特許第5770980号(P5770980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770980熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタおよび熱転写リボンの残存情報漏洩防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770980
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタおよび熱転写リボンの残存情報漏洩防止方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 17/38 20060101AFI20150806BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20150806BHJP
   B41J 35/38 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B41J17/38 A
   B41J2/325
   B41J35/38
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-148083(P2010-148083)
(22)【出願日】2010年6月29日
(65)【公開番号】特開2012-11594(P2012-11594A)
(43)【公開日】2012年1月19日
【審査請求日】2013年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江口 健一郎
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−192562(JP,A)
【文献】 特開2010−083091(JP,A)
【文献】 特開2006−001219(JP,A)
【文献】 特開2004−268513(JP,A)
【文献】 特開2007−016212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/38
B41J 2/325
B41J 35/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドとプラテンローラとを配置した印字部に熱転写リボンを供給して印字ヘッドの発熱体の発熱作用により前記熱転写リボンのインキを印字用紙に転写する熱転写式印字装置であって、
前記熱転写リボンを前記印字部に向けて供給するリボン供給部と、
インキ転写後の印字済みリボンを巻き取るリボン巻取部と、を有し、
前記印字部とリボン巻取部との間に、印字済みリボンにエマルジョン系粘着剤を塗工する粘着剤塗工手段を配置し、
該粘着剤塗工手段は熱転写式印字装置の動作と連動して動作する粘着剤供給源と、支軸に軸支されるとともに印字済みリボンに接し、その搬送に伴って従動回転可能な塗工ローラとを含み、
前記塗工ローラは連続多孔質の海綿状の材料をロール形状に形成した多孔質ローラであり、
前記粘着剤供給源は支軸内部の送液管を経て塗工ローラに連結し、塗工ローラ表面の微細孔から粘着剤を吐出して印字済みリボンに塗工可能であることを特徴とする熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタ。
【請求項2】
印字ヘッドとプラテンローラとを配置した印字部にベースフィルムの片面に熱転写インキ層を形成した熱転写リボンを供給し、印字ヘッドの発熱体の発熱作用により熱転写リボンのインキを印字用紙に転写する熱転写式印字方法であって、
前記熱転写リボンを前記印字部に向けて供給するリボン供給部と、インキ転写後の印字済みリボンを巻き取るリボン巻取部との間に、印字済みリボンにエマルジョン系粘着剤を塗工する粘着剤塗工手段を配置し、
前記粘着剤塗工手段は、熱転写式印字装置の動作と連動して動作する粘着剤供給源と、支軸に軸支されるとともに印字済みリボンに接し、その搬送に伴って従動回転可能な塗工ローラとを有し、
前記塗工ローラは連続多孔質の海綿状の材料をロール形状に形成した多孔質ローラであり、
前記粘着剤供給源から支軸内部の送液管を経て連結した塗工ローラに粘着剤を供給し、塗工ローラ表面の微細孔から粘着剤を吐出して印字済みリボンの一面または両面に粘着剤を塗工してから巻き取り、前記粘着剤により印字済みリボンの一面とその面に隣接する面とを接着して塊状化することを特徴とする熱転写リボンの残存情報漏洩防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み、即ち印字発行した後の熱転写リボンに残る印字痕跡を容易に隠蔽可能な熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタと、印字済み熱転写リボンの残存情報漏洩防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラベル、伝票、荷札、チケット、会員証、リストバンド、カルテなどに、内容が一片ずつ異なる可変情報を印字するプリンタには、熱転写リボンを用いる熱転写方式、サーマル紙を発色させるダイレクトサーマル方式、インキジェット方式、トナー方式等があり、用途に応じて使い分けられている。中でも熱転写方式は紙やフィルムから織布に至るまで多くの種類の受像体に印字することができ、低コストであることに加え、印字後の耐候性・耐久性が得られることから広く普及している。
【0003】
図5(a)に熱転写リボン90の斜視図、図5(b)にそのb−b線断面図を示す。これらの図に示すように、この熱転写リボン90は、長尺帯状のベースフィルム33の片面に熱転写インキ層35を塗設し、所望の幅にスリットして支管38に巻回したものである。
【0004】
図6に熱転写ラベルを発行する熱転写プリンタ20の概略側面図を示す。熱転写プリンタ20は、ロール紙供給手段40と印字手段50とを筐体22内に設けたものである。ロール紙供給手段40の供給軸41には熱転写ラベル61を巻回したラベルロール60が回転可能に支持されている。熱転写ラベル61の走行経路に沿って、ガイドロール42、経路上の熱転写ラベル61の有無を検知する用紙センサ44、熱転写ラベル61のインターバルを検出するタイミングマークセンサ46が取り付けられている。その下流にはプラテンローラ51とサーマルヘッド52とからなる印字手段50が配置され、印字手段50下流の筐体22には発行口24が設けてある。
【0005】
印字手段50の上方周囲には熱転写リボン90の供給軸55、ガイドロール56および巻き取り軸57が設けられて熱転写リボン90の走行経路を形成している。熱転写リボン90は供給軸55にセットされ、ガイドロール56によりプラテンローラ51とサーマルヘッド52との間に誘導され、それらにより熱転写ラベル61とともに押圧保持される。そしてサーマルヘッド52下流の転向部材53で上方へ向きを変え、ガイドロール54を経て巻き取り軸57へ向う。
【0006】
プラテンローラ51が回転すると、熱転写ラベル61は、ガイドロール42、用紙センサ44、タイミングマークセンサ46を経て印字手段50に至り、サーマルヘッド52の発熱走査で熱転写リボン90から熱転写ラベル61にインキ35が溶融転写され、図7に示すように文字やバーコード等の画像92が印字される。印字が行なわれた熱転写ラベル61は発行口24から外部に排出される。同時に、印字済みリボン91は巻き取り軸57に巻き取られる。
【0007】
しかし、熱転写方式で紙やラベルに印字した場合、図7に示したように印字済みリボン91には、文字や画像、バーコード等の印字跡93がネガ状の反転画像として残る。使用済みの熱転写リボン91を巻き戻して印字跡93を目視することにより、印字した文字、画像、バーコード等の情報を読み取ることができる。印字した文字、画像、バーコード等の内容(情報)は様々であるが、中には守秘義務のある個人情報など、情報漏洩を防止する必要がある情報が含まれることがある。このような場合には、印字済みリボン91を人目に触れないように産業廃棄物として埋め立てるか、焼却処分することによって情報漏洩を防止していた。
【0008】
しかしながら、熱転写リボン90は、ベースフィルム33としてPETフィルムにワックス、合成樹脂、カーボンからなる組成物であるインキを塗工して熱転写インキ層35としたものであり、使用済みの熱転写リボンを埋め立て処分しても腐敗・分解せず、いつまでも印字跡が残っているため、掘り起こされると情報が漏洩するという問題がある。焼却処分は最も有効な手段であるが、熱転写リボンは可燃性の材料で作られてはいるものの、密に巻かれたロール状であるために焼却作業にはに時間がかかる。この他、シュレッダーで断裁する方法もあるが、ベースフィルム33として用いるPETフィルムは、厚さが数ミクロンと薄く、腰が弱い。刃に詰まったり絡まり易いなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−21728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためなされたもので、使用済みの熱転写リボンに残っている印字跡を隠蔽することができ、印字した文字や画像、バーコード等の情報漏洩を防止することができる熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタおよび残存情報漏洩防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
【0012】
本発明の第1の発明は、印字ヘッドとプラテンローラとを配置した印字部に熱転写リボンを供給して印字ヘッドの発熱体の発熱作用により前記熱転写リボンのインキを印字用紙に転写する熱転写式印字装置であって、前記熱転写リボンを前記印字部に向けて供給するリボン供給部と、インキ転写後の印字済みリボンを巻き取るリボン巻取部と、を有し、前記印字部とリボン巻取部との間に、印字済みリボンにエマルジョン系粘着剤を塗工する粘着剤塗工手段を配置し、該粘着剤塗工手段は熱転写式印字装置の動作と連動して動作する粘着剤供給源と、支軸に軸支されるとともに印字済みリボンに接し、その搬送に伴って従動回転可能な塗工ローラとを含み、前記塗工ローラは連続多孔質の海綿状の材料をロール形状に形成した多孔質ローラであり、前記粘着剤供給源は支軸内部の送液管を経て塗工ローラに連結し、塗工ローラ表面の微細孔から粘着剤を吐出して印字済みリボンに塗工可能であることを特徴とする熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタである。
本発明の第2の発明は、印字ヘッドとプラテンローラとを配置した印字部にベースフィルムの片面に熱転写インキ層を形成した熱転写リボンを供給し、印字ヘッドの発熱体の発熱作用により熱転写リボンのインキを印字用紙に転写する熱転写式印字方法であって、前記熱転写リボンを前記印字部に向けて供給するリボン供給部と、インキ転写後の印字済みリボンを巻き取るリボン巻取部との間に、印字済みリボンにエマルジョン系粘着剤を塗工する粘着剤塗工手段を配置し、前記粘着剤塗工手段は、熱転写式印字装置の動作と連動して動作する粘着剤供給源と、支軸に軸支されるとともに印字済みリボンに接し、その搬送に伴って従動回転可能な塗工ローラとを有し、前記塗工ローラは連続多孔質の海綿状の材料をロール形状に形成した多孔質ローラであり、前記粘着剤供給源から支軸内部の送液管を経て連結した塗工ローラに粘着剤を供給し、塗工ローラ表面の微細孔から粘着剤を吐出して印字済みリボンの一面または両面に粘着剤を塗工してから巻き取り、前記粘着剤により印字済みリボンの一面とその面に隣接する面とを接着して塊状化することを特徴とする熱転写リボンの残存情報漏洩防止方法である。
【0013】
印字を終えた熱転写リボンに、粘着剤を塗工して粘着性をを付与した状態でロール状に巻き取るため、印字済みの熱転写リボンがロール状に塊状化し、一体化される。印字した文字などの情報を目視できなくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタおよび熱転写リボンの残存情報漏洩防止方法によれば、印字を終えた使用済みの熱転写リボンに粘着剤を塗工し、接着しながら巻き取って塊状化することにより、使用済みの熱転写リボンに残っている印字跡を隠蔽することができる。印字した文字や画像、バーコード等の情報漏洩を防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタを示す概略側面図。
図2】本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタの一実施形態を示す要部拡大斜視図。
図3】本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタの一実施形態を示す要部拡大斜視図。
図4】本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタの一実施形態を示す要部側面図。
図5】熱転写リボンを示す斜視図とそのb−b線断面図。
図6】従来の熱転写プリンタを示す概略側面図。
図7】熱転写リボンの印字痕を説明するための、従来の熱転写プリンタの印字手段の要部拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタおよび熱転写リボンの残存情報漏洩防止方法の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタ20の概略側面図である。熱転写プリンタ20の主要部は、筐体22内に設けたロール紙供給手段40および印字手段50で構成される。ロール紙供給手段40の供給軸41には熱転写ラベル61を巻回したラベル連続体60のロールが回転可能に支持されている。また、筐体22内には、ラベル連続体60の走行経路に沿って、順に、ガイドロール42、ラベル連続体60の有無を検知する用紙センサ44、ラベル連続体60の裏面に設けられたタイミングマーク(不図示)を検出するタイミングマークセンサ46が取り付けられている。タイミングマークセンサ46の下流にはプラテンローラ51とサーマルヘッド52とからなる印字手段50が配置され、それに隣接した筐体22には発行口24が設けられている。
【0018】
印字手段50の上方および周囲には熱転写リボン2の供給軸55と、ガイドロール56と、巻き取り軸57とが設けられて熱転写リボンの走行経路を形成している。熱転写リボン2は熱転写リボンロール10として供給軸55にセットされ、ガイドロール56によりプラテンローラ51とサーマルヘッド52との間に誘導され、それらによりラベル連続体60とともに押圧保持される。そして印字された熱転写リボン2(印字済みリボン11)はサーマルヘッド52下流の転向部材53で上方へ向きを変え、フリーローラである粘着剤塗工手段70を経て巻き取り軸57へ向う。
【0019】
図2に粘着剤塗工手段70の要部拡大斜視図を示す。粘着剤塗工手段70は、粘着剤供給源(不図示)とそれに連結した塗工ローラ71とからなる。塗工ローラ71はフリーローラであり、熱転写プリンタ20の動作と連動し、粘着剤供給源から支軸72内部の送液管を経てロール表面の孔73から粘着剤8を微量ずつ吐出する仕組みである。塗工ローラ71は印字済みリボン11に接し、その搬送に伴って従動回転可能になっている。
【0020】
塗工ローラ71の表面は非粘着性の素材で形成されている。表面材として、例えばポリテトラフルオロエチレンのような非粘着素材を用いたり、表面をシリコーンのような非粘着性の化合物で被覆しておく。
【0021】
粘着剤は、例えば、水に粘着剤を分散させたエマルジョン系の粘着剤、溶剤に粘着剤を溶解させたソルベント系の粘着剤が使用使用可能である。ソルベント系粘着剤の方が溶剤が蒸散し易いが、吸排気設備が必要なことや作業環境や安全性の面からエマルジョン系の粘着剤を用いることが望ましい。
【0022】
エマルジョン系粘着剤の場合、塗工した後に水分を速やかに蒸発させるには、固形分濃度が40重量%以上であることが望ましい。また、印字済みリボン同士を接着するために、粘着力は600gf/25mm以上の強粘着と呼ばれる強さの粘着剤を使用する。
【0023】
次に、図1の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタ20の動作を説明するとともに、熱転写リボンの残存情報漏洩防止方法を説明する。
【0024】
熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタ20は以下のように動作する。ホストコンピュータ(不図示)から印字データを送って印字の指示を出す。プラテンローラ51が回転し、ラベル連続体60がガイドロール42、用紙センサ44、タイミングマークセンサ46を経て熱転写リボン2とともに印字手段50に搬送されて行く。タイミングマークセンサ46がラベル連続体60裏面のタイミングマーク(不図示)を検出すると、熱転写ラベル61の走行に合わせて印字が開始され、図2に示すように熱転写ラベル61の表面にサーマルヘッド52の発熱走査で熱転写リボン2からインキ6が溶融転写され、バーコード等の画像92が印字される。印字が行われたラベル61は、発行口24へ搬送される。この時、印字済みリボン11には、画像92の反転画像が印字痕93として形成される。
【0025】
プラテンローラ51が回転してラベル連続体60が搬送されると同時に、粘着剤供給源から支軸72内部を経て塗工ローラ71へ粘着剤8が送液され、ローラ表面の孔73から吐出し始める。印字済みリボン11には、塗工ローラ71に触れる際に粘着剤8が塗工され、先行して巻き取られた一周内側にあたる印字済みリボン11と接着されつつ巻き取り軸57に巻き取られ、ロール状の塊になって行く。印字動作が停止すると粘着剤8の吐出も止まる。ここで、熱転写プリンタ20が長時間動作を停止し、塗工ローラ71の表面で粘着剤が固まった場合でも、熱転写プリンタ20が動作を再開すると粘着剤は塗工ローラ20から剥がれて熱転写リボン2側に貼り付いて引き剥がされて行く。
【0026】
上記のように粘着剤8が塗工されて巻き取られた印字済みリボン11は粘着剤8で固められた塊状になるため、印字痕93からの情報判読は困難になる。粘着剤8は、塗工から巻き取られるまでの間に完全に乾燥しなくとも構わない。印字済みリボン11が巻き取られて塊状になった後にも水分や溶剤が蒸発を続け、粘着性を増して行く。また、乾燥が不十分な状態でも印字済みリボン11の両方の面は粘着剤8で覆われているため、たとえ印字済みリボン11を巻き戻した場合でも印字痕93を判読することは実質的に不可能である。
【0027】
図3に本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機能付き熱転写プリンタの別な実施の形態を示す。図3の熱転写プリンタ20は、先に図2を用いて説明した粘着剤塗工手段70の塗工ローラ71を多孔質ローラ74に替えたものである。多孔質ローラ74はスポンジのような連続多孔質の海綿状の材料をロール形状に形成したもので、表面には微細孔75が無数に形成されている。図2の粘着剤塗工手段70と同様に、粘着剤供給源(不図示)から支軸72内部を経て多孔質ローラ74に粘着剤を供給し、表面の微細孔75から粘着剤8を微量ずつ染み出させる仕組みである。多孔質ローラ74も印字済みリボン11に接し、その搬送に伴って従動回転可能になっている。
【0028】
プラテンローラ51が回転してラベル連続体60が搬送されると同時に、粘着剤供給源から支軸72内部を経て多孔質ローラ74へ粘着剤8が送液され、表面の微細孔75から粘着剤8がにじみ出始める。印字済みリボン11へは多孔質ローラ74に触れる際に粘着剤8が塗工され、先行して巻き取られた一周内側にあたる印字済みリボン11と接着されながら巻き取り軸57に巻き取られ、ロール状の塊になって行く。粘着剤8がにじみ出る微細孔75の数が多いために粘着剤8はより均一に塗工されて行く。印字動作が停止すると粘着剤8の供給も停止する。粘着剤8が塗工されて巻き取られた印字済みリボン11は粘着剤8で固められて塊状になるため、印字痕93からの情報判読は困難になる。
【0029】
図4は本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付き熱転写プリンタの別な実施の形態である。図4は、先に説明した熱転写プリンタ20の印字手段50付近の要部拡大側面図であり、同じ構成部材には同じ番号を付してある。
【0030】
図4の熱転写プリンタ20は、粘着剤塗工手段70として粘着剤タンク76と合成樹脂製のスポンジ77とからなる粘着剤塗布器78を設けたものである。粘着剤タンク76内の粘着剤は流動性を有しており、自重および毛細管現象でスポンジ77に浸入し、その先端部は粘着剤で湿潤した状態に保たれている。スポンジ77の先を印字済みリボン11に当接させ、ラベル連続体60が搬送されるとスポンジ77の先端から染み出た粘着剤が印字済みリボン11に塗工される仕組みである。先に図2図3を用いて説明した実施形態と同様に粘着剤8が塗工された印字済みリボン11は、先行して巻き取られた一周内側にあたる印字済みリボン11と接着されながら巻き取り軸57に巻き取られ、ロール状の塊になって行く。塊状の印字済みリボン11の印字痕93から情報判読は不可能である。
【0031】
以上、詳細に説明したように、本発明の熱転写リボンの残存情報漏洩防止機構付熱転写プリンタおよび熱転写リボンの残存情報漏洩防止方法によれば、印字済みの熱転写リボンに粘着剤を塗工しながら巻き取り、粘着剤で固められて塊状化することにより、使用済みの熱転写リボンに残っている印字跡を隠蔽することができる。印字痕からの情報判読が困難になり、文字や画像、バーコード等の情報漏洩を防止できるという効果が得られる。
【0032】
なお、本発明が前述した実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記した構成部材の数、構成する層の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0033】
2 熱転写リボン
6 インキ層(インキ)
8 粘着剤
10 熱転写リボンロール
11 印字済みリボン
20 熱転写プリンタ
22 筐体
24 発行口
33 ベースフィルム
35 インキ層(インキ)
38 支管
40 ロール紙供給手段
41 供給軸
42 ガイドロール
44 用紙センサ
46 タイミングマークセンサ
50 印字手段
51 プラテンローラ
52 サーマルヘッド
53 転向部材
54 ガイドロール
55 供給軸
56 ガイドロール
57 巻き取り軸
60 ラベル連続体
61 熱転写ラベル
70 粘着剤塗工手段
71 塗工ローラ
72 支軸
73 孔
74 多孔質ローラ
75 微細孔
76 粘着剤タンク
77 スポンジ
78 粘着剤塗布器
90 熱転写リボン
91 印字済みリボン
92 画像
93 印字跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7