(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770705
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】特に船舶のためのプロペラ装置
(51)【国際特許分類】
B63H 1/28 20060101AFI20150806BHJP
B63H 1/20 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
B63H1/28 A
B63H1/20 Z
B63H1/28 Z
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-251722(P2012-251722)
(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公開番号】特開2013-116727(P2013-116727A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2012年11月16日
(31)【優先権主張番号】10 2011 055 515.3
(32)【優先日】2011年11月18日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】12191460.0
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509255794
【氏名又は名称】ベッカー マリン システムズ ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】becker marine systems GmbH&Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】ディルク レーマン
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−103295(JP,A)
【文献】
特開昭61−027795(JP,A)
【文献】
特開平02−279490(JP,A)
【文献】
特開昭63−154494(JP,A)
【文献】
米国特許第3606579(US,A)
【文献】
独国特許発明第606119(DE,C1)
【文献】
特開昭58−183382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 1/28
B63H 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラ軸(13)を中心に回転可能なプロペラ(10)を含み、船舶の駆動システムのためのプロペラ装置(100)であって、プロペラ軸(13)を中心に自由に回転可能に配置される少なくとも一つの回転翼フィン(30)が設けられ、前記少なくとも一つの回転翼フィン(30)の回転によって描かれる円状軌道の直径(31)は前記プロペラ(10)の直径(16)より小さく、前記少なくとも一つの回転翼フィン(30)の円状軌道の直径(31)は前記プロペラ(10)の直径(16)の55%未満であり、前記プロペラ(10)と一緒に回転する少なくとも一つの固定翼フィン(20)が軸方向においてプロペラの下流に設けられ、前記少なくとも一つの固定翼フィン(20)は固定翼本体(21)に配置され、前記固定翼本体(21)は前記プロペラ(10)のプロペラハブ(11)の軸方向においてプロペラの下流に配置され且つ前記プロペラハブ(11)に堅固に連結されることを特徴とするプロペラ装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つの回転翼フィン(30)の円状軌道の直径(31)は、前記プロペラ(10)の直径(16)の35%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のプロペラ装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの固定翼フィン(20)は、前記自由に回転可能な少なくとも一つの回転翼フィン(30)と前記プロペラ(10)との間に配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロペラ装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの固定翼フィンの回転によって描かれる前記円状軌道の直径は、前記プロペラ(10)の直径(16)の75%未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロペラ装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの固定翼フィン(20)は、軸方向から見たとき、前記プロペラ(10)のプロペラブレード(14)に対して所定角度でオフセットされるように配列されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロペラ装置。
【請求項6】
前記プロペラ軸(13)を中心に周方向に分布されるように配列される多数の回転翼フィン(30)及び/又は固定翼フィン(20)が設けられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロペラ装置。
【請求項7】
前記回転翼フィン(30)及び/又は固定翼フィン(20)の個数は、前記プロペラ(10)のプロペラブレード(14)の個数に対応することを特徴とする、請求項6に記載のプロペラ装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの回転翼フィン(30)及び/又は前記少なくとも一つの固定翼フィン(20)はプロペラ軸に対して所定の迎え角を有し、前記迎え角は10°〜80°であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロペラ装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つの回転翼フィン(30)及び/又は前記少なくとも一つの固定翼フィン(20)は、前記プロペラ軸(13)に対して半径方向に延長されるように配列されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロペラ装置。
【請求項10】
摩擦ベアリング(40)は、前記少なくとも一つの回転翼フィン(30)を装着するために前記プロペラハブ(11)又は前記固定翼本体(21)に設けられることを特徴とする、請求項2〜9のいずれか1項に記載のプロペラ装置。
【請求項11】
以下の(i)及び(ii)の少なくとも一方を有し、(i)を有するときは(iii)を有してもよいことを特徴とする、請求項10に記載のプロペラ装置。
(i)前記摩擦ベアリング(40)は、前記プロペラハブ(11)又は前記固定翼本体(21)に堅固に付着する第1のベアリング要素と第2のベアリング要素とを含み、前記第2のベアリング要素は、前記第1のベアリング要素に対して移動可能であって、前記少なくとも一つの回転翼フィン(30)は前記第2のベアリング要素に堅固に付着する。
(ii)前記摩擦ベアリング(40)は自己潤滑式摩擦ベアリングである。
(iii)前記第2のベアリング要素はベアリングリング(41)である。
【請求項12】
前記少なくとも一つの回転翼フィン(30)は、前記プロペラ軸(13)の方向に前記プロペラ(10)から、前記プロペラ直径(16)の最大0.8倍の距離に配置されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のプロペラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に船舶、例えば艦船の駆動システムのためのもので、プロペラ軸を中心に回転可能なプロペラを含むプロペラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの船舶は、プロペラ軸を中心に回転可能なプロペラを含む駆動システムを含む。水は、回転するプロペラ(によって連結される)のプロペラ表面を通過して流れるときに加速化されて捩じれる。その結果、プロペラ逆流(backwash)には乱流が発生し得る。この乱流は、概してハブの領域、又は船舶の進行方向から見るときのハブの下流、で特に激しいことが一般に知られている。この乱流は「ハブ渦流(hub vortex)」とも言われており、駆動力にマイナスの影響を及ぼす。
【0003】
ハブ渦流を低減してプロペラの効率を高めるために、例えば、特許文献1では、船舶の進行方向においてプロペラの下流(すなわち、プロペラハブ端部領域)に配置されるハブキャップに、固定型フィン又は流動案内フィンを設ける方式を提示し、当該フィンはプロペラハブに堅固に連結されてハブと一緒に回転する。フィンの放射状延長部は、実質的にハブ領域に限定される。プロペラと一緒に回転するハブキャップに固定型フィンを設けることによってハブ渦流が抑制され、それによりプロペラ駆動力の向上を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0255136(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ハブ渦流をより低減することができ、その結果、効率をより向上させることができるプロペラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、特に船舶の駆動システムのためのもので、プロペラ軸を中心に回転可能なプロペラを含み、少なくとも一つの回転翼フィン(rotor fin)がさらに設けられるプロペラ装置によって達成される。回転翼フィンは、便宜的にはブレード型で構成され、プロペラ軸を中心に自由に回転可能に配置される。これによって、回転翼フィンは、自由回転方式又は無駆動機(driveless)方式で構成される。すなわち、回転翼フィンは、プロペラ軸を中心にした回転のための別途の駆動機を備えておらず、プロペラ軸を中心にした回転のために、それぞれの一般的な周辺環境、特に一般的な水流によって任意に駆動される。便宜的には、少なくとも一つの回転翼フィンはプロペラ逆流側、つまり、(船舶)プロペラの逆流内、に配置される。すなわち、少なくとも一つの回転翼フィンは船舶の進行方向におけるプロペラの下流に配置される。したがって、プロペラの逆流が少なくとも一つの回転翼フィンに衝突するようになり、回転翼フィンは便宜的には当該作用を回転中に引き起こすように構成される。
【0007】
回転翼フィンは、ハブ領域で渦流形成をする方式でプロペラ逆流に影響を及ぼすように、すなわち、ハブ渦流を低減させるように構成される。これは、例えば、回転翼フィンがハブ領域の流動内のプロペラによって印加される捩じれに対して逆捩じれ(counter―twist)を発生させ、ハブ領域で全体的にプロペラ流動の均質化がなされ、それにより、層流を形成させることによって達成することができる。この効果は、特に回転翼フィンの自由回転可能構成によって達成される。ハブキャップに堅固に固着されて必然的にプロペラと一緒に回転する従来技術で公知のフィンに比べると、本発明に係る自由回転可能なフィンは、装着部の構成及び流入(例えば、流入の速度や捩じれの程度など)に左右される可変的な回転速度を有する。これによって、プロペラ逆流の改善された流動パターンがハブ領域で成立され、結果として全般的な効率が向上する。その結果、プロペラの全般的な駆動力が永久的に改善される。一般に、自由に回転する少なくとも一つの回転翼フィンの回転速度は、プロペラの回転速度より低い。しかし、全ての作動状態で必ずしもそうではない。
【0008】
少なくとも一つのフィンは、実質的にハブ領域のプロペラ流動のみに影響を与えるように意図されたものであるので、少なくとも一つの回転翼フィンの回転によって描かれる円状軌道がプロペラの直径より小さくなるようにさらに定められる。円状軌道は、プロペラ軸において半径方向から見ると、回転翼フィンの最外側先端部によって描かれる。ただし、概念的に形成された円状軌道は、回転翼フィンの1回の完全な回転によって生成される。すなわち、完全な回転中に少なくとも一つの回転翼フィンによってつながる回転翼フィンの表面は、プロペラによってつながるプロペラ表面より小さいか又は小さい直径を有する。したがって、回転翼フィンの長さは、プロペラブレードの長さより短い。回転翼フィンの直径をプロペラの直径より小さく制限することは、プロペラ逆流に対する影響が実質的にハブ領域に集中し、可能な限り、プロペラ逆流に対する望ましくない不利な影響が他の領域に発生することを防止する結果をもたらす。これと関連して、少なくとも一つの回転翼フィンの円状軌道の直径は、プロペラ直径の75%未満、特に55%未満、そして、特に35%未満であることが特に有利である。回転翼フィンの直径がより大きくなり、結果的に、半径方向から見て個々の回転翼フィンブレードがより大きくなると、プロペラ流動に対するマイナスの影響が発生し、少なくとも一つの回転翼フィンに強度(strength)問題が発生する。
【0009】
原則的に、回転翼フィンは、任意の適切な材料で製造することができる。望ましくは、ステンレス鋼又は他の適切な材料が回転翼フィンの製造に使用される。原則的に、重要な(些細でない)方式で流動に能動的に影響を及ぼすように構成される任意の案内本体(guiding body)を回転翼フィンとして使用することができる。特に、回転翼フィンをブレード型又はフィン型で構成することが便利である。例えば、回転翼フィンは、案内フィンの形態で構成することができる。また、回転翼フィンは、水中翼プロファイル(hydrofoil profile)で構成することもでき、そうでない場合もある。水中翼プロファイルで形成される場合、フィンは加圧側と吸入側とを有するようになるが、 吸入側は特に円弧状に外側に湾曲し、加圧側は実質的に平らに構成することができる。しかし、原則として、両方が全て実質的に平らなプロファイルを有する板(plate)状構成、又はフィンの両方が全て湾曲型の構成も可能である。また、回転翼フィンのプロファイルは、その長さにわたって均一である場合もあり、異なる場合もある。特に、回転翼フィンのプロファイルは、フィンの縦方向から見ると、自体の内部に回転、すなわち、捩れることができる。
【0010】
より望ましくは、少なくとも一つの回転翼フィンは一つの自由端を有する。この場合、自由端対向側の回転翼フィンの端部は、便宜的にはプロペラ軸を中心にした回転を可能にするピボットベアリングに固定される。したがって、自由端は、概してプロペラ軸から半径方向を見たとき、プロペラ軸から最も遠く離れている。「自由端」という用語は、他の構成要素に固定されない回転翼フィンの端部領域と理解しなければならない。特に、ノズル又はタービンリングが回転翼フィンの自由端領域の周囲に設けられないこと、すなわち、少なくとも一つの回転翼フィンがノズル又はタービンリングの内部に配置されないことが望ましい。
【0011】
本発明に係るプロペラ装置は、特に固定型プロペラに適切である。「固定型プロペラ」という用語は、この場合、プロペラ軸を中心に回転可能であるが、船舶操向用方向舵軸を中心にピボット可能でないプロペラと理解しなければならない。
【0012】
便宜的には、少なくとも一つの回転翼フィンは、プロペラのプロペラハブ又は当該ハブ領域に配置される。概して少なくとも一つの回転翼フィンは、自由回転可能に固定されるようにハブにも装着される。代案として、少なくとも一つの回転翼フィンは、ハブに配置される構成要素、例えば、分離型ハブ端部片などに配置することもできる。特に、回転翼フィンは便宜的には(自由)ハブ端部領域に配置される。
【0013】
好適な実施例では、少なくとも一つの自由回転可能な回転翼フィンに加えて、プロペラと一緒に回転する少なくとも一つの固定翼(stator fin)フィンが設けられる。便宜的には、少なくとも一つの固定翼フィンは、自由回転可能な回転翼フィンとプロペラとの間に配置される。これによって、好適な実施例では、少なくとも一つの固定翼フィンは軸方向においてプロペラの下流に配置され、次に、少なくとも一つの回転翼フィンは少なくとも一つの固定翼フィンの下流に配置される。「一緒に回転」という用語は、この場合、固定翼フィンが必然的にプロペラと共同モードで、すなわち、同一の速度と頻度数とで回転するという意味と理解しなければならない。したがって、便宜的には、固定翼フィンはプロペラ又はプロペラハブに直接連結される。この場合、その形状及び迎え角と関連して対応する固定翼フィンを構成することによって、プロペラ流動のある程度の捩じれ解除(untwisting)がハブ領域の範囲内で行われた後、前記流動が当該流動によって駆動される回転翼フィンに作用し、特に流動がより層流化されたり、ねじれ解除がなされたりするようにすることが有利である。
【0014】
少なくとも一つの固定翼フィンは、フィン、すなわち、流動に相当な影響を及ぼすための案内フィンを含む。材料、形状又はその他の幾何学的構成と関連して、固定翼フィンも回転翼フィンに対して上述したように構成することが有利である。特に、回転翼フィンの場合と同様に、少なくとも一つの固定翼フィンのフィン又はフィンブレードの長さは、プロペラブレードの長さより長くないことが好適である。したがって、特に回転中に固定翼フィンによって描かれる円状軌道は、プロペラの直径より小さな直径である。固定翼フィンの円状軌道は、望ましくはプロペラの直径の75%未満、特に望ましくは55%未満、特に35%未満である。また、固定翼フィンの長さは、半径方向から見ると、それぞれ回転翼フィンの長さに対応することができる。また、迎え角又は軸方向へのフィンの深さなどの他の寸法と構成様態とは、回転翼フィンと類似するか、同一である場合もあり、これと異なる場合もある。
【0015】
更なる好適な実施例において、少なくとも一つの固定翼フィンは、軸方向から見ると、プロペラのプロペラブレードに対して所定角度だけオフセットされるように配列される。その結果、プロペラハブの円周にわたり、固定翼フィンは、プロペラブレードとは異なる位置でプロペラハブに固着する。いくつかの固定翼フィンが設けられる場合、好適には全ての固定翼フィンがプロペラブレードにオフセットされるように、特に望ましくはそれぞれ同一の間隔で配列されなければならない。オフセット配列により、より望ましい流体力学的効率が達成される。好適には、固定翼フィンは円周方向から見ると、二つのプロペラブレード間のほぼ中心に配置させる方式で配列される。本明細書において、「ほぼ中心に」という表現は、円周方向から見ると、固定翼フィンが(それぞれ固定翼フィンの中心点を基準にして)全体距離の25%と75%との間の範囲内で、望ましくは全体距離の35%と65%との間の範囲内で(それぞれプロペラブレード中心点から見ると)一つのプロペラブレードから他のプロペラブレードまでの距離上に配置されるという意味と理解しなければならない。
【0016】
さらに好適な実施例では、多数の回転翼フィン及び/又は多数の固定翼フィンが設けられる。本好適な実施例において、複数の回転翼フィンと複数の固定翼フィンとは、便宜的には軸方向に同一の高さで配列され、円周にわたって分布される。円周にわたった分布とは、望ましくは均等、すなわち同一の間隔で行われる。便宜的には、回転翼フィン及び/又は固定翼フィンは、それぞれ構成(形状、大きさ、材料など)の面で同じに構成することができる。原則として、回転翼フィン及び/又は固定翼フィンの個数は制限されない。望ましくは2個〜7個の回転翼フィン及び/又は固定翼フィン、特に望ましくは3個〜5個の回転翼フィン及び/又は固定翼フィンが設けられる。特に回転翼フィン及び/又は固定翼フィンは、それぞれ同じの長さを有することができる。より好適には、回転翼フィン及び/又は固定翼フィンの個数はプロペラブレードの個数に対応させることができる。特に、同じ数の固定翼フィンとプロペラブレードとを設ける場合は、プロペラブレードにオフセットされるように、すなわち、軸方向から見るとそれぞれ一つの固定翼フィンが二つのプロペラブレード間に配置されるように配列することが望ましい。このように配列することで、特に好適には、固定翼の特に効率的な調節又は整列がなされるようにプロペラの乱流逆流に位置するプロペラブレードのそれぞれの小領域(subregion)を固定翼にそれぞれ割り当てることができる。
【0017】
さらに好適な実施例では、少なくとも一つの回転翼フィン及び/又は少なくとも一つの固定翼フィンがプロペラ軸に対して所定の迎え角で配置される。迎え角は、例えば断面図でフィンの縦軸とプロペラ軸又はプロペラに対して平行な線との間に含まれる。個々の回転翼フィン及び/又は固定翼フィンは、同一な又は異なる迎え角をそれぞれ有することができる。所定の迎え角で全ての回転翼フィンを配列し、これと異なる所定の迎え角で全ての固定翼フィンを配列することも可能である。固定翼フィン及び回転翼フィンの調節は、望ましくは同じの方向に、例えば全て左舷(port)に又は全て右舷(starboard)に、達成される。一つのプロペラブレードが固定翼フィン及び/又は回転翼フィンと同じ方向に調節されることも望ましい。固定翼フィン及び/又は回転翼フィンは、プロペラブレードと同じの迎え角を有することも、これと異なる迎え角を有することもできる。個々の回転翼フィン及び/又は固定翼フィンがそれ自体で回転、すなわち捩じれるように構成される場合は、個々のフィンに対してそれぞれ異なる迎え角をセクション別に獲得することができる。特に、迎え角は10 °と80°との間、望ましくは25°と70°との間、特に望ましくは40°と60°との間である。固定翼フィン及び/又は回転翼フィンは、望ましくはその迎え角に対して固定されるように配列される。しかし、原則として迎え角を調節できるようにする調節可能な配列も実行可能である。所定の迎え角を設けることによって、流動に対する特定影響及びこれによる特に効率的な捩じれ解除を簡単な方式で達成することができる。最適な迎え角は、特定の状況(例えば、プロペラの大きさ、プロペラの速度、プロペラブレードのプロファイルなど)に応じてプロペラ装置ごとに変えることができる。
【0018】
便宜的には、少なくとも一つの回転翼フィン及び/又は少なくとも一つの固定翼フィンは、プロペラ軸に対して半径方向に延長される。
【0019】
好ましい実施例では、プロペラのプロペラハブの前端部側、すなわち、自由端に配置され、プロペラハブに堅固に連結される固定翼本体が設けられる。少なくとも一つの固定翼フィンは、固定翼本体に配置され、便宜的には固定翼本体に固定される。少なくとも一つの固定翼フィンと固定翼本体とは一体型ユニットとして形成することができる。これによって、固定翼フィンはプロペラハブと一体型又は単一体で構成される必要がなく、別途の構成要素として製造され、例えば、ボルトなどの適切な連結手段を使用してプロペラハブに連結すればよいので、プロペラ装置の製造が簡単になる。また、これは比較的簡単な改造(retrofitting)の可能性を提供する。
【0020】
少なくとも一つの固定翼フィンのためのベアリングは、便宜的には水潤滑式(water―lubricated)で構成される。これによって、ベアリングはオイル潤滑式でないだけでなく、閉鎖又は密封されるように構成されることもない。これは、複雑な潤滑/密封システムを設ける必要がなく、ベアリングの製造及び維持補修の費用が低減されるという利点を有する。また、ベアリングは、望ましくは軸方向及び半径方向の組み合わせ型ベアリングとして構成される。しかし、半径方向及び軸方向に回転翼フィンを装着するための二つ以上の分離型ベアリングを原則として設けることも可能である。
【0021】
以下の(i)及び(ii)を併せた構成を採用することができる。
(i)プロペラ軸を中心に回転可能なプロペラを含み、船舶の駆動システムのためのプロペラ装置であって、プロペラ軸を中心に自由に回転可能に配置される少なくとも一つの回転翼フィンが設けられ、少なくとも一つの回転翼フィンの回転によって描かれる円状軌道の直径はプロペラの直径より小さく、少なくとも一つの回転翼フィンの円状軌道の直径はプロペラの直径の55%未満であり、プロペラと一緒に回転する少なくとも一つの固定翼フィンが軸方向においてプロペラの下流に設けられ、少なくとも一つの固定翼フィンは固定翼本体に配置され、固定翼本体はプロペラのプロペラハブの軸方向においてプロペラの下流に配置され且つプロペラハブに堅固に連結されている。
(ii)摩擦ベアリングは、少なくとも一つの回転翼フィンを装着するためにプロペラハブ又は固定翼本体に設ける。
(i)及び(ii)の構成に加えて(iii)の構成を加えることができる。
(iii)摩擦ベアリングはプロペラハブ又は固定翼本体に堅固に付着する第1のベアリング要素と第2のベアリング要素とを含み、第2のベアリング要素は、第1のベアリング要素に対して移動可能であって、少なくとも一つの回転翼フィンは第2のベアリング要素に堅固に付着する。
ベアリングは、望ましくは摩擦ベアリングとして構成され、プロペラハブ又は固定翼本体に設けられる。特に望ましくは、ベアリングは自己潤滑式(self―lubricating)で構成することができる。自己潤滑式ベアリングは、一般に乾式摩擦が本ベアリングに発生するので、「乾式摩擦ベアリング」とも称される。これは、ベアリングパートナーのうち一つ又は二つのベアリング要素中の一つの自己潤滑物性による。固体潤滑剤がベアリングの製造材料に封入されて提供され、これによって、固体潤滑剤が作動中の微細摩耗によって表面に到逹して摩擦及び摩耗を低減するので、本ベアリングは追加的な潤滑又は潤滑剤を用いることなく機能する。便宜的には、互いに対して移動可能な二つのベアリング要素のうち一つは、自己潤滑式ベアリングを形成するようにプラスチックやプラスチック複合材及び/又はセラミック構造材で製造される。望ましくは、ベアリングの一部又は二つのベアリング要素のうち一つはPTfE又はACMで形成することができる。黒鉛含有材料を使用することも可能である。他のベアリング部分又はベアリングパートナーは、望ましくは金属、例えば青銅又は黄銅で形成される。これによって、潤滑膜などを提供するために如何なる追加的な手段も設ける必要がなく、如何なる外部潤滑剤も提供する必要がないので、ベアリングの構造は単純化される。例えば、グリースなどの滑剤がベアリングから海水に入ることは不可能であるので、これは生態学的な面でも有利である。移動可能な第2のベアリング部分又はベアリングパートナーは、望ましくはベアリングリング、特に青銅ベアリングとして構成することができ、少なくとも一つの回転翼フィンは便宜的には第2のベアリング要素に堅固に固着する。
【0022】
さらに好適な実施例において、少なくとも一つの回転翼フィンは軸方向においてプロペラから近距離に配置される。特に、当該距離はプロペラ直径の最大0.8倍、望ましくはプロペラ直径の最大0.5倍、特に望ましくはプロペラ直径の最大0.3倍である。本明細書の詳細な説明において、測定はプロペラ又は少なくとも一つの回転翼フィンの中心からそれぞれ行うことができる。選択的に、プロペラ直径の0.2倍以下の距離に配列を行うことができる。便宜的には、少なくとも一つの回転翼フィンの配列は、プロペラ逆流側のプロペラから近距離に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図5】固定翼フィンがプロペラブレードにオフセットされるように配列されるプロペラ装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明について、図示している代表的な実施例を用い、以下に詳細に説明する。
図1〜
図3は、本発明に係るプロペラ装置100の側面図、斜視図、及び正面図である。プロペラ装置100は、プロペラシャフト(図示せず)に堅固に連結されるプロペラハブ11を含む船舶のプロペラ10を含む。プロペラシャフトは、プロペラ軸13に沿って延長される。プロペラシャフトは、本明細書では、船尾管として構成されるシャフトベアリング12に装着される。プロペラハブ11は、シャフトベアリング12の端部に配置される。5個のプロペラブレード14がプロペラ軸13に対して半径方向にプロペラハブ11から突出する。プロペラブレード14は、プロペラハブ11の円周にわたって均等に分布するように配列される。また、それぞれのプロペラブレード14は、プロペラ軸13に対して所定の迎え角を有し、プロペラブレード14の部分によってそれぞれ異なる迎え角が存在するように、半径方向から見ると、その長さにわたって自体の内部に回転、又は、ツイストされる。しかし、個々のプロペラブレード14の形状はそれぞれ同一である。5個の固定翼フィン20は、船舶の進行方向15から見ると、プロペラ10の下流に配置される。「船舶の進行方向」という用語は、本明細書では前進移動時の船舶又は船の進行方向と理解しなければならない。固定翼フィン20は、プロペラハブ11に堅固に連結される固定翼本体21(
図4参照)に順に配置される。したがって、固定翼フィン20は、プロペラシャフトが回転する間、プロペラハブ11と、そして必然的にプロペラ10と共に回転するようになる。固定翼フィン20は、実質的に両側フィンの側面が平らな板状(フィン)本体として形成される。固定翼フィン20は、プロペラ軸13に対して所定の迎え角を有する。当該迎え角は約45°である。固定翼フィンの迎え角は、プロペラブレードの平均迎え角より大きい。
【0025】
船舶の進行方向15から見ると、5個の回転翼フィン30が固定翼フィン20の下流にさらに設けられる。回転翼フィン30は、摩擦ベアリング40のベアリングリング41に堅固に取り付けられる(特に
図4参照)。回転翼フィン30は、ベアリングリング41の周囲に均等な間隔で分布されるように配列され、プロペラ軸13を中心に自由に回転可能である。また、回転翼フィン30は、プロペラ軸13に対して所定の迎え角を有する平らな側面が設けられる板状の案内本体又はフィン本体として構成される。当該迎え角は、固定翼フィン20又はプロペラブレード14の方向と同一の方向を有するが、回転翼フィン30の迎え角は、固定翼フィン20又はプロペラブレード14の迎え角より小さい値を有する。個々の回転翼フィン30は、その形態及び迎え角において同一に構成される。回転翼フィン30及び固定翼フィン20は、いずれもステンレス鋼で製造される。ベアリングリング41は青銅からなる。特に、
図3において、固定翼フィン20及び回転翼フィン30の半径長さはほぼ同一であり、一つのフィン20、30の長さは、プロペラブレード14の長さの約10%〜20%、特に約15%に過ぎないことが分かる。したがって、回転翼フィン30の回転によって描かれる円状軌道の直径31は、プロペラ10の直径16より遥かに小さい。特に、回転翼フィン30の直径31は、プロペラ10の直径16の約25%に過ぎない。互いに類似する半径長さにより、回転翼フィン30の直径31は、固定翼フィン20によって描かれる円状軌道の直径にほぼ対応する。個々の固定翼フィン20は、軸方向にプロペラブレード14のほぼ間近の下流にそれぞれ配列される。
【0026】
図4は、船舶の進行方向15から見たときのプロペラ装置100の後方部に対する断面図である。固定翼本体21は、プロペラハブ11の前方側端部領域11aに配置される。固定翼本体21は、ハブ11に連結される領域でプロペラハブ11の直径と類似する直径を有する。軸方向にさらに進行すると、固定翼本体21はテーパリング部22を有する。テーパリング部は、固定翼本体21の他の領域と同様に円筒状に構成される。したがって、固定翼本体21の階段状の外部輪郭は、テーパリング領域22にわたって側方に突出する外部領域23によって獲得される。連結手段、すなわちボルト24は、外部領域23を通過して案内され、当該連結手段は、プロペラハブ11へと延長され、プロペラハブ11に固定翼本体21を堅固に連結する。固定翼フィン20は、固定翼本体21の外部領域23から半径方向外側に突出する。固定翼フィンは、望ましくは、固定翼本体21と一体型で形成される。固定翼フィン20は、実質的に矩形状の外形を有し、ハブ11から遠く配置される二つのコーナー領域201、202はラウンド状に構成される。固定翼フィン20の前方小領域203は、プロペラハブ11の小領域を超えて突出する。(軸方向において下流から)他側に向かって、固定翼フィン20は、固定翼本体21の外部領域23にほぼ平らに終端する。
【0027】
固定翼本体21のテーパリング部分22は、円周面221及び前方側表面222を有する。プラスチックからなるベアリングスリーブ42は、円周面221に堅固に取り付けられる。青銅で製造される回転翼フィン30のベアリングリング41がベアリングスリーブ42にさらに配置される。全体的な自己潤滑式摩擦ベアリング40が獲得されるように、ベアリングスリーブ42は自己潤滑特性を有する。回転翼フィン30は、ベアリングスリーブ42上でベアリングリング41と共に自由に回転する。ベアリングリング41も自己潤滑式プラスチック材料で形成され、軸方向から見るとプロペラ軸13に対して垂直に配列される二つのベアリングリング43、44に接する。この場合、ベアリングリング43は、固定翼本体21の外部領域部分23の前面に固定されるように配列される。その一方、固定翼本体のテーパリング部22にボルト51によって固定され、前方側表面222に接する端部キャップ50に、ベアリングリング44は固定されるように配列される。したがって、摩擦ベアリング40は、ベアリングスリーブ42、回転翼フィン30が取り付けられるベアリングリング41、及びプロペラ軸13に対して横方向に配列される二つのベアリングリング43、44で構成される。したがって、摩擦ベアリング40は、軸方向及び半径方向組み合わせ型ベアリングとして構成される。
【0028】
回転翼フィン30は実質的に矩形状の外形を有し、プロペラハブ11又は固定翼本体21から遠く配列される二つのコーナー領域301、302はラウンド状に構成される。後方小領域303は、端部キャップ50から突出し、当該端部キャップとほぼ平らに終端する。対向側(軸方向から見ると上流)では、回転翼フィン30の前縁304が固定翼フィンの後縁204のほぼ間近の下流に配置される。すなわち、固定翼フィン20及び回転翼フィン30は、軸方向で互いにすぐ後に続く。また、固定翼フィン20は、プロペラ10から極めて短い距離にのみ配置される。
【0029】
図5は、プロペラブレード14にオフセットされるように配列される固定翼フィン20を備えた、本発明に係るプロペラ装置100の正面図である。周方向で、固定翼フィン20は二つのプロペラブレード14間のほぼ中心に配置される。すなわち、固定翼フィン20は、周方向で、一つのプロペラブレード14から次のプロペラブレード14までに至る距離上に配置される。一つのプロペラブレード14から他のプロペラブレードまでの距離は、周方向で第1のプロペラブレード14aのプロペラブレード中心点CP1から第2のプロペラブレード14bのプロペラブレード中心点CP2までを測定される。固定翼フィン20の中心点CP3が第1のプロペラブレード中心点CP1と第2のプロペラブレード中心点CP2との間の周方向距離上に(又は周方向距離に対して同心線及び平行線上に)配列されるとき、固定翼フィン20は二つのプロペラブレード14a、14b間に配置される。一般的に、中心点CP1、CP2、CP3は、プロペラ軸13の方向から見ると、プロペラブレード14又は固定翼フィン20によってカバーされる領域の幾何中心と定義することができる。しかし、中心点は、プロペラブレード14又は固定翼フィン20の質量中心と定義することもできる。もちろん、他の定義も可能である。したがって、プロペラ軸13と第1のプロペラブレード中心点CP1を通過する第1の線L1、プロペラ軸13と第2のプロペラブレード中心点CP2を通過する第2の線L2、及びプロペラ軸13と固定翼フィン中心点CP3を通過する第3の線L3を仮想する場合、線L1、L2、L3は、プロペラ軸13と直角をなしてそれぞれ半径方向外側に延長され、第1及び第2の線L1、L2の間の第1の角度A1は、第3の線L3によってほぼ同一の値を有する二つの角度、すなわち、第2の角度A2と第3の角度A3とに分割される。ここで、ほぼ同一であるということは、第2の角度A2(又は等価的に補足する角A3)が第1の角度A1の25%〜75%の範囲にあることを意味する。
【0030】
特に、
図1及び
図2では、プロペラハブ11、固定翼本体21、ベアリングリング41及び端部キャップ50を含むシステムのために、全体的に閉鎖された無段(step―free)プロファイルが獲得され、このような点で簡素化されることを確認することができる。
【符号の説明】
【0031】
100:プロペラ装置、10:プロペラ、11:プロペラハブ、11a:ハブ前面、12:シャフトベアリング、13:プロペラ軸、14:プロペラブレード、14a:第1のプロペラブレード、14b:第2のプロペラブレード、15:船舶の移動方向、16:プロペラ直径、20:固定翼フィン、201、201:コーナー領域、203:前方小領域、204:後縁、21:固定翼本体、22:テーパリング、221:円周面、222:前方側表面、23:外部領域、24:ボルト、30:回転翼フィン、301、302:コーナー領域、303:後方小領域、304:前縁、31:回転翼フィンの(円状軌道)直径、40:摩擦ベアリング、41:ベアリングリング、42:ベアリングスリーブ、43、44:ベアリングリング、50:端部キャップ、51:ボルト、CP1:第1のプロペラブレードの中心点、CP2:第2のプロペラブレードの中心点、CP3:固定翼フィンの中心点、L1:第1の中心点を通過する第1の線、L2:第2の中心点を通過する第2の線、L3:第3の中心点を通過する第3の線、A1:第1及び第2線の間に囲まれる角度、A2:第1及び第3の線の間に囲まれる角度、A3:第2及び第3の線の間に囲まれる角度