分の位置ずらしを行うことができ、内側中継部72の屈曲をごくわずかにすることができたのである。
【0043】
一方、外側端子80の外側圧着部83は、同じく主面84を内側にしてクシ歯部分を折り曲げているが、外嵌部81も、主面84を内側に、軸線Rを取り囲むように折り曲げて形成している。このため、ガスセンサ1の製造過程において、内側端子70と外側端子80とにそれぞれリード線18の圧着を行う場合に、ガスセンサ1の軸線Oに対し、内側圧着部73が裏面75を向け、主面74は径方向外側を向く一方、外側圧着部83は軸線Oに主面84を向ける(すなわち径方向内側を向く)ように配置した上で、作業を行うこととなる。すると、内側端子70の主面74と、外側端子80の主面84とは、同一方向を向くことになり、リード線18の圧着作業を、同一方向から、内側圧着部73と外側圧着部83との両方に行うことができるので、作業効率を高め、ピースタイムを短縮することができる。
【0044】
また、外側端子80は、外側圧着部83においてリード線18の芯線19を圧着する上で、芯線19を主面84側に配置し、さらに、センサ素子6の後端部66に外嵌めする上で、外側電極62に向けて主面84を当接させる構成である。そして、内側端子70も同様に、内側圧着部73においてリード線18の芯線19を圧着する上で、芯線19を主面74側に配置し、さらに、センサ素子6の後端部66の筒穴69内に内嵌めする上で、内側電極63に向けて主面74を当接させる構成である。すなわち、外側端子80および内側端子70は、芯線19、外側電極62および内側電極63に対し、それぞれ主面84,74を向ける構成である。したがって、内側端子70および外側端子80を作製する過程において、板材の打ち抜きを行った後の処理や、打ち抜き方について、芯線19、外側電極62および内側電極63に向ける側の面に施すべき処理(例えばバリ処理など)を、主面84,74側に対して行い、裏面85,75側に対しては省略してもよく、手間を軽減することができる。
【0045】
なお、本発明は上記各実施の形態に限られず、各種の変形が可能である。例えば、上記したように、内嵌部71の最大外径部位Xから真っ直ぐ軸線O方向の後端側へ向けて内側中継部72が延びる構造(オフセットOFのない構造)であってもよい。
【0046】
また、外側端子80および外側端子に接続されたリード線18は、なくてもよい。この場合、センサ素子6の外側電極62を、例えばパッキン13を介して主体金具5と電気的に接続し、排気管を介して主体金具5をグランドに接続すればよい。そして、グランドと内側電極63との間の電位差をセンサ素子6の出力として得る構成とすればよい。
【0047】
また、
図4に示す、セパレータ190のように、軸線Pと直交する貫通孔191の断面の形状が、軸線Pに近い側も遠い側も同じ対称な形状となるように形成してもよい。すなわち、貫通孔191を、軸線Pと直交する断面が略矩形に貫通する孔として形成し、軸線Pに近い側の壁面に、軸線P側に凹み、且つ軸線Pに沿って延びる細幅の溝92を形成するとともに、軸線Pに遠い側の壁面にも、軸線Pと反対側に凹む同一形状の溝92を形成する。さらに、溝192が形成された壁面に接続する両側の側面に、軸線Pと直交する方向に凹み、且つ軸線Pに沿って延びる細幅の溝193を、2つの溝192それぞれに対して一組ずつ形成する。この貫通孔191を、軸線Pを挟んで反対側にも同一形状に形成する。このような貫通孔191を備えるセパレータ190を用いることにより、2つの貫通孔191のどちらにでも内側端子70を挿通させ、あるいは外側端子80を挿通させることができるので、ガスセンサ1の製造過程においてセパレータ190の向きを考慮することなく組み立てを行うことができ、作業効率を高め、ピースタイムを短縮することができる。