特許第5770730号(P5770730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770730
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】調節アーム構造部を備えた家具
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/10 20060101AFI20150806BHJP
   E05F 5/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   E05F1/10
   E05F5/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-524997(P2012-524997)
(86)(22)【出願日】2010年8月10日
(65)【公表番号】特表2013-502517(P2013-502517A)
(43)【公表日】2013年1月24日
(86)【国際出願番号】AT2010000291
(87)【国際公開番号】WO2011020130
(87)【国際公開日】20110224
【審査請求日】2013年6月24日
(31)【優先権主張番号】A1306/2009
(32)【優先日】2009年8月20日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルム ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルム,ヨハネス
【審査官】 西村 直史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/077520(WO,A1)
【文献】 独国実用新案第202004019238(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F1/00−13/04、17/00
A47B55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具(4)であって、家具(4)のフラップ(3)のための調節アーム構造部(2)を備えており、該調節アーム構造部(2)は、フラップ(3)を動かすためのレバー構造部(5)と、該フラップ(3)をロックするために閉方向(SR)に作用する主スプリング(7)とを含んでおり、本家具(4)は、閉方向(SR)に前記フラップ(3)押し込むことで該フラップ(3)を開方向(OR)に放出するために自身または前記調節アーム構造部(2)に取り付けられた放出装置(6)をさらに備えており、
前記放出装置(6)の放出動作を支援するために、開方向(OR)に作用し、前記放出装置(6)とは、別体である少なくとも1体の支援スプリング(12)を備えることを特徴としており、
少なくとも押し込まれた閉位置(US)において、前記フラップ(3)に対して開方向(OR)に作用する前記放出装置(6)及び前記支援スプリング(12)のスプリングの付勢力(A、U)は、共同では閉方向(SR)に前記フラップ(3)に作用する前記主スプリング(7)のロック力(Z)よりも大きくなることを特徴とする家具。
【請求項2】
押し込まれた閉位置(US)で開方向(OR)に作用する前記放出装置(6)の前記スプリングの付勢力(A)は、5ニュートン(N)から20ニュートン(N)であり、好適には、12ニュートン(N)から15ニュートン(N)であることを特徴とする請求項1記載の家具。
【請求項3】
前記支援スプリング(12)は、ハウジング(25)内に設置され、該支援スプリング(12)によって導かれるプッシャ(24)を介在させて前記レバー構造部(5)のレバー(10)に作用することを特徴とする請求項1または2記載の家具。
【請求項4】
前記支援スプリング(12)、前記ハウジング(25)及び前記プッシャ(24)は、共同で放出−支援装置(8)を構成し、該放出−支援装置(8)は、前記レバー構造部(5)に連動状態で取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の家具。
【請求項5】
前記放出−支援装置(8)は、前記レバー構造部(5)のレバー(9)に取り付けられ、該レバー構造部(5)の別レバー(10)に作用することを特徴とする請求項4記載の家具。
【請求項6】
前記支援スプリング(12)は、閉時に前記レバー構造部(5)のレバー(10)によって引っ張ることが可能であり、該支援スプリング(12)は、前記フラップ(3)の閉動作を緩衝することもできることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の家具。
【請求項7】
家具(4)のフラップ(3)のための調節アーム構造部(2)であって、
I.フラップ(3)を動かすレバー構造部(5)と、
II.該レバー構造部(5)を介在させて前記フラップに対して閉方向(SR)に作用する主スプリング(7)と、
III.支援スプリング(12)を介在させて付勢され、開方向(OR)に作用し、前記レバー構造部(5)のレバー(10)に接しているか接することができるプッシャ(24)と、を備えており、
前記主スプリング(7)の付勢力の設定は、スプリング調節機構(23)によって調節でき、
前記家具(4)または前記調節アーム構造部(2)に取り付けられた放出装置(6)を支援するために前記支援スプリング(12)のスプリング付勢力(U)のみが前記プッシャ(24)に作用することを特徴とする調節アーム構造部。
【請求項8】
前記プッシャ(24)、前記支援スプリング(12)及びハウジング(25)は、共同で放出−支援装置(8)を構成し、該放出−支援装置(8)は、前記レバー構造部(5)のレバー(9)に取り付けられ、前記プッシャ(24)を介在させて前記レバー構造部(5)の他のレバー(10)に作用することを特徴とする請求項7記載の調節アーム構造部。
【請求項9】
家具(4)のフラップ(3)のための第1タイプの調節アーム構造部(1)と第2タイプの調節アーム構造部(2)とで成るセットであって、それぞれの調節アーム構造部(1、2)は、
I.フラップ(3)を動かすレバー構造部(5)と、
II.前記フラップをロックするために閉方向(SR)に作用する主スプリング(7)と、を含んでおり、
前記主スプリング(7)の付勢力の設定は、スプリング調節機構(23)によって調節でき、
前記第1タイプの調節アーム構造部(1)は、
III.前記フラップ(3)の閉動作を緩衝する緩衝装置(13)をさらに備えており、
前記第2タイプの調節アーム構造部(2)は、前記第1タイプの調節アーム構造部(1)の前記緩衝装置(13)の代用として少なくとも1つの支援スプリング(12)を含んだ放出−支援装置(8)を備えており、該放出−支援装置(8)は、開方向(OR)に作用してプッシャ(24)を付勢し、該プッシャ(24)は、前記レバー構造部(5)のレバー(10)に接しているか接することができ、前記家具(4)または前記調節アーム構造部(1、2)の一方に取り付けられている放出装置(6)を支援するために前記支援スプリング(12)のスプリング付勢力(U)のみが前記プッシャ(24)に作用することを特徴とするセット。
【請求項10】
前記プッシャ(24)と前記支援スプリング(12)は、前記放出−支援装置(8)のハウジング(25)内に設置されているか、ガイドされていることを特徴とする請求項9記載のセット。
【請求項11】
前記第1タイプの調節アーム構造部(1)の前記緩衝装置(13)と、前記第2タイプの調節アーム構造部(2)の前記放出−支援装置(8)は、実質的に同じである全体寸法を有していることを特徴とする請求項9または10に記載のセット。
【請求項12】
請求項7または8に記載の調節アーム構造部を備えていることを特徴とする家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具フラップ(引上げ扉)のための調節アーム構造部を備えた家具に関する。
詳しくは、この調節アーム構造部は、フラップを動かすレバー構造部と、フラップをロックするように閉方向に作用する主スプリングと、フラップを閉方向に押し込むことでフラップを開方向に放出させるよう、家具または調節アーム構造部に取り付けられた放出装置とを含んでいる。
さらに、本発明は、フラップを動かすレバー構造部と、そのレバー構造部を介し、フラップに対して閉方向に作用する主スプリングと、開方向に作用するよう支持スプリングを介して荷重(付勢)され、レバー構造部のレバーに接して設置されるプッシャとを備えた家具フラップ用の調節アーム構造部、並びに家具フラップを動かすための2つの異なるタイプの調節アーム構造部のセットに関する。
【背景技術】
【0002】
調節アーム構造部(上方折畳みブラケット)を備えたそのような家具は、従来から存在している。それらは、ユーザの上方折畳み動作または上昇動作を簡単にするものである。フラップまたは家具の一部の開動作を支援するため、いわゆるノックオン(TIP−ON)機構が利用されてきた。例えば、このノックオン機構は、ボールペン原理で機能する。すなわちフラップを閉じる際に放出部が閉位置にまで押し込まれる。この位置で放出器は、ロックされ(例えばカージオイド)、スプリングで付勢されている放出器は、閉位置の方向に押し込まれることでロック解除される。すなわち閉方向にプレスされてロック解除される。すなわちそのスプリング付勢力が効果を発揮し、放出装置の放出器を開方向に動かす。その結果、押し付けられているフラップまたは家具の一部が開く。
【0003】
この作用原理は、ハンドル部を備えていない重い抽斗や家具扉において非常に便利である。なぜなら比較的に短い自動の開き動作距離の移動後にユーザによる追加支援機構を介さずに完全な開機能が手動で実行できるからである。
【0004】
引き出し型の抽斗や扉の場合とは異なり、この比較的に短い開動作距離(2〜3cm)は、手動による家具フラップの開動作を終了させるには不充分である。なぜなら、このような家具の上方折畳み部は、しばしばアクセスが困難であり、容易に手が届かないからである。従って、上方折畳み動作は、主スプリング及びレバー構造部によって当初の特定な開き角度から支援され、あるいはニュートラルな動きが可能になる。
【0005】
比較的に小型で軽量であるフラップの場合には、主スプリングのロック力は、放出装置のみによって克服(打ち克つこと)が可能である。しかしながら、もし大型で重いフラップであるか、または強力な主スプリングが使用されていると、標準的にはフラップの下方領域に対して約10ニュートンから17ニュートンの力で作用するような放出装置は、フラップに作用する主スプリングのロック力を克服できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、標準型放出装置が利用されている場合に、重くて大型であるフラップであっても開くことができる、従来のものより改良されている家具または調節アーム構造部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、放出装置の放出動作を援助するための、放出装置とは別に、開方向に作用する少なくとも1つの支援スプリングの利用によって達成される。すなわち、少なくとも押し込まれた閉位置において、フラップに対して開方向に作用する放出装置及び支援スプリングのスプリング付勢力(好適には下方フラップ部にて測定)は共同で、閉方向でフラップに作用する主スプリングのロック力(好適には下方フラップ部にて測定)よりも大きい。すなわち、このことは、支援スプリングが主スプリングのロック力を相殺あるいは減少させることを意味する。これで比較的に小さいロック力が標準型放出装置によって克服でき、支援スプリングは、放出装置と共同で十分な作用力/トルクをフラップに適用し、主スプリングのロック力を克服させる。これら2種類の開フラップ力は、共同で、少なくとも約10°から40°の開角度、好適には20°から30°の開角度まではこの領域に作用するロック力に勝るべきである。
【0008】
好適には放出装置は、家具本体の下方領域に取り付けられ、そこで(向上した“てこ(レバー)効果”が発揮されるように)フラップの下方領域に作用するので、これら全ての作用力値は、フラップの下方領域への影響に関係する。特に作用力値は、常に前方のフラップの下側で測定される。
【0009】
従って、これらがレバーを介して運動学的に増強され、あるいは変更されるため、個別のスプリング(主スプリング、放出スプリング、支援スプリング)の純粋な作用力に関しては説明がない。よって、好適な実施態様では、フラップに作用する作用力は、下方フラップ領域、好適には前方の下側で測定される。
【0010】
一般的には、本明細書で解説する少なくとも1つのスプリングが、スプリングとしてではなく、任意タイプの作用力発生要素または弾性要素(液圧装置、モータ、弾性相殺要素)として設計されることを排除するものではない。従って一般的には任意の作用力保存装置が利用できる。好適には閉動作中にこれらに機械的に付勢エネルギーが蓄積される。
【0011】
一好適実施態様に従って、開方向に作用する放出装置のスプリング付勢力は、押し込み閉位置において5ニュートンから20ニュートンであり、好適には10ニュートンから17ニュートンであり、特に好適には12ニュートンから15ニュートンである。上方折り畳み戸棚/家具での利用においては、比較的に小さな放出装置が有利である。さもないと大きなスペースが必要となり、放出時に放出力過多となるであろう。
【0012】
特に好適には、支援スプリングは、ハウジング内に配置され、支援スプリングによって導かれるプッシャを介してレバー構造部のレバーに作用する。よって特定レバーへの作用力伝達を最良化することができる。
【0013】
本発明の一好適実施態様は、支援スプリング、ハウジング及びプッシャに共同で放出−支援装置を形成させる。この装置は、レバー構造部に取り付けられ、連動する。この放出−支援装置は、取り外し及び取り付けが容易な1体のコンポーネントを形成する。すなわちレバー構造部への放出−支援装置の直接的な配置によって、その装置をレバー構造部のレバー上で“浮遊状態”にて設置させる。よって、それはレバー構造部と連動し、主スプリングのロック力に対抗して放出装置よりも長い開扉距離で作用することができる。これは、一好適実施態様において、レバー構造部の1つのレバーに取り付けられ、レバー構造部の別のレバーに作用する放出−支援装置によって達成される。
【0014】
好適には、閉扉時にレバー構造部のレバーによって支援スプリングを付勢し、支援スプリングによってフラップの閉動作を緩衝させることもできる。
【0015】
一般的には、レバー構造部のレバーに作用する支援スプリングを押し込みによってロック解除することを排除するものではない。放出装置と支援スプリングが別々であることによって開方向に作用する2つのスプリングは、家具の異なる点または調節アーム構造部に作用する。
【0016】
さらなる好適実施態様では、開方向に作用する支援スプリングの付勢力を、閉方向に作用する主スプリングのロック力を相殺することによって放出装置の開方向に作用する放出装置の作用力よりも小さな値にする。よって開方向に浮遊状態で設置されている支援構造部は、ロック解除後に放出装置がフラップを支援して開くように設計されている。
【0017】
さらに、本発明は、フラップを動かすためのレバー構造部と、レバー構造部を介して閉方向でフラップに作用する主スプリングと、開方向に作用する支援スプリングを介して付勢され、レバー構造部のレバーに接触して設置され、あるいは設置可能なプッシャとを備えて成る家具フラップ用の調節アーム構造部に関する。
【0018】
一般的に、フラップを動かすレバー構造部と、フラップをロックするために閉方向に作用する主スプリングと、フラップの閉動作を緩衝する緩衝装置とを備えた家具フラップを持ち上げる調節アーム構造部は従来から知られている。よって、スムーズであり、容易に移動するフラップの閉動作、特に最後の閉段階での閉動作が騒音を伴わずに達成される。このような緩衝装置では、開方向に作用する比較的に小型のスプリングが設置されているが、フラップの開動作後にプッシャを押し返すように機能するのみである。一般的には、閉動作中にプッシャは、緩衝媒体によって急速閉動作を防止される。これに反して、開動作時には、このプッシャは、レバーやフラップに影響を及ぼさない。プッシャは、フラップの開動作を援助したり、フラップの開動作に影響を及ぼしたりすることができず、補助スプリングによって単に開方向に動くだけである。
【0019】
従って、このプッシャは、補助スプリングよりも緩衝媒体の作用力によって大きな影響を受ける。このことは、フラップを開く際にプッシャがレバーの動きと歩調を合わせることが全くできないことを意味する。なぜなら影響を受けないレバーの放出動作が緩衝媒体により妨害されるからである。
【0020】
よって、本発明の目的は、従来技術と比較して改善された調節アームの開動作のための支援スプリングを提供することにある。特に、支援スプリングがプッシャを付勢し、最大開位置にまでプッシャが常にレバーに押し付けられているようにしている。
【0021】
この目的は、家具または調節アーム構造部に取り付けられた放出装置を支援する支援スプリングの付勢力のみをプッシャに対して作用させることで達成される。よって支援スプリングは、緩衝媒体の影響を一切受けずにレバー構造部のレバーに対して直接的に作用でき、開動作を支援することができる。
【0022】
1つの好適実施態様によれば、プッシャ、支援スプリング及びハウジングは共同で放出−支援装置を形成し、その装置は、レバー構造部のレバーに取り付けられ、レバー構造部の別のレバーにプッシャを介して作用する。好適には、支援スプリングの純粋な作用力は、主スプリングのロック力を克服しない。このため、追加のノックオン装置/放出装置の調節アーム構造部あるいは家具への取り付けが必要である。一般的には、複数の支援スプリングが調節アーム構造部の同じ単領域または別々の領域に配置されることを排除するものではない。
【0023】
さらに、本発明は、家具フラップのための第1タイプ及び第2タイプの調節アーム構造部で成るセットにも関する。ここでは、それぞれの調節アーム構造部は、フラップを動作させるレバー構造部と、フラップをロックするために閉方向に作用する主スプリングとを含む。ここで第1タイプの調節アーム構造部は、フラップの閉動作を緩衝する緩衝装置を追加的に有する。
【0024】
この追加的な発明の目的は、これら2タイプの調節アーム構造部のための単純な設置方法及び改善された単純な製造方法を提供することである。
【0025】
この目的は、第1タイプの調節アーム構造部の緩衝装置の代わりに、第2タイプの調節アーム構造部が、開方向に作用し、家具または調節アーム構造部の一方に取り付けられた放出装置を支援するためにプッシャを付勢する少なくとも1つの支援スプリングを含んだ放出−支援装置を備えることで達成される。ここでプッシャは、レバー構造部のレバーに押し付けられ、あるいは押し付けが可能であり、支援スプリングの付勢力だけがプッシャに作用する。よって、ほとんどの部材が同一であり、緩衝装置の代わりに放出−支援装置のみが実質的に同じ箇所に配置されている2つの製品を製造業者に製造させることが防止される。
【0026】
このため、この本発明の好適な実施態様では、プッシャと支援スプリングが放出−支援装置のハウジング内に設置または導かれるようにしている。この設計形態の特定の利点は、それら両タイプの調節アーム構造部がほぼ同一であり、製造時に緩衝装置の代わりに支援スプリングがレバー構造部の同一レバーに取り付けられ、少なくとも1つの放出装置が調節アーム構造部自体に、または家具に提供されることである。この点で、好適には第1タイプの調節アーム構造部の緩衝装置と第2タイプの調節アーム構造部の支援スプリングは、実質的に同じサイズである。よって両タイプの残ったレバー構造部または調節アーム構造部の全運動特性は、実質的に変わらず、フラップの軽快な開閉が保証される。従って2つのタイプの調節アーム構造部の製造及び設置の効率は実質的に改善される。
【0027】
本発明の他の目的は、請求項7または8に記載の調節アーム構造部を備えた家具を提供することである。
【0028】
本発明のさらなる詳細及び利点は、本発明の実施例を図示する添付の図面を活用して以下においてさらに詳細に解説されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、タイプ2の家具調節アーム構造部の開動作を順番に示す断面図である。
図2図2は、タイプ2の家具調節アーム構造部の開動作を順番に示す断面図である。
図3図3は、タイプ2の家具調節アーム構造部の開動作を順番に示す断面図である。
図4図4は、タイプ2の家具調節アーム構造部の開動作を順番に示す断面図である。
図5図5は、タイプ2の家具調節アーム構造部の開動作を順番に示す断面図である。
図6図6は、開いた状態の調節アーム構造部を図示する。
図7図7は、家具フラップで測定された個別スプリングの作用力を示す。
図8図8は、家具フラップで測定された個別スプリングの作用力を示す。
図9図9は、家具フラップで測定された個別スプリングの作用力を示す。
図10図10は、家具フラップで測定された個別スプリングの作用力を示す。
図11図11は、家具フラップで測定された個別スプリングの作用力を示す。
図12図12は、タイプ1の調節アーム構造部の閉動作を示す。
図13図13は、タイプ1の調節アーム構造部の閉動作を示す。
図14図14は、タイプ2の調節アーム構造部の開動作を示す。
図15図15は、タイプ2の調節アーム構造部の開動作を示す。
図16図16は、別例のレバー構造を図示する。
図17図17は、別例のレバー構造を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、閉じた家具フラップ3と家具本体14とを備えた家具4を図示する。タイプ2の調節アーム構造部は、固定プレートまたはガイドプレート26で家具本体14の側壁に取り付けられている。このタイプ2の調節アーム構造部は、複数の連結部を介して固定プレート26に接続されたレバー構造部5を有する。このレバー構造部5は、互いに機械構造的または運動学的に接続された8本のレバー9、10、17、18、19、20、21及び22により実質的に構成されている。レバー構造部5を通じて、レバー構造部5の全体及びフラップブラケット27を介して主スプリング7(スプリング構造部)によりロック力が発揮される。一方、主スプリング7は、固定プレート26に接続されている。すなわち家具本体14に固定されており、レバー構造部5のレバーまたは連結部33に接続されている。図1において家具フラップ3は閉位置にある。すなわち開角度αは、0°である。ここでは、図示しないが先の閉扉によって、家具本体14に提供、あるいは押し付けられている放出装置6は、フラップ3によって閉位置SSにある。これは、例えばボールペン原理で機能する。
図1では、放出装置6のプッシャ6a(ここでは図示せず)がカージオイドカム15のカージオイドピン16を介して導かれる。この閉位置SSでは、カージオイドピン16は、カージオイドカム15のロック位置に残る。さらにレバー構造部5のレバー9に取り付けられた放出−支援装置8も図示されている。
【0031】
図2では、家具フラップ3が、ユーザの指による閉方向SRの押し込みによってどのように押し込み閉位置USになるかが図示されている。家具フラップ3は、開角度約−0.5°に対応する開角度α-1となる。従って家具フラップ3は、カージオイドピン16にプッシャ6aを介して作用し、カージオイドカム15のロック位置を離れ、放出装置6の付勢されたプッシャ6aは解放され、あるいは保持されなくなり、フラップ3に対して開方向ORに作用する作用力Aを利用あるいは発揮することができる。
【0032】
このことは図3で明確に示されている。そこではプッシャ6aが家具フラップ3を開位置OS1にしている。この開位置OS1で家具フラップ3の開角度αは、7°である(この角度は、他のサイズのフラップでは異なる)。
図3では、支援スプリング12により付勢されているプッシャ24を介してレバー9に可動に連結されている放出−支援装置8がどのようにレバー10に対して作用し、放出装置6aの開動作をいかに支援するかが図示されている。放出装置6のフラップ3と支援スプリング8に作用する2つの作用力A及びUは、主スプリング7のロック力Zよりも大きい。
【0033】
図4は、主スプリングの開位置OS1と開位置OS2との間で既に弱まっているロック力Zに打ち克つことで、(実質的にスプリング12、ハウジング25及びプッシャ24で成る)放出−支援装置8が、図3で示す開位置OS1から図4で示す開置OS2に家具フラップ3をどのように移動するかを図示する。開位置OS2で開角度αは30°である(この角度はフラップサイズにより定まり、実際には、これより大きいか小さい)。主スプリング7の解放と、レバー構造部5の個別レバーのレバー作用を通し、ほぼこの開位置OS2から始まって非常に小さなロッキング力Zのみが家具フラップ3に対して作用している(図7参照)。対応する均衡力を介し、フラップの重量と主スプリングの位置を考慮して家具フラップ3は、任意の所望位置であるこの位置からニュートラルに保たれる。この開位置OS2から、支援スプリング8の開方向ORに作用する全作用力は、レバー構造部5のレバー10に伝達され、さらにフラップ3に伝達される。
【0034】
主スプリング7の付勢力の設定は、スプリング調節機構23によって調節できる。調節ネジ部28に沿った保持要素29の調節変位(図4及び図5参照)によって、主スプリング7の付勢力Zは、それぞれの条件(フラップ3の重量、レバー構造部5の運動的移動、等々)に合わせることができる。
【0035】
図5は、最大開位置OS3にある家具4の家具フラップ3を示す。ここでは、開角度αは、100°である。プッシャ6aを付勢する放出装置6の放出スプリング11が概略的に図示されている。さらに、3点の関節部30、31、32が図示されており、それらを介してレバー構造部5は、固定プレート26に限定回転式に取り付けられている。
【0036】
開位置OS3にあるタイプ1またはタイプ2の調節アーム構造部を備えた家具4は、図6に図示されている。この図は、タイプ1とタイプ2の両方の調節アーム構造部を示す。レバー構造部5で収容された放出−支援装置8または緩衝装置13の全体的な寸法は、実質的に同一であることが明示されている。一般的にタイプ1からタイプ2の調節アーム構造部に変換するには、緩衝装置13と放出−支援装置8だけが交換されればよい。1以上の放出装置6は、家具本体14の下方領域に提供できる。家具本体のほぼ中央下方領域に設置された中央放出装置6、または家具本体14の側部下方領域のそれぞれの2つの放出装置6が好適である。フラップ3は、図6には図示されていない。その結果、フラップ3に接続できるフラップブラケット27が明確に示されている。
【0037】
家具フラップ3aの下側で測定される作用力曲線は、主スプリング7、支援スプリング12及び放出装置6の作用力の関係で図7から図11にかけて示されている。これら図では、垂直座標軸は、前部下側3aに作用する作用力をニュートンで表す。正のニュートン値は、閉方向SRに作用する作用力Zを示し、負のニュートン値は、開方向ORに作用する作用力A及びUを示す。閉じられたフラップ3の垂直位置から始まり、水平軸は、開角度αを示す。主スプリング7のロック力は、単独にて図7で示すロック力曲線Zによって示される。これより、約40°の開角度αからロック力は、ほぼニュートラル状態であることが分る。よって家具フラップ3は、この開角度範囲において均衡状態に保たれる。開扉角度αに存在する主スプリング7の特定ロック力は、矢印Zαにより約9ニュートンであることが示されている。この点に関しては、図10が参考になる。ここでは、運動的に達成可能な実際のロック力ZISTと、理論的に設定されたロック力ZSOLLとが示される。これら2つのロック力値間の相違は、とりわけ慣性、摩擦、レバー伝達、等々によって具現する。
【0038】
図11では、図10と同様に支援スプリング8の作用力UISTとUSOLLが図示されている。この作用力Uは、開方向ORに作用するときにのみ負のニュートン値を有する。設定された開作用力UISTは、レバー構造部5に取り付けられるとロック力Zに対抗して作用する。この作用は、特に図8で図示されている。そこでは支援スプリング8の作用力Uαは、点線で示す主スプリング7のロック力Zを相殺または低減させる。よって図8の曲線は、支援スプリング8と主スプリング7のみがタイプ2の調節アーム構造部に存在するなら、フラップ3の下側で測定される作用力Z−Uを示す。すなわち図8によれば、支援スプリング8の作用力Uは、フラップ3を開かせるのに充分ではない。
【0039】
しかし、図9によれば、この作用力Uは、放出力Aと一緒になればロック力Zに打ち克つのに十分である。すなわち言い換えると、開角度α(あるいは押し込み位置US及び開角度α-1)における特定の測定作用力値Uα+Aαは、ロック力Zαよりも大きい。好適には、追加された作用力AとUはロック力Zより、少なくとも角度α10°まで大きい。家具フラップ3の容易に走行する開動作は、個別の付勢力の対応した一致により保証される。これは特に小さい負のニュートン値範囲にアレンジされた作用力曲線Z−U−Aから確認できる。従ってフラップの穏やかな開動作が可能になり、急激な開動作は防止される。
【0040】
図12は、タイプ1の調節アーム構造部を備えた家具4を示す。緩衝装置13は、閉方向SRに移動する家具フラップ3を緩衝する。緩衝装置13のプッシャは、レバー19と10を介して付勢され、閉動作を遅くしている。タイプ1の調節アーム構造部は、図13で閉位置にて示されている。
【0041】
一方、図14では、タイプ2の調節アーム構造部が閉位置で示されている。放出−支援装置8の付勢されたスプリング12は、ここでは図示しない主スプリング7のロック力に自身では打ち克てないため、フラップ3の開方向ORでの動作を可能にしている。図15で示すように放出装置6は、家具本体に提供されている(レバーまたは固定プレート26に取り付けることも可能)。これは家具フラップ3を開方向に放出する。このことはロック解除後に放出−支援装置8のスプリング12を支援することで達成される。
【0042】
図16図17は、レバー21と22を示す。これらは、他の図面では別々であるがここでは一体的であり、主スプリング7のためのスプリング調節機構23は、この一体型レバーに取り付けられている。
【0043】
よって、調節アーム構造部、重いフラップを開くための調節アーム構造部、及び調節アーム構造部のセットを備えた家具が本発明によって提供される。特に、ユーザにとって持ち上げ式フラップを備えた家具の重いフラップの開作業が容易になるように設計されている。
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