(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の従来例では、測定器本体の強度を保つことが難しく、筐体の変形による可動測定子への影響、ひいては測定誤差の問題を免れず、強度を強化しようとすれば測定器本体の軽量化が困難である。
この点を改善するために、特許文献2記載の従来例では、筐体内部をハニカム構造に形成し、筐体内に2つのスライド筒を設ける等により強度を強化しているが、構成が複雑となるという問題も生じる。
そこで、簡単な構成で、軽量でありながら測定部の剛性が高く、高精度の測定が可能な測定器の開発が待たれている。
【0006】
本発明は上述のような事情から為されたものであり、その目的は、簡単な構成で、軽量でありながら測定部の剛性が高く、高精度の測定が可能な測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、軽量でありながら測定部の剛性が高く、高精度の測定が可能な測定器の構成を鋭意研究・検討した結果、筐体内に可動測定子移動ロッドを挟んでその移動方向に沿って平行に一対のクロスローラーガイドを配置し、該一対のクロスローラーガイドを介して可動測定子移動ロッドに所定量の予圧を付与することで、測定部の剛性が高く、高精度の測定が可能な上に測定器全体を軽量化できることを見出した。
【0008】
即ち、上記目的を達成するため、本発明は、
中空の筒体から成り、前記筒体の軸に直交する断面の形状が、横幅が縦の長さよりも小さいやや縦長の形状である筐体と、該筐体に備え付けられた寸法表示部と、前記筐体に固定された固定測定子と、前記筐体の基準面に沿って摺動する可動測定子と、前記筐体内に備え付けられ前記可動測定子を前記基準面に沿って摺動させる可動測定子移動ロッドとを有し、前記固定測定子を被測定物に接触させると共に前記可動測定子移動ロッドを前記筺体内で移動させることで前記可動測定子をも前記被測定物に接触させることにより両測定子間の寸法を表示する測定器において、前記筐体は、精密機械加工によりアルミニウム材から一側面側が開放した略コ字状に形成されている本体を有し、該本体は、その中央に形成された溝部と、前記筐体の下面側部の方が上面側部よりも肉厚に形成された肉厚部とを有し、前記溝部と肉厚部の段差を有する前記略コ字状に形成され、該本体の前記溝部に前記可動測定子移動ロッドが収容された測定器であって、前記筐体内に前記可動測定子移動ロッドを挟んでその移動方向に沿って上下に平行に配置した一対のクロスローラーガイドを有し、前記可動測定子移動ロッドが前記一対のクロスローラーガイドを介して長手方向に摺動可能に支持され、前記一対のクロスローラーガイドは、それぞれ前記一対のクロスローラーガイドを介して前記可動測定子移動ロッドに所定量の予圧を付与する調整ネジにより前記本体の肉厚部に固定され、前記本体の両側面には、それぞれアルミニウムより熱伝導率の低い樹脂から成る板材が取り付けボルトにより装着されており、前記可動測定子移動ロッドは、精密機械加工により角部が面取りされた、
前記可動測定子移動ロッドの軸に直交する断面の形状がやや横長の略矩形に形成されており、その上下中央部に、前記クロスローラーガイドとそれぞれ係合するための係合溝が形成されており、前記固定測定子は、前記本体の肉厚部にボルトを介して固着されることにより前記筐体の下面に固定されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の測定器によれば、簡単な構成で、軽量でありながら測定部の剛性が高く、高精度の測定が可能な測定器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態に係る測定器は、ハンドルを操作することにより可動測定子及び固定測定子を機械部材等の被測定物に接触させ、両測定子間の距離を表示部に表示することにより、被測定物の外径、内径及び溝幅等を測定する、いわゆるハンドタイプの測定器である。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る測定器としてのハンド式指示外径測定器の構成を示す図であり、(a)は、その縦断面図、(b)は、その横断面図である。
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る測定器は、可動測定子と固定測定子を被測定物の外から接触させ、両測定子間の距離を表示部に表示することにより、被測定物の外径を測定するハンド式指示外径測定器である。即ち、この測定器100では、
図1(a)に示すように、可動測定子108と固定測定子106は、それぞれの測定端子(プローブ)108P、106Pが内側を向いており、これら測定端子(プローブ)108P、106Pをそれぞれ被測定物の外側から接触させ、両測定子間の距離を表示部に表示することにより、被測定物の外径等を測定する。
この測定器100は、中空の略筒体から成る筐体102と、筐体102に備え付けられた寸法表示部としてのダイヤルゲージ104と、筐体102の下面102Dに固定された固定測定子106と、筐体102の基準面102Sに沿って摺動する可動測定子108と、筐体102内に備え付けられ可動測定子108を基準面102Sに沿って摺動させる可動測定子移動ロッド110とを有し、可動測定子移動ロッド110を筺体102内で移動させることで可動測定子108と固定測定子106を、被測定物の外径に接触させることにより両測定子間の寸法を寸法表示部104に表示するものである。尚、筐体102の上面102Uには測定者が本測定器100を把持して操作するための取手112を備えている。そして、この取手112の前部には測定子解除レバー114が設けられている。
【0013】
さて、本実施形態に係る測定器100は、筐体102内に可動測定子移動ロッド110を挟んでその移動方向に沿って平行に配置した一対のクロスローラーガイド(ローラーゲージ、以下、単にクロスローラーガイドと称する)121、123と、一対のクロスローラーガイド121、123を介して可動測定子移動ロッド110に所定量の予圧を付与する予圧付与手段としての予圧調整ネジ125を有している。
ここで、
図1(b)に示すように、筐体102は、横幅が縦の長さよりも小さい、やや縦長の中空の筒体から構成された外形を有している。より詳細には、筐体102の本体102Mは、一側面側、即ち、
図1(b)での左側が開放した略コ字状に形成され、更にその中央に溝部102Gが形成されている。同図に示すように、この溝部102Gに可動測定子移動ロッド110が収容され、上下に平行に配置した一対のクロスローラーガイド121、123を介して、測定器の長手方向に摺動可能に支持されている。尚、一対のクロスローラーガイド121、123は、それぞれ上記予圧付与手段も兼ねる調整ネジ125により本体102Mの肉厚部102Maに固定されている。尚、筐体102の本体102Mは、アルミニウム材で形成されている。更に、本体102Mの両側面には、アルミニウムより熱伝導率の低い樹脂から成る板材102L、102Rが取り付けボルト(ネジ)102Kにより装着されており、これにより全体として中空の略筒体から成る筐体102を形成している。上述した略コ字状を有する本体102Mは、同図に示すように、筐体102の下面側部102MLの方が上面側部102MUよりも肉厚に形成されている。尚、この筐体102の本体102Mは、精密機械加工により、上述した溝部102Gと肉厚部102Maの段差を有する略コ字状に形成されている。また、可動測定子移動ロッド110は、角部が面取りされた、全体として、やや横長の略矩形に形成されており、上下中央部に、クロスローラーガイド121、123とそれぞれ係合するための係合溝が形成されている。この可動測定子移動ロッド110も、精密機械加工により、上記の係合溝を含めた上述の形状に形成されている。また、固定測定子106は、上述した本体102Mの肉厚部102Maにボルト(ネジ)106Nを介して固着されることにより筐体102の下面102Dに固定されている。
【0014】
一方、筐体102の前端側は、可動空間102Hを形成するように、取り付けネジ102FU、102FLを介して前板102Fが取り付けられている。筐体102の前端側の下面にはスライド孔102Pが形成され、可動測定子108の基端側は、このスライド孔102Pを挿通して筐体102の可動空間102H内で可動測定子移動ロッド110の前端側に連結ネジ108U、108Lを介して連結固定されている。一方、筐体102の本体102M内の後端側には、可動測定子移動ロッド110の後端部に連結され、コイルばね124Cを介して可動測定子移動ロッド110に引っ張り力を付与する引っ張り機構126が設けられている。
具体的には、可動測定子108の基端側には、下梁部108HLが形成され、溝108Gに可動測定子移動ロッド110の先端側が嵌入されており、連結ネジ108Lを介して下梁部108HLに連結固定されている。また、可動測定子108の頂部には係止部108Zが設けられており、この係止部108Zに、上述した取手112の前部に回動自在に枢支された測定子解除レバー114の下端のフック部114Fが係止されており、これにより測定子解除レバー114の解除ボタン114Bに測定者の親指等を掛けて押し戻す操作をすることにより測定子解除レバー114が、下端のフック部114Fが可動測定子108の係止部108Zを前方に押し出すように回動することで、可動測定子108は前方(両測定子間が拡がる方向)に移動し、測定子が被測定部から解除される。一方、前板102Fの中央には孔102FGを介してソケット118が取り付けられている。このソケット118にダイヤルゲージ104のゲージ芯部104Cをチャックされるところまで挿入することにより、ゲージ芯部104Cが可動測定子108のゲージ芯受容ピン108Uに当接するように装着される。尚、本実施形態では、
図1(a)に示すように、ダイヤルゲージ104は、寸法表示面104Dが上側を向くように装着されているが、測定者が見易いように任意の側を向くように、ソケット118に装着可能である。このように、ダイヤルゲージ104の保持は、チャック及びソケット方式を採用しているので、大変使い易い構成となっている。
【0015】
さて、本実施形態の測定器100を使用するには、まず、上述したダイヤルゲージ104の寸法表示面104Dが測定者が見易いよう任意の側を向くように、ソケット118に装着して用いる。そして、測定子解除レバー114の解除ボタン114Bに測定者の親指等を掛けて押し戻す操作をすることにより引っ張り機構126のコイルばね124Cによる可動測定子移動ロッド110に対する引っ張り力に抗して可動測定子108を前方(両測定子間が拡がる方向)に移動させた状態とし、両測定子の測定端子(プローブ)108P、106Pをそれぞれ被測定部の外周面等に外側から当接させ、解除ボタン114Bに加えた力を解除する。これにより、引っ張り機構126の引っ張り力により両測定子の測定端子(プローブ)108P、106Pが被測定部の外周面等に正確に当接した状態となり、被測定部の外径寸法等が両測定子の測定端子(プローブ)108P、106P間の寸法としてイヤルゲージ104の寸法表示面104Dに表示される。尚、図示はしないが、この寸法表示は、寸法表示面104Dに目盛と針によりアナログ的に表示されるが、デジタル的な表示等、その表示方法は様々で良い。表示された寸法を確認した後、上述したのと反対の動作により、両測定子(の測定端子108P、106P)を被測定物から解除して、測定を終了する。
【0016】
以上の構成を有する本実施形態の測定器100では、取手112を備えているので、測定者が持ち運びし易い上に、取手112を握った状態で解除ボタンに指を掛けて操作できるので、大変使い勝手が良い測定器を実現している。また、筐体102はアルミニウム合金の材料により形成され、筐体102内部に、スライド機構を構成する部品である可動測定子移動ロッド110、クロスローラーガイド121、123等を精度良く組み込むために、本体102M等に精密機械加工を施しているので、測定部がスムーズに作動するという顕著な効果を有している。
また、本実施形態では、クロスローラーガイド121、123を可動測定子移動ロッド110を挟んで2列平行に配置することにより、可動測定子108の移動精度及び剛性を高めることが可能となった。更に、両側のクロスローラーガイド121、123により、上述したスライド部品をガタ無く、プリロード(予圧)をかけて動作させることができるので、測定部トータルの剛性が向上し、高精度の測定が可能である。更に、長期間の使用によりスライド部が摩耗した場合でも、クロスローラーガイド121、123の予圧付与手段としての予圧調整ネジ125を調整することで、適正な予圧を付与することができる。また、被測定物に応じて、この予圧量を変更することも可能なので、更に高精度の測定が可能である。また、測定時に測定者が筐体102に手で触れる可能性もあることから、筐体102の両側面をアルミニウムより熱伝導率の低い樹脂から成る板材102L、102Rにより覆っているので、熱膨張による測定誤差も僅少化されている。
更に、本実施形態では、クロスローラーガイド121、123を可動測定子108を挟んで2列平行に配置することで可動測定子108を摺動可能に支持することができるので、筐体102の本体102Mをアルミニウム材等により軽量且つコンパクトに形成することで、測定器100全体の軽量化とコンパクト化に成功している。
【0017】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る測定器としてのハンド式指示内径測定器の構成を示す図であり、(a)は、その縦断面図、(b)は、その横断面図である。本実施形態では、ハンド式指示内径測定器に本発明を適用したが、その主要部分の構成は、上述した第1の実施形態の測定器と同様であるので、同様の部分には同様の参照符号を付して、その説明を省略する。
即ち、本実施形態のハンド式指示内径測定器200は、例えば、パイプ等の内径を測定する場合等に用いられる。この測定器200では、
図2(a)、(b)に示すように、可動測定子208と固定測定子206は、それぞれの測定端子(プローブ)208P、206Pが外側を向いており、これら測定端子(プローブ)208P、206Pをそれぞれパイプ等の内部に挿入し、その内周面等に内側から接触させ、両測定子間の距離を表示部に表示することにより、被測定物の内径等を測定する。一方、筐体102の本体102M内の後端側には、可動測定子移動ロッド110の後端部に連結され、コイルばね224Cを介して可動測定子移動ロッド110に押圧力を付与する押圧機構226が設けられている。
また、測定器200では、取手112の前部には測定子解除レバー214が設けられているが、この測定子解除レバー214の下端のフック部214Fは、上述した第1の実施形態のフック部114Fとは反対の後部側に突起しており、このフック部214Fが可動測定子208の係止部208Zに係止されている。また、測定子解除レバー214の回動軸214Gは、上述した第1の実施形態のものよりも上部に形成されており、この回動軸214Gのやや下側の腕部214Hに、押圧面が斜め上側を向いた解除ボタン214Bを測定者の親指等で下方に押圧する操作をすることにより測定子解除レバー214が、下端のフック部214Fが可動測定子208の係止部208Zを後方に押し戻すように回動することで、可動測定子208は後方(両測定子間が狭まる方向)に移動し、測定子がパイブ等の内周面等から解除される。
【0018】
従って、本実施形態の測定器200を使用するには、まず、上述したダイヤルゲージ104の寸法表示面104Dが測定者が見易いよう任意の側を向くように、ソケット118に装着して用いる。そして、測定子解除レバー214の解除ボタン214Bに測定者の親指等を掛けて押し下げる操作をすることにより押圧機構226のコイルばね224Cによる可動測定子移動ロッド110に対する押圧力に抗して可動測定子208を後方(両測定子間が狭まる方向)に移動させた状態とし、両測定子の測定端子(プローブ)208P、206Pをそれぞれパイプ等の内周面等に内側から当接させ、解除ボタン214Bに加えた力を解除する。これにより、押圧機構226の押圧力により両測定子の測定端子(プローブ)208P、206Pが被測定部の内周面等に正確に当接した状態となり、パイプ等被測定部の内径寸法等が両測定子の測定端子(プローブ)208P、206P間の寸法としてダイヤルゲージ104の寸法表示面104Dに表示される。表示された寸法を確認した後、反対の動作により、両測定子(の測定端子208P、206P)を被測定物から解除して、測定を終了する。
【0019】
以上の点の他は、この測定器200は、上述した第1の実施形態の測定器と同様の構成を有している。即ち、筐体本体102M等をアルミニウム合金に精密機械加工を施して形成し、筐体102内部に、スライド機構を構成する部品を精度良く組み込んでいる。また、クロスローラーガイド121、123を可動測定子208を挟んで2列平行に配置することにより、可動測定子208の移動精度及び剛性を高めると同時に、両側のクロスローラーガイド121、123により、スライド部品をガタ無く、プリロード(予圧)をかけて動作させ得るので、測定部トータルの剛性も向上し、高精度の測定が可能である。更に、長期間の使用によりスライド部が摩耗した場合でも、予圧調整ネジ125を調整することで、クロスローラーガイド121、123により適正な予圧を付与し得る上に、被測定物に応じた予圧量の変更が可能なので、極めて高精度の測定が可能である。また、筐体102の両側面を樹脂から成る板材102L、102Rにより覆い、熱膨張による測定誤差も僅少化される一方、筐体102の本体102Mをアルミニウム材等により軽量且つコンパクトに形成することで、測定器100全体も軽量且つコンパクトなものとなっている。
【0020】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る測定器としてのハンド式指示内径測定器(小径用)としてのパッサメーターの構成を示す図であり、(a)は、その縦断面図、(b)は、その横断面図、(c)は、その透視平面図である。
本実施形態では、ハンド式指示内径測定器(小径用)としてのパッサメーターに本発明を適用したが、クロスローラーガイドを可動測定子を挟んで2列平行に配置する等の中核的構成は、上述した第1及び第2の実施形態の測定器と同様であるので、当該部分の詳しい説明は省略する。
即ち、本実施形態のパッサメーター300は、
図3(a)に示すように、例えば、小径の管状の部材の内周面に形成されたネジ溝の溝径等を測定するのに用いられる。従って、このパッサメーター300では、
図3(a)、(b)、(c)に示すように、可動測定子308と固定測定子306は、それぞれの測定端子(プローブ)308P、306Pが外側を向いており、これら測定端子(プローブ)308P、306Pをそれぞれ上記管状の部材の内部に挿入し、その内周面のネジ溝等に内側から接触させ、両測定子間の距離を表示部に表示することにより、被測定物の内径等を測定する。
【0021】
さて、本実施形態のパッサメーター300は、小径の測定に適すると共に斜めに形成されたネジ溝の溝径等を測定可能とするために、筐体、可動測定子及び固定測定子等の構成は、上述した第1及び第2の実施形態の測定器とは異なる以下の構成を有している。
即ち、本実施形態のパッサメーター300は、
図3(a)、(b)、(c)に示すように、第1及び第2の実施形態の測定器の筐体よりも短く小型の筐体302を備えている。この筐体302には取手は設けられておらず、筐体302の後端部において筐体302からそれぞれ指掛けバー332、334が伸長する構成となっており、測定者は、この指掛けバー332、334に利き手の2本の指をそれぞれ掛けてパッサメーター300を把持しつつ、その手の根元部で可動測定子308の基端部に装着された測定子解除ボタン314Bを押圧操作等することにより可動測定子308及び可動測定子移動ロッド310をスライドさせて用いるようになっている。また、固定測定子306は、その基端部306Mが筐体本体302Mの下面にボルトにより固定されて筐体本体302Mの下面からそのアーム部306Aが斜めに伸長するように構成されている。一方、可動測定子308は、その基端部308Mが可動測定子移動ロッド310の後端部310Bと嵌合しており、ボルトにより可動測定子移動ロッド310の後端部310Bと固定されており、その基端部308Mからそのアーム部308Aが斜めに、且つ、固定測定子306のアーム部306Aと平行に伸長するように構成されている。また、筐体本体302M内の先端部には、可動測定子移動ロッド310の先端部に連結され、コイルばね324Cを介して可動測定子移動ロッド310に後端側方向への押圧力を付与する押圧機構326が設けられている。
【0022】
尚、小径用の内径測定器としての本実施形態のパッサメーター300では、
図3(b)を
図2(b)と比較すれば分かるように、筐体本体302Mは、より幅の狭い小型の構成であり、その肉厚部の肉厚等もより小さい構成となっている。また、
図3(a)、(b)、(c)に示すように、短く小型の筐体302内に短く小型の可動測定子移動ロッド310を摺動可能に支持するために十分な長さ及び支持点から成る小型のクロスローラーガイド321、323を用いているが、それらクロスローラーガイド321、323を上下から可動測定子移動ロッド310を挟んで2列平行に配置する等の構成は、上述した第1及び第2の実施形態の測定器と同様である。
さて、本実施形態のパッサメーター300を使用するには、測定者は、まず指掛けバー332、334に利き手の2本の指をそれぞれ掛けてパッサメーター300を把持しつつ、その手の根元部で可動測定子308の基端部に装着された測定子解除ボタン314Bを押圧操作等することにより押圧機326のコイルばね324Cによる可動測定子移動ロッド310に対する押圧力に抗して可動測定子308及び可動測定子移動ロッド310を前方(両測定子間が狭まる方向)に移動させた状態とし、両測定子の測定端子(プローブ)308P、306Pをそれぞれ小径の管状の部材の内周面に形成されたネジ溝等に内側から当接させ、解除ボタン314Bに加えた力を解除する。これにより、押圧機構326の押圧力により両測定子の測定端子(プローブ)308P、306Pが上記ネジ溝等に正確に当接した状態となり、ネジ溝等の内径寸法等が両測定子の測定端子(プローブ)308P、306P間の寸法としてダイヤルゲージ304の寸法表示面304Dに表示される。表示された寸法を確認した後、反対の動作により、両測定子(の測定端子308P、306P)を被測定物から解除して、測定を終了する。
【0023】
このパッサメーター300においても、上述した第1及び第2の実施形態の測定器と同様に、筐体本体302M等をアルミニウム合金に精密機械加工を施して形成し、筐体302内部に、スライド機構を構成する部品を精度良く組み込んでいる。また、クロスローラーガイド321、323を可動測定子移動ロッド310を挟んで2列平行に配置することにより、可動測定子308の移動精度及び剛性を高めると同時に、両側のクロスローラーガイド321、323により、スライド部品をガタ無く、プリロード(予圧)をかけて動作させ得るので、測定部トータルの剛性も向上し、高精度の測定が可能である。更に、長期間の使用によりスライド部が摩耗した場合でも、予圧調整ネジ325を調整することで、クロスローラーガイド321、323により適正な予圧を付与し得る上に、被測定物に応じた予圧量の変更が可能なので、極めて高精度の測定が可能である。また、筐体302の両側面を樹脂から成る板材302L、302Rにより覆い、熱膨張による測定誤差も僅少化される一方、筐体302の本体302Mをアルミニウム材等により軽量且つコンパクトに形成することで、パッサメーター300全体も軽量且つコンパクトなものとなっている。
図4は、本発明の実施形態に係る測定器と比較例としてのハンド式指示測定器の断面形状(容積率)を比較して示す図であり、(a)は比較例としてリニアローラーガイドを用いてスライド機構を形成したハンド式指示測定器の断面形状(容積率)、(b)は、本発明の実施形態に係る測定器の断面形状(容積率)をそれぞれ示す。尚、スライド機構等の構成の主要部のみを概略的に示し、コイルばね、固定用のボルト等は省略している。即ち、比較例の測定器は、
図4(a)に示すように、リニアローラーガイド404を用いて可動測定子移動ロッド410のスライド機構を構成したものであり、筐体本体402及び可動測定子移動ロッド410の可動空間も大きく設計せざるを得ない。これに対し、本発明の実施形態に係る測定器では、クロスローラーガイド112、113を可動測定子移動ロッド110を挟んで2列平行に配置することでスライド機構を構成したので、
図4(a)と(b)を比較すれば分かるように、本発明の実施形態に係る測定器は、比較例の測定器に比べ、測定器の断面形状で容積率は60%程度に小型化することができ、この結果、重量で30%減程度まで軽量化することに成功している。
即ち、
図4(b)に示す本発明の実施形態に係る測定器では、2つのクロスローラーガイド間(ローラーゲージとローラーゲージとの間)の部品(可動測定子移動ロッド110)を上述した特殊な構造にした事により、部品である可動測定子、コイルばね等を直接可動測定子移動ロッド110に組み込めるので、部品の筐体本体102への組み込みの工数等を減少させ得るだけでなく、スライド機構のコンパクト化を図ることができ、その結果、上述した小型化と軽量化に成功している。
更に、上記のコンパクト化を図ると共に、可動測定子移動ロッド110や筐体本体の摺動面等に高精度加工を行い、高精度を保持しているので、本発明の実施形態に係る測定器では、従来の測定器より高精度の測定が可能である。
尚、
図4には図示していないが、スライド機構にリニアブッシュやボールスプラインを用いたものでは、軌道面がボールでの接触で長期間の使用により摩耗が発生し、測定子のガタにつながり精度維持が困難になる場合もあるが、本発明のクロスローラーガイド方式では、プリロードの調整ができるので、長期間の使用により摩耗が発生しても、その分をプリロードで調整することにより精度を維持可能である。
【0024】
尚、クロスローラーガイドに代えてクロスボールガイドを使用しても、以上に述べた本発明の効果と同様の効果が得られる。
即ち、以上に述べた実施形態では、クロスローラーガイドを可動測定子を挟んで2列平行に配置する構成としたが、クロスローラーガイドの代わりにボールゲージを2列平行に配置する構成でも良く、この場合にも剛性と測定精度並びに軽量化とコンパクト化の面で同様の効果が得られる。
尚、本発明は、ハンド式の測定器だけでなく、筐体内にスライド機構を組み込んで可動測定子を動作させる測定器一般に広く適用することができる。