(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記せん断機構は、前記第2の気液混合流体に内在する気泡全体におけるナノバブルの割合が、前記第1の気液混合流体に内在する気泡全体におけるナノバブルの割合よりも高い割合となるように前記気泡をせん断することを特徴とする、
請求項1又は2に記載のナノバブル生成装置。
気泡が内在する気液混合流体が流入する内部空間を有するケーシングを備え、回転可能に構成されたインペラの回転により付勢され、この内部空間に流入した気液混合流体を当該ケーシング外に向けて排出するポンプに装着する孔付リングであって、
このケーシングの内部空間に、前記気液混合流体が流入する第1空間と、前記気液混合流体を流出させるための第2空間とを形成するリングと、
前記第1空間と前記第2空間とを連通させるために前記リングに設けられた孔部と、を有しており、
前記リングの内側に配設され、その端部が、前記リングの内壁に対向して配備され、前記第1空間において前記インペラの回転により付勢され、当該第1空間に流入して前記孔部に到達した気液混合流体に内在する気泡を、当該リングの内壁側の孔部の縁と当該インペラの端部とによりせん断し、当該気泡がせん断された気液混合流体を、前記孔部と前記第2空間を経由してケーシング外に向けて排出するように構成される、
孔付リング。
前記孔部の縁と前記インペラの一の端部とによる前記気泡のせん断は、前記気泡がせん断された気液混合流体に内在する気泡全体におけるナノバブルの割合が、前記第1空間に流入して前記孔部に到達した気液混合流体に内在する気泡全体におけるナノバブルの割合よりも高い割合となるようにせん断することを特徴とする、
請求項5に記載の孔付リング。
前記凹部の縁と前記インペラの端部とは異なる端部とによる前記気泡のせん断は、前記気泡がせん断された気液混合流体に内在する気泡全体におけるナノバブルの割合が、前記第1空間に流入して前記孔部に到達した気液混合流体に内在する気泡全体におけるナノバブルの割合よりも高い割合となるようにせん断することを特徴とする、
請求項6に記載の孔付リング。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたナノバブル生成装置による超微細気泡(ナノバブル)の生成は、上記の工程で生成した微細気泡(マイクロバブル)を繰返しせん断するような機械的刺激を該マイクロバブルに与えて生成するというものである。そのため、インペラの回転方向は、一般に流通している通常の水中ターボファン(あるいは水中ポンプ)のインペラの回転方向とは逆に回転させる必要がある。
また、気液混合の直進液流をインペラの羽根でせん断しながら、さらに掻き込むように作用させて羽根内に留まる時間を長くすることにより、繰り返しのせん断を実現している。つまり、羽根内に溜まっている気液混合流体を円周方向へ直接放出する作用は生じない。そのため、回転中心部の近傍の圧力を高めることで外に向けて放出(排出)させている。その結果、回転中心部近傍の圧力が高まれば流水口から流入する直進液流も押し返してしまい、相反する圧力の微妙な制御が必要になると共に、ナノバブル生成の効率向上が図れない、という問題が残る。
【0006】
また、特許文献1に開示されたナノバブル生成装置では、少なくとも吸入フィンとインペラの2つの羽根車を必要とし、さらに、これらが取付けられた回転軸の上下の軸受けから発塵する恐れがある。また、一般に流通している水中ポンプのインペラの回転方向とは逆方向の回転にする必要があり、装置の製造においてこれらを流用するには困難が伴う。そのため、装置製造のコストダウンが図れない、という問題が残る。
【0007】
本発明は、上記の問題を解消し、効率良くナノバブルを生成することができるナノバブル生成装置を提供することを、主たる課題とする。また、効率良くナノバブルを生成するための孔付リングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のナノバブル生成装置は、気泡が内在する気液混合流体が流入する内部空間を有するケーシングと、このケーシングの内部空間に、前記気液混合流体が流入する第1空間と、前記気液混合流体を流出させるための第2空間とを形成するとともに、前記第1空間と前記第2空間とを連通させる孔部を有する孔付リングと、前記第1空間に流入した第1の気液混合流体に内在する気泡をせん断するための端部を有するインペラと、その気泡が前記端部でせん断され、さらに前記孔部を経て前記第2空間に流入した第2の気液混合流体をケーシング外に向けて排出する排出機構と、を有することを特徴とする。
これにより、第1空間に気液混合流体が流入してから第2空間を経由して排出されるまでの一連の液流がスムースになり、第一機能として効率良くナノバブルを生成することができる。
【0009】
また、本発明の他のナノバブル生成装置は、気泡が内在する気液混合流体が流入する内部空間を有するケーシングと、このケーシングの内部空間に、前記気液混合流体が流入する第1空間と、前記気液混合流体を流出させるための第2空間とを形成するとともに、前記第1空間と前記第2空間とを孔部を通じて連通させる孔付リングと、この孔付リングの内側に配設され、その端部が、前記孔付リングの内壁に対向して配備され、前記第1空間において回転可能に構成されたインペラと、前記インペラの回転により付勢され、前記第1空間に流入して前記孔付リングの孔部に到達した気液混合流体に内在する気泡を、
前記孔付リングの内壁側の孔部の縁と当該インペラの端部とによりせん断するせん断機構と、このせん断機構により気泡がせん断された気液混合流体が、
前記孔部と前記第2空間を経由してケーシング外に向けて排出する排出機構と、を有することを特徴とする。これにより、孔付リングの孔部に到達した気液混合流体に内在する気泡は、この孔部の縁とインペラの端部とにより効率良くせん断することができる。そのため、第二機能として効率良くナノバブルを生成することができる。
【0010】
また、本発明の孔付リングは、気泡が内在する気液混合流体が流入する内部空間を有するケーシングを備え、回転可能に構成されたインペラの回転により付勢され、この内部空間に流入した気液混合流体を当該ケーシング外に向けて排出するポンプに装着する孔付リングであって、このケーシングの内部空間に、前記気液混合流体が流入する第1空間と、前記気液混合流体を流出させるための第2空間とを形成するリングと、前記第1空間と前記第2空間とを連通させるために前記リングに設けられた孔部と、を有しており、前記リングの内側に配設され、その端部が、前記リングの内壁に対向して配備され、前記第1空間において前記インペラの回転により付勢され、当該第1空間に流入して前記孔部に到達した気液混合流体に内在する気泡を、
当該リングの内壁側の孔部の縁と当該インペラの端部とによりせん断し、当該気泡がせん断された気液混合流体を
、前記孔部と前記第2空間を経由してケーシング外に向けて排出するように構成される、孔付リングである。これにより、孔付リングの孔部に到達した気液混合流体に内在する気泡は、この孔部の縁とインペラの端部とにより効率良くせん断することができる。そのため、効率良くナノバブルを生成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、付勢されて第1空間に流入した気液混合流体が孔付リングの孔部に到達し、これに内在する気泡は孔部の縁とインペラの端部とによりせん断される。そして、気泡せん断後の気液混合流体は、第2空間を経由してケーシング外に向けて排出される。そのため、第1空間に気液混合流体が流入してから第2空間を経由して排出されるまでの一連の液流をスムースにすることができる。また、孔付リングの孔部に到達した気液混合流体に内在する気泡は、この孔部の縁とインペラの端部とにより効率良くせん断することができる。これにより、効率良くナノバブルを生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。なお、本実施形態においては、過流ポンプの一例である磁気浮上型ポンプに、後述する孔付リングを装着した場合の例を挙げて説明する。なお、説明においてこの孔付リングを「せん断リング」と呼ぶ場合もある。
ここで磁気浮上型ポンプとは、例えばレビトロポンプとも呼ばれるものであり、インペラ(羽根車)を回転させるための回転軸(シャフトと軸受)を必要としない形式のポンプである。具体的には、ケーシング内に非接触状態で配備されたインペラを高速回転させることにより過流を発生させて液体を吸上げ、その後、吸い上げた液体を所定の排出口から排出する。そのため、ケーシング内での発塵を防止することができる。また、インペラの回転は、インペラの筺体内部に配備されたロータと、ケーシング側に配備されたコイルとを作用させることにより回転駆動する構成が採用されている。
なお、説明においてマイクロバブルと示す場合には、気泡サイズが1.0[μm]以上のバブル(気泡)を指すものとし、ナノバブルと示す場合には、気泡サイズが1.0[μm]未満のバブルを指すものとする。また、マイクロバブル及びナノバブルを区別する必要がない場合には、気泡又は単にバブルと示す。
【0014】
図1は、本実施形態のナノバブル生成装置の概略縦断面図(a)と、側面図(b)である。
図1(a)に示すナノバブル生成装置1は、本体ケーシング10、上蓋ケーシング11、上蓋ケーシング11に設けられた管状の吸引ノズル12、インペラ13、せん断リング14、排出ノズル15を含んで構成される。ナノバブル生成装置1は、インペラ13の回転開始又は停止、単位時間当たりの回転数などを制御するための制御部20に接続される。なお、本体ケーシング10の外側には、インペラ13を回転駆動するための図示しないコイルが配備される。
【0015】
ナノバブル生成装置1のインペラ13は、
図1(a)に示すように、本体ケーシング10と上蓋ケーシング11とにより形成されるケーシングの内部空間に、且つ、せん断リング14の内側となるように配備される。また、インペラ13は、
図1(b)に示すように、側面形状が平面と曲面とを組み合わせた断面弓形状の羽根13aを4枚備えており、この羽根13aそれぞれが一体的に時計回り方向に回転する。なお、羽根13aの回転方向は、例えば、一般に流通している過流ポンプの、円基板の上面側に面形状が円弧状の羽根を突出させたインペラの回転方向と同じ方向である。
【0016】
ナノバブル生成装置1のせん断リング14は、
図1(a)に示すように、本体ケーシング10と上蓋ケーシング11とにより形成されるケーシングの内部空間に配備される。また、せん断リング14は、
図1(a)に示すように、その内壁と羽根13aの端部との間に所定の隙間(例えば、1[mm])を設けて、このインペラ13の外周を覆うことができるサイズに形成される。つまり、インペラ13は、せん断リング14の内側に配設される。なお、この場合の羽根13aの端部は、羽根13aの側面の端側である。
ケーシングの内部空間にせん断リング14を配備し、インペラ13と上蓋ケーシング11、せん断リング14の内壁面とにより形成される空間を、第1空間(S1)と呼ぶ。また、本体ケーシング10の内壁面とせん断リング14の外壁面とで形成される空間を第2空間(S2)と呼ぶ。このように、せん断リング14を装着することにより、第1空間S1と第2空間S2が形成される。
【0017】
ナノバブル生成装置1は、インペラ13を回転させて、吸引ノズル12の吸引口からマイクロバブル(微細気泡)を含んだ気液混合流体を第1空間S1へと取り込む。その後、第1空間へと流入した気液混合流体に内在する気泡を、回転するインペラ13とせん断リング14とよりせん断してナノバブル(超微細気泡)化する。そして、気泡がせん断された気液混合流体は、第2空間S2を経由して排出ノズル15よりケーシング外に向けて流出(排出)される。このように、ナノバブル生成装置1は、回転可能に構成された1ンペラ13、気液混合流体に内在する気泡をせん断するせん断機構、気泡がせん断された後の気液混合流体をケーシング外に排出する排出機構を含んで構成される。
以下、インペラ13の構成例、せん断リング14の構成例、並びに、せん断過程の詳細について説明する。
【0018】
図2は、インペラ13の構成例を示す図である。
図2(a)は、インペラ13の上面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すインペラ13のA−A断面図である。
インペラ13は、開口部130が設けられた円環形状の蓋部131、その内部に図示しないロータが配備された円柱形状のロータケース部132、断面弓形状の4枚の羽根13aを含んで構成される。羽根13aは、同軸芯状に配置された蓋部131とロータケース部132により狭着される。これにより、本体ケーシング10の外側に配備された図示しないコイルと、ロータケース部132の内部に配備された図示しないロータによる回転駆動力が羽根13aに伝達される。
【0019】
蓋部131とロータケース部132により狭着される羽根13aは、
図2(a)に示すように、その側面のなかで平面と曲面とが交わる2つの辺の内、一方の辺が開口部130の縁に接するように配置される。さらに、羽根13aの一辺が開口部130に接する位置を起点にして、この縁上を反時計回りに90[°]回転した位置から、外方向に向かう法線上に他の一方の辺が接するように配置される。なお、羽根13aの枚数の他、羽根の形状やサイズ、吸引する流体の粘性度合などの要因に合わせて、羽根13aの配置方法、例えば角度や向きなどを変えることができる。
【0020】
羽根13aの側面と蓋部131の下底面、ロータケース部132の上底面、せん断リング14の内周側壁とにより囲まれる空間は、第1空間S1の一部を構成する。例えば、第1空間S1に流入し、開口部130を通過した第1の気液混合流体(
図2(b)中の矢印点線x)は、インペラ13の回転力により付勢され、
図2(b)中の矢印点線yで示すように流動する。その後、せん断リング14の内壁に到達する。
【0021】
図3は、せん断リング14の構成例を示す図である。
図3(a)は、せん断リング14の上面図であり、
図38(b)は、
図3(a)に示すせん断リング14のB−B断面図である。
せん断リング14は、
図3(a)に示すように、それぞれが円環形状に形成され、同軸芯状に配置された上鍔部141、下鍔部142、側壁部143を含んで構成されたリングである。せん断リング14の側壁部143には、第1空間S1と第2空間S2とを連通するための孔部145が複数個配備される。この孔部145は、例えば直径5[mm]の円形状をしており、側壁部143の壁面に均等に配備される。なお、孔部145の形状及びサイズ、配備間隔などは任意に設定することができる。
【0022】
せん断リング14の上鍔部141は、
図3(b)に示すように、側壁部143の上端部から外側方向へ所定の長さだけ延出するようにして配備される。また、せん断リング14の下鍔部142は、
図3(b)に示すように、側壁部143の下端部から外側方向に所定の長さだけ延出する部位と、内側方向に所定の長さだけ延出する部位が生じるように配備される。下鍔部142の内側方向に延出した部位の上底面には、側壁部143に配備された孔部145の間隔に合わせて、その縁の形状の一部と連設された凹部146が形成される。なお、この凹部146は、羽根13aの弓形状底面の一方と所定の隙間(例えば、1.5[mm])を設けた状態で対向する。側壁部143を基準にして、その内側方向に延出している部位を第1の鍔部と呼び、外側方向に延出している部位を第2の鍔部と呼ぶ。
【0023】
上鍔部141の上底面は、せん断リング14をケーシング内に装着した際に、本体ケーシング10の所定部位に密接する形状に形成される(
図1(a)参照)。また、下鍔部142の下底面は、上蓋ケーシング11の所定部位に密接する形状に形成される(
図1(a)参照)。上鍔部141及び下鍔部142それぞれの第2の鍔部は、本体ケーシング10の内壁の所定部位に密接する形状に形成される(
図1(a)参照)。ケーシングの内部空間にこのような形状に形成されたせん断リング14を配備することにより、第1空間S1及び第2空間S2が形成される。また、ケーシングの内部空間の壁面に密接させることにより、せん断リング14とインペラ13とが共回りしてしまうことを防止することができる。
【0024】
図4は、第1空間S1に取り込まれるマイクロバブルを含んだ気液混合流体について説明するための図表である。
図4に示す表は、一般に広く流通しているマイクロバブル発生機を用いて、超純水をマイクロバブル水として生成し、生成回数別の単位量(10[cc])に内在する気泡の気泡サイズ及びその個数の計測結果を示している。なお、この計測においては、リオン製パーティクルカウンタを使用している。具体的な計測機器の構成は、パーティクルカウンタ(型式:KL−22)、シリンジサンプラ(型式:KZ−30S)、プリンタ(型式:KP−05L)である。
【0025】
図4に示す表は、マイクロバブル水の生成を、条件を同じくして計5回行い、各生成回毎に気泡サイズ0.2[μm]、0.3[μm]、0.5[μm]、1.0[μm]、2.0[μm]の10[cc]当たりの個数の計測結果である。
図4に示すように、1回目から5回目まで各回の平均値は、気泡サイズ0.2[μm]のものが853個、0.3[μm]のものが268個、0.5[μm]のものが27個、1.0[μm]のものが4個、2.0[μm]のものが331個という結果である。
このようにして生成されたマイクロバブル水には、マイクロバブルの他、ナノバブルも含まれていることが見て取れる。
【0026】
本実施形態のナノバブル生成装置1では、予め生成された気液混合流体(例えば、マイクロバブル水)を第1空間S1へと取り込み、取り込んだマイクロバブル水に内在する気泡をせん断する。気泡をせん断することにより、単位量当たりのナノバブルの総個数を増加させる。つまり、気泡全体におけるナノバブルの割合を高めることができる。その他、このマイクロバブル水に内在するナノバブルをより微細なナノバブルにすることもできる。
以下、インペラ13及びせん断リング14によるせん断過程の詳細について説明する。
【0027】
図5は、第1空間S1へ取り込んだ気液混合流体の気泡を、インペラ13とせん断リング14とによるせん断過程を経て、気泡せん断後の気液混合流体が第2空間S2に流入するまでを模式的に示した図である。
図5中に示す矢印点線は、開口部130を介して流入する気液混合流体の液流経路の一例を示すものである。
インペラ13が回転することにより、第2空間S2の圧力に比べて第1空間S1の圧力が相対的に高まる。そのため、
図5に示すように、第1空間S1においてインペラ13の回転力により付勢された気液混合流体は、孔部145を通過して第2空間S2へとスムースに流入する。さらに、せん断リング14の側壁部143により、孔部145以外では気液混合流体の通過は阻まれる。そのため、孔部145に到達した気液混合流体に加わる圧力は、第1空間S1内の他の気液混合流体に加わる圧力よりも相対的に高いものとなる。これにより、気泡せん断後の気液混合流体が孔部145を通過する際の流速が高まり、第2空間S2への流入をよりスムースに行うことができる。
また、相対的に高い圧力が加えられた状態で孔部145に到達した気液混合流体に内在する気泡は、せん断リング14の内壁に沿って流体をそぎ切るように移動している羽根13aの端部と孔部145の縁とによりせん断される。このようにして、気泡はせん断され、微細化される。
また、孔部145に到達した気液混合流体に内在する気泡には、さらに、せん断する際の圧力も付与される。そのため、気泡に物理的刺激(例えば、せん断)を与えることにより、当該気泡を潰す圧壊をより促進させることができる。
【0028】
図6は、インペラ13とせん断リング14の凹部146とによるせん断過程について説明するための図である。
図6中に示す矢印点線は、開口部130を介して流入する気液混合流体の液流経路の一例を示すものである。
図5において説明したように、インペラ13が回転力することにより、第2空間S2の圧力に比べて第1空間S1の圧力が相対的に高まる。そのため、
図6に示すように、第1空間S1においてインペラ13の回転力により付勢された気液混合流体は、凹部146から孔部145を経て第2空間S2へとスムースに流入する。さらに、第1の鍔部である下鍔部142により、凹部146以外では気液混合流体の孔部145の通過が阻まれる。そのため、凹部146に到達した気液混合流体に加わる圧力は、第1空間S1内の他の気液混合流体に加わる圧力よりも相対的に高いものとなる。これにより、気泡せん断後の気液混合流体が孔部145を通過する際の流速が高まり、第2空間S2への流入をよりスムースに行うことができる。
また、相対的に高い圧力が加えられた状態で凹部146に到達した気液混合流体に内在する気泡は、凹部146が形成されている下鍔部142の上底面に沿って流体をそぎ切るように移動している羽根13aの端部と凹部146の縁とによりせん断される。このようにして、気泡はせん断され、微細化される。なお、この場合の羽根13aの端部とは、凹部146と対向する羽根13aの弓形状底面の端部である。
また、凹部146に到達した気液混合流体に内在する気泡には、さらに、せん断する際の圧力も付与される。そのため、気泡に物理的刺激(例えば、せん断)を与えることにより、当該気泡を潰す圧壊をより促進させることができる。
【0029】
このように、羽根13aの側面の端部と孔部145の縁とによる気泡のせん断に加えて、羽根13aの底面の端部と凹部146の縁とによる気泡のせん断も行われる。そのため、さらに効率良くナノバブルを生成することができる。
【0030】
図7は、本実施形態のナノバブル生成装置1において、せん断リング14装着の有無によるナノバブル生成数の差異を検証した結果を説明するための図表である。
図7(a)は、ナノバブル生成装置1にせん断リング14を装着しなかった場合における、インペラ13の単位時間当たりの回転数に応じた、気泡サイズ別の生成個数の計測結果を示している。また、
図7(b)は、ナノバブル生成装置1にせん断リング14を装着した場合における、インペラ13の単位時間当たりの回転数に応じた、気泡サイズ別の生成個数の計測結果を示している。なお、共に、
図4を用いて既に説明したマイクロバブル水を使用し、前述したリオン製パーティクルカウンタを用いて気泡サイズ1.0[μm]以下のものを計測している。
【0031】
図7(a)に示す表は、せん断リング14を装着しなかった場合の、インペラ13の単位時間当たりの回転数別に、気泡サイズ0.2[μm]、0.3[μm]、0.5[μm]、1.0[μm]の10[cc]当たりの個数を計測した結果である。
図7(a)の表に示す計測結果と、
図4の表に示す計測結果とを比較すると、気泡サイズ0.2[μm]、0.3[μm]、0.5[μm]のそれぞれにおいて、計測された気泡の個数が増加していることが見て取れる。
【0032】
図7(b)に示す表は、せん断リング14を装着した場合の、インペラ13の単位時間当たりの回転数別に気泡サイズ0.2[μm]、0.3[μm]、0.5[μm]、1.0[μm]の10[cc]当たりの個数を計測した結果である。
図7(a)の表に示す計測結果と、
図7(b)の表に示す計測結果とを比較すると、インペラ13の単位時間当たりの回転数に関わらず、気泡サイズ0.2[μm]、0.3[μm]、0.5[μm]のそれぞれにおいて、計測された気泡の個数が増加していることが見て取れる。ナノバブル生成装置1にせん断リング14を装着することにより、せん断リング14が未装着の場合と比べて、全体として生成されるナノバブルの全体数が平均して16[%]増加している。
【0033】
図8(a)、(b)、
図9のそれぞれは、
図7に示す検証結果を気泡サイズ別にグラフ化したものである。
図8(a)は、気泡サイズ0.2[μm]のものについて、せん断リング14装着の有無による差異を表したグラフである。
図8(b)は、気泡サイズ0.3[μm]のものについて、せん断リング14装着の有無による差異を表したグラフである。
図9は、気泡サイズ0.5[μm]のものについて、せん断リング14装着の有無による差異を表したグラフである。各グラフそれぞれの縦軸は、10[cc]当たりの気泡の個数を示しており、横軸は、インペラ13の単位時間当たりの回転数を示している。
【0034】
各グラフからは、気泡サイズ0.2[μm]、気泡サイズ0.3[μm]、気泡サイズ0.5[μm]の何れにおいても、インペラ13の単位時間当たりの回転数に関わらず、せん断リング14を装着した方が、生成されるナノバブルの数が増加していることが見て取れる。
【0035】
この様に、本実施形態のナノバブル生成装置1は、予め生成しておいたマイクロバブル水を第1空間S1へと取り込み、取り込んだマイクロバブル水に内在する気泡をインペラ13及びせん断リング14によりせん断する。これにより、単位量当たりに含まれるナノバブルの個数を増加させることができる。さらに、マイクロバブル水に内在するナノバブルをせん断し、より微細なナノバブルにすることができる。
【0036】
また、本実施形態のナノバブル生成装置1では、せん断リング14により第1空間S1、第2空間S2が形成される。これにより、インペラ13の回転により第1空間に流入した気液混合流体が、これに内在する気泡をせん断した後に第2空間Sを経て排出ノズル15からケーシング外へ向けて排出されるまでの一連の液流をスムースにすることができる。そのため、効率良くナノバブルを生成することができる。
【0037】
また、本実施形態のナノバブル生成装置1の構成の一部として、一般に広く流通している過流型ポンプを採用することができる。これにより、機器製造コストの低減を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態のせん断リング14は、孔部145及び凹部146を有する。そのため、羽根13aの側面の端部と孔部145の縁とによる気泡のせん断に加えて、羽根13aの底面の端部と凹部146の縁とによる気泡のせん断も行われる。これより、より効率良くナノバブルの生成を行うことができる。
また、孔部145、並びに、凹部146に到達した気液混合流体に内在する気泡には、さらに、せん断する際の圧力も付与される。そのため、気泡に物理的刺激(例えば、せん断)を与えることにより、当該気泡を潰す圧壊が促進され、効率良くより多くのナノバブルを生成することができる。
【0039】
上記説明した実施形態は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が、これらの例に限定されるものではない。