特許第5770942号(P5770942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770942ヒドロキシプロピオン酸又はその誘導体をアクリル酸又はその誘導体に転化するための触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770942
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ヒドロキシプロピオン酸又はその誘導体をアクリル酸又はその誘導体に転化するための触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/187 20060101AFI20150806BHJP
   B01J 27/18 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 57/065 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 51/377 20060101ALI20150806BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B01J27/187 Z
   B01J27/18 Z
   C07C57/065
   C07C51/377
   C07B61/00 300
【請求項の数】12
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-530978(P2014-530978)
(86)(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公表番号】特表2014-530095(P2014-530095A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】US2013036127
(87)【国際公開番号】WO2013155270
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2014年3月12日
(31)【優先権主張番号】61/623,054
(32)【優先日】2012年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/760,444
(32)【優先日】2013年2月6日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン エステバン ヴェラスケス
(72)【発明者】
【氏名】ジャネット ビラロボス リンゴーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン エレン ゴドルースキー
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリス イオアニス コリアス
(72)【発明者】
【氏名】フレッド シー.ワイレコ
(72)【発明者】
【氏名】マーク アンドリュー ママック
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー リー レッドマン−フューリー
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101537362(CN,A)
【文献】 国際公開第2012/156921(WO,A1)
【文献】 米国特許第02859240(US,A)
【文献】 特開昭57−067534(JP,A)
【文献】 特表2014−518874(JP,A)
【文献】 Z. JINFENG et al.,Evaluation of Catalysts and Optimization of Reaction Conditions for the Dehydration of Methyl Lactate to Acrylates,Chinese Journal of Chemical Engineering,2008, 16, 263-269.
【文献】 J.-M. LEE et al.,Efficient dehydration of methyl lactate to acrylic acid using Ca3(PO4)2-SiO2 catalyst,Catalysis Communications,2010, 11, 1176-1180.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C07B31/00−63/04
C07C1/00−409/44
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピオン酸またはその誘導体をアクリル酸またはその誘導体に転化するための触媒であって、
(a) 以下の式(I)、(II)、及び(III)
【表1】
(式中、nは少なくとも2、mは少なくとも1である)からなる群から選択される、少なくとも1つの縮合リン酸アニオンと、
(b) 少なくとも2つの異なるカチオンと、
を含
前記触媒は中性帯電し、更に前記少なくとも2つの異なるカチオンに対するリンのモル比が、0.71.7であ
前記少なくとも2つの異なるカチオンが、
(a1)少なくともK+を含む一価カチオンと、
(b1)Ca2+、Ba2+、Mn3+及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一の多価カチオンを含む多価カチオンと、を含む触媒。
【請求項2】
前記一価カチオンが、さらに、+、Li+、Na+Rb+、Cs+、及びそれらの混合物からなる群から選択される追加の一価カチオンを含む、請求項に記載の触媒。
【請求項3】
前記多価カチオンが、さらに、Be2+、Mg2+Sr2+Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Sn2+、Pb2+、Ti3+、Cr3+Fe3+、Al3+、Ga3+、Y3+、In3+、Sb3+、Bi3+、Si4+、Ti4+、V4+、Ge4+、Mo4+、Pt4+、V5+、Nb5+、Sb5+、及びそれらの混合物からなる群から選択される追加の多価カチオンを含む、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
前記縮合リン酸アニオンが、前記式(I)及び(II)によって示される、請求項1〜のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒が、
(a)Ba2-x-s2x2s27又はCa2-x-s2x2s27又は
Mn1-x-s1+3x3s27又はMn1-x-s2+2x2s27と、
(b)(KPO3nと、
を含み、式中、x及びsは0以上かつ0.5未満であり、nは正の整数である、請求項に記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒中のカチオンに対するリンのモル比が0.81.3である、請求項1〜のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒中のカチオンに対するリンのモル比がである、請求項1〜のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒が、ケイ酸塩、アルミン酸塩、炭素、金属酸化物、及びこれらの混合物を含む材料で構成される不活性担持体を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
少なくとも2つの異なるリン含有化合物を、カチオンに対するリンのモル比が、0.7〜1.7となるように混合及び加熱する工程を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の触媒を調製する方法であって、
それぞれの前記化合物は、式(IV)〜(XXV):
【表2】
の1つによって記述されるか、又は前記式の任意の水和物であり、
式中、
I+を除く一価カチオン、
IIIIIIV、それぞれ、二価カチオン、三価カチオン、四価カチオンである多価カチオンであり、
yは0、1、2、又は3であり、zは0、1、2、3、又は4であり、vは0、1、又は2であり、wは0又は任意の正の整数であり、
a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、及びlは任意の正の整数であり、2a=b+3c、3d=e+3f、i=2g+h、かつl=3j+kが満たされ、
但し、選択された前記少なくとも2つの異なるリン含有化合物の少なくとも一のリン含有化合物には、MIであるK+が含まれ、かつ
選択された前記少なくとも2つの異なるリン含有化合物の少なくとも一のリン含有化合物には、MIIまたはMIIIであるCa2+、Ba2+、Mn3+及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一の多価カチオンが含まれる、
請求項1〜のいずれか一項に記載の触媒を調製する方法。
【請求項10】
前記触媒中のカチオンに対するリンのモル比がである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記リン含有化合物が、前記式(IV)(式中、yは1である)のリン含有化合物、及び前記式(V)(式中、yは2である)のリン含有化合物を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記リン含有化合物が、
(a)KH2PO4と、
(b)CaHPO4又はBaHPO4と、
を含む、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はそれらの混合物を、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はそれらの混合物に転化するために有用な触媒に関する。より具体的には、本発明は、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はそれらの混合物を、高収率及び高選択率で、短い滞留時間をもって、かつ、ヒドロキシプロピオン酸、その誘導体、又はそれらの混合物が望ましくない副生成物(例えばアセトアルデヒド、プロピオン酸、酢酸、2,3−ペンタンジオン、二酸化炭素、及び一酸化炭素)に顕著に転化されないで、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はそれらの混合物へと脱水反応させるために有用な触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はそれらの混合物は、様々な工業用用途を有し、典型的にはポリマー形成に消費される。同様に、これらのポリマーは、とりわけ、例えば、接着剤、結合剤、コーティング、塗料、光沢剤、洗剤、凝集剤、分散剤、チキソトロープ剤、金属イオン封鎖剤、及び超吸収性ポリマー(例えばおむつや衛生用製品を含む使い捨て吸収物品に使用される)の製造に一般的に利用される。アクリル酸は一般に石油資源から製造される。例えば、アクリル酸は長年、プロピレンの触媒による酸化によって調製されている。石油資源からのこれら及びその他のアクリル酸製造方法は、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.1,pgs.342〜369(5th Ed.,John Wiley & Sons,Inc.,2004)に記述されている。石油系アクリル酸は、石油由来の炭素成分が多いため、温室効果排出の一因になっている。更に、石油は再生不可能な材料であり、自然に生成されるには何十万年もの時間がかかる一方、ごく短時間で消費されてしまう。石油化学資源はますます稀少になり、より高価になり、CO2排出規制の対象となっているため、石油系のアクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物に代わる、バイオ系のアクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物に対するニーズが増大している。
【0003】
過去40〜50年にわたって、バイオ系アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を、例えば乳酸(別名2−ヒドロキシプロピオン酸)、3−ヒドロキシプロピオン酸、グリセリン、一酸化炭素とエチレンオキシド、二酸化炭素とエチレン、及びクロトン酸などの非石油資源から製造しようという試みが数多くなされてきた。これらの非石油資源のうち、今日、乳酸のみが砂糖から高収率(理論収量の90%以上、又はそれに相当する、砂糖1g当たり乳酸0.9g以上)かつ高純度で、また石油系アクリル酸に匹敵するコストでアクリル酸製造を支持し得る経済性をもって製造されている。よって、乳酸又は乳酸塩が、バイオ系アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物の原材料として利用される現実的な可能性をもたらす。また、3−ヒドロキシプロピオン酸は数年以内に商業規模で製造されると見込まれており、よって3−ヒドロキシプロピオン酸は、バイオ系アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物の原材料として利用されるもう1つの現実的な可能性をもたらす。乳酸又は乳酸塩を脱水反応して、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物にするには、硫酸塩、リン酸塩、硫酸塩とリン酸塩の混合物、塩基、ゼオライト又は変性ゼオライト、金属酸化物又は変性金属酸化物、及び超臨界水が主触媒に、過去様々な成功程度で使用されている。
【0004】
例えば、米国特許第4,786,756号(1988年発行)は、触媒として無機塩基水溶液で処理したリン酸アルミニウム(AlPO4)を用いて、乳酸又は乳酸アンモニウムを気相脱水反応してアクリル酸にすることについて記述している。一例として、第4,786,756号特許は、乳酸をほぼ常圧の反応器に入れたときにアクリル酸の最高収率が43.3%であり、乳酸アンモニウムをこの反応器に入れたときに同収率が61.1%であったことを開示している。両例において、アセトアルデヒドはそれぞれ収率34.7%及び11.9%で生成され、他の副生成物(例えばプロピオン酸、CO、及びCO2)も大量に存在した。塩基処理を省略したところ、この副生成物の量が増大した。他の一例はHong et al.(2011)Appl.Catal.A:General 396:194〜200である。これは、塩Ca3(PO42と塩Ca2(P27)をスラリー混合法で作製した複合触媒の開発と試験を行っている。乳酸メチルからアクリル酸を最高収率で得た触媒は、50%−50%(重量比)であった。390℃でアクリル酸が68%、メチルアクリル酸が約5%、アセトアルデヒドが14%の収率で生成された。同じ触媒は、乳酸から、アクリル酸の収率54%、アセトアルデヒドの収率14%、プロピオン酸の収率14%を実現した。
【0005】
乳酸又は乳酸エステルを脱水反応してアクリル酸及び2,3−ペンタンジオンにすることについては、Michigan State University(MSU)のD.Miller教授のグループが、例えばGunter et al.(1994)J.Catalysis 148:252〜260、及びTam et al.(1999)Ind.Eng.Chem.Res.38:3873〜3877などをはじめ、数多くの論文を出版している。同グループから報告されている最高のアクリル酸収率は、乳酸を、NaOHを含浸させた低表面積の細孔容積シリカの上で350℃にて脱水反応したとき、約33%であった。同じ実験で、アセトアルデヒドの収率は14.7%、プロピオン酸の収率は4.1%であった。同グループが試験した他の触媒の例には、Na2SO4、NaCl、Na3PO4、NaNO3、Na2SiO3、Na427、NaH2PO4、Na2HPO4、Na2HAsO4、NaC353、NaOH、CsCl、Cs2SO4、KOH、CsOH、及びLiOHが挙げられる。全ての場合において、上に挙げた触媒は、混合物としてではなく、個別の成分として試験された。最後に、同グループは、シリカ担持体の表面積が小さく、反応温度が高く、反応圧力が低く、かつ反応物の触媒床内滞留時間が短い場合に、アクリル酸の収率が改善され、かつ副生成物の収率が抑えられることを示唆している。
【0006】
最後に、中国特許出願第200910054519.7号は、アルカリ水溶液(例えばNH3、NaOH、及びNa2CO3)又はリン酸塩(例えばNaH2PO4、Na2HPO4、LiH2PO4、LaPO4、など)で修飾したZSM−5モレキュラシーブの使用について開示している。乳酸の脱水反応で達成されたアクリル酸の最高収率は83.9%であったが、ただし、この収率は非常に長い滞留時間で得られたものであった。
【0007】
よって、上述の文献に記述されているものなどのプロセスによる、乳酸又は乳酸塩からの、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物の製造は、1)アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物の収率が70%以下であり、2)アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物の選択率が低く(すなわち、例えばアセトアルデヒド、2,3−ペンタンジオン、プロピオン酸、CO、及びCO2といった望ましくない副生成物が顕著な量である)、3)触媒床内の滞留時間が長く、かつ4)短いオンストリーム時間(TOS)で触媒の不活性化、が生じている。副生成物は触媒に付着して汚染を生じ、触媒の早期及び急速な不活性化を引き起こすことがある。更に、いったん付着すると、これらの副生成物が他の望ましくない反応(例えば重合反応)を触媒する可能性がある。触媒への付着以外にも、これらの副生成物は、例え存在量が少量であっても、例えば超吸収性ポリマー(SAP)の製造において、アクリル酸の処理に余計なコストがかかる(反応生成物廃液中に存在する場合)。先行技術のプロセス及び触媒におけるこのような欠点から、商業的には実用可能になっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,786,756号
【特許文献2】中国特許出願第200910054519.7号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.1,pgs.342〜369(5th Ed.,John Wiley & Sons,Inc.,2004)
【非特許文献2】Hong et al.(2011)Appl.Catal.A:General 396:194〜200
【非特許文献3】Gunter et al.(1994)J.Catalysis 148:252〜260
【非特許文献4】Tam et al.(1999)Ind.Eng.Chem.Res.38:3873〜3877
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、高収率、高選択率、及び高効率(すなわち滞留時間が短い)、かつ長寿命の触媒を用いて、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はこれらの混合物の脱水反応により、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はこれらの混合物を得るための触媒及び方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はそれらの混合物を、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はそれらの混合物へと脱水反応させるために有用な触媒が提示される。この触媒は、以下の(a)式(I)、(II)、及び(III)
【0012】
【表1】
(式中、nは少なくとも2、かつmは少なくとも1である)からなる群から選択される少なくとも1つの縮合リン酸アニオンと、(b)少なくとも2つの異なるカチオンと、を含み、該触媒は本質的に中性帯電し、更にこの少なくとも2つの異なるカチオンに対するリンのモル比が、約0.7〜約1.7である。式(I)、(II)、及び(III)で定義されるアニオンはそれぞれ、ポリリン酸塩(又はオリゴリン酸塩)、シクロリン酸塩、及び超リン酸塩とも呼ばれる。
【0013】
本発明の更に別の一実施形態において、触媒の調製方法が提示される。この方法には、少なくとも2つの異なるリン含有化合物を混合及び加熱する工程を含む、方法であって、前記各化合物は、式(IV)〜(XXV):
【0014】
【表2】
の1つによって記述されるか、又は前記式の任意の水和物であり、式中、MIは一価カチオン、MIIは二価カチオン、MIIIは三価カチオン、MIVは四価カチオンであり、yは0、1、2、又は3であり、zは0、1、2、3、又は4であり、vは0、1、又は2であり、wは0又は任意の正の整数であり、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、及びlは任意の正の整数であり、等式:2a=b+3c、3d=e+3f、i=2g+h、かつl=3j+kが満たされる。
【0015】
本発明の更に別の一実施形態において、触媒の調製方法が提示される。この方法には、(a)少なくとも1つのリン含有化合物であって、前記各化合物は、式(IV)〜(XXV):
【0016】
【表3】
の1つによって記述されるか、又は前記式の任意の水和物であり、式中、MIは一価カチオンであり、MIIは二価カチオンであり、MIIIは三価カチオンであり、MIVは四価カチオンであり、yは0、1、2、又は3であり、zは0、1、2、3、又は4であり、vは0、1、又は2であり、wは0又は任意の正の整数であり、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、及びlは任意の正の整数であり、等式:2a=b+3c、3d=e+3f、i=2g+h、かつl=3j+kが満たされる、リン含有化合物と、(b)少なくとも1つの、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、金属酸化物、塩化物塩、硫酸塩、及び金属水酸化物からなる群から選択される非リン含有化合物であって、前記各化合物は式(XXVI)〜(XL):
【0017】
【表4】
の1つによって記述されるか、又は前記式の任意の水和物である、非リン含有化合物と、を混合及び加熱することが含まれる。本発明の更に別の一実施形態において、以下の工程を含む触媒の調製方法が提示される:(a)リン含有化合物、硝酸塩、リン酸、及び水を合わせて湿潤混合物を形成する工程で、このリン含有化合物及びこの硝酸塩の両方に含まれるリンとカチオンとの間のモル比は約1である工程、(b)前記湿潤混合物を約50℃、約80℃、約120℃、及び約450℃〜550℃に段階的に焼成して、乾燥固体を生成する工程、並びに(c)前記乾燥固体を粉砕し篩い分けを行って、約100μm〜約200μmとし、前記触媒を生成する工程。
【0018】
本発明の更に別の一実施形態において、以下の工程を含む触媒の調製方法が提示される:(a)Ca227及びKH2PO4を約3:1のモル比で合わせて固体混合物を生成する工程、並びに(b)前記固体混合物を約50℃、約80℃、約120℃、及び約450℃〜550℃に段階的に焼成して、前記触媒を生成する工程。
【0019】
本発明の追加的な特徴は、実施例とともに以下の詳細な説明の検討によって当業者には明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
I定義
本明細書で使用されるとき、用語「一リン酸塩」又は「オルトリン酸塩」は、そのアニオン部分[PO43-が、中央のリン原子の周りにほぼ正四面体配列で配列された4つの酸素原子で構成されているものの任意の塩を指す。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「縮合リン酸塩」は、PO4四面体の頂点共有により生成された1つ又はいくつかのP−O−P結合を含む任意の塩を指す。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリリン酸塩」は、PO4四面体の頂点共有による直鎖P−O−Pリンクを含んで有限の直鎖を形成する、任意の縮合リン酸塩を指す。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「オリゴリン酸塩」は、5つ以下のPO4単位を含む任意のリン酸塩を指す。
【0024】
本明細書で使用されるとき、用語「シクロリン酸塩」は、2つ又は3つ以上の頂点共有PO4四面体から成る任意の環状縮合リン酸塩を指す。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「超リン酸塩」は、アニオン部分の少なくとも2つのPO4四面体が、隣接する四面体とその3つの頂点を共有している、任意の縮合リン酸塩を指す。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「カチオン」は、プラス電荷を有する任意の原子又は共有結合原子群を指す。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「アニオン」は、マイナス電荷を有する任意の原子又は共有結合原子群を指す。
【0028】
本明細書で使用されるとき、用語「一価のカチオン」は、+1のプラス電荷を有する任意のカチオンを指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「多価のカチオン」は、+2以上のプラス電荷を有する任意のカチオンを指す。
【0030】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロポリアニオン」は、共有結合したXOpとYOrの多面体を備え、これによってX−O−Y結合並びに可能性としてX−O−X結合及びY−O−Y結合を含む、任意のアニオンを指し、XとYは任意の原子を表わし、pとrは任意の正の整数である。
【0031】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロポリリン酸塩」は、Xがリン(P)を表わし、Yが他の任意の原子を表わす、任意のヘテロポリアニオンを指す。
【0032】
本明細書で使用されるとき、用語「リン酸塩付加物」は、1つ又は複数のリン酸塩アニオンと、共有結合していない1つ又は複数の非リン酸塩アニオンとの、任意の化合物を指す。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「LA」は乳酸を指し、「AA」はアクリル酸を指し、「AcH」はアセトアルデヒドを指し、また「PA」はプロピオン酸を指す。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「粒径スパン」は、所与の粒子サンプルの統計的表現を表わし、(Dv,0.90−Dv,0.10)/Dv,0.50に等しい。用語「中央粒径」又はDv,0.50は、粒子の合計体積の50%がこれより下の範囲に含まれる粒径を指す。更に、Dv,0.10は、体積分画10%で粒子サンプルを分割する粒径を指し、Dv,0.90は、体積分画90%で粒子サンプルを分割する粒径を指す。
【0035】
本明細書で使用されるとき、%で示す用語「転化率」は、[ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の流入量(mol/分)−ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の流出量(mol/分)]/[ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の流入量(mol/分)]*100として定義される。本発明の目的のため、用語「転化率」は、他に記載のない限り、モル転化を意味する。
【0036】
本明細書で使用されるとき、%で示す用語「収率」は、[生成物流出量(mol/分)/ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の流入量(mol/分)]*100として定義される。本発明の目的のため、用語「収率」は、他に記載のない限り、モル収率を意味する。
【0037】
本明細書で使用されるとき、%で示す用語「選択率」は、[収率/転化率]*100として定義される。本発明の目的のため、用語「選択率」は、他に記載のない限り、モル選択率を意味する。
【0038】
本明細書で使用されるとき、mol/分単位で表わされるヒドロキシプロピオン酸についての用語「合計流出量」は、(2/3)*[C2流出量(mol/分)]+[C3流出量(mol/分)]+(2/3)*[アセトアルデヒド流出量(mol/分)]+(4/3)*[C4流出量(mol/分)]+[ヒドロキシプロピオン酸流出量(mol/分)]+[ピルビン酸流出量(mol/分)]+(2/3)*[酢酸流出量(mol/分)]+[1,2−プロパンジオール流出量(mol/分)]+[プロピオン酸流出量(mol/分)]+[アクリル酸流出量(mol/分)]+(5/3)*[2,3−ペンタンジオン流出量(mol/分)]+(1/3)*[一酸化炭素流出量(mol/分)]+(1/3)*[二酸化炭素流出量(mol/分)]として定義される。ヒドロキシプロピオン酸誘導体がヒドロキシプロピオン酸の代わりに使用される場合、上記の式は、そのヒドロキシプロピオン酸誘導体における炭素原子数に従って調整する必要がある。
【0039】
本明細書で使用されるとき、用語「C2」はエタン及びエチレンを意味する。
【0040】
本明細書で使用されるとき、用語「C3」はプロパン及びプロピレンを意味する。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「C4」はブタン及びブテンを意味する。
【0042】
本明細書で使用されるとき、%で示す用語「合計モル収支」又は「TMB」は、[合計流出量(mol/分)/ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の流入量(mol/分)]*100として定義される。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「TMBで補正されたアクリル酸収率」は、[アクリル酸収率/合計モル収支]*100として定義され、これは反応器中の流量がやや高いことに起因するものである。
【0044】
本明細書で使用されるとき、h-1で表わされる用語「毎時ガス空間速度」又は「GHSV」は、[合計ガス流量(mL/分)/触媒床体積(mL)]/60として定義される。合計ガス流量は、標準温度及び圧力条件(STP、0℃及び101kPa(1atm))で計算される。
【0045】
本明細書で使用されるとき、h-1で表わされる用語「毎時液空間速度」又は「LHSV」は、[合計液流量(mL/分)/触媒床体積(mL)]/60として定義される。
【0046】
II触媒
予期せぬことに、混合縮合リン酸塩触媒が、1)アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物に関して高い収率及び選択率で、すなわち副生成物が低量かつ少ない種類であり、2)高い効率で、すなわち短い滞留時間のパフォーマンスであり、かつ3)長寿命で、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を脱水反応してアクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物にすることが見出された。理論に拘束されるものではないが、出願者らは、少なくとも1つの縮合リン酸塩アニオンと2つの異なるカチオンとを含むこの触媒が、次のように作用すると仮定する:ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物のカルボン酸基が、1つ又は複数のカチオン(ここにおいてこのカチオンは一実施形態において多価)と、1つ又は両方の酸素原子を介して結合し、その分子を触媒表面に保持して、その脱カルボニル反応を不活性化し、C−OH結合の脱離を活性化させる。次に、結果として生じたプロトン化された縮合リン酸塩アニオンは、ヒドロキシル基の一斉プロトン化、メチル基からのプロトンの除去、及び水分子としてのプロトン化ヒドロキシル基の脱離によって、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を脱水反応し、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を生成し、触媒を再活性化する。更に、出願者らは、このヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物が水で希釈されると、触媒内の一部の縮合リン酸塩が加水分解されて非縮合一リン酸塩、又は短い縮合リン酸塩となることがあり、これが適切な温度及び圧力条件下で液体状態に転換されて、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の脱水反応を促進すると考える。
【0047】
一実施形態において、この触媒は、以下の(a)式(I)、(II)、及び(III):
【0048】
【表5】
(式中、nは少なくとも2、かつmは少なくとも1である)からなる群から選択される少なくとも1つの縮合リン酸アニオンと、(b)少なくとも2つの異なるカチオンと、を含み、該触媒は本質的に中性帯電し、更にこの少なくとも2つの異なるカチオンに対するリンのモル比は、約0.7〜約1.7である。
【0049】
式(I)、(II)、及び(III)で定義されるアニオンはそれぞれ、ポリリン酸塩(又はオリゴリン酸塩)、シクロリン酸塩、及び超リン酸塩とも呼ばれる。
【0050】
別の一実施形態において、この触媒は、(a)式(I)及び(II)、
【0051】
【表6】
からなる群から選択される少なくとも1つの縮合リン酸アニオン(式中、nは少なくとも2であり)と、(b)少なくとも2つの異なるカチオンであって、該触媒は本質的に中性帯電し、更にこの少なくとも2つの異なるカチオンに対するリンのモル比は、約0.7〜約1.7である、カチオンと、を含む。
【0052】
このカチオンは一価又は多価であり得る。一実施形態において、1つのカチオンは一価であり、もう一方のカチオンは多価である。別の一実施形態において、この多価のカチオンは、二価カチオン、三価カチオン、四価カチオン、五価カチオン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。一価カチオンの非限定的な例には、H+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、Ag+、Rb+、Tl+、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、この一価カチオンは、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、及びこれらの混合物からなる群から選択され、別の一実施形態において、この一価カチオンは、Na+又はK+であり、更に別の一実施形態において、この一価カチオンはK+である。多価カチオンの非限定的な例としては、アルカリ土類金属のカチオン(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRa)、遷移金属(例えば、Y、Ti、Zr、V、Nb,Cr、Mo、Mn、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、及びAu)、卑金属(例えば、Zn、Ga、Si、Ge、B、Al、In、Sb、Sn、Bi、及びPb)、ランタニド(例えば、La及びCe)、並びにアクチニド(例えば、Ac及びTh)が挙げられる。一実施形態において、多価カチオンは、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Sn2+、Pb2+、Ti3+、Cr3+、Mn3+、Fe3+、Al3+、Ga3+、Y3+、In3+、Sb3+、Bi3+,Si4+、Ti4+、V4+、Ge4+、Mo4+、Pt4+、V5+、Nb5+、Sb5+、及びこれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、この多価カチオンは、Ca2+、Ba2+、Cu2+、Mn2+、Mn3+、及びこれらの混合物からなる群から選択され、別の一実施形態において、この多価カチオンは、Ca2+、Ba2+、Mn3+、及びこれらの混合物からなる群から選択され、更に別の一実施形態において、この多価カチオンは、Ba2+である。
【0053】
この触媒には、次のカチオンが含まれ得る:(a)H+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、又はこれらの混合物、並びに(b)Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Sn2+、Pb2+、Ti3+、Cr3+、Mn3+、Fe3+、Al3+、Ga3+、Y3+、In3+、Sb3+、Bi3+,Si4+、Ti4+、V4+、Ge4+、Mo4+、Pt4+、V5+、Nb5+、Sb5+、又はこれらの混合物。一実施形態において、この触媒は一価カチオンとしてLi+、Na+、又はK+と、多価カチオンとしてCa2+、Ba2+、又はMn3+を含み、別の一実施形態において、この触媒は一価カチオンとしてNa+又はK+と、多価カチオンとしてCa2+又はBa2+を含み、更に別の一実施形態において、この触媒は一価カチオンとしてK+と、多価カチオンとしてBa2+を含む。
【0054】
一実施形態において、この触媒はBa2-x-s2x2s27及び(KPO3nを含み、式中、xとsは0以上でかつ約0.5未満であり、nは正の整数である。別の一実施形態において、この触媒はCa2-x-s2x2s27及び(KPO3nを含み、式中、xとsは0以上でかつ約0.5未満であり、nは正の整数である。更に別の一実施形態において、この触媒はMn1-x-s1+3x3s27又はMn1-x-s2+2x2s27及び(KPO3nを含み、式中、xとsは0以上でかつ約0.5未満であり、nは正の整数である。別の一実施形態において、この触媒は、Ba2-x-s2x2s27、Ca2-x-s2x2s27、Mn1-x-s1+3x3s27又はMn1-x-s2+2x2s27の中の任意の配合物と、(KPO3nとを含み、式中、xとsは0以上でかつ約0.5未満であり、nは正の整数である。
【0055】
一実施形態において、触媒中のカチオンに対するリンのモル比は、約0.7〜約1.7であり、別の一実施形態において、触媒中のカチオンに対するリンのモル比は、約0.8〜約1.3であり、更に別の一実施形態において、触媒中のカチオンに対するリンのモル比は、約1である。
【0056】
一実施形態において、この触媒は、以下の(a)式(I)、(II)及び(III):
【0057】
【表7】
(式中、nは少なくとも2であり、かつmは少なくとも1である)からなる群から選択される少なくとも2つの異なる縮合リン酸アニオンと、(b)1つのカチオンと、を含み、該触媒は本質的に中性帯電を有し、更にこのカチオンに対するリンのモル比は、約0.5〜約4.0である。別の一実施形態において、カチオンに対するリンのモル比は約t/2〜約tであり、式中、tはカチオンの電荷である。
【0058】
この触媒は、ケイ酸塩、アルミン酸塩、炭素、金属酸化物、及びこれらの混合物を含む材料で構成される不活性担持体を含み得る。あるいは、この担体は、触媒に接触する予定の反応混合物に対して不活性である。本明細書に明示的に記述される反応に関連して、一実施形態において、この担体は低表面積のシリカ又はジルコニアである。担体が存在する場合、これは、触媒の合計重量に対して約5重量%〜約98重量%の量を呈する。一般に、不活性担持体を含む触媒は、2つの代表的な方法である含浸又は共沈のうち一方によって製造することができる。含浸方法においては、固体不活性担持体の懸濁液を、プレ触媒の溶液で処理し、結果として得られた物質を、プレ触媒からより活性の状態へと転化する条件下で活性化する。共沈方法においては、触媒成分の均一な溶液が、付加構成成分の添加により沈殿される。
【0059】
III触媒調製方法
一実施形態において、触媒を調製する方法には、少なくとも2つの異なるリン含有化合物を混合及び加熱する工程が含まれ、前記各化合物は、式(IV)〜(XXV):
【0060】
【表8】
の1つによって記述されるか、又は前記式の任意の水和物であり、式中、MIは一価カチオン、MIIは二価カチオン、MIIIは三価カチオン、MIVは四価カチオンであり、yは0、1、2、又は3であり、zは0、1、2、3、又は4であり、vは0、1、又は2であり、wは0又は任意の正の整数であり、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、及びlは任意の正の整数であり、等式:2a=b+3c、3d=e+3f、i=2g+h、かつl=3j+kが満たされる。
【0061】
一実施形態において、この触媒は、式(IV)の1つ又は複数のリン含有化合物(式中、yは1)と、式(V)の1つ又は複数のリン含有化合物(式中、yは2)とを混合及び加熱することによって調製される。別の一実施形態において、この触媒は、MI2PO4とMIIHPO4とを混合及び加熱することによって調製される。一実施形態において、MIはK+、MIIはCa2+であり、すなわち、この触媒はKH2PO4とCaHPO4とを混合及び加熱することによって調製され、あるいは、MIはK、MIIはBa2+であり、すなわち、この触媒はKH2PO4とBaHPO4とを混合及び加熱することによって調製される。
【0062】
一実施形態において、この触媒は、式(IV)の1つ又は複数のリン含有化合物(式中、yは1)と、式(XV)の1つ又は複数のリン含有化合物(式中、vは2)とを混合及び加熱することによって調製される。別の一実施形態において、この触媒は、MI2PO4とMII227とを混合及び加熱することによって調製される。一実施形態において、MIはK+、MIIはCa2+であり、すなわち、この触媒はKH2PO4とCa227とを混合及び加熱することによって調製され、あるいは、MIはK+、MIIはBa2+であり、すなわち、この触媒はKH2PO4とBa227とを混合及び加熱することによって調製される。
【0063】
別の一実施形態において、触媒中のカチオンに対するリンのモル比は、約0.7〜約1.7であり、別の一実施形態において、触媒中のカチオンに対するリンのモル比は、約0.8〜約1.3であり、更に別の一実施形態において、触媒中のカチオンに対するリンのモル比は、約1である。
【0064】
別の一実施形態において、触媒を調製する方法には、(a)少なくとも1つのリン含有化合物混合であって、前記各化合物は、式(IV)〜(XXV):
【0065】
【表9】
の1つによって記述されるか、又は前記式の任意の水和物であり、式中、yは0、1、2、又は3であり、zは0、1、2、3、又は4であり、vは0、1、又は2であり、wは0又は任意の正の整数であり、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、及びlは任意の正の整数であり、等式:2a=b+3c、3d=e+3f、i=2g+h、かつl=3j+kが満たされる、リン含有化合物混合と、(b)少なくとも1つの、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、金属酸化物、塩化物塩、硫酸塩、及び金属水酸化物からなる群から選択される非リン含有化合物であって、前記各化合物は式(XXVI)〜(XL):
【0066】
【表10】
の1つによって記述されるか、又は前記式の任意の水和物である、非リン含有化合物と、を混合及び加熱することが含まれる。別の一実施形態において、この非リン含有化合物は、カルボン酸誘導体塩、ハロゲン化物塩、金属アセチルアセトナート、及び金属アルコキシドからなる群から選択され得る。
【0067】
本発明の一実施形態において、触媒中のカチオンに対するリンのモル比は、約0.7〜約1.7であり、別の一実施形態において、触媒中のカチオンに対するリンのモル比は、約0.8〜約1.3であり、更に別の一実施形態において、触媒中のカチオンに対するリンのモル比は、約1である。
【0068】
本発明の更に別の一実施形態において、この触媒は、式(IV)〜(XXV)の1つ又は複数のリン含有化合物又はその水和物と、式(XXVI)〜(XXVIII)の1つ又は複数の硝酸塩又はその水和物とを、混合及び加熱することによって調製される。本発明の更に別の一実施形態において、この触媒は、式(IV)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(XXVII)の1つ又は複数の硝酸塩とを、混合及び加熱することによって調製される。本発明の更なる一実施形態において、この触媒は、式(IV)のリン含有化合物(式中、yは2)及び式(IV)のリン含有化合物(式中、yは0、すなわちリン酸)、並びに、式(XXVII)の硝酸塩を混合及び加熱することによって調製される。本発明の更なる別の一実施形態において、この触媒は、K2HPO4、H3PO4、及びBa(NO32を混合及び加熱することによって調製される。更に別の一実施形態において、この触媒は、K2HPO4、H3PO4、及びCa(NO32を混合及び加熱することによって調製される。
【0069】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(XXVIII)の1つ又は複数の硝酸塩とを混合及び加熱することによって調製される。本発明の更なる一実施形態において、この触媒は、式(IV)のリン含有化合物(式中、yは2)及び式(IV)のリン含有化合物(式中、yは0、すなわちリン酸)、並びに、式(XXVIII)の硝酸塩を混合及び加熱することによって調製される。本発明の更なる別の一実施形態において、この触媒は、K2HPO4、H3PO4、及びMn(NO32・4H2Oを混合及び加熱することによって調製される。
【0070】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(V)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(XXVI)の1つ又は複数の硝酸塩とを混合及び加熱することによって調製される。本発明の別の一実施形態において、この触媒は、式(V)のリン含有化合物(式中、yは2)及び式(V)のリン含有化合物(式中、yは0、すなわちリン酸)、並びに、式(XXVI)の硝酸塩を混合及び加熱することによって調製される。本発明の更なる別の一実施形態において、この触媒は、BaHPO4、H3PO4、及びKNO3を混合及び加熱することによって調製される。別の一実施形態において、この触媒は、CaHPO4、H3PO4、及びKNO3を混合及び加熱することによって調製される。
【0071】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(V)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(XV)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(XXVI)の1つ又は複数の硝酸塩とを混合及び加熱することによって調製される。本発明の更に別の一実施形態において、この触媒は、式(V)のリン含有化合物(式中、yは0、すなわちリン酸)と、式(XV)のリン含有化合物(式中、vは2)と、式(XXVI)の硝酸塩とを混合及び加熱することによって調製される。本発明の更に別の一実施形態において、この触媒は、H3PO4、Ca227、及びKNO3を混合及び加熱することによって調製される。更に別の一実施形態において、この触媒は、H3PO4、Ba227、及びKNO3を混合及び加熱することによって調製される。
【0072】
本発明の更に別の一実施形態において、この触媒は、式(VI)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(XXVI)の1つ又は複数の硝酸塩とを混合及び加熱することによって調製される。本発明の別の一実施形態において、この触媒は、式(VI)のリン含有化合物(式中、yは3)及び式(VI)のリン含有化合物(式中、yは0、すなわちリン酸)、並びに、式(XXVI)の硝酸塩を混合及び加熱することによって調製される。本発明の更なる別の一実施形態において、この触媒は、MnPO4・qH2O、H3PO4、及びKNO3を混合及び加熱することによって調製される。
【0073】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(IX)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(XXVII)の1つ又は複数の硝酸塩とを混合及び加熱することによって調製される。本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)リン含有化合物(式中、yは2)と、式(IV)のリン含有化合物(式中、yは0、すなわちリン酸)と、式(IX)のリン含有化合物(式中、aは2、bは1、及びcは1)と、式(XXVII)の硝酸塩とを混合及び加熱することによって調製される。本発明の更なる別の一実施形態において、この触媒は、K2HPO4、H3PO4、Cu2(OH)PO4、及びBa(NO32を混合及び加熱することによって調製される。
【0074】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(V)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(IX)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(XXVI)の1つ又は複数の硝酸塩とを混合及び加熱することによって調製される。本発明の一実施形態において、この触媒は、式(V)のリン含有化合物(式中、yは3)と、式(V)のリン含有化合物(式中、yは0、すなわちリン酸)と、式(IX)のリン含有化合物(式中、aは2、bは1、及びcは1)と、式(XXVI)の硝酸塩とを混合及び加熱することによって調製される。更に別の一実施形態において、この触媒は、Ba3(PO42、H3PO4、Cu2(OH)PO4、及びKNO3を混合及び加熱することによって調製される。
【0075】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)〜(XXV)の1つによって記述される1つ又は複数のリン含有化合物又はその任意の水和物と、式(XXIX)〜(XXXI)の1つによって記述される1つ又は複数の炭酸塩又はその任意の水和物とを、混合及び加熱することによって調製される。
【0076】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)〜(XXV)の1つによって記述される1つ又は複数のリン含有化合物又はその任意の水和物と、式(XXXII)〜(XXXV)の1つによって記述される1つ又は複数の酢酸塩、又はその他の有機酸誘導塩、又は任意の水和物とを、混合及び加熱することによって調製される。
【0077】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)〜(XXV)の1つによって記述される1つ又は複数のリン含有化合物又はその任意の水和物と、式(XXXVI)〜(XXXIX)の1つによって記述される1つ又は複数の金属酸化物酸塩又はその任意の水和物とを、混合及び加熱することによって調製される。
【0078】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)〜(XXV)の1つによって記述される1つ又は複数のリン含有化合物又はその任意の水和物と、式(XXXX)〜(XXXXIII)の1つによって記述される1つ又は複数の塩化物、又はその他のハロゲン化物、又は任意の水和物とを、混合及び加熱することによって調製される。
【0079】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)〜(XXV)の1つによって記述される1つ又は複数のリン含有化合物又はその任意の水和物と、式(XXXXIV)〜(XXXXVII)の1つによって記述される1つ又は複数の硫酸塩又はその任意の水和物とを、混合及び加熱することによって調製される。
【0080】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)〜(XXV)の1つによって記述される1つ又は複数のリン含有化合物又はその任意の水和物と、式(XXXXVIII)〜(XL)の1つによって記述される1つ又は複数の水酸化物又はその任意の水和物とを、混合及び加熱することによって調製される。
【0081】
本発明の一実施形態において、この触媒は、式(IV)〜(XXV)の1つ又は複数のリン含有化合物と、式(XXVI)〜(XL)の2つ以上の非リン含有化合物又はその任意の水和物とを、混合及び加熱することによって調製される。
【0082】
一実施形態において、カチオンに対するリンのモル比(すなわち、MI+MII+MIII+...)は、約0.7〜約1.7であり、別の一実施形態において、カチオンに対するリンのモル比(すなわち、MI+MII+MIII+...)は約0.8〜約1.3であり、更に別の一実施形態において、カチオンに対するリンのモル比(すなわち、MI+MII+MIII+...)は約1である。例えば、触媒がカリウム(K+)とバリウム(Ba2+)を含む一実施形態において、リンとこれら金属(K+Ba)との間のモル比は、約0.7〜約1.7であり、別の一実施形態において、リンとこれら金属(K+Ba)との間のモル比は、約1である。
【0083】
触媒がカチオンを異なる2種類のカチオンのみ含む場合、カチオン間のモル比は、一実施形態において、約1:50〜約50:1であり、別の一実施形態において、カチオン間のモル比は約1:4〜約4:1である。例えば、触媒がカリウム(K+)とバリウム(Ba2+)を含む場合、それらの間のモル比(K:Ba)は、一実施形態において、約1:4〜約4:1である。また、この触媒がK2HPO4、Ba(NO32、及びH3PO4を混合及び加熱することによって調製されるとき、別の一実施形態において、カリウムとバリウムは、K:Baのモル比が約2:3〜約1:1で存在する。
【0084】
一実施形態において、この触媒は、ケイ酸塩、アルミン酸塩、炭素、金属酸化物、及びこれらの混合物を含む材料で構成される不活性担持体を含み得る。あるいは、この担体は、触媒に接触する予定の反応混合物に対して不活性である。別の一実施形態において、触媒を調製する方法は、リン含有化合物を混合及び加熱する工程の前、その工程の間、又はその工程の後に、不活性担持体をこの触媒と混合することを更に含み、この不活性担持体には、ケイ酸塩、アルミン酸塩、炭素、金属酸化物、及びこれらの混合物が挙げられる。更に別の一実施形態において、触媒を調製する方法は、リン含有化合物と非リン酸含有化合物とを混合及び加熱する工程の前、その工程の間、又はその工程の後に、不活性担体をこの触媒と混合することを更に含み、この不活性担持体には、ケイ酸塩、アルミン酸塩、炭素、金属酸化物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0085】
触媒の、リン含有化合物の混合、又はリン含有化合物と非リン含有化合物との混合は、当業者に周知の任意の方法によって実施することができ、これには、例えば固体混合と共沈が挙げられるがこれらに限定されない。固体混合方法においては、様々な構成成分が、当業者に周知の任意の方法を用いて、所望による粉砕工程を伴って物理的に混合され、この方法には例えば、剪断、伸展、捏和、押出、及びその他の方法が挙げられるがこれらに限定されない。共沈方法においては、1つ又は複数のリン酸塩化合物を含む様々な構成成分の水溶液又は懸濁液が調製され、次いで所望による濾過と加熱によって、溶媒及び揮発性物質(例えば水、硝酸、二酸化炭素、アンモニア、又は酢酸)が除去される。この加熱は通常、当業者に周知の任意の方法を用いて行われ、これには例えば、対流、伝導、放射、マイクロ波加熱、及びその他の方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
本発明の一実施形態において、この触媒は焼成される。焼成は、化学反応及び/又は熱分解及び/又は相転移及び/又は揮発性物質の除去を可能にするプロセスである。焼成プロセスは、当業者に周知の任意の装置で実施することができ、これには例えば、直立炉、ロータリーキルン、炉床炉、及び流動層反応器を含む様々な設計の炉若しくは反応器が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態においては、焼成温度は約200℃から約1200℃であり、更に別の一実施形態においては、焼成温度は約250℃から約900℃であり、更に別の一実施形態においては、焼成温度は約300℃から600℃である。焼成時間は、一実施形態において、約1時間から約72時間である。
【0087】
粒子を細分して離散した粒径にし、粒径分布を測定するには、数多くの方法及び機械が当業者に周知であるが、篩い分けは、最も容易で最も安価であり、一般的な方法の1つである。粒子の粒径分布を測定する別の方法は、光分散によるものである。焼成の後、この触媒は、一実施形態において、粉砕され篩い分けを行って、より均一な生成物を得る。触媒粒子の粒径分布は、一実施形態において、約3未満の粒径スパンを含み、別の一実施形態において、触媒粒子の粒径分布が約2未満の粒径スパンを含み、更に別の一実施形態において、触媒粒子の粒径分布が約1.5未満の粒径スパンを含む。本発明の別の一実施形態において、この触媒は、約50μm〜約500μmの中央粒径に篩い分けられる。本発明の別の一実施形態において、この触媒は、約100μm〜約200μmの中央粒径に篩い分けられる。
【0088】
別の一実施形態において、この触媒は、次の工程を含む方法によって調製される:(a)リン含有化合物、硝酸塩、リン酸、及び水を合わせて湿潤混合物を形成する工程で、このリン含有化合物及びこの硝酸塩の両方に含まれるリンとカチオンとの間のモル比は約1である工程、(b)この湿潤混合物を約50℃、約80℃、約120℃、及び約450℃〜550℃に段階的に焼成して、乾燥固体を生成する工程、並びに(c)前記乾燥固体を粉砕し篩い分けを行って、約100μm〜約200μmとし、前記触媒を生成する工程。
【0089】
別の一実施形態において、この触媒は、次の工程:(a)MnPO4・qH2O、KNO3、及びH3PO4をモル比約0.3:1:1で無水ベースに合わせて、次に水を加えて湿潤混合物とする工程、(b)前記湿潤混合物を約50℃、約80℃、約120℃、及び約450℃〜550℃に段階的に焼成して、乾燥固体を生成する工程、並びに(c)前記乾燥固体を粉砕し篩い分けを行って、約100μm〜約200μmとし、前記触媒を生成する工程、を含む方法によって調製される。
【0090】
別の一実施形態において、この触媒は、次の工程:(a)Ca227、KNO3、及びH3PO4をモル比約1.6:1:1で混合し、次に水を加えて湿潤混合物とする工程、(b)前記湿潤混合物を約50℃、約80℃、約120℃、及び約450℃〜550℃に段階的に焼成して、乾燥固体を生成する工程、並びに(c)前記乾燥固体を粉砕し篩い分けを行って、約100μm〜約200μmとし、前記触媒を生成する工程、を含む方法によって調製される。
【0091】
別の一実施形態において、この触媒は、次の工程:(a)リン含有化合物、硝酸塩、リン酸、及び水を合わせて湿潤混合物を形成する工程で、このリン含有化合物及びこの硝酸塩の両方に含まれるリンとカチオンとの間のモル比は約1である工程、(b)前記湿潤混合物を撹拌しながら約80℃に加熱してほぼ乾燥させ、湿潤固体を形成する工程、(c)前記湿潤混合物を約50℃、約80℃、約120℃、及び約450℃〜550℃に段階的に焼成して、乾燥固体を生成する工程、並びに(d)前記乾燥固体を粉砕し篩い分けを行って、約100μm〜約200μmとし、前記触媒を生成する工程、を含む方法によって調製される。
【0092】
別の一実施形態において、この触媒は、次の工程:(a)Ba(NO32、K2HPO4、及びH3PO4をモル比約3:1:4で合わせ、次に水を加えて湿潤混合物とする工程、(b)前記湿潤化合物を撹拌しながら約80℃に加熱してほぼ乾燥させ、湿潤固体を形成する工程、(c)前記湿潤混合物を約50℃、約80℃、約120℃、及び約450℃〜550℃に段階的に焼成して、乾燥固体を生成する工程、並びに(d)前記乾燥固体を粉砕し篩い分けを行って、約100μm〜約200μmとし、前記触媒を生成する工程、を含む方法によって調製される。
【0093】
別の一実施形態において、この触媒は、次の工程:(a)Mn(NO32・4H2O、K2HPO4、及びH3PO4をモル比約1:1.5:2で合わせ、次に水を加えて湿潤混合物とする工程、(b)前記湿潤化合物を撹拌しながら約80℃に加熱してほぼ乾燥させ、湿潤固体を形成する工程、(c)前記湿潤混合物を約50℃、約80℃、約120℃、及び約450℃〜550℃に段階的に焼成して、乾燥固体を生成する工程、並びに(d)この乾燥固体を粉砕し篩い分けを行って、約100μm〜約200μmとし、この触媒を生成する工程、を含む方法によって調製される。
【0094】
別の一実施形態において、この触媒は、次の工程:(a)Ca227とKH2PO4をモル比約3:1で合わせて固体混合物とする工程、並びに(b)前記固体混合物を約50℃、約80℃、約120℃、及び約450℃〜550℃に段階的に焼成して、前記触媒を生成する工程、を含む方法によって調製される。
【0095】
焼成と、所望による粉砕及び篩い分けの後、この触媒を、いくつかの化学反応の触媒に利用することができる。反応の非限定的な例としては、ヒドロキシプロピオン酸からアクリル酸への脱水反応(詳しくは後述される)、グリセリンからアクロレインへの脱水反応、脂肪族アルコールからアルケン又はオレフィンへの脱水反応、脂肪族アルコールからエーテルへの脱水素反応、その他の脱水素反応、加水分解、アルキル化、脱アルキル化、酸化、不均化、エステル化、環化、異性化、縮合、芳香化、重合及び当業者に周知であり得るその他の反応が挙げられる。
【0096】
IVアクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物の製造方法
ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を脱水反応してアクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物とする方法が提示される。この方法には、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームを、(a)以下の式(I)、(II)、及び(III):
【0097】
【表11】
(式中、nは少なくとも2であり、mは少なくとも1である)からなる群から選択される少なくとも1つの縮合リン酸アニオンと、(b)少なくとも2つの異なるカチオンと、を含む触媒に接触させる工程を含み、該触媒は、本質的に中性帯電し、この少なくとも2つの異なるカチオンに対するリンのモル比が、約0.7〜約1.7であり、これにより、前記ストリームをこの触媒に接触させた結果として、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物が生成される。
【0098】
別の触媒は、非リン含有アニオン、ヘテロポリアニオン、及びリン酸塩付加物からなる群から選択されるアニオンと、少なくとも2つの異なるカチオンとを含み、この触媒は本質的に中性帯電し、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を脱水反応してアクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物に転化するのに利用できる。非リン含有アニオンの非限定的な例には、ヒ素酸塩、縮合ヒ素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、バナジウム酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、セレン酸塩、及びその他、当業者に周知であり得るものが挙げられる。ヘテロポリアニオンの非限定的な例には、例えばヒ素酸リン酸塩、ホスホアルミン酸塩、ホスホホウ酸塩、ホスホクロム酸塩(phosphocromates)、ホスホモリブデン酸、ホスホケイ酸塩、ホスホ硫酸塩、ホスホタングステン酸、及びその他、当業者に周知であり得るものが挙げられる。リン酸塩付加物の非限定的な例には、テルル酸、ハロゲン化物、ホウ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、クロム酸塩、ケイ酸塩、シュウ酸塩、これらの混合物、並びに当業者に周知であり得るその他ものが挙げられる。
【0099】
ヒドロキシプロピオン酸は、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸とも呼ばれる)、又はこれらの混合物であり得る。一実施形態において、このヒドロキシプロピオン酸は乳酸である。ヒドロキシプロピオン酸の誘導体は、ヒドロキシプロピオン酸の金属塩又はアンモニウム塩、ヒドロキシプロピオン酸のアルキルエステル、ヒドロキシプロピオン酸オリゴマー、ヒドロキシプロピオン酸の環状ジエステル、無水ヒドロキシプロピオン酸、又はこれらの混合であり得る。ヒドロキシプロピオン酸の金属塩の非限定的な例には、ヒドロキシプロピオン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピオン酸カリウム、及びヒドロキシプロピオン酸カルシウムが挙げられる。ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステルの非限定的な例には、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、又はこれらの混合物が挙げられる。ヒドロキシプロピオン酸の環状ジエステルの非限定的な例には、ジラクチドが挙げられる。
【0100】
アクリル酸誘導体は、アクリル酸の金属塩若しくはアンモニウム塩、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸オリゴマー、又はそれらの混合物であり得る。アクリル酸の金属塩の非限定的な例には、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、及びアクリル酸カルシウムが挙げられる。アクリル酸アルキルエステルの非限定的な例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0101】
ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームには、液体ストリームと不活性ガス(すなわち、本方法の条件下で反応混合物に対して不活性なガス)が含まれてよく、これは、ストリームをガス状にするために触媒反応器の上流の蒸発容器に、別々に又は一緒に供給することができる。液体ストリームには、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物と、希釈剤とが含まれ得る。希釈剤の非限定的な例には、水、メタノール、エタノール、アセトン、C3〜C8直鎖又は分枝状アルコール、C5〜C8直鎖又は分枝状アルカン、酢酸エチル、不揮発性エーテル(ジフェニルエーテルを含む)及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、この希釈剤は水である。特定の実施形態において、この液体ストリームは、乳酸水溶液、あるいは、ラクチド、乳酸オリゴマー、乳酸塩、及び乳酸アルキルからなる群から選択される乳酸又は乳酸誘導体の水溶液を含む。一実施形態において、この液体ストリームは、液体ストリームの合計重量に基づいて、約2重量%〜約95重量%の乳酸又は乳酸誘導体を含む。別の一実施形態において、この液体ストリームは、液体ストリームの合計重量に基づいて、約5重量%〜約50重量%の乳酸又は乳酸誘導体を含む。別の一実施形態において、この液体ストリームは、液体ストリームの合計重量に基づいて、約10重量%〜約25重量%の乳酸又は乳酸誘導体を含む。別の一実施形態において、この液体ストリームは、液体ストリームの合計重量に基づいて、約20重量%の乳酸又は乳酸誘導体を含む。別の一実施形態において、この液体ストリームは、乳酸誘導体を伴う乳酸の水溶液を含む。別の一実施形態において、この液体ストリームは、液体ストリームの合計重量に基づいて、約30重量%未満の乳酸誘導体を含む。別の一実施形態において、この液体ストリームは、液体ストリームの合計重量に基づいて、約10重量%未満の乳酸誘導体を含む。更に別の一実施形態において、この液体ストリームは、液体ストリームの合計重量に基づいて、約5重量%未満の乳酸誘導体を含む。
【0102】
不活性ガスとは、本方法の条件下で反応混合物に対して不活性のガスである。不活性ガスの非限定的な例には、窒素、空気、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、この不活性ガスは窒素である。
【0103】
ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームは、触媒に接触する際にガス状混合物の形態であり得る。一実施形態において、前記ストリームの合計モル数に基づいてヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の濃度(STP条件下で計算)は、約0.5mol%〜約50mol%である。別の一実施形態において、前記ストリームの合計モル数に基づいてヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の濃度(STP条件下で計算)は、約1mol%〜約10mol%である。別の一実施形態において、前記ストリームの合計モル数に基づいてヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の濃度(STP条件下で計算)は、約1.5mol%〜約3.5mol%である。更に別の一実施形態において、前記ストリームの合計モル数に基づいてヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の濃度(STP条件下で計算)は、約2.5mol%である。一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含む前記ストリームが触媒と接触する温度は、約120℃から約700℃の間である。別の一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含む前記ストリームが触媒と接触する温度は、約150℃から約500℃の間である。別の一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含む前記ストリームが触媒と接触する温度は、約300℃から約450℃の間である。更に別の一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含む前記ストリームが触媒と接触する温度は、約325℃から約400℃の間である。一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームは、触媒に、約720h-1〜約36,000h-1のGHSVで接触する。別の一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームは、触媒に、約1,800h-1〜約7,200h-1のGHSVで接触する。別の一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームは、触媒に、約3,600h-1のGHSVで接触する。
【0104】
一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームは、触媒に、約0Pa(0psig)〜約3792kPa(550psig)の圧力で接触する。別の一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームは、触媒に、約2482kPa(360psig)の圧力で接触する。
【0105】
一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームは、石英、ホウケイ酸ガラス、ケイ素、ハステロイ、インコネル、人造サファイア、ステンレス鋼、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む内側表面を有する反応器内で、触媒に接触する。別の一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームは、石英又はホウケイ酸ガラスからなる群から選択される材料を含む内側表面を有する反応器内で、触媒に接触する。別の一実施形態において、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むストリームは、ホウケイ酸ガラスを含む内側表面を有する反応器内で、触媒に接触する。
【0106】
一実施形態において、この方法は、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を少なくとも50%の収率で製造するのに十分な条件下で、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むガス状混合物に触媒を接触させる工程を含む。別の一実施形態において、この方法は、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を少なくとも約70%の収率で製造するのに十分な条件下で、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むガス状混合物に触媒を接触させる工程を含む。別の一実施形態において、この方法は、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を少なくとも約80%の収率で製造するのに十分な条件下で、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物を含むガス状混合物に触媒を接触させる工程を含む。別の一実施形態において、この方法の条件は、少なくとも約50%の選択率で、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を生成するのに十分である。別の一実施形態において、この方法の条件は、少なくとも約70%の選択率で、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を生成するのに十分である。別の一実施形態において、この方法の条件は、少なくとも約80%の選択率で、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を生成するのに十分である。別の一実施形態において、この方法の条件は、不純物としてプロパン酸を伴い、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を生成するのに十分であり、プロパン酸の選択率は約5%未満である。別の一実施形態において、この方法の条件は、不純物としてプロパン酸を伴い、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を生成するのに十分であり、プロパン酸の選択率は約1%未満である。別の一実施形態において、この方法の条件は、前記ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の転化率が約50%以上で、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を生成するのに十分である。別の一実施形態において、この方法の条件は、前記ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸誘導体、又はその混合物の転化率が約80%以上で、アクリル酸、アクリル酸誘導体、又はその混合物を生成するのに十分である。
【0107】
上述の実施形態によって達成可能な利点の1つが、副生成物の低収率である。一実施形態において、この条件は、ガス状混合物中に存在する乳酸から約6%未満の収率でプロピオン酸を生成するのに十分である。別の一実施形態において、この条件は、ガス状混合物中に存在する乳酸から約1%未満の収率でプロピオン酸を生成するのに十分である。一実施形態において、この条件は、ガスストリーム中に存在する乳酸から約2%未満の収率で酢酸、ピルビン酸、1,2−プロパンジオール、及び2,3−ペンタンジオンを生成するのに十分である。別の一実施形態において、この条件は、ガスストリーム中に存在する乳酸から約0.5%未満の収率で酢酸、ピルビン酸、1,2−プロパンジオール、及び2,3−ペンタンジオンを生成するのに十分である。一実施形態において、この条件は、ガス状混合物中に存在する乳酸から約8%未満の収率でアセトアルデヒドを生成するのに十分である。別の一実施形態において、この条件は、ガス状混合物中に存在する乳酸から約4%未満の収率でアセトアルデヒドを生成するのに十分である。別の一実施形態において、この条件は、ガス状混合物中に存在する乳酸から約3%未満の収率でアセトアルデヒドを生成するのに十分である。これらの収率は、以前は、達成不可能な低さであると考えられていたものである。しかし、これらの利益は、下記の実施例において更に実証されているように、実際に達成可能である。
【0108】
グリセリンを脱水反応してアクロレインとする方法が提示される。この方法には、ストリームを含むグリセリンを、以下の(a)式(I)、(II)、及び(III):
【0109】
【表12】
(式中、nは少なくとも2であり、mは少なくとも1である)からなる群から選択される少なくとも1つの縮合リン酸アニオンと、(b)少なくとも2つの異なるカチオンと、を含む触媒に、接触させる工程が含まれ、この少なくとも2つの異なるカチオンに対するリンのモル比は、約0.7〜約1.7であり、これにより前記グリセリンを触媒に接触させた結果として、アクロレインが生成される。アクロレインは中間体であり、中間体は、プロピレンをアクリル酸に転化するプロセスにおける第2酸化工程で今日使用されているのと類似の条件を用いて、アクリル酸に転化させることができる。
【実施例】
【0110】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、発明の範囲を制限することを意図したものではない。実施例1〜7は、上述の様々な実施形態に従って、異なる混合縮合リン酸塩触媒の調製について記述している。実施例8〜12は、本発明によらない触媒の調製について記述している。
【0111】
(実施例1)
硝酸バリウムBa(NO32水溶液(0.08g/mLストック溶液を85.36mL、26mmol、99.999%、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号202754)を、室温で、固体のリン酸水素二カリウムK2HPO4(1.52g、8.7mmol、≧98%、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号P3786)に加えた。リン酸H3PO4(85重量%を2.45mL、密度=1.684g/mL、36mmol、Acros Organics(Geel、Belgium)、カタログ番号295700010)をこのスラリーに加え、カリウム(K+、MI)カチオンとバリウム(Ba2+、MII)カチオンを含む溶液を得た。この懸濁液の最終pHは1.6であった。この酸含有懸濁液を、液体が蒸発し物質がほぼ完全に乾燥状態になるまで、懸濁液を磁気的に撹拌しながら、加熱板を用いて80℃でガラスビーカー内でゆっくりと乾燥させた。蒸発後、この物質を押しつぶせるセラミックルツボに移した。空気循環炉(N30/80 HA、Nabertherm GmbH(Lilienthal、Germany))内で50℃で10時間加熱を続け、次いで80℃で10時間(勾配0.5℃/分)、120℃で2時間(勾配0.5℃/分)加熱して残留水分を除去し、次に450℃で4時間(勾配2℃/分)焼成した。焼成後、この材料を、100℃以下になるまで炉内で自然に冷ましてから、炉から取り出した。最後に、この触媒を粉砕し、約100μm〜約200μmに篩い分けを行った。この材料を、X線回折(XRD)と、走査型電子顕微鏡付きエネルギー分散分光法(EDS/SEM)で分析し、σ−Ba227、α−Ba3413、Ba(NO32、及びBa含有相内にKが組み込まれた状態のKPO3の同定を行った。同定された縮合リン酸塩中のリン(P)とカチオン(MI及びMII)のモル比は、約1〜約1.3であった。
【0112】
(実施例2)
固体のリン酸水素二カリウムK2HPO4(36.40g、209mmol、≧98%、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号P3786)を、室温で、硝酸バリウムBa(NO32水溶液(0.08g/mLストック溶液を2050mL、627mmol、99.999%、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号202754)に手早く混合した。リン酸H3PO4(85重量%を58.7mL、密度=1.684g/mL、857mmol、Acros Organics(Geel、Belgium)、カタログ番号295700010)をこのスラリーに加え、カリウム(K+、MI)カチオンとバリウム(Ba2+、MII)カチオンを含む溶液を得た。この懸濁液の最終pHは1.6であった。この酸含有懸濁液を、液体が蒸発し物質がほぼ完全に乾燥状態になるまで、懸濁液を磁気的に撹拌しながら、加熱板を用いて80℃でガラスビーカー内でゆっくりと乾燥させた。空気循環炉(G1530A、HP6890 GC、Agilent Corp.(Santa Clara、CA))内で50℃で5.3時間加熱し、次に80℃で10時間加熱し(勾配0.5℃/分)、その後25℃で冷ました。この材料を、同じ炉を使って、120℃で2時間(勾配0.5℃/分)、次いで450℃で4時間(勾配2℃/分)焼成した。焼成後、この材料を、25℃以下になるまで炉内で自然に冷ましてから、炉から取り出した。最後に、この触媒を粉砕し、約100μm〜約200μmに篩い分けを行った。この材料を、XRDと、EDS/SEMで分析し、σ−Ba227、α−Ba3413、Ba(NO32、KPO3、及びBa含有相内にKが組み込まれた状態のアモルファス材料の同定を行った。同定された縮合リン酸塩中のリン(P)のカチオン(MI及びMII)に対するモル比は約1〜約1.3であった。
【0113】
(実施例3)
硝酸カリウムKNO3水溶液(1g/mLストック溶液を1.51mL、14.9mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号60415)を、室温で、二リン酸カルシウムCa227(5.93g、23.3mmol、Alfa Aesar(Ward Hill、MA)、カタログ番号89836)に加えた。リン酸H3PO4(85重量%を1.05mL、密度=1.684g/mL、15.3mmol、Acros Organics(Geel、Belgium)、カタログ番号201140010)をこのスラリーに加え、カリウム(K+、MI)カチオンとカルシウム(Ca2+、MII)カチオンを含む懸濁液を得た。この材料を空気循環炉(N30/80 HA、Nabertherm GmbH(Lilienthal、Germany))内で50℃で2時間加熱し、次いで80℃で10時間(勾配0.5℃/分)、120℃で2時間(勾配0.5℃/分)加熱して残留水分を除去し、更に450℃で4時間(勾配2℃/分)焼成した。焼成後、この材料を、100℃以下になるまで炉内で自然に冷ましてから、炉から取り出した。最後に、この触媒を粉砕し、約100μm〜約200μmに篩い分けを行った。この材料をXRDで分析し、β−Ca227とKPO3の同定を行った。これらの縮合リン酸塩中のリン(P)とカチオン(MI及びMII)のモル比は、約1であった。
【0114】
(実施例4)
二リン酸カルシウムCa227(5.93g、23.3mmol、Alfa Aesar(Ward Hill、MA)、カタログ番号89836)、及びリン酸二水素カリウムKH2PO4(1.08g、7.9mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号60216)(これはあらかじめ約100μm〜約200μmに篩い分けを行った)を、ローラーベンチ内のガラス瓶中で5分間混合し、カリウム(K+、MI)カチオンとカルシウム(Ca2+、MII)カチオンを含む固体混合物を得た。この材料を空気循環炉(N30/80 HA、Nabertherm GmbH(Lilienthal、Germany))内で50℃で2時間加熱し、次いで80℃で10時間(勾配0.5℃/分)、120℃で2時間(勾配0.5℃/分)加熱して残留水分を除去し、更に550℃で4時間(勾配2℃/分)焼成した。焼成後、この材料を、100℃以下になるまで炉内で自然に冷ましてから、炉から取り出した。この材料をXRDで分析し、β−Ca227とKPO3の同定を行った。これらの縮合リン酸塩中のリン(P)とカチオン(MI及びMII)のモル比は、約1であった。
【0115】
(実施例5)
硝酸マンガン(II)Mn(NO32・4H2Oの水溶液(0.3g/mLストック溶液を14.25mL、17.0mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号63547)を、室温で、リン酸水素二カリウムK2HPO4(4.45g、25.5mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号P3786)に加えた。リン酸H3PO4(85重量%を2.39mL、密度=1.684g/mL、34.9mmol、Acros Organics(Geel、Belgium)、カタログ番号201140010)をこのスラリーに加え、カリウム(K+、MI)カチオンとマンガン(Mn2+、MII)カチオンを含む懸濁液を得た。この材料を空気循環炉(N30/80 HA、Nabertherm GmbH(Lilienthal、Germany))内で50℃で2時間加熱し、次いで80℃で10時間(勾配0.5℃/分)、120℃で2時間(勾配0.5℃/分)加熱して残留水分を除去し、更に450℃で4時間(勾配2℃/分)焼成した。焼成後、この材料を、100℃以下になるまで炉内で自然に冷ましてから、炉から取り出した。最後に、この触媒を粉砕し、約100μm〜約200μmに篩い分けを行った。この材料をXRDで分析し、MnKP27とKPO3の同定を行った。これらの縮合リン酸塩中のリン(P)とカチオン(MI及びMII)のモル比は約1であった。
【0116】
(実施例6)
硝酸カリウムKNO3水溶液(1g/mLストック溶液を5.16mL、51.1mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号60415)を、室温で、リン酸マンガン(III)MnPO4・qH2O(2.58g、17.2mmolを無水ベースで合わせてAlfa Aesar(Ward Hill、MA)カタログ番号A17868)に加えた。リン酸H3PO4(85重量%を3.58mL、密度=1.684g/mL、52.4mmol、Acros Organics(Geel、Belgium)、カタログ番号295700010)をこのスラリーに加え、カリウム(K+、MI)カチオンとマンガン(Mn3+、MIII)カチオンを含む懸濁液を得た。この材料を空気循環炉(N30/80 HA、Nabertherm GmbH(Lilienthal、Germany))内で50℃で2時間加熱し、次いで80℃で10時間(勾配0.5℃/分)、120℃で2時間(勾配0.5℃/分)加熱して残留水分を除去し、更に550℃で4時間(勾配2℃/分)焼成した。焼成後、この材料を、100℃以下になるまで炉内で自然に冷ましてから、炉から取り出した。最後に、この触媒を粉砕し、約100μm〜約200μmに篩い分けを行った。この材料をXRDで分析し、MnKP27及びKPO3の同定を行った。これらの縮合リン酸塩中のリン(P)とカチオン(MI及びMII)のモル比は、約1であった。
【0117】
(実施例7)
Ba3(PO42の調製:リン酸ナトリウムNa3PO4(85.68g、523mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号342483)を580mLの脱イオン水に溶かし、濃縮水酸化アンモニウムを使ってpHを7に調節した。硝酸バリウムBa(NO32(121.07g、463mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO);カタログ番号202754)を1220mLの脱イオン水に溶かした。Ba(NO32溶液を、撹拌し60℃に加熱しながら滴下でNa3PO4溶液に加え、添加中に白色のスラリーを形成した。pHを継続的に監視し、濃縮水酸化アンモニウムを滴下で加えてpH 7を維持した。60℃で60分間加熱と撹拌を続けてから、固体を濾過し、脱イオン水で徹底的に洗った。この固体を2Lの脱イオン水中に懸濁させ、再び濾過し、脱イオン水で徹底的に洗った。換気付き炉で、この濾過ケークを120℃で5時間(勾配1℃/分)乾燥させ、次いで350℃で4時間(勾配2℃/分)焼成して、白色固体のBa3(PO42を得た。
【0118】
触媒の調製:硝酸カリウムKNO3水溶液(1g/mLストック溶液を0.68mL、6.8mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号60415)を室温で、上記で調製したリン酸バリウムBa3(PO42(4.07g、6.8mmol)に加えた。ヒドロキシリン酸銅(II)Cu2(OH)PO4(3.23g、13.5mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号344400)、及びリン酸H3PO4(85重量%を0.47mL、密度=1.684g/mL、6.9mmol、Acros Organics(Geel、Belgium)、カタログ番号201140010)を、このスラリーに加え、カリウム(K+、MI)、バリウム(Ba2+、MII)、及び銅(Cu2+、MII)カチオンを含む懸濁液を得た。この材料を空気循環炉(N30/80 HA、Nabertherm GmbH(Lilienthal、Germany))内で50℃で2時間加熱し、次いで80℃で10時間(勾配0.5℃/分)、120℃で2時間(勾配0.5℃/分)加熱して残留水分を除去し、更に550℃で4時間(勾配2℃/分)焼成した。焼成後、この材料を、100℃以下になるまで炉内で自然に冷ましてから、炉から取り出した。この材料をXRDで分析し、α−Ba227、KPO3、及び一部のアモルファス材料の同定を行った。これらの縮合リン酸塩中のリン(P)とカチオン(MI及びMII)のモル比は約1であった。
【0119】
(実施例8)(比較例)
比較目的のため、混合縮合リン酸塩触媒を調製し使用した。硝酸バリウムBa(NO32水溶液(0.08g/mLストック溶液を88.39mL、27mmol、99.999%、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号202754)を室温で、固体のリン酸水素二カリウムK2HPO4(1.57g、9.0mmol、≧98%、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号P3786)に加えた。リン酸H3PO4(85重量%を1.27mL、密度=1.684g/mL、19mmol、Acros Organics(Geel、Belgium)、カタログ番号295700010)をこのスラリーに加え、カリウム(K+、MI)カチオンとバリウム(Ba2+、MII)カチオンを含む懸濁液を得て、このリン(P)とカチオン(MI及びMII)のモル比が約0.6となるようにした。この酸含有スラリーを、液体が蒸発し物質がほぼ完全に乾燥状態になるまで、懸濁液を撹拌しながら、加熱板を用いて80℃でガラスビーカー内でゆっくりと乾燥させた。蒸発後、この物質を押しつぶせるセラミックルツボに移した。空気循環炉(N30/80 HA、Nabertherm GmbH(Lilienthal、Germany))内で50℃で2時間加熱を続け、次いで80℃で10時間(勾配0.5℃/分)、120℃で2時間(勾配0.5℃/分)加熱して残留水分を除去し、更に450℃で4時間(勾配2℃/分)焼成した。焼成後、この材料を、100℃以下になるまで炉内で自然に冷ましてから、炉から取り出した。最後に、この触媒を粉砕し、約100μm〜約200μmに篩い分けを行った。
【0120】
(実施例9)(比較例)
比較目的のため、混合縮合リン酸塩触媒を調製し使用した。硝酸バリウムBa(NO32水溶液(0.08g/mLストック溶液を88.39mL、27mmol、99.999%、Sigma−Aldrich Co.(St Louis、MO)、カタログ番号202754)を、室温で、固体のリン酸水素二カリウムK2HPO4(1.57g、9.0mmol、≧98%、Sigma−Aldrich Co.(St Louis、MO)カタログ番号P3786)に加えた。リン酸H3PO4(85重量%を5.06mL、密度=1.684g/mL、74mmol、Acros Organics(Geel、Belgium)、カタログ番号295700010)をこのスラリーに加え、カリウム(K+、MI)カチオンとバリウム(Ba2+、MII)カチオンを含む溶液を得て、このリン(P)とカチオン(MI及びMII)のモル比が約1.8となるようにした。この酸含有溶液を、液体が蒸発し物質がほぼ完全に乾燥状態になるまで、懸濁液を撹拌しながら、加熱板を用いて80℃でガラスビーカー内でゆっくりと乾燥させた。蒸発後、この物質を押しつぶせるセラミックルツボに移した。空気循環炉(N30/80 HA、Nabertherm GmbH(Lilienthal、Germany))内で50℃で2時間加熱を続け、次いで80℃で10時間(勾配0.5℃/分)、120℃で2時間(勾配0.5℃/分)加熱して残留水分を除去し、更に450℃で4時間(勾配2℃/分)焼成した。焼成後、この材料を、100℃以下になるまで炉内で自然に冷ましてから、炉から取り出した。最後に、この触媒を粉砕し、約100μm〜約200μmに篩い分けを行った。
【0121】
(実施例10)(比較例)
比較目的のため、本発明によらない、リン酸水素バリウム触媒を調製し使用した。リン酸水素アンモニウム(NH42HPO4(142.20g、1.08 mol、Aldrich(St Louis、MO)、カタログ番号215996)を、1Lの脱イオン水に溶かした。水酸化アンモニウム水溶液NH4OH(290mL、28〜29%、EMD、Merck KGaA(Darmstadt、Germany)、カタログ番号AX1303)をゆっくりと加え、溶解するまで静かに加熱して、リン酸アンモニウム溶液を形成した。別のビーカーに、酢酸バリウム(CH3COO)2Ba(285.43g、1.12mol、Aldrich(St Louis、MO)、カタログ番号243671)を1Lの脱イオン水に溶かして、酢酸バリウム溶液を形成した。この酢酸バリウム溶液をゆっくりとリン酸アンモニウム溶液に加えて、白色の沈殿を生成した。45分間撹拌した後、この白色固体を濾過した。次にこの固形物を、300mLの脱イオン水に入れて再懸濁させ、10分間撹拌し、再び濾過した。このプロセスを2回繰り返した。結果として得られた白色固体を、換気付き炉で一晩130℃で乾燥させた。この固体を約500μm〜710μmで篩い分けし、キルン内で500℃で4時間(勾配100℃/時間)焼成した。焼成後、この触媒のサンプルを約100μm〜約200μmで篩い分けを行った。この材料をXRDで分析し、Ba3(PO42の同定を行った。
【0122】
(実施例11)(比較例)
比較目的のため、本発明によらないニリン酸バリウム触媒を調製し使用した。リン酸水素バリウムBaHPO4(Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号31139)を、セラミックルツボを用い、自然対流炉内で、温度勾配2℃/分で、550℃で12時間焼成した。焼成後、乳鉢と乳棒を用いて触媒を粉砕し、約100μm〜約200μmで篩い分けを行った。この材料をXRDで分析し、α−Ba227の同定を行った。
【0123】
(実施例12)(比較例)
比較目的のため、本発明によらない四リン酸バリウム触媒を調製し使用した。リン酸水素バリウムBaHPO4(23.52g、100.8mmol、Sigma−Aldrich Co.(St Louis、MO)、カタログ番号31139)とリン酸水素二アンモニウム(NH42HPO4(4.44g、33.6mmol、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO)、カタログ番号379980)を混合し、乳鉢と乳棒で合わせて粉砕した。この固体材料を次に、自然対流炉内で、温度勾配2℃/分で、300℃で14時間焼成した。焼成後、この触媒を乳鉢と乳棒で再び粉砕し、次に以前と同じ温度勾配及び炉を用いて500℃で14時間焼成した。最後に、更に粉砕を行い、750℃で14時間焼成した。この触媒を、約100μm〜約200μmに篩い分けを行った。この材料をXRDで分析し、α−Ba3413の同定を行った。
【0124】
(実施例13)
本発明による触媒の活性を測定するための実験が実施された。具体的には、実施例1の記述に従って調製された触媒を、セクションVIに記載されている条件下で、反応時間21.6時間とした。この結果が下記の表2に報告されている。アクリル酸収率及び選択率は、TMBで補正されている。
【0125】
VI試験手順
XRD:STADI−P透過モード回折計(Stoe & Cie GmbH(Darmstadt、Germany))で、広角データ(WAXS)を収集した。発生器は、銅アノードロングファインフォーカス銅X線管を40kV/40mAで作動させて使用した。回折計には入射ビーム曲面ゲルマニウム結晶モノクロメーター、標準入射ビームスリットシステム、及び画像プレート位置感受性検出器(角度範囲約124°2θ)が組み込まれている。データは透過モードで収集された。サンプルは、必要に応じて、乳鉢と乳棒を用いて均一な微粉末に穏やかに粉砕してから、機器の標準サンプルホルダーに搭載した。Jade(Materials Data,Inc.v9.4.2)のSearch/Matchルーチンを使い、最新の粉末回折データベース(ICDD)を用いて、結晶相の同定が行われた。
【0126】
SEM/EDS:乾燥粉末を、銅又は炭素の両面テープに散布し、これを金属走査型電子顕微鏡(SEM)基板上に取り付けた。各検体を、Gatan Alto 2500 Cryo準備チャンバを用い、約65〜80sのAu/Pdでコーティングした。SEM画像&エネルギー分散分光法(EDS)マッピングは、Hitachi S−4700 FE−SEM又はHitachi S−5200インレンズFE−SEM(Hitachi Ltd.(日本・東京))のいずれかを用いて実施された(これらは両方とも、Bruker XFlash 30mm2 SDD検出器付きEDS(Quantax 2000システム、5030検出器付き、Bruker Corp.(Billerica、MA))を備えている)。EDSマッピングは、分析プローブ電流モードで加速電圧10kVを使用して実施された。マップは全て、Hypermapモジュール内でBruker Esprit V1.9ソフトウェアを使用して生成された。
【0127】
反応器−システムA(0.2mL規模の反応器):これらの転化の一部は、最大触媒床体積約0.2mLのフロー型反応器システム内で実施された。このシステムは、温度コントローラー及びマスフローコントローラーを含み、別個の液体供給とガス供給を備え、これらが混合されてから触媒床に達するようにされた。ガス供給は、窒素分子(N2)及びヘリウム(He)であり、このヘリウムはガスクロマトグラフィー(GC)分析の内部標準として添加された。液体供給は、乳酸水溶液(20重量%のL−乳酸)であり、触媒床による圧力低下を打ち消すためにポンプ圧力を約2482kPa(360psig)に制御しながら反応器の上部に供給された。アスペクト比(すなわち長さ/直径)が75の石英又はステンレス鋼反応器を使用した。
【0128】
一定範囲の空間速度となる、様々な触媒床及びガス供給フローが使用された(本明細書の結果のセクションに報告されている)。反応器の流出口が別の窒素希釈ラインに接続され、これが流出物を2倍に希釈した。分析目的のため、この希釈による変動は、ヘリウム内部標準により正規化された。6.5℃〜10℃に冷却した液体サンプリングシステムによって、凝縮した生成物が収集され、同時に、ガス状生成物が、収集バイアル瓶のヘッドスペースに蓄積された。ヘッドスペースのガス状生成物が、サンプリングバルブ及びオンラインのガスクロマトグラフィー(GC)を使用して分析された。
【0129】
供給を1時間平衡させた後、液体サンプルを2.7時間収集し、実験の最後にオフラインHPLCで分析した。この間、ガス生成物をGCで2回オンライン分析を行い、平均として報告した。液体生成物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析され、これにはAgilent 1200シリーズ装置(Agilent Technologies(Santa Clara、CA))、a Supelcogel−Hカラム(4.6×250mm、Supelco(St.Louis、MO))、及びダイオードアレイと屈折率(RI)検出器が使用された。検体は、均一濃度で、0.005MのH2SO4(水溶液)を溶出緩衝液に用い、0.2mL/分の流量で30分間かけて溶出させた。カラム及びRI検出器の温度は30℃に設定した。ガス状生成物は、Interscience Compactガスクロマトグラフィー(GC)システム(Interscience BV(Breda、Netherlands))によって分析され、これには、3つの検出器が使用された(1つは水素炎イオン化検出器(FID)、及び2つの熱伝導率(TCD)検出器「A」及び「B」であり、本明細書ではそれぞれ「TCD−A」及び「TCD−B」と呼ばれる)。ガス状生成物は、2つの逐次GCクロマトグラムの平均として報告された。
【0130】
TCD−AカラムはRt−Q Bond(Restek Corp.(Bellefonte、PA))であり、長さ26m、内径0.32mm、膜厚さ10μmで、プレカラム2mを用いた。圧力は150kPaに設定し、スプリット流量は10mL/分であった。カラムオーブン温度は100℃に設定し、バレオーブン温度は50℃に設定した。流量は5.0mL/分に設定し、キャリアガスはヘリウムであった。TCD−BカラムはMol sieve MS5A(Restek Corp.(Bellefonte、PA))であり、長さ21m、膜厚さ10μmで、プレカラム2mを用いた。圧力は200kPaに設定し、スプリット流量は10mL/分であった。カラムオーブン温度は70℃に設定し、バレオーブン温度は50℃に設定した。流量は2.0mL/分に設定し、キャリアガスはアルゴンであった。FIDカラムはRTx−624(Restek(Bellefonte、PA))であり、これは長さ28m、内径0.25mm、膜厚さ14mmで、プレカラム2mを用いた。圧力は100kPaに設定し、スプリット流量は20mL/分であった。カラムオーブン温度は45℃に設定し、バレオーブン温度は50℃に設定した。
【0131】
反応器−システムB(1.6mL規模の反応器):これらの添加の一部は、触媒床体積約1.6mLの充填層フロー型反応器システム内で実施された。長さ330mm(13インチ)、内径(ID)4.0mmのステンレス鋼製ガラス張り管(SGE Analytical Science Pty Ltd.(Ringwood、Australia))にグラスウール(76mm/床長さ3インチ)を充填し、上に触媒(床体積1.6cm3、127mm/床長さ5インチ)を乗せて、2.55cm3の充填床(203mm/8インチ)と、反応器の上側に1.6cm3(127mm/5インチ)の自由空間を形成した。この管をアルミニウム製ブロックの内部に配置し、クラムシェル炉シリーズ3210(Applied Test Systems(Butler、PA))内に、充填床の上面がアルミニウム製ブロックの上面に整列するように入れた。この反応器を下方流配置にセットアップし、Knauer Smartline 100供給ポンプ(Berlin、Germany)、Brooks 0254ガス流量コントローラー(Hatfield、PA)、Brooks背圧調製器、及びキャッチタンクを備えた。反応の過程中に反応器の壁温度が約350℃で一定に維持されるよう、クラムシェル炉を加熱した。この反応器には別個の液体供給とガス供給が備えられ、これらが混合されてから触媒床に達するようにされた。ガス供給は、約2482kPa(360psig)、流量45mL/分の窒素分子(N2)で構成された。液体供給は、乳酸水溶液(20重量%のL−乳酸)であり、0.045mL/分(1.7h-1 LHSV)で供給され、STP条件下で滞留時間は約1s(3,600h-1 GHSV)であった。反応器を通過した後、ガスストリームが冷却され、その液体がキャッチタンクに収集されて、Agilent 1100システム(Santa Clara、CA)を用いたオフラインのHPLCによる分析が行われた。HPLCには、ダイオードアレイ(DAD)とWaters Atlantis T3カラム(カタログ番号186003748、Milford、MA)が装備され、当業者に一般的に周知の方法を用いて行われた。ガスストリームを、FID検出器及びVarian CP−Para Bond Qカラム(カタログ番号CP7351、Santa Clara、CA)を備えたAgilent 7890システム(Santa Clara、CA)を使用して、GCでオンライン分析を行った。
【0132】
反応器供給物:バイオマス誘導体乳酸(88重量%、Purac Corp.、Lincolnshire、IL)の溶液(113.6g)を蒸留水(386.4g)に溶かし、乳酸の見込み濃度20重量%の溶液を得た。この溶液を95℃〜100℃で12〜30時間加熱した。結果として得られた混合物を冷却し、既知の重量標準に照らしてHPLC(上述)により分析を行った。
【0133】
VII結果
下記の表1は、ガス相で実施された各触媒との反応パラメータを示す。0.2mL規模の反応器を使用した場合、報告されている収率は、反応時間222分(3時間42分)後に測定され、石英反応器を350℃で使用して測定された。1.6mL規模の反応を使用した場合、ステンレス鋼ガラス張り反応器が使用され、報告された収率は約150分〜約650分後に測定された。GHSVは、次の通りであった:実施例1では3,490h-1、実施例2、10、11及び12では3,535h-1、実施例3、4及び7では3,414h-1、実施例5及び6では3,566h-1、並びに実施例8及び9では3,379h-1。この表で、「N.D.」は値が未測定であることを意味する。
【0134】
【表13】
【0135】
表1の結果は、本発明による触媒を使用した場合(すなわち実施例1〜7)と本発明によらない触媒を使用した場合(すなわち実施例8〜12)の、乳酸からアクリル酸への転化率の便利な比較を提供する。中でも、同一又は類似の反応条件下で、本発明による触媒は、本発明によらない触媒に比較して、はるかに大きいアクリル酸選択率と、はるかに小さいプロピオン酸選択率をもたらした。実施例8及び9の触媒は、本発明による触媒よりも選択率が低く、このことは、特定のリン酸アニオンの存在が、アクリル酸の高選択率において重要であることを示している。実施例10、11及び12の触媒は、本発明による触媒よりも選択率が低く、このことは、2つの異なる金属の存在が、アクリル酸の高選択率において重要であることを示している。更に、金属に対するリン(P)のモル比が低い場合(すなわち、比較例8)、脱炭酸(CO2の生成)が起こりやすく、一方モル比が高い場合(すなわち、実施例9及び12)、脱カルボニル(COの生成)が起こりやすいと見られる。
【0136】
【表14】
【0137】
表2の結果は、この触媒が、触媒として少なくとも21.6時間安定であり、アクリル酸の収率及び選択率に関して顕著又は不利益な変化を起こさず、同様に、望ましくない副生成物(例えばプロピオン酸、酢酸、アセトアルデヒド及び二酸化炭素)の選択率に関して劣化を生じないと見られる。
【0138】
上述の記載は、理解を明確にするためにのみ与えられているものであり、当業者にとって本発明の範囲内の変更は自明のことであるので、上述の記載によって不必要な限定が行われるものではないことが理解されるべきである。
【0139】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に断らない限り、そのような寸法のそれぞれは、記載された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40ミリメートル」として開示される寸法は、「約40ミリメートル」を意味するものである。
【0140】
任意の相互参照又は関連特許若しくは関連出願を包含する本明細書に引用される全ての文献は、明確に除外ないしは別の方法で限定されない限り、その全てを本明細書中に参照により組み込まれる。いずれの文献の引用も、こうした文献が本願で開示又は特許請求される全ての発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他の全ての参照文献とのあらゆる組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書において、用語の任意の意味又は定義の範囲が、参考として組み込まれた文書中の同様の用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合には、本文書中で用語に割り当てられる意味又は定義に準拠するものとする。
【0141】
本発明の特定の実施形態が例示され記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の特許請求の範囲で扱うものとする。