特許第5770825号(P5770825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770825熱収縮性ポリエステル系フィルム及び熱収縮性ポリエステル系ラベル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770825
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】熱収縮性ポリエステル系フィルム及び熱収縮性ポリエステル系ラベル
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20150806BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150806BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C08J5/18CFD
   C08L67/02
   C08K3/22
   C08J3/22
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-501198(P2013-501198)
(86)(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公表番号】特表2013-522443(P2013-522443A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】KR2011002231
(87)【国際公開番号】WO2011122878
(87)【国際公開日】20111006
【審査請求日】2012年9月19日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0060023
(32)【優先日】2010年6月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0029601
(32)【優先日】2010年3月31日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ジョ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム シ ミン
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−236930(JP,A)
【文献】 特開2002−361740(JP,A)
【文献】 特開2001−294681(JP,A)
【文献】 特開2002−179813(JP,A)
【文献】 特開2003−034729(JP,A)
【文献】 特開2007−262365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00− 5/02
C08J 5/12− 5/22
B29C 55/00−55/30
B29C 61/00−61/10
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を押出及び延伸して熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、下記段階:
平均粒径0.1〜5μmの粒子と固有粘度が少なくとも0.8dl/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをコンパウンドして粒子含有ポリエステル系樹脂マスターバッチを製造する段階であって、粒子をマスターバッチの全体重量に対して10〜70重量%で含むように粒子含有ポリエステル系樹脂マスターバッチを製造する段階と、
粒子含有ポリエステル系樹脂マスターバッチと、ジオール単位体中のエチレングリコール以外の単位体が14〜24モル%含まれているコポリエステル系樹脂とを混溶押出して未延伸シートを製造する段階であって、全体重量に対して2〜10重量%となる量で粒子を含むように、粒子含有ポリエステル系樹脂マスターバッチと、ジオール単位体中のエチレングリコール以外の単位体が14〜24モル%含まれているコポリエステル系樹脂とを混溶押出して未延伸シートを製造する段階と、
押し出されたポリエステル系シートを予熱する段階と、
65〜100℃で幅方向に延伸する段階とを含んでなり、
マスターバッチを製造する段階は、コポリエステルとの融点(℃)差が30℃以内のホモポリエステル系ポリマーと粒子を混合する段階と、混合物を二軸押出機又はニーダーに入れ、溶融混練して粒子含有ホモポリエステルマスターバッチを得る段階とを含み、
溶融粒子含有ホモポリエステルマスターバッチを得る段階で、押出機のスクリューの内部に冷却手段を付加して溶融温度を制御することを特徴とする、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項2】
幅方向延伸は延伸比が3.5〜5.0倍となるように行われることを特徴とする、請求項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項3】
ポリエステル系樹脂マスターバッチにおける粒子は酸化チタニウムである、請求項又はに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮特性を有するポリエステル系フィルム及び前記フィルムを含む熱収縮性ポリエステル系ラベルに係り、特に、ガラス瓶に貼られる紙材のラベルを代替することが可能なフィルム材のラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
環境的要求及び経済性などを考慮し、PET瓶やガラス瓶は収去してリサイクルしてきている。リサイクルの際に、PET瓶やガラス瓶の本体以外に、製品名、成分名及びその他の模様などが印刷されて貼られたラベルは分離して除去すべきである。今まで主に使用されてきた紙ラベルの場合は工業用水を用いて除去する。具体的には、収去してきたPET瓶やガラス瓶を、苛性ソーダを含有する80℃程度の工業用水に浸けてラベルを取り外す。よって、空き瓶のリサイクルの際に環境廃水が発生し、これにより環境的規制が本格化されている。
【0003】
したがって、紙ラベルではなく、フィルム材質のラベルに対する要求が増加しつつある。
【0004】
一方、ラベルとして活用することが可能なフィルムの一例としてはポリ塩化ビニル系フィルムを挙げることができるが、これは焼却の際にダイオキシンを発生するなどの環境的問題があって好ましくない。よって、ポリエステル系熱収縮性フィルムが、紙材質のラベルを代替することが可能な手段として浮き彫りにされている。
【0005】
ポリエステル系熱収縮性フィルムをラベルとして適用する方法は、ステッカータイプ又は従来の紙ラベルのようにフィルムに印刷を行い、それを水溶性接着剤を用いて貼る方法などが考えられる。
【0006】
一般なPET瓶又は飲料用として使用される瓶と比較して、酒類用として使用されるPET瓶又はガラス瓶は、内容物の変質を最小化するために顔料、UV遮断剤及びその他の添加剤が混合されており、有色を帯びる場合が多い。
【0007】
このような瓶にフィルム材質のラベルを適用するにあたっては、広告効果をより鮮明に示すために、印刷されたラベルの裏面に白色などのインクを用いてバックコーティング(back−coating)を行うことができるが、この場合も、その効果が微々たり、瓶の色がそのまま投影されて広告効果が劣る。このような場合、2回以上のバックコーティングが要求されるが、これは工程性及び生産性を低下させる要因となる。
【0008】
また、ラベルを接着剤を用いて瓶に接着させる方法では、印刷ラベルの裏面にグラビア印刷などで接着剤を塗布するので、接着剤を塗布した跡が帯状に存在する。一般に紙材質のラベルはこのような接着剤の跡を隠蔽することができるが、これに対し、通常の熱収縮性フィルムの場合は、隠蔽性が少ないため、このような跡がそのまま透かされて広告効果を低下させる。
【0009】
また、紙ラベルを接着剤を用いて瓶に接着させる方法では、紙ラベルの印刷裏面にグラビア印刷などの方法を用いて接着剤を塗布し、これを瓶に貼ることにより、印刷層の形成されたラベルを接着させることができる。ところが、印刷層が形成されたポリエステル系収縮性フィルムラベルの場合、ラベル自体のカール現象が激しいため、従来の紙ラベルの貼着工程を容易に適用するには難しさがありうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、収縮性を維持しながら、フィルム自体が有色を帯びることによりラベル用途への適用の際に印刷外観及び隠蔽性に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【0011】
また、本発明は、収縮性を維持しながら、フィルム自体が有色を帯びることによりラベル用途への適用の際に印刷外観及び隠蔽性に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムを含み、自体のカール現象を最小化することが可能な熱収縮性ポリエステル系ラベルを提供する。
【0012】
また、本発明は、このような熱収縮性ポリエステル系ラベルが貼られるため、印刷外観が美麗であり、隠蔽性に優れるうえ、かつリサイクルの際に熱水のみを用いてラベルを除去することにより廃水の発生を防止することができて環境にやさしい瓶を提供する。
【0013】
また、本発明は、フィルム材質のラベルを適用するにも拘らず、ラベル紙の移送と接着剤の塗布が一つの工程ライン上で行われることが可能なラベル付き瓶の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
好適な一具現例として、本発明は、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を含むポリエステル系樹脂マトリックス上に分散した粒子を含み、不透明度(Opacity、%)が20〜70%であり、フィルムロールの全幅にわたって不透明度(%)の偏差が平均±5%以内の値を示し、90℃の温水中で10秒間にわたって処理した場合に最大収縮方向に対する収縮率が40〜80%であり且つ最大収縮方向に対する収縮率の偏差が平均±5%以内である、熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【0015】
前記具現例に係る粒子は、0.1〜5μmの平均粒径を有してもよい。
【0016】
前記具現例に係る粒子は、酸化チタニウムであり、フィルムの総重量に対して2〜10重量%で含まれてもよい。
【0017】
前記具現例に係るポリエステル系樹脂マトリックスは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジカルボン酸を1つ以上含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオールを1つ以上含むジオール成分から得られるコポリエステルの中から選ばれた少なくとも1種のコポリエステルを含んでもよい。
【0018】
前記具現例に係るコポリエステルは、ジカルボン酸単位体中のテレフタル酸単位体が80モル%以上含まれ、ジオール単位体中のエチレングリコール以外の単位体が14〜24モル%含まれてもよい。
【0019】
前記具現例に係るコポリエステルは、融点(Melting Point)が195〜215℃であってもよい。
【0020】
前記具現例に係るコポリエステルは、全体ポリエステル樹脂に対して85〜98重量%で含まれてもよい。
【0021】
また、好適な第2具現例として、本発明は、ポリエステル系樹脂を押出及び延伸して熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、下記段階:平均粒径0.1〜5μmの粒子と固有粘度が少なくとも0.8dl/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをコンパウンドして粒子含有ポリエステル系樹脂マスターバッチを製造する段階であって、粒子をマスターバッチの全体重量に対して10〜70重量%で含むように粒子含有ポリエステル系樹脂マスターバッチを製造する段階と、粒子含有ポリエステル系樹脂マスターバッチと、ジオール単位体中のエチレングリコール以外の単位体が14〜24モル%含まれているコポリエステル系樹脂とを混溶押出して未延伸シートを製造する段階であって、全体重量に対して2〜10重量%となる量で粒子を含むように、粒子含有ポリエステル系樹脂マスターバッチと、ジオール単位体中のエチレングリコール以外の単位体が14〜24モル%含まれているコポリエステル系樹脂とを混溶押出して未延伸シートを製造する段階と、押し出されたポリエステル系シートを予熱する段階と、65〜100℃で幅方向に延伸する段階とを含んでなる、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法を提供する。
【0022】
前記具現例に係るマスターバッチを製造する段階は、コポリエステルとの融点(Melting Point:℃)差が30℃以内のホモポリエステル系ポリマーと、粒子とを混合する段階と、混合物を二軸押出機又はニーダーに入れ、溶融混練して粒子含有ホモポリエステル系マスターバッチを得る段階とを含んでもよい。
【0023】
前記具現例に係る溶融粒子含有ホモポリエステルマスターバッチを得る段階で、押出機のスクリュー(screw)の内部に冷却手段を付加して溶融温度を制御してもよい。
【0024】
前記具現例に係る幅方向延伸は、延伸比が3.5〜5.0倍となるように行われてもよい。
【0025】
前記具現例に係るポリエステル系樹脂マスターバッチにおける粒子は酸化チタニウムであってもよい。
【0026】
また、好適な第3具現例として、本発明は、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を含むポリエステル系樹脂マトリックス上に分散した粒子を含み、不透明度(%)が20〜70%であり、90℃の温水中で10秒間にわたって処理した場合に最大収縮方向に対する収縮率が40〜80%である熱収縮性ポリエステル系フィルム層と、熱収縮性ポリエステル系フィルム層の一面に形成される印刷層と、熱収縮性ポリエステル系フィルム層の他の一面に形成される反り防止層とを含んでなる、熱収縮性ポリエステル系ラベルを提供する。
【0027】
前記具現例に係る粒子は、0.1〜5μmの平均粒径を有してもよい。
【0028】
前記具現例に係る粒子は、酸化チタニウムであり、フィルムの総重量に対して2〜10重量%で含まれてもよい。
【0029】
前記具現例に係るポリエステル系樹脂マトリックスは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などのジカルボン酸を1つ以上含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオールを1つ以上含むジオール成分から得られるコポリエステルの中から選ばれた少なくとも1種のコポリエステルを含んでもよい。
【0030】
前記具現例に係るコポリエステルは、ジカルボン酸単位体中のテレフタル酸単位体が80モル%以上含まれ、ジオール単位体中のエチレングリコール以外の単位体が14〜24モル%含まれてもよい。
【0031】
前記具現例に係るコポリエステルは、全体ポリエステル樹脂に対して85〜98重量%で含まれてもよい。
【0032】
前記具現例に係る反り防止層は、印刷層の厚さに対して50〜200%の厚さ比率を有してもよい。
【0033】
前記具現例に係る反り防止層は、印刷層の厚さに対して70〜120%の厚さ比率を有してもよい。
【0034】
前記具現例に係る反り防止層は、アクリル系、ポリウレタン系、ビニル系、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ビニルアセテート樹脂及びケトン樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、着色剤とを含む層であってもよい。
【0035】
前記具現例に係る反り防止層は、アクリル系、ポリウレタン系、ビニル系、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ビニルアセテート樹脂及びケトン樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、着色剤と、溶媒とを含む組液から形成される層であってもよい。
【0036】
また、好適な第4具現例として、本発明は、前記ラベルが貼られた瓶を提供する。
【0037】
また、好適な第5具現例として、本発明は、前記熱収縮性ポリエステル系ラベルの反り防止層に接着剤を塗布する工程と、接着剤の塗布された熱収縮性ポリエステル系ラベルを瓶に貼る工程とを含んでなる、ラベル付き瓶の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る熱収縮性ポリエステル系フィルムは、 収縮性に優れるうえ、有色を帯びて印刷加工後に美麗な外観を示すことができて紙材質のラベルを代替することができ、熱水を用いて剥離が容易であって空き瓶のリサイクルに寄与することが可能なラベル用フィルムとして有用である。
【0039】
また、本発明に係る熱収縮性ポリエステル系ラベルは、収縮性を維持しながら、フィルム自体が有色を帯びることによりラベル用途への適用の際に印刷外観及び隠蔽性に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルム層を含み、自体のカール現象を最小化することができる。よって、ラベル紙の移送、接着剤の塗布、及び瓶への貼着が一つの工程ライン上で行われることが可能であるため、既存の紙ラベルラインをそのまま適用することができる。 熱収縮性ポリエステル系ラベルが貼られた瓶は、印刷外観が美麗であり、隠蔽性に優れ、かつリサイクルの際に熱水のみを用いてラベルを除去することにより廃水の発生を防止することができて環境に優しい。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0041】
本発明の一具現例では、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を含むポリエステル系樹脂マトリックス上に分散した粒子を含み、不透明度(Opacity、%)が20〜70%であり、フィルムロールの全幅にわたって不透明度(%)の偏差が平均±5%以内の値を示し、90℃の温水中で10秒間にわたって処理した場合に最大収縮方向に対する収縮率が40〜80%である、熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【0042】
また、本発明は、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を含むポリエステル系樹脂マトリックス上に分散した粒子を含み、不透明度(%)が20〜70%であり、90℃の温水中で10秒間にわたって処理した場合に最大収縮方向に対する収縮率が40〜80%である熱収縮性ポリエステル系フィルム層と、熱収縮性ポリエステル系フィルム層の一面に形成される印刷層と、熱収縮性ポリエステル系フィルム層の他の一面に形成される反り防止層とを含んでなる、ラベルを提供する。
【0043】
まず、熱収縮性ポリエステル系フィルム層において、ポリエステル系樹脂マトリックスは、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を含むものである。これは、通常、収縮フィルムの商業的使用の際には収縮フィルムを溶剤で溶かして付着させる方式の接着方式を採用するが、このような溶剤接着力を考慮するとき、ポリエステル系樹脂マトリックスはブチレンテレフタレート繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0044】
ところが、ポリエステル系樹脂マトリックス中のブチレンテレフタレート繰り返し単位の含量があまり低ければ、溶剤接着力が低下して商業的使用が難しいおそれがあり、これに対し、その含量があまり高ければ、主収縮方向(例えば、幅方向(TD))に対する収縮率が低くなるおそれがあり、主収縮方向に対して垂直な方向(例えば、機械方向(MD))の機械的物性(強伸度)の低下が発生するおそれがある。通常、フィルムは商業的使用の際に多くのロール工程を経ることにより、機械方向の機械的物性が要求され、機械的物性が悪ければ、フィルムの切れ又は破断などが発生するおそれがある。このような点を考慮するとき、好ましくは、ブチレンテレフタレート繰り返し単位は全体ポリエステル系樹脂マトリックスに対して2〜15重量%で含まれてもよい。
【0045】
また、このような熱収縮性ポリエステル系フィルム層は、不透明度(%)が20〜70%であるが、上述したように有色のPET瓶及びガラス瓶にラベル用途として適用するに際して、瓶自体が有する固有色相を相殺させることができる程度の隠蔽性を有するためには、不透明度(%)が少なくとも20%以上でなければならず、好ましくは不透明度(%)が40%以上でなければならない。ところが、不透明度(%)が70%を超えると、粒子の含量が過度にならなければならないため、収縮率を阻害するおそれがある。
【0046】
ここで、不透明度(%)は、ASTM−1003に基づいて測定したもので、ポリエステル系フィルムを辺部2箇所、中心部1箇所から無作為に7個抽出した後、各サイズ5cm×5cmの切片に作り、不透明度測定器(Film Opacity Meter Series 6000)に入れて不透明度(%)を測定し、最大値及び最小値を除いた5つの値に対する平均値を求めて測定された値で定義できる。
【0047】
このような不透明度(%)値を満足しながらも、特にフィルムロールの全幅にわたって不透明度(%)の偏差が平均±5%以内の値を示さなければならないが、このように不透明度(%)値の偏差がフィルムロールの全幅にわたって少なく現れるということは、粒子の分散が最適化されていることを反証する。
【0048】
本発明において、「フィルムロールの全幅にわたって不透明度(opacity、%)の偏差が平均±5%以内の値を示す。」という意味は、フィルムの全幅にわたって5cm×5cmのサイズに連続して試片を採取し、それぞれの試片に対してASTM D−1003を基準とした前述の不透明度(%)測定方法と同一の方法で不透明度(%)を測定し、全体試料に対する平均値、最大値及び最小値を求めて、最大値及び最小値がフィルムロール全幅の平均値±5%以内の値を有するものと理解される。
【0049】
ポリエステル系フィルムは一般に透明である。このようなポリエステル系フィルムを不透明にするためには、無機系粒子又は不活性有機系粒子を適用する方法を考慮することができるが、粒子添加方法の一例としては、ポリマー重合工程中に粒子を入れて高濃度で粒子を含有するポリマーを重合する方法を挙げることができる。ところが、このような方法の場合には、重合工程中の粒子の分散性問題によりポリマー内粒子の含量を一定程度以上と高めることは難しい。すなわち、上述した程度の不透明度(%)を示し難く、しかも分散が均一ではないため、フィルムへの製造の際にもフィルムロールの全幅にわたって均一な不透明度(%)値を示し難いおそれがある。
【0050】
このため、本発明の一具現例では、粒子を重合済みのポリマーと別途混合し、かつ粒子をマスターバッチ化することにより含めさせることが可能な粒子量を最大化し、かつ粒子マスターバッチの製造に際して粒子サイズの制御、粒子種類の選別、粒子の分散均一性及びマスターバッチチップ間の粒子含量の均一性を極大化するように工程を制御することによりフィルムロールの全幅にわたっての不透明度(%)の偏差を最小化することができるようにする。
【0051】
その一例として、本発明の一具現例に係る熱収縮性ポリエステル系フィルム層において、
粒子は0.1〜5μmの平均粒径を有してもよい。粒子の平均粒径が前記範囲以内であることが、光学的特性の制御及び収縮率の制御に容易である。
【0052】
一方、有色の特性を発現するために添加することが可能な無機粒子の一例としては、硫酸バリウム、酸化チタニウム及びシリカなどを挙げることができるが、酸化チタニウムは、延伸性がよく、粒子による光の散乱を誘導する観点から好ましい。硫酸バリウムの場合は、延伸過程中にフィルム内に微細空洞(micro−void)を形成して光の乱反射を起こすことによりフィルムが有色を帯びるようにするが、フィルム内に形成されている微細空洞は、フィルムの収縮過程中にポリマー鎖の密着によって微細空洞が無くなってフィルムの色相が有色から透明に変更される場合があって、適用の多様化観点からみて、使用が制約的なので良くない。また、シリカの場合には、粒子のサイズが制約的であり、粒径の大きい粒子を用いて、多量の粒子を含むフィルムを製造する場合、フィルムの表面に多量の大きい粒子が突出して印刷の際に外観が良くない。
【0053】
その結果、収縮特性を維持しながら有色を発現することが可能な最適の粒子は酸化チタニウムである。
【0054】
また、粒子に応じて、有色を発現しながらも収縮率の特性を満足させることが可能な含量の範囲が制御されるべきであるが、酸化チタニウムの場合、含量がフィルムの総重量に対して2〜10重量%であることが、前記不透明度(%)値を示しながら収縮率を満足することができて好ましい。
【0055】
本発明の一具現例に係る熱収縮性ポリエステル系フィルム層は、90℃の温水中で10秒間にわたって処理した場合に、最大収縮方向に対する収縮率が40〜80%である。
【0056】
通常、熱収縮性フィルム材のラベルなどを容器などに被覆して収縮させる工程では、熱風トンネルの場合は120〜200℃程度、風速2〜20m/秒程度の熱風中を2〜20秒程度で通過させ、スチームトンネルの場合は75〜95℃程度、圧力0.5〜20MPa程度のスチーム中を2〜20秒程度で通過させる。
【0057】
このような点を考慮し、本発明の一具現例では、フィルムの収縮率、具体的に熱水収縮率が前記範囲以内であることが、通常行われる収縮の条件下で非常に美麗な収縮外観を達成することができて好ましい。
【0058】
具体的に、90℃の温水中で10秒間にわたって処理した場合に主収縮方向に対する収縮率が40%未満であれば、収縮のために必要とする時間が長くなって生産性が低下するうえ、エネルギー費用も高く、容器の構造による適用性が低下して多様な形態の容器への適用が困難な問題がありうる。これに対し、主収縮方向に対する収縮率が80%超過であれば、あまり高い収縮速度により、容器とラベルとの間に存在する空気が抜け出し難いため、ラベルと容器との間に空気層が形成されて製品の外観を低下させるおそれがある。
【0059】
このような熱水収縮率の範囲は、また、接着剤を用いて熱収縮性フィルムをラベルとして貼った空き瓶を回収してリサイクルする際に、熱水を用いてラベルを剥離させる工程においても剥離を容易にしながら、空き瓶の内部に巻き込まれた、剥離した収縮フィルムが容易に抜け出るようにする観点からも有利である。
【0060】
上述した条件を満足するフィルムは、フィルムロールの全幅において最大収縮方向に対する収縮率の偏差が平均±5%以内の値を示すことができる。フィルムロールの全幅にわたって収縮率の値が均一になれることも、有色を発現するために添加される粒子が均一に分散することにより可能となる。
【0061】
本発明において、「フィルムロールの全幅において最大収縮方向に対する収縮率の偏差が平均±5%以内の値を示す。」という意味は、フィルムの長さ方向(MD方向)と幅方向に対してサイズ15mm(MD方向)×400mm(TD方向)の試料を連続して10個採取し、それぞれの試片に対してTD方向の両端の50mm地点からフィルムの長さ方向(MD)に垂直線を描いて収縮率測定の有効長さを300mmと設定した測定試片を製作し、90±0.5℃の温水中で無荷重状態にして最大収縮方向に対する収縮率を測定して全体測定試料に対する平均値、最大値及び最小値を求める。この際、最大収縮方向の収縮率の最大値及び最小値が平均値±5%以内の値を有するものと理解されるであろう。
【0062】
もしフィルムのTD方向の長さが400mm未満である試片の場合であれば、前述と同一の方法で評価するが、但し、測定試片の規格又は収縮率測定の有効長さなどは可変的でありうる。
【0063】
このような物性を満足する熱収縮性ポリエステル系フィルム層は、上述したように、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を含むうえ、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの公知のジカルボン酸を1つ以上含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオールを1つ以上含むジオール成分から得られるコポリエステルの中から選ばれた少なくとも1種のコポリエステルを含んでもよい。
【0064】
この際、コポリエステルは、テレフタル酸単位体がジカルボン酸単位体の80モル%以上を構成し、エチレングリコール以外の単位体がジオール単位体の14〜24モル%以上を構成するコポリエステルであってもよい。コポリエステル中のエチレングリコール単位体以外の単位体は、ポリエステルポリマーの結晶性を低下させることにより収縮率を高める機能をするもので、該当単位体の比率が前記範囲以内であることが、フィルム製造工程の際に乾燥工程、フィルム加工性、溶融特性及び物性を制御する観点から有利でありうる。
【0065】
本発明において、前記コポリエステル自体は、一般に行われているポリエステルの製造方法によって製造することができる。例えば、ジカルボン酸に対してジオールを直接反応させる直接エステル化法や、ジカルボン酸のジメチルエステルにジオールを作用させるエステル交換法などを挙げることができる。
【0066】
本発明の具現例によれば、コポリエステルの融点(Melting Point;℃)は195〜215℃であり、固有粘度は0.60〜0.70dl/gである。この際、融点(℃)は重合体の製造に使用された単量体の組成に応じて調節でき、固有粘度は重合度に応じて異なりうるので、本発明では、このような調節によって融点(℃)と固有粘度が前記範囲内にあるコポリエステルを使用することができる。
【0067】
一方、熱収縮性フィルム層は、製膜工程又は後加工工程における生産性向上の観点から、長いフィルムを高速で走行させ或いは高速で巻き取ってフィルムロールにされることを要求しているので、本発明の一具現例に係る熱収縮性フィルムは、表層に、帯電防止剤を含むインラインコーティング層を含むことができる。
【0068】
ここで、「インラインコーティング層」とは、当該分野における通常の知識を有する者にはポリエステル樹脂を押し出して製膜する工程のいずれか1工程内でコーティング工程が行われて形成された層として理解される。
【0069】
このようにフィルムの表層に、帯電防止剤を含むインラインコーティング層を形成する場合、摩擦によって発生する静電気を緩和させることによりフィルムロールを巻き取る工程中にフィルムが互いにくっ付く現象を除去し、その結果、フィルムロールを巻き取る工程で流入した空気を容易に抜け出すように助けることができるという点で有利でありうる。また、印刷工程の際に印刷ロールとフィルムとの摩擦により発生する静電気による印刷不良を防止し、後加工工程の際に静電気によりフィルムが互いにくっ付く現象を除去することにより、フィーディング性(feeding)の不良を制御することができる。
【0070】
帯電防止剤は、特にその種類が制限されるのではないが、一例として4級アンモニウム化合物、RSONaで代表されるアルキルスルホネート化合物、ROSONaで代表されるアルキルサルフェート化合物、アルキルホスフェート化合物などを挙げることができる。その含量は、インラインコーティング層形成用組液中の有効成分を基準として0.1〜1.5重量%であることが、印刷工程、チュービング工程及び熱収縮工程の際に摩擦により発生する異物の発生量を最小化し、工程性及び帯電防止性能に優れる観点から好ましい。
【0071】
一方、インラインコーティング層中には結束力及び接着力を考慮してバインダー樹脂を含むことができるので、この際、バインダー樹脂は、特に限定されるものではなく、チュービング工程の際に溶媒による溶解性を考慮して選択することができる。
【0072】
考慮できるバインダー樹脂の一例としては、ポリエステル系、アクリル−ポリエステル共重合物、共重合ポリエステル系などを挙げることができる。
【0073】
前記特性を有する本発明のポリエステル熱収縮フィルム層は、例えば下記の製造工程によって製造できる。
【0074】
まず、粒子マスターバッチを製造する。
【0075】
マスターバッチを製造した後、これを混溶してフィルムを製造する過程において、マスターバッチ内粒子の均一分散性、マスターバッチの製造工程性、乾燥工程性、及びマスターバッチと混溶されるポリマーとの均一混溶性を考慮することができ、このような特性はマスターバッチに使用されるポリマーの特性が最も大きく影響する。
【0076】
通常、粒子マスターバッチに使用されるポリマーは、フィルムの主要マトリックスを構成するポリマーと同一のポリマーを使用する。ところが、熱収縮性フィルムの場合、フィルムの製造工程である延伸及び熱処理工程の際に結晶化が殆ど起こらないように共重合物を使用するが、このようなポリマーは耐熱性が相当劣る。このような共重合物を用いてマスターバッチを製造する場合、まず、マスターバッチを製造する押出機のフィーディング部で共重合物の溶融が発生して粒子と共重合物間の混溶性が低下して均一な粒子含有マスターバッチを製造することが難しい。また、マスターバッチを用いてフィルムを製造するためには、水分を除去する乾燥過程を経なければならないが、この際、通常適用する乾燥工程の温度は140〜160℃程度であり、このような温度でマスターバッチを乾燥させる場合、マスターバッチチップの表面間の融着による塊発生(Lumping)現象が頻繁に発生して乾燥を行い難くて低温で長時間の乾燥を経なければならないため、ポリマーの色相変化や工程性の低下など多様な問題を引き起こすおそれがある。
【0077】
したがって、ホモポリエステル系を適用することが好ましく、このようなホモポリエステル系を適用してマスターバッチを製造するにあたり、マスターバッチに適用されるポリマーの溶融特性がフィルムの主要マトリックスを構成する共重合物と異なる場合、マスターバッチと共重合物とを溶融混練してフィルムを製造する過程において、マスターバッチと共重合物間の混練性が低下し、結果としてフィルム内粒子の均一分散性が低下する。したがって、マスターバッチに適用するポリマーは、フィルムの主要マトリックスを構成する共重合物との融点(℃)差が大きくてはならず、共重合物との融点(℃)差が30℃以内であることが好ましい。
【0078】
共重合物とマスターバッチ間の融点差が30℃以上の場合には、溶融温度によるポリマーの粘度差があまり大きいため、混練性に問題が発生し、製造されたフィルムにおける物性の低下が大きい。
【0079】
したがって、本発明において、粒子マスターバッチは、ポリブチレンテレフタレート樹脂と上述したような酸化チタニウム粒子を用いて製造することが好ましいが、粒子マスターバッチ製造の際にポリブチレンテレフタレート樹脂を使用することは、マスターバッチを乾燥させる過程中にマスターバッチチップの表面間の融着が発生しないため、乾燥過程に問題を引き起こさないうえ、フィルムの製造に使用されるコポリエステルとの溶融混練性に優れてフィルム内粒子の均一分散性に優れるためである。
【0080】
ところが、フィルムの製造に使用されるポリマーとしてのポリブチレンテレフタレートを用いて粒子マスターバッチを製造するにあたっては、ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度が低いため、マスターバッチの製造の際に、押出機のフィーディング部でチップの融着によるフィーディング問題を引き起こすおそれがある。
【0081】
したがって、本発明の一具現例では、次の方法で粒子マスターバッチを製造する。
【0082】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法において、マスターバッチを製造する段階は、ポリブチレンテレフタレートと粒子を混合する段階と、混合物を二軸押出機又はニーダーに入れ、溶融混練して粒子含有ポリブチレンテレフタレートマスターバッチを得る段階とを含み、粒子含有ポリブチレンテレフタレートを得る段階で、押出機のスクリューの内部に冷却手段を付加して溶融温度を制御する。もし粒子含有ポリブチレンテレフタレートを得る段階で冷却手段を付加して溶融温度を制御しなければ、押出機のフィーディング部でチップの融着が発生してフィーディング性の不良をもたらすことにより粒子との混練性が低下するという問題が発生するおそれがある。
この際、冷却は水冷又は空冷でありうる。これはスクリューの全長にわたって或いは一部の部分のみ行われ得る。
【0083】
この際、粒子は上述したように平均粒径0.1〜5μmの粒子である。この際、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、マスターバッチ製造過程中に発生する熱による粘度低下を考慮し、固有粘度が少なくとも0.8dl/gであることが好ましい。
【0084】
マスターバッチ中の粒子の含量は10〜70重量%でありうる。マスターバッチ中の粒子含量の最大値はマスターバッチ内粒子の分散均一性、工程性を考慮して決定できる。
【0085】
このように得られる粒子含有ポリエステル系樹脂マスターバッチと共重合物を混溶押出してポリエステル系シートを製造するにあたって、マスターバッチの含量はフィルム全体重量に対して2〜10重量%となる量で粒子を含有するように調節できる。
【0086】
押出は200〜350℃で行う。前記押出のためにTダイ押出法又はチューブラー押出法などの公知のいずれの方法も使用することができる。
【0087】
押し出された生成物を例えば正電荷接触法などの方法で冷却ロールに均一に付着させることにより急速冷却させて未延伸フィルムを収得する。
【0088】
このような未延伸フィルムは、機械的方向に自然進行するローラーなどを経た後、予熱し、幅方向に延伸した後、熱処理を施す。
【0089】
この際、同一の粒子含量でも延伸条件によって不透明の程度が異なるので、延伸条件及び熱処理条件の制御が必要である。言い換えれば、延伸条件に応じて発現する不透明度(%)の水準が異なるが、延伸温度が低いほど、同一の粒子含量で不透明度(%)が高くなるが、この場合、破断発生により操業性が低下するおそれがあるので、延伸区間の温度は65〜100℃にし、延伸比は3.5〜5.0倍にすることが好ましい。
【0090】
収縮フィルムの延伸比率が小さい場合、収縮率が低下するおそれがある。これに対し、収縮フィルムの延伸比率が高すぎる場合、破断が起こり、或いはあまり物性の向上を期待することが難しくて延伸比増加の意味がないので、延伸比は元来の長さに対して約3.5倍〜約5.0倍の範囲内で選定することができる。
【0091】
前記延伸方法としては、通常の装置が使用され、ロール延伸、テンター延伸、チューブラー延伸などの公知の方法を適用することができる。
【0092】
延伸工程の後、常温〜100℃の範囲で熱処理を施す。
【0093】
一方、上述したインラインコーティング層の形成のために、押し出されたポリエステルシートを予熱する段階の前に、帯電防止剤を含む組液をコートする段階を行った後、後続工程を行うことができる。
【0094】
本発明の一具現例に係る熱収縮性ポリエステル系ラベルは、上述した熱収縮性ポリエステル系フィルム層の一面に通用の方法によって印刷層を形成したものである。
【0095】
印刷層は、文字又は図形の形で容器の内容物に関する事項、広告及び警告メッセージなどが印刷され、製品を広報する役目をする。このような印刷層形成の方法としては、公知の方法を使用することができるが、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷などを挙げることができる。印刷層の厚さは0.5〜10μmであることが好ましいが、これは印刷層として十分な厚さであり、かつ印刷層が壊れることを防止することができる。
【0096】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系ラベルは、熱収縮性ポリエステル系フィルム層の他方の一面に反り防止層が形成されたものである。
【0097】
ガラス瓶などに紙材のラベル、特に一枚のラベルを貼る公知の方法の一例としては、印刷層が形成された所定規格のラベルを移送しながらグラビア印刷などの方法で接着剤を塗布し、瓶への貼りが連続的に行われる。(これを「オンライン接着工程」という)。
【0098】
紙材のラベルの場合は、印刷層が形成された後も適正の平坦性を維持するが、熱収縮性ポリエステル系フィルム層上に印刷層を形成すると、カール現象が激しくなるおそれがある。よって、従来の紙材のラベルを適用してきた瓶製作社又は酒類製作社などではフィルム材のラベルを適用するには困難な点がある。
【0099】
そこで、本発明の一具現例に係るラベルは、熱収縮性ポリエステル系フィルム層の印刷層の背面に反り防止層を備える。
【0100】
反り防止層は、前記生地に印刷を施した後に発生する反り現象を相殺させるという側面を考慮するとき、特にその組成が限定されるのではないが、アクリル系、ポリウレタン系、ビニル系、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ビニルアセテート樹脂、ケトン樹脂などの樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含み、溶媒、白色顔料、及び例えば沈殿防止剤、増粘剤、色分離防止剤、顔料分散剤などの添加剤を含む組成から形成されることが、前記生地に印刷した後の反り現象を容易に制御することができるという観点から好ましい。この際、組液を組成する溶媒としては、特に限定されないが、印刷層の形成に使用される溶媒を考慮するとき、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アセテート系溶媒、塩素系溶媒、及びアルコール系溶媒の中から少なくとも1種を選択して使用することができる。
【0101】
このような反り防止層は、印刷層の厚さに対して50〜200%の厚さ比率を有する場合、反り防止層を有することにより得られる効果を獲得することができ、好ましくは、反り防止層は印刷層の厚さに対して70〜120%の厚さ比率を有することがラベルの平坦性を維持する観点から好ましい。
【0102】
このような熱収縮性ポリエステル系ラベルをガラス瓶などに貼る方法は、従来の紙材のラベルを貼ってきた方法を適用することができる。但し、接着剤として、フィルム材質及び環境的側面を考慮して水溶性接着剤を適用することができ、一枚のラベルの形で移送された熱収縮性ポリエステル系フィルムにこのような水溶性接着剤を塗布して瓶に貼ると、ラベル付き瓶を製造することができる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0104】
本発明で使用された評価法は、次のとおりである。
【0105】
(1)フィルムの固有粘度(I.V.)
35℃でオルト−クロロフェノール25mL当たり0.3gの濃度で粘度測定計を用いて測定した。
【0106】
(2)融点(Melting Point;℃)の測定及び定義
ポリマーを液体窒素に対して30秒間取り入れ、取り出した後、粉砕機(Hico−10−6−388)を用いて粉末状態に作った後、これを毛細管(Capillary tube)(2×100mm)に入れる。毛細管には表示線が表示されており、表示線以上の高さ(通常、チューブ全長の2/3以上の高さ)に粉末状態のポリマーで満たした後、融点測定器(Thomas Hoover Capillary Melting Point Apparatus)に入れ、30℃/minの速度で昇温させながら毛細管内のポリマーが溶ける地点の温度を温度計から確認し、これを融点(Tm)と定義する。
【0107】
(3)熱収縮率
フィルムの長さ方向(MD)と幅方向(TD)に対してサイズ15mm(MD)×400mm(TD)の長方形に裁断し、TD方向の両端の50mm地点からMD方向に実線を描いて有効測定長さ300mmの試片を製作した後、ピンセットなどを用いて左右区分なく試料の一端から50mm以内の地点を取って全体試料を90℃±0.5℃の温水中に無荷重状態にして完全に浸した状態で10秒間熱収縮させた後、常温で1分間放置し、しかる後に、初期の実線で表示されたTD方向の300mm間隔の減少した長さを測定してフィルム幅方向(TD)の熱収縮率を下記式1によって求めた。
【数1】
【0108】
(4)収縮率の偏差
フィルムの長さ方向(MD方向)と幅方向に対してサイズ15mm(MD方向)×400mm(TD方向)の試料を連続して10個採取し、それぞれの試片に対してTD方向の両端の50mm地点からMD方向に実線を描いて有効測定長さ300mmの試片を製作した後、ピンセットなどを用いて左右区分なく試料の一端から50mm以内の地点を取り、全体試料を90±0.5℃の温水中に無荷重状態にして完全に浸した状態で10秒間熱収縮させた後、常温で1分間放置し、しかる後に、初期の実線で表示されたTD方向の300mm間隔の減少した長さを測定して最大収縮方向に対する収縮率を求め、全体測定試料に対する平均値、最大値及び最小値を求めた後、平均値に対する最大値及び最小値の差を絶対値で示し、それらの中の大きい数を収縮率の偏差と定義し、下記式2によって求めた。
【数2】
【0109】
(5)不透明度(Opacity、%)
測定方法はASTM D−1003に基づいて行った。ポリエステルフィルムを辺部2箇所、中心部1箇所から無作為に7個抽出した後、各サイズ5cm×5cmの切片に作り、不透明度測定器(Film Opacity Meter Series 6000)に入れて不透明度(%)を測定し、最大値及び最小値を除いた5つの値に対する平均値を求めて不透明度(%)を算出した。
【0110】
(6)不透明度(%)の偏差
フィルムの全幅にわたって5cm×5cmのサイズに連続して試片を採取し、それぞれの試片に対してASTM D−1003を基準とした上述の不透明度(%)測定方法と同一の方法で不透明度(%)を測定し、全体試料に対する平均値、最大値及び最小値を求めた後、平均値に対する最大値及び最小値の差を絶対値で示し、それらの中の大きい数値を不透明度(%)の偏差と定義し、下記式3によって求めた。
【数3】
【0111】
(7)印刷外観の評価
幅560mm、長さ2000mのフィルムロールを印刷して突起発生による印刷不良個数を測定し、印刷均一性を評価した。
【0112】
印刷は、一般に使用されるグラビア印刷機を用いて、赤色、青色、黄色、緑色、黒色及び白色の6度印刷を行った。突起による印刷不良は、不良発生部位がインクの不均一付着により発生する円形及び楕円形の印刷網点を基準とした。印刷不良率は、2000mに対して発生した個数であって、下記式4によって求めた。
【数4】
【0113】
(8)フィルムの剥離性評価
スチレン−ブタジエンゴム乳液45重量部、アクリルエマルジョン40重量部、エチレン−ビニルエマルジョン10重量部、水酸化ナトリウム0.8重量部、殺菌剤0.1重量部及び水4.1重量部を混合して製造した水溶性接着剤をフィルムに5μmの厚さで塗布した後、接着剤の塗布されたフィルムをガラス瓶に付着させ、ゴムローラーを用いてフィルムがガラス瓶にしっかり貼られるようにフィルムの全体面積に対して3Kg/cmの圧力で擦りながら10回往復し、常温で2日間放置して接着剤を固化させてフィルムをガラス瓶にしっかり固定させた。
【0114】
フィルムの貼られたガラス瓶1000個を80℃の温水で2分間放置した後、ガラス瓶からフィルムが完全に剥離されていない瓶の個数を測定し、下記式5による剥離不良率から剥離性を評価した。
【数5】
【0115】
(9)ラベルの反り程度の評価
フィルムの長さ方向(MD)と幅方向(TD)に対してサイズ20cm(MD)×20cm(TD)の正方形の切片にして常温で、印刷層が最表面にくるように平坦なテーブル上にのせた後、4つのコーナーがテーブルの床面からめくれた高さを測定し、測定された値の中から最大値及び最小値を除いた5つの値に対する平均値を求め、4つのコーナーに対する反り程度(mm)を算出した。
【0116】
(10)瓶製造工程中のラベル接着性の評価
熱収縮性ポリエステル系ラベルをサイズ8cm(横)×8cm(縦)の切片にした後、グラビア印刷方法を用いて接着剤を塗布し、ラベラー(labeler)を用いて1000個のガラス瓶(焼酎瓶)にラベリング(labeling)を行う。ラベリングされた1000個のガラス瓶を常温で24時間保管した後、ラベルに襞が発生し或いはコーナーが剥離された瓶の個数を測定し、下記式6による接着不良率から接着性を評価した。
【数6】
【0117】
(11)ラベルの剥離性の評価
スチレン−ブタジエンゴム乳液45重量部、アクリルエマルジョン40重量部、エチレン−ビニルエマルジョン10重量部、水酸化ナトリウム0.8重量部、殺菌剤0.1重量部及び水4.1重量部を混合して製造した水溶性接着剤を、印刷されたラベルの印刷裏面に5μmの厚さで塗布した後、ガラス瓶に付着させ、ゴムローラーを用いてラベルがガラス瓶にしっかり貼られるようにラベルの全体面積に対して3Kg/cmの圧力で擦りながら10回往復し、常温で2日間放置して接着剤を固化させてラベルをガラス瓶にしっかり固定させた。
【0118】
ラベルの貼られたガラス瓶1000個を80℃の温水で2分間放置した後、ガラス瓶からラベルが完全に剥離されていない瓶の個数を測定し、下記式7による剥離不良率から剥離性を評価した。
【数7】
【0119】
<実施例1>
(1)二塩基酸成分としてテレフタル酸100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール100モル%及びネオペンチルグリコール24モル%を使用し、触媒として三酸化アンチモン0.05モル(酸成分に対して)を使用し、直接エステル化法によって重縮合して固有粘度0.67dl/g、融点204℃のコポリエステル(Co−PET)を製造した。
【0120】
(2)また、テレフタル酸100モル%及び1,4−ブタンジオール100モル%を使用し、触媒としてはテトラブチルチタネート0.015重量部を投入してポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を得た。(固有粘度0.97dl/g、融点220℃)
【0121】
(3)一方、二軸押出機又はニーダーに、前述のように製造されたポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂と酸化チタニウム粒子(粒子サイズ0.5μm)を混合した混合物を入れ、溶融混練して粒子含有ポリエステル系マスターバッチチップを得た。
【0122】
この際、押出機のスクリュー内に水冷のための冷却手段を備え、溶融温度を260℃が超えないように制御した。マスターバッチ内の酸化チタニウムの含量は50重量%であった。
【0123】
(4)前記(1)のコポリエステル及び(3)のマスターバッチを押出機に供給するに際して、比重差によるチップ間の混溶性の低下を防止するために定量供給装置(side Feeder)を設置して全体ポリマー重量を基準としてマスターバッチ20重量%を供給した。
【0124】
前記2種のポリマーを280℃の押出機から溶融混練押出させた後、冷却ローラーを経て急速冷却させ、固形化された未延伸フィルムを収得した。
【0125】
前記未延伸フィルムを、機械的方向(MD:Mechanical Direction)へ移送されるローラーを介してインラインコーティング(ILC)工程を通過させ、温度85℃の予熱区間を経て71℃で幅(TD;Transverse Direction)に対して4.1倍延伸させた後、常温の熱処理区間を通過させることにより、フィルムを製造した。
【0126】
前記において、インラインコーティング(ILC)は、有効成分を基準としてアクリル−ポリエステル共重合バインダー0.4重量%、アルキルホスフェート系帯電防止剤0.1重量%を含有するコーティング液をMayer Bar#4を用いて塗布して行った。
【0127】
得られたフィルムは厚さ50μmの熱収縮フィルムである。フィルムの物性値を表3に示す。
【0128】
<実施例2>
前記実施例1と同様の方法で熱収縮フィルムを製造するが、(4)前記(1)のコポリエステル(Co−PET)96重量%と、(2)のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂4重量%とを混溶して乾燥させた混溶チップを移送して押出機の上端のホッパーを介して供給し、(3)のマスターバッチをサイドフィーダー(Side Feeder)を介して全体ポリマー重量を基準として20重量%供給した以外は、同一の方法でフィルムを製造した。フィルムの物性値を表3に示す。
【0129】
<実施例3〜9>
前記実施例1と同様の方法で熱収縮フィルムを製造するが、コポリエステルの融点、マスターバッチチップ適用粒子サイズ及びフィルム内粒子含量、幅方向(TD)延伸温度、熱処理温度などを下記表1に示すように変更した。フィルムの物性値を表3に示す。
【0130】
<参考例1>
前記実施例1と同様の方法で熱収縮フィルムを製造するが、但し、(3)の粒子マスターバッチ製造工程中の溶融温度制御手段を付加していない。
【0131】
フィルムの物性値を表3に示す。
【0132】
<参考例2>
前記実施例1と同様の方法で熱収縮フィルムを製造するが、但し、粒子含有マスターバッチを製造するにあたり、ポリブチレンテレフタレート樹脂の代わりに前記(1)のコポリエステルを使用し、粒子含有コポリエステルを乾燥させる過程で攪拌器を用いて10rpmで攪拌しながら120℃で30時間乾燥させた。前記(3)のマスターバッチ製造の際に押出機のスクリュー内に冷却手段を備え、溶融温度を260℃が超えないように制御し、マスターバッチ内の酸化チタニウムの含量は50重量%と同一にした。また、前記(4)のマスターバッチを供給するに際して、サイドフィーダー(Side Feeder)を設置して全体ポリマー重量を基準としてマスターバッチ20重量%を供給した。
【0133】
フィルムの物性値を表3に示す。
【0134】
<参考例3>
前記実施例1と同様の方法で熱収縮フィルムを製造するが、但し、粒子含有マスターバッチを製造する際に、前記(2)のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂に代えて次のホモポリエステルを使用した。
【0135】
二塩基酸成分としてテレフタル酸100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール124モル%を使用し、触媒として三酸化アンチモン0.05モル(酸成分に対して)を使用し、直接エステル化法によって重縮合して固有粘度0.65dl/g、融点256℃のホモポリエステル(Homo−PET)を製造し、これをマスターバッチの製造に使用した。
【0136】
粒子サイズ及び含量は実施例1と同様にした。粒子マスターバッチ製造工程中の溶融温度制御手段を付加していない。
【0137】
また、実施例1の前記(4)のマスターバッチを供給するに際して、定量供給装置(サイドフィーダー)を設置してポリマーの全体重量を基準として20重量%を供給したことは同一である。
【0138】
フィルムの物性値を表3に示す。
【0139】
<参考例4〜6>
前記実施例5〜9と同様の方法で熱収縮フィルムを製造するが、但し、下記表2に示すように、フィルム内粒子含量、TD延伸条件を異ならしめた。
【0140】
フィルムの物性値を表3に示す。
【0141】
<実施例10>
(1)実施例1で得られたポリエステル系熱収縮フィルムのILCコーティング層上に、アクリル樹脂(BPS−5698、SAM YOUNG TOYO製)10重量%、ケトン系溶媒としてのメチルエチルケトン(MEK、デシン化工薬品製)89重量%、黄色着色剤(Yellow 10G、現代ケミカル製)、赤色顔料(Red−FRN、現代ケミカル)、緑色顔料(Green 735、現代ケミカル製)、黒色顔料(Black #30、現代ケミカル製)及び白色顔料(R−100、KPI製)の中から選ばれるそれぞれの着色剤、沈殿防止剤、増粘剤、色分離防止剤、顔料分散剤を含んで全体総量が100重量%に調節された5種の組液から、グラビアロールを用いて5度に印刷して厚さ2μmの印刷層を形成した。
【0142】
(2)前記(1)の組液のうち白色顔料(R−100、KPI製)を含む組液を適用して、ビラビアロールを用いて5度に印刷し、厚さ2μmの反り防止層を形成してラベルを製造した。製造されたラベルの物性値を下記表4に示す。
【0143】
<実施例11>
実施例2で得られたフィルムに対して前記実施例9の(1)及び(2)と同様の方法で印刷層及び反り防止層を形成してラベルを製造した。製造されたラベルの物性値を下記表4に示す。
【0144】
<実施例12〜17>
実施例3〜8で得られたフィルムそれぞれに対して前記実施例10の(1)及び(2)と同様の方法で印刷層及び反り防止層を形成してラベルを製造した。製造されたラベルの物性値を下記表4に示す。
【0145】
<実施例18>
前記実施例9と同様の方法でラベルを製造するが、但し、反り防止層の厚さを4μmに変更した。
【0146】
<実施例19>
前記実施例18と同様の方法でラベルを製造するが、但し、反り防止層形成組液をエチレン−ビニルアセテートコポリマー樹脂(VS410、湖南石油化学製)及び芳香族炭化水素系溶媒としてのトルエンに異ならしめた。製造されたラベルの物性値を下記表4に示す。
【0147】
<参考例7〜12>
前記実施例12〜17と同様の方法でラベルを製造するが、但し、反り防止層を形成していない。製造されたラベルの物性値を下記表4に示す。
【0148】
【表1】
【表2】
注1)「適用ポリマーのタイプ」の意味:マスターバッチを製造する際に使用されるポリマーを重合するにあたり使用されるジカルボン酸成分又はジオール成分において、それぞれ1種のジカルボン酸とジオールで重合された場合には「Homo」と表記し、1種以上の他のジカルボン酸成分又はジオール成分を含む場合には「Co」と表記する。
注2)「適用ポリマー」の意味:マスターバッチを製造する際に使用されるポリマーの名称を意味する。(PBT=ポリブチレンテレフタレート、Co−PET=ネオペンチルグリコールが共重合されたポリマー、PET=ポリエチレンテレフタレート)
【表3】
注3)表3の剥離不良率は、フィルムの剥離性評価によって測定された値である。
【0149】
前記表3の結果より、マスターバッチ製造工程中に押出機の溶融温度を制御していない参考例1の場合、押出機でフィーディング不良が発生して粒子とポリマーの混溶性に劣ってマスターバッチ内粒子の均一性が低下し、コポリエステルとマスターバッチを混溶押出して製造されたフィルムにおいて、粒子の分散性の低下と延伸の不均一により熱収縮率の偏差、不透明度(%)の偏差及び粒子の凝集による印刷不良をもたらし、結果としてフィルムの外観が不良であることが分かる。
【0150】
マスターバッチを製造するにあたりコポリエステルを適用した参考例2の場合は、マスターバッチを乾燥させる工程中にマスターバッチチップの表面融着による塊発生(lumping)現象が多く発生し、これにより乾燥工程の生産性が実施例に比べて50%以下と低下して生産が困る程度であった。マスターバッチチップの塊発生現象により押出機内へのチップのフィーディング均一性が低下し、塊が形成されたチップの部分的な乾燥不均一によりポリマー吐き出しの際に加水分解が激しく発生し、粘度の低下によるダイ(Die)吐き出し圧力の低下によりフィルムの厚さが不均一であった。このような現象により収縮率の偏差及び不透明度(%)の偏差が大きかった。ラベル印刷の際に厚さ不良による印刷不良が多く発生した。ラベル除去の際に収縮率の不均一による剥離の不均一を誘発し、結果として剥離工程性が低下する現象が発生した。
【0151】
マスターバッチを製造するに際して融点差の大きいホモポリエステル(PET)を適用した参考例3の場合は、コポリエステルと粒子含有ホモポリエステル(PET)間の融点差による溶融粘度差が大きく発生して混練性が低下し、結果としてフィルム内粒子の均一分散性が低下した。また、延伸応力の不均一による厚さの不均一を誘発して収縮率の偏差及び不透明度(%)の偏差が大きく、ラベル印刷の際に厚さ不良による印刷不良が多く発生した。
【0152】
フィルム内粒子の含量が適正水準を上回る参考例4の場合、過多な粒子投入による延伸不均一を誘発して収縮率の偏差及び不透明度(%)の偏差が大きかったうえ、部分的な粒子凝集による突起発生により印刷外観が不良であった。
【0153】
また、フィルム内粒子の含量が適正水準以下である参考例5の場合、要求される不透明度(%)を発現し難く、印刷には問題にならないが、結果として印刷反対面に白色のバックコーティング(Back−Coating)を行わなければならないので、工程性が低下し且つ製造コストが増加する結果をもたらした。
【0154】
延伸温度があまり高い参考例6の場合、全体幅に対する均一延伸が困難であって厚さが不良であった。その結果、収縮率の偏差及び不透明度(%)の偏差が大きく発生したうえ、収縮率があまり低くて剥離工程の際に剥離不良率が高いため、工程性が大きく低下することが分かる。
【0155】
適正水準以上の粒子サイズを有する粒子含有マスターバッチチップを適用した実施例9の場合、あまり大きい粒子サイズによって延伸工程中に粒子の隆起による突起発生が大きく現れるため、印刷の際に不良発生が多くて生産性に多少劣ることが分かる。
【0156】
したがって、本発明に係るコポリエステルとの融点差が30℃以内のホモポリエステル系樹脂を用いたマスターバッチを用いてフィルムの樹脂マトリックス上に分散した粒子を含み、不透明度(%)が20〜70%であり、フィルムロールの全幅にわたって不透明度(%)の偏差が平均±5%以内の値を示し、90℃の温水中で10秒間にわたって処理した場合に最大収縮方向に対する収縮率が40〜80%であり且つ最大収縮方向に対する収縮率の偏差が平均±5%以内の値を有する熱収縮性ポリエステル系フィルムの場合、工程性、印刷外観及び剥離特性に優れることが分かる。
【0157】
【表4】
注4)前記実施例17〜18及び参考例7〜12から得られるポリエステル系収縮フィルムにおいて、その値が該当実施例と一部異なるように測定されたことは、生産現場で発生しうる誤差として理解される。
注5)反り程度の評価値において、マイナス(−)値は、カールが印刷層の位置したラベルの表層方向に生ずるのではなく、印刷層の背面、すなわちラベルの下部側(反り防止層)に巻かれるようにカールが発生するものと理解される。
注6)表4の剥離不良率はラベルの剥離性の評価によって測定された値である。
【0158】
前記表4の結果より、本発明に係る実施例では、収縮性や不透明性などに優れたフィルムを製造することができ、得られたラベルは一般に使用される紙ラベルを代替することができ、環境にやさしくラベルを除去することができることが分かる。これに対し、反り防止層を含まない場合は、一般に使用される紙ラベルを代替するほどの工程容易性を満足しないことが分かる。