【文献】
SHINKAWA,T. et al.,The absence of fucose but not the presence of galactose or bisecting N-acetylglucosamine of human IgG1 complex-type oligosaccharides shows the critical role of enhancing antibody-dependent cellular cytotoxicity.,J. Biol. Chem.,2003年 1月31日,Vol.278, No.5,pp.3466-73
【文献】
SHIELDS,R.L. et al.,Lack of fucose on human IgG1 N-linked oligosaccharide improves binding to human Fcgamma RIII and antibody-dependent cellular toxicity.,J. Biol. Chem.,2002年 7月26日,Vol.277, No.30,pp.26733-40
【文献】
LIFELY,M.R. et al.,Glycosylation and biological activity of CAMPATH-1H expressed in different cell lines and grown under different culture conditions.,Glycobiology,1995年12月,Vol.5, No.8,pp.813-22
【文献】
BOYD,P.N. et al.,The effect of the removal of sialic acid, galactose and total carbohydrate on the functional activity of Campath-1H.,Mol. Immunol.,1995年12月,Vol.32, No.17-18,pp.1311-8
【文献】
SHITARA,K. et al.,A new vector for the high level expression of chimeric antibodies in myeloma cells.,J. Immunol. Methods,1994年 1月 3日,Vol.167, No.1-2,pp.271-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0350】
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を示すものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0351】
実施例1.抗ガングリオシドGD3ヒト型キメラ抗体の作製
1.抗ガングリオシドGD3ヒト型キメラ抗体のタンデム型発現ベクターpChiLHGM4の構築
抗ガングリオシドGD3ヒト型キメラ抗体(以下、抗GD3キメラ抗体と表記する)のL鎖の発現ベクターpChi641LGM4[ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(J.Immunol.W Methods),167,271(1994)]を制限酵素MluI(宝酒造社製)とSalI(宝酒造社製)で切断して得られるL鎖cDNAを含む約4.03kbの断片と動物細胞用発現ベクターpAGE107[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]を制限酵素MluI(宝酒造社製)とSalI(宝酒造社製)で切断して得られるG418耐性遺伝子及びスプライシングシグナルを含む約3.40kbの断片をDNA Ligation Kit(宝酒造社製)を用いて連結、大腸菌HB101株[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989]を形質転換してプラスミドpChi641LGM40を構築した。
【0352】
次に、上記で構築したプラスミドpChi641LGM40を制限酵素ClaI(宝酒造社製)で切断後、DNA Blunting Kit(宝酒造社製)を用いて平滑末端化し、更にMluI(宝酒造社製)で切断して得られるL鎖cDNAを含む約5.68kbの断片と抗GD3キメラ抗体のH鎖の発現ベクターpChi641HGM4[ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(J.Immunol.Methods),167,271(1994)]を制限酵素XhoI(宝酒造社製)で切断後、DNA Blunting Kit(宝酒造社製)を用いて平滑末端化し、更にMluI(宝酒造社製)で切断して得られるH鎖cDNAを含む約8.40kbの断片をDNA Ligation Kit(宝酒造社製)を用いて連結、大腸菌HB101株[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Lab.Press New York,1989]を形質転換して抗GD3キメラ抗体のタンデム型発現ベクターpChi641LHGM4を構築した。
【0353】
2.抗GD3キメラ抗体の安定生産細胞の作製
上記実施例1の1項で構築した抗GD3キメラ抗体のタンデム型発現ベクターpChi641LHGM4を各種細胞株に導入し、優良株を選択することで抗GD3キメラ抗体の安定生産細胞を以下のようにして作製した。
【0354】
(1)ラットミエローマYB2/0細胞を用いた生産細胞の作製
抗GD3キメラ抗体発現ベクターpChi641LHGM4の5μgを4×10
6細胞のラットミエローマYB2/0細胞[ATCC CRL−1662、J.V.Kilmarin et al.,J.Cell.Biol.93,576−582(1982)]へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]により導入後、40mlのRPMI1640−FBS(10)[FBS(GIBCO BRL社製)を10%含むRPMI1640培地]に懸濁し、96ウェル培養用プレート(住友ベークライト社製)に200μl/ウェルずつ分注した。
5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を0.5mg/mlになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株のコロニーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗GD3キメラ抗体の抗原結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。
【0355】
培養上清中に抗GD3キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を0.5mg/ml、DHFRの阻害剤であるメソトレキセート(以下、MTXと表記する;SIGMA社製)を50nM含むRPMI1640−FBS(10)培地に1〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(Greiner社製)に2mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。
【0356】
形質転換株の増殖が認められたウェルの培養上清中の抗GD3キメラ抗体の抗原結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。培養上清中に抗GD3キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX濃度を100nM、200nMと順次上昇させ、最終的にG418を0.5mg/ml、MTXを200nMの濃度で含むRPMI1640−FBS(10)培地で増殖可能かつ、抗GD3キメラ抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希釈法による単一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用いた。
【0357】
このようにして得られた抗GD3キメラ抗体を生産する形質転換細胞クローン7−9−51は平成11年4月5日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)(現・独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地 中央第6))にFERM BP−6691として寄託されている。
【0358】
(2)CHO/DG44細胞を用いた生産細胞の作製
抗GD3キメラ抗体発現ベクターpChi641LHGM4の4μgを1.6×10
6細胞のCHO/DG44細胞[G.Urlaub and L.A.Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216−4220(1980)]へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]により導入後、10mlのIMDM−FBS(10)[FBSを10%、HT supplement(GIBCO BRL社製)を1倍濃度で含むIMDM培地]に懸濁し、96ウェル培養用プレート(岩城硝子社製)に200μl/ウェルずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を0.5mg/mlになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株のコロニーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗GD3キメラ抗体の抗原結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。
【0359】
培養上清中に抗GD3キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を0.5mg/ml、MTXを10nM含むIMDM−dFBS(10)培地[透析牛胎児血清(以下、dFBSと表記する;GIBCO BRL社製)を10%含むIMDM培地]に1〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(岩城硝子社製)に0.5mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、10nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。
【0360】
増殖が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX濃度を100nMに上昇させ、最終的にG418を0.5mg/ml、MTXを100nMの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地で増殖可能かつ、抗GD3キメラ抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希釈法による単一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用いた。
【0361】
(3)マウスミエローマNS0細胞を用いた生産細胞の作製
抗GD3キメラ抗体発現ベクターpChi641LHGM4の5μgを4×10
6細胞のマウスミエローマNS0細胞へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133,1990]により導入後、40mlのEX−CELL302−FBS(10)[FBSを10%、L−グルタミン(以下、L−Glnと表記する;GIBCO BRL社製)を2mM含むEX−CELL302培地]に懸濁し、96ウェル培養用プレート(住友ベークライト社製)に200μl/ウェルずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を0.5mg/mlになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株のコロニーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗GD3キメラ抗体の抗原結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。
【0362】
培養上清中に抗GD3キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を0.5mg/ml、MTXを50nM含むEX−CELL302−dFBS(10)培地(dFBSを10%、L−Glnを2mM含むEX−CELL302培地)に1〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(Greiner社製)に2mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。形質転換株の増殖が認められたウェルの培養上清中の抗GD3キメラ抗体の抗原結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。
【0363】
培養上清中に抗GD3キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX濃度を100nM、200nMと順次上昇させ、最終的にG418を0.5mg/ml、MTXを200nMの濃度で含むEX−CELL302−dFBS(10)培地で増殖可能かつ、抗GD3キメラ抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希釈法による単一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用いた。
【0364】
3.抗体のGD3に対する結合活性の測定(ELISA法)
抗体のGD3に対する結合活性は以下のようにして測定した。
4nmolのGD3を10μgのジパルミトイルフォスファチジルコリン(SIGMA社製)と5μgのコレステロール(SIGMA社製)とを含む2mlのエタノール溶液に溶解した。該溶液の20μl(40pmol/ウェルとなる)を96ウェルのELISA用のプレート(Greiner社製)の各ウェルにそれぞれ分注し、風乾後、1%牛血清アルブミン(以下、BSAと表記する;SIGMA社製)を含むPBS(以下、1%BSA−PBSと表記する)を100μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。1%BSA−PBSを捨て、形質転換株の培養上清或いは精製したヒト型キメラ抗体の各種希釈溶液を50μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。
【0365】
反応後、各ウェルを0.05%Tween20(和光純薬社製)を含むPBS(以下、Tween−PBSと表記する)で洗浄後、1%BSA−PBSで3000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(H&L)抗体溶液(American Qualex社製)を二次抗体溶液として、50μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素を1μl/mlで添加した溶液(以下、同様)]を50μl/ウェルで加えて発色させ、415nmの吸光度(以下、OD415と表記する)を測定した。
【0366】
4.抗GD3キメラ抗体の精製(1)YB2/0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例1の2項(1)で得られた抗GD3キメラ抗体を生産する形質転換細胞クローンをBSAを0.2%、MTXを200nM、トリヨードチロニン(以下、T3と表記する;SIGMA社製)を100nMの濃度で含むHybridoma−SFM培地に3×10
5細胞/mlとなるように懸濁し、2.0Lスピナーボトル(岩城硝子社製)を用いて50rpmの速度で攪拌培養した。37℃の恒温室内で10日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗GD3キメラ抗体を精製した。精製した抗GD3キメラ抗体は、YB2/0−GD3キメラ抗体と名付けた。
【0367】
(2)CHO/DG44細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例1の2項(2)で得られた抗GD3キメラ抗体を生産する形質転換細胞クローンをL−Glnを3mM、脂肪酸濃縮液(以下、CDLCと表記する;GIBCO BRL社製)を0.5%、プルロニックF68(以下、PF68と表記する;GIBCO BRL社製)を0.3%の濃度で含むEX−CELL302培地に1×10
6細胞/mlとなるように懸濁し、175mm
2フラスコ(Greiner社製)に50mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で4日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗GD3キメラ抗体を精製した。精製した抗GD3キメラ抗体は、CHO/DG44−GD3キメラ抗体と名付けた。
【0368】
(3)NS0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例1の2項(3)で得られた抗GD3キメラ抗体を生産する形質転換細胞クローンをL−Glnを2mM、G418を0.5mg/ml、MTXを200nM、FBSを1%の濃度で含むEX−CELL302培地に1×10
6細胞/mlとなるように懸濁し、175mm
2フラスコ(Greiner社製)に200mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で4日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗GD3キメラ抗体を精製した。精製した抗GD3キメラ抗体は、NS0−GD3キメラ抗体(302)と名付けた。
【0369】
また、該形質転換細胞クローンをG418を0.5mg/ml、MTXを200nMの濃度で含むGIT培地に3×10
5細胞/mlとなるように懸濁し、175mm
2フラスコ(Greiner社製)に200mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で10日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗GD3キメラ抗体を精製した。精製した抗GD3キメラ抗体は、NS0−GD3キメラ抗体(GIT)と名付けた。
【0370】
(4)SP2/0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
特開平5−304989号公報(EP533199)に記載の抗GD3キメラ抗体を生産する形質転換細胞クローン(KM−871(FERM BP−3512))をG418を0.5mg/ml、MTXを200nMの濃度で含むGIT培地に3×10
5細胞/mlとなるように懸濁し、175mm
2フラスコ(Greiner社製)に200mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で8日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProsep−A(Bioprocessing社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗GD3キメラ抗体を精製した。精製した抗GD3キメラ抗体は、SP2/0−GD3キメラ抗体と名付けた。
【0371】
5.精製した抗GD3キメラ抗体の解析
上記実施例1の4項で得られた各種動物細胞で生産、精製した5種類の抗GD3キメラ抗体の各4μgを公知の方法[ネイチャー(Nature),227,680,1970]に従ってSDS−PAGEし、分子量及び精製度を解析した。その結果を第1図に示した。第1図に示したように、精製した各抗GD3キメラ抗体は、いずれも非還元条件下では分子量が約150キロダルトン(以下、Kdと表記する)の単一のバンドが、還元条件下では約50Kdと約25Kdの2本のバンドが認められた。これらの分子量は、抗体のH鎖及びL鎖のcDNAの塩基配列から推定される分子量(H鎖:約49Kd、L鎖:約23Kd、分子全体:約144Kd)とほぼ一致し、更に、IgG型の抗体は、非還元条件下では分子量は約150Kdであり、還元条件下では分子内のジスルフィド結合(以下、S−S結合と表記する)が切断され、約50Kdの分子量を持つH鎖と約25Kdの分子量を持つL鎖に分解されるという報告[アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1988、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice),Academic Press Limited,1996]と一致し、各抗GD3キメラ抗体が正しい構造の抗体分子として発現され、かつ精製されたことが確認された。
【0372】
実施例2.抗GD3キメラ抗体の活性評価
1.抗GD3キメラ抗体のGD3に対する結合活性(ELISA法)
上記実施例1の4項で得られた5種類の精製抗GD3キメラ抗体のGD3(雪印乳業社製)に対する結合活性を実施例1の3項に示すELISA法により測定した。第2図は、添加する抗GD3キメラ抗体の濃度を変化させて結合活性を検討した結果である。第2図に示したように、5種類の抗GD3キメラ抗体は、ほぼ同等のGD3に対する結合活性を示した。この結果は抗体の抗原結合活性は、抗体を生産する動物細胞やその培養方法に関わらず、一定であることを示している。また、NS0−GD3キメラ抗体(302)とNS0−GD3キメラ抗体(GIT)の比較から抗原結合活性は、培養に用いる培地にも依らず、一定であることが示唆された。
【0373】
2.抗GD3キメラ抗体のin vitro細胞障害活性(ADCC活性)
上記実施例1の4項で得られた5種類の精製抗GD3キメラ抗体のin vitro細胞障害活性を評価するため、以下に示す方法に従い、ADCC活性を測定した。
【0374】
(1)標的細胞溶液の調製
RPMI1640−FBS(10)培地で培養したヒトメラノーマ培養細胞株G−361(ATCC CRL1424)の1×10
6細胞を調製し、放射性物質であるNa
251CrO
4を3.7MBq当量加えて37℃で1時間反応させ、細胞を放射線標識した。反応後、RPMI1640−FBS(10)培地で懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄し、培地に再懸濁し、4℃で30分間氷中に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心分離後、RPMI1640−FBS(10)培地を5ml加え、2×10
5細胞/mlに調製し、標的細胞溶液とした。
【0375】
(2)エフェクター細胞溶液の調製
健常人静脈血50mlを採取し、ヘパリンナトリウム(武田薬品社製)0.5mlを加え穏やかに混ぜた。これをLymphoprep(Nycomed Pharma AS社製)を用いて使用説明書に従い、遠心分離して単核球層を分離した。RPMI1640−FBS(10)培地で3回遠心分離して洗浄後、培地を用いて2×10
6細胞/mlの濃度で再懸濁し、エフェクター細胞溶液とした。
【0376】
(3)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記(1)で調製した標的細胞溶液の50μl(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いで(2)で調製したエフェクター細胞溶液を100μl(2×10
5細胞/ウェル、エフェクター細胞と標的細胞の比は20:1となる)添加した。更に、各種抗GD3キメラ抗体を各最終濃度0.0025〜2.5μg/mlとなるように加え、37℃で4時間反応させた。反応後、プレートを遠心分離し、上清の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。自然解離
51Cr量は、エフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用いて上記と同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
51Cr量は、抗体溶液の代わりに培地のみを、エフェクター細胞溶液の代わりに1規定塩酸を添加し、上記と同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。ADCC活性は下式(II)により求めた。
【0377】
【数1】
【0378】
その結果を第3図に示した。第3図に示したように、5種類の抗GD3キメラ抗体のうち、YB2/0−GD3キメラ抗体が最も高いADCC活性を示し、次いでSP2/0−GD3キメラ抗体、NS0−GD3キメラ抗体、CHO−GD3キメラ抗体の順に高いADCC活性を示した。培養に用いた培地の異なるNS0−GD3キメラ抗体(302)とNS0−GD3キメラ抗体(GIT)では、それらのADCC活性に差は認められなかった。以上の結果は、抗体のADCC活性は、生産に用いる動物細胞によって大きく異なることを示している。その機構としては、抗原結合活性が同等であったことから、抗体のFc領域の構造の差に起因していることが推定された。
【0379】
実施例3.抗ヒトインターロイキン5レセプターα鎖ヒト型CDR移植抗体の作製
1.抗ヒトインターロイキン5レセプターα鎖ヒト型CDR移植抗体の安定生産細胞の作製(1)ラットミエローマYB2/0細胞を用いた生産細胞の作製
国際公開97/10354号に記載の抗ヒトインターロイキン5レセプターα鎖ヒト型CDR移植抗体(以下、抗hIL−5RαCDR移植抗体と表記する)の発現ベクターpKANTEX1259HV3LV0を各種細胞株に導入し、優良株を選択することで抗hIL−5RαCDR移植抗体の安定生産細胞を以下のようにして作製した。
【0380】
抗hIL−5RαCDR移植抗体発現ベクターpKANTEX1259HV3LV0の5μgを4×10
6細胞のラットミエローマYB2/0細胞へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133,1990]により導入後、40mlのRPMI1640−FBS(10)に懸濁し、96ウェル培養用プレート(住友ベークライト社製)に200μl/ウェルずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を0.5mg/mlになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株のコロニーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗hIL−5RαCDR移植抗体の抗原結合活性を実施例3の2項に示すELISA法により測定した。
【0381】
培養上清中に抗hIL−5RαCDR移植抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を0.5mg/ml、MTXを50nM含むRPMI1640−FBS(10)培地に1〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(Greiner社製)に2mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。形質転換株の増殖が認められたウェルの培養上清中の抗hIL−5RαCDR移植抗体の抗原結合活性を実施例3の2項に示すELISA法により測定した。培養上清中に抗hIL−5RαCDR移植抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX濃度を100nM、200nMと順次上昇させ、最終的にG418を0.5mg/ml、MTXを200nMの濃度で含むRPMI1640−FBS(10)培地で増殖可能かつ、抗hIL−5RαCDR移植抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希釈法による単一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用いた。このようにして得られた抗hIL−5RαCDR移植抗体を生産する形質転換細胞クローンNo.3は平成11年4月5日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号)(現・独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地 中央第6))にFERM BP−6690として寄託されている。
【0382】
(2)CHO/dhfr−細胞を用いた生産細胞の作製
国際公開97/10354号に記載の抗hIL−5RαCDR移植抗体発現ベクターpKANTEX1259HV3LV0の4μgを1.6×10
6細胞のCHO/dhfr−細胞へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]により導入後、10mlのIMDM−FBS(10)に懸濁し、96ウェル培養用プレート(岩城硝子社製)に200μl/ウェルずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を0.5mg/mlになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株のコロニーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗hIL−5RαCDR移植抗体の抗原結合活性を実施例3の2項に示すELISA法により測定した。
【0383】
培養上清中に抗hIL−5RαCDR移植抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を0.5mg/ml、MTXを10nM含むIMDM−dFBS(10)培地に1〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(岩城硝子社製)に0.5mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、10nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。増殖が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX濃度を100nM、500nMに上昇させ、最終的にG418を0.5mg/ml、MTXを500nMの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地で増殖可能かつ、抗hIL−5RαCDR移植抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希釈法による単一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用いた。
【0384】
(3)マウスミエローマNS0細胞を用いた生産細胞の作製
ヤラントン(Yarranton)らの方法[バイオ/テクノロジー(BIO/TECHNOLOGY),10,169(1992)]に従い、国際公開97/10354号に記載の抗hIL−5RαCDR移植抗体発現ベクターpKANTEX1259HV3LV0上の抗体H鎖及びL鎖cDNAを用いて抗hIL−5RαCDR移植抗体発現ベクターを作製し、NS0細胞を形質転換し、抗hIL−5RαCDR移植抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株の中から優良株を選択し、2回の限界希釈法による単一細胞化(クローン化)を行った。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として用いた。
【0385】
2.抗体のhIL−5Rαに対する結合活性の測定(ELISA法)
抗体のhIL−5Rαに対する結合活性は以下のようにして測定した。国際公開97/10354号に記載の抗hIL−5Rαマウス抗体KM1257をPBSで10μg/mlの濃度に希釈した溶液の50μlを96ウェルのELISA用のプレート(Greiner社製)の各ウェルにそれぞれ分注し、4℃で20時間反応させた。反応後、1%BSA−PBSを100μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。1%BSA−PBSを捨て、国際公開97/10354号に記載の可溶性hIL−5Rαを1%BSA−PBSで0.5μg/mlの濃度に希釈した溶液を50μl/ウェルで加え、4℃で20時間反応させた。反応後、各ウェルをTween−PBSで洗浄後、形質転換株の培養上清或いは精製したヒト型CDR移植抗体の各種希釈溶液を50μl/ウェルで加え、室温で2時間反応させた。反応後、各ウェルをTween−PBSで洗浄後、1%BSA−PBSで3000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(H&L)抗体溶液(American Qualex社製)を二次抗体溶液として、50μl/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液を50μl/ウェルで加えて発色させ、OD415を測定した。
【0386】
3.抗hIL−5RαCDR移植抗体の精製
(1)YB2/0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例3の1項(1)で得られた抗hIL−5RαCDR移植抗体を生産する形質転換細胞クローンをG418を0.5mg/ml、MTXを200nMの濃度で含むGIT培地に3×10
5細胞/mlとなるように懸濁し、175mm
2フラスコ(Greiner社製)に200mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で8日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりイオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過法を用いて抗hIL−5RαCDR移植抗体を精製した。精製した抗hIL−5RαCDR移植抗体は、YB2/0−hIL−5RCDR抗体と名付けた。
【0387】
(2)CHO/dhfr−細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例3の1項(2)で得られた抗hIL−5RαCDR移植抗体を生産する形質転換細胞クローンをL−Glnを3mM、CDLCを0.5%、PF68を0.3%の濃度で含むEX−CELL302培地に3×10
5細胞/mlとなるように懸濁し、4.0Lスピナーボトル(岩城硝子社製)
を用いて100rpmの速度で攪拌培養した。37℃の恒温室内で10日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりイオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過法を用いて抗hIL−5RαCDR移植抗体を精製した。精製した抗hIL−5RαCDR移植抗体は、CHO/d−hIL−5RCDR抗体と名付けた。
【0388】
(3)NS0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
上記実施例3の1項(3)で得られた抗hIL−5RαCDR移植抗体を生産する形質転換細胞クローンをヤラントン(Yarranton)らの方法[バイオ/テクノロジー(BIO/TECHNOLOGY),10,169(1992)]に従い、培養後、培養上清を回収した。培養上清よりイオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過法を用いて抗hIL−5RαCDR移植抗体を精製した。精製した抗hIL−5RαCDR移植抗体は、NS0−hIL−5RCDR抗体と名付けた。
【0389】
4.精製した抗hIL−5RαCDR移植抗体の解析
上記実施例3の3項で得られた各種動物細胞で生産、精製した3種類の抗hIL−5RαCDR移植抗体の各4μgを公知の方法[ネイチャー(Nature),227,680(1970)]に従ってSDS−PAGEし、分子量及び精製度を解析した。その結果を第4図に示した。第4図に示したように、精製した各抗hIL−5RαCDR移植抗体は、いずれも非還元条件下では分子量が約150Kdの単一のバンドが、還元条件下では約50Kdと約25Kdの2本のバンドが認められた。これらの分子量は、抗体のH鎖及びL鎖のcDNAの塩基配列から推定される分子量(H鎖:約49Kd、L鎖:約23Kd、分子全体:約144Kd)とほぼ一致し、更に、IgG型の抗体は、非還元条件下では分子量は約150Kdであり、還元条件下では分子内のS−S結合が切断され、約50Kdの分子量を持つH鎖と約25Kdの分子量を持つL鎖に分解されるという報告[アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1988、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies:Principles and Practice),Academic PressLimited,1996]と一致し、各抗hIL−5RαCDR移植抗体が正しい構造の抗体分子として発現され、かつ、精製されたことが確認された。
【0390】
実施例4.抗hIL−5RαCDR移植抗体の活性評価
1.抗hIL−5RαCDR移植抗体のhIL−5Rαに対する結合活性(ELISA法)
上記実施例3の3項で得られた3種類の精製抗hIL−5RαCDR移植抗体のhIL−5Rαに対する結合活性を実施例3の2項に示すELISA法により測定した。第5図は、添加する抗hIL−5RαCDR移植抗体の濃度を変化させて結合活性を検討した結果である。第5図に示したように、3種類の抗hIL−5RαCDR移植抗体は、ほぼ同等のhIL−5Rαに対する結合活性を示した。この結果は実施例2の1項の結果と同様に、抗体の抗原結合活性は、抗体を生産する動物細胞やその培養方法に関わらず、一定であることを示している。
【0391】
2.抗hIL−5RαCDR移植抗体のin vitro細胞障害活性(ADCC活性)
上記実施例3の3項で得られた3種類の精製抗hIL−5RαCDR移植抗体のin vitro細胞障害活性を評価するため、以下に示す方法に従い、ADCC活性を測定した。
【0392】
(1)標的細胞溶液の調製
国際公開97/10354号に記載のhIL−5Rα鎖及びβ鎖を発現しているマウスT細胞株CTLL−2(h5R)をRPMI1640−FBS(10)培地で培養し、1×10
6細胞/0.5mlとなるように調製し、放射性物質であるNa
251CrO
4を3.7MBq当量加えて37℃で1.5時間反応させ、細胞を放射線標識した。反応後、RPMI1640−FBS(10)培地で懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄し、培地に再懸濁し、4℃で30分間氷中に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心分離後、RPMI1640−FBS(10)培地を5ml加え、2×10
5細胞/mlに調製し、標的細胞溶液とした。
【0393】
(2)エフェクター細胞溶液の調製
健常人静脈血50mlを採取し、ヘパリンナトリウム(武田薬品社製)0.5mlを加え穏やかに混ぜた。これをPolymorphprep(Nycomed Pharma
AS社製)を用いて使用説明書に従い、遠心分離して単核球層を分離した。RPMI1640−FBS(10)培地で3回遠心分離して洗浄後、培地を用いて9×10
6細胞/mlの濃度で再懸濁し、エフェクター細胞溶液とした。
【0394】
(3)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記(1)で調製した標的細胞溶液の50μl(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いで(2)で調製したエフェクター細胞溶液を100μl(9×10
5細胞/ウェル、エフェクター細胞と標的細胞の比は90:1となる)添加した。更に、各種抗hIL−5RαCDR移植抗体を各最終濃度0.001〜0.1μg/mlとなるように加え、37℃で4時間反応させた。反応後、プレートを遠心分離し、上清の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。自然解離
51Cr量は、エフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用いて上記と同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
51Cr量は、抗体溶液の代わりに培地のみを、エフェクター細胞溶液の代わりに1規定塩酸を添加し、上記と同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。ADCC活性は前記式(II)により求めた。
【0395】
その結果を第6図に示した。第6図に示したように、3種類の抗hIL−5RαCDR移植抗体のうち、YB2/0−hIL−5RCDR抗体が最も高いADCC活性を示し、次いでCHO/d−hIL−5RCDR抗体、NS0−hIL−5RCDR抗体の順に高いADCC活性を示した。以上の結果は実施例2の2項の結果と同様に、抗体のADCC活性は、生産に用いる動物細胞によって大きく異なることを示している。更に、2種類のヒト化抗体のいずれの場合もYB2/0細胞で生産した抗体が最も高いADCC活性を示したことから、YB2/0細胞を用いることにより、ADCC活性の高い抗体を製造できることが明らかとなった。
【0396】
3.抗hIL−5RαCDR移植抗体のin vivoにおける活性評価
上記実施例3の3項で得られた3種類の精製抗hIL−5RαCDR移植抗体のin vivoにおける活性を評価するため、以下に示す方法に従い、カニクイザルのhIL−5誘発好酸球増加モデルに対する抑制作用を検討した。カニクイザルに初日よりhIL−5(調製方法は国際公開97/10354号に記載)を1μg/kgで1日1回、計14回背部皮下より投与した。各種抗hIL−5RαCDR移植抗体を0日のhIL−5の投与1時間前に0.3mg/kgで静脈内に単回投与した。抗体非投与群をコントロールとして用いた。抗体投与群は各群3頭(No.301、No.302、No.303、No.401、No.402、No.403、No.501、No.502、No.503)、抗体非投与群は2頭(No.101、No.102)のカニクイザルを用いた。投与開始の7日前より投与後42日目まで経時的に約1mlの血液を伏在静脈または大腿静脈より採取し、1μlの末梢血中の好酸球数を測定した。
その結果を第7図に示した。第7図に示したように、YB2/0−hIL−5RCDR抗体を投与した群では、血中好酸球の増加が完全に抑制された。一方、CHO/d−hIL−5RCDR抗体の投与群では、1頭で完全な抑制作用が認められたものの、2頭ではその抑制作用は不充分であった。NS0−hIL−5RCDR抗体の投与群では、完全な抑制作用は認められず、その効果は不充分であった。
【0397】
以上の結果は、抗体のin vivo活性は、生産に用いる動物細胞によって大きく異なることを示している。更に、抗hIL−5RαCDR移植抗体ではそのin vivo活性の高さは、実施例4の2項で述べたADCC活性の高さと正の相関が認められたことから、その活性発現には、ADCC活性の高さが極めて重要であることが示唆された。
以上の結果から、ADCC活性の高い抗体は、ヒトの各種疾患の臨床においても有用であることが期待される。
【0398】
実施例5.ADCC活性を高める糖鎖の解析
1.2−アミノピリジン標識糖鎖(PA化糖鎖)の調製
本発明のヒト化抗体を塩酸による酸加水分解にてシアル酸を除去した。塩酸を完全に除去した後、ヒドラジン分解により糖鎖をタンパク質から切断した[メソッズ・オブ・エンザイモロジー(Method of Enzymology),83,263,1982]。ヒドラジンを除去した後、酢酸アンモニウム水溶液と無水酢酸加えてN−アセチル化を行った。凍結乾燥後、2−アミノピリジンによる蛍光標識を行った[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),95,197(1984)]。蛍光標識した糖鎖(PA化糖鎖)を、Surperdex Peptide HR 10/30カラム(Pharmacia社製)を用いて不純物と分離した。糖鎖画分を遠心濃縮機にて乾固させ、精製PA化糖鎖とした。
【0399】
2.精製抗hIL−5RαCDR移植抗体のPA化糖鎖の逆相HPLC分析
上記実施例5の1項の方法で実施例3で作製された各種抗hIL−5RCDR抗体についてPA化糖鎖を行った後、CLC−ODSカラム(Shimadzu社製)による逆相HPLC分析を行った。過剰量のα−L−フコシダーゼ(ウシ腎由来、SIGMA社製)をPA化糖鎖に添加して消化を行い(37℃、15時間)、逆相HPLCで分析した(第8図)。アスパラギン結合糖鎖は30分間から80分間の範囲に溶出することをTaKaRa社製PA化糖鎖スタンダードを用いて確認した。α−L−フコシダーゼ消化によって、逆相HPLCの溶出位置が移動する糖鎖(48分間から78分間に溶出される糖鎖)の全体に占める割合を計算した。結果を第1表に示す。
【0400】
【表1】
【0401】
YB2/0細胞で生産させた抗hIL−5RCDR移植抗体は約47%、NS0細胞で生産させた抗hIL−5RCDR移植抗体は約73%がNグリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合した糖鎖(以下、「α−1,6−フコースを持つ糖鎖」とも表記する)であった。よって、YB2/0細胞で生産した抗体は、NS0細胞で生産した抗体と比較してN−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースが結合していない糖鎖(以下、単に、「α−1,6−フコースを持たない糖鎖」と表記する)の割合がα−1,6−フコースを持たない糖鎖が多かった。
【0402】
3.精製抗hIL−5RαCDR移植抗体の単糖組成分析
トリフルオロ酢酸による酸加水分解により、YB2/0細胞、NS0細胞およびCHO/d細胞で生産した抗hIL−5RαCDR移植抗体の糖鎖を単糖に分解し、BioLC(Dionex社製)を用いて単糖組成分析を行った。N−グリコシド結合糖鎖のうち、コンプレックス型では、1本の糖鎖におけるマンノース数は3であるため、マンノースを3として計算した場合の各単糖の相対比を第2表に示す。
【0403】
【表2】
【0404】
フコースの相対比は、YB2/0<CHO/d<NS0であり、本結果でもYB2/0細胞で生産した抗体の糖鎖はフコース含量が最も低かった。
【0405】
4.CHO/dhfr−細胞生産抗体の糖鎖解析
CHO/dhfr−細胞で生産した精製抗hIl−5RαCDR移植抗体からPA化糖鎖を調製し、CLC−ODSカラム(島津社製)を用いて逆相HPLC分析を行った(第9図)。第9図において、溶出時間35〜45分間がフコースを持たない糖鎖、45〜60分間がフコースを持つ糖鎖であった。CHO/dhfr−細胞で生産した抗hIl−5RαCDR移植抗体は、マウスミエローマNS0細胞で生産させた抗体と同様に、ラットミエローマYB2/0細胞で生産させた抗体よりもフコースを持たない糖鎖の含量が少なかった。
【0406】
実施例6.高ADCC活性抗体の分離
フコースを持つ糖鎖に結合するレクチンカラムを用いて、ラットミエローマYB2/0細胞で生産させた抗hIl−5RαCDR移植抗体の分離を行った。HPLCは島津社製LC−6Aを用い、流速は1ml/分、カラム温度は室温で行った。50mMトリス−硫酸緩衝液(pH7.3)で平衡化し、精製された抗hIL−5RαCDR移植抗体を注入後、0.2Mα−メチルマンノシド(ナカライテスク社製)の直線濃度勾配(60分間)にて溶出した。抗hIl−5RαCDR移植抗体を非吸着画分と吸着画分とに分離した。非吸着画分、吸着画分の一部をとり、hIL−5Rαに対する結合活性を測定すると、同様の結合活性を示した(10A図)。ADCC活性を測定すると、非吸着画分の方が吸着画分の一部よりも高い(100〜1000倍)ADCC活性を示した(10B図)。さらに、非吸着画分、吸着画分の一部からPA化糖鎖を調製し、CLC−ODSカラム(島津社製)を用いて逆相HPLC分析を行った(第11図)。非吸着画分は主としてフコースのない糖鎖をもつ抗体であり、吸着画分の一部は主としてフコースがある糖鎖もつ抗体であった。
【0407】
実施例7.α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗GD3キメラ抗体の活性評価
1.α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗GD3キメラ抗体の調製
実施例1の2項(1)に記載した方法に従って、抗GD3キメラ抗体を生産するYB2/0細胞由来の形質転換クローンを得た。それぞれのYB2/0細胞由来の形質転換クローンより抗体を調製し、それぞれをロット1、ロット2、ロット3とした。抗GD3キメラ抗体ロット1、ロット2、ロット3の糖鎖分析を、実施例11の(6)の方法に従って行った結果、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、それぞれ50%、45%、29%であった。以下、これらの試料を、抗GD3キメラ抗体(50%)、抗GD3キメラ抗体(45%)、抗GD3キメラ抗体(29%)と表記する。
【0408】
また、実施例1の2項(2)で調製したCHO/DG44細胞由来の抗GD3キメラ抗体の糖鎖分析を実施例11の(6)の方法に従って行った結果、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、7%であった。以下、本試料を抗GD3キメラ抗体(7%)と表記する。
【0409】
さらに、抗GD3キメラ抗体(45%)と抗GD3キメラ抗体(7%)を用い、抗GD3キメラ抗体(45%):抗GD3キメラ抗体(7%)=5:3および1:7の割合で混合した。これらの試料を、実施例11の(6)の方法に従って糖鎖分析を行った結果、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が24%および13%(分析値)であった。これらを以下、抗GD3キメラ抗体(24%)、抗GD3キメラ抗体(13%)と表記する。
【0410】
第12図には、各試料の糖鎖分析の結果を示した。α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、2回の糖鎖分析の結果を平均した値を用いた。
【0411】
2.GD3に対する結合活性の評価(ELISA法)
実施例7の1項で調製したα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる6種類の抗GD3キメラ抗体のGD3(雪印乳業社製)に対する結合活性は、実施例1の3項に示すELISA法により測定した。その結果、第13図に示したように、6種類の抗GD3キメラ抗体は、いずれも同等のGD3に対する結合活性を示し、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、抗体の抗原結合活性に影響を与えないことが明らかとなった。
【0412】
3.ヒトメラノーマ細胞株に対するADCC活性の評価
抗GD3キメラ抗体のヒトメラノーマ細胞株G−361(ATCC CRL1424)に対するADCC活性は、以下のようにして測定した。
【0413】
(1)標的細胞溶液の調製
ヒトメラノーマ細胞株G−361の1×10
6細胞を調製し、放射性物質であるNa
251CrO
4を3.7MBq当量加えて37℃で1時間反応させ、細胞を放射線標識した。反応後、培地を用いた懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄し、培地に再懸濁し、4℃で30分間氷中に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心分離後、培地を5mL加え、2×10
5細胞/mLに調製し、標的細胞溶液とした。
【0414】
(2)ヒトエフェクター細胞溶液の調製
健常人末梢血50mLを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)を0.5mLを加え穏やかに混ぜた。これをLymphoprep(AXIS SHIELD社製)を用いて使用説明書に従い、遠心分離(800g、20分間)して単核球層を分離した。培地で3回遠心分離(1200rpm、5分間)して洗浄後、培地を用いて2×10
6細胞/mLの濃度で再懸濁し、ヒトエフェクター細胞溶液とした。
【0415】
(3)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記(1)で調製した標的細胞溶液の50μL(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いで上記(2)で調製したヒトエフェクター細胞溶液を100μL(2×10
5細胞/ウェル、ヒトエフェクター細胞と標的細胞の比は20:1となる)添加した。さらに、抗GD3キメラ抗体を各最終濃度0.0005〜5μg/mLとなるように加え、37℃で4時間反応させた。反応後、プレートを遠心分離し、上清中の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。自然解離
51Cr量は、ヒトエフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用いて上記と同様の操作を行い、上清中の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
51Cr量は、抗体溶液の代わりに培地のみを、ヒトエフェクター細胞溶液の代わりに1mol/Lの塩酸溶液を添加し、上記と同様の操作を行い、上清中の
51Cr量を測定することにより求めた。細胞障害活性(%)は前記式(II)により求めた。
【0416】
第14図および第15図には、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる6種類の抗GD3キメラ抗体の各種濃度(0.0005〜5μg/mL)におけるADCC活性を2名の健常人ドナー(A、B)のエフェクター細胞を用いて測定した結果をそれぞれ示した。第14図および第15図に示したように、抗GD3キメラ抗体のADCC活性は、いずれの抗体濃度においてもα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合に比例して上昇する傾向を示した。抗体濃度が低ければ、ADCC活性は低下する。抗体濃度が0.05μg/mlでは、α−1,6−フコースを持たない糖鎖が24%、29%、45%および50%のADCC活性はほぼ同様の高い活性を示したが、α−1,6−フコースを持たない糖鎖が20%未満の抗体である、13%および7%では、ADCC活性は低かった。本結果は、エフェクター細胞のドナーが異なっても同様であった。
【0417】
実施例8.α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗CCR4キメラ抗体の活性評価
1.抗CCR4キメラ抗体の安定生産細胞の作製
国際公開01/64754号記載の抗CCR4キメラ抗体のタンデム型発現ベクターpKANTEX2160を用いて抗CCR4キメラ抗体の安定生産細胞を以下のようにして作製した。
【0418】
(1)ラットミエローマYB2/0細胞を用いた生産細胞の作製
10μgの抗CCR4キメラ抗体発現ベクターpKANTEX2160を4×10
6細胞のラットミエローマYB2/0細胞(ATCC CRL1662)へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]により導入後、40mLのHybridoma−SFM−FBS(5)[FBS(PAAラボラトリーズ社製)を5%含むHybridoma−SFM培地(インビトロジェン社製)]に懸濁し、96ウェル培養用プレート(住友ベークライト社製)に200μL/ウェルずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、G418を1mg/mLになるように添加して1〜2週間培養した。G418耐性を示す形質転換株のコロニーが出現し、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗CCR4キメラ抗体の抗原結合活性を実施例8の2項記載のELISA法により測定した。
【0419】
培養上清中に抗CCR4キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、G418を1mg/mL、DHFRの阻害剤であるMTX(SIGMA社製)を50nM含むHybridoma−SFM−FBS(5)培地に1〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(Greiner社製)に1mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。形質転換株の増殖が認められたウェルの培養上清中の抗CCR4キメラ抗体の抗原結合活性を実施例8の2項記載のELISA法により測定した。
【0420】
培養上清中に抗CCR4キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX濃度を上昇させ、最終的にMTXを200nMの濃度で含むHybridoma−SFM−FBS(5)培地で増殖可能かつ、抗CCR4キメラ抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株について、2回の限界希釈法による単一細胞化(クローン化)を行い、得られたクローン化株をKM2760#58−35−16と名付けた。尚、実施例9に示すα−1,6−フコシルトランスフェラーゼの遺伝子の転写物の定量法を用い、該転写物の量が比較的低い株を優良株として選択し用いた。
【0421】
(2)CHO/DG44細胞を用いた生産細胞の作製
抗CCR4キメラ抗体発現ベクターpKANTEX2160の4μgを1.6×10
6細胞のCHO/DG44細胞へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]により導入後、10mlのIMDM−dFBS(10)−HT(1)[dFBS(インビトロジェン社製)を10%、HT supplement(インビトロジェン社製)を1倍濃度で含むIMDM培地(インビトロジェン社製)]に懸濁し、96ウェル培養用プレート(岩城硝子社製)に100μl/ウェルずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃、24時間培養した後、IMDM−dFBS(10)(透析FBSを10%で含むIMDM培地)に培地交換し、1〜2週間培養した。HT非依存的な増殖を示す形質転換株のコロニーが出現したため、増殖の認められたウェルより培養上清を回収し、上清中の抗CCR4キメラ抗体の発現量を実施例8の2項記載のELISA法により測定した。
【0422】
培養上清中に抗CCR4キメラ抗体の生産が認められたウェルの形質転換株については、DHFR遺伝子増幅系を利用して抗体生産量を増加させる目的で、MTXを50nM含むIMDM−dFBS(10)培地に1〜2×10
5細胞/mlになるように懸濁し、24ウェルプレート(岩城硝子社製)に0.5mlずつ分注した。5%CO
2インキュベーター内で37℃で1〜2週間培養して、50nM MTX耐性を示す形質転換株を誘導した。増殖が認められたウェルの形質転換株については、上記と同様の方法により、MTX濃度を200nMに上昇させ、最終的にMTXを200nMの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地で増殖可能かつ、抗CCR4キメラ抗体を高生産する形質転換株を得た。得られた形質転換株は5−03株と名付けた。
【0423】
2.抗体CCR4部分ペプチドに対する結合活性(ELISA法)
抗CCR4キメラ抗体が反応し得るヒトCCR4細胞外領域ペプチドとして化合物1(配列番号25)を選択した。ELISA法による活性測定に用いるため、以下の方法でBSA(Bovine Serum Albumin)(ナカライテスク社製)とのコンジュゲートを作製し、抗原として用いた。すなわち、10mgのBSAを含むPBS溶液900 mLに、100mlの25mg/mL SMCC[4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシリックアシッドN−ヒドロキシサクシンイミドエステル](シグマ社製)−DMSO溶液をvortexしながら滴下し、30分間ゆっくりと攪拌した。25 mL PBSで平衡化したNAP−10カラムなどのゲルろ過カラムに反応液1mLをアプライし、1.5mLのPBSで溶出させた溶出液をBSA−SMCC溶液とした(A
280測定からBSA濃度を算出)。次に、0.5mgの化合物1に250mL PBSを加え、次いで250mL DMFを加えて完全に溶解させた後、前述のBSA−SMCC溶液(BSA換算1.25mg)をvortex下で添加して3時間ゆっくり攪拌した。反応液をPBSに対して4℃、一晩透析し、最終濃度0.05%となるようにアジ化ナトリウムを添加して、0.22mmフィルターでろ過した後BSA−化合物1溶液とした。
【0424】
96穴のEIA用プレート(グライナー社)に、上述のように調製したコンジュゲートを0.05μg/mL、50μl/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、1%BSA−PBSを100μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。各ウェルを0.05%Tween20を含むPBS(以下、Tween−PBSと表記する)で洗浄後、形質転換株の培養上清を50μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、各ウェルをTween−PBSで洗浄後、1%BSA−PBSで6000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(γ)抗体溶液(American Qualex社製)を二次抗体溶液として、それぞれ50μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液を50μL/ウェルで加えて発色させ、20分後に5%SDS溶液を50μL/ウェル加えて反応を停止した。その後OD415を測定した。実施例8の1項で得られた抗CCR4キメラ抗体は、CCR4に対する結合活性を示した。
【0425】
3.抗CCR4キメラ抗体の精製
(1)YB2/0細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
実施例8の1項(1)で得られた抗CCR4キメラ抗体を発現する形質転換細胞クローンKM2760#58−35−16を200nM MTX、Daigo’s GF21(和光純薬製)を5%の濃度で含むHybridoma−SFM(インビトロジェン社製)培地に2×10
5細胞/mlとなる様に懸濁し、スピナーボトル(岩城硝子社製)を用いて37℃の恒温室内でFed−Batch攪拌培養した。8−10日間培養して回収した培養上清より、Prosep−A(ミリポア社製)カラム及びゲルろ過法を用いて、抗CCR4キメラ抗体を精製した。精製した抗CCR4キメラ抗体をKM2760−1と名づけた。
【0426】
(2)CHO/DG44細胞由来の生産細胞の培養及び抗体の精製
実施例8の1項(2)で得られた抗CCR4キメラ抗体を生産する形質転換細胞株5−03株をIMDM−dFBS(10)培地中で、182cm
2フラスコ(Greiner社製)にて5%CO
2インキュベーター内で37℃にて培養した。数日後、細胞密度がコンフルエントに達した時点で培養上清を除去し、25mlのPBSバッファーにて細胞を洗浄後、EXCELL301培地(JRH社製)を35ml注入した。5%CO
2インキュベーター内で37℃にて7日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProsep−A(ミリポア社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗CCR4キメラ抗体を精製した。精製した抗CCR4キメラ抗体はKM3060と名付けた。
【0427】
KM2760−1およびKM3060のCCR4に対する結合活性を実施例8の2項記載のELISAにより測定した結果、同等の結合活性を示した。
【0428】
4.精製した抗CCR4キメラ抗体の解析
本実施例1項で得られた各種動物細胞で生産、精製した2種類の抗CCR4キメラ抗体の各4μgを公知の方法[ネイチャー(Nature),227,680,1970]に従ってSDS−PAGEし、分子量及び製精度を解析した。精製した各抗CCR4キメラ抗体は、いずれも非還元条件下では分子量が約150Kdの単一のバンドが、還元条件下では約50Kdと約25Kdの2本のバンドが認められた。これらの分子量は、抗体のH鎖及びL鎖のcDNAの塩基配列から推定される分子量(H鎖:約49Kd、L鎖:約23Kd、分子全体:約144Kd)とほぼ一致し、更に、IgG型の抗体は、非還元条件下では分子量は約150Kdであり、還元条件下では分子内のS−S結合が切断され、約50Kdの分子量を持つH鎖と約25Kdの分子量を持つL鎖に分解されるという報告[アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1988、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice),
Academic Press Limited,1996]と一致し、抗CCR4キメラ抗体が正しい構造の抗体分子として発現され、かつ精製されたことが確認された。
【0429】
5.α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗CCR4キメラ抗体の調製
実施例8の3項(1)で調製した、YB2/0細胞由来の抗CCR4キメラ抗体KM2760−1と、実施例8の3項(2)で調製した、CHO/DG44細胞由来の抗CCR4キメラ抗体KM3060の糖鎖分析を、実施例11の(6)の方法に従って行った。α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、KM2760−1は87%、KM3060は8%であった。以下、これらの試料を、抗CCR4キメラ抗体(87%)、抗CCR4キメラ抗体(8%)と表記する。
【0430】
さらに、抗CCR4キメラ抗体(87%)と抗CCR4キメラ抗体(8%)を用い、抗CCR4キメラ抗体(87%):抗CCR4キメラ抗体(8%)=1:39、16:67、22:57、32:47、42:37の割合で混合した。これらの試料を実施例11の(6)の方法にしたがって糖鎖分析を行なった。α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、それぞれ9%、18%、27%、39%、46%であった。以下、これらの試料を抗CCR4キメラ抗体(9%)、抗CCR4キメラ抗体(18%)、抗CCR4キメラ抗体(27%)、抗CCR4キメラ抗体(39%)、抗CCR4キメラ抗体(46%)と表記する。
【0431】
第16図には、各試料の糖鎖分析の結果を示した。α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、2回の結果を平均した値を用いた。
【0432】
6.CCR4部分ペプチドに対する結合活性の評価(ELISA法)
実施例8の5項で調製したα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる6種類の抗CCR4キメラ抗体のCCR4部分ペプチドに対する結合活性は実施例8の2に記載の方法に従って測定した。
【0433】
その結果、第17図に示したように、6種類の抗CCR4キメラ抗体は、いずれも同等のCCR4に対する結合活性を示し、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合は、抗体の抗原結合活性に影響を与えないことが明らかとなった。
【0434】
7.ヒトCCR4高発現細胞株に対するADCC活性の評価
抗CCR4キメラ抗体のヒトCCR4高発現細胞であるCCR4/EL−4細胞(国際公開01/64754号)に対するADCC活性は、以下のようにして測定した。
【0435】
(1)標的細胞溶液の調製
国際公開01/64754号に記載のヒトCCR4を発現しているCCR4/EL−4細胞の1.5×10
6細胞を調製し、放射性物質であるNa
251CrO
4を5.55MBq当量加えて37℃で1時間30分間反応させ、細胞を放射線標識した。反応後、培地を用いた懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄し、培地に再懸濁し、4℃で30分間氷中に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心分離後、培地を7.5mL加え、2×10
5細胞/mLに調製し、標的細胞溶液とした。
【0436】
(2)ヒトエフェクター細胞溶液の調製
健常人末梢血60mLを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)を0.6mLを加え穏やかに混ぜた。これをLymphoprep(AXIS SHIELD社製)を用いて使用説明書に従い、遠心分離(800g、20分間)して単核球層を分離した。培地で3回遠心分離(1400rpm、5分間)して洗浄後、培地を用いて5×10
6細胞/mLの濃度で再懸濁し、ヒトエフェクター細胞溶液とした。
【0437】
(3)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記(1)で調製した標的細胞溶液の50μL(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いで上記(2)で調製したヒトエフェクター細胞溶液を100μL(5×10
5細胞/ウェル、ヒトエフェクター細胞と標的細胞の比は50:1となる)添加した。さらに、抗CCR4キメラ抗体を各最終濃度0.0001〜10μg/mLとなるように加え、37℃で4時間反応させた。反応後、プレートを遠心分離し、上清中の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。自然解離
51Cr量は、ヒトエフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用いて上記と同様の操作を行い、上清中の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
51Cr量は、抗体溶液とヒトエフェクター細胞溶液の代わりに1mol/Lの塩酸溶液を添加し、上記と同様の操作を行い、上清中の
51Cr量を測定することにより求めた。ADCC活性(%)は前記式(II)により求めた。
【0438】
第18図および第19図には、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合の異なる抗CCR4キメラ抗体の各種濃度(0.001〜10μg/mL)におけるADCC活性を2名の健常人ドナー(A,B)のエフェクター細胞を用いて測定した結果をそれぞれ示した。第18図および第19図に示したように、抗CCR4キメラ抗体のADCC活性はいずれの抗体濃度においてもα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合に比例して上昇する傾向を示した。抗体濃度が低ければ、ADCC活性は低下する。抗体濃度が0.01μg/mlでは、α−1,6−フコースを持たない糖鎖が27%、39%および46%のADCC活性はほぼ同様の高い活性を示したが、α−1,6−フコースを持たない糖鎖が20%未満の抗体では、ADCC活性は低かった。本結果は、エフェクター細胞のドナーが異なっても同様であった。
【0439】
実施例9.宿主細胞株におけるα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子の転写物の定量
(1)各種細胞株由来一本鎖cDNAの調製
ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(dhfr)を欠損したチャイニーズハムスター卵巣由来CHO/DG44細胞およびラットミエローマYB2/0細胞より、以下の手順で一本鎖cDNAを調製した。
CHO/DG44細胞を10% ウシ胎児血清(Life Technologies社製)および1倍濃度のHT supplement(Life Technologies社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)に懸濁し、2×10
5個/mlの密度で接着細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に15ml播種した。また、YB2/0細胞を10% ウシ胎児血清(Life Technologies社製)、4mmol/l L−GLN(Life Technologies社製)を添加したRPMI1640培地(Life Technologies社製)に懸濁し、2×10
5個/mlの密度で浮遊細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に15ml播種した。これらを37℃の5%CO
2インキュベーター内で培養し、培養1日目、2日目、3日目、4日目および5日目に各宿主細胞1×10
7個を回収後、RNAeasy(QIAGEN社製)により添付の説明書に従って全RNAを抽出した。
【0440】
全RNAを45μlの滅菌水に溶解し、RQ1 RNase−Free DNase(Promega社製)1μl、付属の10×DNase buffer 5μl、RNasin Ribonuclease inhibitor(Promega社製)0.5μlをそれぞれに添加して、37℃で30分間反応させることにより、試料中に混入したゲノムDNAを分解した。反応後、RNAeasy(QIAGEN社製)により全RNAを再精製し、50μlの滅菌水に溶解した。
【0441】
得られた各々の全RNA3μgに対し、SUPERSCRIPT
TM Preamplification System for First Strand cDNA Synthesis(Life Technologies社製)を用いて添付の説明書に従い、オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で逆転写反応を行うことにより、一本鎖cDNAを合成した。各宿主細胞由来α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(以下、FUT8ともいう)、β−アクチンのクローニングには該反応液の1倍濃度液を、競合的PCRによる各遺伝子転写量の定量には該反応液の50倍希釈水溶液を用い、各々使用するまで−80℃で保管した。
【0442】
(2)チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の各cDNA部分断片の取得
チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の各cDNA部分断片の取得は、以下の手順で行った(第20図)。まず、ヒトFUT8のcDNA[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),121,626,(1997)]およびブタFUT8のcDNA[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.),271,27810,(1996)]に共通の塩基配列に対して特異的なプライマー(配列番号4および配列番号5に示す)を設計した。
【0443】
次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、本項(1)で調製した培養2日目のCHO細胞由来cDNAおよびYB2/0細胞由来cDNAを各々1μlを含む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l 上記遺伝子特異的プライマー(配列番号4および配列番号5)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCRは、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして30サイクルの後、さらに72℃で10分間加熱する条件で行った。
【0444】
PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片979bpをGENECLEAN Spin Kit(BIO 101社製)を用いて精製し、滅菌水10μlで溶出した(以下、アガロースゲルからのDNA断片の精製にはこの方法を用いた)。上記増幅断片 4μlを、TOPO TA cloning Kit(Invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液を用いて大腸菌XL1−Blue株をコーエンらの方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.),69,2110(1972)](以下、大腸菌の形質転換にはこの方法を用いた)により形質転換した。得られたカナマイシン耐性コロニーのうちcDNAが組み込まれた6クローンから、公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),7,1513(1979)](以下、プラスミドの単離方法にはこの方法を用いる)に従って各々プラスミドDNAを単離した。
【0445】
各プラスミドに挿入されたcDNAの塩基配列は、DNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin Elmer社製)を使用して決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により配列決定した全ての挿入cDNAが、チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8(配列番号6および7に示す)のオープンリーディングフレーム(ORF)部分配列をコードすることを確認した。このうちPCRに伴う塩基の読み誤りを該配列内に全く含まないプラスミドDNAを選択した。以下、各プラスミドをCHFT8−pCR2.1およびYBFT8−pCR2.1と称す。
【0446】
(3)チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンcDNAの取得
チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンの取得は、以下の手順で行った(第21図)。
【0447】
まず、チャイニーズハムスターβ−アクチンゲノム配列(GenBank,U20114)およびラットβ−アクチンゲノム配列[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),11,1759(1983)]より、翻訳開始コドンを含む共通配列に特異的なフォワードプライマー(配列番号8に示す)および翻訳終止コドンを含む各配列特異的なリバースプライマー(配列番号9および配列番号10に示す)を設計した。
【0448】
次にDNAポリメラーゼKOD(東洋紡績社製)を用いて、本項(1)で調製した培養2日目のCHO細胞由来cDNAおよびYB2/0細胞由来cDNA 1μlを含む25μlの反応液[KOD buffer #1(東洋紡績社製)、0.2mmol/l dNTPs、1mmol/l MgCl
2、0.4μmol/l上記遺伝子特異的プライマー(配列番号8および9、または配列番号8および10)、5% DMSO]を調製し、PCRを行った。PCRは、94℃で4分間の加熱の後、98℃で15秒間、65℃で2秒間、74℃で30秒間からなる反応を1サイクルとして、25サイクル行った。
【0449】
PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片1128bpを精製した。このDNA断片に対し、MEGALABEL(宝酒造社製)を用いて、添付の説明書に従いDNA5’末端のリン酸化を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収し、滅菌水10μlに溶解した。
【0450】
一方、プラスミドpBluescriptII KS(+)3μg(Strategene社製)をNEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、16単位の制限酵素EcoRV(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。該反応液にpH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液 35μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)3.5μlを添加して65℃で30分間反応させることにより、DNA末端の脱リン酸化を行った。この反応液に対しフェノール/クロロホルム抽出処理の後エタノール沈殿法を行い、回収したDNA断片を滅菌水 100μlに溶解した。
【0451】
上記で得たチャイニーズハムスターcDNA由来増幅断片およびラットcDNA由来増幅断片(1192bp)4μl、プラスミドpBluescriptII KS(+)由来のEcoRV−EcoRV断片(約3.0Kb)1μl、Ligation High(東洋紡績社製)5μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌XL1−Blue株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。各プラスミドに挿入されたcDNAの塩基配列は、DNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin Elmer社製)を使用して決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により配列決定した全ての挿入cDNAが、チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチン各cDNAのORF全長配列をコードすることを確認した。このうちPCRに伴う塩基の読み誤りを該配列内に全く含まないプラスミドDNAを選択した。以下、各プラスミドをCHAc−pBSおよびYBAc−pBSと称す。
【0452】
(4)FUT8スタンダードおよび内部コントロールの調製
各細胞内のFUT8遺伝子由来mRNA転写量を測定するために、検量線に用いるスタンダードとして、本項(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の各cDNA部分断片をpCR2.1に組み込んだプラスミドであるCHFT8−pCR2.1およびYBFT8−pCR2.1を制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。FUT8定量の内部コントロールとしては、CHFT8−pCR2.1およびYBFT8−pCR2.1のうち、チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の内部塩基配列のScaI−HindIII間203bpを欠失させることにより得られたCHFT8d−pCR2.1およびYBFT8d−pCR2.1を、制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。以下にその詳細を説明する。
【0453】
チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8のスタンダードの調製は次の手順で行った。プラスミドCHFT8−pCR2.1 2μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製)40μlに溶解し、24単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。一方、プラスミドYBFT8−pCR2.1 2μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製)40μlに溶解し、24単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。該反応液の一部を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、上記制限酵素消化反応によりチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8 各cDNA部分断片を含むEcoRI−EcoRI断片(約1Kb)がプラスミドCHFT8−pCR2.1およびYBFT8−pCR2.1より分離されたことを確認した。各反応液より、1μg/ml パン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いて0.02fg/μl、0.2fg/μl、1fg/μl、2fg/μl、10fg/μl、20fg/μl、100fg/μlの希釈液を調製し、これらをチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8のスタンダードとした。
【0454】
チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の内部コントロールの調製は次のように行った(第22図)。DNAポリメラーゼKOD(東洋紡績社製)を用いて、CHFT8−pCR2.1およびYBFT8−pCR2.1 5ngを含む25μlの反応液[KOD buffer #1(東洋紡績社製)、0.2mmol/l dNTPs、1mmol/l MgCl
2、0.4μmol/l 遺伝子特異的プライマー(配列番号11および12)、5% DMSO]を調製し、PCRを行った。PCRは、94℃で4分間の加熱の後、98℃で15秒間、65℃で2秒間、74℃で30秒間からなる反応を1サイクルとして、25サイクル行った。PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片約4.7Kbを精製した。該DNA断片に対し、MEGALABEL(宝酒造社製)を用いて、添付の説明書に従いDNA5’末端のリン酸化を行った後、反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収し、滅菌水50μlに溶解した。上記で得たDNA断片(約4.7Kb)5μlおよびLigation High(東洋紡績社製)5μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより自己環状化反応を行った。
【0455】
該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。各プラスミドDNAに対しDNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin Elmer社製)を用いて配列決定を行い、同プラスミドに挿入されたチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の内部塩基配列ScaI−HindIII間203bpが欠失したことを確認した。得られた各プラスミドをCHFT8d−pCR2.1およびYBFT8d−pCR2.1と称す。
【0456】
次にプラスミドCHFT8d−pCR2.1 2μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製) 40μlに溶解し、24単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。一方、プラスミドYBFT8d−pCR2.1 2μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製)40μlに溶解し、24単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。該反応液の一部を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、上記制限酵素消化反応によりチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8部分断片の内部塩基配列203bpが欠失した断片を含むEcoRI−EcoRI断片(約800bp)がプラスミドCHFT8d−pCR2.1およびYBFT8d−pCR2.1より分離されたことを確認した。各反応液より、1μg/ml パン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いて2fg/μlの希釈液を調製し、これらをチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の内部コントロールとした。
【0457】
(5)β−アクチンスタンダードおよび内部コントロールの調製
各宿主細胞内のβ−アクチン遺伝子由来mRNA転写量を測定するために、検量線に用いるスタンダードとして、本項(3)で得たチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチン各cDNAのORF全長をpBluescriptII KS(+)に組み込んだプラスミドであるCHAc−pBSおよびYBAc−pBSを、前者は制限酵素HindIIIおよびPstIで、後者は制限酵素HindIIIおよびKpnIで、各々切断し直鎖化したDNAを用いた。β−アクチン定量の内部コントロールとしては、CHAc−pBSおよびYBAc−pBSのうち、チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンの内部塩基配列のDraIII−DraIII間180bpを欠失させることにより得られたCHAcd−pBSおよびYBAcd−pBSを、前者は制限酵素HindIIIおよびPstIで、後者は制限酵素HindIIIおよびKpnIで、切断し直鎖化したDNAを用いた。以下にその詳細を説明する。
【0458】
チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンのスタンダードの調製は次の手順で行った。プラスミドCHAc−pBS 2μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製)40μlに溶解し、25単位の制限酵素HindIII(宝酒造社製)および20単位のPstI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。一方、プラスミドYBAc−pBS 2μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製)40μlに溶解し、25単位の制限酵素HindIII(宝酒造社製)および24単位のKpnI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。該反応液の一部を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、上記制限酵素消化反応によりチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチン各cDNA ORF全長を含むHindIII−PstI断片およびHindIII−KpnI断片(約1.2Kb)がプラスミドCHAc−pBSおよびYBAc−pBSより分離されたことを確認した。各反応液より、1μg/ml パン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いて2pg/μl、1pg/μl、200fg/μl、100fg/μl、20fg/μlの希釈液を調製し、これらをチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンのスタンダードとした。
【0459】
チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンの内部コントロールの調製は次の手順で行った(第23図)。CHAc−pBS 2μgを100ng/μl BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 3(New England Biolabs社製)100μlに溶解し、10単位の制限酵素DraIII(New England Biolabs)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収し、DNA Blunting Kit(宝酒造社製)を用い、添付の説明書に従ってDNA末端の平滑化を行った後、反応液を2等分した。
まず一方の反応液には、pH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液 35μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)3.5μlを添加し、65℃で30分間反応させることによりDNA末端の脱リン酸化を行った。脱リン酸化処理、フェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿法を行い、回収したDNA断片を滅菌水10μlに溶解した。残る他方の反応液は0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、チャイニーズハムスターβ−アクチンORF部分断片を含む約1.1KbのDNA断片を精製した。
【0460】
上記で得た脱リン酸化DraIII−DraIII断片 0.5μl、約1.1KbのDraIII−DraIII断片 4.5μl、Ligation High(東洋紡績社製)5μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。各プラスミドDNAに対しDNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin Elmer社製)を用いて配列決定を行い、同プラスミドに挿入されたチャイニーズハムスターβ−アクチンDraIII−DraIII間180bpが欠失したことを確認した。本プラスミドをCHAcd−pBSと称す。
【0461】
また、ラットβ−アクチンDraIII−DraIII間180bpが欠失したプラスミドをCHAcd−pBSと同様の工程を経て作製した。本プラスミドをYBAcd−pBSと称す。次にプラスミドCHAcd−pBS 2μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製)40μlに溶解し、25単位の制限酵素HindIII(宝酒造社製)および20単位のPstI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。一方、プラスミドYBAcd−pBS 2μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製)40μlに溶解し、25単位の制限酵素HindIII(宝酒造社製)および24単位のKpnI(宝酒造社製)を加えて37℃で3時間消化反応を行った。該反応液の一部を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、上記制限酵素消化反応によりチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチン各cDNA ORF全長の内部塩基配列180bpが欠失した断片を含むHindIII−PstI断片およびHindIII−KpnI断片(約1.0Kb)がプラスミドCHAcd−pBSおよびYBAcd−pBSより分離されたことを確認した。各反応液より、1μg/mlパン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いて200fg/μlの希釈液を調製し、これらをチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンの内部コントロールとした。
【0462】
(6)競合的PCRによる転写量の定量
本項(4)で作製したFUT8内部コントロールDNAおよび本項(1)で得た宿主細胞株由来cDNAを鋳型として競合的PCRを行い、各鋳型に由来する増幅産物量の相対値より、宿主細胞株内のFUT8の転写産物の定量値を算出した。一方、β−アクチン遺伝子は各細胞において恒常的に転写されており、その転写量は細胞間で同程度と考えられているため、各宿主細胞株由来cDNA合成反応の効率の目安として、β−アクチン遺伝子の転写量を定量した。すなわち、本項(5)で作製したβ−アクチン内部コントロールDNAおよび本項(1)で得た宿主細胞株由来cDNAを鋳型としてPCRを行い、各鋳型に由来する増幅産物量の相対値より、宿主細胞株内のβ−アクチンの転写産物の定量値を算出した。以下にその詳細を説明する。
【0463】
FUT8の転写産物の定量は次の手順で行った。まず、本項(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8 ORF部分配列の内部配列に対し、共通配列特異的なプライマーセット(配列番号13および14に示す)を設計した。
【0464】
次に、本項(1)で得た各宿主細胞株由来のcDNA溶液の50倍希釈液5μlおよび内部コントロール用プラスミド5μl(10fg)を含む総体積20μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l上記遺伝子特異的プライマー(配列番号13および14)、5%DMSO]で、DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3分間の加熱の後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間からなる反応を1サイクルとして32サイクル行った。
【0465】
また、各宿主細胞株由来cDNAに代えて、本項(4)で得たFUT8スタンダードプラスミド5μl(0.1fg、1fg、5fg、10fg、50fg、100fg、500fg、1pg)を添加した系でPCRを行い、FUT8転写量の検量線作製に用いた。
【0466】
β−アクチンの転写産物の定量は次の手順で行った。まず、本項(3)で得たチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンORF全長の内部配列に対し、各遺伝子特異的なプライマーセット(前者を配列番号15および配列番号16に、後者を配列番号17および配列番号18に示す)をそれぞれ設計した。
【0467】
次に、本項(1)で得られた各宿主細胞株由来のcDNA溶液の50倍希釈液5μlおよび内部コントロール用プラスミド5μl(1pg)を含む総体積20μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l上記遺伝子特異的プライマー(配列番号15および配列番号16、または配列番号17および配列番号18)、5% DMSO]で、DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3分間の加熱の後、94℃で30秒間、65℃で1分間、72℃で2分間から成る反応を1サイクルとした17サイクルの条件で行った。
【0468】
また、各宿主細胞株由来cDNAに代えて、本項(5)で得たβ−アクチンスタンダードプラスミド 5μl(10pg、5pg、1pg、500fg、100fg)を添加した系でPCRをそれぞれ行い、β−アクチン転写量の検量線作製に用いた。
【0469】
【表3】
【0470】
第3表に記載のプライマーセットを用いたPCRにより、各遺伝子転写産物および各スタンダードから第3表のターゲット欄に示したサイズのDNA断片を、各内部コントロールから第3表のコンペティター欄に示したサイズのDNA断片を増幅させることができる。
【0471】
PCR後の溶液のうち、7μlを1.75%アガロースゲル電気泳動に供した後、ゲルを1倍濃度のSYBR Green I Nucleic Acid Gel Stain(Molecular Probes社製)に30分間浸漬し染色した。増幅された各DNA断片の発光強度をフルオロイメージャー(FluorImager SI;Molecular Dynamics社製)で算出することにより、増幅されたDNA断片の量を測定した。
【0472】
上記の方法により、スタンダードプラスミドを鋳型としたPCRによって生じた増幅産物量を測定し、その測定値とスタンダードプラスミド量をプロットして検量線を作成した。この検量線を用いて、各発現株由来全cDNAを鋳型とした場合の増幅産物の量より各株中の目的遺伝子cDNA量を算出し、これを各株におけるmRNA転写量とした。
【0473】
ラットFUT8配列をスタンダード、内部コントロールに用いた場合の各宿主細胞株におけるFUT8転写産物の量を第24図に示した。培養期間を通じてCHO細胞株はYB2/0細胞株の10倍以上の転写量を示した。この傾向は、チャイニーズハムスターFUT8配列をスタンダード、内部コントロールに用いた場合にも認められた。
【0474】
また、第4表にβ−アクチン転写産物の量との相対値としてFUT8転写量を示した。培養期間を通じてYB2/0細胞株のFUT8転写量がβ−アクチンの0.1%前後であるのに対し、CHO細胞株は0.5%〜2%であった。以上の結果より、YB2/0細胞株のFUT8転写産物量はCHO細胞株のそれよりも有意に少ないことが示された。
【0475】
【表4】
【0476】
実施例10.抗ガングリオシドGD3キメラ抗体生産細胞株におけるα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子の転写物の定量
(1)各種生産細胞株由来一本鎖cDNAの調製
抗ガングリオシドGD3キメラ抗体生産細胞DCHI01−20株および61−33株より、以下の手順で一本鎖cDNAを調製した。DCHI01−20株は、実施例1第2項(2)記載のCHO/DG44細胞由来の形質転換クローンである。また61−33株は、YB2/0由来の形質転換細胞7−9−51株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、FERM BP−6691)に対し無血清馴化を行った後、2回の限界希釈法による単一細胞化を行って得たクローンである。
【0477】
DCHI01−20株を3mmol/l L−GLN(Life Technologies社製)、0.3% PLURONIC F−68(Life Technologies社製)および0.5%脂肪酸濃縮液(Life Technologies社製)を添加したEXCELL302培地(JRH BIOSCIENCES社製)に懸濁し、2×10
5個/mlの密度で浮遊細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に15ml播種した。また、61−33株を0.2% ウシ血清アルブミンフラクションV(Life Technologie社製)(以下、BSAと略記する)を添加したHybridoma−SFM培地(Life Technologie社製)に懸濁し、2×10
5個/mlの密度で浮遊細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に15ml播種した。これらを37℃の5%CO
2インキュベーター内で培養し、培養1日目、2日目、3日目、4日目および5日目に各宿主細胞1×10
7個を回収し、RNAeasy(QIAGEN社製)により添付の説明書に従って全RNAを抽出した。
【0478】
全RNAを45μlの滅菌水に溶解し、RQ1 RNase−Free DNase(Promega社製)1μl、付属の10×DNase buffer 5μl、RNasin Ribonuclease inhibitor(Promega社製)0.5μlをそれぞれに添加して、37℃で30分間反応させることにより、試料中に混入したゲノムDNAを分解した。反応後、RNAeasy(QIAGEN社製)により全RNAを再精製し、50μlの滅菌水に溶解した。
【0479】
得られた全RNA 3μgに対し、SUPERSCRIPT
TMPreamplification System for First Strand cDNA Synthesis(Life Technologies社製)を用いて添付の説明書に従い、オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で逆転写反応を行うことにより、一本鎖cDNAを合成した。
該反応液を水で50倍希釈し、使用するまで−80℃で保管した。
【0480】
(2)競合的PCRによる各遺伝子転写量の定量
本項(1)で得た抗体生産細胞株由来cDNAに対し、実施例9(6)に準じて競合的PCRによる各遺伝子転写量の定量を行った。
各生産細胞株内のFUT8遺伝子由来のmRNA転写量の定量は、以下の手順で行った。
【0481】
FUT8転写量の定量の際に検量線に用いるスタンダードとして、実施例9(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8のcDNA部分断片をpCR2.1に組み込んだプラスミドであるCHFT8−pCR2.1およびYBFT8−pCR2.1を制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0482】
FUT8定量の内部コントロールとしては、チャイニーズハムスターFUT8およびラットFUT8の内部塩基配列のScaI−HindIII間203bpを欠失させることにより得られた実施例9(4)で調製したCHFT8d−pCR2.1およびYBFT8d−pCR2.1を、制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0483】
本項(1)で得た各生産細胞株由来のcDNA溶液の50倍希釈液 5μlおよび内部コントロール用プラスミド5μl(10fg)を含む総体積20μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l FUT8遺伝子特異的プライマー(配列番号13および14)、5% DMSO]で、DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3分間の加熱の後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間からなる反応を1サイクルとして32サイクル行った。
【0484】
また、各生産細胞株由来cDNAに代えて、FUT8スタンダードプラスミド5μl(0.1fg、1fg、5fg、10fg、50fg、100fg、500fg、1pg)を添加した系でPCRを行い、FUT8転写量の検量線作製に用いた。尚、スタンダードプラスミドの希釈には1μg/mlパン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いた。
【0485】
一方、β−アクチン遺伝子は各細胞において恒常的に転写されており、その転写量は細胞間で同程度と考えられているため、各生産細胞株由来cDNA合成反応の効率の目安として、β−アクチン遺伝子の転写量を以下の手順で定量した。
【0486】
β−アクチン遺伝子転写量の定量の際に検量線に用いるスタンダードとして、実施例9(3)で調製したチャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンのcDNAのORF全長をpBluescriptII KS(+)に組み込んだプラスミドであるCHAc−pBSおよびYBAc−pBSを制限酵素HindIIIおよびKpnIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0487】
β−アクチン定量の内部コントロールとしては、チャイニーズハムスターβ−アクチンおよびラットβ−アクチンの内部塩基配列のDraIII−DraIII間180bpを欠失させることにより得られた実施例9(5)で調製したCHAcd−pBSおよびYBAcd−pBSを、制限酵素HindIIIおよびKpnIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0488】
上記で得た各生産細胞株由来のcDNA溶液の50倍希釈液 5μlおよび内部コントロール用プラスミド5μl(1pg)を含む総体積20μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/lβ−アクチン特異的プライマー(配列番号17および18)、5% DMSO]で、DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3分間の加熱の後、94℃で30秒間、65℃で1分間、72℃で2分間から成る反応を1サイクルとした17サイクルの条件で行った。また、各生産細胞株由来cDNAに代えて、β−アクチンスタンダードプラスミド10pg、5pg、1pg、500fg、100fgを添加した系でPCRをそれぞれ行い、β−アクチン転写量の検量線作製に用いた。尚、スタンダードプラスミドの希釈には1μg/mlパン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いた。
【0489】
第3表に記載のプライマーセットを用いたPCRにより、各遺伝子転写産物および各スタンダードから第3表のターゲット欄に示したサイズのDNA断片を、各内部コントロールから第3表のコンペティター欄に示したサイズのDNA断片を増幅させることができる。
【0490】
PCR後の溶液のうち、7μlを1.75%アガロースゲル電気泳動に供した後、ゲルを1倍濃度のSYBR Green I Nucleic Acid Gel Stain(Molecular Probes社製)に30分間浸漬し染色した。増幅された各DNA断片の発光強度をフルオロイメージャー(FluorImager SI;Molecular Dynamics社製)で算出することにより、増幅されたDNA断片の量を測定した。
【0491】
上記の方法により、スタンダードプラスミドを鋳型としたPCRによって生じた増幅産物量を測定し、その測定値とスタンダードプラスミド量をプロットして検量線を作成した。この検量線を用いて、各生産細胞株由来全cDNAを鋳型とした場合の増幅産物の量より各株中の目的遺伝子cDNA量を算出し、これを各株におけるmRNA転写量とした。
【0492】
第5表にβ−アクチン転写産物の量との相対値としてFUT8転写量を示した。培養期間を通じて、YB2/0細胞由来抗体生産株61−33のFUT8転写量がβ−アクチンの0.3%以下であるのに対し、CHO細胞由来抗体生産株DCHI01−20は0.7〜1.5%であった。この結果より、YB2/0細胞由来抗体生産株のFUT8転写産物量はCHO細胞由来抗体生産株のそれよりも有意に少ないことが示された。
【0493】
【表5】
【0494】
実施例11.マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株の作製
(1)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)発現プラスミドの構築
10%ウシ胎児血清(Life Technologie社製)を含むIMDM培地(Life Technologie社製)で継代培養したマウスミエローマNS0細胞(理化学研究所セルバンク,RCB0213)1×10
7個に対し、RNAeasy(QIAGEN社製)を用いて添付の説明書に従い全RNAを抽出した。全RNAを45μlの滅菌水に溶解し、RQ1 RNase−Free DNase(Promega社製)1μl、付属の10×DNase buffer 5μl、RNasin Ribonuclease inhibitor(Promega社製)0.5μlを添加して、37℃で30分間反応させることにより、試料中に混入したゲノムDNAを分解した。
【0495】
反応後、RNAeasy(QIAGEN社製)により全RNAを再精製し、50μlの滅菌水に溶解した。得られた全RNAのうち3μgに対し、SUPERSCRIPT
TM Preamplification System for First Strand cDNA Synthesis(Life Technologies社製)を用いて添付の説明書に従い、オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で逆転写反応を行うことにより、一本鎖cDNAを合成した。
マウスFUT8 cDNAの取得は以下の手順で行った(第25図)。
【0496】
まず、マウスFUT8のcDNA配列(GenBank,AB025198)より、翻訳開始コドンを含む配列に特異的なフォワードプライマー(配列番号19に示す)および翻訳終止コドンを含む配列特異的なリバースプライマー(配列番号20に示す)を設計した。次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、前述のNS0細胞由来cDNA 1μlを含む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、4%DMSO、0.5μmol/l上記特異的プライマー(配列番号19および配列番号20)]を調製し、PCRを行った。PCRは、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして30サイクルの後、さらに72℃で10分間加熱する条件で行った。
PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片1728bpを精製した。このDNA断片4μlを、TOPO TA cloning Kit(Invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。得られたカナマイシン耐性コロニーのうちcDNAが組み込まれた6クローンから、公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。
【0497】
各プラスミドに挿入されたcDNAの塩基配列は、DNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin Elmer社製)を使用して決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により配列決定した全ての挿入cDNAが、マウスFUT8のORF全長配列をコードすることを確認した。このうちPCRに伴う塩基の読み誤りを該配列内に全く含まないプラスミドDNAを選択した(そのDNA配列を配列番号2に示す。また、そのアミノ酸配列を配列番号24に示す)。尚、本配列には、前述のGenBank上に登録されたマウスFUT8配列とはアミノ酸置換を伴う3塩基の不一致があった。以下、本プラスミドをmfFUT8−pCR2.1と称す。
【0498】
続いて、マウスFUT8 ORF全長配列を含むプラスミドpBSmfFUT8の構築を以下のように行った(第26図)。まず、プラスミドpBluescriptII KS(+)1μgを(Strategene社製)をNEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液にpH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液 35μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)3.5μlを添加して65℃で30分間反応させることにより、DNA末端の脱リン酸化を行った。この反応液に対しフェノール/クロロホルム抽出処理の後エタノール沈殿法を行い、回収したDNA断片を滅菌水10μlに溶解した。
【0499】
一方、プラスミドmfFUT8−pCR2.1 1μgを(Strategene社製)をNEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素EcoRI(宝酒造社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、マウスFUT8 cDNA ORF全長を含む約1.7KbのDNA断片を精製した。
【0500】
上記で得たプラスミドpBluescriptII KS(+)由来のEcoRI−EcoRI断片(2.9Kb)1μl、プラスミドmfFUT8−pCR2.1由来のEcoRI−EcoRI断片(1.7Kb)4μl、Ligation High(東洋紡績社製)5μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pBSmfFUT8と称す。
【0501】
上記pBSmfFUT8およびpAGE249を用いて、マウスFUT8発現ベクターpAGEmfFUT8の構築を以下の手順で行った(第27図)。pAGE249は、pAGE248[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.),269,14730(1994)]の誘導体であり、pAGE248よりジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(dhfr)発現ユニットを含むSphI−SphI断片(2.7Kb)を除去したベクターである。
【0502】
pAGE249 1μgをUniversel BufferH(宝酒造社製)50μlに溶解し、20単位の制限酵素SalI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、NEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素BamHI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液にpH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液 35μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)3.5μlを添加して65℃で30分間反応させることにより、DNA末端の脱リン酸化を行った。この反応液に対しフェノール/クロロホルム抽出処理の後エタノール沈殿法を行い、回収したDNA断片を滅菌水 10μlに溶解した。
【0503】
一方、pBSmfFUT8 1μgをUniversel Buffer H(宝酒造社製)50μlに溶解し、20単位の制限酵素SalI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、NEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素BamHI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、マウスFUT8 cDNA ORF全長を含む約1.7KbのDNA断片を精製した。
【0504】
上記で得たプラスミドpAGE249由来のBamHI−SalI断片(6.5Kb)1μl、プラスミドpBSmfFUT8由来のBamHI−SalI断片(1.7Kb)4μl、Ligation High(東洋紡績社製)5μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pAGEmfFUT8と称す。
【0505】
(2)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株の作製
本項(1)で構築したマウスFUT8発現ベクターpAGEmfFUT8を61−33株へ導入し、FUT8遺伝子の安定的発現株を取得した。上記61−33株は、抗ガングリオシドGD3キメラ抗体を高生産するYB2/0細胞由来の形質転換細胞7−9−51株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター,FERM BP−6691)に対し無血清馴化を行った後、2回の限界希釈法による単一細胞化を行って得たクローンである。
【0506】
プラスミドpAGEmfFUT8の61−33株への遺伝子導入はエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]に準じて以下の手順で行った。まず、プラスミドpAGEmfFUT8 30μgをNEBuffer 4(New England Biolabs社製)600μlに溶解し、100単位の制限酵素FspI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行うことにより線状化した。該反応液に対しエタノール沈殿法を行い、回収した線状化プラスミドを1μg/μl水溶液とした。
【0507】
次に、61−33株をK−PBS緩衝液(137mmol/l KCl、2.7mmol/l NaCl、8.1mmol/l Na
2HPO4、1.5mmol/l KH
2PO
4、4.0mmol/l MgCl
2)に懸濁して2×10
7個/mlとし、細胞懸濁液200μl(4×10
6個)を上記線状化プラスミド 10μl(10μg)と混和した。細胞−DNA混和液をGene Pulser Cuvette(電極間距離2mm)(BIO−RAD社製)へ移した後、細胞融合装置Gene Pulser(BIO−RAD社製)を用いてパルス電圧0.2KV、電気容量250μFの条件で遺伝子導入を行った。この細胞懸濁液を5%ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)および0.2% BSA(Life Technologie社製)を添加したHybridoma−SFM培地(Life Technologie社製)10mlに混和し、浮遊細胞用96穴プレート(Greiner社製)に100μlずつ分注した。5%CO
2、37℃の条件下で24時間培養した後、培養上清50μlを除去し、0.5mg/ml Hygromycin B(和光純薬工業社製)、5% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)および0.2%BSA(Life Technologie社製)を添加したHybridoma−SFM培地(Life Technologie社製)を100μlずつ分注した。この培地交換作業を3〜4日毎に繰り返しながら3週間の培養を行い、ハイグロマイシン耐性を示す14株を取得した。
【0508】
一方、pAGEmfFUT8の母骨格ベクターであるプラスミドpAGE249を61−33株へ導入することにより、ネガティブコントロール株を作製した。上述の手順で、制限酵素FspIにより線状化したプラスミドpAGE249 10μgをエレクトロポレーション法を用いて61−33株 4×10
6cellsへ遺伝子導入した。該細胞を5% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)および0.2% BSA(Life Technologie社製)を添加したHybridoma−SFM培地(Life Technologie社製)15mlに混和した後、浮遊細胞用T75フラスコ(Greiner社製)に移し入れ、5%CO
2、37℃の条件下で24時間培養した。培養後、800rpmで4分間の遠心分離を行い、上清の半量(7.5ml)を除去した後、0.5mg/ml Hygromycin B(和光純薬工業社製)、5% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)および0.2%BSA(Life Technologie社製)を添加したHybridoma−SFM培地(Life Technologie社製)7.5mlを添加して懸濁し、浮遊細胞用T75フラスコ(Greiner社製)に移し入れた。この培地交換作業を3〜4日毎に繰り返しながら3週間の培養を行い、ハイグロマイシン耐性株を取得した。
【0509】
(3)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株における該遺伝子発現量の解析
本項(2)で作製した61−33株由来マウスFUT8過剰発現株14株より任意に選択した6株およびネガティブコントロール株に対し、競合的RT−PCRを用いてFUT8発現量の比較を行った。
上記過剰発現株を0.5mg/ml Hygromycin B(和光純薬工業社製)、5% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)および0.2%BSA(Life Technologie社製)を添加したHybridoma−SFM培地(Life Technologie社製)に懸濁し、3×10
5個/mlの密度で浮遊細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に15ml播種した。37℃、5%CO
2の条件下で24時間培養した後、生細胞1×10
7個を回収し、RNAeasy(QIAGEN社製)を用いて添付の説明書に従い全RNAを抽出した。全RNAを45μlの滅菌水に溶解し、RQ1 Rnase−Free DNase(Promega社製)0.5U/μl、付属の10×DNase buffer 5μl、RNasin Ribonuclease inhibitor(Promega社製)0.5μlを添加して37℃で30分間反応させることにより、試料中に混入したゲノムDNAを分解した。反応後、RNAeasy(QIAGEN社製)により全RNAを再精製し、50μlの滅菌水に溶解した。
【0510】
得られた全RNA2.5μgに対し、SUPERSCRIPT
TM Preamplification System for First Strand cDNA Synthesis(Life Technologies社製)を用いて添付の説明書に従い、オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で逆転写反応を行うことにより、一本鎖cDNAを合成した。該反応液を水で50倍希釈し、実施例9(6)に準じて競合的PCRによる各遺伝子転写量の定量に供した。
【0511】
各発現株内のFUT8遺伝子由来のmRNA転写量の定量は、以下の手順で行った。
FUT8転写量の定量の際に検量線に用いるスタンダードとして、実施例9(2)で調製したラットFUT8のcDNA部分断片をpCR2.1に組み込んだプラスミドであるYBFT8−pCR2.1を制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。FUT8定量の内部コントロールとしては、実施例9(4)で調製した、ラットFUT8の内部塩基配列のScaI−HindIII間203bpを欠失させることにより得られたYBFT8d−pCR2.1を、制限酵素EcoRIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0512】
上記で得た各発現株由来のcDNA溶液の50倍希釈液5μlおよび内部コントロール用プラスミド5μl(10fg)を含む総体積20μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/lラットFUT8遺伝子特異的プライマー(配列番号13および14)、5% DMSO]で、DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3分間の加熱の後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間からなる反応を1サイクルとして32サイクル行った。
【0513】
また、各発現株由来cDNAに代えて、FUT8スタンダードプラスミド 5μl(0.1fg、1fg、5fg、10fg、50fg、100fg、500fg、1pg)を添加した系でPCRを行い、FUT8転写量の検量線作製に用いた。尚、スタンダードプラスミドの希釈には1μg/ml パン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いた。
【0514】
一方、β−アクチン遺伝子は各細胞において恒常的に転写されており、その転写量は細胞間で同程度と考えられているため、各発現株由来cDNA合成反応の効率の目安として、β−アクチン遺伝子の転写量を以下の手順で定量した。
【0515】
β−アクチン遺伝子転写量の定量の際に検量線に用いるスタンダードとして、実施例9(3)で調製したラットβ−アクチンのcDNAのORF全長をpBluescriptII KS(+)に組み込んだプラスミドであるYBAc−pBSを制限酵素HindIIIおよびKpnIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
【0516】
β−アクチン定量の内部コントロールとしては、実施例9(5)で調製したラットβ−アクチンの内部塩基配列のDraIII−DraIII間180bpを欠失させることにより得られたYBAcd−pBSを制限酵素HindIIIおよびKpnIで切断し直鎖化したDNAを用いた。
上記で得た各発現株由来のcDNA溶液の50倍希釈液 5μlおよび内部コントロール用プラスミド5μl(1pg)を含む総体積20μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l ラットβ−アクチン特異的プライマー(配列番号17および18)、5% DMSO]で、DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いてPCRを行った。PCRは、94℃で3分間の加熱の後、94℃で30秒間、65℃で1分間、72℃で2分間から成る反応を1サイクルとした17サイクルの条件で行った。
【0517】
また、各発現株由来cDNAに代えて、β−アクチンスタンダードプラスミド10pg、5pg、1pg、500fg、100fgを添加した系でPCRをそれぞれ行い、β−アクチン転写量の検量線作製に用いた。尚、スタンダードプラスミドの希釈には1μg/mlパン酵母由来t−RNA(SIGMA社製)を用いた。
【0518】
第3表に記載のプライマーセットを用いたPCRにより、各遺伝子転写産物および各スタンダードから第3表のターゲット欄に示したサイズのDNA断片を、各内部コントロールから第3表のコンペティター欄に示したサイズのDNA断片を増幅させることができる。
【0519】
PCR後の溶液のうち、7μlを1.75%アガロースゲル電気泳動に供した後、ゲルを1倍濃度のSYBR Green I Nucleic Acid Gel Stain(Molecular Pro
bes社製)に30分間浸漬し染色した。増幅された各DNA断片の発光強度をフルオロイメージャー(FluorImager SI;Molecular Dynamics社製)で算出することにより、増幅されたDNA断片の量を測定した。
【0520】
上記の方法により、スタンダードプラスミドを鋳型としたPCRによって生じた増幅産物量を測定し、その測定値とスタンダードプラスミド量をプロットして検量線を作成した。この検量線を用いて、各発現株由来全cDNAを鋳型とした場合の増幅産物の量より各株中の目的遺伝子cDNA量を算出し、これを各株におけるmRNA転写量とした。
【0521】
第28図にβ−アクチン転写産物の量との相対値としてFUT8転写量を示した。mfFUT8−1、mfFUT8−2、mfFUT8−4の3株およびpAGE249導入株は、FUT8転写量がβ−アクチン転写量の0.3〜10%であり、FUT8転写量が比較的低い株であった。一方、mfFUT8−3、mfFUT8−6、mfFUT8−7の3株は、FUT8転写量がβ−アクチン転写量の20〜40%であり、FUT8発現量が比較的高い株であった。
【0522】
(4)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株が産生する抗体の精製
本項(2)で得たFUT8遺伝子過剰発現株6株およびネガティブコントロール株1株を、200nmol/l MTX、0.5mg/ml Hygromycin B(和光純薬工業社製)、および0.2% BSA(Life Technologie社製)を添加したHybridoma−SFM培地(Life Technologie社製)に懸濁し、2×10
5個/mlの密度で浮遊細胞培養用T225フラスコ(IWAKI社製)3本に計100ml各々播種した。これらを37℃の5%CO
2インキュベーター内で7〜9日間培養後、生細胞数をカウントしてバイアビリティーが同程度(各々30%以下)であることを確認した後、各細胞懸濁液を回収した。該細胞懸濁液に対し3000rpm、4℃の条件で10分間の遠心分離を行って上清を回収し、10000rpm、4℃の条件で1時間の遠心分離を行った後、0.22μm孔径150ml容PES Filter Unit(NALGENE社製)を用いて濾過した。
【0523】
0.8cm径のカラムにProsep−A HighCapacity(bioPROCESSING社製)を厚さ2cmで充填し、0.1mol/lクエン酸緩衝液(pH3.0)10mlおよび1mol/lグリシン/NaOH−0.15mol/l NaCl緩衝液(pH8.6)10mlで順次洗浄することによって担体の平衡化を行った。次に、上記培養上清 各100mlをカラムに通筒し、1mol/l グリシン/NaOH−0.15mol/l NaCl緩衝液(pH8.6)50mlで洗浄した。洗浄後、0.1mol/lクエン酸緩衝液(pH3.0)2.5mlを用いてProsep−Aに吸着した抗体の溶出を行い、溶出液を500μlずつ分画すると共に、各画分をそれぞれ2mol/l Tris−HCl(pH8.5)100μlと混合して中和した。BCA法[アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.),150,76(1985)]を用いて抗体を高濃度で含む2画分(計1.2ml)を選択して合一し、10mol/l クエン酸緩衝液(pH6.0)を用いて4℃で一昼夜透析を行った。透析後、抗体溶液を回収し、0.22μm孔径Millex GV(MILLIPORE社製)を用いて滅菌濾過した。
【0524】
(5)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株が産生する抗体のin vitro細胞傷害活性(ADCC活性)
本項(4)で精製した抗GD3抗体のin vitro細胞傷害活性を評価するため、GD3陽性細胞であるヒトメラノーマ培養細胞株G−361[理化学研究所セルバンク,RCB0991]を用いてADCC活性を測定した。
10% ウシ胎児血清(Life Technologie社製)を含むRPMI1640培地(Life Technologie社製)(以下、RPMI1640−FBS(10)と略記する)で継代培養したG−361細胞1×10
6個をRPMI1640−FBS(10)500μlに懸濁し、Na
251CrO
4 3.7MBqを添加して37℃で30分間培養することにより、細胞の放射線標識を行った。1200rpmで5分の遠心分離を行った後、上清を除去し、標識細胞をRPMI1640−FBS(10)5mlに懸濁した。この洗浄操作を3回繰り返した後、細胞懸濁液を氷上で30分間静置して放射性物質を自然解離させた。再び上記の洗浄操作を2回繰り返した後、RPMI1640−FBS(10)5mlに懸濁することにより、2×10
5個/mlの標的細胞懸濁液を調製した。
【0525】
一方、健常人の静脈血 30mlを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)0.5mlを加えて穏やかに混和した後、生理的食塩水(大塚製薬社製)30mlと混合した。混合後、各10mlをそれぞれLymphoprep(NYCOMED PHARMA
AS社製)4ml上に穏やかに重層し、室温下2000rpmで30分間の遠心分離を行った。分離された単核球画分を各遠心管より集めて合一し、RPMI1640−FBS(10)30mlに懸濁した。室温下1200rpmで15分の遠心分離を行った後、上清を除去し、該細胞をRPMI1640−FBS(10)20mlに懸濁した。この洗浄操作を2回繰り返した後、RPMI1640−FBS(10)を用いて2×10
6個/mlのエフェクター細胞懸濁液を調製した。
【0526】
96穴U字底プレート(Falcon社製)の各穴に標的細胞懸濁液を50μlずつ(1×10
4個/穴)分注した。続いて各穴にエフェクター細胞懸濁液を100μlずつ(2×10
5個/穴)分注することにより、エフェクター細胞と標的細胞の比を20:1とした。次に10M クエン酸緩衝液(pH6.0)を用いて、本項(4)で得た各種抗GD3抗体より0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlの希釈系列を調製し、該希釈溶液を各ウェルに50μl添加することにより、終濃度0.0025μg/ml、0.025μg/ml、0.25μg/ml、2.5μg/mlとした。5%CO
2、37℃の条件下で4時間反応させた後、プレートに対し1200rpmで5分の遠心分離を行った。各穴の上清50μlを12mm径RIAチューブ(IWAKI社製)に分取し、MINAX−γオートガンマーカウンター5550(PACKRD社製)を用いて解離
51Cr量の測定を行った。
【0527】
また、エフェクター細胞懸濁液および抗体溶液に代えてRPMI1640−FBS(10)150μlを添加した系で上記の反応を行うことにより、自然解離
51Cr量の値を求めた。さらにエフェクター細胞懸濁液および抗体溶液に代えて1規定 塩酸 100μlおよびRPMI1640−FBS(10)50μlを添加した系で上記の反応を行うことにより、全解離
51Cr量の値を求めた。これらの値を用いて実施例2の2項(3)記載の式(II)により、ADCC活性を求めた。
【0528】
第29図に各種抗GD3抗体のG−361細胞に対するADCC活性を示した。第28図においてFUT8発現量が低かったmfFUT8−1、mfFUT8−2、mfFUT8−4の3株は、ネガティブコントロールであるpAGE249株導入株と同等の高いADCC活性を示した。一方、第28図においてFUT8発現量が高かったmfFUT8−3、mfFUT8−6、mfFUT8−7の3株は、CHO細胞より取得した抗GD3抗体と同等の低いADCC活性を示した。以上の結果より、宿主細胞のFUT8発現量を調節することにより、産生抗体のADCC活性を調節し得ることが示された。
【0529】
(6)マウスα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子過剰発現株が産生する抗体の糖鎖解析
本項(4)で精製した抗GD3抗体の糖鎖解析を行った。mfFUT8−6、pAGE249株導入株が産生する抗体のヒドラジン分解を行い、糖鎖をタンパク質から切断した[メソッド・オブ・エンザイモロジー(Method of Enzymology),83,263,1982]。減圧留去することによってヒドラジンを除去した後、酢酸アンモニウム水溶液と無水酢酸加えてN−アセチル化を行った。凍結乾燥後、2−アミノピリジンによる蛍光標識を行った[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),95,197,1984]。蛍光標識した糖鎖群(PA化糖鎖群)を、Surperdex Peptide HR 10/30カラム(Pharmacia社製)を用いて過剰な試薬と分離した。糖鎖画分を遠心濃縮機にて乾固させ、精製PA化糖鎖群とした。次に、CLC−ODSカラム(Shimadzu社製)を用いて、精製PA化糖鎖群の逆相HPLC分析を行った(第30図)。ピーク面積から計算すると、mfFUT8−6のα−1,6−フコースのない糖鎖含量は10%、α−1,6−フコース結合糖鎖含量は90%であった。pAGE249のα−1,6−フコースのない糖鎖含量は20%、α−1,6−フコース結合糖鎖含量は80%であった。以上の結果から、FUT8遺伝子を過剰発現させることにより、産生抗体のα−1,6−フコース結合糖鎖含量が増加することがわかった。
【0530】
第30図は、mfFUT8−6、pAGE249導入株によって産生した抗体から調製したPA化糖鎖を、それぞれ逆相HPLCで分析して得た溶離図を示したものである。第30A図にmfFUT8−6、第30B図にpAGE249の溶離図をそれぞれ示す。縦軸に相対蛍光強度、横軸に溶出時間をそれぞれ示す。緩衝液Aとしてリン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)、緩衝液Bとしてリン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)+ 0.5%1−ブタノールを用い、以下のグラジエントで分析した。
【0531】
【表6】
【0532】
第30図と第31図で示した(i)〜(ix)のピークは、以下の構造を示す。
【0533】
【化2】
【0534】
【化3】
【0535】
GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Galはガラクトース、Manはマンノース、Fucはフコース、PAはピリジルアミノ基を示す。第30図と第31図において、α−1,6−フコースを持たない糖鎖群の割合は、(i)〜(ix)のうち(i)〜(iv)のピークが占める面積、α−1,6−フコースが結合した糖鎖群の割合は、(i)〜(ix)のうち(v)〜(ix)のピークが占める面積から算出した。
【0536】
実施例12.CHO細胞α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子の取得
(1)CHO細胞α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)cDNA配列の取得
実施例9(1)において培養2日目のCHO/DG44細胞より調製した一本鎖cDNAより、以下の手順でチャイニーズハムスターFUT8 cDNAを取得した(第32図)。まず、マウスFUT8のcDNA配列(GenBank,AB025198)より、5’側非翻訳領域に特異的なフォワードプライマー(配列番号21に示す)および3’側非翻訳領域に特異的なリバースプライマー(配列番号22に示す)を設計した。
【0537】
次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、前述のCHO/DG44細胞由来cDNA 1μlを含む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、4%DMSO、0.5μmol/l 上記特異的プライマー(配列番号21および配列番号22)]を調製し、PCRを行った。PCRは、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして30サイクルの後、さらに72℃で10分間加熱する条件で行った。
【0538】
PCR後、反応液を0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片約2Kbを精製した。このDNA断片4μlを、TOPO TA cloning Kit(Invitrogen社製)の説明書に従ってプラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。得られたカナマイシン耐性コロニーのうちcDNAが組み込まれた8クローンから、公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。
【0539】
各プラスミドに挿入されたcDNAの塩基配列は、DNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin Elmer社製)を使用して決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により、全ての挿入cDNAが、CHO細胞FUT8のORF全長を含む配列をコードすることを確認した。このうちPCRに伴う塩基の読み誤りを該配列内に全く含まないプラスミドDNAを選択した。以下、本プラスミドをCHfFUT8−pCR2.1と称す。決定したCHO細胞FUT8 cDNAの塩基配列を配列番号1に示した。また、そのアミノ酸配列を配列番号23に示した。
【0540】
(2)CHO細胞α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)ゲノム配列の取得
本項(1)で取得したCHO細胞FUT8 ORF全長cDNA断片をプローブとして用い、CHO−K1細胞由来λ−ファージゲノムライブラリー(STRATEGENE社製)よりモレキュラー・クローニング第2版、 カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、A Laboratory Manual,2
nd Ed.(1989)等に記載の公知のゲノムスクリーニングの方法に従いCHO細胞FUT8ゲノムクローンを取得した。次に、取得したゲノムクローンを各種制限酵素を用いて消化後、CHO細胞FUT8 cDNAの開始コドンを含むAfaI−Sau3AI断片(約280bp)をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行い、陽性を示した制限酵素断片のうちXbaI−XbaI断片(約2.5Kb)およびSacI−SacI断片(約6.5Kb)を選択してpBluescriptII KS(+)(Strategene社製)へ各々挿入した。
【0541】
取得した各ゲノム断片の塩基配列は、DNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Parkin Elmer社製)を用いて決定し、方法は添付マニュアルに従った。本法により、XbaI−XbaI断片はCHO細胞FUT8のエクソン2を含む上流イントロン約2.5Kbの配列を、SacI−SacI断片はCHO細胞FUT8のエクソン2を含む下流イントロン約6.5Kbの配列を各々コードすることを確認した。以下、XbaI−XbaI断片を含むプラスミドをpFUT8fgE2−2、SacI−SacI断片を含むプラスミドをpFUT8fgE2−4と称す。決定したCHO細胞FUT8のエクソン2を含むゲノム領域の塩基配列(約9.0Kb)を配列番号3に示した。
【0542】
実施例13.α−1,6−フコース転移酵素遺伝子を破壊したCHO細胞の作製と該細胞を用いた抗体の生産
CHO細胞α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子エクソン2を含むゲノム領域を欠失したCHO細胞を作製し、該細胞が生産する抗体のADCC活性を評価した。
【0543】
1.チャイニーズハムスターα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子エクソン2ターゲティングベクタープラスミドpKOFUT8Puroの構築
(1)プラスミドploxPPuroの構築
以下の手順でプラスミドploxPPuroを構築した(第33図)。
【0544】
プラスミドpKOSelectPuro(Lexicon社製)1.0μgをNEBuffer 4(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素AscI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、ピューロマイシン耐性遺伝子発現ユニットを含む約1.5KbのDNA断片を精製した。
【0545】
一方、特開平11−314512号公報に記載のプラスミドploxP 1.0μgをNEBuffer 4(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素AscI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約2.0KbのDNA断片を精製した。
【0546】
上記で得たプラスミドpKOSelectPuro由来のAscI−AscI断片(約1.5Kb)4.5μl、プラスミドploxP由来のAscI−AscI断片(約2.0Kb)0.5μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、ploxPPuroと称す。
【0547】
(2)プラスミドpKOFUT8gE2−1の構築
実施例12(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8のエクソン2を含むゲノム領域を有するプラスミドpFUT8fgE2−2を用いて、以下の手順でプラスミドpKOFUT8gE2−1を構築した(第34図)。
プラスミドpFUT8fgE2−2 2.0μgを、100μg/ml BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 1(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、制限酵素SacI(New England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、100μg/ml BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素EcoRV(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約1.5KbのDNA断片を精製した。
【0548】
一方、プラスミドLITMUS28(New England Biolabs社製)1.0μgを、100μg/ml
BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 1(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、制限酵素SacI(New England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、100μg/ml BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素EcoRV(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約2.8KbのDNA断片を精製した。上記で得たプラスミドpFUT8fgE2−2由来のEcoRV−SacI断片(約1.5Kb)4.5μl、プラスミドLITMUS28由来のEcoRV−SacI断片(約2.8Kb)0.5μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFUT8gE2−1と称す。
【0549】
(3)プラスミドpKOFUT8gE2−2の構築
本項(2)で得たプラスミドpKOFUT8gE2−1を用いて、以下の手順でプラスミドpKOFUT8gE2−2を構築した(第35図)。
プラスミドpKOFUT8gE2−1 2.0μgを、100μg/ml BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 2(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、制限酵素EcoRV(New England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、100μg/ml BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 1(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、20単位の制限酵素KpnI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約1.5KbのDNA断片を精製した。
【0550】
一方、プラスミドploxPPuro 1.0μgを、NEBuffer 4(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、制限酵素HpaI(New England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、100μg/ml BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer 1(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、20単位の制限酵素KpnI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約3.5KbのDNA断片を精製した。
【0551】
上記で得たプラスミドpKOFUT8gE2−1由来のEcoRV−KpnI断片(約1.5Kb)4.0μl、プラスミドploxPPuro由来のHpaI−KpnI断片(約3.5Kb)1.0μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。
該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFUT8gE2−2と称す。
【0552】
(4)プラスミドpscFUT8gE2−3の構築
実施例12(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8のエクソン2を含むゲノム領域を有するプラスミドpFUT8fgE2−4を用いて、以下の手順でプラスミドpscFUT8gE2−3を構築した(第36図)。
【0553】
プラスミドpFUT8fgE2−4 2.0μgをNEBuffer 1(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素HpaII(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、Blunting High(東洋紡社製)を用い、添付の説明書に従ってDNA末端の平滑化を行った。フェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿を行ってDNA断片を回収した後、NEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素HindIII(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約3.5KbのDNA断片を精製した。
【0554】
一方、プラスミドLITMUS39(New England Biolabs社製)1.0μgをNEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素EcoRV(New England Biolabs社製)および20単位の制限酵素HindIII(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約2.8KbのDNA断片を精製した。
【0555】
上記で得たプラスミドpFUT8fgE2−4由来のHpaII−HindIII断片(約3.5Kb)4.0μl、プラスミドLITMUS39由来のEcoRV−HindIII断片(約2.8Kb)1.0μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pscFUT8gE2−3と称す。
【0556】
(5)プラスミドpKOFUT8gE2−3の構築
実施例12(2)で得たチャイニーズハムスターFUT8のエクソン2を含むゲノム領域を有するプラスミドpFUT8fgE2−4を用いて、以下の手順でプラスミドpKOFUT8gE2−3を構築した(第37図)。
【0557】
プラスミドpFUT8fgE2−4 2.0μgをNEBuffer for EcoRI(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素EcoRI(New England Biolabs社製)および20単位の制限酵素HindIII(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約1.8KbのDNA断片を精製した。
【0558】
一方、プラスミドpBluescriptII KS(+)(Strategene社製)1.0μgをNEBuffer for EcoRI(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素EcoRI(New England Biolabs社製)および20単位の制限酵素HindIII(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約3.0KbのDNA断片を精製した。
【0559】
上記で得たプラスミドpFUT8fgE2−4由来のHindIII−EcoRI断片(約1.8Kb)4.0μl、プラスミドpBluescriptII KS(+)由来のHindIII−EcoRI断片(約3.0Kb)1.0μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。
【0560】
該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFUT8gE2−3と称す。
【0561】
(6)プラスミドpKOFUT8gE2−4の構築
本項(4)および(5)で得たプラスミドpscFUT8gE2−3およびpKOFUT8gE2−3を用いて、以下の手順でプラスミドpKOFUT8gE2−4を構築した(第38図)。
【0562】
プラスミドpscFUT8gE2−3 1.0μgを、100μg/ml BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer for SalI(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、制限酵素SalI(New England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、NEBuffer 2(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、20単位の制限酵素HindIII(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約3.6KbのDNA断片を精製した。
【0563】
一方、プラスミドpKOFUT8gE2−3 1.0μgを、100μg/ml BSA(New England Biolabs社製)を含むNEBuffer for SalI(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、制限酵素SalI(New England Biolabs社製)20単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、NEBuffer 2(New England Biolabs社製)35μlに溶解し、20単位の制限酵素HindIII(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、pH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液 35μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)3.5μlを添加し、65℃で30分間反応させることによりDNA末端の脱リン酸化を行った。脱リン酸化処理後、フェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿を行い、回収したDNA断片を滅菌水10μlに溶解した。
【0564】
上記で得たプラスミドpscFUT8gE2−3由来のSalI−HindIII断片(約3.1Kb)4.0μl、プラスミドpKOFUT8gE2−3由来のSalI−HindIII断片(約4.8Kb)1.0μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFUT8gE2−4と称す。
【0565】
(7)プラスミドpKOFUT8gE2−5の構築
本項(3)および(6)で得たプラスミドpKOFUT8gE2−2およびpKOFUT8gE2−4を用いて、以下の手順でプラスミドpKOFUT8gE2−5を構築した(第39図)。
【0566】
プラスミドpKOFUT8gE2−2 1.0μgをNEBuffer 4(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、制限酵素SmaI(New England Biolabs社製)20単位を加えて25℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、NEBuffer 2(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、20単位の制限酵素BamHI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、pH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液30μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)3.0μlを添加し、65℃で1時間反応させることによりDNA末端の脱リン酸化を行った。脱リン酸化処理後、フェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿を行い、回収したDNA断片を滅菌水 10μlに溶解した。
【0567】
一方、プラスミドpKOFUT8gE2−4 1.0μgをNEBuffer 4(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、制限酵素SmaI(New England Biolabs社製)20単位を加えて25℃で2時間消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、NEBuffer 2(New England Biolabs社製)30μlに溶解し、20単位の制限酵素BamHI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約5.2KbのDNA断片を精製した。
【0568】
上記で得たプラスミドpKOFUT8gE2−2由来のSmaI−BamHI断片(約5.0Kb)0.5μl、プラスミドpKOFUT8gE2−4由来のSmaI−BamHI断片(約5.42 Kb)4.5μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で15時間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFUT8gE2−5と称す。
【0569】
(8)プラスミドpKOFUT8Puroの構築
本項(7)で得たプラスミドpKOFUT8gE2−5を用いて、以下の手順でプラスミドpKOFUT8Puroを構築した(第40図)。
プラスミドpKOSelectDT(Lexicon社製)1.0μgをNEBuffer 4(New England Biolabs社製)50μlに溶解し、制限酵素RsrII(New England Biolabs社製)16単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、該液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、ジフテリアトキシン発現ユニットを含む約1.2KbのDNA断片を精製した。
【0570】
一方、プラスミドpKOFUT8gE2−5 1.0μgをNEBuffer 4(New England Biolabs社製)50μlに溶解し、制限酵素RsrII(New England Biolabs社製)16単位を加えて37℃で2時間消化反応を行った。消化反応後、pH8.0の1mol/l Tris−HCl緩衝液 30μlおよび大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)3.0μlを添加し、65℃で1時間反応させることによりDNA末端の脱リン酸化を行った。脱リン酸化処理後、フェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿を行い、回収したDNA断片を滅菌水 10μlに溶解した。
【0571】
上記で得たプラスミドpKOSelectDT由来のRsrII−RsrII断片(約1.2Kb)1.0μl、プラスミドpKOFUT8gE2−5由来のRsrII−RsrII断片(約10.4Kb)1.0μl、滅菌水3.0μl、Ligation High(東洋紡社製)5.0μlを混合し、16℃で30分間反応させることにより結合反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより公知の方法に従って各々プラスミドDNAを単離した。本プラスミドを以下、pKOFUT8Puroと称す。
【0572】
2.α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子エクソン2を含むゲノム領域を1コピー破壊したCHO細胞の作製
(1)ターゲティングベクターの導入
本実施例第1項で構築したチャイニーズハムスターFUT8ゲノム領域ターゲティングベクターpKOFUT8Puroを実施例8の1(2)で作製した5−03株へ導入した。
【0573】
プラスミドpKOFUT8Puroの5−03株への遺伝子導入はエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]に準じて以下の手順で行った。まず、プラスミドpKOFUT8Puro 150μgをNEBuffer for SalI(New England Biolabs社製)1.8mlに溶解し、600単位の制限酵素SalI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で5時間消化反応を行うことにより線状化した。該反応液に対しフェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿を行い、回収した線状化プラスミドを1μg/μl水溶液とした。一方、5−03株をK−PBS緩衝液(137mmol/l KCl、2.7mmol/l NaCl、8.1mmol/l Na
2HPO4、1.5mmol/l KH
2PO
4、4.0mmol/l MgCl
2)に懸濁して8×10
7個/mlとした。細胞懸濁液200μl(1.6×10
6個)を上記線状化プラスミド4μl(4μg)と混和した後、細胞−DNA混和液の全量をGene Pulser Cuvette(電極間距離2mm)(BIO−RAD社製)へ移し、細胞融合装置Gene Pulser(BIO−RAD社製)を用いてパルス電圧350V、電気容量250μFの条件で遺伝子導入を行った。同様にしてキュベット30本分に対し遺伝子導入した後、細胞懸濁液を10% ウシ胎児血清(Life Technologies社製)および1倍濃度のHT supplement(Life Technologies社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)に懸濁し、接着細胞培養用10cmディッシュ(Falcon社製)30枚へ播種した。5%CO
2、37℃の条件下で24時間培養した後、培養上清を除去し、15μg/mlPuromycin(SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を10mlずつ分注した。この培地交換作業を3〜4日毎に繰り返しながら10日間の培養を行い、ピューロマイシン耐性株を取得した。
【0574】
(2)ターゲティングベクター導入株の取得
本項(1)で得たピューロマイシン耐性株より任意の900個のコロニーを以下の手順で採取した。まず、ピューロマイシン耐性株が出現した10cm ディッシュより培養上清を除去し、リン酸緩衝液 7mlを注入した後、実体顕微鏡下に移した。次にピペットマン(GILSON社製)を用いてコロニーを掻き取って吸い込み、丸底96穴プレート(Falcon社製)へ採取した。トリプシン処理を行った後、接着細胞用平底96穴プレート(岩城硝子社製)へ各クローンを播種し、15μg/ml Puromycin(SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を用いて1週間培養した。
【0575】
培養後、上記プレートの各クローンに対しトリプシン処理を行い、2倍量の凍結培地(20% DMSO、40% ウシ胎児血清、40% IMDM)と混和した。このうち半量を接着細胞用平底96穴プレート(岩城硝子社製)へ播種してレプリカプレートとする一方、残りの半量をマスタープレートとして凍結保存に供した。レプリカプレートは、15μg/ml Puromycin(SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を用いて1週間培養した。
【0576】
(3)ゲノムPCRによる相同組換えの診断
本項(2)で得た900クローンに対し、以下の手順でゲノムPCRによる相同組換えの診断を行った。まず、本項(2)で作製したレプリカプレートより公知の方法[アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry),201,331(1992)]に従って各クローンのゲノムDNAを調製し、各々TE−RNase緩衝液(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA、200μg/ml RNase A)30μlに一晩溶解した。また、FUT8ゲノム領域のうちターゲティングベクター相同領域を越えた部分の配列に結合するプライマー(配列番号26に示す)およびベクター内のloxP配列に結合するプライマー(配列番号27に示す)を設計した。
【0577】
DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、上記で調製したゲノムDNA溶液を各々10μl含む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l 上記遺伝子特異的プライマー(配列番号26および配列番号27)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCRは、94℃で3分間の加熱の後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとした38サイクルの条件で行った。
【0578】
PCR後、反応液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、CHO細胞ゲノム領域とターゲティングベクター相同領域との境界部を含む約1.7Kbの特異的増幅が認められるものを陽性クローンとした。本法により陽性を示す1クローンを見出した。
【0579】
(4)ゲノムサザンブロットによる相同組換えの診断
本項(3)で陽性が確認された1クローンに対し、以下の手順でゲノムサザンブロットによる相同組換えの診断を行った。
本項(2)で凍結保存したマスタープレートのうち、本項(3)で見出された陽性クローンを含む96穴プレートを選択し、5%CO
2、37℃の条件下で10分間静置した。静置後、陽性クローンに該当するウェルから細胞を接着細胞用平底24穴プレート(Greiner社製)へ播種した。15μg/ml Puromycin(SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を用いて1週間培養した後、接着細胞用平底6穴プレート(Greiner社製)へ播種した。該プレートより公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),3,2303(1976)]に従って各クローンのゲノムDNAを調製し、各々TE−RNase緩衝液(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA、200μg/ml RNase A)150μlに一晩溶解した。
【0580】
上記で調製したゲノムDNA 12μgをNEBuffer 3(New England Biolabs社製)120μlに溶解し、25単位の制限酵素PstI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で一晩消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、TE緩衝液(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA)20μlに溶解し、0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後、公知の方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),76,3683(1979)]に従い、ナイロン膜へゲノムDNAを転写した。転写終了後、ナイロン膜に対し80℃で2時間の熱処理を行った。
【0581】
一方、サザンブロットに用いるプローブを以下のように調製した。まず、FUT8ゲノム領域のうちターゲティングベクター相同領域を越えた部分の配列に結合するプライマー(配列番号28および配列番号29)を設計した。次に、DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、実施例12(2)で得たプラスミドpFUT8fgE2−2 4.0ngを含む20μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l 上記遺伝子特異的プライマー(配列番号28および配列番号29)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCRは、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で1分間からなる反応を1サイクルとした25サイクルの条件で行った。PCR後、反応液を1.75%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約230bpのプローブDNA断片を精製した。得られたプローブDNA溶液 5μlに対し、[α−
32P]dCTP 1.75MBqおよびMegaprime DNA Labelling system,dCTP(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて放射線標識した。
【0582】
ハイブリダイゼーションは以下のように行った。まず、上記のナイロン膜をローラーボトルへ封入し、ハイブリダイゼーション液[5ラSSPE、50ラDenhaldt’s液、0.5%(w/v)SDS、100μg/ml サケ精子DNA]15mlを加えて65℃で3時間のプレハイブリダイゼーションを行った。次に、
32P標識したプローブDNAを熱変性してボトルへ投入し、65℃で一晩加温した。
【0583】
ハイブリダイゼーション後、ナイロン膜を2×SSC−0.1%(w/v)SDS 50mlに浸漬し、65℃で15分間加温した。上記の洗浄操作を2回繰り返した後、膜を0.2×SSC−0.1%(w/v)SDS 50mlに浸漬し、65℃で15分間加温した。洗浄後、ナイロン膜をX線フィルムへ−80℃で二晩暴露し現像した。
【0584】
前述の制限酵素PstI処理により、野生型FUT8対立遺伝子から約4.4KbのDNA断片が生じる。一方、同制限酵素処理により、ターゲティングベクターとの相同組換えが起こった対立遺伝子から約6.0KbのDNA断片が生じる。
【0585】
本法により、本項(3)における陽性クローンのゲノムDNAより上記約4.4Kbおよび約6.0Kbの特異的断片が見出された。両断片の量比が1:1であったことから、本クローンは、FUT8対立遺伝子を1コピー破壊したクローンであることが確認された。本クローンを以下、1st.△FUT8 2−46株と称す。
【0586】
3.α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子を1コピー破壊したCHO細胞からの薬剤耐性遺伝子の除去
(1)Creリコンビナーゼ発現ベクターの導入
本実施例第2項で作製した1st.△FUT8 2−46株へ、Creリコンビナーゼ発現ベクターpBS185(Life Technologies社製)を導入した。
【0587】
プラスミドpBS185の1st.△FUT8 2−46株への遺伝子導入はエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]に準じて以下の手順で行った。
【0588】
まず、1st.△FUT8 2−46株をK−PBS緩衝液[137mmol/l KCl、2.7mmol/l NaCl、8.1mmol/l Na
2HPO4、1.5mmol/l KH
2PO
4、4.0mmol/l MgCl
2]に懸濁して8×10
7個/mlとした。細胞懸濁液200μl(1.6×10
6個)をプラスミドpBS185 4μgと混和した後、細胞−DNA混和液の全量をGene Pulser Cuvette(電極間距離2mm)(BIO−RAD社製)へ移し、細胞融合装置Gene Pulser(BIO−RAD社製)を用いてパルス電圧350V、電気容量250μFの条件で遺伝子導入を行った。
【0589】
導入後、細胞懸濁液を10% ウシ胎児血清(Life Technologies社製)および1倍濃度のHT supplement(Life Technologies社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)10mlに懸濁し、さらに同培地を用いて2万倍希釈した。接着細胞培養用10cm ディッシュ(Falcon社製)7枚へ播種後、5%CO
2、37℃の条件下で24時間培養した。培養後、上清を除去し、10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を10mlずつ分注した。この培地交換作業を3〜4日毎に繰り返しながら10日間の培養を行った。
【0590】
(2)Creリコンビナーゼ発現ベクター導入株の取得
本項(1)で得た株より任意の400個のコロニーを以下の手順で採取した。
まず、10cm ディッシュより培養上清を除去し、リン酸緩衝液7mlを注入した後、実体顕微鏡下に移した。次にピペットマン(GILSON社製)を用いてコロニーを掻き取って吸い込み、丸底96穴プレート(Falcon社製)へ採取した。トリプシン処理を行った後、接着細胞用平底96穴プレート(岩城硝子社製)へ各クローンを播種し、10%ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を用いて1週間培養した。
【0591】
培養後、上記プレートの各クローンに対しトリプシン処理を行い、2倍量の凍結培地(20%DMSO、40% ウシ胎児血清、40% IMDM)と混和した。このうち半量を接着細胞用平底96穴プレート(岩城硝子社製)へ播種してレプリカプレートを作製する一方、残りの半量をマスタープレートとして凍結保存に供した。
【0592】
次に、レプリカプレートを15μg/ml Puromycin(SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を用いて6日間培養した。Creリコンビナーゼの発現によりloxP配列に挟まれたピューロマイシン耐性遺伝子が除去された陽性クローンは、ピューロマイシン存在下で死滅する。 本選択法により91個の陽性クローンを見出した。
【0593】
(3)ゲノムサザンブロットによる薬剤耐性遺伝子除去の診断
本項(2)で見出された陽性クローンのうち任意の6クローンに対し、以下の手順でゲノムサザンブロットによる薬剤耐性遺伝子除去の診断を行った。本項(2)で凍結保存したマスタープレートのうち、上記6クローンを含む96穴プレートを選択し、5%CO
2、37℃の条件下で10分間静置した。静置後、上記クローンに該当するウェルから細胞を接着細胞用平底24穴プレート(Greiner社製)へ播種した。10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)を用いて1週間培養した後、接着細胞用平底6穴プレート(Greiner社製)へ播種した。該プレートより公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),3,2303(1976)]に従って各クローンのゲノムDNAを調製し、各々TE−RNase緩衝液(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA、200μg/ml RNase A)150μlに一晩溶解した。
【0594】
上記で調製したゲノムDNA 12μgをNEBuffer for BamHI(New England Biolabs社製)120μlに溶解し、20単位の制限酵素BamHI(New England Biolabs社製)を加えて37℃で一晩消化反応を行った。該反応液よりエタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、TE緩衝液(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA)20μlに溶解し、0.4%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後、公知の方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),76,3683(1979)]に従い、ナイロン膜へゲノムDNAを転写した。転写終了後、ナイロン膜に対し80℃で2時間の熱処理を行った。
【0595】
一方、サザンブロットに用いるプローブを以下のように調製した。まず、FUT8ゲノム領域のうちターゲティングベクター相同領域を越えた部分の配列に結合するプライマー(配列番号30および配列番号31)を設計した。次に、DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、実施例12(2)で得たプラスミドpFUT8fgE2−2 4.0ngを含む20μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/l dNTPs、0.5μmol/l上記遺伝子特異的プライマー(配列番号30および配列番号31)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCRは、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で1分間からなる反応を1サイクルとした25サイクルの条件で行った。PCR後、反応液を1.75%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、約230bpのプローブDNA断片を精製した。得られたプローブDNA溶液5μlに対し、[α−
32P]dCTP 1.75MBqおよび Megaprime DNA Labelling system,dCTP(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて放射線標識した。
【0596】
ハイブリダイゼーションは以下のように行った。まず、上記のナイロン膜をローラーボトルへ封入し、ハイブリダイゼーション液(5ラSSPE、50ラDenhaldt’s液、0.5%(w/v)SDS、100μg/ml サケ精子DNA)15mlを加えて65℃で3時間のプレハイブリダイゼーションを行った。次に、
32P標識したプローブDNAを熱変性してボトルへ投入し、65℃で一晩加温した。
【0597】
ハイブリダイゼーション後、ナイロン膜を2×SSC−0.1%(w/v)SDS 50mlに浸漬し、65℃で15分間加温した。上記の洗浄操作を2回繰り返した後、膜を0.2×SSC−0.1%(w/v)SDS 50mlに浸漬し、65℃で15分間加温した。洗浄後、ナイロン膜をX線フィルムへ−80℃で二晩暴露し現像した。
【0598】
前述の制限酵素BamHI処理により、野生型FUT8対立遺伝子から約19.0KbのDNA断片が生じる。また、同制限酵素処理により、ターゲティングベクターとの相同組換えが起こった対立遺伝子から約12.5KbのDNA断片が生じる。さらに、相同組換えが起こった対立遺伝子からピューロマイシン耐性遺伝子(約1.5Kb)が除去された場合には、同処理により約11.0KbのDNA断片が生じる。
【0599】
本法により、上記6クローンのうち5クローンのゲノムDNAより上記約19.0Kbおよび約11.0Kbの特異的断片が見出された。両断片の量比が1:1であったことから、FUT8ゲノム領域を1コピー破壊した株よりピューロマイシン耐性遺伝子が除去されたことが示された。本クローンを以下、1st.△FUT8 2−46−1株と称す。尚、上述の1st.△FUT8 2−46−1株、1st.△FUT8 2−46株、及び、5−03株のゲノムサザンの結果を第41図に示した。なお1st.△FUT8 2−46−1株は2−46−1の株名で、平成13年9月26日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地 中央第6)にFERM BP−7755として寄託されている。
【0600】
4.α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子破壊株が産生する抗体の精製
本実施例第3項で得たFUT8対立遺伝子を1コピー破壊した株1st.△FUT8 2−46−1株を、3×10
5個/mlの密度で15μg/ml Puromycin(SIGMA社製)および10% ウシ胎児透析血清(Life Technologie社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)へ懸濁後、接着細胞培養用T182フラスコ(Greiner社製)2本に計60ml各々播種した。3日間の培養後、上清を除去し、EXCELL301培地(JRH Biosciences社製)計60mlへ交換した。
【0601】
これを37℃の5%CO
2インキュベーター内で7日間培養後、細胞懸濁液を回収した。該細胞懸濁液に対し3000rpm、4℃の条件で10分間の遠心分離を行って上清を回収し、10000rpm、4℃の条件で1時間の遠心分離を行った後、0.22μm孔径150ml容PES Filter Unit(NALGENE社製)を用いて濾過した。
【0602】
0.8cm径のカラムにProsep−A HighCapacity(bioPROCESSING社製)を厚さ2cmで充填し、0.1mol/l クエン酸緩衝液(pH3.0)10mlおよび1mol/l グリシン/NaOH−0.15mol/l NaCl緩衝液(pH8.6)10mlで順次洗浄することによって担体の平衡化を行った。次に、上記培養上清100mlをカラムに通塔し、1mol/l グリシン/NaOH−0.15mol/l NaCl緩衝液(pH8.6)50mlで洗浄した。洗浄後、0.1mol/l クエン酸緩衝液(pH3.0)2.5mlを用いてProsep−Aに吸着した抗体の溶出を行い、溶出液を500μlずつ分画すると共に、各画分をそれぞれ2mol/l Tris−HCl(pH8.5)100μlと混合して中和した。BCA法[アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.),150,76(1985)]を用いて抗体を高濃度で含む2画分(計1.2ml)を選択して合一し、10mol/l クエン酸−0.15mol/l NaCl緩衝液(pH6.0)を用いて4℃で一昼夜透析を行った。透析後、抗体溶液を回収し、0.22μm孔径Millex GV(MILLIPORE社製)を用いて滅菌濾過した。
【0603】
5.α−1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子破壊株が産生する抗体のin vitro細胞傷害活性(ADCC活性)
本実施例第4項で精製した抗CCR4抗体のin vitro細胞傷害活性を評価するため、実施例8に記載のCCR4陽性細胞株CCR4/EL−4を用いたADCC活性を行った。
【0604】
10% ウシ胎児血清(Life Technologie社製)を含むRPMI1640培地(Life Technologie社製)(以下、RPMI1640−FBS(10)と略記する)で継代培養したCCR4/EL−4株1×10
6個をRPMI1640−FBS(10)500μlに懸濁し、Na
251CrO
4 3.7MBqを添加して37℃で90分間培養することにより、細胞の放射線標識を行った。1200rpmで5分の遠心分離を行った後、上清を除去し、標識細胞をRPMI1640−FBS(10)5mlに懸濁した。この洗浄操作を3回繰り返した後、細胞懸濁液を氷上で30分間静置して放射性物質を自然解離させた。再び上記の洗浄操作を2回繰り返した後、RPMI1640−FBS(10)5mlに懸濁することにより、2.0×10
5個/mlの標的細胞懸濁液を調製した。
【0605】
一方、健常人の静脈血 30mlを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)0.5mlを加えて穏やかに混和した後、生理的食塩水(大塚製薬社製)30mlと混合した。混合後、各10mlをそれぞれLymphoprep(NYCOMED PHARMA
AS社製)4ml上に穏やかに重層し、室温下2000rpmで30分間の遠心分離を行った。分離された単核球画分を各遠心管より集めて合一し、RPMI1640−FBS(10)30mlに懸濁した。室温下1200rpmで15分の遠心分離を行った後、上清を除去し、該細胞をRPMI1640−FBS(10)20mlに懸濁した。この洗浄操作を2回繰り返した後、RPMI1640−FBS(10)を用いて2.5×10
6個/mlのエフェクター細胞懸濁液を調製した。
【0606】
96穴U字底プレート(Falcon社製)の各穴に標的細胞懸濁液を50μlずつ(1×10
4個/穴)分注した。続いて各穴にエフェクター細胞懸濁液を100μlずつ(2.5×10
5個/穴)分注することにより、エフェクター細胞と標的細胞の比を25:1とした。次にRPMI1640−FBS(10)を用いて、本実施例第4項で得た各抗CCR4抗体より0.01μg/ml、0.1μg/ml、1μg/ml、10μg/mlの希釈系列を調製し、該希釈溶液を各ウェルに50μl添加することにより、終濃度0.0025μg/ml、0.025μg/ml、0.25μg/ml、2.5μg/mlとした。5%CO
2、37℃の条件下で4時間反応させた後、プレートに対し1200rpmで5分の遠心分離を行った。各穴の上清75μlを12mm径RIAチューブ(IWAKI社製)に分取し、MINAX−αオートガンマーカウンター5550(PACKRD社製)を用いて解離
51Cr量の測定を行った。
【0607】
また、エフェクター細胞懸濁液および抗体溶液に代えてRPMI1640−FBS(10)150μlを添加した系で上記の反応を行うことにより、自然解離
51Cr量の値を求めた。さらにエフェクター細胞懸濁液および抗体溶液に代えて1規定 塩酸 100μlおよびRPMI1640−FBS(10)50μlを添加した系で上記の反応を行うことにより、全解離
51Cr量の値を求めた。
これらの値を用いて前記式(II)により、ADCC活性を求めた。
【0608】
第42図に各種抗CCR4抗体のADCC活性を示した。FUT8対立遺伝子を1コピー破壊した1st.△FUT8 2−46−1株より得た抗体は、該遺伝子破壊前のCHO細胞5−03株が産生する抗体に比べ有意に高いADCC活性を示した。また、これら抗体での抗原結合活性には変化は観察されなかった。以上の結果より、宿主細胞のFUT8対立遺伝子を破壊することにより、産生抗体のADCC活性を向上し得ることが確認された。
【0609】
実施例14.レクチン耐性CHO/DG44細胞の作製と該細胞を用いた抗体の生産
(1)レクチン耐性CHO/DG44株の取得
CHO/DG44細胞を、IMDM−FBS(10)培地[ウシ胎児血清(FBS)を10%、HT supplement(GIBCO BRL社製)を1倍濃度含むIMDM培地]にて接着培養用フラスコ75cm
2(グライナー社製)中で培養し、コンフルエント直前まで増殖させた。5mlのダルベッコPBS(インビトロジェン社製)にて細胞を洗浄後、ダルベッコPBSで希釈した0.05%トリプシン(インビトロジェン社製)を1.5ml添加して37℃にて5分間放置し、細胞を培養器底面から剥離させた。
【0610】
剥離させた細胞を通常の細胞培養で行われる遠心操作により回収し、1エ10
5細胞/mlの密度になるようにIMDM−FBS(10)培地を添加して懸濁後、未添加又は0.1μg/mlのアルキル化剤であるN−methyl−N’−nitro−N−nitrosoguanidin(以下、MNNGと表記、Sigma社製)を添加した。CO
2インキュベータ(TABAI製)内で37℃にて3日間放置後、培養上清を除き、再び上述した操作と同様の操作で細胞を洗浄、剥離、回収し、IMDM−FBS(10)培地に懸濁後、接着培養用96穴プレート(岩城硝子社製)に1000細胞/ウエルの密度で播種した。
【0611】
各ウエルには培地中終濃度で1mg/mlのレンズマメ凝集素(Lens culinaris agglutinin;以下、LCAと表記、Vector社製)、あるいは1mg/mlのヒイロチャワンタケ凝集素(Aleuria aurantia Lectin;以下、AALと表記、Vector社製)、あるいは1mg/mlのインゲンマメ凝集素(Phaseolus vulgaris Leucoagglutinin;以下、L−PHAと表記、Vector社製)を添加した。
【0612】
CO
2インキュベータ内で37℃にて2週間培養後、出現したコロニーをレクチン耐性CHO/DG44株として取得した。取得したそれぞれのレクチン耐性CHO/DG44株については、LCA耐性株をCHO−LCA株、AAL耐性株をCHO−AAL株、L−PHA耐性株をCHO−PHA株と名付けた。取得したこれら株の各種レクチンに対する耐性を調べたところ、CHO−LCA株はAALに対しても耐性であり、CHO−AAL株はLCAに対しても耐性であることが分かった。
【0613】
さらに、CHO−LCA株及びCHO−AAL株は、LCAやAALが認識する糖鎖構造と同じ糖鎖構造を認識するレクチン、すなわち、N−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミン残基の6位とフコースの1位がα結合で付加された糖鎖構造を認識するレクチンに対しても耐性を示した。
【0614】
具体的には、終濃度1mg/mlのエンドウマメ凝集素(Pisum sativum
Agglutinin;以下、PSAと表記、Vector社製)が添加された培地でもCHO−LCA株及びCHO−AAL株は耐性を示し生存することが分かった。また、アルキル化剤MNNG無添加の場合でも、上述の処理を施す細胞数を増やすことでレクチン耐性株を取得することが可能であった。以後、それら株を解析に用いた。
【0615】
(2)抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞の作製
上記(1)で得られた3種類のレクチン耐性株に、実施例8に記載した方法で、抗CCR4ヒト型キメラ抗体発現プラスミドpKANTEX2160を導入し、薬剤MTXによる遺伝子増幅を行い、抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産株を作製した。抗体発現量の測定は実施例8の2に記載したELISA法を用いて行い、CHO−LCA株、CHO−AAL株、CHO−PHA株、それぞれから抗体を発現した形質転換株を取得した。
【0616】
取得したそれぞれの形質転換株については、CHO−LCA株由来の形質転換株をCHO/CCR4−LCA株、CHO−AAL株由来の形質転換株をCHO/CCR4−AAL株、CHO−PHA株由来の形質転換株をCHO/CCR4−PHA株と名付けた。なおCHO/CCR4−LCA株はNega−13の株名で、平成13年9月26日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地 中央第6)にFERM BP−7756として寄託されている。
【0617】
(3)レクチン耐性CHO細胞による高ADCC活性抗体の生産
上記(2)で得られた3種類の形質転換株を用い、実施例8の3に記載した方法で精製抗体を取得した。各抗CCR4ヒト型キメラ抗体精製標品の抗原結合活性は実施例8の2に記載したELISA法を用いて評価した。いずれの形質転換株が生産する抗体も、実施例8で作製した通常のCHO/DG44細胞を宿主とした組換え細胞株(5−03株)が生産する抗体と同等の抗原結合活性を示した。
【0618】
それら精製抗体を用い、実施例8の7に記載した方法にしたがって各抗CCR4ヒト型キメラ抗体精製標品のADCC活性を評価した。その結果を
図43に示した。5−03株が生産した抗体と比較して、CHO/CCR4−LCA株及びCHO/CCR4−AAL株が生産した抗体では、約100倍程度のADCC活性の上昇が観察された。一方、CHO/CCR4−PHA株が生産した抗体では有意なADCC活性の上昇は観察されなかった。
【0619】
また、CHO/CCR4−LCA株とYB2/0株が生産した抗体のADCC活性を実施例8の7に記載した方法にしたがって比較したところ、CHO/CCR4−LCA株が生産した抗体は実施例8の1で作製したYB2/0細胞株が生産した抗体KM2760−1と同様に、5−03株が生産した抗体に比べ高いADCC活性を示すことが明らかとなった(第44図)。
【0620】
(4)レクチン耐性CHO細胞が生産する抗体の糖鎖解析
上記(3)で精製した抗CCR4ヒト型キメラ抗体の糖鎖解析を行った。精製したそれぞれの抗体を、ウルトラフリー0.5−10K(ミリポア社製)を用いて10mM KH
2PO
4に溶液を置換した。置換倍率は80倍以上になるように行なった。抗体は、UV−1600(島津社製)を用いて濃度を測定した。抗体のアミノ酸配列から式(III)[アドバンスズ・イン・プロテインケミストリー(Advances in Protein Chemistry),12,303,1962]を用いてモル吸光定数を算出し、280nmの吸光度1.0を1.38mg/mlとして濃度を決定した。
【0621】
【数2】
【0622】
E
1mol/ml = E
1mol/l /MW
E
1mol/l: 280nmでの吸光係数(mg
−1 ml cm
−1)
E
1mol/ml: 280nmでのモル吸光係数(M
−1cm
−1)
A: トリプトファンの280nmでのモル吸光係数=5550(M
−1cm
−1)
B: チロシンの280nmでのモル吸光係数=1340(M
−1cm
−1)
C: シスチンの280nmでのモル吸光係数=200(M
−1cm
−1)
n1: 抗体1分子あたりのトリプトファンの数
n2: 抗体1分子あたりのチロシンの数
n3: 抗体1分子あたりのシスチンの数
MW: 抗体の分子量(g/mol)
【0623】
100μgの抗体をヒドラクラブS−204用Test tubeに入れ、遠心濃縮機にて乾固した。サンプルを乾固させたTest tubeをホーネン社製ヒドラクラブにてヒドラジン分解を行なった。ヒドラジンはホーネン社製ヒドラジン分解試薬を用い、110℃、1時間反応させた[メソッド・オブ・エンザイモロジー(Method of Enzymology),83,263,1982]。反応後ヒドラジンを減圧留去させて、反応容器を30分間放置して室温に戻した。
【0624】
Test tubeにホーネン社製アセチル化試薬のacetylation reagentを250μl、無水酢酸を25μl入れてよく攪拌させ、室温で30分間反応させた。さらにacetylation reagentを250μl、無水酢酸を25μl加えてよく攪拌させ、室温で1時間反応させた。試料を−80℃のフリーザーで凍結させ、約17時間凍結乾燥させた。凍結乾燥した試料から、TaKaRa社製セルロースカートリッジ グリカンプレパレーションキットを用いて糖鎖を回収した。
【0625】
試料糖鎖溶液を遠心濃縮機にて乾固後、2−アミノピリジンによる蛍光標識を行った[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),95,197,1984]。2−アミノピリジン溶液は2−アミノピリジン1gに対しHCl760μlを加え(1×PA溶液)、その溶液を逆浸透精製水で10倍に希釈したものを用いた(10倍希釈PA溶液)。シアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム10mgに対し1×PA溶液20μl、逆浸透精製水430μlを加えて調製した。
【0626】
試料に10倍希釈PA溶液を67μl入れて100℃、15分反応させ、放冷後にシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液を2μl入れて90℃、12時間反応させて試料糖鎖を蛍光標識した。蛍光標識した糖鎖群(PA化糖鎖群)を、Surperdex Peptide HR 10/30カラム(Pharmacia社製)を用いて過剰な試薬と分離した。溶離液は10mM 炭酸水素アンモニウム、流速は0.5ml/分、カラム温度は室温、蛍光検出器は励起波長320nm、蛍光波長400nmで行なった。
【0627】
試料添加後20分から30分の溶出液を回収し、遠心濃縮機にて乾固させ、精製PA化糖鎖群とした。次に、CLC−ODSカラム(Shimadzu社製、φ6.0nm×150nm)を用いて、精製PA化糖鎖群の逆相HPLC分析を行った。カラム温度は55℃、流速は1ml/ml、蛍光検出器は励起波長320nm、蛍光波長400nmで行なった。10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)でカラムを平衡化し、0.5%1−ブタノールの直線濃度勾配にて80分間溶出した。
【0628】
各PA化糖鎖の同定は、分取した各PA化糖鎖のピークのマトリックス支援レーザーイオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS分析)におけるポストソース分解(Post Source Decay)分析、TaKaRa社製PA化糖鎖スタンダードとの溶出位置の比較、並びに各種酵素を用いて各PA化糖鎖を消化後、逆相HPLC分析により行なった(第45図)。
【0629】
糖鎖含量は、逆相HPLC分析における各PA化糖鎖のピーク面積より算出した。還元末端がN−アセチルグルコサミンでないPA化糖鎖は、不純物由来であるか、PA化糖鎖調製中の副反応物であるため、ピーク面積の算出から除外した。
【0630】
緩衝液Aとしてリン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)、緩衝液Bとしてリン酸ナトリウム緩衝液(pH3.8)+ 0.5% 1−ブタノールを用い、実施例11の(6)と同様に分析した。
【0631】
第45図において、α−1,6−フコースを持たない糖鎖群の割合は、(i)〜(viii)のうち(i
)〜(iv)のピークが占める面積、α−1,6−フコースが結合した糖鎖群の割合は、(i)〜(viii)のうち(v)〜(viii)のピークが占める面積から算出した。
【0632】
レクチン耐性株が生産する抗CCR4ヒト型キメラ抗体精製標品の糖鎖構造を分析した結果を第6表に示した。ここで、レクチン耐性株が生産した抗CCR4ヒト型キメラ抗体の糖鎖を分析した結果を示したものである。実施例11の(6)に記載した方法で分析しピークの面積から計算した、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合(%)を表に示す。
【0633】
【表7】
【0634】
5−03株が生産した抗体と比較して、CHO/CCR4−LCA株が生産した抗体では、分析ピークの面積から計算すると、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が、9%から48%まで上昇していた。CHO/CCR4−AAL株が生産した抗体では、α−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が、9%から27%まで上昇していた。一方、PHA耐性株では5−03株と比較して、糖鎖パターン及びα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合に殆ど変化は認められなかった。
【0635】
実施例15.レクチン耐性CHO細胞株の解析
1.抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞株CHO/CCR4−LCAにおけるGMD酵素の発現量解析
実施例14で取得した抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞株CHO/CCR4−LCAにおける、フコース生合成酵素として知られるGMD(GDP−mannose 4,6−dehydratase)、GFPP(GDP−keto−6−deoxymannose 3,5−epimerase,4−reductase)、Fx(GDP−beta−L−fucose pyrophosphorylase)、及びフコース転移酵素であるFUT8(α−1,6−fucosyltransferase)の各遺伝子の発現量を、RT−PCR法を用いて解析した。
【0636】
(1)各種細胞株からのRNA調製
CHO/DG44細胞、実施例8の1(2)で取得した抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞株5−03、実施例14(2)で取得した抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞株CHO/CCR4−LCAをそれぞれ37℃の5%CO
2インキュベーター内にて継代後4日間培養した。培養後、RNeasy Protect Mini kit(キアゲン社製)を用いて、各1×10
7細胞より添付の使用説明書に従ってRNAを調製した。続いて、SUPER SCRIPT First−Strand synthesis system for RT−PCR(GIBCO BRL社製)を用い、添付の使用説明書に従って各RNA5μgより20μlの反応液中にて一本鎖cDNAを合成した。
【0637】
(2)RT−PCR法を用いたGMD遺伝子の発現量解析
GMD cDNAをPCR法によって増幅するために、実施例17の1で示すCHO細胞由来GMD
【0638】
cDNA配列より、配列番号32で示される塩基配列を有する24merの合成DNAプライマーと配列番号33で示される塩基配列を有する26merの合成DNAプライマーを作製した。
【0639】
続いて、本項(1)で作製した各細胞株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号32と33の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。上記の該PCR反応液10μlをアガロース電気泳動した後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA断片を染色し、予想される約350bpのDNA断片量をFluor Imager SI(モレキュラーダイナミクス社製)を用いて測定した。
【0640】
(3)RT−PCR法を用いたGFPP遺伝子の発現量解析
GFPP cDNAをPCR法によって増幅するために、実施例16の2で取得したCHO細胞由来GFPPのcDNA配列に基づいて、配列番号34で示される塩基配列を有する27merの合成DNAプライマーと配列番号35で示される塩基配列を有する23merの合成DNAプライマーを作製した。
【0641】
続いて、本項(1)で作製した各細胞株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号34と35の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを24サイクル行なった。上記の該PCR反応液10μlをアガロース電気泳動した後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA断片を染色し、予想される約600bpのDNA断片量をFluor Imager SI(モレキュラーダイナミクス社製)を用いて測定した。
【0642】
(4)RT−PCR法を用いたFx遺伝子の発現量解析
Fx cDNAをPCR法によって増幅するために、実施例16の1で取得したCHO細胞由来FXの cDNA配列に基づいて、配列番号36で示される塩基配列を有する28merの合成DNAプライマーと配列番号37で示される塩基配列を有する28merの合成DNAプライマーを作製した。
【0643】
続いて、本項(1)で作製した各細胞株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号36と37の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを22サイクル行なった。上記の該PCR反応液10μlをアガロース電気泳動した後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA断片を染色し、予想される約300bpのDNA断片量をFluor Imager SI(モレキュラーダイナミクス社製)を用いて測定した。
【0644】
(5)RT−PCR法を用いたFUT8遺伝子の発現量解析
FUT8 cDNAをPCR法によって増幅するために、本項(1)で作製した各細胞株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号13 と14 の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを20サイクル行なった。上記の該PCR反応液10μlをアガロース電気泳動した後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA断片を染色し、予想される約600bpのDNA断片量をFluor Imager SI(モレキュラーダイナミクス社製)を用いて測定した。
【0645】
(6)RT−PCR法を用いたβ−アクチン遺伝子の発現量解析
β−アクチンcDNAをPCR法によって増幅するために、本項(1)で作製した各細胞株由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号15と16の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを14サイクル行なった。上記の該PCR反応液10μlをアガロース電気泳動した後、サイバーグリーン(BMA社製)を用いてDNA断片を染色し、予想される約800bpのDNA断片量をFluor Imager SI(モレキュラーダイナミクス社製)を用いて測定した。
【0646】
(7)各細胞株におけるGMD、GFPP、Fx、FUT8遺伝子の発現量
本項(2)から(6)で測定した各細胞株におけるGMD、GFPP、Fx、FUT cDNA由来PCR増幅断片量の値を、各細胞株におけるβ−アクチンのcDNA由来PCR増幅断片量の値で割り、CHO/DG44細胞におけるPCR増幅断片量を1とした場合の5−03株及びCHO/CCR4−LCA株における各遺伝子のPCR増幅断片量を求めた。結果を第7表に示す。
【0647】
【表8】
【0648】
第7表で示したようにCHO/CCR4−LCA株のGMD遺伝子の発現量が他の細胞株と比べ1/10程度に低下していた。なお、本実験は独立して2回行い、その平均値を使用した。
【0649】
2.GMD遺伝子を強制発現させた抗CCR4ヒト型キメラ抗体生産細胞株CHO/CCR4−LCAを用いた解析
(1)CHO細胞由来GMD遺伝子発現ベクターpAGE249GMDの構築
実施例17の1で取得したCHO細胞由来GMD のcDNA配列に基づいて、配列番号38で示される塩基配列を有する28merのプライマー、及び配列番号39で示される塩基配列を有する29merのプライマーを作製した。
【0650】
続いて、本実施例1項(1)で作製したCHO細胞由来GMD一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号38と39の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、58℃にて1分間、72℃にて1分間のサイクルを8サイクル反復した後、さらに94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを22サイクル反復した。
【0651】
反応終了後、該PCR反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約600bpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミドmt−Cを得た(第46図参照)。
【0652】
次に、実施例17の1で取得したCHO細胞由来GMDのcDNA配列に基づいて、配列番号40で示される塩基配列を有する45merのプライマー、及び配列番号41で示される塩基配列を有する31merのプライマーを作製した。続いて、本実施例1項(1)で作製したCHO細胞由来GMD一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号40と41の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、57℃にて1分間、72℃にて1分間のサイクルを8サイクル反復した後、さらに94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを22サイクル反復した。
【0653】
反応終了後、該PCR反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約150pのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミドATGを得た(第47図参照)。
【0654】
次に、実施例17の1で作製した3μgのプラスミドCHO−GMDを制限酵素SacI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってDNAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画後、約900bpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0655】
1.4μgのプラスミドmt−Cを制限酵素SacI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってDNAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約3.1kbpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。それぞれ回収したDNA断片をDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いて連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、プラスミドWT−N(−)を得た(第48図参照)。
【0656】
次に、2μgのプラスミドWT−N(−)を制限酵素BamHI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってDNAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約1kbpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0657】
3μgのプラスミドpBluescriptSK(−)(Stratagene社製)を制限酵素BamHI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってDNAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約3kbpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。それぞれ回収したDNA断片をDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いて連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、プラスミドWT−N(−)in pBSを得た(第49図参照)。
【0658】
次に、2μgのプラスミドWT−N(−)in pBSを制限酵素HindIII(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってDNAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約4kbpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0659】
2μgのプラスミドATGを制限酵素HindIII(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後、フェノール/クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行なってDNAを回収し、制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約150bpのDNA断片をGene Clean IIkit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0660】
それぞれ回収したDNA断片をDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いて連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、プラスミドWT in pBSを得た(第50図参照)。
【0661】
次に、2μgのプラスミドpAGE249を制限酵素HindIIIとBamHI(共に宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約6.5kbpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。2μgのプラスミドWT in pBSを制限酵素HindIIIとBamHI(共に宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約1.2kbpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。それぞれ回収したDNA断片をDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いて連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、プラスミドpAGE249GMDを得た(第51図参照)。
【0662】
(2)CHO/CCR4−LCAにおけるGMD遺伝子の安定発現
制限酵素FspI(NEW ENGLAND BIOLABS社製)で切断することにより直鎖状としたCHO細胞由来GMD遺伝子発現ベクターpAGE249GMDを5μg、1.6×10
6細胞のCHO/CCR4−LCA株へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),3,133(1990)]により導入後、MTX(SIGMA社製)を200nMの濃度で含む30mlのIMDM−dFBS(10)培地を10%含むIMDM培地(GIBCO BRL社製)]に懸濁し、182cm
2フラスコ(Greiner社製)にて37℃の5%CO
2インキュベーター内で24時間培養した。培養後、ハイグロマイシンを0.5mg/ml、MTX(SIGMA社製)を200nMの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地に培地交換してさらに19日間培養し、ハイグロマイシン耐性を示す形質転換株のコロニー群を取得した。
【0663】
また同様に、pAGE249ベクターを上記と同じ方法でCHO/CCR4−LCA株へ導入し、ハイグロマイシン耐性を示す形質転換株のコロニー群を取得した。
【0664】
(3)GMD遺伝子を発現させたCHO/CCR4−LCA株の培養及び抗体の精製
本項(2)で取得したGMDを発現している形質転換細胞群をMTX(SUGMA社製)を200nM、ハイグロマイシンを0.5mg/mlの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地を用いて、182cm
2フラスコ(Greiner社製)にて37℃の5%CO
2インキュベーター内で培養した。数日後、細胞密度がコンフルエントに達した時点で培養上清を除去し、25mlのPBSバッファー(GIBCO BRL社製)にて細胞を洗浄後、EXCELL301培地(JRH社製)を35ml注入した。37℃の5%CO
2インキュベーター内で7日間培養後、培養上清を回収した。培養上清よりProsep−A(ミリポア社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗CCR4キメラ抗体を精製した。
【0665】
また同様に、pAGE249ベクターを導入した形質転換細胞群を上記と同じ方法で培養後、培養上清より抗CCR4キメラ抗体を回収、精製した。
【0666】
(4)形質転換細胞群におけるレクチン耐性度の測定
本項(2)で取得したGMD遺伝子を発現している形質転換細胞群を、MTX(SIGMA社製)を200nM、ハイグロマイシンを0.5mg/mlの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地に6×10
4細胞/mlになるように懸濁し、96ウェル培養用プレート(岩城硝子社製)に50μl/ウェルずつ分注した。
【0667】
続いて、このウェルにMTX(SIGMA社製)を200nM、ハイグロマイシンを0.5mg/mlの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地に0mg/ml、0.4mg/ml、1.6mg/ml、4mg/mlの濃度でLCA(LENS CULINARIS AGGLUTININ:Vector Laboratories社製)を懸濁した培地を50μlずつ加え、37℃の5%CO
2インキュベーター内で96時間培養した。
【0668】
培養後、WST−I(ベーリンガー社製)を10μl/ウェルになるよう加え、37℃の5%CO
2インキュベーター内で30分間放置して発色させたのち、マイクロプレートリーダー(BIO−RAD社製)にて450nmと595nmの吸光度(以下OD450、OD595と表記する)を測定した。また同様に、pAGE249ベクターを導入した形質転換細胞群も上記と同じ方法で測定した。以上の実験は独立して2回行なった。
【0669】
上記で測定したOD450からOD595を引いた値を各細胞群の生存数とし、LCAを加えていないウェルの細胞生存数を100%とした場合の各ウェルの細胞生存数を%で表記し第52図に示した。
【0670】
第52図に示したように、GMDを発現させたCHO/CCR4−LCA株ではLCA耐性度の低下が観察され、0.2mg/mlのLCA存在下での細胞生存率は40%程度、0.8mg/mlのLCA存在下での細胞生存率は20%程度であった。
【0671】
一方、pAGE249ベクターを導入したCHO/CCR4−LCA株では、0.2mg/mlのLCA存在下での細胞生存率は100%、0.8mg/mlのLCA存在下においても細胞生存率は80%程度であった。以上の結果より、CHO/CCR4−LCA株はGMD遺伝子の発現量が低下しており、その結果LCAに対する耐性を獲得していることが示唆された。
【0672】
(5)GMDを発現させたCHO/CCR4−LCA株より取得した抗CCR4キメラ抗体のin vitro細胞障害活性(ADCC活性)
本項(3)で得られた精製抗CCR4キメラ抗体のin vitro細胞障害活性を評価するため、以下に示す方法に従い、ADCC活性を測定した。
【0673】
i)標的細胞溶液の調製
RPMI1640−FBS(10)培地に500μg/mlの濃度でG418硫酸塩(ナカライテスク製)を添加した培地で培養したCCR4−EL4株(実施例8の7参照)の1×10
6細胞を調製し、放射性物質であるNa
251CrO
4を3.7MBq当量加えて37℃で90分間反応させ、細胞を放射線標識した。反応後、RPMI1640−FBS(10)培地で懸濁及び遠心分離操作により3回洗浄し、培地に再懸濁し、4℃で30分間氷中に放置して放射性物質を自然解離させた。遠心分離後、RPMI1640−FBS(10)培地を5ml加え、2.5×10
5細胞/mlに調製し、標的細胞溶液とした。
【0674】
ii)エフェクター細胞溶液の調製
健常人静脈血50mlを採取し、ヘパリンナトリウム(武田薬品社製)0.5mlを加え穏やかに混ぜた。これをLymphoprep(Nycomed Pharma AS社製)を用いて使用説明書に従い、遠心分離して単核球層を分離した。RPMI1640−FBS(10)培地で3回遠心分離して洗浄後、培地を用いて2×10
6細胞/mlの濃度で再懸濁し、エフェクター細胞溶液とした。
【0675】
iii)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記i)で調製した標的細胞溶液の50μl(1×10
4細胞/ウェル)を分注した。次いでii)で調製したエフェクター細胞溶液を100μl(2×10
5細胞/ウェル、エフェクター細胞と標的細胞の比は25:1となる)添加した。更に、各種抗CCR4キメラ抗体(本項(3)で精製した抗CCR4キメラ抗体、及びKM2760−1、KM3060)を最終濃度0.0025〜2.5μg/mlとなるように加え、37℃で4時間反応させた。
【0676】
反応後、プレートを遠心分離し、上清の
51Cr量をγ−カウンターにて測定した。自然解離
51Cr量は、エフェクター細胞溶液、抗体溶液の代わりに培地のみを用いて上記と同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。全解離
51Cr量は、抗体溶液の代わりに培地のみを、エフェクター細胞溶液の代わりに1規定塩酸を添加し、上記と同様の操作を行い、上清の
51Cr量を測定することにより求めた。ADCC活性は前記式(II)により求めた。
【0677】
ADCC活性測定の結果を第53図に示した。第53図に示したように、GMDを発現させたCHO/CCR4−LCA株より取得した精製抗CCR4キメラ抗体のADCC活性は、実施例8で取得したKM3060と同程度にまで低下していた。一方、pAGE249ベクターを導入したCHO/CCR4−LCA株より取得した精製抗CCR4キメラ抗体のADCC活性は、CHO/CCR4−LCA株より取得した精製抗CCR4キメラ抗体と同程度のADCC活性を有していた。以上の結果より、CHO/CCR4−LCA株はGMD遺伝子の発現量が低下しており、その結果ADCC活性の高い抗体を生産出来ることが示唆された。
【0678】
(6)GMDを発現させたCHO/CCR4−LCA株由来の抗CCR4キメラ抗体の糖鎖解析
本項(3)で得られた精製抗CCR4キメラ抗体の糖鎖解析を実施例14(4)に示す方法に従って行ない、その解析結果を第55図に示した。実施例14で作製したCHO/CCR4−LCAより取得した精製抗CCR4キメラ抗体と比較して、GMD遺伝子を発現させたCHO/CCR4−LCA株より取得した精製抗CCR4キメラ抗体では、分析ピークの面積から計算するとα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が9%に低下していた。以上より、CHO/CCR4−LCA株にGMD遺伝子を発現させることによって、該細胞の生産する抗体のα−1,6−フコースを持たない糖鎖の割合が5−03株の生産する抗体と同程度まで低下することが示された。
【0679】
実施例16.CHO細胞由来の糖鎖合成に係わる各種酵素遺伝子の取得
1.CHO細胞のFx cDNA配列の決定(1)CHO/DG44細胞由来全RNAの抽出
CHO/DG44細胞を10%ウシ胎児血清(Life Technologies社製)および1倍濃度のHT supplement(Life Technologies社製)を添加したIMDM培地(Life Technologies社製)に懸濁し、2×10
5個/mlの密度で接着細胞培養用T75フラスコ(Greiner社製)に15ml播種した。37℃の5%CO
2インキュベーター内で培養し、培養2日目に1×10
7個を回収後、RNAeasy(QIAGEN社製)により添付の説明書に従って全RNAを抽出した。
【0680】
(2)CHO/DG44細胞由来全一本鎖cDNAの調製
上記(1)で調製した全RNAを45μlの滅菌水に溶解し、RQ1 RNase−Free DNase(Promega社製)1μl、付属の10×DNase buffer 5μl、RNasin Ribonuclease inhibitor(Promega社製)0.5μlをそれぞれに添加して、37℃で30分間反応させることにより、試料中に混入したゲノムDNAを分解した。反応後、RNAeasy(QIAGEN社製)により全RNAを再精製し、50μlの滅菌水に溶解した。
【0681】
得られた全RNA3μlに対しSUPERSCRIPT
TM Preamplification System for First
Strand cDNA Synthesis(Life Technologies社製)を用いて添付の説明書に従い、オリゴ(dT)をプライマーとした20μlの系で逆転写反応を行うことにより、一本鎖cDNAを合成した。GFPPおよびFxのクローニングには該反応液の50倍希釈水溶液を使用した。使用するまで−80℃で保管した。
【0682】
(3)チャイニーズハムスターFxのcDNA部分断片の取得
以下の手順によりチャイニーズハムスターFxのcDNA部分断片を取得した。
まず公的データーベースに登録されているヒトFxのcDNA(Genebank 登録番号U58766)およびマウスのcDNA(Genebank 登録番号M30127)に共通の塩基配列に対して特異的なプライマー(配列番号42および配列番号43に示す)を設計した。
【0683】
次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、本項(2)で調製したCHO/DG44由来一本鎖cDNAを1μlを含む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTPs、0.5μmol/l上記遺伝子特異的プライマー(配列番号42および配列番号43)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCRは94℃で5分間の加熱の後、94℃で1分、58℃で2分間、72℃で3分間からなる反応を1サイクルとして30サイクルの後、さらに72℃で10分間加熱する条件で行った。
【0684】
PCR後、反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片301bpをQiaexII Gel Extraction kit(キアゲン社製)を用いて精製し、滅菌水20μlで溶出した(以下、アガロースゲルからのDNA断片の精製にはこの方法を用いた)。上記増幅断片4μlをTOPO TA cloning kit(invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液を用いて大腸菌DH5αをコーエンらの方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A)、69,2110(1972)](以下、大腸菌の形質転換にはこの方法を用いた)により形質転換した。
【0685】
得られた複数のカナマイシン耐性コロニーから、公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),7,1513(1979)](以下、プラスミドの単離方法にはこの方法を用いる)に従って、プラスミドDNAを単離し、Fx cDNA部分断片が組み込まれた2クローンを得た。各々pCRFxクローン8、pCRFxクローン12と称す。
【0686】
Fxクローン8、Fxクローン12に挿入されたcDNAの塩基配列はDNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS Raedy Reaction Kit(Perkin Elmer社製)を使用して決定した。方法は添付のマニュアルに従った。本法により配列決定した挿入cDNAがチャイニーズハムスターのFxのオープンリーディングフレーム(ORF)部分配列をコードすることを確認した。
【0687】
(4)RACE用一本鎖cDNAの合成
本項(1)で抽出したCHO/DG44 全RNAからの5’および3’RACE用一本鎖cDNAの作製を、SMART
TM RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)を用いて行った。方法は添付の説明書に従った。ただしPowerScript
TM Reverse Transcriptase(CLONTECH社製)を逆転写酵素として用いた。調製後の一本鎖cDNAは各々、キット添付のTricin−EDTA buffer で10倍に希釈したものをPCRの鋳型として用いた。
【0688】
(5)RACE法によるチャイニーズハムスターFx全長cDNAの決定
上記(3)項で決定したチャイニーズハムスターFxの部分配列をもとにチャイニーズハムスターFx に特異的な5’RACE用プライマーFx GSP1−1(配列番号44)およびFx GSP1−2(配列番号45)、チャイニーズハムスターFx 特異的な3’RACE用プライマーFx GSP2−1(配列番号46)およびFx GSP2−2(配列番号47)を設計した。
【0689】
次にAdvantage2 PCR Kit(CLONTECH社製)を用いて、本項(4)で調製したCHO/DG44由来RACE用一本鎖cDNAを1μlを含む50μlの反応液[Advantage 2 PCR buffer(CLONTECH社製)、0.2mM dNTPs、0.2μmol/l チャイニーズハムスターFx特異的RACE用プライマー、1倍濃度の共通プライマー(CLONTECH社製)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
【0690】
PCRは94℃で5秒間、68℃で10秒間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして20サイクル繰り返す条件で行った。
反応終了後、反応液より1μlをとりTricin−EDTA bufferで50倍に希釈した水溶液1μlをテンプレートとして使用し、再度反応液を調製し、同条件でPCRを行った。一回目および二回目のPCRで用いた、プライマーの組み合わせおよび増幅されるDNA断片長を第8表に示した。
【0691】
【表9】
【0692】
PCR後、反応液を1%アガロースゲル電気泳動に供し、目的の特異的増幅断片をQiaexII Gel Extraction kit(キアゲン社製)を用いて精製し、滅菌水20μlで溶出した。上記増幅断片4μlをTOPO TA cloning kit(invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液を用いて大腸菌DH5αを形質転換した。
【0693】
得られた複数のカナマイシン耐性コロニーから、プラスミドDNAを単離し、チャイニーズハムスターFxの5’領域を含むcDNA5クローンを得た。各々をFx5’クローン25、Fx5’クローン26、Fx5’クローン28、Fx5’クローン31、Fx5’クローン32と称す。
【0694】
同様にチャイニーズハムスターFxの3’領域を含むcDNA5クローンを得た。各々Fx3’をFx3’クローン1、Fx3’クローン3、Fx3’クローン6、Fx3’クローン8、Fx3’クローン9と称す。
【0695】
上記、5’および3’RACEにより取得した各クローンのcDNA部分の塩基配列は、DNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)を使用して決定した。
方法は添付のマニュアルに従った。本法より決定した各cDNAの塩基配列を比較し、PCRに伴う塩基の読み誤りを除き、チャイニーズハムスターFxcDNA全長の塩基配列を決定した。決定した配列(配列番号48)に示す。
【0696】
2.CHO細胞のGFPP cDNA配列の決定
(1)チャイニーズハムスターGFPPのcDNA部分断片の取得
以下の手順によりチャイニーズハムスターGFPPのcDNA部分断片を取得した。
【0697】
まず公的データーベースに登録されているヒトGFPPのcDNA(Genebank 登録番号AF017445)、該配列と相同性の高いマウスEST配列(Genebank 登録番号AI467195、AA422658、BE304325、AI466474)、およびRat EST配列(Genebank 登録番号BF546372、AI058400、AW144783)の塩基配列を比較し、3種間で保存性の高い領域にラットGFPPに特異的なプライマーGFPP FW9およびGFPP RV9(配列番号49および配列番号50)を設計した。
【0698】
次にDNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)を用いて、本項1(2)で調製したCHO/DG44由来一本鎖cDNAを1μlを含む25μlの反応液[ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTPs、0.5μmol/l上記GFPP特異的プライマーGFPP FW9およびGFPP RV9(配列番号49および配列番号50)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。PCRは94℃で5分間の加熱の後、94℃で1分、58℃で2分間、72℃で3分間からなる反応を1サイクルとして30サイクルの後、さらに72℃で10分間加熱する条件で行った。
【0699】
PCR後、反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供し、特異的増幅断片1.4KbpをQiaexII Gel Extraction kit(キアゲン社製)を用いて精製し、滅菌水20μlで溶出した。上記増幅断片4μlをTOPO TA cloning kit(invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液を用いて大腸菌DH5αを形質転換した。
【0700】
得られた複数のカナマイシン耐性コロニーから、プラスミドDNAを単離し、GFPP
cDNA部分断片が組み込まれた3クローンを得た。各々GFPPクローン8、GFPPクローン11、GFPPクローン12と称す。
GFPPクローン8、GFPPクローン11、GFPPクローン12に挿入されたcDNAの塩基配列はDNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)およびBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS Raedy Reaction Kit(Perkin Elmer社製)を使用して決定した。方法は添付のマニュアルに従った。本法により配列決定した挿入cDNAがチャイニーズハムスターのGFPPのオープンリーディングフレーム(ORF)の部分配列をコードすることを確認した。
【0701】
(2)RACE法によるチャイニーズハムスターGFPP全長cDNAの決定
本項2(1)で決定したチャイニーズハムスターFxの部分配列をもとにチャイニーズハムスターFxに特異的な5’RACE用プライマーGFPP GSP1−1(配列番号52)およびGFPP GSP1−2(配列番号53)、チャイニーズハムスターGFPP 特異的な3’RACE用プライマーGFPP GSP2−1(配列番号54)およびGFPP GSP2−2(配列番号55)を設計した。
【0702】
次にAdvantage2 PCR Kit(CLONTECH社製)を用いて、本項(4)で調製したCHO/DG44由来RACE用一本鎖cDNA1μlを含む50μlの反応液[Advantage2 PCR buffer(CLONTECH社製)、0.2mM dNTPs、0.2μmol/l チャイニーズハムスターGFPP特異的RACE用プライマー、1倍濃度の共通プライマー(CLONTECH社製)]を調製し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
【0703】
PCRは94℃で5秒間、68℃で10秒間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとして20サイクル繰り返す条件で行った。
反応終了後、反応液より1μlをとりTricin−EDTA bufferで50倍に希釈した水溶液1μlをテンプレートとして、再度反応液を調製し、同条件でPCRを行った。一回目および二回目のPCRで用いた、プライマーの組み合わせおよび増幅されるDNA断片長を第9表に示した。
【0704】
【表10】
【0705】
PCR後、反応液を1%アガロースゲル電気泳動に供し、目的の特異的増幅断片をQiaexII Gel Extraction kit(キアゲン社製)を用いて精製し、滅菌水20μlで溶出した。上記増幅断片4μlをTOPO TA cloning kit(invitrogen社製)の説明書に従って、プラスミドpCR2.1へ挿入し、該反応液を用いて大腸菌DH5αを形質転換した。
【0706】
得られた複数のカナマイシン耐性コロニーから、プラスミドDNAを単離し、チャイニーズハムスターGFPPの5’領域を含むcDNA4クローンを得た。各々をGFPP5’クローン1、GFPP5’クローン2、GFPP5’クローン3、GFPP5’クローン4と称す。
【0707】
同様にチャイニーズハムスターGFPPの3’領域を含むcDNA3クローンを得た。
各々をGFPP3’クローン10、GFPP3’クローン16、GFPP3’クローン20と称す。
【0708】
上記、5’および3’RACEにより取得した各クローンのcDNA部分の塩基配列は、DNAシークエンサー377(Parkin Elmer社製)を使用して決定した。方法は添付のマニュアルに従った。塩基配列決定後、各cDNAの塩基配列を比較し、PCRに伴う塩基の読み誤りを除き、チャイニーズハムスターGFPP cDNA全長の塩基配列を決定した。決定した配列(配列番号51)
に示す。
【0709】
実施例17.CHO細胞由来GMD遺伝子の取得
1.CHO細胞由来GMD cDNA配列の決定
(1)CHO細胞由来GMD遺伝子のcDNA取得(5’及び3’末端配列を除く部分cDNAの取得)
GenBankに登録されているヒトGMD cDNA配列(GenBank Accession No.AF042377)をクエリーとして、げっ歯類由来GMD cDNAを公的データベース(BLAST)を用いて検索した結果、3種類のマウスEST配列が得られた(GenBank Accesssion No.BE986856、BF158988、BE284785)。これらEST配列を連結させることにより、推定されるマウスGMD cDNA配列を決定した。
【0710】
このマウスGMD cDNA配列より、配列番号56で示される塩基配列を有する28merのプライマー、配列番号57で示される塩基配列を有する27merのプライマー、配列番号58で示される塩基配列を有する25merのプライマー、配列番号59で示される塩基配列を有する24merのプライマー、配列番号60で示される塩基配列を有する25merのプライマーを作製した。
【0711】
続いて、CHO細胞由来GMD cDNAを増幅するために以下の方法でPCRを行なった。実施例15の1項(1)で作製したCHO細胞由来一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの合成DNAプライマー2種類]を調製した。なお、合成DNAプライマーには配列番号56と配列番号57、配列番号58と配列番号57、配列番号56と配列番号59、配列番号56と配列番号60の組み合わせを用いた。該反応液をDNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて94℃にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。
【0712】
このPCR反応液をアガロース電気泳動にて分画した結果、配列番号56と配列番号57の合成DNAプライマーを用いたPCR産物では約1.2kbp、配列番号58と配列番号57の合成DNAプライマーを用いたPCR産物では約1.1kbp、配列番号56と配列番号59の合成DNAプライマーを用いたPCR産物では約350bp、配列番号56と配列番号60の合成DNAプライマーを用いたPCR産物では約1kbpのDNA断片が増幅された。これらDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0713】
回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミド22−8(配列番号56と配列番号57の合成DNAプライマーから増幅された約1.2kbpのDNA断片を有する)、23−3(配列番号58と配列番号57の合成DNAプライマーから増幅された約1.1kbpのDNA断片を有する)、31−5(配列番号56と配列番号59の合成DNAプライマーから増幅された約350bpのDNA断片を有する)、34−2(配列番号56と配列番号60の合成DNAプライマーから増幅された約1kbpのDNA断片を有する)を得た。
【0714】
これらプラスミドに含まれるCHO細胞由来GMD cDNA配列を、DNAシークエンサーABI PRISM 377(パーキンエルマー社製)を用い、常法に従って決定した(5’末端側の開始メチオニンより下流28塩基の配列、及び3’末端側の終了コドンより上流27塩基の配列は合成オリゴDNA配列由来のため、マウスGMD cDNA配列である)。
【0715】
さらに、プラスミド22−8と34−2に含まれるCHO細胞由来GMD cDNAを組み合わせたプラスミドを作製するため、以下の工程を行った。1μgのプラスミド22−8を制限酵素EcoRI(宝酒造社製)で37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約4kbpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。
【0716】
2μgのプラスミド34−2を制限酵素EcoRIで37℃にて16時間反応後アガロース電気泳動にて分画し、約150bpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。それぞれ回収したDNA断片を、Calf Intestine Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)で末端を脱リン酸化した後、DNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いて連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミドCHO−GMDを得た(第54図参照)。
【0717】
(2)CHO細胞由来GMD cDNAの5’末端配列の決定
CHO細胞由来GMD cDNAの5’末端側非コード(non−coding)領域の塩基配列より配列番号61で示される塩基配列を有する24merのプライマー、及びCHO由来GMD cDNA配列より配列番号62で示される塩基配列を有する32merのプライマーを作製し、cDNAを増幅するために以下の方法でPCRを行なった。
【0718】
実施例15の1項(1)で得られたCHO細胞由来の一本鎖cDNA 0.5μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mMのdNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号61と配列番号62の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、55℃にて1分間、72℃にて2分間のサイクルを20サイクル行なった後、さらに94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを18サイクル行なった。
【0719】
該PCR反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約300bpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付の説明書に従って回収した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミド5’GMDを得た。DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)を用い、該プラスミドに含まれるCHO由来GMD cDNAの開始メチオニンより下流28塩基の配列を決定した。
【0720】
(3)CHO細胞由来GMD cDNAの3’末端配列の決定
CHO細胞由来GMDの3’末端cDNA配列を得るため、以下の方法でRACE法を行なった。実施例15の1項(1)で取得したCHO細胞由来RNAより、3’RACE用一本鎖cDNAの作製をSMART
TM RACE cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)を用い、添付の説明書に従って行なった。ただし、逆転写酵素にはPowerScript
TM Reverse Transcriptase(CLONTECH社製)を用いた。調製後の一本鎖cDNAは、キット添付のTricin−EDTA bufferで10倍に希釈したものをPCRの鋳型として用いた。
【0721】
続いて、上記3’ RACE用一本鎖cDNA 1μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号63で示す24merの合成DNAプライマー[本項(1)で決定したCHO細胞由来GMD cDNA配列より作製]、1倍濃度のUniversal Primer Mix(SMART
TM RACE cDNA Amplification Kit に付属;CLONTECH社製)]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。
【0722】
反応終了後、該PCR反応液より1μlを取り、Tricin−EDTA buffer(CLONTECH社製)で20倍希釈した水溶液1μlを鋳型として含む20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号64で示す25merの合成DNAプライマー[本項(1)で決定したCHO細胞由来GMD cDNA配列より作製]、0.5μMのNested Universal Primer(SMART
TM RACE cDNA Amplification Kit に付属;CLONTECH社製)]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。
【0723】
反応終了後、該PCR反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約700bpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。回収したDNAはDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミド3’GMDを得た。DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)を用い、該プラスミドに含まれるCHO由来GMD cDNAの終止コドンより上流27塩基の配列、及び3’側のnon−coding領域415bpの塩基配列を決定した。
【0724】
以上、本項(1)、(2)、(3)より決定したCHO由来GMD遺伝子の全長cDNA配列を配列番号65、それに対応するアミノ酸配列を配列番号71に示す。
【0725】
2.CHO/DG44細胞のGMD遺伝子を含むゲノム配列の決定
実施例17の1項で決定したマウスGMD cDNA配列より、配列番号66で示される塩基配列を有する25merのプライマーを作製した。続いて、以下の方法でCHO細胞由来ゲノムDNAを取得した。CHO/DG44細胞をIMDM−dFBS(10)−HT(1)培地[HT supplement(インビトロジェン社製)を1倍濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地]に3×10
5細胞/mlになるように懸濁し、接着細胞用平底6穴プレート(Greiner社製)に2ml/ウェルずつ分注した。
【0726】
37℃の5%CO
2インキュベーター内でコンフルエントになるまで培養したのち、該プレートより公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),3,2303(1976)]に従ってゲノムDNAを調製し、TE−RNase緩衝液(pH8.0)(10mmol/l Tris−HCl、1mmol/l EDTA、200μg/ml RNase A)150μlに一晩溶解した。
【0727】
上記で取得したCHO/DG44細胞由来ゲノムDNAを100ng、20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号59と配列番号66の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。
【0728】
反応終了後、該反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約100bpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミドex3を得た。DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)を用いて該プラスミドに含まれるCHO細胞由来ゲノムDNAの塩基配列を決定し、配列番号67に示した。
【0729】
次に、実施例17の1項で決定したCHO細胞由来GMD cDNA配列より、配列番号68で示される塩基配列を有する25merのプライマー、及び配列番号69で示される塩基配列を有する25merのプライマーを作製した。続いて、CHO/DG44由来ゲノムDNAを100ng、20μlの反応液[1×EX Taq Buffer(宝酒造社製)、0.2mM dNTP’s、0.5単位のEX Taq polymerase(宝酒造社製)、0.5μMの配列番号68と配列番号69の合成DNAプライマー]を調製し、DNAサーマルサイクラー480(パーキンエルマー社製)を用いて、94℃にて5分間加熱した後、94℃にて1分間、68℃にて2分間のサイクルを30サイクル行なった。
【0730】
反応終了後、該反応液をアガロース電気泳動にて分画後、約200bpのDNA断片をGene Clean II kit(BIO101社製)を用い、添付マニュアルに従って回収した。回収したDNA断片はDNA Ligation kit(宝酒造社製)を用いてpT7Blue(R)ベクター(Novagen社製)に連結し、得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換し、プラスミドex4を得た。DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)を用いて該プラスミドに含まれるCHO細胞由来ゲノムDNAの塩基配列を決定し、配列番号70に示した。
【0731】
実施例18.市販抗体の糖鎖解析
CHO細胞を宿主細胞にして産生させた市販抗HER2/neu抗体ハーセプチン(Herceptin;GENENTECH社、Roche社製)の糖鎖解析を、実施例11の(6)の方法にしたがって行った(第31図)。ピーク面積から計算すると、 Herceptinのα−1,6−フコースのない糖鎖含量は16%、α−1,6−フコース結合糖鎖含量は84%であった。 他の市販抗体に関しても同様の分析を行った結果、Rituxan(GENENTECH社、Roche社、IDEC社製)、Zenapax(Roche社、PDL社製)ではHerceptinよりもα−1,6−フコースのない糖鎖含量が少なかった。
【0732】
第31図は、Herceptinから調製したPA化糖鎖を、逆相HPLCで分析して得た溶離図を示したものである。縦軸に相対蛍光強度、横軸に溶出時間をそれぞれ示す。
逆相HPLCの分析条件、糖鎖構造、α−1,6−フコースを持たない糖鎖群の割合の算出は実施例11の(6)と同じ方法で行った。