(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の成分(i)は、熱可塑性芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートである。本発明に好適な芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートは、文献により既知であるか、又は文献により既知である方法により生産できる(たとえば、芳香族ポリカーボネートの生産には、Schnell著「Chemistry and Physics of Polycarbonates」Interscience Publishers(1964年出版)や、米国特許第3,028,365号明細書、米国特許第4,529,791号明細書、及び米国特許第4,677,162号明細書等があり、その内容全体を本書に参照として組み入れる)。好適な芳香族ポリエステルカーボネートについては、米国特許第3,169,121号明細書、米国特許第4,156,069号明細書、及び米国特許第4,260,731号明細書に記載されており、その内容全体を本書に参照として組み入れる。
【0013】
芳香族ポリカーボネートの生産は、たとえば、ジフェノールとカルボン酸ハライド、好ましくはホスゲン及び/又は芳香族ジカルボン酸ハライドとの、好ましくはベンゼンジカルボン酸クロライドとの反応によって、相境界法によって、随意的に、モノフェノール等の連鎖停止剤の使用を伴い、随意的に、三機能性分岐剤又はトリフェノールやテトラフェノール等の三よりも大きい官能基を伴う分岐剤との併用による影響を受ける。
【0014】
芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートの生産用ジフェノールでは、下記の式Iを使用することが好ましい。
【0016】
ここで、Aは、単結合、C
1〜C
5アルキレン、C
2-C
5アルキィデン、C
5〜C
6シクロアクキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO
2−、又はC
6〜C
12アリーレンで、その上で随時的にヘテロ原子を含むその他芳香環芳香環を濃縮可能であり、又は、式II又はIIIのラジカルを示す。
【0019】
Bは、どのケースにおいても、独立して水素、C
1〜C
12アルキル、好ましくはメチル、又はハロゲン、好ましくは塩素及び/又は臭素であり、
xは、どのケースにおいても、相互に独立して0、1、又は2であり、
pは、は、0又は1であり
R
c及びR
dは、それぞれ相互に独立し、各X
1に対して独立して選択され、水素又はC
1〜C
6アルキル、好ましくは、水素、メチル、又はエチルであり、
X
1は、炭素を示し、
mは、4〜7の整数、好ましくは、4又は5、で、R
cを条件とし、
R
dは、同時に、少なくともひとつのX
1原子上のアルキルを示す。
【0020】
好ましいジフェノールは、ヒドロキシノン、レゾルシノール、ジヒドロキシビフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)−C
1−C
5アルカン、ビスビス(ヒドロキシフェニル)−C
5−C
6シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフォン及びα, α'−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、並びに臭素化及び/又は塩素化核を有するその派生物である。
【0021】
特に好ましいジフェノールは、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA,2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ジヒドロキシルフェニルスルフィド及び4,4−ジヒドロキシルフェニルスルフォン、並びに、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等、そのジブロモ及びテトラブロモ化及び塩素化派生物である。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)は、特に好ましい。ジフェノールは、個別に又は任意の混合物として使用できる。ジフェノールは、個別に又は任意の混合物として使用できる。
【0022】
芳香族ポリカーボネートの生産に向けた好適な連鎖停止剤の例には、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノール、又は2,4,6−トリブロモフェノール、並びに、4−(1,3−ジメチル−ブチル)−フェノール等の長鎖アルキルフェノール、又は、3,5−ジ−tert−ブチル−フェノール、p−イソ−オクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノール、及び4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノール等、アルキル置換基に合計8〜20C原子を含有するモノアルキルフェノール類又はジアルキルフェノール類が含まれる。使用される連鎖停止剤の量は、通常は、各ケースに使用されるジフェノールのモル和に対し、0.1モル・パーセントと10モル・パーセントの間である。
【0023】
本発明の芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートは、好ましくは、重量平均分子量の平均として約10,000〜約200,000を有し、好ましくは約15,000〜約80,000、より好ましくは約15,000〜約50,000である。特に記載がない限り、本書に記載する芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネート「分子量」は、ビスフェノールA ポリカーボネート規格を伴うレーザー散乱テクニックを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により判別された重量平均分子量(M
w)とし、その単位をモルあたりのグラム数(g/mole)とする。
【0024】
好ましくは、1.2Kg下300℃で測定された芳香族ポリカーボネートのメルトフローレート(MFR)は10分あたり3〜20グラム(g/10分)である。
【0025】
芳香族ポリカーボネートは、たとえば、使用したジフェノールの和に対し、三官能性化合物又は3つ以上のフェノール基を含有する物質等の3よりも大きい官能基を伴う物質の0.05〜2.0モル・パーセントを取り込む等、公知の方法で分岐できる。本発明に好適な分岐ポリカーボネートは、公知の技術により調製できる。たとえば、いくつかの好適な方法が米国特許第3,028,365号明細書、米国特許第4,529,791号明細書、及び米国特許第4,677,162号明細書で開示されており、その内容全体を本書に参照として組み入れる。
【0026】
使用してもかまわない好適な分岐剤は、たとえば、使用されているジカルボン酸二塩化物に対し、0.01〜1.0モル・パーセントの
量のトリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3′−,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボン酸四塩化物、又はピロメリット酸四塩化物等の、トリカルボン酸塩化物又は多官能性カルボン酸塩化物、又は、使用されているジフェノールに対し、0.01〜1.0モルパーセントの量のフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,4−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)−フェニル−メタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェノール、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシル−5−メチル−ベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、又はテトラキス(4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−フェノキシ)−メタン等の、フォリフェノール又は多官能性フェノールである。フェノール性分岐剤は、ジフェノールを用いた反応槽内に配備できる。酸塩化物分岐剤は、酸塩化物と併用して導入できる。
【0027】
ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートは、いずれも好適である。本発明に準拠した成分(i)によるコポリカーボネートの生産については、使用するジフェノールの合計量に対し、1〜25重量部、好ましくは2.5〜25重量部の、ヒドロキシル−アリールオキシ末端基からなるポリジオルガノシロキサンも使用できる。これらは公知であるか(たとえば、米国特許3,419,634を参照)、又は文献公知である方法によって生産できる。
【0028】
ビスフェノールAホモポリカーボネートとは別に、好ましいポリカーボネートは、ジフェノールのモル和に対し最大15モルパーセントのビスフェノールAのコポリカーボネートで、これらは、好ましい、又は特に好ましいとして挙げられており、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。
【0029】
芳香族ポリエステルカーボネートの生産における好ましい芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物は、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸、及びナフタリン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。1:20〜20:1比のイソフタル酸及びテレフタル酸の二酸二塩化物の混合物が特に好ましい。カルボン酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲンを、ポリエステルカーボネート類の生産中に二官能性酸誘導体として併用できる。
【0030】
上述のモノフェノールとは別に、芳香族ポリエステルカーボネートの生産に好適な連鎖停止剤には、そのクロロカルボン酸塩化物、並びに、C-
1〜C
22アルキル基又はハロゲン原子で随意的に置換してもよい、芳香族モノカルボン酸の酸塩化物、また、脂肪族C
2〜C
22モノカルボン酸塩化物が含まれる。連鎖停止剤の量は、フェノール性の連鎖停止剤の場合はジフェノールのモル数、モノカルボン酸塩素連鎖停止剤の場合はジカルボン酸二塩化物のモル数に対し、それぞれのケースにおいて0.1〜10モルパーセントである。
【0031】
芳香族ポリエステルカーボネートも、取り込まれたヒドロキシルカルボン酸を含有することがある。芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもかまわない。好適な分岐剤は、本書上記に開示されている。
【0032】
芳香族ポリエステルカーボネートのカーボネート構造単位は、任意に変化させることができる。カーボネート基の含有量は、エステル基及びカーボネート基の和に対し、好ましくは、100モルパーセント、特に最大80モルパーセント、最も好ましくは50モルパーセントである。芳香族ポリエステルカーボネートエステル及びカーボネートの破片は、いずれも、ブロック状で存在させるか、又は伸縮ポリマー内でランダムに配分できる。
【0033】
芳香族ポリカーボネート及び芳香族ポリエステルカーボネートは、個別に使用することも、相互の混合物として使用することもできる。
【0034】
熱可塑性芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネート(i)は、カーボネート混合組成物の総重量に基づき、約5重量部以上、好ましくは約15重量部以上、好ましくは25以上、より好ましくは約50重量部以上の量に存在する。熱可塑性芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネート(i)は、カーボネート混合組成物の重量に基づき、約95重量部以下、好ましくは約85重量部以下、好ましくは約75重量部以下、より好ましくは65重量部以下の量に存在する。特に明記されていない限り、重量部は、カーボネート混合組成物の総重量に基づく。
【0035】
本発明の成分(ii)は、芳香族ポリエステルである。本発明に好適な芳香族ポリエステルは、さまざまな方法によって作られる可能性がある。ヒドロキシルカルボン酸の自己エステル化は公知であるが、直接エステル化は、水の除去に結び付くジオールとジカルボン酸との反応に関与し、市販製品に対し、−[−AABB−]−ポリエステルを与える、より頻繁に使用される方法である。p−トルエンスルフォン酸、チタニウムアルコキシド、又はジアルキルスズ酸化物等の触媒の存在は有用であるが、直接エステル化反応の背後にある主要推進力は熱である。適用温度は、反応物資の融点を超過し、通常は、使用されているジオールの沸点に近づき、通常は、約150℃から約280℃の範囲である。典型的には、過剰なジオールが使用され、すべての酸がジオールと反応した後、過剰なジオールが、減圧下で追加熱を適用した蒸留により除去される。二塩基酸のエステルは、当初、−OH末端基を有するジオールから形成され、アルコール分解及び重合を通ってポリマーエステルが形成される。ジオールは、副生成物として分離され、反応帯から除去される。反応は、典型的には、不活性ガスが存在する状況で実行される。
【0036】
代替的に、ただし同様の方法で、ジオールを用いてジカルボン酸のエステル形成誘導体を加熱し、エステル交換反応内でポリエステルを取得できる。このような目的に好適な酸誘導体は、酸のエステル、ハロゲン化物、塩、又は無水物である。交換反応を目的として二塩基酸のビスエステルが使用される場合、エステル化形成されるアルコール(置換されるアルコール)の沸点は、ポリエステル(置換アルコール)の形成に使用されるジオールよりも低い。反応は、置換アルコールの沸点以下の温度であるが、置換されるアルコールの沸点よりもはるかに高い温度で実行でき、また従来的に実行されており、通常は、直接エステル化の温度範囲と類似する。エステル交換反応は、典型的に、クロロフォルム又はテトラクロロエタン等の不活性有機溶媒希釈剤の存在下、及び、ピリジン等の第三有機塩基の存在下で実行される。エステル交換がアルコール分解に関与する場合に典型的に使用される触媒は、炭酸塩やナトリウム、リチウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、又はアルミニウムのアルコキシド等の弱塩基であり、これに対し、交換反応で酸分解が発生する場合は、多くの場合、酸化アンチモン、チタニウムブトキシド、又は酢酸ナトリウムが使用される。酸分解の実施が望ましい場合は、アセテート等のジオール誘導体を効果的に使用できる。
【0037】
高温の維持は、エステル化において、特に反応の終わりに向かう場合は、重要な側面である。結果として、熱エステル分離が処理の郵政結果としてのポリマー増殖と競合し、溶融重合の使用を介して達成可能な分子量に上限をもたらすことになる。ポリエステルの分子量は、完了直前に反応混合物を溶解させるため、ジフェニルカーボネート等の鎖カップリング剤を追加することにより増加できる。又は、固体重合によりより大きな重量を達成するため、中間重量のポリエステル生成物を真空又は不活性ガス流内で加熱できる。この際、まず、結晶化する温度まで、その後、融点まで加熱する。
【0038】
ポリエステルもまた、環状エステル又はラクトンの開環反応により生成できる。この際、第三級有機塩基及びアルカリ及びアルカリ土類金属、水素化物、及びアルコキシドをイニシエーターとして使用できる。このタイプの反応によりもたらされる利点は、低温で、多くの場合は100℃未満で燃焼可能であり、反応による縮合生成物を除去する必要がないことである。
【0039】
本発明に使用されるポリエステルの製造に好適な反応物質は、ヒドロキシルカルボン酸以外では、ジオール及びジカルボン酸で、一方又はそのいずれも、脂肪族化合物又は芳香族化合物にできる。したがって、ポリ(アルキレンアルカンジカルボン酸)、ポリ(アルキレンフェニルエンジカルボン酸)、ポリ(フェニレンアルカンジカルボン酸)、又はポリ(フェニレン フェニレンジカルボン酸)であるポリエステルは、ここでの使用に適している。アルキル部分又はポリマー鎖は、たとえばハロゲン、アルコキシ基、又はアルキル側鎖等と置換可能であり、連鎖のパラフィン・セグメント内に二価ヘテロ原子基(−O−、−S−、−SO
2−等)を含めることができる。鎖には、不飽和及び非芳香環も含めることができる。芳香環には、ハロゲン、アルコキシ、又はアルキル基等の置換基を含めることができ、環の任意の位置のポリマー骨格に、また、直接アルコール又は酸性官能基に、又は介在原子に結合できる。
【0040】
エステル形成に使用される典型的なアルキレンジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコール等及びC
2〜C
10グリコールである。使用頻度の高いアルカンジカルボン酸は、シュウ酸、アジピン酸、及びセバシン酸である。環を含むジオールには、たとえば、1,4−シクロヘキセニルグリコール又は1,4−シクロヘキサン−ジメチレングリコール、レゾルシノール、ヒドロキシノン、4,4′−チオジフェノール、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ジヒドロキシルナフタレン、キシリレンジオール等を使用でき、或いは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等、さまざまなビスフェノールのひとつでもかまわない。芳香族二塩基酸には、たとえば、テレフタル酸,イソフタル酸,ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルススルフォンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボニル酸等が含まれる。
【0041】
ジオールひとつと二塩基酸ひとつのみから形成されたポリエステルに加え、本書で使用する「ポリエステル」という用語には、ランダム、パターン化、又はブロック・コポリエステル、たとえば、2つ以上の異なるジオール及び/又は2つ以上の異なる二塩基酸及び/又はその他の二価ヘテロ原子基から形成されたものが含まれる。当該コポリエステルの混合物、ジオールひとつと二塩基酸のみから導出されたプリエステルの混合物、及びこのような基の両方のメンバーの混合物もまた、すべて、この発明での仕様に適している。たとえば、シクロヘキサンジメチルをエチレングリコールとともにテレフタル酸とのエステル化に使用すると、特に関心のある透明な非結晶コポリエステル(PETG)が形成される。さらに予定されているのは、4−ヒドロキシ安息香酸及び2−ヒドロキシル−6−ナフトエ酸の混合物、テレフタル酸、4−ヒドロキシ安息香酸とエチレングリコールの混合物、又は、テレフタル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、及び4,4′−ジヒドロキシビフェニルの混合物に由来する液晶ポリエステルである。
【0042】
好ましくは、芳香族ポリエステルは、25〜60パーセントの間の結晶化度を有する。
【0043】
ポリ(アルキレン フェニレンジカルボン酸塩)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、及びポリブチレンテレフタラート(PBT)、又はその混合物等の芳香族ポリエステルは、今発明では特に有用である。
【0044】
ポリエステルの生産に有用な方法及び材料については、上述のとおり、米国特許第2,465,319号明細書、米国特許第3,047,539号明細書、及び米国特許第3,756,986号明細書に詳細が記載されており、それぞれその全体が本書に参考として組み込まれている。
【0045】
芳香族ポリエステル(ii)は、カーボネート混合組成物の総重量に基づき、約5重量部以上、好ましくは約10重量部以上、好ましくは15重量部以上、より好ましくは約20重量部以上、好ましくは約25重量部以上、より好ましくは約30重量部以上の量に存在する。芳香族ポリエステル(ii)は、カーボネート混合組成物の総重量に基づき、約95重量部以下、好ましくは約90重量部以下、好ましくは85重量部以下、より好ましくは約80重量部以下、好ましくは約75重量部以下、より好ましくは約65重量部以下の量に存在する。特に明記されていない限り、重量部は、カーボネート混合組成物の総重量に基づく。
【0046】
本発明の成分(iii)は、コア‐シェル構造を有するシリコン含有グラフト(コ)ポリマーである。これは、グラフト重合アルキル(メタ)アクリレート及び随意的に合成ラバー・コアへの共重合可能なビニルモノマーによって取得できる。相互貫入及び非分離相互貫入ネットワーク(IPN)タイプのポリマーを含む合成ラバー・コアは、そのガラス転移温度0℃未満、好ましくは−20℃未満、特に−40℃未満として特徴づけられる。シリコンベースのグラフト(コ)ポリマーは、たとえば、米国特許出願公開第2008/0090961号明細書及び米国特許出願公開第2007/0155857号明細書等が周知であり、その全体が参考として本書に組み込まれている。
【0047】
一実施例において、シリコン含有グラフト(コ)ポリマーは、ポリオルガノシロキサン及びポリ(メタ)アルキルアクリレート成分を含有する合成ラバー・コアにグラフトされた重合アルキル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アクリレートを含む、コア‐シェル形態からなり、ここで、当該シェルは、少なくとも1〜20重量パーセントのグリシジル(メタ)アクリレート重量パーセント99〜80のアルキル(メタ)アクリレートからなり、重量パーセントは、グラフト・シェルの重量に基づき、コアは、シリコン含有グラフト(コ)ポリマーの合計重量の少なくとも5〜25重量パーセントのシリコン、好ましくは5〜25パーセント、より好ましくは5〜15重量パーセントからなる。シェルは硬質相で、好ましくはグリシジルメタクリレート及びメチルメタクリレートの重合体である。
【0048】
シリコンのレベル(パーセントで)は、波長分散型X線蛍光(WDXRF)分光器で判別される。WDXRFは、濃度100万分の1((ppm)から100パーセントの範囲で物質(液体、固体)の元素組成(原子番号>5)の判別に使用される、非破壊分析テクニックである。これらの物質は、有機でも無機でもかまわず、また、液体又は固体のいずれかである。XRFは、定性、半定量、及び定量的判別に使用できる。
標本がX線により励起され、標本原子の内部シェル電子の放出につながる。この後、外殻電子の移行に続き、放出した電子による空孔が満たされる。これらの線維は、X線光子の放出につながる。そのエネルギーは、遷移過程に関与する2つの電子殻の結合エネルギーの差異と等しい。波長分散型分光計を使用して、ブラッグの法則に準拠し、波長を基準としてX線放出を分離する。放出されたこれらのX線光子の波長が、放出された元素の特性である。標本の組成に基づいて適切なマトリックス是正を適用後、放出されたX線の強度は、標本内の元素の濃度に比例する。
【0049】
他の実施例では、シリコン含有グラフト(コ)ポリマーは、場合によっては相互貫入ネットワーク(IPN)タイプのポリマーと呼ばれ、ポリシロキサン及びブチルアクリレートが含まれるポリシロキサン−アルキル(メタ)アクリレートのコアからなる。シェルは硬質相で、好ましくはメチルメタクリレートの重合体である。ポリシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート/シェルの重量比は、70−90/5−15/5−15、好ましくは75−85/7−12/7−12、より好ましくは80/10/10である。
【0050】
ラバー・コアは、メジアン粒径(d50値)0.05〜5で、好ましくは0.1〜2ミクロン、特に0.1〜1ミクロンである。メジアン値は、超遠心測定(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid, Z. und Z. Polymere 250 (1972), 782−1796)で判別してもよい。
【0051】
シリコンアクリレート合成ラバーのポリオルガノシロキサン成分は、乳化重合プロセスでオルガノシロキサンと多官能性架橋剤を反応させて調製し得る。また、好適な不飽和オルガノシロキサンを添加し、グラフト活性サイトをラバーに挿入することもできる。
【0052】
オルガノシロキサンは、一般的に、環状構造に好ましくは3〜6個のSi原子を含有する環状である。例には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロ−ヘキサシロキサン、トリメチルトリiフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が含まれ、単体又は2つ以上のかかる化合物の混合物として使用し得る。オルガノシロキサン成分は、シリコンアクリレート・ラバー内に、シリコンアクリレート・ラバーの重量に基づき、少なくとも70パーセント、好ましくは少なくとも75パーセントの量で存在する。
【0053】
好適な架橋剤は、トリ−又はテトラ官能性シラン化合物である。好ましい実地例には、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシランが含まれる。
【0054】
グラフト活性サイトは、下記の任意の構造に属する化合物を混和することにより、シリコンアクリレート・ラバーのポリオルガノシロキサン成分に含まれてもよい。
【0059】
ここで、
R
5は、メチル、エチル、ポロピル、フェニル、を示し、
R
6は、ハイドロジェン又はメチルを示し、
nは、0、1、又は2を示し、
Pは、1〜6を示す。
【0060】
(メタ)アクリロイルオキシシランは、構造(IV)を形成する好ましい化合物である。好ましい(メタ)アクリロイルオキシシランには、β−メタアクリロイルオキシエチル−ジメトキシ−メチル−シラン、γ−メタクロリロイル−オキシ−プロピルメトキシ−ジメチル−シラン、γ−エタクリロイルオキシプロピル−ジメトキシ−メチル−シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシ−シラン、γ−メタクリロイルオキシ−プロピル−エトキシ−ジエチル−シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピル−ジエトキシ−メチル−シラン、γ−エタクリロイルオキシ−ブチル−ジエトキシ−メチル−シランが含まれる。
【0061】
ビニルシロキサン、特に、テトラメチル−テトラビニル−シクロテトラシロキサン、は、構造Vの形成に好適である。
【0062】
たとえば、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシランは構造VIを形成するのに適している。γ−メルカプトプロピルジメトキシ−メチルシラン、γ−メルカプトプロピルメトキシ−ジメチルサリン、γ−メルカプトプロピル−ジエトキシメチルシラン等、は、構造(VII)を形成するのに適している。
【0063】
これらの化合物の量は、最大10パーセントから、好ましくは0.5〜5.0パーセントである(ポリオルガノシロキサンの重量に基づく)。
【0064】
シリコンアクリレート合成ラバー内のアクリレート成分は、アルキル(メタ)アクリレート、架橋剤、及びグラフト活性単量体ユニットから調合してもかまわない。
【0065】
アルキル(メタ)アクリレートの好ましい例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート類及び、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリエート類が含まれ、n−ブチルアクリレートが特に好ましい。
【0066】
多官能化合物を架橋剤として使用してもかまわない。例には、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、及び1,4−ブチレングリコールジメタクリレートが含まれる。
【0067】
下記の化合物は、個別又は混合として、グラフト活性サイトの挿入に使用してもかまわない:アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアヌルイソシアヌレート、アリルメタクリレート。また、アリルメタクリレートは、架橋剤としても作用する。アクリレート・ラバー加工物の重量に基づき、これらの化合物を0.1〜20パーセントの寮で使用してもかまわない。
【0068】
シリコンアクリレート化合ラバーの生成の方法で、好ましくは本発明に準拠する組成並びにそのモノマーとのグラフトにおいて使用されている方法は、たとえば、米国特許第4,888,388号明細書及び米国特許第4,963,619号明細書に記載されており、両方ともその全体が参考として本書に組み込まれている。
【0069】
グラフトベース(本書iii.a)へのグラフト重合は、懸濁液、分散体、又は乳濁液内で実施してもかまわない。継続的又は非継続的乳化重合が好ましい。グラフト重合は、遊離基開始剤(パラクサイド、アゾ化合物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過燐酸塩等)を用いて実施され、随意的に、アニオン性乳化剤(カルボキソニウム塩、スルフォン酸塩、又は有機硫化物等)を用いて実施される。
【0070】
グラフトシェル(iii.b)は、下記の混合により形成される:
(iii.b.1)第一の成分で、ビニル芳香族化合物又は環置換ビニル芳香族化合物(スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル(アクリロニトリル又はメタクリロニトリル等)、及びグリシジル(メタ)アクリレートのグループから選択された、1〜20パーセント、好ましくは1〜15パーセント、特に5〜15パーセント(グラフトシェルの重量に基づく)の少なくともひとつのモノマーからなる第一の成分と、
(iii.b.2)第2の成分で、(メタ)アクリル酸(C
1−C
8)−アルキルエステル(メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート)及び不飽和カルボン酸(無水マレイン酸及びN−フェニルマレイミド等)の派生物(無水物及びイミド等)からなるグループから選択された99〜80パーセント、好ましくは99〜85パーセント、特に95〜85パーセント(グラフトシェルの重量に基づく)の少なくともひとつのモノマーからなる第2の成分。
【0071】
好ましくは、成分(iii.b.1)及び(iii.b.2)が、(重合)ポリマーとして、相互貫入ネットワーク(IPN)タイプポリマー又は好ましくは相互重合の状態でシェル内に存在している。
【0072】
好ましいグラフト・シェルには、ひとつ以上の(メタ)アクリル酸(C
1−C
8)−アルキルエステル、特に、グリシジル(メタ)アクリレートと重合化したメチルメタクリレートが含まれる。
【0073】
特に適したグラフト共重合体は、三菱レイヨン株式会社(Mitsubishi Rayon Co., Ltd.)からMETABLEN
TM SX−S2200として入手可能である。
【0074】
本発明のシリコン含有グラフトコポリマーは、カーボネート混合組成物の総重量に基づき、0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、好ましくは2重量部以上、好ましくは3重量部以上、より好ましくは約3重量部以上の量に存在する。本発明のシリコン含有グラフトコポリマーは、カーボネート混合組成物の総重量に基づき、25重量部以下、好ましくは20重量部以下、好ましくは15重量部以下、好ましくは12重量部以下、より好ましくは約10重量部以下の量に存在する。
【0075】
その後、本発明のカーボネート混合組成物の
場合には、シリコン含有グラフトポリマー
の大部分は芳香族ポリエステル相に存在し、好ましくは少なくとも90パーセントが芳香族ポリエステル相に
存在し、好ましい実施形態では、衝撃及びESCR特性の組み合わせを改善するには、ポリカーボネート相には、シリコン含有グラフトコポリマー成分が一切含まれないということが発見された。
【0076】
さらに、切欠き感度及び/又は低温時の耐衝撃性の改善が望ましい場合は、ポリカーボネート相に置かれるように選択した成分として(iv)非グリシジル(メタ)アクリレート含有グラフトコポリマー衝撃改質剤を使用できる。好ましくは非グリシジル(メタ)アクリレート−含有グラフトコポリマー衝撃改質剤は、主にカーボネートポリマー成分に置かれ、最も好ましくはポリカーボネート相のみに置かれる。非グリシジル(メタ)アクリレート含有グラフトコポリマー衝撃改質剤成分が採用される場合は、ひとつ以上の公知のタイプの各種ラバー材であることが好ましく、シリコンラバーが含まれないことが好ましい。
【0077】
一般的に、このようなラバー材は、弾性特性を有し、0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有し、この温度は通常−10℃未満、好ましくは−20℃未満、より好ましくは−30℃未満である。好適なラバーには、周知の共役ジエンのホモポリマー及びコポリマー、特にブタジエン、並びに、オレフィンポリマー等のその他のラバー状ポリマー、特にエチレン、プロピレン、及び随意的に非今共役ジエンのコポリマー、又は、アクリレート・ラバー類、特に、アルキル基に4〜6個の炭素を有するアルキルアクリレートのホモポリマー及びコポリマーが含まれる。また、必要であれば、前述のラバー状ポリマーの混合物を採用してもかまわない。好ましいラバーは、ブタジエンのホモポリマー及びそのコポリマーで、最大30重量パーセントのスチレンを伴う。かかるコポリマーは、ランダム又はブロックコポリマーであり、さらに、残留不飽和を除外するため水素化してもかまわない。また、好ましいラバー状ポリマーは、共役ジエンラバーと比較して風化耐性に優れるため、随意的に、非共役ジエンモノマーを伴う物オレフィンから調製された。
【0078】
混入させる場合は、ラバーは、グラフトポリマーの量でグラフトされるか、又はカーボネートポリマー相に置かれるようにその組成に基づき選択されることが好ましい。米国特許第5,087,663号明細書で教示されているように、モノビニルジエン芳香族コポリマー及びグラフトラバー成分のコポリマーのタイプとの量の選択は、選択したラバー成分が、カーボネートポリマー相に置かれるか、及び/又は成分の溶融混合に2つの相の接合部分に置かれるかを判別する上で役立つ。
【0079】
使用されている場合、非グリシジル(メタ)アクリレート含有グラフトコポリマー(iv)は、カーボネート混合組成物の総重量に基づき、2重量部以上、好ましくは3重量部以上、より好ましくは約4重量部以上の量で存在する。使用されている場合、非グリシジル(メタ)アクリレート含有グラフトコポリマー(iv)は、カーボネート混合組成物の総重量に基づき、25重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは約10重量部以下の量で存在する。
【0080】
本書で使用されているとおり、「芳香族ポリエステルポリマー相に置かれる」及び「ポリカーボネート相に置かれていない」という用語は、ポリマー混合が検査される場合、最も好適であるのは原子間力顕微鏡画像によって検査される場合、分散粒子又はシリコン含有グラフトコポリマーの領域が、芳香族ポリエステルポリマーにより完全に又はほとんどが囲まれていることを意味する。ラバー粒子又は領域の一部は、カーボネートポリマー相及び芳香族ポリエステル相の接合面に、或いはその近くにあっても構わず、ポリカーボネート相に接触している可能性もあるが、本発明の利点は、シリコン含有グラフトコポリマーボリュームのほとんどの部分、好ましくはすべてが、芳香族ポリエステル相に配置されている場所から得られる。
【0081】
本発明のカーボネート混合組成物は、成分(v)として、カーボネート混合組成物で一般的に使用されている少なくともひとつ以上の添加剤を含む。たとえば、このような添加剤として、リン含有化合物等、好ましくはビスフェノール−Aビス(ジフェニルリン酸塩)(BAPP)等のオリゴノマーリン酸塩、ハロゲン化化合物、ポリ(ブロック−ホスホナト−エステル)、ポリ(ブロック−ホスホナト−カーボネート)
等のひとつ以上の難燃剤添加物がある。
たとえば、米国特許
第7,645,850
号明細書(その全体がくみこまれ
る。)参照。かかる難燃剤添加物は、典型的には、カーボネート組成物の総重量に基づき、1〜20重量パーセントの量
で存在する。また、本発明のカーボネート組成物には、金属塩等の炭化剤、及び/又は、単体又は組み合せでのエチレンポリマー(TEFLON)及び/又はフルオロサーモプラスト等のアンチドリップ剤も含まれ、炭化剤及びアンチドリップ剤は、通常は、カーボネート組成物の総重量に基づき、濃度100〜10,000ppmの量
で存在する。
【0082】
さらに、本発明のカーボネート組成物は、たとえば、鉱油、エポキシ大豆油、その同等物等の滑剤、ペンタエリスリトールテトラステアレート等の離型剤、核化剤、帯電防止剤、安定剤、フィラー、及び/又はグラスファイバー、カーボンファイバー、メタルファイバー、メタルコートファイバー、熱硬化ファイバー、ガラスビーズ、マイカ、ケイ酸塩、石英、タルク、二酸化チタン、及び/又は珪灰石等の補強材の単体又はその組み合わせ、染料、又は顔料等、カーボネート組成物(v)で典型的に使用されているひとつ以上の添加物からなる。エステル−カーボネート交換を最小化するため、このような安定剤のひとつが存在する。このような安定剤は、従来の技術により公知であって、米国特許第5,922,816号明細書、米国特許第4,532,290号明細書、米国特許第4,401,804号明細書に例示されており、その全体が参考として本書に組み込まれ、リン酸、ジステアリルペンタエリスリトール二リン酸塩、モノ又は二水素リン酸塩、又は一、二、又は三水素リン酸化合物、リン酸化合物等の有機リン化合物、モノナトリウムリン酸塩及び一カリウムリン酸塩等の特定の有機リン化合物、シリルリン酸塩、及びシリルリン酸塩派生物等、単体又はその組み合わせを含む、組成物のエステル−カーボネート交換の抑制に有効な量の特定のリン含有化合物からなる。
【0083】
存在する場合、本発明のフィラー及び/又は補強材は、カーボネート混合組成物の総重量に基づき、約0.5重量部以上、好ましくは約1重量部以上、好ましくは2重量部以上、より好ましくは約5重量部以上、より好ましくは約10重量部以上の量が存在する。存在する場合、本発明のフィラー及び/又は補強材は、カーボネート混合組成物の総重量に基づき、約60重量部以下、好ましくは約40重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは約25重量部以下、より好ましくは約20重量部以下の量が存在する。
【0084】
成分(i)、(ii)、(iii)、(iv)、及び(v)からなるカーボネート混合組成物は、既知の方法で特定の成分を混合し、内部ニーダー、押し出し機、及びツインスクリュー押し出し機等の従来ユニットを用いて200℃〜300℃で溶融混合及び/又は溶融押し出しして生産する。好ましくは、押し出し機は、DSC測定に基づき少なくとも9パーセントの混合結晶化度を維持できるように運用される。
【0085】
個別の成分は、既知の方法を用いて、連続して及び同時の両方で、且つ、約23℃(室温)及び高温の両方で混合される。
【0086】
また、本発明もこれに応じて、カーボネート混合組成物を生産するプロセスを提供する。
【0087】
優れたESCRパフォーマンスという長所から、良好な機械特性、特に、耐衝撃性及び耐熱性により、本発明に準拠したカーボネート混合組成物は、あらゆる種類の二次加工品、具体的には機械特性という面で厳格な要件の対象となる品目、特に、良好な耐衝撃性及び耐溶剤性を必要とする品目に好適である。
【0088】
本発明のカーボネート混合組成物は熱可塑性である。熱の適用により軟化又は溶融した場合、本発明のカーボネート混合組成物は、圧縮成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、カレンダーリング、真空成形、熱成形、押し出し及び/又はブロー形成等の従来技法を単独又は組み合わせて使用し、二次加工品に形成又は成形できる。また、難燃性ポリマー組成物も、フィルム、ファイバー、マルチレイヤー・ラミネートに加工、形成、スパン、又はドローしたり、シート及び/又は形状に押し出しできる。生産可能な二次加工品の例には:あらゆる種類の医療用機器、ジュース絞り器、コーヒーメーカー、フードミキサー等の屋内電気器具や、モニター、プリンター、コピー機等のオフィス機器等のあらゆる種類の筐体、建築セクター及び自動車組み立て部品等の被覆シートが含まれる。また、好適な電気的特性を有しているため、これらを電気工学用途にも使用できる。
【0089】
本発明に準拠したカーボネート混合組成物はさらに、たとえば、下記の二次加工品や造形品にも使用できる:コネクター、バルブ、出用計器類、トレイ、実験器具、診断、薬物送達器具ハウジング、体外除細動器、患者監視機器、医療用画像診断システム、診断装置、呼吸器のハウジング、美容院用ベッドフレーム及び組み立て部品等の医療用用途、鉄道車両の内装トリム、自動車ようとのインテリア及びエクステリア、小型変換器を含む電子機器の筐体、情報発信及び伝達機器の筐体、医療目的での筐体及び被覆材、マッサージ機器及びその筐体、子供用のおもちゃの車、シートウォール・エレメント、安全装置の筐体、ハッチバック・スポイラー、断熱性輸送用コンテナ、小動物の保管又は世話用の器具、洗面所及び風呂取付け用の製品、換気孔のカバーグリル、別荘やシェード用の製品、造園用途の筐体。ハウジング又は筐体を含む、好ましい二次加工品の例には:電動工具、電気機器、TV、BCR、DVDプレイヤー、ウェブ接続機器、電子書籍等の家電機器、又は下記のようなハウジング又は筐体:電話、コンピュータ、モニター、ファックス機、バッテリー充電器、スキャナー、コピー機、プリンター、モバイルコンピュータ、フラットスクリーン・ディスプレイ等のIT機器、等が含まれる。
【0090】
また、これに準拠した本発明も、あらゆる種類の好ましくは上述の二次加工品、及び本発明に準拠したカーボネート混合組成物から製造される製品に対する本発明のカーボネート混合組成物の使用法を提供する。
【実施例】
【0091】
実施例1及び2及び比較例Cは、Haakeソフトウェアにより制御されているLeistritz 18mmツインスクリュー押し出し機で、ポリカーボネート、ポリエステル、シリコン含有グラフト共重合体、及びその他の成分を、事前に決定した量で配合して調製した。押出し(機)は、5つの加熱ゾーン、供給ゾーン、及び3mmストランドダイを有する。配合前に、真空オーブン内で少なくとも5時間、ポリカーボネート及びポリエステル樹脂を乾燥し、処理中の加水分解を最小化する。ポリカーボネートは120℃で乾燥し、ポリエステルは150℃で乾燥する。成分が乾燥混合され、ツインオーガーK−Tronフィーダーを介して押し出し機に供給される。フィーダーのホッパーは、ポリマーの酸化的分解反応の原因となる空気の侵入を防ぐため、窒素が詰められており、押し出し機へのフィードコーンは、ホイルで密閉されている。押し出し温度は、275℃に設定された。結果として生じるストランドは、水焼き入れされ、エアナイフで乾燥され、Conairチョッパーでペレット化されている。
【0092】
実施例1及び2及び比較例A〜Cのペレットは、Arburg 370C−80トン射出成形機のASTM Type−I引張試験片として射出成形されている。ペレットは、成形前に、120℃の真空オーブンで少なくとも5時間乾燥されている。溶融温度は265℃に設定され、成形及び成形温度は80℃に設定されている。サイクル時間は、約2分間で固定されていた。
【0093】
実施例1及び2及び比較例A〜Cの組成は表1に示されており、量は、組成物の総重量の合計重量に基づく重量部である。表1では:
「PC」は、重量平均分子量27700g/molを有する直鎖状ビスフェノールAポリカーボネート樹脂で、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーからCALIBRE
TM 200−10として入手可能。
「PET」は、固有粘度0.95dl/gを有するポリエチレンテレフタラートで、M&G PolymersからTraytuf
TM 9506ポリエステルとして入手可能。
「PBT」は、メルトフローレート20g/10分を有するポリブチレンテレフタラートで、Ticona PolymersからCelanex
TM 2002ポリエステルとして入手可能。
「Si−Rubber−1」は、ポリジメチルシロキサン・コア(Tg=−120℃)及び(メチルメタクリレート)シェル(Tg=95℃)を有するコア‐シェル・シリコン含有グラフトコポリマーで、三菱レイヨン株式会社(Mitsubishi Rayon Co., Ltd.)からMetablen
TM SX005として入手可能。コア‐シェルの重量比は、約80/20。
「Si−Rubber−2」は、ポリジメチルシロキサン・コア(Tg=−120℃)及び(メチルメタクリレート−コ−グリシジルメタクリレート)シェル(Tg=95℃)を有するコア‐シェル・シリコン含有グラフトコポリマーで、三菱レイヨン株式会社(Mitsubishi Rayon Co., Ltd.)からMetablen
TM S2200として入手可能。コア‐シェルの重量比は、約10/90で、シェル内のグリシジル(メタ)アクリレートの重量パーセントは約5パーセント。
「IRGANOX」は、フェノール性酸化防止剤で、BASFからIRGANOX
TM 1076として入手可能。
「鉱油」は、水素処理ヘビーパラフィン油留出物として取得される鉱油で、Chevron Products CompanyからPARALUX
TM 6001Rとして入手可能。
「PC/PBT」は、ポリカーボネート及びポリブチレンテレフタラートで、SABIC Innovative PlasticsからVALOX
TM 364として入手可能。
「PC/PET」は、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタラート混合物で、Bayer MaterialScienceからMAKROBLEND
TM UT 1018として入手可能。
【0094】
実施例1及び2及び比較例A〜Cの特性パフォーマンスは、表1に報告されている。表1では:
「Izod」ノッチ耐衝撃性は、成形されたASTM Type−I引張試験片で決定され、ASTM D 256に準拠して室温で実施され、値はインチ当たりのフィートポンド(ft−lb/in)で報告される。
「引張」降伏、破断、及び弾性特性は、成形されたASTM Type−I引張試験片で決定され、ASTM D 638に準拠し、INSTRON
TM 5565機器により室温で実施され、値はメガパスカル(MPa)で報告される。
「DTUL」は、負荷たわみ温度で、ASTM D 648に準拠し、厚み0.125インチの試験片に平方インチ当たり66ポンド(psi)の負荷を適用して測定される。
【0095】
【表1】
【0096】
「耐薬品性」試験は、ASTM D 543−06に準拠し、ASTM Type−I引張試験片を用いて実施される。試験片は、研磨したステンレス・スチール・スラブ上で、中央部で屈曲して伸ばされ、終端部を締付ける。3つの異なる引っ張りレベルが適用された:0.5%、1.0%、及び1.5%。ひずみレベルは、スチール・スラブの高さを変えて制御されている。その後、引張試験片は、中央部にコットン・パッドを配置し、約5ミリリットル(ml)の試験を行う溶液にパッドを浸して化学物質に暴露させる。その後、溶液の蒸発を最小化するため、試験片を覆う。化学物質への暴露は、3日間継続される。24時間ごとに、コットン・パッドを交換し、新鮮な化学物質に浸す。3日間の最後にコットン・パッドを除去し、ペーパー・タオルを用いて試験片をそっとふき取り、表面の残留化学物質を除去する。指定引っ張りレベルで各溶液について3つの試験片が試験される。引張試験は、本書上述のASTM D 638手法に準拠して実施される。3つの試験片の平均破断応力(「σ
chemical」)及び破断ひずみ(「ε
chemical」)値は、表3及び表4にそれぞれ計算・記載されている。同じ引張試験が、化学物質には暴露されていない3〜5の試験片について実施され、材料の実際の破断ひずみ(「σ
no chemical」)及び破断応力(「ε
no chemical」)を測定する。化学物質を用いた材料の耐薬品性は、下記の表2のとおり、σ
chemical/σ
no chemicall及びε
chemical/ε
no chemical比に準拠して評価される:
【0097】
【表2】
【0098】
実施例1及び2及び比較例A〜Cの耐薬品性性能対応力及びひずみ特性は、表3(破断応力性能)及び表4(破断ひずみ性能)に報告されている。表3及び表4では:
「漂白剤」は、CLOROX
TM家庭用漂白剤と純水の50/50(v/v)混合物であり、
「CIDEX」は、Johnson and JohnsonからCIDEXPLUS
TMとして入手可能な、さまざまな材料や医療用機器の消毒又は消毒に使用される殺菌剤内のグルタルアルデヒドの3.4重量パーセント溶液であり、
「エタノール」は、200プルーフ・エタノール(たとえば、Acros Organicsから入手可能)と純水の70/30(v/v)溶液であり、
「WEXCIDE」は、水中有機フェノール6.43重量パーセント溶液で、血液やその他の潜在的な感染性物質(OPIM)による汚染の可能性を有する硬質の無孔表面の所専用洗浄剤及び消毒薬であり、Wexford LabsからWEX−CIDE 128として入手可能。純水で128倍に希釈後使用され、また、
「VIREX」は、水中第四殺菌剤16.894重量パーセント溶液で、ワンステップ第四消毒洗浄剤であり、病院内の硬質表面を洗浄及び消毒し、Johnson DiverseyからVIREX
TM II 256として入手可能である。純水で256倍に希釈後に使用される。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
「原子間力顕微鏡」は、混合物の形態の判別に使用される。試験片のバルクの中央コアからの一片を、−120℃の極低温状態下でLeica UTC/FCSマイクロトームを用いて顕微鏡下で研磨した。研磨は、ダイヤモンド・ナイフを用いて実施される。研磨された標本は、Digital Instruments Dimension 3100原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、位相検波を伴うTapping Mode(タッピング・モード)でスキャンされる(ソフトウェア・バージョン5.30.3sr3)。すべての試験において、MicroMaschチップ(チップ長さ=235マイクロメーター(μm)、チップ半径=5〜10ナノメーター(nm)、バネ定数=37〜55メートル当たりニュートン(N/m)、及び頻度=159〜164キロヘルツ(kHz)が使用される。タッピング比は0.75に、自由振幅設定ポイント電流は5Vに設定される。画像の事後処理は、Adobe Photoshop v9ソフトウェアを用いて実施される。実施例1及び2及び比較例A〜Cの顕微鏡写真の複製は、
図1、
図2、
図3、
図4、及び
図5にそれぞれ示されている。
【0102】
シリコン含有グラフトコポリマー(又はコア‐シェル・ラバー)は、ポリカーボネート/ポリエステルマトリックスと比較し、有意に軟性を有し、これらの画像においては、より暗い領域として明確に区別されている。コア‐シェル・ラバー領域は、
図1に「A」として特定されている。ポリエステル相をポリカーボネート相から区別化する主な特徴は、「滑らか」なポリカーボネート相とは逆に、ポリエステル相は「粒状」又は「粗い」と思われる。
図1で、ポリエステル領域は「B」のマークが付けられており、ポリカーボネート領域には「C」のマークが付けられている。
【0103】
これらの画像から、既存のポリカーボネート/ポリエステル/コア‐シェル・ラバー形成では、コア‐シェル・ラバーは、ポリカーボネート相(比較例A、
図3及び
図5)及び/又はポリカーボネート及びポリエステル相の接合面(比較例2、
図4))に特異的に蓄積することは明らかである。しかしながら、本発明の実施例1及び2の組成(それぞれ
図1及び
図2)においては、シリコン含有グラフトコポリマーは、ポリエステル相にほぼ例外なく存在する。特定の理論にとらわれるのではないが、シェル内のグリシジルメタクリレートの官能性は、ポリエステル相のシリコン含有グラフトコポリマーの位置を決定する。この理論は、実施例1(
図1)と比較例C(
図5)の形態を比較することにより支持される。
【0104】
比較例Cは、実施例1と同じ組成を有し、また、ポリジメチルシロキサン・コア及びポリ(メチ)メタクリレート・シェルを有するシリコン含有グラフトコポリマーも使用する。実施例1と比較例Cの唯一の違いは、比較例Cで使用されたシリコン含有グラフトコポリマーのシェルは、グリシジルメタクリレートを一切含まないことである。
図5からもわかるように、シリコン含有グラフトコポリマーのシェル内にグリシジルメタクリレートがないことにより、ポリカーボネート相にはほぼ例外なく残留し、その選択性をポリエステル相に向かって失っていく。
【0105】
シリコン含有グラフトコポリマーをポリエステル相における本発明の組成物に特異的に配置したことが、先行技術と比較し、本発明のカーボネート混合物の衝撃、引張、及び熱性能特性の優れた又はよりすぐれた組み合わせにつながることを発見したことは、予期せぬ驚きであった。実施例1及び実施例2は、すべての洗浄剤及び消毒剤に対する耐性をとどめていた。しかしながら、比較例では、一部又はすべての洗浄剤及び消毒剤に伴う限界的又は耐性不良を示している。
【0106】
本発明のカーボネート混合物は、より優れた又は同等の衝撃、引張、及び熱性能特性を可能にしつつ、医療用機器の消毒に使用される市販の洗浄剤及び消毒剤に対する耐薬品性を改善することを示したことが認められる。