特許第5770857号(P5770857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベクトン ディキンソン フランスの特許一覧

<>
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000002
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000003
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000004
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000005
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000006
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000007
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000008
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000009
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000010
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000011
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000012
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000013
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000014
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000015
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000016
  • 特許5770857-薬剤送達デバイス 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770857
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/26 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   A61M39/26
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-543892(P2013-543892)
(86)(22)【出願日】2010年12月16日
(65)【公表番号】特表2014-502524(P2014-502524A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】IB2010003493
(87)【国際公開番号】WO2012049532
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2013年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル ボシャルト
(72)【発明者】
【氏名】ブノア ギラード
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/124676(WO,A1)
【文献】 米国特許第06152913(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を容れるための貯蔵槽(20)であって、前記貯蔵槽から前記製品を移送するための通路(22)を画成する遠位に突出したエンドピース(21)を有する貯蔵槽(20)と、
前記エンドピースと係合可能なカラー(30,130)を有するアダプタ(100)と、
前記カラーが前記エンドピースと係合した後、前記エンドピースに対する前記カラーの並進運動を制限するための固定手段(23,36,136)と、
前記カラーが前記エンドピースと係合した後、前記エンドピースに対する前記カラーの回転を制限するための回転防止手段(24,32b,35,132b)と、
前記カラーが前記エンドピースと係合したときに前記カラーに加えられる所定の値以上の回転トルクに応答して前記回転防止手段をニュートラルにし、それによって前記エンドピースに対する前記カラーの回転を許容するための機能停止手段(32,132)と
を備え、前記機能停止手段(32,132)は、前記カラーが前記エンドピースと係合したときに前記所定の値より小さい回転トルクに対して前記エンドピース回転防止手段の部分(24)と係合されたままであり、前記機能停止手段は、前記所定の値以上の回転トルクの効果の下で半径方向外向きに偏向可能であり、前記機能停止手段は、これにより回転防止手段の前記部分から係脱し、前記エンドピースに対する前記カラーの回転を許容し、
前記機能停止手段は、前記カラーの少なくとも1つのスカート部(32,132)を備え、前記エンドピース回転防止手段の前記部分は、前記エンドピース(21)の外壁に配置された少なくとも1つの突出部(24)を備え、前記スカート部(32,132)および前記突出部(24)は、前記カラーが前記エンドピースと係合したときに、前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで互いに解放可能に係合可能であり、前記スカート部(32, 132)は、前記回転トルクが前記所定の値以上であるときに半径方向外向きに偏向し、前記突出部を乗り越え、
前記スカート部(32,132)は、少なくとも1つの半径方向壁(32b,132b)を備え、前記突出部(24)は、前記カラーが前記エンドピースと係合したときに、前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで前記エンドピースに対する前記カラーの回転を制限するために前記半径方向壁(32b,132b)に当接し、前記半径方向壁(32b,132b)は、前記回転トルクが前記所定の値以上であるときに前記スカート部(32,132)の前記半径方向外向きの偏向の効果の下で前記突出部を乗り越えることを特徴とする薬剤送達デバイス(1)。
【請求項2】
前記スカート部(32)の内壁(32a)に画成された複数の長手方向隆起部(35)をさらに備え、それぞれの長手方向隆起部(35)は、前記カラーが前記エンドピースと係合したときに、前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで前記エンドピースに対する前記カラーの前記回転を制限するために、また前記回転トルクが前記所定の値以上であるときに前記エンドピースに対する前記カラーの前記回転を許容するために、前記突出部(24)と解放可能に係合可能であることを特徴とする請求項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項3】
複数の突出部(24)は、前記エンドピース(21)の外壁に画成され、前記外壁の周りに間隔をあけて並べられ、前記カラーは、前記突出部(24)の間隔と一致するように前記カラーの周上に間隔をあけて並べられた複数のスカート部(32,132)を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項4】
前記固定手段は、前記エンドピース(21)の前記外壁に設けられた環状隆起部(23)と前記カラー(30)の前記内壁に設けられた当接面(36)とを備え、前記当接面は前記カラーが前記エンドピースの周りに係合した後に前記遠位方向に付勢されたときに前記環状隆起部に係合するようになることを特徴とする請求項から請求項3までの何れか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項5】
前記当接面は、前記スカート部(32,132)の前記内壁(32a,132a)に設けられた環状リム(36,136)であることを特徴とする請求項から請求項4までの何れか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項6】
前記カラーは、遠位壁(30b,130b)の内面に画成されたネジ山(31,131)を有することを特徴とする請求項から請求項5までの何れか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項7】
前記カラーの前記遠位壁(30b,130b)は、オレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンと、これらの組合せから選択された材料から形成されることを特徴とする請求項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項8】
前記機能停止手段(32,132)は、オレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、スチレン重合体、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレンと、これらの組合せから選択された材料で作られることを特徴とする請求項から請求項7までの何れか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項9】
前記エンドピース(21)は、ガラスから作られることを特徴とする請求項から請求項8までの何れか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項10】
前記エンドピース(21)は、プラスチックから作られることを特徴とする請求項から請求項8までの何れか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項11】
前記カラー(30)の前記遠位壁(30b)の外面に画成された補強手段(34)をさらに備えることを特徴とする請求項から請求項10までの何れか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項12】
前記カラーが前記エンドピース(21)と係合しているときに前記エンドピース上の前記カラー(30)の前記位置合わせを確実に行えるようにする誘導手段(24,32b,37,35a,132b)をさらに備えることを特徴とする請求項から請求項11までの何れか一項に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項13】
前記誘導手段は、前記突出部(24)と、前記スカート部の前記半径方向壁(32b,132b)とを備え、前記突出部は前記カラー(30)が前記エンドピース(21)と係合しているときに前記半径方向壁にそって摺動することを特徴とする請求項12に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【請求項14】
前記誘導手段は、前記長手方向隆起部(35)間に存在する間隙によって画成される長手方向溝(37)をさらに備え、前記突出部(24)のそれぞれは、前記カラー(30)が前記エンドピース(21)と係合しているときに前記長手方向溝(37)のうちの1つの中で係合することを特徴とする請求項2または請求項13に記載の薬剤送達デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドピースを有する薬剤送達デバイスに関し特に前記ピースの周りに係合可能なカラーを有し、前記カラーに対するコネクタの安全な接続を可能にするアダプタを備え薬剤送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤送達デバイスは、通常、医療製品を容れるための貯蔵槽を形成する中空本体部を備える。それに加えて、貯蔵層を形成する本体部の遠位端は、通常、軸方向通路が配置されるエンドピースを備え、この通路を通して前記製品が貯蔵槽から排出される。
【0003】
本出願では、コンポーネントまたはデバイスの遠位端は、使用者の手から最も遠い端部を意味するものとして理解されなければならず、近位端は、使用者の手に最も近い端部を意味するものとして理解されなければならない。同様に、本出願では、遠位方向は、製品の注入または移送の方向(つまり、貯蔵槽から静脈内ラインへの方向)として理解されなければならず、近位方向は、その反対の方向である。
【0004】
さらに、薬剤送達デバイスの貯蔵槽およびエンドピースは、ガラスまたはプラスチックなどのさまざまな材料から作ることができる。貯蔵槽に保管される製品の安定性が、貯蔵槽の壁の可塑性の影響を受けないことが知られている場合、薬剤送達デバイスはプラスチック材料で作らせるのが望ましく、これにより、ガラス材料の取扱いに付随するありがちな危険性を回避することができる。実際、ガラス材料で作られた薬剤送達デバイスが偶然壊れたりすると、この中に入っている製品が失われるだけでなく、その結果、ガラス材料も粉々になって、辺りにたまたま人がいると危険である。さらに、失われた製品も、そのような製品が例えば毒性の薬剤であれば危険な状況が発生しうる。
【0005】
また、これらの薬剤送達デバイスが製品を事前に充填され事前充填された状態で最終使用者に提供される場合、薬剤送達デバイスがプラスチック材料で作られてあるのが望ましく、したがって、事前充填、滅菌、包装、輸送、保管のステップなどの、使用前のさまざまな作業において薬剤送達デバイスを壊すリスクは、実質的に限定的なものとなる。
【0006】
特に、多くの場合に病院にいるとき、または緊急事態が生じたときのように、灌流デバイスを介して行われる患者への非経口的投与のための液剤などの製品の取扱いは、一般的に、送達すべき製品を容れた薬剤送達デバイスを患者の静脈に、通常はIVラインを介して、連結するIV(静脈内)コネクタなどのコネクタを使用することを意味する。もちろん、薬剤送達デバイス、特にそのエンドピースおよびコネクタは、正しく、安全に一緒に組み立てられなければならない。
【0007】
この観点からすると、薬剤送達デバイスは、通常、エンドピースを取り囲む外部カラーを備え、このカラーは薬剤送達デバイスのエンドピースから製品をコネクタに移送し、次いでIVライン内に移送する作業を円滑にするようにコネクタに接続されることを意図されている。
【0008】
コネクタがカラーに接続されたときに、カラーは、コネクタを接続するために加えられる力から結果として生じる応力を受ける。加えられる力の強さは、カラーに対してコネクタが接続される仕方に応じて変化し、一般的に、カラーの内壁にはネジ山が付けられ、コネクタはねじ込むことによってカラーに接続される。ねじ込むステップで加えられる力の強さは、使用者に依存する。第1の結論は、コネクタが接続されるときにカラーが受ける応力は制御可能でないということである。
【0009】
さらに、たまたま、薬剤送達デバイスのエンドピースを囲むカラーが、例えば、使用者が強すぎる力でカラー内にコネクタをねじ込み、適切な時点でねじ込むのを停止しないため、コネクタを接続するのに必要な応力を受けたときに壊れたり、またはひび割れしたりする。このような場合、コネクタは、薬剤送達デバイスのエンドピースに確実に、正しく接続されておらず、薬の投与は、不可能になるか、またはよくても遅いものになる。さらに、このような現象は、汚染またはサイホン効果のリスクを引き起こす、すなわち、IVラインに共に連結されている薬剤送達デバイスとカテーテルとの間の高さの違いにより、薬剤の無制御な送達を引き起こす。
【0010】
いくつかの場合において、使用者は、カラーにひびが入ったこと、従ってそれが弱くなっていることすら気づかない。このような状況は、コネクタが、手術中に麻酔薬製品を送達するような、例えば自動ポンプによって動作する注射器に接続されたときに特に問題となる。ポンプは単純に、カラーにひびが入るか、カラーが壊れたこと、および注入が不十分であることを知らせる機能を有していない機械である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、ねじ込み接続ステップを完了するために使用者によって加えられうる力の強さの変化に関係なく、コネクタがねじ込まれたときにカラーが壊れるリスクを大幅に制限したアダプタを備える薬剤送達デバイスを実現することであり、このアダプタは、薬剤送達デバイスのエンドピースと係合するか、または係合しない。
【0012】
本発明のさらなる態様は、そのようなアダプタを備える薬剤送達デバイスであり、前記アダプタは、薬剤送達デバイスのエンドピースと係合するか、または係合しない。
【0013】
発明の一態様は、製品を容れるための貯蔵槽を有する薬剤送達デバイス用の、またはこの薬剤送達デバイスと共に使用されることを意図されたアダプタであり、貯蔵槽は貯蔵槽から製品を移送するための通路を画成する遠位に突出したエンドピースを有し、前記アダプタは
−前記エンドピースと係合可能なカラーと、
−前記カラーがエンドピースと係合した後、前記エンドピースに対する前記カラーの並進運動を制限するためのアダプタ固定手段と、
−前記カラーがエンドピースと係合した後、前記エンドピースに対する前記カラーの回転を制限するためのアダプタ回転防止手段と、
−前記カラーが前記エンドピースと係合したときに前記カラーに加えられる所定の値以上の回転トルクに応答して前記アダプタ回転防止手段をニュートラルにし、それによって前記エンドピースに対する前記カラーの回転を許容するための機能停止手段と
を備える。
【0014】
本発明の態様は、薬剤送達デバイスであり、この薬剤送達デバイスは、
製品を容れるための貯蔵槽であって、貯蔵槽から製品を移送するための通路を画成する遠位に突出したエンドピースを有する貯蔵槽と、
前記エンドピース係合可能なカラーを有するアダプタと、
前記カラーが前記エンドピース係合した後、前記エンドピースに対する前記カラーの並進運動を制限するための固定手段と、
前記カラーが前記エンドピース係合した後、前記エンドピースに対する前記カラーの回転を制限するための回転防止手段と、
前記カラーが前記エンドピースと係合したときに前記カラーに加えられる所定の値以上の回転トルクに応答して前記回転防止手段をニュートラルにし、それによって前記エンドピースに対する前記カラーの回転を許容するための機能停止手段と
を備え、前記機能停止手段は、前記カラーが前記エンドピースと係合したときに前記所定の値より小さい回転トルクに対して前記エンドピース回転防止手段の部分と係合されたままであり、前記機能停止手段は、前記所定の値以上の回転トルクの効果の下で半径方向外向きに偏向可能であり、前記機能停止手段は、これにより回転防止手段の前記部分から係脱し、前記エンドピースに対する前記カラーの回転を許容し、
前記機能停止手段は、前記カラーの少なくとも1つのスカート部を備え、前記エンドピース回転防止手段の前記部分は、前記エンドピースの外壁に配置された少なくとも1つの突出部を備え、前記スカート部および前記突出部は、前記カラーが前記エンドピースと係合したときに、前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで互いに解放可能に係合可能であり、前記スカート部は、前記回転トルクが前記所定の値以上であるときに半径方向外向きに偏向し、前記突出部を乗り越え、
前記スカート部は、少なくとも1つの半径方向壁を備え、前記突出部は、前記カラーが前記エンドピースと係合したときに、前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで前記エンドピースに対する前記カラーの回転を制限するために前記半径方向壁に当接し、前記半径方向壁は、前記回転トルクが前記所定の値以上であるときに前記スカート部の前記半径方向外向きの偏向の効果の下で前記突出部を乗り越える
【0015】
遠位に突出したエンドピースは、長手方向軸を有することができる。固定手段は、カラーがエンドピースと係合した後、エンドピースに対する遠位方向のカラーの移動を特に阻止することができる。回転防止手段は、前記カラーが前記エンドピースと係合した後に前記カラーに加えられる回転トルクの効果の下で前記回転軸Aの周りの前記エンドピースに対するカラーの回転を特に防ぐことができる。
【0016】
本発明では、アダプタのカラーが薬剤送達デバイスのエンドピースと係合した後、コネクタを、カラーが壊れたり、さらにはそれにひびが入るというリスクを負うことなくカラーの内壁に存在しうるネジ山内にねじ込むことができる。実際には、一方の手で貯蔵槽を取り扱い、他方の手でコネクタを取り扱う使用者が、アダプタのカラーにコネクタをねじ込み始めるときに、カラーは、エンドピースの長手方向軸の周りのカラーの回転を阻止する、または少なくとも制限する回転防止手段のおかげで、エンドピースに対して動かないように維持される。コネクタがカラーに存在するネジ山の近位端に到達していない限り、使用者は、カラーからのかすかな抵抗を感じ、カラーにコネクタにねじ込むために高い回転トルクを加えないで済む。
【0017】
本発明の薬剤送達デバイスのエンドピースと係合可能なカラーを有するアダプタの構造のおかげで、使用者は、コネクタがカラーに存在するネジ山の近位端に到達したとき、例えば、以下の説明から明らかなように、音声信号などの信号、またはクリック音によって注意喚起を受ける。したがって、一方では、ねじ込みを続けすぎてカラーを壊したり、それにひびを入れてしまったりするリスクが回避され、他方では、最終使用者は、コネクタが正しく組み立てられ、安全に留められているのを容易にチェックすることができる。
【0018】
実際、本発明の薬剤送達デバイスでは、コネクタがカラーのネジ山の近位端に到達したときに、使用者はカラーからの抵抗を感じ取り、そこで使用者がコネクタに加える回転トルクはカラーを回転させる傾向がある。このエンドピースに対する回転の可能性を伴わない、カラーがエンドピースに永久的に固定される従来技術のデバイスでは、結果として、コネクタを介して使用者によって加えられる高い回転トルクの効果の下でカラーが壊れるか、またはカラーにひびが入ることになる。
【0019】
それとは反対に、本発明の薬剤送達デバイスのエンドピースと係合可能なアダプタでは、機能停止手段は、使用者が回転トルクに対する所定の値、すなわち、コネクタが安全にねじ込まれたときに使用者によって感じ取られる対抗力に対応する値に到達した後、回転防止手段をニュートラルにする。次いで、使用者が前記所定の値より高い回転トルクを加えたときにカラーがエンドピースに対して回転させられるという事実により、カラーが壊れたり、またはカラーにひびが入ったりすることが防止される。さらに、使用者は、アダプタのカラーがエンドピースに対して回転するのを見たときに、コネクタがカラーに安全にかつ正しく接続されていること、および現在コネクタを介した貯蔵槽からIVへの製品の移送が一切リスクなく実施できることを通知される。
【0020】
回転防止手段の一部は、アダプタに配置することができ、これらは、本明細書では、アダプタ回転防止手段と称する。回転防止手段の一部は、薬剤送達デバイスのエンドピースに配置することができ、これらは、本明細書では、エンドピース回転防止手段と称する。アダプタ回転防止手段およびエンドピース回転防止手段は互いに連携して、回転防止手段を形成することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記アダプタ回転防止手段は、前記カラーが前記エンドピースと係合したときに、前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで前記エンドピースの外壁に配置された相補的部分内に係合されたままにすることができる、前記カラーに配置された部分を備える。相補的部分は、エンドピース回転防止手段を形成することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記回転防止手段は、前記カラーに配置された少なくとも1つの部分と前記エンドピースの外壁に配置された少なくとも1つの相補的部分とを備え、前記部分および相補的部分は前記カラーが前記エンドピースと係合したときに前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで互いに係合したままである。このような状況において、前記部分および前記相補的部分は、これにより、前記エンドピースに対する前記カラーの回転を防止する、または少なくとも制限する。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記機能停止手段は前記カラーが前記エンドピースと係合したときに前記所定の値より小さい回転トルクに対してエンドピース回転防止手段と係合されたままにでき、前記機能停止手段は、前記カラーに加えられる前記所定の値以上の回転トルクの効果の下で半径方向外向きに偏向可能であり、前記機能停止手段はこれにより前記エンドピース回転防止手段から係脱し、カラーを前記エンドピースに対して回転させることができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記機能停止手段は前記カラーが前記エンドピースと係合したときに前記所定の値より小さい回転トルクに対して前記回転防止手段の一部、特にエンドピース回転防止手段と係合されたままにでき、前記機能停止手段は、前記カラーに加えられる前記所定の値以上の回転トルクの効果の下で半径方向外向きに偏向可能であり、前記機能停止手段はこれにより回転防止手段の前記部分から係脱し、カラーを前記エンドピースに対して回転させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記機能停止手段は、前記カラーの少なくとも1つのスカート部(skirt piece)を備え、前記エンドピース回転防止手段もしくは上述の回転防止手段の一部分は前記エンドピースの外壁に配置された少なくとも1つの突出部を備え、前記スカート部および前記突出部は前記カラーが前記エンドピースと係合したときに、前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで互いに解放可能に係合可能であり、前記スカート部は前記回転トルクが前記所定の値以上であるときに半径方向外向きに偏向し、前記突出部を乗り越える。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記スカート部は少なくとも半径方向壁を備え、前記突出部は前記カラーが前記エンドピースと係合したときに、前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで前記エンドピースに対する前記カラーの回転を制限するために、いくつかの場合おいて防止するために前記半径方向壁に当接し、前記半径方向壁は前記回転トルクが前記所定の値以上であるときに前記スカート部の半径方向外向きの偏向の効果の下で前記突出部を乗り越える。
【0027】
いくつかの実施形態において、複数の長手方向隆起部が、前記スカート部の内壁にさらに画成され、それぞれの長手方向隆起部は前記カラーが前記エンドピースと係合したときに、前記所定の値の前記回転トルクが前記カラーに加えられるまで前記エンドピースに対する前記カラーの回転を制限するために、いくつかの場合おいて防止するために、また前記回転トルクが前記所定の値以上である場合に前記エンドピースに対して前記カラーの回転を許容するために前記突出部と解放可能に係合可能である。
【0028】
いくつかの実施形態において、複数の突出部が前記エンドピースの外壁に画成され、前記エンドピースの外壁の周りに間隔をあけて並べられ、前記カラーは、前記突出部の間隔と一致するように前記カラーの周上に間隔をあけて並べられた複数のスカート部を備える。例えば、エンドピースの外壁は、エンドピースの周上に規則正しい間隔で並べられた4つの突出部を備えることができ、カラーは、カラーの周上に規則正しい間隔をあけて並べられた4つのスカート部を備えることができる。
【0029】
本発明の薬剤送達デバイスでは、固定手段の一部は、アダプタに配置することができ、これらは、本明細書では、アダプタ固定手段と称する。固定手段の一部は、エンドピースに配置することができ、これらは、本明細書では、エンドピース固定手段と称する。アダプタ固定手段およびエンドピース固定手段は互いに連携して、固定手段を形成することができる。いくつかの実施形態において、環状隆起部がエンドピースの外壁に設けられ、前記アダプタ固定手段はカラーの内壁に設けられた当接面を備え、前記当接面は前記カラーが前記エンドピースと係合した後に遠位方向に付勢されたときに前記環状隆起部に係合するようになる。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記固定手段は、エンドピースの外壁に設けられた環状隆起部とカラーの内壁に設けられた当接面とを備え、前記当接面は前記カラーが前記エンドピースの周りに係合した後に遠位方向に移動されたときに前記環状隆起部に係合するようになる。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記当接面は、前記スカート部(複数可)の内壁に設けられた環状リムである。いくつかの実施形態において、前記当接面は、前記長手方向隆起部の遠位端から形成される。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記カラーは、遠位壁の内面に画成されたネジ山を有する。以下の説明からわかるように、このネジ山は、前記カラーに接続されることを意図されたコネクタの相補的ネジ山と連携することを意図されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記カラーの前記遠位壁は、オレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、およびこれらの組合せから選択された材料から形成される。オレフィンは、シクロオレフィン重合体およびシクロオレフィン共重合体などのポリオレフィンまたはシクロオレフィンから選択することができる。このような材料は、カラーの遠位壁の剛性を確実に高めることができ、ネジ山を備えて、コネクタのねじ込みを行える。あるいは、または組み合わせることで、アダプタは、前記カラーの遠位壁の外面に画成された補強手段をさらに備えることができる。補強手段は、カラーの遠位壁の外面に加えられた材料の追加外側隆起部であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記機能停止手段は、オレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、スチレン重合体、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、およびこれらの組合せから選択された材料で作られる。オレフィンは、シクロオレフィン重合体およびシクロオレフィン共重合体などのポリオレフィンまたはシクロオレフィンから選択することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記エンドピースは、ガラスから作られる。
【0036】
他の実施形態において、前記エンドピースは、プラスチックから作られる。
【0037】
いくつかの実施形態において、アダプタは、前記カラーが前記エンドピースと係合しているときに前記エンドピース上の前記カラーの位置合わせを確実に行えるようにするアダプタ誘導手段をさらに備えることができる。
【0038】
特に、アダプタ誘導手段は、エンドピースに配置されているエンドピース誘導手段と連携してエンドピースの長手方向軸上で前記カラーの位置合わせを確実にし、前記アダプタ誘導手段およびエンドピース誘導手段は全体として薬剤送達デバイスの誘導手段を形成する。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記スカート部(複数可)の前記半径方向壁(複数可)は、前記アダプタ誘導手段の少なくとも一部を形成する。前記アダプタ誘導手段は、長手方向隆起部間に存在する間隙によって形成される長手方向溝をさらに備えることができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、薬剤送達デバイスは、前記カラーが前記エンドピースと係合しているときに、前記エンドピース上の、特に前記エンドピースの長手方向軸上の前記カラーの位置合わせを確実に行えるようにする誘導手段をさらに備える。
【0041】
前記誘導手段は、特にエンドピース誘導手段としての前記突出部(複数可)、および前記スカート部(複数可)の前記半径方向壁(複数可)を備えることができ、前記突出部(複数可)は、前記カラーが前記エンドピースと係合しているときに前記半径方向壁(複数可)にそって摺動する。前記誘導手段は、長手方向隆起部の間に存在する間隙によって画成される長手方向溝をさらに備えることができ、前記突出部(複数可)のそれぞれは前記カラーが前記エンドピースと係合しているときに前記長手方向溝のうちの1つの中で係合する。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記誘導手段は、前記長手方向隆起部の斜角を付けられた表面をさらに備え、前記斜角を付けられた表面は、前記カラーが前記エンドピースと係合しているときに前記突出部を前記長手方向溝内に付勢する。
【0043】
本発明の別の態様は、薬剤送達デバイスであり、この薬剤送達デバイスは、製品を容れるための貯蔵槽であって、上で説明されているような、貯蔵槽から製品を移送するための通路を画成する遠位方向に突出しているエンドピースを有する貯蔵槽と、前記エンドピースと係合可能な、上で説明されているようなアダプタとを備える。本発明の別の態様は、上で説明されているような薬剤送達デバイスと、前記薬剤送達デバイスのエンドピースに係合可能な上で説明されているようなアダプタとを備えるアセンブリである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の薬剤送達デバイスは、以下の説明および添付図面を参照してさらに説明される。
図1】アダプタをエンドピースと係合する前の、本発明の薬剤送達デバイスの第1の実施形態の斜視図である。
図2】アダプタのカラーが貯蔵槽のエンドピースに係合した後の図1のデバイスの斜視図である。
図3図1の薬剤送達デバイスの貯蔵槽の部分側面図である。
図4図3の貯蔵槽の部分断面図である。
図5図1のアダプタの断面図である。
図6図5のアダプタの上面図である。
図7図1のアダプタの別の斜視図である。
図8図7の斜視図の断面図である。
図9】アダプタが係合されている図2の薬剤送達デバイスの断面図である。
図10図9の平面II’にそった断面図である。
図11】回転トルクがカラーに加えられた後の図10の薬剤送達デバイスの断面図である。
図12】本発明の薬剤送達デバイスにおけるアダプタの第2の実施形態の斜視図である。
図13】本発明の薬剤送達デバイスにおけるアダプタの別の実施形態の断面図である。
図14図13のアダプタの上面図である。
図15図13のアダプタの斜視図である。
図16図1〜12の薬剤送達デバイスのエンドピースと係合されている図13のアダプタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1を参照すると本発明による薬剤送達デバイス1およびアダプタ100が図示されており、薬剤送達デバイス1は貯蔵槽20(一部が図示されている)を備え、アダプタ100はカラー30を備える。
【0046】
貯蔵槽20は、患者に注射することを意図された、製品、好ましくは液剤のような流体を受け入れることを意図されている。したがって、貯蔵槽20は、容器の全体的な形状を有し、例えば、貯蔵槽は、バイアルまたは注射器本体部とすることができる。貯蔵槽20は、貯蔵槽20の遠位壁20aから遠位に突出しているエンドピース21を備える。エンドピース21は、長手方向軸Aを有し、貯蔵槽20から製品を移送するための通路を構成する流路22を画成する。
【0047】
エンドピース21は、バイアルまたは注射器などの医療用容器を製造するために通常使用される任意の材料から作ることができる。例えば、エンドピース21は、特に貯蔵槽がガラス製注射器である場合に、ガラスから作ることができる。あるいは、エンドピースは、プラスチック材料から作ることができる。エンドピースおよび貯蔵槽の壁は、異なる材質であってもよい。
【0048】
図1図3、および図4を参照すると、エンドピース21は、中空錐の一部の球形形状を有する。エンドピース21は、その外壁に、前記エンドピース21の中間領域内に実質的に配置される、環状隆起部23を備える。図4を参照すると、環状隆起部23は、傾斜遠位面23aおよび半径方向近位面23bを備える。エンドピース21の外壁は、エンドピース21の周上に規則正しい間隔で並べられ、環状隆起部23に対して間隔をあけて近位に並べられた4つの長手方向突出部24をさらに備える。
【0049】
次に、図1および図5図8を参照しつつ、アダプタ100のカラー30についてさらに詳しく説明する。以下の説明から明らかなように、カラー30はエンドピース21の周りで係合可能である。図示されている例では、カラー30は、大域的に細長い形状を有し、近位領域30aおよび遠位領域30bを備える。
【0050】
カラー30の遠位領域30bは、大域的にチューブ状部分の形状を有し、その内壁にネジ山31を備えるが、この機能については後で説明する。ネジ山31は、近位端31aと遠位端31bとを有する。カラー30の遠位領域30bは、ある程度の剛性を示す材料から作ることができる。図12に示されている実施形態において、遠位領域30bの外壁は、外側隆起部34の形態の下に補強手段を備える。そのような外側隆起部34は、遠位領域30bの剛性を高める。以下の説明からわかるように、カラー30の遠位領域30bは、コネクタ40(図2を参照)がアダプタ100に接続されたときに応力を受ける領域であり、上で説明されているようなこの遠位領域およびオプションの補強手段を形成する材料は、この遠位領域に良好な剛性を与える。
【0051】
図5および図7に示されている例では、カラー30の近位領域30aは、遠位領域30bの近位端から近位に延在する4つのスカート部32を備える。図示されている例では、4つのスカート部32は、カラー30の周上に規則正しい間隔をあけて並べられ、これらは、4つの長手方向スロット33によって互いに隔てられる。以下の説明でわかるように、スカート部32は柔軟であり、内壁32aに加えられる外向半径方向の力の効果の下で半径方向外向きに偏向されうる。さらに、それぞれのスカート部32は、半径方向壁32bを形成する2つの側面を有する。
【0052】
図示されていない他の実施形態では、カラーの近位領域は、ただ1つのスカートを備えるか、あるいは2つ、3つ、または5つもしくはそれ以上のスカート部を、このスカートまたはこれらのスカート部が半径方向外向きに偏向可能である限り、備えることが可能である。
【0053】
したがって、カラー30の近位領域のスカートもしくはスカート部32は、スカートもしくはスカート部が上で説明されているように偏向可能なものとなるように十分な弾性を有する任意の材料から作ることができる。例えば、このような材料は、ポリオレフィンまたはシクロオレフィン、特にシクロオレフィン重合体およびシクロオレフィン共重合体などのオレフィン、ポリアミドまたはナイロン、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、スチレン重合体、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、およびこれらの組合せのうちから選択されうる。
【0054】
図7および図8を参照すると、それぞれのスカート部32は、その内壁32aに、複数の実質的に平行な長手方向隆起部35を備えることがわかる。これらの長手方向隆起部35の遠位端は一緒になって、当接面36を形成する。
【0055】
図6を参照すると、複数の長手方向隆起部35は、間に配置された複数の長手方向溝37を画成することがわかる。さらに、それぞれの長手方向隆起部35は、カラー30の長手方向軸Bの方向に斜角を付けられた表面35aを備える。
【0056】
以下の説明からわかるように、本発明のアダプタ100は、カラー30を破損するリスクを大幅に制限しつつ薬剤送達デバイス1のエンドピース21にコネクタを接続するのに特に有用である。とにかく、コネクタを薬剤送達デバイス1に接続する前に、使用者は、エンドピース21上でカラー30を係合させなければならない。次に、本発明の薬剤送達デバイス1のエンドピース21に本発明のアダプタ100のカラー30を係合させることについて、図1図2、および図9を参照しつつ説明することにする。
【0057】
通常、使用者は、図1に示されているようにエンドピース21にカラー30を係合させる前に薬剤送達デバイス1およびアダプタ100を装備する。次いで、使用者は、一方の手で貯蔵槽20を掴み、他方の手でカラー30を掴んで、近位領域30aを長手方向軸Aの方向にそってエンドピース21の遠位端の方へ近づける。カラー30の近位領域30aのスカート部32の内壁32aは、エンドピース21の環状隆起部23の傾斜した面23aに到達するまでエンドピース21の外壁にそって摺動する。スカート部32を半径方向外向きに偏向させることができるため、スカート部32は、外方向に偏向し、環状隆起部23を乗り越え、その静止状態に戻り、エンドピース21の近位領域の長手方向突出部24に面する。
【0058】
この位置で、図2および図9に示されているように、カラー30、したがってアダプタ100は、エンドピース21にしっかりと係合される。カラー30、したがってアダプタ100は、近位方向には、カラー30の近位端が貯蔵槽20の遠位壁20aに当接することによって、遠位方向には、当接面36がエンドピース21の環状隆起部23の半径方向近位面23bと接触することによって、長手方向軸Aに対する並進をブロックされるか、または少なくとも制限される。そのようなものとして、当接面36および環状隆起部23の半径方向近位面23bは、前記カラー30が前記エンドピース21と係合したときにエンドピース21に対して、特に遠位方向に、カラー30の並進運動をブロックするか、または少なくとも制限するための固定手段を形成する。当接面36は、アダプタ固定手段を形成するが、環状隆起部23の半径方向近位面23bは、エンドピース固定手段を形成する。
【0059】
さらに、図2および図9に示されている薬剤送達デバイス1の位置において、カラー30がエンドピース21と係合し、後で説明されるようにカラー30に著しい回転トルクが加えられていない場合、そこで、カラー30、したがってアダプタ100は、図10に示されているように長手方向突出部24が長手方向溝37内に、または長手方向スロット33内に係合されることによって、エンドピース21に対する回転をさらにブロックされるか、または少なくとも制限される。実際、エンドピース21にカラー30を係合するステップにおいて、エンドピース21の長手方向突出部24は、スカート部32の長手方向隆起部35と、またはスカート部32の半径方向壁32bと接触し、エンドピース21に対するカラー30の近位方向への移動の間、長手方向隆起部35の斜角を付けられた表面35aは長手方向突出部24を長手方向溝37の方へ押し込み、および/またはスカート部32の半径方向壁32bは、長手方向突出部24と接触して、これらの長手方向突出部24をスロット33内に押し込み、斜角を付けられた表面35aおよび/またはスカート部32の半径方向壁32bは、長手方向軸Aにそってエンドピース21上でカラー30を正しく位置合わせするためのアダプタ誘導手段として働く。長手方向突出部24は、エンドピース誘導手段として働く。長手方向突出部24および斜角を付けられた表面35aおよび/またはスカート部32の半径方向壁32bは一緒に、カラーがエンドピース21と係合されているときにエンドピース上のカラー30の位置合わせを確実にするための誘導手段として働く。
【0060】
さらに、一方の長手方向突出部24ならびに他方の半径方向壁32bおよび長手方向隆起部35は、前記カラー30に加えられる回転トルクの効果の下で長手方向軸Aの周りのエンドピース21に対するカラー30の回転を防ぐための回転防止手段としても働く。長手方向突出部24は、エンドピース回転防止手段として働き、半径方向壁32bおよび長手方向隆起部35は、アダプタ回転防止手段として働く。
【0061】
しかしながら、本発明のアダプタ100により、カラー30に加えられた回転トルクが所定の値に達した後にこのような回転防止手段の機能の停止が可能になり、コネクタがねじ込まれたときに受ける力の下でカラー30が壊れるか、またはひびが入る可能性が高い。
【0062】
次に、エンドピース21と係合された後、およびコネクタがねじ込まれたときの、本発明のアダプタ100のカラー30の挙動を、図2および図9図11を参照しつつ説明することにする。
【0063】
図2を参照すると、本発明の薬剤送達デバイス1が示されており、アダプタ100のカラー30がエンドピース21と係合し、コネクタ40は、薬剤送達デバイス1のエンドピース21に接続されることを意図されている。
【0064】
上で説明されているように、多くの場合病院内、または緊急事態でのように、灌流デバイスを介して実行される患者への非経口的投与のための液剤の取扱いは、薬剤送達デバイスに接続される必要があるIVラインを使用することを意味する。図2を参照すると、コネクタ40は、IVライン41を備え、その遠位端(図示せず)は、患者(図示せず)の静脈に接続される。コネクタ40は、コネクタ40を薬剤送達デバイス1に安全に接続し、結果として、IVライン41をエンドピース21に安全に接続するためにカラー30のネジ山31と連携することを意図されたネジ山42をその近位端に備え、これにより、貯蔵槽20から患者の静脈に製品を移送することができる。
【0065】
患者の治療中、または手術中に、製品が麻酔製品である場合に、製品は患者に連続的に投与されなければならず、薬剤送達デバイスの貯蔵槽が空になった後、貯蔵槽が満たされた別の薬剤送達デバイス1をコネクタ40を介してIVライン41に接続しなければならない。
【0066】
この接続ステップに進むために、使用者は、一方の手で、図2に示されているようにアダプタ100のカラー30がエンドピース21と係合された状態で薬剤送達デバイス1を掴み、他方の手で、コネクタ40を掴む。使用者は、コネクタ40のネジ山42の遠位端42aをカラー30のネジ山31の遠位端31bに近づけ、コネクタ40をカラー30内にねじ込み始める。
【0067】
このねじ込みステップの間、コネクタ40がカラー30に完全にはねじ込まれていない限り、使用者によってコネクタ40にまたコネクタ40をねじ込むアクションによってカラー30に偶然、加えられた回転トルクは低く、エンドピース21の長手方向突出部24は、カラー30のスカート部32の長手方向隆起部35と連携して、図10に示されているように、回転防止手段として働き、エンドピース21に対するカラー30の回転を防ぐ。したがって、ねじ込みは容易に行える。
【0068】
カラー30にねじ込むことに関して、使用者によってコネクタ40に加えられる回転トルクは、コネクタ40がカラー30に完全にねじ込まれたときにカラーに伝えられ、これは、例えば、コネクタ40のネジ山42の近位端42aがカラー30のネジ山31の近位端31aに当接するとき、またはコネクタ40の近位表面がカラー30の遠位表面と当接するとき、またはコネクタ40のネジ山42とカラー30のネジ山31との間に十分な摩擦力が形成されたときのいずれかで生じうる。こうしてカラー30に伝えられた回転トルクが所定の値に達すると、カラー30は、エンドピース21に対して回転するよう付勢される。
【0069】
従来技術のデバイスでは、カラーが、例えば、エンドピースに対して永久的に固定される場合、カラーはこの追加の回転トルクを吸収することができず、ひび割れもしくは破損が引き起こされる。
【0070】
それとは反対に、本発明の薬剤送達デバイス1およびアダプタ100では、カラー30に伝えられる回転トルクが、所定の値、例えば、50N.cmの値に達したときに、柔軟なスカート部32は半径方向外向きに偏向され、したがって、回転防止手段の機能停止手段として働き、これにより、カラー30は回転し、前記カラー30がひび割れを起こし、かつ/または壊れることが防止される。
【0071】
図10を参照すると、上で説明されているようなカラー30に伝えられる回転トルクが所定の値より小さい限り、長手方向突出部24は、柔軟なスカート部32の長手方向隆起部35によって画成される長手方向溝37内に係合し、前記長手方向隆起部35の斜角を付けられた表面35aに当接することがわかる。
【0072】
図11を参照すると、カラー30に伝えられる、図上でRとして示されている、回転トルクが所定の値以上である場合、長手方向突出部24は、斜角を付けられた表面35a上で摺動し、スカート部32を図11上でDと示される矢印の方向に半径方向外向きに偏向させる。長手方向突出部24は、長手方向隆起部35を乗り越えることが許され、隣接する長手方向溝37内に係合し、これにより、エンドピース21上のカラー30の正しい軸方向位置合わせを維持する。
【0073】
スカート部32の偏向は、カラー30の破損および/またはひび割れを回避するだけでなく、コネクタ40がカラー30内に完全にねじ込まれているという事実およびIVライン41が薬剤送達デバイス1のエンドピース21に安全に接続されているという事実も使用者に伝える。例えば、使用者は、突出部24が前の長手方向隆起部35を乗り越えた後に隣接する長手方向隆起部35に当接したときに突出部24によって発せられるクリックまたは音で通知されうる。
【0074】
図13図16を参照すると、カラー130が内壁132aに長手方向隆起部のない4つの柔軟なスカート部132を備える本発明のアダプタ100の別の実施形態が示されている。図13図16のカラー130は、図1図11と同じ送達デバイス1およびエンドピース21と共に使用されうる。アダプタ100のこのような一実施形態では、アダプタ回転防止手段は、スカート部132の側面によって形成される半径方向壁132aを備える。
【0075】
図14および図15に示されているように、4つのスカート部132は、カラー130の長手方向軸Bの周りに間隔をあけて並び、長手方向スロット133によって互いから隔てられる。カラー130が、図16に示されているように薬剤送達デバイス1のエンドピース21と係合すると、エンドピース21の突出部24は、アダプタ誘導手段として働く半径方向壁132bによって長手方向スロット133内に押し込まれる。カラー130が、エンドピース21と係合した後、突出部24は、カラー130に加えられる回転トルクが上で定義されているように所定の値より小さい限り半径方向壁132bに当接している。半径方向壁132bは、アダプタ回転防止手段を形成する。
【0076】
スカート部132は、半径方向外向きに偏向可能であるため、前記所定の値以上である回転トルクが前記カラー130に加えられると、スカート部132は、半径方向外向きに偏向し、突出部24の抵抗に打ち勝ち、それにより、エンドピース21に対するカラー130の回転が許されるが、これは図1図11の実施形態についてすでに説明されているとおりである。
【0077】
図1図11の実施形態と同様に、図13図16のカラー130は、カラー130がエンドピース21と係合したときにエンドピースの環状隆起部23の近位面23bに当接することを意図されている環状リム136を備える。
【0078】
回転トルクについて上で説明されているような所定の値は、カラーのサイズおよび構造、ならびにカラー、特に柔軟な要素、およびエンドピースを形成する材料の関数である。
【0079】
例えば、オレフィン、特にポリオレフィンまたはシクロオレフィン、例えば、シクロオレフィン重合体およびシクロオレフィン共重合体、ポリアミドまたはナイロン、ポリカーボネート、およびこれらの組合せから選択された熱可塑性プラスチック材料から作られたエンドピース、ならびにスカート部がオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、スチレン重合体、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、およびこれらの組合せから選択された熱可塑性プラスチック材料から作られる図1図11で説明されているようなカラーに関して、回転トルクに対する所定の値は、50N.cmである。
【0080】
本発明のアダプタおよび薬剤送達デバイスにより、デバイスに接続するためにコネクタに加えられる力に関係なく、前記デバイスのカラーが壊れたり、カラーにひびが入ったりするリスクを負うことなく、前記デバイスのエンドピースにIVラインコネクタを安全に接続することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16