特許第5770844号(P5770844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5770844-斜視硬性内視鏡の対物レンズ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770844
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】斜視硬性内視鏡の対物レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/26 20060101AFI20150806BHJP
   G02B 17/08 20060101ALI20150806BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   G02B23/26 C
   G02B17/08 Z
   A61B1/00 A
   A61B1/00 300Y
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-518980(P2013-518980)
(86)(22)【出願日】2011年7月7日
(65)【公表番号】特表2013-536458(P2013-536458A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2011003373
(87)【国際公開番号】WO2012007126
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年4月16日
(31)【優先権主張番号】102010027079.2
(32)【優先日】2010年7月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】ショウヴィンク,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ジエンシン
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−108013(JP,A)
【文献】 特開平09−304693(JP,A)
【文献】 特開平05−011196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 23/26
A61B 1/00
G02B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜視硬性内視鏡の対物レンズ(1)であって、
前記対物レンズ(1)の軸線(18)に対して傾斜した平らな接合面(6、16)で互いに隣接した近位プリズム(7)及び遠位プリズム(4)から成るプリズム組立体を有し、
前記遠位プリズム(4)が前記対物レンズ(1)の視野方向(17)に垂直な遠位端面(3)を有し、
前記視野方向(17)に沿って、前記遠位端面(3)から入射する光線(5)が、前記遠位プリズム(4)と前記接合面(6、16)の透過領域(19)とを通って前記近位プリズム(7)に入射し、前記近位プリズム内で前記接合面(6、16)に対向する傾斜面(8)に設けられた第1鏡(9)で第1の角度で反射し、前記接合面(16)に設けられた第2鏡(10)で反射した後に、前記対物レンズ(1)の前記軸線(18)の方向で、前記軸線に垂直な面(11)を通って出射するものにおいて、
前記接合面(6、16)は、前記遠位端縁(3)に対して傾斜しており、
前記第2鏡(10)は、前記透過領域(19)に対して、前記接合面(6、16)の傾斜方向に間隔を空けて配置され、
前記接合面(6、16)内には、吸収層(15)が設けられており、
前記吸収層(15)は、前記第2鏡(10)が設けられている領域と前記透過領域(19)との間に配置されており、
視野方向(17)に対して所定の傾斜角で前記遠位端面(3)に入射し、前記透過領域(19)を通過し、前記第1鏡(9)で前記第1の角度とは異なる第2の角度で反射する傾斜光線(14)を、前記吸収層(15)によって吸収可能に構成されていることを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
前記吸収層(15)が前記第2鏡(10)に部分的に重ねて配置されていることを特徴とする請求項1記載の対物レンズ。
【請求項3】
前記第2鏡(10)が被覆として前記近位プリズム(7)の前記接合面(16)上に配置され、前記吸収層(15)が前記遠位プリズム(4)の前記接合面(6)上に配置されていることを特徴とする請求項2記載の対物レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に指摘した種類の対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の対物レンズは、例えば内視鏡が大抵はごく細くなければならず、そのことから対物レンズも数ミリメートルの直径範囲内でなければならなくなる等の一連の問題を有する。それに加えて硬性対物レンズにおいて生じる問題として、対物レンズは大抵斜視式に形成されていなければならず、対物レンズの視野方向が対物レンズの軸線に対して或る角度を成し、この軸線上で光線は対物レンズの主部を通して、例えば受像機上または内視鏡の長さにわたって画像を送るイメージガイド上で直接に、近位側へと射出される。これら両方向の間での光線の屈曲は、普通、プリズム組立体で行われる。
【0003】
特許文献1の図3が示す前文に係る対物レンズでは、プリズム組立体が2つのプリズムから成り、そのうち近位プリズムは光線を鏡で2回反射後に対物レンズの軸線方向に射出する。特許文献2は吸収層を有する類似の構造を示している。
【0004】
従来未解決の諸問題が第2鏡において発生する。第2鏡は光線透過領域の方向で接合面によって限定されていなければならない。さもないと、第2鏡が光線を部分的に遮断するであろう。しかし第2鏡が透過領域の方向で十分に張り出していないと、視野方向に対して斜めに入射する光線は第2鏡の脇を通過し、第1鏡の脇も通過して近位プリズムを通して近位方向で観察者へと直接進み、そこで妨害作用を生じることがある。つまりこの理由から第2鏡は透過領域に極力接近しているべきであろう。しかしながらその場合別の作用が妨害することになる。接合面内をごく急峻に推移する傾斜光線は近位プリズム内で鏡間を急峻に推移し、なお1回付加的に往復し、つまり合計4回反射される。そのことからやはり妨害が生じる。4回反射する問題は、斜視角度が小さければ小さいほど一層強まる。つまり設計者はここで、過度に長い鏡または過度に短い鏡において発生する2つの妨害作用の間でジレンマに陥る。しかし中間的長さは、その場合両方の作用の発生することがあるのでやはり満足できるものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第197 20 163号明細書
【特許文献2】独国特許発明第35 37 155号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、前文に係る対物レンズにおいて第2鏡の長さから生じる諸問題を避けることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴部分の特徴によって解決される。
【0008】
本発明によれば、第2鏡が欠落し従って光線が両方の鏡の脇を直接通過し得る透過領域の横の領域に、直線的に通過する光線を吸収する吸収層が設けられている。しかしこの吸収層は近位プリズム内での4回反射も防止する。というのも、光線が特別急峻な場合この光線は第1反射後に吸収層に衝突してそこで吸収されるからである。つまり、構造上ごく単純なこの仕方で両方の妨害作用は同時に抑制される。
【0009】
吸収層は第2鏡に隣接して配置しておくことができようが、しかし主に請求項2により第2鏡に部分的に重ねて配置されている。鏡は近位プリズムに向けて反射しなければならないので、吸収層は遠位プリズムに向き合う鏡外面にのみ配置しておくことができる。吸収層はそこでは妨害とならず、しかも、遠位プリズム内のこの鏡での内部反射を妨げることによって有利に作用する。
【0010】
鏡と、部分的に重なる吸収層は、両方を上下にして遠位プリズムまたは近位プリズムの接合面上に配置しておくことができよう。しかし請求項3により有利には鏡が近位プリズム上に配置され、吸収層が遠位プリズム上に配置されており、そのことで製造が容易となる。
【0011】
図面に本発明が例示的に、本発明に係る対物レンズの遠位部の軸方向断面図を示す単一の図1に略示してある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】硬性内視鏡の対物レンズ1の遠位端領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特許文献1の図1図3を参考にする。この公報の図2図3と比較して認められるように、本願の図1に示された対物レンズ部は公知構造の遠位端領域である。
【0014】
対物レンズ1の略示した領域において光は遠位プリズム4の遠位端面3に固着された負レンズ組立体2を通して入射する。中央画像光線5は対物レンズ1の視野方向17と平行に負レンズ組立体2、遠位プリズム4を通してその下手にある近位プリズム7へと推移する。画像光線5はプリズム4の接合面6とプリズム7の接合面16とを貫通する。プリズム4、7はこれらの平らな接合面6、16で互いに隣接している。
【0015】
光線5は次に近位プリズム7の傾斜面8に衝突する。この傾斜面は点線として示した内向きに反射する第1鏡9を備えている。そこで反射後、光線5はやはり点線として示した第2鏡10に入射する。この第2鏡は近位プリズム7の接合面上に配置されている。そこから光線5はさらに近位方向で観察者へと反射される。図示例において光線5はいまや対物レンズの軸線18上にあり、対物レンズの軸線18に垂直な横面11を通してレンズ12に入射する。このレンズから光線はさらに対物レンズの図示しない近位部分へと推移する。この近位部分は前記公報の図3で符号35としてある。
【0016】
図1が示すように遠位プリズム4の遠位端面3は対物レンズの視野方向17に垂直であり、この視野方向は対物レンズの軸線18に対して傾斜している。ここで扱われているのは斜視角度のきわめて小さい対物レンズである。
【0017】
以上述べた限りで、図1に示した構造は引用した公報の図3の構造に一致している。その際、2つの妨害問題の発生することがある。対物レンズの軸線と平行に入射する傾斜光線13は第2鏡10の上端と第1鏡9の下端との脇を直線的に近位プリズム7を通して観察者まで推移することができる。そのことから強い妨害が生じる。
【0018】
鏡10を光線透過領域の方向で接合面6、16によって延長すると、第2の妨害作用が発生するであろう。
【0019】
別の方向にあって一層急峻に第1鏡9に衝突する他の傾斜光線14は狭い反射角度で反射され、正常光線5のように2回反射されるのでなく、つまり第1鏡9で1回、第2鏡10で1回反射されるのでなく、さらに1回往復し、光線14を基に示すように合計4回反射される。
【0020】
鏡10が図1に示すように短い場合、図1が示すようにこの4回反射は起き得ない。しかし光線13の貫通を防止するためにこの鏡が延長されると、光線14の4回反射が生じる。
【0021】
つまり光線13を防止するには鏡10は延長しなければならないであろう。光線14の4回反射を防止するには鏡は再び短縮しなければならないであろう。構造上のジレンマが存在する。
【0022】
図1では接合面6、16の面領域が透過領域19として破線で標示してある。透過領域19は図1の図において点20と点21との間を延びている。透過領域19は対物レンズを正常に通過する光線が貫通する。
【0023】
接合面6、16のうち点21の向こう側で透過領域19に隣接した面領域は、反射することなく直線的に通過する光線13等の光線にとっても4回反射する光線14等の光線にとっても決定的である。本発明によれば破線で示した吸収層15がそこに設けられている。この吸収層は図1に認めることができるように光線13を吸収し、しかし妨害的に狭く反射する光線14も吸収する。吸収層15は透過領域19間近にまで難なく接近させることができ、こうして直接通過する光線13も4回反射する光線14も広い角度範囲で阻止する。
【0024】
吸収層15はそこで利用可能な光線を吸収するであろうので透過領域19内に達してはならず、しかしいずれにしても透過領域19と第2鏡10との間の危険な面領域を覆うべきであろう。しかし吸収層15はさらに図示したように鏡10に部分的に重ねて配置しておくことができ、つまりこの鏡と平行に接合面6、16の同じ面領域を覆うことができる。
【0025】
鏡9は金属被覆として近位プリズム7の傾斜面8の外面に配置されている。同様に、第2鏡10は外側からその接合面16に被着されている。吸収層15は遠位プリズム4の接合面6上に配置されており、例えば黒色クロムから成る。
図1