(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770697
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ケイ酸リチウムガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
C03C 10/04 20060101AFI20150806BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20150806BHJP
A61K 6/027 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
C03C10/04
C03B32/02
A61K6/027
【請求項の数】30
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-200384(P2012-200384)
(22)【出願日】2012年9月12日
(62)【分割の表示】特願2010-1595(P2010-1595)の分割
【原出願日】2006年2月6日
(65)【公開番号】特開2012-250911(P2012-250911A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2012年9月12日
(31)【優先権主張番号】05002588.1
(32)【優先日】2005年2月8日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】102005028637.2
(32)【優先日】2005年6月20日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】エルケ アペル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフラム ヘラント
(72)【発明者】
【氏名】マルセル シュバイガー
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン バン テン
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド ビュルケ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ラインベルガー
【審査官】
相田 悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−101409(JP,A)
【文献】
特許第4468904(JP,B2)
【文献】
特許第5123328(JP,B2)
【文献】
特開平11−314938(JP,A)
【文献】
特開2001−288027(JP,A)
【文献】
特開平07−187710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00〜14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックまたはガラスの形態のケイ酸リチウム材料であって、以下の成分:
成分 重量%
SiO2 64.0〜75.0
Li2O 13.0〜17.0
K2O 2.0〜5.0
Al2O3 0.5〜5.0
核生成剤 2.0〜5.0
Me(II)O 0〜3.0
ZrO2 0.1〜4.0
を含有し、
ここで、Me(II)Oが、CaO、BaO、MgOおよびSrOのうちの少なくとも1つから選択され、
Al2O3:K2Oのモル比が、1:0.5〜1:2.0の範囲であり、
かつ0.1重量%未満のZnOを含有する、ケイ酸リチウム材料。
【請求項2】
0〜2.0重量%のMe(II)Oを含有する、請求項1に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項3】
0〜1.5重量%のMe(II)Oを含有する、請求項2に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項4】
Me(II)Oが、CaOおよびMgOのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項5】
0.1〜1.0重量%のMgOを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項6】
ZnOを本質的に含有しない、請求項1〜5のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項7】
SiO2:Li2Oのモル比が、少なくとも2.2:1である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項8】
SiO2:Li2Oのモル比が、少なくとも2.3:1である、請求項7に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項9】
SiO2:Li2Oのモル比が、2.3:1〜2.5:1の範囲である、請求項8に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項10】
Al2O3:K2Oのモル比が、1:1〜1:2.0の範囲である、請求項1に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項11】
2.5〜5.0重量%のAl2O3を含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項12】
64.0〜73.0重量%のSiO2を含有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項13】
70.0〜73.0重量%のSiO2を含有する、請求項12に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項14】
1.0〜4.0重量%のZrO2を含有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項15】
1.5〜3.0重量%のZrO2を含有する、請求項14に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項16】
以下の成分の少なくとも1つを以下の量で含有する、請求項1〜
15のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料
であって:
【化2】
ここで、該着色剤および蛍光金属酸化物の金属が、Ta、Tb、Y、La、Er、Pr、Ce、Ti、V、FeおよびMnからなる群から選択される、
ケイ酸リチウム材料。
【請求項17】
0.5〜3.5重量%の着色剤および蛍光金属酸化物を含有する、請求項16に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項18】
以下の追加成分の少なくとも1つをさらに含有する、請求項1〜
17のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料:
【化7】
。
【請求項19】
前記核生成剤が、P2O5ならびに元素Pt、Ag、CuおよびWの化合物のうちの少なくとも1つである、請求項1〜18のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項20】
ブランクまたは歯科用修復物の形態である、請求項1〜19のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項21】
前記歯科用修復物が、インレー、アンレー、ブリッジ、橋脚歯、前装、ベニア、咬合小面、歯冠、部分歯冠、フレームワーク、またはコーピングである、請求項20に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項22】
ガラスセラミックの形態である、請求項1〜21のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料。
【請求項23】
主な結晶相として二ケイ酸リチウムを含有する、請求項22に記載のガラスセラミックの形態であるケイ酸リチウム材料。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載のケイ酸リチウム材料の調製のためのプロセスであって、以下:
(a)該ガラスセラミックの成分を含有する出発ガラスを生成する工程、
(b)必要に応じて、該出発ガラスを第一の温度で第一の加熱処理に供し、ガラス生成物を生じる工程、
(c)必要に応じて、該ガラス生成物を、該第一の温度より高い第二の温度で第二の加熱処理に供し、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含有する前記ケイ酸リチウムガラスセラミックを得る工程、および
(d)該工程(c)のケイ酸リチウムガラスセラミックを830〜880℃の第三の温度で10〜60分の間、第三の加熱処理にさらに供し、二ケイ酸リチウムガラスセラミックを得る工程、を包含し、該二ケイ酸リチウムガラスセラミックが歯科用修復物の形態である、プロセス。
【請求項25】
前記工程(b)における第一の加熱処理が、前記出発ガラスを、10分〜3時間の間、500〜600℃の温度に加熱する工程を包含する、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記工程(c)における第二の加熱処理が、前記ガラス生成物を、680〜720℃の第二の温度に加熱する工程を包含する、請求項24または25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記第二の温度が、690〜710℃である、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記第二の温度が、700℃である、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記工程(a)における出発ガラス、前記工程(b)におけるガラス生成物、または前記工程(c)におけるメタケイ酸リチウムガラスセラミックが、機械加工によってかまたはホットプレスによって所望の幾何学的形状へと成型される、請求項24〜28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記機械加工がグラインディング、トリミング、またはミリングによって行われる、請求項29に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、機械加工によって容易に成形可能であり、かつその後高強度の成形製品に変換可能な、ケイ酸リチウムガラスセラミック材料に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ制御されたミリング機によって歯科用修復用製品(例えば、歯冠、インレーおよびブリッジ)へと加工可能な材料に対する要求が高まってきている。このようなCAD/CAM法は、所望の歯科用修復物を迅速に患者に提供することを可能にすることから、非常に魅力的である。そして、歯科医にとって、いわゆる、患者の椅子のわきでの処置、が可能になる。
【0003】
しかし、コンピューターエイデッドデザイン/コンピュータ支援機械加工(CAD/CAM)法を介した加工に適切な材料は、非常に特殊な特性プロフィールを満足しなければならない。
【0004】
まず第一に、それらの材料は、最終的に調製された修復物において、天然の歯の外見を模倣した魅力的な光学的特性(半透明性および遮光性など)を有する必要がある。それらの材料はさらに、高い強度および化学的耐性を示して天然の歯の材料の機能を代行し得、かつ、本質的に攻撃性(例えば、酸性)でさえあり得る口腔内の流体に永続的に接触しながら、その特性を十分な期間維持し得る必要がある。
【0005】
第二に、そして非常に重要なことには、それらの材料を、器具が過度に磨耗することなく、短時間で、所望の形状に簡便な様式で機械加工することが可能であるべきである。この特性には、材料の強度が比較的低いことが必要であり、したがって、この特性は、上記の最終修復物に関する所望の特性と対照をなす。
【0006】
材料が加工される段階における低強度特性と最終修復物の高強度とを組み合わせることの困難さは、CAD/CAM加工のための公知の材料に反映されている。これらの材料は、特に機械加工性の容易さに関して、十分なものではない。
【0007】
特許文献1は、最初に、ホットプレスプロセスによって所望の幾何学的形状に成形される(このプロセスにおいては、溶融材料は、粘性のある状態でプレスされる)ように意図される、二ケイ酸リチウムガラスセラミックを開示している。これらの材料はまた、コンピュータ支援ミリングプロセスによって成形されることも可能である。しかし、これらの材料の機械加工が、非常に大きな器具の磨耗を生じ、かつ非常に長い加工時間を要することが示されている。これらの欠点は、二ケイ酸リチウム結晶相によってこの材料に最初に与えられた高強度と靱性とによって生じる。さらに、この機械加工された修復物が脆弱なエッジ強度しか示さないことが示されている。用語「エッジ強度」とは、修復物の、0.数mmの範囲のわずかな厚みしか有さない部分の強度をいう。
【0008】
機械加工の容易さを最終修復物の高強度とともに達成するためのさらなるアプローチが、またなされている。特許文献2および特許文献3は、焼結されない状態(「未焼結状態」とも称される)で機械加工されたAl
2O
3またはZrO
2を基にしたセラミック材料を記載している。その後、この未焼結体は、焼結されて、その強度を増加させる。しかし、このセラミック材料は、この最終焼結工程の間に、体積で50%まで(または直線的収縮として30%まで)の大幅な収縮を被る。このことは、この修復物を所望の寸法に正確に調製することを困難にする。この大きな収縮は、複雑な修復物(例えば、多架橋のブリッジ)を製造する場合、特に問題を提示する。
【0009】
非特許文献1および特許文献4(S.D.Stookey,「Photosensitively Opacifiable Glass」(1954))より、ケイ酸リチウムガラスセラミックにおいては準安定相が最初に形成され得ることが、また公知である。例えば、感光性ガラスセラミック(Fotoform(登録商標)、FotoCeram(登録商標))において、Ag粒子は、UV光を用いて形成される。これらのAg粒子は、メタケイ酸リチウム相中で結晶化剤として作用する。光に曝露される領域は、その後の工程において、希HFによって洗浄される。この手順が可能であるのは、HF中でのメタケイ酸リチウム相の溶解度が親ガラスの溶解度よりもずっと高いからである。上記溶解プロセス後に残ったガラス部分(Fotoform(登録商標))は、さらなる加熱処理によって、二ケイ酸リチウムガラスセラミック(FotoCeram(登録商標))へと変換され得る。
【0010】
Boromの研究、例えば、非特許文献2および特許文献5(M.−P.Borom,A.M.Turkalo,R.H.Doremus,「Verfahren zum Herstellen von Glaskeramiken」(1974))はまた、二ケイ酸リチウムガラスセラミックが、最初に、準安定メタケイ酸リチウム相として種々の量で結晶化し得ることを示す。しかし、最初から二ケイ酸塩相の形態で結晶化し、メタケイ酸塩相が全く存在しない組成物もまた存在する。この効果の系統的研究は公知となっていない。またBoromの研究から、主な相としてメタケイ酸リチウムを含有するガラスセラミックが二ケイ酸リチウム相のみを含有するガラスセラミックの強度と比較して低い強度を有することが、公知である。
【0011】
先行技術のケイ酸リチウムガラスセラミックにおいては、特に高半透明性歯科用修復物が製造されるべき場合に、ZnOの存在が望ましくないことが、さらに見出されている。このような環境下では、ZnOによって生じる強い乳光効果が明らかであり、これは、天然歯材料を模倣するための修復物にとって受容できない光学特性を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許出願公開第19750794号明細書
【特許文献2】欧州特許第774993号明細書
【特許文献3】欧州特許第817597号明細書
【特許文献4】米国特許第2684911号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第2451121号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】S.D.Stookey,「Chemical Machining of Photosensitive Glass」,Ind.Eng.Chem.,45,115−118(1993)
【非特許文献2】M.−P.Borom,A.M.Turkalo,R.H.Doremus,「Strength and Microstructure in Litium Disilicate Glass−Ceramics」,J.Am.Ceram.Soc.,58,No.9−10,385−391(1975)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、これらの欠点を失くすこと、そして特に、コンピュータ支援ミリングプロセスおよびコンピュータ支援トリミングプロセスによって容易に成形され得、その後、高い化学的耐性と優れた光学特性とを示す高強度の歯科用製品へと変換され得、そして上記最終変換の間に示す収縮がかなり小さく、そしてこれらの特性全てが、成分としてZnOを必要とせずに達成される、材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、請求項1〜17のケイ酸リチウムガラスセラミックによって達成される。
【0016】
驚くべきことに、非常に特別な組成の出発ガラスおよび特別なプロセスを使用することによって、特に、主な結晶相として、二ケイ酸リチウム(Li
2Si
2O
5)ではなく、準安定メタケイ酸リチウム(Li
2SiO
3)を有するガラスセラミックを提供することが可能であることが、示された。このメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、低強度および靭性を有し、ゆえに、たとえ複雑な歯科用修復物の形状へでも容易に機械加工され得るが、このような機械加工の後には、加熱処理によって、二ケイ酸リチウムガラスセラミック製品へと変換され得る。この二ケイ酸リチウムガラスセラミック製品は、際立った機械特性、優れた光学特性(特に、非常に低い乳光)を有し、そして非常に良好な化学的耐性を有し、それによって非常に限られた収縮しか被らない。
【0017】
本発明は、以下を提供する。
(項目1)
ケイ酸リチウムガラスセラミックであって、以下の成分:
【0018】
【化5】
を含有し、かつ0.1重量%未満のZnOを含有し、
ここで、Me(II)Oが、CaO、BaO、MgOおよびSrOのうちの少なくとも1つから選択される、
ケイ酸リチウムガラスセラミック。
(項目2)
ZnOを本質的に含有しない、項目1に記載のガラスセラミック。
(項目3)
主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含有する、項目1または2に記載のガラスセラミック。
(項目4)
0〜2.0重量%のMe(II)O、好ましくは0〜1.5重量%のMe(II)Oを含有する、項目1〜3のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目5)
Me(II)Oが、CaOおよびMgOのうちの少なくとも1つから選択される、項目1〜4のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目6)
0.1〜1.0重量%のMgOを含有する、項目1〜5のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目7)
SiO
2:Li
2Oのモル比が、少なくとも2.2:1であり、好ましくは少なくとも2.3:1であり、最も好ましくは、2.3:1〜2.5:1の範囲である、項目1〜6のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目8)
Al
2O
3:K
2Oのモル比が、1:0.5〜1:2.0の範囲であり、好ましくは1:1〜1:2.0である、項目1〜7のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目9)
2.5〜5.0重量%のAl
2O
3を含有する、項目1〜8のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目10)
70.0〜73.0重量%のSiO
2を含有する、項目1〜9のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目11)
0〜4.0重量%のZrO
2、好ましくは0.1〜4.0重量%のZrO
2、より好ましくは1.0〜4.0重量%のZrO
2、最も好ましくは1.5〜3.0重量%のZrO
2を含有する、項目1〜10のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目12)
以下の成分の少なくとも1つを以下の量で含有する、項目1〜11のいずれか一項に記載のガラスセラミック:
【0019】
【化6】
。
(項目13)
以下の追加成分の少なくとも1つをさらに含有する、項目1〜12のいずれか一項に記載のガラスセラミック:
【0020】
【化7】
。
(項目14)
前記核生成剤が、P
2O
5ならびに元素Pt、Ag、CuおよびWの化合物のうちの少なくとも1つである、項目1〜13のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目15)
前記メタケイ酸リチウムが、前記ケイ酸リチウムガラスセラミックの50体積%より多く〜80体積%までを形成する、項目2〜14のいずれか一項に記載のガラスセラミック。(項目16)
ブランクまたは歯科用修復物の形態である、項目1〜15のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目17)
前記歯科用修復物が、インレー、アンレー、ブリッジ、橋脚歯、前装、ベニア、咬合小面、歯冠、部分歯冠、フレームワーク、またはコーピングである、項目16に記載のガラスセラミック。
(項目18)
主な結晶相として二ケイ酸リチウムを含有する、項目1または項目3〜17のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目19)
項目2〜17のいずれか一項に記載のメタケイ酸リチウムガラスセラミックの調製のためのプロセスであって、以下:
(a)該ガラスセラミックの成分を含有する出発ガラスを生成する工程、
(b)該出発ガラスを第一の温度で第一の加熱処理に供し、メタケイ酸リチウム結晶を形成するために適切な核を含有するガラス生成物を生じる工程、
(c)該ガラス生成物を、該第一の温度より高い第二の温度で第二の加熱処理に供し、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含有する前記ケイ酸リチウムガラスセラミックを得る工程、
を包含する、プロセス。
(項目20)
前記工程(b)における第一の加熱処理が、前記出発ガラスを、約10分〜3時間の間、500〜600℃の温度に加熱する工程を包含する、項目19に記載のプロセス。
(項目21)
前記工程(c)における第二の加熱処理が、前記ガラス生成物を、680〜720℃、好ましくは690〜710℃、より好ましくは約700℃の第二の温度に加熱する工程を包含する、項目19または20に記載のプロセス。
(項目22)
前記工程(a)における出発ガラス、前記工程(b)におけるガラス生成物、または前記工程(c)におけるメタケイ酸リチウムガラスセラミックが、機械加工によってかまたはホットプレスによって所望の幾何学的形状へと成型される、項目19〜21のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目23)
前記機械加工がグラインディング、トリミング、またはミリングによって行われる、項目22に記載のプロセス。
(項目24)
項目18に記載の二ケイ酸リチウムガラスセラミックを調製するためのプロセスであって、項目19〜23のいずれか一項に記載のプロセスを実施する工程、および前記工程(c)のケイ酸リチウムガラスセラミックを830〜880℃の第三の温度で10〜60分の間、第三の加熱処理にさらに供する工程を包含する、プロセス。
(項目25)
前記二ケイ酸リチウムガラスセラミックが歯科用修復物の形態である、項目24に記載のプロセス。
(項目26)
ケイ酸リチウムガラスであって、以下の成分:
【0021】
【化8】
を含有し、
ここで、Me(II)Oが、CaO、BaO、MgOおよびSrOのうちの少なくとも1つから選択され、
かつ0.1重量%未満のZnOを含有し、そしてメタケイ酸リチウム結晶の形成のために適切な核を含有する、ケイ酸リチウムガラス。
(項目27)
SiO
2:Li
2Oのモル比が、少なくとも2.2:1であり、好ましくは少なくとも2.3:1であり、最も好ましくは、2.3:1〜2.5:1の範囲である、項目26に記載のガラス。
(項目28)
Al
2O
3:K
2Oのモル比が、1:0.5〜1:2.0の範囲であり、好ましくは1:1〜1:2.0である、項目26および27に記載のガラス。
【0022】
本発明は、ケイ酸リチウム材料を記載する。このケイ酸リチウム材料は、機械加工によって、その器具が過度に磨耗することなく歯科用製品へと容易に加工可能であり、そしてその後、高い強度を示すケイ酸リチウム製品へと変換され得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、特に、コンピュータ支援ミリングプロセスおよびコンピュータ支援トリミングプロセスによって容易に成形され得、その後、高い化学的耐性と優れた光学特性とを示す高強度の歯科用製品へと変換され得、そして上記最終変換の間に示す収縮がかなり小さく、そしてこれらの特性全てが、ZnOを必要とせずに達成される材料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のケイ酸リチウムガラスセラミックは、以下の成分を含有する:
【0025】
【化9】
ここで、Me(II)Oは、CaO、BaO、MgOおよびSrOのうちの少なくとも1つから選択され、
そして0.1重量%未満のZnOを含有する。
【0026】
好ましくは、このガラスセラミックは、本質的にZnOを含有しない。
【0027】
ZnOの非存在下でさえも、本発明のガラスセラミックが上記の複数の要件を満たすということは、驚くべきことである。このことは、他の成分およびそれらの量の選択によって、そして好ましくは、これら成分のいくつかの互いに対する比率によって、可能であった。
【0028】
好ましいガラスセラミックは、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含有するものである。このようなガラスセラミックはまた、以下で、メタケイ酸リチウムガラスセラミックと称される。
【0029】
上記ガラスセラミックが、0〜2.0重量%、好ましくは0〜1.5重量%のMe(II)Oを含有する場合に有益であることが、また見出された。Me(II)Oは、特に、CaOおよびMgOのうちの少なくとも1つから選択される。特に好ましいガラスセラミックは0.1〜1.0重量%のMgOを含有する。
【0030】
上記核生成剤は、好ましくは、P
2O
5ならびに元素Pt、Ag、CuおよびWの化合物のうちの、少なくとも1つである。この核生成剤は、メタケイ酸リチウム結晶の形成を誘導するように作用し、好ましくはP
2O
5である。
【0031】
さらに、SiO
2対Li
2Oの特定のモル比は、対応する出発ガラスの必要な加熱処理において、主にメタケイ酸リチウムおよび二ケイ酸リチウムが各々生成されることを確実にするように作用することが示された。このことは、特に重要である。二ケイ酸リチウムを本質的に含有しないメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、特に、優れた機械加工性をもたらし、一方、容易に溶解可能なメタケイ酸リチウムを本質的に含有しない二ケイ酸リチウム修復物は非常に良好な化学安定性を有する。
【0032】
そして、SiO
2:Li
2Oのモル比が、少なくとも2.2:1であり、好ましくは少なくとも2.3:1であり、最も好ましくは、2.3:1〜2.5:1の範囲であることが好ましいことが見出された。
【0033】
さらに、研究は、Al
2O
3:K
2Oのモル比が、メタケイ酸リチウムの所望の半透明性を得、そして顕著な結晶化をもたらすために重要であることを明らかにした。
【0034】
好ましくは、Al
2O
3対K
2Oのモル比は、1:0.5〜1:2.0の範囲であり、好ましくは1:1〜1:2.0である。
【0035】
本発明のガラスセラミックの成分の量についての好ましい範囲が、また存在する。これらは、互いに独立に使用され得る。
【0036】
好ましくは、このガラスセラミックは、2.5〜5.0重量%のAl
2O
3を含有する。
【0037】
また好ましくは、このガラスセラミックは、70.0〜73.0重量%のSiO
2を含有する。
【0038】
また好ましくは、このガラスセラミックは、0〜4.0重量%のZrO
2、好ましくは0.1〜4.0重量%のZrO
2、より好ましくは1.0〜4.0重量%のZrO
2、最も好ましくは1.5〜3.0重量%のZrO
2を含有する。最終二ケイ酸リチウムセラミックの高強度の達成が重要である場合、0〜2.0重量%のZrO
2が有利である。
【0039】
さらに好ましくは、このガラスセラミックは、以下の成分の少なくとも1つを以下の量で含有する:
【0041】
上記着色剤および蛍光金属酸化物の金属は、好ましくは、fグループ元素から選択され、特に、Ta、Tb、Y、La、Er、Pr、Ce、Ti、V、FeおよびMnの群から選択される。この着色剤または蛍光酸化物は、最終歯科用製品の色が当該患者の天然歯材料の色と一致することを確実にする。
【0042】
さらに、このガラスセラミックは、追加成分として、0〜2.0重量%の量でNa
2Oを含有し得る。
【0043】
このガラスの技術的加工可能性を向上させるための追加成分が、また存在し得る。したがって、このような追加成分は、特に、B
2O
3およびFのような化合物であり得る。これらは、一般的に0〜5.0重量%の量である。
【0044】
一般的に、メタケイ酸リチウムの量は、20〜80体積%である。驚くべきことに、優れた加工特性を達成するために、特定体積部のメタケイ酸リチウムが存在すべきであることが示された。したがって、このメタケイ酸リチウム結晶相が、ケイ酸リチウムガラスセラミックの20〜50体積%、特に30〜40体積%を形成することが、さらに好ましい。このような体積部は、互いにかなり離れて存在する結晶を生じ、したがってこのガラスセラミックが過度に高い強度となるのを回避する。
【0045】
二ケイ酸リチウムセラミックの高強度の達成が重要である場合、メタケイ酸リチウム相は、好ましくは、ケイ酸リチウムガラスセラミックの50体積%より多く〜80体積%までを形成する。
【0046】
メタケイ酸リチウム結晶は、好ましくは、層状形態であるか、または平板形態である。このことは、このメタケイ酸リチウムガラスセラミックの、高エネルギーを使用することもなく、制御されない破壊もない、非常に良好な機械加工性をもたらす。制御されない破壊の後者の局面は、例えば、一般的に機械加工に不適切なガラスから、公知である。メタケイ酸リチウム結晶の好ましい形態はまた、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックから製品(例えば、複雑な歯科用修復物)の驚くほど高いエッジ強度が生じ得ることの原因であると考えられる。
【0047】
本発明のケイ酸リチウムガラスセラミックは、好ましくは、ブランクの形態である。このブランクは、通常、小さな円筒状の形態か、または四角形のブロックの形態を取る。正確な形態は、所望されるコンピュータ支援によるブランクの機械加工のために使用される、特定の装置に依存する。
【0048】
機械加工後、ケイ酸リチウムガラスセラミックは、好ましくは、歯科用修復物(例えば、インレー、アンレー、ブリッジ、橋脚歯、前装、ベニア、咬合小面、歯冠、部分歯冠、フレームワーク、またはコーピング)の形状を有する。
【0049】
主な結晶相として二ケイ酸リチウムを含有する本発明のケイ酸リチウムガラスセラミックは、本発明のさらに好ましい実施形態である。好ましくは、この二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、本発明のガラスセラミックのメタケイ酸リチウムが二ケイ酸リチウム結晶へ変換されるプロセスにおいて、形成される。
【0050】
本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックから生成された歯科用製品は、本発明のさらに好ましい実施形態である。好ましくは、このような製品は、本発明のガラスセラミックのメタケイ酸リチウムが二ケイ酸リチウム結晶に変換されるプロセスにおいて、形成される。
【0051】
本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、好ましくは、以下を包含するプロセスによって調製される:
(a)上記ガラスセラミックの成分を含有する出発ガラスを生成する工程、
(b)上記出発ガラスを第一の温度で第一の加熱処理に供し、メタケイ酸リチウム結晶を形成するために適切な核を含有するガラス生成物を生じる工程、
(c)上記ガラス生成物を、上記第一の温度より高い第二の温度で第二の加熱処理に供し、主な結晶相としてメタケイ酸リチウムを含有する上記ケイ酸リチウムガラスセラミックを得る工程。
【0052】
工程(a)においては、通常、出発ガラスの溶解物が生成される。これは、上記ガラスセラミックの成分を含有する。この目的のため、対応する適切な出発材料(例えば、炭酸塩、酸化物、およびリン酸塩)の混合物が調製されて、2〜10時間、特に1300〜1600℃の温度に加熱される。特に高度の均一性を得るため、得られたガラス溶解物は、水中に注がれて、ガラス粒子を形成し得、そして得られたガラス粒子は、再度溶解される。
【0053】
さらに好ましくは、この出発ガラスの溶解物は、これを工程(b)に供する前に、例えば室温に、冷却される。この出発ガラスの溶解物はまた、通常、鋳型に注がれて、出発ガラスブランクを形成する。
【0054】
いくつかの場合、冷却手順を制御して、ガラスを緩和させるだけでなく、工程(b)の第一の加熱処理を引き起こすと都合が良い。
【0055】
工程(b)においては、出発ガラスは、第一の温度で第一の加熱処理に供されて、メタケイ酸リチウム結晶について核形成を起こす。好ましくは、この第一の加熱処理は、この出発ガラス物質を、約10分〜3時間の間、500〜600℃の温度に加熱する工程を包含する。この処理は、極めて十分な結晶成長を確実にする多数の核の形成をもたらす。この処理はまた、二ケイ酸リチウムガラスセラミックを得るための工程(c)後のさらなる加工において、非常に均一な二ケイ酸リチウム構造を得ることができることを確実にする。
【0056】
上記工程(c)における第二の加熱処理が、上記ガラス生成物を、570〜750℃、好ましくは570〜670℃、より好ましくは約650℃の第二の温度に加熱する工程を包含することは、また有利である。
【0057】
さらに驚くべきことに、比較的高温によって多量のメタケイ酸リチウムが生じ、次いでこれらが、第三の加熱処理において、多量の二ケイ酸リチウムを生じることが示された。このような多量の二ケイ酸リチウムが、セラミックに高い強度を与える。したがって、高強度の最終生成物を達成することが重要である場合、680〜720℃で、好ましくは690〜710℃で、より好ましくは約700℃で第二の加熱処理を実行することが、有利である。
【0058】
選択された出発ガラスの特定の組成に依存して、当業者は、示差走査熱量測定法(DSC)およびX線回折分析によって、工程(b)および工程(c)における適切な条件を決定して、所望の結晶形態および結晶サイズのメタケイ酸リチウムを有するガラスセラミックを得ることができる。さらに、これらの分析はまた、望ましくない他の結晶相の(例えば、高強度の二ケイ酸リチウムもしくはクリストバライトおよびリン酸リチウムの)形成を回避または制限する条件の同定を可能にする。
【0059】
通常、工程(a)の出発ガラス、工程(b)のガラス生成物、または好ましくは工程(c)のメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、機械加工によってかまたはホットプレスによって、所望の幾何学的形状へと成型される。この機械加工は、特に、グラインディング、トリミング、またはミリングによって行われ、好ましくは、CAD/CAMベースのミリング用デバイスを用いて、コンピュータによって制御される。これは、歯科医による、いわゆる、患者の椅子のわきでの処置、を可能にする。
【0060】
強靭かつ高強度の先行技術材料で観察される器具の過度の磨耗なしに機械加工によって成形され得るということは、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックの特別な利点である。このことは、特に、本発明のガラスセラミックを研磨およびトリミングすることが容易に可能であるということによって示される。そして、このような研磨プロセスおよびトリミングプロセスは、受容可能な製品を調製するために、その製品がたとえ非常に複雑な歯科用修復物の形態を有していても、より少ないエネルギーおよびより短い時間しか必要としない。
【0061】
さらに、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、有利なことに、高強度の二ケイ酸リチウムガラスセラミックへ加工され得る。この二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、通常、結晶二ケイ酸リチウム相の50〜85体積%、好ましくは65〜80体積%の含有量を有する。
【0062】
このことは、好ましくは、上記工程(c)の、調製されたメタケイ酸リチウムガラスセラミックが、830〜880℃の第三の温度で10〜60分間、第三の加熱処理に供されるプロセスによって引き起こされる。この加熱処理はまた、上記メタケイ酸リチウムガラスセラミックをホットプレスして成形を達成する場合に、引き起こされ得る。
【0063】
したがって、このメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、例えば、(i)CAD/CAMおよび加熱処理の両方、または(ii)ホットプレスによって、所望の形状の二ケイ酸リチウムガラスセラミックにさらに加工され得る。このことは、使用者にとって非常に都合が良い。
【0064】
これらの目的のために、メタケイ酸リチウム結晶の形成に適切な核を含有する、対応するケイ酸リチウムガラスを使用することが、また可能である。このガラスは、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックおよび二ケイ酸リチウムガラスセラミックの前駆物質である。本発明はまた、このようなガラスに関する。これは、上記の工程(b)におけるプロセスによって、得ることができる。本発明のケイ酸リチウムガラスは、以下の成分を含有する:
【0065】
【化11】
ここで、Me(II)Oは、CaO、BaO、MgOおよびSrOのうちの少なくとも1つから選択され、
かつこのケイ酸リチウムガラスは、0.1重量%未満のZnOを含有し、そしてメタケイ酸リチウム結晶の形成のために適切な核を含有する。
【0066】
ホットプレス技術によって歯科用修復物を製造するために、メタケイ酸リチウムについての核を有する本発明のケイ酸リチウムガラスインゴットを使用することが、好ましい。このインゴットは、約700〜1200℃に加熱されて、粘性のある状態へと変換する。この加熱処理は、特別な炉(EP 500(登録商標)、EP 600(登録商標)、Ivoclar Vivadent AG)で行われ得る。このインゴットは、特別なインベストメント材料中に包埋される。上記加熱処理の間、このインゴットは、結晶化される。そして、主な結晶相は二ケイ酸リチウムである。この粘性のガラスセラミックは、1〜4MPaの圧力下でインベストメント材料の空洞へと流れ、所望の形状の歯科用修復物が得られる。このインベストメント鋳型を室温に冷却した後、二ケイ酸リチウム修復物は、サンドブラストによって取り出され得る。この修復物は、焼結技術またはホットプレス技術によって、ガラスまたはガラスセラミックでさらにコーティングされて、自然な審美性を有する最終的な歯科用修復物が得られる。
【0067】
同じホットプレス技術は、二ケイ酸リチウムガラスセラミックに変換される、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックにも適用され得る。
【0068】
本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックを、CAD/CAM技術によって、二ケイ酸リチウムガラスセラミック製歯科用修復物に変換するための好ましい方法は、約80〜150MPaの強度を有するメタケイ酸リチウムガラスセラミックブランク(例えば、ブロック)を使用する。これらは、Cerec 2(登録商標)またはCerec 3(登録商標)(Sirona、ドイツ)のようなCAMユニットで容易に機械加工され得る。より大型のミリング機(例えば、DCS precimill(登録商標)(DCS、スイス)もまた適当である。そして上記ブロックは、固定式ホルダーまたは一体式ホルダーによって、グラインディングチャンバー中に配置される。歯科用修復物のCAD構築は、ソフトウェアツールと組み合わせたスキャンプロセスまたは光学式カメラによって行われる。ミリングプロセスは、1ユニットに対して、約10〜15分を要する。コピーミリングユニット(例えば、Celay(登録商標)(Celay、スイス))もまた、上記ブロックの機械加工に適切である。第一に、所望の修復物の1:1コピーは、硬質ワックスにおいて作製される。次いで、このワックスモデルは、機械的にスキャンされて、グラインディングツールへ1:1で機械的に移される。したがって、このグラインディングプロセスは、コンピュータによって制御されていない。削られた歯科用修復物は、高強度かつ歯のような色を有する所望の二ケイ酸リチウムガラスセラミックを得るために、第三の加熱処理に供される必要がある。この製品は、焼結技術またはホットプレス技術によって、ガラスまたはガラスセラミックでさらにコーティングされて、自然な審美性を有する最終歯科用修復物を得ることができる。
【0069】
本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックはまた、歯科用修復物をコーティングするために使用され得る。このコーティングは、好ましくは、上記メタケイ酸リチウムガラスセラミックを、上記修復物上にホットプレスすることによって行われる。
【0070】
驚くべきことに、本発明の、容易に機械加工可能なメタケイ酸リチウムガラスセラミックが、さらなる加熱処理によって、優れた光学特性をも有する二ケイ酸リチウムガラスセラミック製品へと変換され得ることが見出された。この二ケイ酸リチウムガラスセラミックへの変換は、ほんの約0.2〜0.3%のごくわずかな直線的収縮を伴う。この収縮は、セラミックを焼結する場合の30%までの直線的収縮と比較して、ほとんど無視できる。得られた二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、優れた機械特性(例えば、高強度)を有するだけでなく、歯科用修復物のための材料に必要とされる他の特性をも示す。これらの特性が、成分としてZnOを必要とすることなく達成されることが、重視される。ZnOは、その強い乳光効果を考慮すると、特定の修復物にとって不利であり得る。
【0071】
このようにして、二ケイ酸リチウムセラミックを歯科用修復用材料として使用するのに魅力的にするための、あらゆる有益な機械的特性、光学的特性、および安定性特性を有する製品が最終的に得られる。しかし、これらの特性は、CAD/CAMベースのプロセスを用いることによって成形される場合における従来の材料の欠点(特に、ミリング器具およびトリミング器具の過度の磨耗)なしに、達成される。
【0072】
本発明は、以下の実施例に基づいて、より詳細に説明される。
【実施例】
【0073】
(実施例1〜8)
表Iで示された化学成分を有する、本発明の、全部で8つの異なるメタケイ酸リチウムガラスセラミックを、表示された第二の加熱処理を用いて調製した。次いで、得られたガラスセラミックを、表示された第三の加熱処理を用いて、対応する二ケイ酸リチウムガラスセラミックへと変換した。
【0074】
第一に、対応する出発ガラスのサンプルを、白金−ロジウムるつぼ中で、1450℃の温度で40分間融解した。このガラス融解物を水中に注ぎ、得られた粒状物を、乾燥後、1500℃で再度融解した。次いで、得られたガラス融解物をグラファイト製鋳型に注ぎ、ブロックを得た。このガラスブロックを500〜600℃で10分〜3時間緩和した後、所与の第二加熱処理に供した。第三の加熱処理を実施する前に、このブロックを、CAD−CAMミリング機(すなわち、CEREC 3(登録商標))におけるミリングによって、その機械加工性について検査した。最後に、表示された第三の加熱処理を行った。第二および第三の加熱処理後に存在する結晶相は、XRD技術によって同定された。これは、表Iに示されている。
【0075】
さらに、製品の乳光を視覚的に評価し、スペクトル比色計(Minolta CM−3700d)を用いて、BS 5612(英国標準)に従ってコントラスト値CRを決定した。酢酸中での化学的安定性および人工唾液中での安定性を決定した。対応するデータは、以下の表IIに見出されるはずであり、特に、乳光の欠如と高い半透明性および安定性との驚くべき組み合わせを示す。この人工唾液の組成を、表IIIに示す。
【0076】
得られたデータは、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックが、非常に良好な機械加工性と高いエッジ強度とを組み合わせており、そして単純な加熱処理によって、二ケイ酸リチウムガラスセラミックへと容易に変換可能であることを示す。この二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、非常に高い曲げ強さ、ならびに優れた化学的耐性および良好な半透明性を有する。これら全ては、このセラミックを歯科用修復物の製造のために有用な材料として非常に魅力的にする特性である。
【0077】
(実施例9〜12)
本発明の4つのガラスセラミックを、実施例1〜8と類似の様式で調製した。しかし、加熱処理スキームは異なっていた。さらに、各材料を、「サイクルA」および「サイクルB」と称されるスキームに供した。これらのスキームは、メタケイ酸リチウムの結晶化のために使用される温度が異なる(すなわち、それぞれ650℃と700℃)。
【0078】
調製されて試験された材料、およびそれらの特性に関する詳細を、表IVに示す。メタケイ酸リチウムの結晶化のために700℃の温度を用いた「サイクルB」処理が、優れた強度を有する二ケイ酸リチウムガラスセラミックを生じたことが、明らかである。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
本明細書中の全ての引用は、各々独立の刊行物、特許出願または特許が、全ての図面を含めて特異的かつ個別に参考として援用されることを示されるのと同じ程度に、本明細書中で参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
当業者に明らかであるように、特定の状況、物質、問題の組成物、過程、工程に適合させるために、本発明の多くの改変および変更が、本発明の目的、精神および範囲を保護するために、なされ得る。このような全ての改変は、本明細書に添付の請求の範囲内であり、本発明の精神および範囲から逸脱しないことが、意図される。本明細書中に記載される特定の実施形態は、ほんの一例として提供されたに過ぎず、そして本発明は、添付の請求項によって、これらの請求項に与えられる権利と等価の全ての範囲と共に限定される;そして本発明は、本明細書中で例として示されている特定の実施形態に限定されない。