(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建築物のエキスパンションジョイント部のクリアランスを手前側から覆うジョイントカバーと、該ジョイントカバーを保持する保持フレームと、を備え、前記保持フレームがエキスパンションジョイント部のクリアランスを挟んで互いに対向する両側部位に支持されたエキスパンションジョイント装置であって、
前記保持フレームは、複数のフレーム部材をその軸方向にスライド自在に接続してなり、互いに接続されるフレーム部材のスライド部の間にスライド介装体が介装され、
前記スライド介装体は、その中心軸を前記フレーム部材のスライド方向と平行に設定して配置したスライドピンとされたことを特徴とするエキスパンションジョイント装置。
前記スライド部は、スライド介装体を介して互いにスライドするスライドレールとされ、該スライドレールよりも前記スライド介装体の長さが短く設定されたことを特徴とする請求項1に記載のエキスパンションジョイント装置。
前記フレーム部材が前後方向に重ねられ、前記フレーム部材が前後方向に離間するのを阻止するよう、前記スライドレールが互いにスライド介装体を介して前後方向に係合されたことを特徴とする請求項2に記載のエキスパンションジョイント装置。
前記保持フレームは、その両端部がエキスパンションジョイント部の前記両側部位に回転自在に支持され、奥側のフレーム部材にヒンジ部が設けられると共に、該ヒンジ部を介して接続される両部位を相対的に回転させてヒンジ部を奥側に移動させる方向に付勢するばねが設けられ、手前側のフレーム部材に、奥側のフレーム部材に当接して前記ヒンジ部の奥側への移動を規制するストッパーが設けられたことを特徴とする請求項3に記載のエキスパンションジョイント装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のエキスパンションジョイント装置は、一方のレールを他方のレールに挿入してレール同士をスライドさせるものであり、そのスライドが阻害された場合には、クリアランスの両側部位が相対変位する際に、エキスパンションジョイント装置が破損するおそれがある。
【0007】
本発明は、クリアランスの両側部位の相対変位に確実に追従することのできるエキスパンションジョイント装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るエキスパンションジョイント装置は、建築物のエキスパンションジョイント部のクリアランスを手前側から覆うジョイントカバーと、このジョイントカバーを保持する保持フレームと、を備えたものであり、その保持フレームをエキスパンションジョイント部のクリアランスを挟んで互いに対向する両側部位で支持したものである。さらに、保持フレームは、複数のフレーム部材をその軸方向にスライド自在に接続し、互いに接続するフレーム部材のスライド部の間にスライド介装体を介装したものである。
【0009】
上記構成によれば、複数のフレーム部材のスライド部の間にスライド介装体を介装するので、スライド介装体の素材や形状を適宜設定して、スライド部のスライド性能を高めることができる。これにより、フレーム部材をその強度や重量などに着目して部材性能を設定しつつ、スライド介装体を介装しただけの簡単な構成によって複数のフレーム部材を互いにスライドしやすくすることができ、保持フレームをクリアランスの両側部位の相対変位に確実に追従させることができる。
【0010】
また、スライド介装体としては、その中心軸をフレーム部材のスライド方向と平行に設定して配置したスライドピンを例示することができる。
【0011】
この構成によると、スライド介装体としてスライドピンを採用するので、球状のスライド介装体などを用いる場合と比較して、スライド介装体の取り扱いが容易であり、スライド介装体をスライド部の間に容易に介装することができる。なお、スライドピンに代えて、球状のスライド介装体を採用することにより、スライド性能をより高めるができ、この場合、スライド部及びスライド介装体の強度や設定可動量に応じて、球状のスライド介装体の個数を適宜設定すればよい。
【0012】
また、スライド部を、スライド介装体を介して互いにスライドするスライドレールとし、このスライドレールよりもスライド介装体の長さを短く設定するようにしてもよい。
【0013】
この構成によると、互いにスライドするスライドレールの間に、両者よりも長さの短いスライド介装体を介装するので、スライド介装体が両者のうちの滑りやすい側のスライドレールに対して滑ることによって、スライドレール同士をスライドさせることができ、スライド部のスライド性能をより高めることができる。しかも、スライド介装体が両側のスライドレールに対して滑ることによって、スライド部のスライド量を増大させることができる。
【0014】
また、フレーム部材を前後方向に重ね、フレーム部材が前後方向に離間するのを阻止するよう、スライドレールを互いにスライド介装体を介して前後方向に係合させるようにしてもよい。
【0015】
この構成によると、複数のフレーム部材を前後方向に重ねると共に、そのスライドレールを前後方向に係合させるので、両フレーム部材の重ねた部位が直に当接して両者の接近方向の動きを規制し、スライドレールの係合部分に介装したスライド介装体が両者の離間方向の動きを規制する。これにより、接近方向の動きに対してフレーム部材が直に当接する分、スライド方向と直交する方向への動きの全てをスライドレール間に介装したスライド介装体で規制する必要がなく、スライド部の構造を簡単にすることができる。
【0016】
また、保持フレームの両端部をエキスパンションジョイント部の両側部位に回転自在に支持し、奥側のフレーム部材にヒンジ部を設けると共に、このヒンジ部を介して接続する両部位を相対的に回転させてヒンジ部を奥側に移動させる方向に付勢するばねを設け、手前側のフレーム部材に、奥側のフレーム部材に当接してヒンジ部の奥側への移動を規制するストッパーを設けるようにしてもよい。
【0017】
この構成によると、保持フレームの両端部を回転自在に支持すると共に、奥側のフレーム部材にヒンジ部を設けるので、保持フレームをそのヒンジ部を前後方向に移動可能な構造に構成することができる。さらに、保持フレームをばねで付勢して、前側のフレーム部材に設けたストッパーを奥側のフレーム部材に当接させるので、その反作用として、両フレーム部材を離間させようとする力を生じさせることができる。これにより、スライドレールの係合部分に力を付与し、両フレーム部材を直に当接させることなく、スライド介装体を介してスライドさせることができ、そのスライド機能を高めることができる。
【0018】
また、ストッパーとして、手前側のフレーム部材の先端部にローラーを設けるようにしてもよい。
【0019】
この構成によると、ストッパーとしてローラーを用いるので、保持フレームの伸縮を阻害することなく、ストッパーを奥側のフレーム部材に当接させて、保持フレームのヒンジ部の奥側への移動を規制することができる。しかも、ローラーを手前側のフレーム部材の先端部に設けるので、手前側のフレーム部材の先端部をクリアランスに隣接する部位にスムーズに乗り上げさせることができ、クリアランスの両側部位のより大きな相対変位に追従させることができる。
【0020】
また、フレーム部材及びスライド介装体を異種金属から形成するようにしてもよい。
【0021】
この構成によると、フレーム部材及びスライド介装体の素材をそれぞれの部材に求められる機能に応じて適宜選択することができ、特に、フレーム部材及びスライド介装体を硬さの異なる異種金属から形成することにより、フレーム部材とスライド介装体との摩擦係数を小さくして滑りやすくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり、本発明によると、ジョイントカバーを保持する保持フレームを、軸方向にスライド自在に接続した複数のフレーム部材で構成し、そのスライド部の間にスライド介装体を介装している。これにより、スライド介装体の素材や形状を適宜設定して、スライド部のスライド性能を高めることができ、クリアランスの両側部位が相対変位する際、フレーム部材のスライドが阻害されることによるエキスパンションジョイント装置の破損を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るエキスパンションジョイント装置を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0025】
図1〜
図7に示すように、エキスパンションジョイント装置1は、例えば免震建築物のエキスパンションジョイントに用いるものであり、建築物の内壁2に設けられたエキスパンションジョイント部3のクリアランス4を正面側(手前側)から覆うジョイントカバー5と、このジョイントカバー5を保持する複数の保持フレーム6と、を備えている。
【0026】
ジョイントカバー5は、例えばアルミニウム製のプレートとされ、エキスパンションジョイント装置1を装備する内壁2と同程度の高さで、かつ、建築物の振動や温度の増減のない状態におけるクリアランス4の標準幅よりもわずかに小さい幅に設定されている。このジョイントカバー5は、クリアランス4を正面側から覆うよう、内壁2の正面とほぼ面一に配置され、その背面側(奥側)において上下に並設された複数の保持フレーム6によって保持されている。
【0027】
保持フレーム6は、手前側から奥側に向けて順に前後方向に重ねて配置される第1フレーム部材7、第2フレーム部材8、第3フレーム部材9及び第4フレーム部材10と、隣接するフレーム部材7、8、9、10の間に介装されるスライドピン11a、11b、11cとから構成される。この保持フレーム6は、スライドピン11a、11b、11cを介して、順次、フレーム部材7、8、9、10を軸方向にスライド自在に接続した構造とされ、その両端部を内壁2のうちのクリアランス4を挟んで互いに対向する両側部位2a、2bに回転自在に支持されている。
【0028】
保持フレーム6を構成する部材のうち、フレーム部材7、8、9、10は、例えばアルミニウム製の押出型材とされ、また、スライドピン11a、11b、11cは、フレーム部材7、8、9、10とは異種金属の例えばステンレス鋼からなる断面円形の棒材とされ、スライドピン11a、11b、11cがフレーム部材7、8、9、10よりも長さを短く設定されている。
【0029】
第1フレーム部材7は、ジョイントカバー5の幅とほぼ同じ長さに設定されて、水平方向に配置されると共に、上下に隣接する保持フレーム6の第1フレーム部材7と補強部材12を介して連結され、その正面にジョイントカバー5をビス止めして保持している。
【0030】
第1フレーム部材7の一端は、取付金具13及び丁番14を介して、クリアランス4に隣接する一方の部位2aに支持されると共に、部位2aに当接するようジョイントカバー5の端部に設けられたタイト材15によって覆い隠されている。
【0031】
第1フレーム部材7の他端には、その上下面に、第4フレーム部材10に当接するローラー16が設けられ、保持フレーム6が伸縮する際、第4フレーム部材10に対してローラー16が転動するようになっている。
【0032】
第1フレーム部材7の断面形状は、略長方形の中空断面とされ、その上下面が背面側に延設されて、スライドピン11aを介して背面側の第2フレーム部材8と係合するスライド部としてのスライドレール17が形成されている。スライドレール17の先端には、上下方向で内向きに突出する係合爪18が形成され、この係合爪18に対してスライドピン11aが軸方向にスライド自在に係合するようになっている。スライドレール17のうちのローラー16の近傍には、スライドストッパー17aが形成され、スライドピン11aの他端側への抜け出しを阻止している。
【0033】
第2フレーム部材8は、水平方向に配置されると共に、クリアランス4の内側において水平方向に移動可能なよう第1フレーム部材7よりも短く設定され、スライドピン11aを介して、第1フレーム部材7に対して離間不能かつ軸方向にスライド可能とされる。
【0034】
第2フレーム部材8の断面形状は、上下方向の幅が第1フレーム部材7よりも小さい略長方形の中空断面とされ、その上下面が正面側に延設されて、スライド部としてのスライドレール19が形成され、上下面が背面側に延設されて、スライド部としてのスライドレール20が形成されている。
【0035】
正面側のスライドレール19の先端には、上下方向で外向きに突出する係合爪21が形成されている。この係合爪21に対してスライドピン11aが軸方向にスライド自在に係合することにより、スライドピン11aを介して、第1フレーム部材7のスライドレール17と第2フレーム部材8のスライドレール19とがスライド自在に係合する。
【0036】
背面側のスライドレール20の先端には、上下方向で外向きに突出する係合爪22が形成され、この係合爪22に対してスライドピン11bが軸方向にスライド自在に係合するようになっている。
【0037】
第2フレーム部材8の端部には、端板23、24が設けられ、第2フレーム部材8からのスライドピン11a、11bの抜け出しを阻止している。
【0038】
第2フレーム部材8の上下面には、その前後方向で中央から上下方向に突出する突片25が形成され、保持フレーム6が伸びてジョイントカバー5から第2フレーム部材8が露出した際にその背面側を隠す覆い板を、適宜取り付けることができるようになっている。
【0039】
第3フレーム部材9は、水平方向に配置されると共に、クリアランス4の内側において水平方向に移動可能なよう、第2フレーム部材8と同程度の長さで第1フレーム部材7よりも短く設定され、スライドピン11bを介して、第2フレーム部材8に対して離間不能かつ軸方向にスライド可能とされる。
【0040】
第3フレーム部材9の他端には、その上下面に、第4フレーム部材10に当接するローラー26が設けられ、保持フレーム6が伸縮する際、第4フレーム部材10に対してローラー26が転動するようになっている。
【0041】
第3フレーム部材9の断面形状は、上下方向の幅が第1フレーム部材7と同程度の略長方形の中空断面とされ、その上下面が正面側に延設されて、スライド部としてのスライドレール27が形成され、上下面が背面側に延設されて、スライド部としてのスライドレール28が形成されている。
【0042】
正面側のスライドレール27の先端には、上下方向で内向きに突出する係合爪29が形成されている。この係合爪29に対してスライドピン11bが軸方向にスライド自在に係合することにより、スライドピン11bを介して、第2フレーム部材8のスライドレール20と第3フレーム部材9のスライドレール27とがスライド自在に係合する。
【0043】
背面側のスライドレール28の先端には、上下方向で内向きに突出する係合爪30が形成され、この係合爪30に対してスライドピン11cが軸方向にスライド自在に係合するようになっている。スライドレール28のうちのローラー26に付近には、スライドストッパー28aが形成され、スライドピン11cの他端側への抜け出しを阻止している。
【0044】
第3フレーム部材9の一端には、端板31が設けられ、第3フレーム部材9からのスライドピン11b、11cの一端側への抜け出しを阻止している。この端板31は、第2フレーム部材8の端板23に当接して、第2フレーム部材8に対する第3フレーム部材9の一端側への移動を制限する。
【0045】
第3フレーム部材9の上下面には、その前後方向で中央から上下方向に突出する突片32が形成され、保持フレーム6が伸びてジョイントカバー5から第3フレーム部材9が露出した際にその背面側を隠す覆い板を、適宜取り付けることができるようになっている。
【0046】
第4フレーム部材10は、第3フレーム部材9に対して離間不能かつ軸方向にスライド可能なスライドフレーム33と、クリアランス4に隣接する他方の部位2bに揺動自在に支持される揺動フレーム34とからなり、スライドフレーム33と揺動フレーム34とがヒンジ部35を介して接続されている。
【0047】
スライドフレーム33は、水平方向に配置されると共に、第3フレーム部材9よりも短く、かつスライドピン11cとほぼ同じ長さに設定され、スライドピン11cを介して、第3フレーム部材9に対して離間不能かつ軸方向にスライド可能とされる。
【0048】
スライドフレーム33の断面形状は、上下方向の幅が第3フレーム部材9よりも小さい略長方形の中空断面とされ、その上下面が正面側に延設されて、上下方向で外向きに突出する係合爪36が形成され、この係合爪36がスライドピン11cに係合する。
【0049】
スライドフレーム33の端部には、端板37、38が設けられ、この端板37、38がスライドフレーム33に対するスライドピン11cの移動を規制することにより、スライドフレーム33がスライドピン11cと共に、第3フレーム部材9のスライドレール28に対してスライド自在とされる。
【0050】
スライドフレーム33の背面側には、捩りばね受け39が設けられ、この捩りばね受け39に、ヒンジ部35に設けられる捩りばね40の一端が取り付けられる。
【0051】
揺動フレーム34は、略長方形の中空断面とされ、第1フレーム部材7よりも短く、かつ第2フレーム部材8及び第3フレーム部材9よりも長く設定されて、水平方向に配置される。この揺動フレーム34の正面には、保持フレーム6が伸びてジョイントカバー5から第4フレーム部材10が露出した際にその背面側を隠す奥側カバー41が取り付けられている。
【0052】
奥側カバー41は、正面カバー41a及び背面カバー41bを重ねて揺動フレーム34の正面にビス止めしてなり、正面カバー41aの他端付近に、正面側に向けて突出する突出部分41cが形成されると共に、背面カバー41bの端部が正面側に折曲されて、正面カバー41aの突出部分41cを補強している。
【0053】
揺動フレーム34の他端は、取付金具42及び丁番43を介して、クリアランス4に隣接する他方の部位2bに支持されると共に、部位2bに当接するよう正面カバー41aの端部に設けられたタイト材44によって覆い隠されている。
【0054】
揺動フレーム34の一端には、奥側カバー41を介してヒンジ部35が固定され、このヒンジ部35に捩りばね40が設けられると共に、揺動フレーム34の一端付近が引張ばね45を介して部位2bに接続されている。これにより、揺動フレーム34がヒンジ部35及び捩りばね40を介してスライドフレーム33と接続されると共に、捩りばね40及び引張ばね45が、スライドフレーム33及び揺動フレーム34を相対的に回転させてヒンジ部35を奥側に移動させる方向に付勢する。
【0055】
捩りばね40及び引張ばね45の付勢力は、スライドフレーム33を介して第3フレーム部材9に伝えられ、第3フレーム部材9の他端のローラー26を揺動フレーム34の正面の奥側カバー41に当接させる。また、第3フレーム部材9に伝えられた付勢力は、第2フレーム部材8を介して第1フレーム部材7に伝えられ、第1フレーム部材7の他端のローラー16を奥側カバー41の突出部分41cに当接させる。
【0056】
ローラー26及びローラー16は、奥側カバー41を介して揺動フレーム34に当接することにより、ヒンジ部35の奥側への移動を規制するストッパーとして機能し、その反作用により、第1フレーム部材7、第2フレーム部材8、第3フレーム部材9及びスライドフレーム33を互いに離間する方向に付勢する。これにより、第1フレーム部材7、第2フレーム部材8、第3フレーム部材9及びスライドフレーム33が直接接触することなく、スライドピン11a、11b、11cを介して接続される。
【0057】
次に、クリアランス4の両側部位2a、2bが相対変位する際の保持フレーム6の動作を説明する。まず、クリアランス4が広がる際の保持フレーム6の動作を説明する。
【0058】
図8に示すように、クリアランス4が標準幅の状態では、第1フレーム部材7のローラー16が、捩りばね40及び引張ばね45の付勢力によって、奥側カバー41の突出部分41cに当接し、第2フレーム部材8及び第3フレーム部材9の一端とスライドフレーム33の一端との水平方向の位置が合うように設定される(
図8(a))。
【0059】
クリアランス4が標準幅の状態から広がると、第1フレーム部材7がスライドピン11aを介して第2フレーム部材8に対してスライドし、第1フレーム部材7が一端側に移動する。その後、スライドピン11aの両端が第1フレーム部材7のスライドストッパー17aと第2フレーム部材8の端板23とに当接した状態で、第1フレーム部材7の第2フレーム部材8に対するスライド移動が規制される(
図8(b))。
【0060】
その際、第1フレーム部材7が第2フレーム部材8に対してスライド移動することにより、第1フレーム部材7は、クリアランス4に隣接する他方の部位2bに支持された第4フレーム部材10に対しても一端側に移動する。また、その移動が始まった段階では、ローラー16が第4フレーム部材10に固定された奥側カバー41の突出部分41cを転動し、その後、ローラー16が突出部分41cよりも一端側に位置するまで移動する。
【0061】
クリアランス4がさらに広がると、第2フレーム部材8がスライドピン11bを介して第3フレーム部材9に対してスライドし、第2フレーム部材8が第1フレーム部材7と共に一端側に移動する。その後、スライドピン11bの両端が第2フレーム部材8の端板24と第3フレーム部材9の端板31とに当接した状態で、第2フレーム部材8の第3フレーム部材9に対するスライド移動が規制される(
図8(c))。
【0062】
クリアランス4がさらに広がると、第3フレーム部材9がスライドピン11cを介して第4フレーム部材10のスライドフレーム33に対してスライドし、第3フレーム部材9が第1フレーム部材7及び第2フレーム部材8と共に一端側に移動する。その後、スライドフレーム33の端板38が第3フレーム部材9のスライドストッパー28aに当接した状態で、第3フレーム部材9の第4フレーム部材10に対するスライド移動が規制される(
図8(d))。
【0063】
なお、
図8を用いた上記動作の説明では、第1フレーム部材7の第2フレーム部材8に対するスライド移動、第2フレーム部材8の第3フレーム部材9に対するスライド移動、及び第3フレーム部材9の第4フレーム部材10に対するスライド移動がこの順番で生じるものとしたが、各スライド移動は、必ずしもこの順番で生じる必要はなく、別の順番で生じてもよく、さらに、各スライド移動が同時に生じてもよい。
【0064】
次に、クリアランス4が狭まる際の保持フレーム6の動作を説明する。
【0065】
図9に示すように、クリアランス4が標準幅の状態では、第1フレーム部材7のローラー16が、捩りばね40及び引張ばね45の付勢力によって、奥側カバー41の突出部分41cの下面に当接している(
図9(a))。
【0066】
クリアランス4が標準幅の状態から狭まると、第1フレーム部材7がスライドピン11aを介して第2フレーム部材8に対して他端側にスライド移動し、これにより、第1フレーム部材7が、クリアランス4に隣接する他方の部位2bに支持された第4フレーム部材10に対しても他端側に移動する。
【0067】
このときの第1フレーム部材7の動作を説明すると、第1フレーム部材7の移動が始まった段階では、その他端のローラー16が奥側カバー41の突出部分41cを転動し、その後、ローラー16が、突出部分41cに連続して揺動フレーム34の他端を覆い隠す奥側カバー41の端部に乗り上げる。
【0068】
その際、ローラー16が突出部分41cよりも正面側に離間しながら第1フレーム部材7を傾斜させる。これにより、第1フレーム部材7と一体にスライドフレーム33が傾斜し、第4フレーム部材10のスライドフレーム33と揺動フレーム34とが、捩りばね40及び引張ばね45の付勢力に抗して、ヒンジ部35を正面側に移動させるよう相対的に回転する。
【0069】
第1フレーム部材7がさらに移動することにより、第1フレーム部材7が、その傾斜を増大させながら奥側カバー41の端部を滑り、第1フレーム部材7の他端をクリアランス4に隣接する他方の部位2bに乗り上げさせるようにして移動する(
図9(b)〜(d))。
【0070】
次に、クリアランス4の両側部位2a、2bが前後にずれる際の保持フレーム6の動作を説明する。
【0071】
図10に示すように、クリアランス4が標準幅の状態のまま、クリアランス4の両側部位2a、2bが前後にずれると、保持フレーム6が、両側部位2a、2bに回転自在に支持された両端部を回転させながら、両側部位2a、2bの前後のずれに追従する。その際、両端部が前後にずれることによって保持フレーム6の軸方向長さが変化するが、この軸方向長さの変化に、フレーム部材7、8、9、10が互いにスライドして追従する(
図10(a)〜(c))。
【0072】
図11に示すように、クリアランス4が広がった状態の場合も、両側部位2a、2bが前後にずれると、保持フレーム6がその両端部を回転させながら両側部位2a、2bの前後のずれに追従する(
図11(a)〜(c))。
【0073】
なお、両端部が前後にずれることによって、保持フレーム6が軸方向に伸びる必要があるので、クリアランス4が広がるほど、保持フレーム6が追従可能な前後のずれは小さくなる。
【0074】
図12に示すように、クリアランスが狭まった状態の場合も、両側部位2a、2bが前後にずれると、保持フレーム6がその両端部を回転させながら両側部位2a、2bの前後のずれに追従する(
図12(a)〜(c))。
【0075】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、
図13に示すように、エキスパンションジョイント装置1は、建築物の内壁2に設ける代わりに、建築物の外壁46に設けることもできる。この場合、タイト材15、44を両側部位46a、46bに当接させる代わりに、取付金具13、42に形成した受け部47に当接させてシール性を高めるのがよい。
【0076】
また、
図14に示すように、エキスパンションジョイント装置48を建築物の天井49のエキスパンションジョイント部50に設けることもできる。エキスパンションジョイント装置48は、その保持フレーム51を上側フレーム52と下側フレーム53とで構成し、その下側フレーム53でジョイントカバー54を保持している。
【0077】
上側フレーム52は、水平方向に配置されてクリアランス55の両側のうちの一方の部位49aに固定され、下側フレーム53は、水平方向に配置されてクリアランス55の両側のうちの他方の部位49bに固定される。さらに、スライドピン56を介して、上側フレーム52に対して下側フレーム53がスライド自在に接続され、クリアランス55の広がり又は狭まりに追従するようになっている。
【0078】
また、フレーム部材7、8、9、10の間には、スライドピン11a、11b、11cに代えて、球状のスライド介装体を介装することもでき、これにより、スライド性能をより高めるができる。この場合、フレーム部材7、8、9、10及び球状のスライド介装体自体の強度や設定可動量に応じて、各箇所に介装する球状のスライド介装体の個数を適宜設定すればよい。