特許第5770962号(P5770962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770962ポリマーマトリックス中に埋封された配向ナノ繊維
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770962
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ポリマーマトリックス中に埋封された配向ナノ繊維
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/90 20060101AFI20150806BHJP
   B29B 7/16 20060101ALI20150806BHJP
   B29B 7/38 20060101ALI20150806BHJP
   B29C 67/00 20060101ALI20150806BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20150806BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20150806BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20150806BHJP
   D02G 3/02 20060101ALI20150806BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20150806BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20150806BHJP
【FI】
   B29B7/90
   B29B7/16
   B29B7/38
   B29C67/00
   B29C67/14 W
   C08J3/12 ACER
   C08K7/02
   C08L101/00
   D02G3/02
   B29K101:12
   B29K105:06
【請求項の数】61
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2002-500989(P2002-500989)
(86)(22)【出願日】2000年12月7日
(65)【公表番号】特表2003-534955(P2003-534955A)
(43)【公表日】2003年11月25日
(86)【国際出願番号】US2000033291
(87)【国際公開番号】WO2001092381
(87)【国際公開日】20011206
【審査請求日】2007年9月13日
【審判番号】不服2013-14740(P2013-14740/J1)
【審判請求日】2013年8月1日
(31)【優先権主張番号】60/169,273
(32)【優先日】1999年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105635
【氏名又は名称】ウィリアム・マーシュ・ライス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】バーレラ,エンリケ・ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス−マシアス,フェルナンド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ロザノ,カレン
(72)【発明者】
【氏名】チバンテ,ルイス・パウロ・フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート,デイヴィッド・ハリス
【合議体】
【審判長】 須藤 康洋
【審判官】 大島 祥吾
【審判官】 田口 昌浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−102122(JP,A)
【文献】 特表平8−508534(JP,A)
【文献】 特開平11−241268(JP,A)
【文献】 特表平9−509694(JP,A)
【文献】 特表2002−544356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/00 - 7/94
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス中に埋封されたナノ繊維の複合体を形成する方法であって、
ポリマーマトリックス中に複数のナノ繊維を組み込むこと、ここで該組み込みは複数の凝集物を形成する、ここで該ナノ繊維は、該ナノ繊維と該ポリマーマトリックスとの間に架橋を形成すること、及び/又は該ナノ繊維間に架橋を形成すること、によって該ポリマーマトリックスと一体化しており;及び
該凝集物を剪断応力に曝すことによって、該ナノ繊維を均一に分布させること、ここで該剪断応力は該凝集物を粉砕させる;
を含む方法。
【請求項2】
更に、毛細管レオメーター又は押出し機又は他の繊維紡糸プロセスを使用して、剪断条件下で前記複合体材料を加工すること;を含む請求項1の方法。
【請求項3】
複数のナノ繊維を含むナノ繊維強化ポリマー複合体であって、該ナノ繊維同士は結合しており、そして該ナノ繊維は、ミクロンサイズ繊維中のポリマーマトリックス中に埋封されている、複合体。
【請求項4】
ポリマー中の、炭素フィブリル、多層ナノチューブ及び単層ナノチューブからなる群より選ばれる少なくとも一のナノ繊維を混合すること、ここで、これらナノ繊維は、機能化又は誘導化されてもよく又はされていなくてもよく、そして該ナノ繊維同士は結合している;
該ナノ繊維の配向を誘起すること;及び
該ナノ繊維と該ポリマーとの混合物から該ポリマーを除去すること、ここで該除去はナノ繊維からなるミクロンサイズの繊維を残す
を含む連続繊維を製造する方法。
【請求項5】
前記ポリマーが、PP、ABS、PE、およびUHMW PEからなる群から選択される請求項4記載の方法。
【請求項6】
FDM加工によって形成される整列ナノ繊維強化ポリマーを含む複合体であって、該ナノ繊維同士は結合している、前記の複合体。
【請求項7】
ポリマーマトリックス中の整列されたナノ繊維から形成されるFDM部品であって、該ナノ繊維同士は結合している、前記のFDM部品。
【請求項8】
ESD用途のための、FDM加工によって形成される整列ナノ繊維強化ポリマーを含む複合体であって、該ナノ繊維同士は結合している、前記の複合体。
【請求項9】
EMI/RFI用途のための、FDM加工によって形成される整列ナノ繊維強化ポリマーを含む複合体であって、該ナノ繊維同士は結合している、前記の複合体。
【請求項10】
熱的用途のためのFDM加工により形成された整列ナノ繊維強化ポリマーを含む複合体であって、該ナノ繊維同士は結合している、前記の複合体。
【請求項11】
機械的用途のためのFDM加工により形成された整列ナノ繊維強化ポリマーを含む複合体であって、該ナノ繊維同士は結合している、前記の複合体。
【請求項12】
ナノチューブが、該ナノチューブと該ポリマーマトリックスとの間に架橋を形成すること、及び/又は該ナノ繊維間に架橋を形成すること、によって該ポリマーマトリックス中に一体化している整列ナノ繊維強化ポリマーを含む複合体。
【請求項13】
前記ナノチューブ一体化は、先端の結合及び/又は側壁機能化、同時重合、及び剪断整列によるものである請求項12記載の複合体。
【請求項14】
毛細管レオメーター又は押出し機又は他の繊維紡糸加工を使用する剪断条件のもとでの、その複合体材料の前記加工は、湿潤紡糸、乾燥紡糸、溶融紡糸又はゲル紡糸を含む請求項2記載の方法。
【請求項15】
複数のナノ繊維を含む強化ポリマー複合体であって、前記ナノ繊維は、ミクロンサイズの繊維を形成しているポリマーマトリックス中に埋封されており、該ナノ繊維同士は結合している、前記の複合体。
【請求項16】
複数のナノ繊維を含む強化ポリマー複合体であって、前記ナノ繊維は、ミクロンサイズの繊維を形成しているポリマーマトリックス中に埋封されており、かつ該ナノ繊維同士は結合しており、該強化ポリマー複合体は織糸、マット、プライ(plies)、フィラメント巻管及び容器を含む複合体形を与えるために加工される、強化ポリマー複合体。
【請求項17】
請求項4に記載の方法であって、さらに、
炭素フィブリル、多層ナノチューブ、及び単層ナノチューブからなる群より選択される少なくとも1のナノ繊維をポリマー中で混合し、該ナノ繊維を所望の分散範囲に分散させ、
該混合物を剪断条件にて加工し、
繊維、フィルム及びテープからなる群より選択される少なくとも1つを押出しながら、ナノ繊維の配向を誘起する工程を含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記繊維、フィルム及びテープからなる群より選択される少なくとも1つをさらに伸長させる方法。
【請求項19】
混合とナノ繊維分散とがバンバリー型の混合で提供される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記混合と押出しが多数領域配合押出し機で行われ、その際混合滞留が保持された後に分散したナノ繊維の押出しがなされる、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
単層ナノチューブ(SWNT)の精製工程を更に含む、請求項4または17に記載の方法。
【請求項22】
粉末の形態のポリマーを選別し、
ポリマーの粉末を乾燥し、
前記粉末を単層ナノチューブ(SWNT)と溶媒中で混合してスラリーを形成し、そして
前記スラリーを乾燥して前記溶媒をすべて取り除き高分散ナノチューブを有する凝集した粉末の塊を形成する、
工程を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
粉末の形態のポリマーを選別し、
ポリマーの粉末を乾燥し、
前記粉末を単層ナノチューブ(SWNT)と溶媒中で混合してスラリーを形成し、そして
前記スラリーを乾燥して前記溶媒をすべて取り除き高分散ナノチューブを有する凝集した粉末の塊を形成する、
工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒がトルエンである、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
該溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)である請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
炭素フィブリル、多層ナノチューブ、及び単層ナノチューブからなる群より選択される少なくとも1のナノ繊維をポリマー中で混合し、該ナノ繊維を所望の分散範囲に分散させて混合物とし、ここで該ナノ繊維は、該ナノ繊維と該ポリマーマトリックスとの間に架橋を形成すること、及び/又は該ナノ繊維間に架橋を形成すること、によって該ポリマーマトリックスと一体化しており、
該混合物を剪断条件にて加工し、そして
繊維、フィルム及びテープからなる群より選択される少なくとも1つを押出しながら、ナノ繊維の配向を誘起する
工程によって形成された、その後の取り扱い及び処理のためにポリマーマトリックス中にパッケージされた整列ナノ繊維。
【請求項27】
該工程が繊維、フィルム及びテープからなる群より選択される少なくとも1つを伸長させることを含む、請求項26に記載のパッケージされた整列ナノ繊維。
【請求項28】
請求項26に記載のパッケージされた整列ナノ繊維を含む織られた複合体。
【請求項29】
請求項26に記載のパッケージされた整列ナノ繊維を含むレイアップされた複合体。
【請求項30】
請求項26に記載のパッケージされた整列ナノ繊維を含む束で加工された複合体。
【請求項31】
請求項26に記載のパッケージされた整列ナノ繊維の列で加工された複合体。
【請求項32】
請求項26に記載のパッケージされた整列ナノ繊維の束を含む複合体。
【請求項33】
請求項26に記載のパッケージされた整列ナノ繊維を含む糸。
【請求項34】
請求項26に記載のパッケージされた整列ナノ繊維を含む加工糸。
【請求項35】
前記ポリマーは、アセタール、PP、ABS、ASA、PE、PEEK、PET及びUHMWPEからなる群から選択される、請求項26〜32のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項36】
前記マトリックスは、エポキシ類及び樹脂からなる群から選択される、請求項26〜32のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項37】
一体化、分散及び整列、誘導化、機能化、重合並びにこれらの組合せからなる群から選択される処理によって前記ナノ繊維を一体化する工程をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項38】
一体化、分散及び整列、誘導化、機能化、重合並びにこれらの組合せからなる群から選択される処理をさらに施された請求項26〜32のいずれか1項に記載の複合体を含む一体化ナノ繊維複合体。
【請求項39】
ガスセンサー用途のための気体透過性ポリマーを含む、請求項38に記載の複合体。
【請求項40】
電子、配線または相互接続用途のための請求項38に記載の複合体。
【請求項41】
10重量%のSWNTを含む、請求項38に記載の複合体。
【請求項42】
前記マトリックス材料はPP及びナイロンを含む、請求項38に記載の複合体。
【請求項43】
請求項42に記載の複合体から形成される、耐衝撃用途にまで及ぶシールド材料。
【請求項44】
前記複合体は、前記ナノ繊維を取り扱うためのパッケージを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリマーは、ガスセンサーとして利用できる前記複合体に対処したガス透過性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記ナノ繊維は、前記ポリマーの熱物理学的特性の向上に対処したものである、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記ナノ繊維は、前記ポリマーの分解温度の上昇に対処したものである、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記ナノ繊維はポリマーに結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記複合体はさらに化学的に処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記複合体は電線または電気的相互接続として使用できる、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記複合体は前記ナノ繊維によって伝導を実現する、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記一様に分布させることはゲル紡糸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
前記方法は該組成物を急冷することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記複合体は、静電気放電材料を一体化によって製造するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記ナノ繊維は核生成部位として働く、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記ナノ繊維は前記ポリマーの結晶化に影響する、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記ナノ繊維は前記ポリマーの分子形態に影響する、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
前記方法は、透視度の増大のために、半透明の複合体を提供することを助けるために薄くすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
該ポリマーがABSであり、そして純粋なABSと比較して、前記複合体の靱性はより低く、前記複合体の強度及び剛性はより高い、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
前記ナノ繊維と前記ポリマーとの間に接続が存在し、さらに、該接続は機械的性質の向上に対処したものである、請求項1に記載の方法。
【請求項61】
前記ポリマーは気体透過性ポリマーを含み、さらに、該気体透過性ポリマーは、ガスと接触している時の前記ポリマーの電気伝導の変更に対処したものである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、米国科学財団から授与されたNSF補助金第DMR−9357505号ならびに米国航空宇宙局から授与されたNASA補助金第NCC9−77号およびSTTR補助金NAS 9 99129による米国政府の援助を受けて行った。米国政府は本発明に一定の権利を有することができる。
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、ナノ繊維強化ポリマー複合体系中に分散されたナノ繊維の配向を制御する該系の開発に関する。
【0002】
殆どの合成及びセルロース系人造繊維は「押出」によって生成される。すなわち濃厚で粘稠な液体を紡糸口金から押出して半固体のポリマーの連続フィラメントをつくる。その初めの状態では、繊維形成ポリマーは固体であり、したがって押出すためには、まず流動状態に変えなければならない。これは通常、ポリマーが熱可塑性合成物の場合には、溶融(すなわち、加熱するとポリマーは軟化溶融する)によって達成されるか、またはポリマーが非熱可塑性セルロース樹脂の場合には、適当な溶剤にポリマーを溶解することによって達成される。ポリマーが直接溶解も溶融もさせることができない場合には、化学的に処理して可溶性または熱可塑性の誘導体を作らなければならない。溶融もしなければ、溶解もせず、また適当な誘導体を作りもしないポリマーからなるある特種繊維のための新技術が開発された。この物質の場合には、押出において他の方法では処理できないポリマーを形作るために、小さい流体分子を混合して反応させる。
【0003】
殆どの人造繊維の製造に用いられる紡糸口金は1ないし数百個の孔を有する。フィラメントが紡糸口金の孔を出る際に、液状ポリマーはまずゴム状態に変わり、ついで固化する。このエンドレスフィラメントの押出及び固化のプロセスを紡糸と呼ぶが、ステープルファイバーの短片を糸に撚る、同じ名前の紡織加工と混同してはならない。人造繊維のフィラメントを紡糸するには4つの方法がある。すなわち湿式、乾式、溶融、およびゲル紡糸法である。
【0004】
湿式紡糸はもっとも古い方法である。これは溶剤に溶解させた繊維形成物質に対して用いられる。紡糸口金は薬品浴中に浸漬し、フィランメントは現れると溶液から沈殿して固化する。溶液が沈殿液体中に直接押出されるので、この繊維製造法は湿式紡糸と呼ばれる。アクリル、レイヨン、アラミド、変性アクリルおよびスパンデックスがこの方法によって製造される。
【0005】
乾式紡糸も溶液中の繊維形成物質に対して用いられる。しかし、ポリマーを希釈または化学反応によって沈殿させるのではなくて、空気又は不活性ガス流中で溶剤を蒸発させることによって、固化を達成させる。フィラメントは沈殿させる液体とは接触せず、乾燥する必要がなく、溶剤回収が容易である。この方法はアセテート、トリアセテート、アクリル、変性アクリル、PBI,スパンデックス、およびビニヨンの製造に用いられる。
【0006】
溶融紡糸の場合には、繊維形成物質を紡糸口金から押出すために溶融させ、その後冷却によって直接固化させる。ナイロン、オレフィン、ポリエステル、サラン、および硫黄がこのようにして製造される。溶融紡糸繊維は紡糸口金から種々の断面形状(円、三葉形、五角形、八角形等)で押出され得る。
【0007】
ゲル紡糸は高強度または他の特殊な繊維性状を得るために用いられる特殊な方法である。押出中にポリマーは真の液体状態にはない。このポリマー鎖は、真溶液状態でのように完全には分離されず、液晶形態において多くの位置で結合し合っている。これは生じたフィラメント中に強い鎖間力を生じて、繊維の引張強度を著しく増大させることができる。さらに、この液晶は押出中の剪断力によって繊維の軸に沿って整列する。フィラメントは相互に異常に高い配向度を有して出現し、さらに強度を高める。この方法は、フィラメントがまず空気中を通り、次いでさらに液体浴中で冷却されるので、乾湿紡糸法と呼ぶこともできる。一部の高強度ポリエチレンおよびアラミド繊維はゲル紡糸法によって製造される。
【0008】
押出した繊維が固化しつつある間、または固化した後に、フィラメントを延伸又は伸長させて強度を付与することができる。延伸は分子鎖を引っ張り合って、繊維の軸に沿って配向させ、可成強い糸を生じる。
発明の要約
高整列度を達成させるようにポリマーマトリックス中にナノ繊維を埋封する方法はナノ繊維連続繊維(“NCF”)系によって達成される。このミクロンサイズの繊維は、以後の操作、ならびに機械的、電気的および熱的用途における一連の部品への加工および製造の容易さのための、ナノ繊維の容易な取り扱い、高整列度を含むその分布の制御をもたらす。NCFは、連続繊維長(例えば数千km)に生成することができる、分散したナノ繊維を有する連続繊維であり、ナノ繊維添加による強化を要する一連の製品を作るためにフィラメント巻きにされ、織られ、レイアップされ、列または束で加工され、加工糸または糸に用いられる繊維である。ポリマーマトリックスは、種々の形状への加工、または他のポリマー系もしくは非ポリマー付加物との加工が容易に可能な系である。NCFは、強化(すぐれた衝撃力を含む)または電気的もしくは熱的異方性特性(異なる方向で異なる性質)を得るために整列ナノチューブを提供できる系である。その延長線上で、NCF系はマトリックス中に埋封されるナノ繊維に適用され、ついでテープまたはフィルム状に成形されて、分布および整列を制御し、かつ種々の以後の加工工程を可能にすることもできる。
【0009】
本発明は、ナノ繊維強化ポリマー複合体系中に分散されたナノ繊維の配向を制御する該系の開発に関する。この系はナノ繊維がミクロンサイズの繊維としてポリマーマトリックス中に埋封されているナノ繊維連続繊維系である。ナノ繊維は直径が100nm以下の炭素フィブリル、一連の機能性を有するロープ及び種々のその誘導体を包含する、全く炭素のみであることができるが、必ずしもその必要はない、多層ナノチューブ(MWNT)および単層ナノチューブ(SWNT)である。ポリマー/ナノ繊維の混合によって、配向を誘発されたナノ繊維は、機械的、熱的及び電気的性質を高めるためにナノ繊維を用いることが可能な一連の直径がミクロンサイズの繊維に加工することができる。この系は、NCFがポリマー結合剤を有しないナノチューブからなるナノチューブ系を含むことができる。このナノチューブ連続繊維は、ナノチューブ/ポリマー前駆物質系に由来し、その前駆物質系からポリマーが除かれ、ナノチューブのみのミクロンサイズの繊維が残る。NCFはナノ繊維の等方性分散物を用いるか、または高性能構造物を提供するために通常の複合体製造技術を用いて容易に取り扱い及び加工できる高整列ナノ繊維を用いて調製できる。連続ポリマー系中にナノ繊維を生成させる方法は特殊の性質の要望に適合させるために高分散ナノ繊維または一連の分散条件を有するかも知れない。ポリマー系は、ブロックコポリマー、種々の熱可塑性樹脂、液晶ポリマー、熱硬化性樹脂、ゲル処理ポリマーおよびエラストマーを含むが、必ずしもそれらに限らない、高剪断及び伸長方向の流動条件に耐えることができる系であると予想される。流動学的研究はポリマー中にVGCF及びSWNTのいずれをも分散させるための重要な工程を特定した。アセタール、ABS、ASA、PE、PEEK、PET、PP、およびEPONエポキシを含む多くの適当なポリマー/ナノ繊維系が存在するが、これらに限定されない。一部の用途ではエポキシおよび樹脂が望ましいであろう。ナノ繊維の配向を制御する本発明の方法を用いて、特に優れた構造的、電気的、及び熱的性質を有する物質を調製することができる。NCFはナノ繊維、とくにSWNTを処理するための送達系またはパッケ−ジをもたらす。NCFはそれ自体単独の構造物、さらに加工して他の形態にするのに有用な物質、及びナノ繊維を整列させる方法である。NCFは織糸、マット、プライ、フィラメント巻管及び容器を含む一連の複合形態ならびにワイヤおよび静電放電物質を含む一連の用途を処理するのに有効に用いることができる。
【0010】
本発明はナノ繊維複合体のさらに進んだ加工にまで及ぶ。配線や相互接続のようなミクロからマクロスケールの用途のためにナノチューブの全ポテンシャルを達成させるように、単層ナノチューブ(SWNT)を完全一体化ナノチューブ複合体(FINC)に発展させることができる。ナノチューブの完全一体化は通常の複合体を越える発展を必要とし、したがってナノチューブが異なる成分ではなくて、マトリックスの一部であるように、ナノチューブの総量と十分に一体化させるように非ナノチューブ材料のレベルを計画する。ナノチューブからのこの多機能物質の発展は、複合則工学および複合体設計の限界を超えるように設計されたナノチューブ複合物質系である完全一体化ナノチューブ複合体(FINC)を生み出して、大規模にナノチューブを完全に模倣する計画を実施する。この新規アプローチは完全一体化を達成するために一体化、分散および整列、機能化を含む。場合によってはよく設計されたネットワークによる伝導を達成するが、目標は化学的な伝導である。本発明に記載する物質系は多機能デバイス及び電子用途のための高伝導プラスチック配線および相互接続としての用途を有する。これらの物質の主成分はナイロン、PMMA、及び導電性エポキシである。ガス透過性ポリマーでFINCを作ると新規ガスセンサー機能をもたらす。重要な用途はエレクトロニクス及び配線用軽量の多機能相互接続である。
【0011】
本発明はさらにナノチューブの完全一体化の用途も略述する。SWNTの長さは強化が容易に達成できるような長さであり、我々の計算はSWNTの完全ポテンシャルを得るためには複合則を超えるアプローチの実施が必要であることを示す。本発明及びその方法は、複合則工学および複合体設計の限界を超えるように設計されたナノチューブ複合物質系である強靭な完全一体化ナノチューブ複合体(T−FINC)を生み出して、優れた機械的性質を得るように大規模にナノチューブを完全に模倣する設計を実施する。これらの物質の主成分は2種類の標準ポリマー:ポリプロピレン(PP)及びナイロンである。パネルおよび布シールドの形をなすシールド系はこの新規物質の典型的な用途である。ナノチューブシールドは中間バンパーや後壁パネルのような広範囲の用途があり、超高速耐衝撃用途および宇宙用シールドにまで及ぶ。
【0012】
VGCFを用いる場合には電気抵抗率の10桁の低下、SWNTを用いる場合には電気抵抗率の14桁の低下が認められる物質系(シート状)がもたらされる。10重量%SWNT物質が、我々の最初の配線系を作るために使用され、そして600オーム−平方範囲の電気抵抗率を有する。これらの系は高度に分散したナノ繊維を有し、さもないとパーコレーションがさらに低くなるであろう(分離ネットワークを用いる場合)。
【0013】
強化はすぐれた剛性(VGCF系の場合には350%ほど増大)、強度の増大(10重量%SWNT物質の場合に50%増大)、およびナノチューブの最高付加量10重量%を添加したSWNT系における破断までの伸びが100%だったことによっても認められる。
【0014】
10重量%VGCFを有するABS、5重量%SWNTを有するPE、及び1−3重量%のHiPco、または他のSWNTを有するPeおよびPPから特定繊維が製造される。VGCFとSWNTの整列が認められる。複合体繊維を作る能力は繊維状のT−FINCの製造にまで及ぶ。
好適な態様の詳細な説明
NCFはポリマーとナノ繊維からなる、典型的には、直径が1から150ミクロンの範囲の連続繊維系であり、この場合にナノ繊維の組成はゼロより上から100重量%にわたる。ナノ繊維をポリマーマトリックス中に加工して連続繊維状にすると、ナノ繊維の配向を制御して、通常の物質に比べて優れた性質を付与する。構造的、電気的及び熱的性質を著しく高めることができる。100%ナノ繊維からなるNCFはポリマーマトリックスすなわち結合剤を混合した後除去して、ナノ繊維系のみを残すことによって加工することができる。100%ミクロンサイズのNCFのこの製造法はとくにSWNT及びその種々の機能性誘導体を用いた開発に関するものである。
【0015】
一般に、ナノ繊維を一連の規模に対して種々の加工形態で操作または処理することは必ずしも容易ではない。ナノチューブは低および高純度の“Backy Paper”と呼ばれる乾燥紙の状態で得ることができるか、または大規模の製品を加工するのに簡単には適しない種々の溶液として購入することができる。またナノチューブは複合体の性質に影響を与える多くの望ましくない不純物を有する加工したままの不純の状態で入手することもできる。本開示において、加工糸、糸、布等が取り扱われるのとほゞ同様に容易に取り扱うことができる1形態のナノチューブが提示されている。この目的を達成するための加工は、ポリマーマトリックス中にナノ繊維を分散させて連続繊維に形成させることを含む。繊維を形成させる方法は高剪断加工を含み、その場合にポリマーは液状にあるか溶融又は融解させ、小さなオリフィスから押出されて、高剪断及び小繊維系をもたらす。次に伸長方向の流動を用いて、繊維のサイズをさらに小さくし、かつ整列ナノ繊維(連続繊維系の長さに平行に整列している)を確実なものとする。気相成長炭素繊維を用いるNCFは10重量%のナノ繊維を有するABSならびに2.5および10重量%のナノ繊維を有するPEマトリックスを用いて既に加工されている。またNCFは5および10重量%のSWNTを有するABS、ならびに2重量%のSWNTを有する超高分子量(UHMW)PEを用いて加工されている。製造された別の系はPP 1000および12重量%SWNT(ナノチューブ濃度は最高6重量%)を包含する。
【0016】
NCFのスプールは、受け入れたままの形で用いるものとして製造でき、または繊維系をさらに活性化、機能化、表面処理、熱分解、変性、架橋等するように設計することができる。化学反応によって、ナノ繊維をポリマーと、もしくは相互にさらに結合させるか、または特定用途の要望に応じて非湿潤もしくは非結合状態で最適にすることができる。一連のポリマー物質中に整列ナノ繊維を付与し、該繊維系をさらに化学処理する能力は新規製品開発及び材料強化の一連の機会をもたらす。この中にはFILNC及びT−FINC繊維の加工がある。
【0017】
電気的性質を伝えるポリマーに関する用途に対しては、ネットワークが形成されれば、等方性のナノ繊維分散を含む複合体を加工することができる。この物質は、主に静電荷の蓄積を阻止するために用いられる静電放電(ESD)用に設計することができる。静電気は電流、すなわち流れる電気ではなくて、むしろ静止している電気である。その静電散逸範囲は絶縁体(1013オーム/平方よりも高い表面抵抗率)と導体(105オーム/平方よりも低い表面抵抗率)との間にあることが知られている。すなわち、表面抵抗率が105ないし1012オーム/平方の値は静電散逸をもたらす。この値は散逸をもたらすのには十分低いが、スパークを生じ得るほど低すぎることはない。等方性ナノ繊維強化複合体の体積抵抗率および表面抵抗率を測定した。等方性複合体の試験結果を、表1の(a)および(b)に、それぞれ体積抵抗率および表面抵抗率としてプロットしてある。導電性物質で強化したプラスチックの場合に予想されるようにパーコレーションしきい値が生じる。ナノ繊維強化ポリプロピレン複合体は約9%でパーコレートし始め、18%までに繊維のネットワークが形成され、抵抗率のそれ以上の低下はない。このレベルのパーコレーションを有するこの系は、充填剤のネットワークがESD特性をもたらすだけの他の充填剤入りポリマー以上にESDを強化する機会を有する。
【0018】
この等方性材料の範囲を拡張するため、伝導性ポリマーをNCFに組み込むことができ、そこでは、ナノ繊維が充分に整列されそしてミクロンサイズの繊維の容易な取り扱いによりバルク形態に容易に整列できる。高い異方性電気性質を有する材料は、導電性をより高い導電性に加工することができるので、電磁インタフェース/無線周波数インタフェース(EMI/RFI)材料として使用される可能性をさらに有している。形成されたナノ繊維ネットワークは、繊維の長さに平行に非常に整列されている。EMI/RFI材料は、導電体範囲(<10オーム/平方)の電気抵抗を有しており、そして特にSWNTを使用する場合ワイヤおよび電気相互接続にも使用することができる。導電に関する内部接続ネットワークは保持されるが、高い程度の整列は電気性質および強度をさらに増加させる。
【0019】
ナノ繊維をプラスチックマトリックスに導入する本発明に使用される加工方法は、高い剪断応力および高い力を系に導入するバンバリー型混合である。ナノ繊維のサイズおよび凝集の傾向に基づき、凝集物をほとんどの場合にはナノ繊維を損傷させないで粉々にする流体学的応力に凝集物を曝すことによってナノ繊維の均一な分布を提供するために、バンバリー型混合が選択された。数例において、高い剪断力を使用して繊維、特に数多くの欠陥を有するものを細かくすることができる。0〜60重量%の範囲の濃度のカーボンナノ繊維を調製したが、高程度の繊維濃度を達成できることを示している。仕上げ複合体の物性がマトリックス中の分散により強く支配されるので、ナノ繊維/チューブ分散がサンプル調製のカギとなる性質である。図2は、ポリプロピレンマトリックス中の気相成長炭素繊維の透過型電子顕微鏡写真を示す。平均直径100nmを有するナノ繊維は非常に分散し、そして複合体系における多孔性の兆候はない。図3は、ナノ繊維周辺のポリマーの変形により示される湿り範囲を示す張力で試験された複合体の破損表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【0020】
毛細管レオメーターを用いてより高い剪断条件で複合体材料を引き続いて加工することによってNCFが得られた。このレオメーターにおいて、ポリマー/ナノ繊維系の粘度が著しく減少して、容易な加工および高い程度の整列を促進する。図5は、VGCF−ポリプロピレン系について剪断速度が増加するに従って達成され得る粘度の減少を示す。整列の程度は、使用する剪断力のレベルに従ってミクロンサイズの繊維系に加工される(ミクロンサイズ繊維複合体については図4を参照)。図6は、ナノ繊維の高い程度の整列が達成される毛細管レオメーターから取り出された剪断力の増加により得られた粘度の同様な減少を示す。湿りの程度および結合の程度は、初期NCFに組み込むことができ、あるいは種々の部品へのNCF組立てに続いて変更してもよい。
【0021】
NCFを達成するために、ポリマー混合方法を開発して、絡みが減少した高いSWNT分散を達成した。混合および溶融紡糸のレオロジーを研究した。単層ナノチューブ(SWNT)添加したおよび添加していない連続ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)繊維を数千キロメートルの長さで製造した(ボビンまたはスプールに容易に巻き取ることが可能な量)。整列したSWNTがナノチューブ連続繊維中に観察された。流体学研究、熱物理学分析、顕微鏡観察および機械試験を介して改良された繊維性質が証明された。改良された性質には、未充填繊維より高い強度、改良されたモジュラス、ガラス転移温度および分解温度の充分な変化および高温下での持続的な強度を含んでいた。SWNTの添加は繊維強度に関して引張強度を743%および破断までの伸びを2964%増加させた。伸び流体装置および巻取りホイール装置を含む製造装置を造った。
【0022】
確認された混合法は、多孔性および混合粘度が問題でない(代表的には高い剪断条件)ポリマーに非常に分散したSWNTを上手く製造する。本発明に要約する方法は、整列を達成し、連続繊維を製造しそして直径の小さい繊維を製造する以下のカギとなる因子を示す。
【0023】
受け入れたままのSWNTは、ポリマー系における精製SWNTと同一の結果をもたらさない。受け入れたままのSWNTを有する初期ポリエチレン(PE)を評価し、そして充分に混合されていないことを示した。非晶質炭素および不純物が混合を制限した。ABSを試験系として10重量%SWNTで加工した。ペレットではなくABS粉末を使用することによって、混合操作を改良した。粉末は、一度ナノチューブが粉末に均一に分散すればナノチューブの最良の初期分散レベルを提供する。粉末を乾燥し、そしてトルエン中の精製SWNTと混合した。スラリーを乾燥し、全ての溶剤を除去した。乾燥した材料は、非常に取り扱いやすい、ナノチューブがよく分散した凝集粉末の塊を形成した。ABS中の5重量%SWNTの組成物を、トルク流体計を使用して加工した。複合体を引き続いての加工のためにシートにホットプレスした。このシートは、良好な柔軟性を示し、そして破損することなしに小片に切断できた。VGCF/ポリマー複合体系は、シート形態から切断する際に何度も破損するであろう。PPおよびPEは、分散した受け入れたままのおよび精製SWNTとともに加工された。
【0024】
溶液ルート中でポリマー粉末をSWNTと混合することは、ポリマー中にナノチューブを分散するための最適な方法であることが判った。PE粉末を使用したが、ポリマーペレットをPPについて使用した。PEおよびPPに対する溶解性が低く、SWNTを適度に分散し、そしてポリマーの軟化点より低い温度で留去するので溶剤をジメチルホルムアミド(DMF)とした。カバレージは均一であり、そしてこの方法は、受け入れたままのSWNT材料(受け入れたままのまたは精製されたかのいずれか)における望ましくない不純物を除去できる方法を提供した。望ましくない汚染物は、ナノチューブの精製の後であっても除去しなければならなかった。乾燥するとこれらの粉末は、凝集物を形成し、そして塊は、容易に取扱えそして浮遊粒子状物質を有することの心配を除去した。凝集物は、混合および配合のためにトルクレオメーター中に非常に容易に充填された。混合された複合体はトルクの顕著な増加がなく、容易に加工できた(このことは低い粘度を意味する)。SWNTを添加するに従って粘度が増加したが、材料を混合するためのトルク要求は、機器制限よりも一桁以上低い。PP(メルトフローインデックス12)およびPE(メルトフローインデックス10)材料を混合する際に、最小のトルク条件を観察した。
【0025】
SEM分析は、PPおよびPE中のSWNTが、非常に分散しており、ほとんどもつれがなくそしてある程度の湿潤の傾向を示していることを示した。複合体は、孔がない。PE(メルトフローインデックス10)中の受け入れたままのSWNT(Tubes@rice)0.5重量%、PP1000およびPE超高分子量中のHiPoからのSWNT0.2重量%およびPP12中のNTTからのSWNT1.7重量%およびPE中のSWNT3重量%の組成物を使用した。ABS中のTubes@riceからのSWNT10重量%を加工して、混合方法およびこれらの系の電気的性質についてさらに研究した。代表的には、マトリックス中によく分散したSWNT1重量%の濃度が静電気放電(ESD)条件を導くであろう。伝導をもたらすものよりも低い濃度が分離ネットワークとなりやすい傾向にある。図7NASAは、SWNT組成物の関数としての電気抵抗を示す。マトリックスが現在の加工法に著しい役割を果さないことが期待される。
【0026】
溶液中の粉末およびSWNTを使用する加工ルートが非常によく作用し、そして今まで加工した全ての組成物は、良好なマトリックス/ナノチューブ性質を示す。これらの高められた材料(到着凝集物および混合複合体シート)およびナノチューブ被覆粉末、複合体プリプレグおよび最終シート材料を、最終用途および更なる加工のために提供することができる。繊維は、種々の系から製造されている。長い連続繊維形態および1000メートルを超える繊維を製造した。図8NASAは、VGCFおよびSWNTを有するABSの表面抵抗を表す。よく分散した複合体系において伝導を達成するのに必要とされるのはわずか1%のSWNTであることに注目すること。
【0027】
SWNTを介して伝導を達成する数多くの方法がある。第一に、ポリマー中にネットワークを形成しそして維持しなければならない。第二に、整列が達成された際に、端部と端部の接触または小さい空隙を突き抜けることのいずれかが生じなければならない。高い分散および接触しないナノチューブを導く整列は、低い伝導性となってしまう。ナノチューブロープは、高アスペクト比の充填剤を導くので伝導性を達成するのに有効である。HiPcoナノチューブ中の金属も、伝導性に関する浸透閾値を減少するのに寄与する。
【0028】
種々の混合操作からそして各操作に対するピークおよび定常状態トルクの測定から、複合体加工に関する平均およびピークトルクレベルを特定した。データは、混合条件がトルクレオメーターの限界よりもはるかに小さくそして混合粘度が他の研究者が遭遇したものよりも著しく低いことを示した。バンバリー混合がすでに低価格の工業的製造方法であるので、低価格でナノチューブ複合体を製造する実用的な工業的方法が本発明により達成される。SWNTの費用以外の追加費用は、溶剤の費用だけである。水またはその他の低価格溶剤または界面活性剤は、将来の研究の一部である。図9NASA、すなわち室温で破壊した10重量%SWNT/ABSポリマーの顕微鏡写真は良好な分散、孔の不存在およびナノチューブの絡みが減少していることを示した。混合の際の高い剪断加工がナノチューブを互いに分散させる補助をするので、絡みの度合いが減少した。SWNTは、ナノチューブがポリマーから取り出されるらしい場所により示されるように、ポリマーにより湿らされる。いくつかのナノチューブは、ポリマーにより被覆されず、これは繊維/マトリックス剪断強度および通常の応力がなおも比較的に低いことを示している。
【0029】
以下の式を有するPPをこの研究に使用した。
[−CH2CH(CH3)−]n (1)
であり、(1)アイソタクチック、メルトフローインデックス1000、融点160℃および密度0.900および(2)アイソタクチック、メルトフローインデックス12、融点165℃および密度0.900である。以下の式を有するPEをこの研究に使用した。
【0030】
[−CH2CH2−]n (2)
であり、(1)超高分子量、融点130℃および密度0.94および(2)メルトフローインデックス 10、Phillips CoからのMarlex、密度0.94である。PP1000は、紡糸に使用するための最適なポリマーではないが、これを使用して加工レオロジーの限界を調査した。超高分子量PEも溶融紡糸に最適ではないが、ゲル紡糸法によりSWNTと混合することができ、従って本発明の方法のゲル紡糸用途への拡張を示す。ポリマーは、代表的にはホットボックス中で90〜100℃で乾燥することによって調製された。SWNTおよびポリマーのスラリーをポリマーの融点未満の温度で炉中で乾燥して溶剤を除去した。得られた材料は、均一な分布のナノチューブで上塗りされたポリマーであった。この段階は、初期分散条件で、溶融物の混合の際にナノチューブの容易な分散を導くものである条件を提供した。ポリマー系の数多くの混合操作を用意して、押出し、毛細管レオメーターの使用、レオロジー、引張試験および熱分析への用途を提供した。この材料を引き続いての押出しまたは毛細管レオメーターへの用途のためにペレットに切断した。
【0031】
SWNTを有するポリマーの混合条件は、装置停止の限界(Haake Polylab rheometer)よりもはるかに低いトルク条件であった。図10NASAは、混合が他で報告されているような過剰の粘度での問題がないことを示すトルクの非常に低い値を示すPP12およびPE10系に関するトルクデータである。初期混合を行うと、トルクが比較的低くかつ非常に定常となることに注目されたい。数例において、混合速度を60〜65rpmから90rpmに増加させて混合を高めた。温度、時間および混合速度を含む混合パラメータを、方法最適化研究および熱可塑性ポリマーのバンバリー混合のデータベースに基づいて選択した。混合および押出しは、混合滞留が充分な時間保持され引き続いて良好に分散したSWNT系の押出しを行う多数領域配合押出し機内で達成することができた。これは、連続繊維を製造する価格的に有効な方法を提供する。
【0032】
ポリマーブレンドに対して熱物理学測定およびレオロジーを行った。熱分解、クリープ挙動、温度および回数(frequency)の関数としての保存モジュラスを全て測定した。適用可能な場合ガラス転移温度の変化も測定した。PPおよびPEは、SWNT添加により分解温度の上昇を示した。ほんの少量のSWNTがこれらの上昇を導くのでこれらの改良は、ポリマー工業にとって著しいものである。図11は、わずか2重量%のSWNTを添加したPPに関する著しい、すなわち100℃以上の分解温度の上昇を示す。
【0033】
先にABS中1〜10重量%の組成物を用いた研究を行った。通常2重量%付近の少量の組成物が、いくつかのポリマーの用途のための、多数回の操作の実行を保証した。低濃度のサンプルのうちのいくつかは、多数回の操作を確実にするために使用されるので、部分的に非晶質炭素および触媒である。プロット上に示される組成物は、精製したか否かに関わらないナノチューブ材料添加された組成物を明らかにする。図12NASAは、SWNTを添加した際にポリマーのモジュラスで観察された増加のタイプを示す。このPEに関する変化は少しであるが(25%)、このポリマー系の伸び特性が残っているので、強固な繊維を作る可能性が分散VGCFについて見られたよりも存在する。
【0034】
押出し速度および引き続きの延伸速度(許容される伸長方向の流動)の選択が一般的な繊維性質、特に最終繊維サイズに影響を与えることは繊維紡糸の分野に公知である。図13は、高い押出し機速度および巻取り速度を使用した際に得られる性質の向上を示す。図14は、異なる押出し機および巻取り速度で加工した場合の繊維の強さを詳細に説明する。高い巻取り速度と結びつけた高い押出し機速度は強い繊維を導く。高い巻取り速度とともに速い押出し機速度を使用すると非常に直径の小さい繊維となることも知られている。図13は、これらの加工条件に関する繊維サイズ、特に高い押出し機速度でそして引き続いて高い巻取り速度で加工した場合の繊維系の直径の変化を示すプロットを示す。直径の小さい繊維の系の欠損が極小化される傾向にあるので、直径の小さい繊維の系が求められる。さらに、遅い巻取り速度を伴う遅い押出し機速度の使用は、図15に示す通り直径の大きい繊維を導く。図15は、遅い押出し機速度でそして引き続いて遅い巻取り速度で加工した場合の繊維系の直径の変化を示すプロットを提供する。より直径の大きい繊維が得られた。従って、広範囲の繊維サイズを顧客要求に従って加工することができる。
【0035】
光学顕微鏡およびSEMを使用して繊維を分析し、そして数例において整列したナノチューブを有することが観察された。1重量%を超える精製SWNTの組成を有するサンプルは、ESDまたはEMI伝導性であるとみなされた。2重量%を超える精製SWNTの組成を有するサンプルは、EMIであった。10重量%サンプルは、非常に伝導性であり、そしてプラスチックワイヤとして使用できた。厚いプラスチックワイヤを電気回路内に配置し、DC電源により電力が与えられるとLEDが点灯するようにした。このことは、本発明により製造されるこれらの新規の繊維の際立った用途を示した。
【0036】
プログラムのこの時期に、押出し機および毛細管レオメーターの両方を使用して繊維を作製した。ストラタシス・フューズド・デポジション・モデリング・システム(Stratasys Fused Deposition Modeling System)を使用して連続繊維を作製することもできた。以下に示す通り、図16は、単一穿孔Haake押出し機から繊維を製造しながら回収した押出しデータである。押出し機で繊維を加工した。この押出し機を使用するに当たって、ダイサイズ、スクリュー速度、ならびに押出し機から繊維が引き出された際の押出し機温度および巻取り速度を考慮しなければならない。繊維の付加的引き出しが生じ得る条件で加工を行わなければならない。Rosand毛細管レオメーターを使用してナノチューブ充填および未充填ポリマーの流体学的挙動を調べた。毛細レオメーターを紡糸ホイール巻取りシステム(図示せず)とともに使用して充填および未充填ポリマー繊維を押出しそして伸ばした。
【0037】
図12、13および図14における以下の事項は、RH−7を用いた繊維紡糸について好ましいと見出された温度および流速における充填または未充填ABS、ポリプロピレンおよびポリエチレンに関する流体学的結果である。
【0038】
ポリマー繊維の工業的溶融紡糸は、連続的で一貫した繊維を達成するために正確に保持しなければならない数多くの操作パラメータを有する非常に制御された方法である。この方法は、もっともよく乾燥ポリマーチップを用いて開始する。乾燥ポリマーチップはスクリュー押出し機により溶融および移送され、スクリュー押出し機はさらに溶融物を混合および均質化する。溶融ポリマーを非常に高い圧力で、ファインフィルターに通過させ不純物、分解ポリマー片および気泡を除去する。フィルターは、さらに溶融物を均質化する。正確な計量ギアポンプを使用して、材料を正確な流量でフィルターに通過させる。図20参照。
【0039】
そして、均一な温度制御された溶融物を、一貫した流量で紡糸口金ダイにおける毛細管に通過させる。この孔は、直径100〜500μmであり、そしてポリマーを流体の流れとして絞りだす。紡糸口金における剪断力は、ポリマー分子を部分的に整列させるが、押出し物がダイから出る際に膨張するのでその整列のほとんどが失われる。押出し物を急冷し、底から引き出し、これをより薄くかつ長く延伸する。数多くの急冷法があるが、これらの全ての基本的特徴は、引き出す際にフィラメントの冷却を制御することである。延伸は、延伸速度に依存する度合いの整列を提供する。
・ 低い配向 − 1800m/分未満
・ 中程度配向− 1800〜2800m/分
・ 部分配向− 2800〜3500m/分
・ 高い配向− 4000〜6000m/分
・ 完全配向− 現在得られないm/分
紡糸後、繊維を冷時延伸する(ポリマー分子を配向させる必須段階)。紡糸からの配向が高いほど、後延伸における延伸比が低くなる。構成する分子を更に整列するので、延伸していない繊維は、長さの4倍まで延長される。
【0040】
繊維延伸法において、プロセス制御は、極度の重要性を有している。溶融は一貫していなければならず、紡糸口金を通る流量は均一でなければならず、そして温度を十分に制御しなければならない。加えて、フィラメントの強度を超える引張り張力と同様に、破損または破壊を生じさせる溶融物への応力をさけなければならない。延伸流量が整列を提供するのに充分に高く、ポリマーの緩和時間が整列した分子がはねかえる機会を有さないように充分長い際に、紡糸における分子の最高の配向となる。従って、整列は、高い紡糸速度、高い分子量および良好な急冷効率に関連する。しかしながら、低速紡糸および引き続いての冷時延伸は、しばしば高速紡糸よりも良好な整列を提供する。付加的なアニーリングおよび熱時延伸とともに低速紡糸および高速紡糸は、より一層良好である。
【0041】
RH7を低速繊維紡糸法の押出し機として使用した。プロセスのいくつかの領域において制御が劣るが、溶融紡糸の基本的要求を満足した。充分に制御された力を溶融物に与えながら、RHステップモーターは、流量の優れた制御を提供する。繊維延伸に最も好適であることが見出されたダイは、直径0.5mmを有し、最高の繊維は、従来のダイホルダーの壁への膠着する危険性なしに押出し物をバレルから出させる「平らな出口」ダイホルダー上に保持された8mm×0.5mmダイを通じて延伸された。しかしながら、ダイの平らな入口は、溶融紡糸口金のものとは異なる。RH7温度制御は、0.1℃までの精度である。
【0042】
要求される圧力がメルトフラクチャを生じないレベルで流量を確実に保持するために、流体学的試験を粘度だけでなく、溶融強度についても行った。以下の図は、研究したポリマー系に関するメルトフラクチャおよび溶融条件を示す。
【0043】
繊維を延伸する際に、周囲温度のもの以外の急冷領域を適用せず、そして紡糸速度それ自身を工業的方法に示されるよりもはるかに遅く、すなわち100〜200m/分とした。
【0044】
35〜50μm繊維の直径を有する繊維を製造し、そして伸張により25μm以下に縮小した。充分分散したSWNTを有する均一な厚さの繊維が製造された。数多くの場合における未精製SWNTの使用のため、多くの繊維は分散が均一ではなかった。毛細管レオメーターの使用は、均一繊維を導いたが、押出し機の使用はより均一でない繊維および数例においては厚さが濃縮された小部分を有する繊維を製造する傾向にあった。押出し機を使用するプロセスアッセンブリにおいて、一定の圧力をダイまたは紡糸口金上で保持するために押し出された溶融物を流体定量ポンプに入らせることは当該技術分野に公知である。特に押出し機が毛細管押出し機よりも加工(製造)において連続的であるので、押出し機は、押出し機を使用する能力を示すのに有効であった。図21は、充分に整列されたSWNTを示すPP1200の顕微鏡写真を示す。整列は、いくつかの繊維系において達成された。NTTナノチューブを使用して製造した繊維も、整列を示したが、SWNTが出発材料のほんの25%であったので、整列は限定されていた。
【0045】
引張り試験を、図18に示す通り8個のポリプロピレンサンプルに対して行った。これらのサンプルのうち4個は、純粋なポリプロピレンとし、そしてこれらのサンプルのうち4個は、SWNTを含有するポリプロピレンとした。ポリプロピレンは、Aldrichから購入し、そしてSWNTは、Nanotechnologies of Texasにより提供された。SWNTを含有する4個のサンプルは、圧縮成形シートからダイカットされたもので、そしてタイプV幾何学的配列を有している。純粋なポリプロピレンの4個のサンプルは、より薄い圧縮成形シートからダイカットされたもので、そして厚さに関してタイプV幾何学的配列仕様を満たしていない。8個のサンプルのうち、6個は正当なデータを提供した。分析されなかった2個のサンプルのうちの1個は、セットアップエラーの結果破壊し、そして他のサンプルはゲージ長さの外側で破壊した。両方の無視したサンプルは、純粋なポリプロピレンであった。使用した試験速度は、毎分0.5インチであり、広い歪が観察されなかったので、歪をゲージ長さ(0.3インチ)に渡って計算した。引張り強さは改良されなかった。両方の材料の平均引張り強さは、28MPaであった。しかしながら、SWNTを有するPPの破壊までの歪は、115%改良された。応力−歪曲線により示されるように、純粋なポリプロピレンサンプルは、複数の工程の中で上手くいかなかった。充填ポリプロピレンサンプルは一工程で上手くいかなかった。
【0046】
繊維を繊維20本の束で試験した。純粋なポリプロピレン繊維の直径は、0.0040インチおよび充填したポリプロピレン繊維の直径は0.0015インチであった。使用した試験速度は、毎分30インチとした。歪を繊維の全長(4インチ)にわたって計算した。図23は、単一繊維の強度を示す。このグラフは、束が耐えられる最高負荷まで高くしている。この負荷に従って、個々の繊維は壊れ始める。SWNTの添加は引張り強度を743%増加し、そして破壊までの伸びが2964%増加した。考慮すべき一つの重要な点は、これらの繊維がさらに進展すると、これらは、ポリマー系自身を整列させることによってもPPのバルク性質を超えるということである。整列ポリマーに沿って整列したSWNTは、単一ナノチューブ自身から期待されるものと匹敵する改良された強度を充分にもたらすが、この系の伸び特性は、充分に整列したポリマー系のものに減少する。
【0047】
ASTM D638による引張り強度試験を、タイプV幾何学的配列を有する8個のサンプルに対して行った。4個のサンプルは、純粋なポリプロピレンから作製され、そして残りの4個のサンプルは、ポリエチレン中のSWNTとした。ポリマーマトリックス材料は、ペレット形態のPhillips Marlexポリエチレンとした。Nanotechnologies of Texasは、使用したSWNTを供給した。圧縮成形シートからのダイを使用して試験検体を切断した。使用した試験速度は、毎分0.5インチとした。広いプラスチック変形がサンプルの大部分に観察されたので、歪をサンプルの全長、すなわち2.5インチにわたって計算した。SWNTの添加は、引張り強度を17%そして伸びを37%減少した。
用途
ナノ繊維連続繊維の用途は、広範囲に及ぶ。図24は、NCFを使用して達成することができる種々の生成物および加工を示す。NFCの工業的な可能性は、複合体製造工業の大部分にインパクトを与える。それ以外に、これらは、織物および繊維工業にもインパクトを与える。
例示系(静電気ベールおよび表面仕上げマット)
ESD材料は、包装目的および電子機器製造工場における職員用の衣類、放電性いす、作業台、カーペットおよびフロアマットにおいて必要とされる。ESDは、日常生活の一部であるが、電子工業においては、静電気による損傷およびやり直しの費用が年間数十億ドルと推量される。電子工業の全ての失敗のうち、約40%がESD関連である。
【0048】
構造物用途のミクロンサイズの繊維について、NCFは、プレフォーム、真空袋、ハンドレイアップ用のクロスプライ(crossplies)に織り込むことができる。整列されたナノ繊維は、高性能複合体において最適の機械的特性を達成することが期待される。組立てられたクロスプライ系は、高い程度の整列がこれらの系でより容易に制御できるので、なおも等方性複合体に優れた性能を与える。
【0049】
受入れられたモデルに基づいて、これらの材料が著しい戦略的可能性を有し、性能の向上を提供し、そして直接的な工業的利益(すなわち、強度/重量比の向上)を与えることはほとんど疑問がない。いくつかの変更が特殊繊維系に生じ得るが、現在利用されている複合体繊維製造技術は、著しく変える必要がなく、従って政府および民間の複合体コミュニティから快く受入れられるであろう。これらの繊維は図24に示す方法を有する種々の用途に使用することができる。
【0050】
本発明は、種々のポリマーマトリックスにおけるナノサイズ繊維の分散および整列にわたる制御を提供する連続繊維複合体としての等方性または異方性の形態のナノ繊維を加工する革命的方法を提供する。複合体製造コミュニティおよびその他の工業に整列されたナノ繊維を提供する明確な道を照らす。アニーリング、反応、熱分解、更なる変性および機能化等の付加的加工によりナノ繊維を容易に操作する機会を提供する。ナノ繊維整列を強化または阻害するためにポリマーを選択するか、ナノ繊維と架橋または強く結合するために選択することができる。核生成部位として作用しそして結晶化および最終ポリマー分子形態をもたらすナノ繊維によりポリマー自身を高めそして変更してもよい。工業的フィラメントおよび繊維技術を利用しながらナノサイズ構造の固有問題を解決する。
【0051】
本発明は、静電気蓄積の防止のために所望のESD範囲で表面抵抗を達成するための改良された方法を提供する。本発明は、プラスチックマトリックスへの従来技術繊維の導入ならびに金属繊維、フレークおよび粉末または化学的変性ポリマーで充填された伝導性プラスチックの加工に関連する数多くの問題を除去または改良して、従来のプラスチック加工技術により調製することができる新規の組成物を提供する。
【0052】
流体学的分析は、ナノ繊維重量パーセントに応じて複合体製造をスケールアップする実際の可能性が目前にあることを示す。
本発明は、ナノ繊維連続繊維に加工された精製または未精製SWNTおよび気相成長炭素ナノ繊維強化熱可塑性複合体を示す。これらの複合体は、精製および未精製SWNTまたは気相成長炭素ナノ繊維をHaake小型内部ミキサ(MIM)中で熱可塑性マトリックスと混合することによって調製することができる。混合方法は、SWNTまたはナノ繊維をチャンバ内の異なる位置に広げる分配混合およびナノ繊維凝集を克服するのに高剪断条件およびエネルギの適用を必要とする分散混合から構成された。SWNTまたはナノ繊維(SWNT10重量%までを使用した)0〜60%の範囲の異なる重量パーセントの組成物を調製した。混合後、得られた複合体材料を次いで150〜200℃の温度にホットプレスして薄いシートを形成した。これらのシートを次いで引き続きの押出しおよび繊維形成のためにペレット化した。ナノ繊維の整列が得られ、従って種々の用途(空間、防御および商業用途)のための高性能構造物を与える従来の複合体製造技術でさらに加工する実現可能性を促進する、連続ミクロンサイズ繊維として複合体を加工した。整列されたナノ繊維またはSWINTが得られる。NCFの表面条件は、整列および脱凝集の度合いと同様に変更することができる。
【0053】
ナノ繊維が黒色材料であるので、特定用途のための透明複合体材料が存在する可能性が問題となる。複合体を半透明まで薄くできるので、ある程度の透視度を得ることができる(これはシート形態に適用できない)。
【0054】
複合体は、ミクロンサイズ繊維として調製されると、構造用途、熱および電気用途に使用できる可能性を提供する。高異方性熱系が特に興味深い。
実施例:
ナノチューブ強化ポリマーの熱溶解積層法への適用
ナノチューブ連続繊維加工で生じる整列は熱溶解積層(FDM)加工によって達成することができる。ナノ繊維強化ポリマーのスプールは、ラピッド・プロトタイピング(RP)プロセスであり、時には自由形式組立技術とも認識されるFDMプロセス用のワイヤ供給原料に作り替えられ、多層(layer by layer)製造において、コンピュータで生成された三次元(3D)画像のスライスを用いて、最終パーツに加工する。整列は押出しによる剪断処理及び(所望の直径を達成するための)巻取りの間の幾らかの延伸流動のためであり、FDMプロセスの熱吐出の面において増強される。このプロセスにおいては、ナノ繊維複合ワイヤ(直径〜2mm)がミリメートル・サイズのダイを通して押出され、シート及び3Dパーツを構築する列を生成する。FDM供給原料は、押出しによってワイヤを製造するか、ワイヤを作成するさらなる加工でNCFをグルーピングすることによって製造することができる。
【0055】
FDMに関連する別の用途は、(幾つかの場合において電気的及び熱的特性を付与する、強化性ナノチューブを有する)材料のスプールを作製して商用及び一連の用途のプラスチックパーツの小バッチを製造することであり、FDMでは、他の伝統的な技術の場合には価格を補うために数千のパーツを製造しなければならならず、そのため不可能であるか、又は非常に経費がかさむ、内部形状の複雑なパーツを製造することができる。これらのパーツの例には、医療用ツール、電子、交換パーツ等が含まれる。この材料で製造されるFDMパーツの宇宙用途の例は宇宙ステーションに対するFDMの使用であり、そこでは宇宙ステーションの限られたスペースにパーツの供給品を保管するよりも優れた供給原料(ナノチューブ充填ポリマー)が交換パーツの製造に用いられる。
【0056】
様々なポリマーと混合された気相成長炭素繊維(VGCF)が、ナノチューブを用いてポリマー複合体を製造するのに良好なアプローチであることが立証されつつある。VGCFは剪断処理によりナノ繊維の破壊なしに混合することができ、もつれた塊から始めて高度の分散を達成することができる。同様に、機能化ナノチューブはより完全にポリマー系と一体化することができる。本発明においては、「Bandury」混合という処理を熱溶解積層法(FDM)用の供給原料連続フィラメントの製造に用いたが、これは一連の用途のための複合体パーツの製造及び良好な過去材料特性(past material property)の評価を可能にする。ナノ繊維複合体は、多機能材料(構造/電気的、構造/熱的、構造/衝撃)としてのポリマー特性を増強するそれらの能力のため、FDM、SLS等の迅速プロトタイピング技術を大きく高める。
【0057】
FDMは、供給原料(連続フィラメント又はビレット)を取得してそれを熱押出しし、ポリマー材料の連続トレースを作製する製造プロセスである。これらのトレースは層を描き出し、続く複数の層を頂部に堆積させて三次元形状を構築することができる。3Dコンピュータ画像を生成することができる限り、いかなる数のサンプルフォームをも製造することができる。次に、そのファイルを切断してスライスとし、プロセスのパラメータをFDMに一致させる。その後、そのFDMユニットを、除去可能な支持体から始めて一層一層積み上げてパーツを組み立てる(「ボトムアップ技術」)。FDMパーツは、一般には、モデル、型、及び、幾つかのパーツについては、材料の利用が最適化され(廃棄物が最小化されている)、かつ工作機器及びパーツ仕上げが減らされている用途に用いられる。多くの供給原料物質が利用可能であり、これにはワックス充填プラスチック接着剤、ナイロンコポリマー、焼流し鋳造ワックス及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)が含まれる。ABSが、利用可能な他の材料に勝るその強度のため、パーツ用途により最適である。細刻炭素繊維を含む様々な強化材が充填された複合供給材料がFDMパーツの機械的強度を高める目的で現在開発されつつある。典型的には、充填ポリマーが関心の的であり、これは、それらがしばしばFDMパーツにおける弱いつながりである層間強度を改善し、かつ充填ポリマーにしばしば見られる剛性を強化する可能性を有するためである。FDMにおける高強度ポリマーの利用可能性はパーツ製造におけるFDMの用途を広げ、その適用範囲を広げる。
【0058】
本発明においては、(1)精製VGCF、(2)ペレット化VGCF、及び(3)受け入れたままの(as received)SWNTを用いて3種類の供給原料を製造した。この場合、ペレット化は製造業者からのナノ繊維にラテックスサイズを付加して取り扱いを改善する加工方法である。受け入れたままのSWNTは、高剪断及びFDM処理を用いるSWNTのABSでの例示的処理を提供した。3種類の異なる張力試験パーツのサイズを含む幾つかの異なるパーツを作製した。新規材料が現在入手可能なABSと共に作用し得ることを示すため、プレーンABSをVGCF複合体に接続するパーツも作製した。ナノ繊維/ポリマー複合体を用いるFDMパーツの加工性を評価し、張力試験を行い、かつサンプルの破断領域を電子顕微鏡を用いて分析した。ワイヤ供給原料及びFDMパーツ中の整列ナノ繊維の存在を検証するのにXRDを用いた。ナノ繊維充填ポリマーに観察される強化はこれらの複合材料がラピッドプロトタイピング、例えば、FDMの使用を強化し得ることを示す。
【0059】
FDMプロセスにおいて、速度制御の責を負う2つのフリクション・ベアリング・ローラーの間にワイヤを供給する。このプロセスは、円形ダイ内で終止する温度制御チャンバー内で行う。温度は凝固点のちょうど上で維持する。材料がダイを抜けるとき、X−Y制御押出しノズルによって所定の位置に誘導されながら固化する。FDMは、CAD制御の下で指定されたモデルを構築する、互いに隣接し、かつ頂部に重なる連続層の堆積からなる。連続する層は熱融合によって結合される。材料の熱容量は収縮の量及び材料がそれ自体に融着する程度に重要である。
【0060】
プレプレッグ用のセラミック充填ポリマーを製造するための充填供給原料を含むFMD作業を行った。充填ポリマーは、セラミックパーツを形成するために引き続き焼結される型のトレースに用いられる。ポリマーを焼き尽くして後に多孔性セラミックプレフォームを残し、それに金属又は他のマトリックス材料を染み込ませることができる。
【0061】
100nmの平均径を有する、Pyrograph IIIとして知られるVGCFをApplied Science, Inc.から受け入れたまま及びペレット化形態で入手した。受け入れたままのVGCFは、以前開発された手順による配合処理に先立って精製かつ機能化した。ABS GMID #31875はMagnumから入手した。ABSはその高強度およびFDMにおける使用のために選択された。ABSの典型的な特性を、VGCFのものと共に表1に列挙する。
【0062】
30g混合ボウルを用いたHAAKEトルク・レオメーターを用いて複合体の調製を行った。ABSを様々なナノ繊維と高剪断速度で配合し、均一な分散を達成した。この場合、分散は繊維の均一な拡散及び個々に隔離された繊維形態(個々のVGCF又は個々のロープ)を意味する。10重量%の出発サンプル複合体を調製した。サンプルは熱圧縮成型し、ペレット化(小ペレットに細断)してワイヤ押出し用の供給原料として用いた。次に複合体バッチを5rpmの速度で押出し、押し出されるワイヤの長さに対して一定の断面を維持しながらリールタイプの容器に巻き取った。
【0063】
VGCFを伴うプレーンABSおよびSWNTを伴うプレーンABSの押出しサンプルは1.7±0.1mmの直径を有し、これはFDMプロセスに最適化されたものであった。全ての複合体に対するワイヤを形成するための押出しは、プレーンABSペレットで押出しを開始し、次いで複合体材料、再度プレーンABSで仕上げて押出し機バレルを十分に充填することによって行った。このアプローチはワイヤ供給原料の複合体をワイヤの全長にわたって変化させ、そのため達成される最大組成は押出し操業の中間部で10重量%であった。
【0064】
巻き取られた供給原料材料を用いて比較的低剪断速度で操作されるStratasys Inc.のFDM1600を幾つかのパーツの製造に用いた。パーツを異なるサイズのドーム形状、宇宙船モデル、ロゴ、及び張力試験サンプルとして作製した。ストレート・バー及びドッグ・ボーン(dog-bone)型の張力サンプルを様々な強度測定のために組み立てた。これらのサンプルは、(I)平坦バー、(II)断面#1ドッグ・ボーン又は(III)断面#2ドッグ・ボーンの形状の12、9又は10堆積層からなるものであった。図34は、層に構築するポリマートレースを引き出す押出し機先端を示す、FDMプロセスの模式図を示す。矢印は表面を横切る押出し機の能力を示す。FDMトレースは、全ての場合において、90°/180°又は45°/45°方向のいずれかでクロスプライしていた。機械的試験はMTS水圧テスタを用いて行った。試験は2.54cm/分の歪速度で、室温で行った。サンプル整列の効果及びFDMプロセスの配向(頂部及び底部の配向)に関連し得るものをより良好に理解するため、サンプルの配置及び配向に注意を払った。
【0065】
複合体フィラメントの断面及び張力破断表面をJEOL走査電子顕微鏡で分析した。10重量%VGCFはこれらの材料における静電気散逸性伝導につながるものの、サンプルを金コートした。ワイヤ破断表面を、非常に脆性の破断を促進し、かつ破断の間に誘導される整列を減少させるために液体窒素に浸したサンプルから採取した。破断表面を観察することによりナノ繊維整列を研究した。一般には、整列が破断プロセスの間に生じ、結果を歪めることを防止するため、サンプルを液体窒素温度で破断させる。変形からの整列が生じないことを確実なものとするため、多大な注意を払わなければならない。
【0066】
ナノ繊維/ABS複合体は、同じ条件で処理した非充填ABSを上回る張力特性の改善を示している。表1及び2は、(a)FDM処理に続いてプレーンABS及びVGCF/ABS複合体に対して行った張力試験を示す。ここで試験した複合体はペレット化VGCFからのものであった。これらのサンプルを90°/180°クロスプライ条件で処理した。ABSのデータは、FDM処理から予想されるように、比較的一貫していた。VGCF/ABSデータについての張力試験の結果は、濃度変化及び充填ABSにおいて生じる少量の膨潤に関連する有意の散乱を示した。このデータにおける散乱は、サンプルを処理するに従ってトレースにおいても生じる供給原料直径の変動に関連するものとも考えられる。FDMにおいて用いる供給原料ワイヤ(フィラメント)はスプールに手で巻いたが、これが張力試験特性における変動につながったかもしれない。測定された引張り強度は、表1に列挙される公開ABSデータより50%低くなる傾向があった。表1はクロスプライについての補正後の張力試験の結果を示し、ここでは90°/180°クロスプライのためサンプルの半分のみが有効に試験された。ABSデータにおける一貫性及びVGCF/ABSの結果における変動に再度注意されたい。この差は非充填ABS全体に対する65%増加であり、湿潤が制限されているとしても有意の増加である。表2はSWNT/ABS材料についての結果を示す。図30は、受け入れたままのSWNTが十分に分散していないポリマー複合体微細構造の顕微鏡写真を示す。非ナノチューブ材料(非晶質炭素及び金属触媒)はナノチューブの剪断混合を妨げる。混合が均一ではなかったため、強度の改善は重要ではあるが決定的なものではない。
【0067】
試験した様々なサンプルは、剛性において150%増加までのモジュラスを示した。SWNT/ABSサンプルでは剛性の100%増加が見られた。強化ABSについては延性の減少が観察され、ナノ繊維強化サンプルには延性の限られた徴候を伴う脆性破壊があり、ここでは、クラックの伝播が、基本的には、適用された応力に平行に配向されたフィラメント層に限定された局在化した降伏を有することがSEM検査で明らかになった。この局在化した降伏はひび割れ形成の形をとる。
【0068】
VGCF/ABS供給原料を押出しプロセスの後にSEMによって分析した。図31はワイヤ供給原料の長軸方向の断面を示す。矢印はワイヤの軸方向を示す。押出し高剪断条件及びワイヤ巻取りの間の延伸流動はナノ繊維の整列を生じた。十分に分散し、互いに束ねられてはいない、高度の整列VGCFが示される。繊維が非常に清浄と考えられ、ポリマーが繊維の周囲で高度に変形されてはいないため、湿潤は繊維の引き抜きで生じる低レベルの耐性を伴う劣性として記述される。これらの繊維は出発状態と同様の長さを有し、混合及び押出しプロセスにおいて生じる高剪断からは損傷を受けない。XRDをVGCF整列のさらなる評価に用い、表3は評価した供給原料の幾つかのサンプルの結果を示す。従来の研究において等方性サンプルは強度の変動を示さなかったため、優先繊維方向の存在が強度強化に決定的に貢献する。
【0069】
理想的ではなかったが、図32において見られるように、ABSサンプルは一貫して良好なトレース間融着を示した。VGCF/ABSサンプルは融着状態において変動を示し、それは張力結果及び観察される散乱と一致する傾向にあった。図32に示されるのは、90°/180°にクロスプライされた6層を有するサンプルである。VGCF/ABSについては、部分的には、FDMが、そのプロセスパラメータにおいて(充填材料の異なる熱的特性に関連する)供給原料材料の低膨潤について最適化されていないため、層間強度が依然として低いことに注意されたい。VGCF/ABSにおいては、幾つかの場合において、多孔性の制限も観察されるが、これは押出しプロセスのためであって初期Banbury混合のせいではない。
【0070】
プレーンABSの使用を排除する、より多くの複合材料が用いられる押出しプロセスの最適化は、この欠陥状態を排除するものと期待される。90°/180°クロスプライサンプルにおけるトレースの方向を示す図32及び図33において不十分な融着のサンプルを見ると、FDM処理の間のトレースも整列VGCFの状態を生じることが示される。図26図33に図示される2つの状態を示す。顕微鏡写真(a)は、生成されたトレースを指示される領域として示されるトレースの軸方向と共に示す。図(b)はトレースが効果的にページの外を指し示し、それによりトレースの軸方向がそのページから外に出ることを示す。ここでもVGFCの整列状態、分散及びクラスター化の不在に注意されたい。また、VGFC周囲の、もしくはかつてVGCFがあったポリマー表面上に残る開放空間(溝(trough))(顕微鏡写真a)又はVGCFとポリマーマトリックスとの間の空隙を示す、マトリックスから容易に引き離されるVGCF(顕微鏡写真b)のいずれかとして観察される劣った湿潤にも注意されたい。また、顕微鏡写真(a)におけるVGCFが顕微鏡写真(b)に見られるものの多くよりも長いため、張力試験条件で整列したもの(引張り軸は顕微鏡写真(b)の状態で整列した)について幾らかのナノ繊維の破壊が生じるらしいことにも注意されたい。横断方向の層の場合、破損が大部分マトリックスの破損によって生じることを観察することができる。ミクロンサイズの円形粒子はABSの分離ブタジエン相と予想される。これらの特徴はプレーンABSにおいても観察された。サンプル表面上に見られる孔はVGCFの引き抜きから生じるもので、プロセスの多孔性から生じるものではない。プロセスの多孔性はポリマーにおける表面の形態学的相違を示す傾向にあり、2、3の初期に処理されたサンプルでのみ観察された。
【0071】
ABSの破断挙動に対するナノ繊維の付与された効果は、分子ネットワークが十分に変形し得ない緊密に架橋した樹脂の破損挙動に類似する。この場合、ナノ繊維は降伏耐性を低下させ、鎖の可動性の制限として作用する。鎖の可動性の減少は材料の剛性を増加させ、それは押出しプロセスでの膨潤における相違によって最初に観察される。したがって、複合体の強靱性は純粋なABSよりも低いが、強度及び剛性は改善される。
【0072】
FDMの使用におけるこの用途と共に、本発明の材料は多機能特性を提供する能力を有する。すなわち、材料は構造的であるが、熱管理系又は静電気放電材料(すなわち、電磁気妨害材料)でもあり得る。最初にNCFと記載されたこの新規材料は、機械的、電気的、熱的、又は組合せ用途の一連のパーツに製造することができる新規多機能材料系である。NCFの例は、機械的/電気的、機械的/熱的、電気的/機械的、衝撃/強度、及び衝撃/電気的もしくは熱的である。NCFはセラミックマトリックスで作製することができ、セラミックマトリックスでパーツを作製するためのFDM様の系(ロボキャスタ(robocaster))が存在する。
【0073】
FDMは、さらに、ナノ繊維連続繊維の作製に用いることができる。ナノ繊維複合供給材料(ワイヤ又はフィラメント)で開始することにより、高剪断及び伸長方向の流動が実施される繊維の押出しにFDMを用いることができる。ダイにおいて剪断作用を行い、材料がダイを離れるにつれて引き続く伸長方向の流動が達成され得る。10重量%VGCF及び10重量%の受け入れたままのSWNTを含む連続繊維はFDMから加工されている。
実施例:
完全一体化ナノチューブ複合体の多機能用途への適用
完全一体化ナノチューブ複合体(FINC)をプラスチック軽量ワイヤ及び相互接続として実施する。この研究の目的はナノチューブの性質を大規模に模倣することであり、それによりそれらの特性をミクロ及びマクロスケールでより積極的に用いることができる。ナノチューブを模倣するという考えは2つの概念を包含する。第1は、先端の結合(及び/又は側壁機能化)、同時重合、及び高剪断整列による単層ナノチューブ(SWNT)統合である。この経路は、単一のナノチューブの特性をナノチューブ同士で転写させることによって拡張するように設計されるハイブリッド材料を提供する。すなわち、マトリックスと考えられる材料は同時にナノチューブ様でなければならない。この系においては、ナノチューブからポリマーへの接続は機械的特性の強化を助長するように設計される。この経路における第1工程はポリマーを模倣すること(ポリマー加工)によるものであり、それにナノチューブを模倣するための構造の設計が続く。ナノチューブの模倣という目的につながる第2の概念は、ナノチューブの特性を、それらの特性が材料強化のために助長され得る他の系において同定することを含む。出発系はSWNTに類似するナノサイズの黒鉛材料であり、そこでは引き続く処理の前にそれがそれ自体から分離されなければならない。黒鉛の小薄片を個々の薄片ベースで分離することができ、その薄片内には欠陥が生じないことを考慮せよ(ナノチューブに酷似する)。これらの薄片を、我々がナノチューブの先端及び外壁を機能化するのと類似の方法で、薄片の外側の利用可能な結合によって結合させる。要するに、ナノチューブを模倣する、チューブではなくナノメートルサイズの炭素シートを幾つかの方法で同定する。ナノチューブ様材料の幾つかの結合条件は、翻って、ナノチューブ最新材料の進展を意味する。
【0074】
本開示は、伝導特性の良好な安定性を伴う高度に伝導性のポリマーワイヤ及び相互接続システム並びに気体相互作用によって伝導性を変更する浸透性プラスチックを製造する方法を説明する。
【0075】
製造される材料は、10重量%のSWNTを熱可塑性ポリマー系に添加するだけで抵抗率の大幅な低下を示した。その鍵は、均一な分散を獲得し、それにより伝導が構造的強化の機会をも伴って生じ得るようにすることである。ナノチューブの分断分散は低侵出閾値につながるが、構造的強化はほとんどないか、全くない。
【0076】
本発明の方法は、ポリアセチレン(PA)のもののような金属様伝導特性に似るが、より安定であるか、又はより高い環境安定性を有する、高度に導電性のポリマーを提供する。ナイロン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、及び導電性エポキシのポリマーベースから加工することで、ナノチューブを模倣するためのポリマー構造が開発される。導電性エポキシは、絶縁、半伝導又は伝導特性を伴って加工することができるポリマーである。加工はその安定性、その伝導特性をさらに強化し、高温ポリマー系を提供する。これらの材料はワイヤ及び他の相互接続に用いることができる。それらの特性を多機能用途用に拡張することもこれらの材料の熱的及び構造的特性を強化する。気体透過性ポリマーは気体露出によって導電性が変化するものと考えられる。
【0077】
SWNTの誘導体化又は機能化は、ポリマーと複合体との交差点である進化したハイブリッド材料の作製における新たなアプローチへの道を開く。炭素繊維と混合した伝統的な複合体は、ポリマーマトリックスとのナノチューブの相互作用及び結合の量が限定されている。側壁及び先端機能化は、ポリマーとの結合及び相互作用を改変及び制御する、異なる有機基の付加を提供する。現在入手可能な精製ナノチューブ材料はSWNTロープの絡まった束からなる。そのような材料をポリマーと混合すると、混合の間に、ランダムなポリマー・コイルとランダムなナノチューブの絡みとが混ざり、物理的連結が生じる。これはナノチューブの分散性、及び生じる複合体の均一性を制限する。SWNTを酸化環境下で切断することで、より容易に分散し得るより短いチューブ断片が得られるだけではなく、ナノチューブの先端が開放され、化学的修飾を施すことが可能となる。SWNTの側壁フッ素化もそれらのロープを破壊し、そのため個々のチューブがアルコールに可溶となり、チューブ壁への有機分子の付加につづくドアが開く。
【0078】
SWNTは開放端で誘導体化することができ、酸中での超音波処理によってそれが酸素基(ヒドロキシル、ケトン、カルボン酸)で修飾されるようになる。カルボン酸基はアミンと反応してアミド結合を形成することができ、これは相溶化基の結合を可能にしてポリマーマトリックスとの相互作用を増加させる。異なる長さの脂肪族及び芳香族鎖を結合することができ、これらの有機鎖は極性基、例えば、エステル、エーテル、アミド、又は末端アミノ基を有することもでき、これらを適切なポリマーマトリックスとの水素結合相互作用の創出に用いることができる。有機化学を結合分子における官能基の修飾に用いることができ、これはポリマーとの相互作用の完全な制御を可能にする。図35右側は、切断SWNTの酸化端へのアミド連結を介するポリマー鎖の結合を示す。左の部分は、ポリマーマトリックスに対する相溶剤として作用し得る有機分子の結合を示す。図の中央は、反応性分子の結合(この場合は二重結合)をポリマー鎖の出発点として用いるための方法を示す。図の右の部分に示されるように、ポリマー鎖はSWNTの先端に直接結合させる。
【0079】
結合した有機分子は重合の出発点としての役割も果たすことができ、その例は図36に示され、そこでは二重結合を有する分子の結合をポリエチレンのラジカル重合に用いることができる。形成されたポリマー鎖を開放ナノチューブ先端に直接結合させる。重合の間、2つの成長するポリマー鎖が接合してもよく、これはSWNT間でのランダムな長さのポリマー連結を創出する。また、開放ナノチューブ端から一以上のポリマー鎖が出発する可能性もある。これは、SWNT先端から出発するランダム重合からの結果であり得る架橋の提示である図37において例示されるように、ポリマー間で架橋剤として作用するナノチューブを生じるものと期待される。
【0080】
ナノチューブへの異なる連結を生成することはブロックコポリマーの異なるブロックを生成するようなものである。ナノチューブ・ブロックコポリマーの提示である図38において、モノマーAのポリマーブロック端部で官能基(y)と反応する官能基(x)を付加することにより、ナノチューブ先端を活性化することが想像される。生じるポリマーは「ナノチューブ・ブロックコポリマー」であり、ここでナノチューブはその複合体を構成する部分であって、ポリマーマトリックスに化学的に結合する。これらの反応は、アミド結合を用いる単純な有機分子の結合に類似する方法で進行させることができる。
【0081】
ポリマー・ブロックは、異なる特性、化学的主鎖、反応性、長さ及び長さ分布を有するように選択することができる。ナノチューブ間でのポリマー鎖の性質及び長さの変化は、その複合体の特性を選択的に変化させることを可能にする。異なるポリマー・ブロック(B)を有し、ナノチューブ・ブロックコポリマーの特性をさらに改変及び制御することも可能である。図39、ポリマー・ブロックが交互に並ぶ、ナノチューブ・ブロックコポリマーの2種類の異なる可能な立体配置に示されるように、ブロックの異なる交互配置(ポリマーA、ポリマーB、ナノチューブ)が可能である。
【0082】
これらの場合においては架橋も生じることがあり、架橋の量は開放ナノチューブ先端に官能基xを創出する試薬の量を制限することによって制御することができる。このようにして、「活性化」部位の平均量を制御する。閉鎖SWNT先端は、ナノチューブにポリマーを連結させる官能基の結合についてより多くのオプションを可能にするフラーレン化学の知見を適用することによって修飾することもできる。別の可能性は、図40、架橋剤として作用するナノチューブとのナノチューブ・グラフトコポリマーに示されるように、グラフト共重合において機能化SWNTを用いることである。反応基(その量は制御することができる)を含む鎖を有するポリマーを「活性化」ナノチューブと混合することができ、それを鎖の側部に結合させることができる。このアプローチも架橋を生じることができ、ポリマー鎖間でナノチューブが架橋する。反応又はナノチューブ先端の反応基を制御することによって側部のみにナノチューブを有するポリマー鎖を創出することも可能である。例えば、図41、ナノチューブの一側部のみをポリマー鎖に結合させることができるナノチューブ・グラフトコポリマーに示されるように、先端を固体支持体に結合させ、露出した先端を「脱活性化し」、かつ他の先端を誘導体化してポリマー鎖と反応させることができる。
【0083】
第2のアプローチは単層ナノチューブの側壁誘導体化を用いることである。ナノチューブの側壁をフッ素化することができ、フッ化の量の制御が可能である(C2Fの化学量論まで)。アルキル鎖について従来示されるように、フッ素基を有機基で置換することができる。幾つかの異なる末端有機基を側壁に結合させ、有機化学技術によってさらに修飾することができる。最も単純なアプローチにおいては、側壁の修飾をポリマーとナノチューブとの相互作用の制御に用いることができ、これはSWNTを、極性基の有無にかかわらず幾つかのポリマーマトリックスに適合させる。フッ素化及びアルキル化SWNTは個々のチューブとして分散もさせて極性溶媒(例えば、アルコール類)中に安定な懸濁液を形成させるが、これは側壁に対する化学反応の実施の他により容易な操作、分散性を可能にする。
【0084】
壁に反応基を有することで、図36の右側に概略が示されるものに類似する方法で、重合をナノチューブから出発することが可能となる。しかしながら、側壁誘導体化の場合、ナノチューブは重合の多機能スターターとして作用し、生じるポリマー・ナノチューブ複合体はおそらく高度に架橋し、これがおそらくは最終生成物の熱硬化性を生じる。予想される構造は図42、架橋を創出するランダム重合での側壁結合ポリマー・ナノチューブ複合体、に概略が示される。このランダム架橋を最小化又は制御する提示法の1つは、図43の左パネルに示されるように、ナノチューブ壁の一部がポリマー鎖で覆われないようにナノチューブを基体上に堆積(及び結合)させることであり得る。図43は「毛髪状チューブ複合体(Hairy-tube composition)」を示す。左側:基体上のSWNT、露出表面のみがポリマーで覆われる。右側:固体支持体に結合するSWNTの先端、ポリマー鎖の長さ及び架橋を制御する能力を有する。別の可能性は、先端の化学を固体支持体へのナノチューブの結合に用い、「毛髪状チューブ複合体」を創出することである。チューブ壁における重合開始基の量は変化させることができ、架橋の可能性はナノチューブの結合点の間隔を空けることにより、及び重合の程度を制御することにより制御することができる。このアプローチの概念の概略図は図44の右パネルに示される。ナノチューブに結合するポリマー鎖の長さの制御は最終複合体の特性全体にわたる制御を可能にする。幾つかの異なるポリマー鎖を、ナノチューブを懸濁又は溶解するための溶媒の妥当性の問題なしに、この方法で結合させることができる。
【0085】
図43及び44に示されるものと同様に、固体支持体へのSWNT先端の結合もナノチューブ・ブロックコポリマーを創出するアプローチの1つである。重合を露出した先端から開始することができ、すなわち、ポリマー・ブロックをそれに結合させることができる。このアプローチは、生化学におけるペプチドのMerrifield固相合成に類似する方法で、交互に配置されたモノマーを重合するのに用いることもできる。ナノチューブを固体支持体から分離した後、別のポリマーを非処理先端に結合させ、又はナノチューブ・ブロックコポリマーを異なるポリマー中の側基にグラフト化するのにそれを用いることも可能である。
【0086】
この方法で作製することができる整列SWNT最新ポリマーは図45、剪断配向の後、ポリマーマトリックスに化学的に結合されたナノチューブ、の一例に示される。重合を高剪断整列法と組み合わせることで、Kevlarに類似する系、又はナノスケールでの特徴が高度の整列であり、したがって特性の強化につながる超高密度ポリエチレンを製造することができる。この点で、SWNTを模倣するという観念が支配し始める。結合を提供してナノチューブによって達成することができる強化を継続することは、この研究にとって重要な選択点である。
【0087】
ナノチューブの側壁誘導体化がグラフェン(graphene)シートの連続性を破壊し、それがSWNTの電気、熱及び機械特性に対する効果を有することに注意することが重要である。先端をアンカー点として用いることが幾つかの場合においてより良好な選択であり得る。他の重要な点は、チューブを長さ、直径のタイプで種別して用いられるチューブが導電性を促進するためのものであることを保証する可能性である。大スケールでのナノチューブの模倣は、ナノチューブの特性の良好な安定性がもたらされるように化学的結合を設計することを意味する。統合は、フリーのマトリックス(統合されたSWNTを含まない材料)の可能性の低下を意味する。この概念の継続は気体透過性プラスチックの使用につながる。伝導性ポリマーはそれらがどのように処理されるかに応じて大きな伝導範囲を有するため、気体透過性プラスチックとカップリングさせて気体検出が起こり得るようにすることが可能である。気体との相互作用は伝導を変化させ、シート構成のワイヤに検出能力をもたらす。SWNTの精製、分離、機能化、及びSWNTと気体透過性ポリマーの組み合わせ、並びに伝導及び侵出の調整により、様々な気体と接触したときに伝導性ポリマーの導電性を変更させるのにこれらの系を良好に用いることができる。
【0088】
実施例
強化された完全一体化ナノチューブ複合体から開発されたマイクロメテロイド保護のためのシールド
ナノチューブの性質をより大規模に模倣してその性質がミクロ及びマクロの規模にさらに積極的に使用できるように、完全一体化ナノチューブが上述される。ナノチューブ先端の結合、クロスリンクインク、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、側壁結合、及び基体に関する上記の部分の一般的な議論は、等しくここで適用可能であり、そして参照によって組み込まれる。一つの例示の用途は、極端な軽量及び強度及び強靱性が望まれる宇宙用途のためのシールドである。
【0089】
複合材料は、ナノチューブを使用する先進材料を製造するための方法論としてみられるが、慣用の複合体の処理は、非常に高い強度の系に関するかぎり進むべき道ではありえない。もし、エポキシがより高い強度特性が通常実現されるので、多くの複合体用途にとって最適なマトリックスであると考えるなら、エポキシの伸び特性がSWNTについて期待されるものよりも有意に低いことをも認めなければならない。図46は、エポキシマトリックス中のSWNTについて期待されるものに匹敵する複合体系をいかに典型的に設計するかを示す。ナノ複合体について、sfはナノチューブの極限強度でなく、sf(e)であることに注意されたい。これは、マトリックスが強化材よりもはるかに低い歪みで破損するからである。典型的な強化材ではマトリックスと繊維との間に類似の伸び能力がみとめられるが、SWNT系は、SWNTが5%以下の伸びを有すると期待されるので、一般的ではない。開始時、ナノチューブの強度能力のかなりな部分が、典型的なエポキシ樹脂と結合したときに捨てられるようである。たとえそうだとしても、複合側計算(ここでは、桁数の「簡単な(back of the envelope)」計算としてのみ使用される)を考慮したときに、このアプローチを使用したときに強度の増強は、非充填のポリマーよりも3桁大きいと見積もられる。表1は、機械的強度の種々の計算内で使用される、ナノチューブ及びマトリックスのためのパラメーターを示す。得られた性質の増強は高そうに見えるが、非充填エポキシを越える十分な強度の増強を与える高強度エポキシが既に存在することを認めなければならない。従って、通常の複合体の開発は、ナノチューブの可能性の多くが捨てられるので、進むべき道ではない。
【0090】
完全に整列された不連続の系が生じると仮定すれば、計算により、強化のための最大限の使用を得るためのナノチューブの臨界的な長さ(sf(e)に基づく)は約6ミクロンであるべきである。SWNTの長さについての現在の理解によると、それらは長さ0.3〜0.6ミクロンであり、好ましい強度促進のために必要とされるよりかなり小さい。しかしながら、短い繊維によりまさに強靱性が促進されることに注意されたい。
たとえこれがその場合でないかもしれないとしても、これらの計算によりナノチューブとマトリックスとの完全な結合が仮定されることにも注意されたい。機能化を介した結合はナノチューブに沿って断続するようであり、非機能化SWNTに関しては、より長いナノチューブに対してのみ有意となるファンデルワールス力によってのみ行われると期待される。なされなければならない付加的な考慮の一つは、現在までに加工されたSWNT複合体の大半が、配向を揃えた系ではないという事実の調査を含む。図47は、ケリー−タイソンの式により、軸外し整列を有するSWNT複合体の、期待される複合体強度を示す。低い剪断強度と通常の応力により、複合体強度がさらに低下することに注意すべきである。これら様々な理由から、最新材料を製造するためのSWNTの加工における拡張は、過去の通常のアプローチであった領域を越えて見通すことにより達成されなければならない。複合則とKelly−Tyson方程式の使用は、ナノチューブ複合体に対し理想的でもなければ、適切に使用されてもいないが、より慣用的な複合体製造方法に重大な欠点があることがわかる。
完全に配向されたと考えられる場合の、複合体強度とSWNTの配向の関係。全ての繊維が加えられた負荷に応じて配向された場合、初期の段階で複合体強度はむしろ高いことに注意すべきである。繊維が負荷に対し誤った方向に並び始めると(SWNTがランダムに分散した等方的な複合体の場合)、低い剪断強度と通常の強度の寄与により、複合体の強度は著しく低下する。剪断力及び通常の応力を改善する慣用の加工を使用してもよい一方、本発明の方法は完全に統合し、それによって、マトリックス中に結果として生じる可能性のある欠陥を除くことである。
本発明の操作方法および使用方法に関して、同一のことが上述の議論から一見して明らかになる。上述の記載に関して、可能な実施態様が開示されているが、可能な実施態様は説明的なものであり、本発明の工程および予測についての最適な関係は、この開示に照らして当業者に一見して容易であると考えられる、サイズ、物質、形状(shape)、外見(form)、機能および操作方法、組み立て方法および使用方法におけるバリエーションを含むものであり、そして図面中に説明したものおよび明細書中に包含されるものに対して等価にある関係の全てのものは、本発明により包含されると考えられる。

それ故、前述したものは、本発明の原理の実例として考慮され、当業者にとって多数の改変が容易に生じるであろうから、本発明を、示され又は記載された厳格な構成や実施に制限することは意図されておらず、すべての好ましい改変物及び均等物が本発明の範囲内に含まれ、該当する。
【0091】
新規であるとして特許請求されそして文言上特許により保護されることを望まれるものは、以下のものである:
完全に配向されたと考えられる場合の、複合体強度とSWNTの配向の関係。全ての繊維が加えられた負荷に応じて配向された場合、初期の段階で複合体強度はむしろ高いことに注意すべきである。繊維が負荷に対し誤った方向に並び始めると(SWNTがランダムに分散した等方的な複合体の場合)、低い剪断強度と通常の強度の寄与により、複合体の強度は著しく低下する。剪断力及び通常の応力を改善する慣用の加工を使用してもよい一方、本発明の方法は完全に統合し、それによって、マトリックス中に結果として生じる可能性のある欠陥を除くことである。
【0092】
本発明の操作方法および使用方法に関して、同一のことが上述の議論から一見して明らかになる。上述の記載に関して、可能な実施態様が開示されているが、可能な実施態様は説明的なものであり、本発明の工程および予測についての最適な関係は、この開示に照らして当業者に一見して容易であると考えられる、サイズ、物質、形状(shape)、外見(form)、機能および操作方法、組み立て方法および使用方法におけるバリエーションを含むものであり、そして図面中に説明したものおよび明細書中に包含されるものに対して等価にある関係の全てのものは、本発明により包含されると考えられる。
【0093】
それ故、前述したものは、本発明の原理の実例として考慮され、当業者にとって多数の改変が容易に生じるであろうから、本発明を、示され又は記載された厳格な構成や実施に制限することは意図されておらず、すべての好ましい改変物及び均等物が本発明の範囲内に含まれ、該当する。
【0094】
新規であり、かつ字義通りの特許により保護されることが望まれる請求の範囲は、以下の通りである:
請求の範囲
1.ポリマーマトリックス中に埋封された(0−100%)ナノ繊維の複合体を形成する方法であって、
プラスチックマトリックス中に複数のナノ繊維を組み込むこと(該組み込みは複数の凝集物を形成する);そして非重点化エポキシが早くに存在する。それ故、非常に多くのナノチューブの潜在性が放棄されるから、従来の複合体開発は進むべき途ではない。
【0095】
完全に整列された不連続の系が生じると仮定すれば、計算により、強化のための最大限の使用を得るためのナノチューブの臨界的な長さ(sf(e)に基づく)は約6ミクロンであるべきである。SWNTの長さについての現在の理解によると、それらは長さ0.3〜0.6ミクロンであり、好ましい強度促進のために必要とされるよりかなり小さい。しかしながら、短い繊維によりまさに強靱性が促進されることに注意せよ。たとえこれがその場合でないかもしれないとしても、これらの計算によりナノチューブとマトリックスとの完全な結合が仮定されることにも注意せよ。機能化を介した結合はナノチューブに沿って断続するようであり、非機能化SWNTに関しては、より長いナノチューブに対してのみ有意となるファンデルワールス力によってのみ行われると期待される。
【0096】
なされなければならない付加的な考慮の一つは、現在までに加工されたSWNT複合体の大半が、配向を揃えた系ではないという事実の調査を含む。図47は、ケリー−タイソンの式により、軸外し整列を有するSWNT複合体の、期待される複合体強度を示す。低い剪断強度と通常の応力により、複合体強度がさらに低下することに注意すべきである。これら様々な理由から、最新材料を製造するためのSWNTの加工における拡張は、過去の通常のアプローチであった領域を越えて見通すことにより達成されなければならない。複合則とKelly−Tyson方程式の使用は、ナノチューブ複合体に対し理想的でもなければ、適切に使用されてもいないが、より慣用的な複合体製造方法に重大な欠点があることがわかる。
【0097】
完全に整列されたと考えられる場合の、複合体強度とSWNTの配向の関係。全ての繊維が加えられた負荷に応じて配向された場合、初期の段階で複合体強度はむしろ高いことに注意すべきである。繊維が負荷に対し誤った方向に並ぶと(SWNTがランダムに分散した等方的な複合体の場合)、低い剪断強度と通常の強度の寄与により、複合体の強度は著しく低下する。剪断力及び通常の応力を改善する慣用の加工を使用してもよい一方、本発明の方法は、完全に統合され、それによって、マトリックス中に結果として生じる可能性のある欠陥を除くというものである。
【0098】
本発明の操作方法および使用方法に関して、同一のことが上述の議論から一見して明らかになる。上述の記載に関して、可能な実施態様が開示されているが、可能な実施態様は説明的なものであり、本発明の工程および予測についての最適な関係は、この開示に照らして当業者に一見して容易であると考えられる、サイズ、物質、形状(shape)、外見(form)、機能および操作方法、組み立て方法および使用方法におけるバリエーションを含むものであり、そして図面中に説明したものおよび明細書中に包含されるものに対して等価にある関係の全てのものは、本発明により包含されると考えられる。
【0099】
それ故、前述したものは、本発明の原理の実例として考慮され、当業者にとって多数の改変が容易に生じるであろうから、本発明を、示され又は記載された厳格な構成や実施に制限することは意図されておらず、すべての好ましい改変物及び均等物が本発明の範囲内に含まれ、該当する。
【0100】
新規であるとして請求され、特許により保護されることが望まれるものは、以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
図1図1は、(a)室温におけるPPマトリックス中のVGCF炭素ナノ繊維含量(重量%)に対する体積抵抗率、(b)室温におけるPPマトリックス中の炭素ナノ繊維含量(重量%)に対する表面抵抗率、および(c)1重量%SWNTの体積抵抗率を示す。
図2図2は、20%炭素ナノ繊維強化PP複合体の透過型顕微鏡写真であって、個々の繊維の等方性分散を認めることができる。
図3図3は、10%炭素ナノ繊維強化PP複合体の走査型顕微鏡写真であって、PPマトリックスによる繊維の濡れを認めることができる。
図4図4は、2種類のミクロンサイズの繊維複合体の直径の比較である。
図5図5は、ポリプロピレンマトリックス中の種々の濃度のVGCFにおける剪断速度に対する粘度を示し、剪断速度が増大するにつれて粘度が低下することが分かる。
図6図6は、3、5、及び10重量%VGCF−ポリエチレン系の剪断速度の増大に伴う粘度の変化を示す。
図7図7は、SWNT組成の関数としての電気抵抗率を示す。
図8図8は、VGCF及びSWNTを有するABSの表面抵抗率を示す。
図9図9は、室温で破断した10重量%SWNT/ABSポリマーの顕微鏡写真を示す。
図10図10は、PP12およびPE10系のトルクデータを示す。
図11図11は、わずか2重量%のSWNTを有するPPにおける劣化温度の100℃高温への著しい上昇を示す。
図12図12は、SWNTを添加すると、ポリマーのモジュラスの増大が認められることを示す。
図13図13は、高速押出し機および高速巻取りによる性質強化を示す。
図14図14は、異なる速度で加工した繊維の強度を示す。
図15図15は、低速押出し機ならびに続く低速巻取りにおける繊維系の直径の変化を示すプロットである。
図16図16は、Haake押出し機から繊維を作る間に集められた押出のデータを示す。
図17図17は、RH−7による繊維紡糸に好ましいと認められる温度及び流量における、充填剤有りおよび充填剤無しのABS、ポリプロピレン、およびポリエチレンの流動学的結果である。
図18図18は、RH−7による繊維紡糸に好ましいと認められる温度及び流量における、充填剤有りおよび充填剤無しのABS、ポリプロピレン、およびポリエチレンの流動学的結果である。
図19図19は、RH−7による繊維紡糸に好ましいと認められる温度及び流量における、充填剤有りおよび充填剤無しのABS、ポリプロピレン、およびポリエチレンの流動学的結果である。
図20図20は、工業的ポリマー繊維紡糸法を示す。
図21図21は、PP1000の顕微鏡写真を示し、SWNTがよく整列しているのが分かる。
図22図22は、ポリプロピレン試料に関する引張試験結果を示す。
図23図23は、単一繊維の強度を示す。
図24図24は、NCFを用いて得ることができる製品および加工を示す。
図25図25は、分散して製列したVGCF(10重量%)を有するABSを示す。
図26図26は、(a)5重量%及び(b)2重量%の分散して整列したVGCFを有するPEを示す。
図27図27は、剪断および伸長方向の流動によって繊維に方向性を誘起することによる所望のナノ繊維整列を示す。
図28図28は、ナノ繊維分散の問題点を示し、この場合得られた整列度および分散度にナノ繊維の初めの調製が影響を及ぼしている。
図29図29は、クロスプライ(cross−plying)に対する修正後の引張試験結果を示す。
図30図30は、受け入れたままの分散していないSWNTを有するポリマーの顕微鏡写真を示す。
図31図31は、ワイヤ供給原料の縦の断面を示す。
図32図32は、トレース間融合を示す。
図33図33は、クロスプライにおけるトレース間融合を示す。
図34図34は、図33の2つの状態を示す。
図35図35は、有機分子とのポリマー鎖結合を示す。
図36図36は、結合された有機分子を示す。
図37図37は、ナノチューブ架橋ポリマー鎖を示す。
図38図38は、ナノチューブブロックコポリマーを示す。
図39図39は、交互に並ぶポリマーブロックの起こり得る構成を示す。
図40図40は、グラフト共重合における機能化SWNTを示す。
図41図41は、一側面のみにおけるグラフト共重合を示す。
図42図42は、ランダム架橋鎖を示す。
図43図43は、結合された基板を示す。
図44図44は、剪断配向してポリマーマトリックスに化学結合したナノチューブを示す。
図45図45は、典型的な複合体のデザインシステムを示す。
図46図46は、(a)典型的なエポキシ複合体と(b)ナノチューブの著しい強度は除いたナノチューブ複合体との応力−ひずみ曲線の比較を示す。SWNTは高度の破断までの伸びを有すると予想される。
図47図47は、マトリックスとしてABSを基準として複合則計算によりSWNT複合体の性質を計算するのに用いたパラメータを示す。
図1
図2
図3
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