(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記利得構造サブキャビティによって発せられる光ビームが、前記主光軸に沿ったビーム路で、前記利得構造サブキャビティの上端面から前記利得構造サブキャビティを出る請求項1に記載の発光素子。
前記分布非エピタキシャルブラッグ反射器構造は、440nm〜550nmの波長の光に対して少なくとも99.9%の反射率を有し、370nm〜425nmの波長範囲の光に対して5%未満の反射率を有し、さらに、凹面出力結合反射鏡は、440nm〜550nmの光を少なくとも99.5%反射し、300nmより短い波長の光をより多く透過させる請求項2に記載の発光素子。
【背景技術】
【0002】
固体発光素子は今日では公知であり、様々な用途で使用されている。そのような用途の多くでは、電流注入により素子自体から所望の出力波長が獲得され得る。他のそうした用途の中には、所望の波長を獲得するために発光素子の出力が変更されなければならないものもある。例えば、遠紫外線(200nm〜300nmなど)の出力光を獲得するのに適した所望の波長、電力、ビーム品質、および寿命を提供する、シングルチップの電気的に駆動される素子はまだ提示されていない。これまで研究されている遠紫外線半導体ベースのレーザ素子は、一般には、本来的に低ビーム品質を有し、低出力電力を呈する、窒化ガリウムベースのリッジ導波路型レーザダイオードである。紫外線レーザダイオードのほとんどあらゆる面で材料に大きな問題があるため、その寿命は非常に限られたものになる。
【0003】
遠紫外線光を獲得するために、固体レーザによって出力される光が、周波数逓倍結晶によって変更される場合もある。非線形結晶による効率的な周波数逓倍には、出力電力の高い、ガウス・ビーム・プロファイルを有するコヒーレント光源が必要である。最高の変換効率が達成されるのは、非線形結晶が、共振器内の定在光波の波腹で増強された光場強度(共振器内周波数逓倍)を使用する空洞共振器に配置されるときである。
【0004】
一回の周波数逓倍の適用で遠紫外線発光を達成するために、400nmから500nmまでの間の窒化物ベースのレーザダイオード発光を使用することもできる。しかし、リッジ導波路型形状において利用可能なレーザダイオードは、本来的にビーム品質が低く、これまでのところ出力電力に限界がある。室温で動作する窒化物ベースのVCSELがごく最近になって報告されており、これは、大面積の素子とするのを妨げる不十分な横方向の電流拡散が原因で低電力素子になるものと予想されている。より広く利用できるガリウムヒ素ベースの固体レーザを使用して遠紫外線発光を達成するには、事実上、二回の周波数逓倍の適用が必要である。しかし、二段周波数逓倍を効率よく行おうとすると、出力電力が著しく低下し、発光装置のサイズと複雑さが増す。
【0005】
最近、垂直外部共振器型半導体レーザ(Vertical External−Cavity Semiconductor Laser)(VECSEL)または半導体ディスクレーザ(Semiconductor Disk Laser)(SDL)が、近赤外線または赤色発光から、可視または近紫外線のスペクトル域への一段階周波数逓倍の効率的方法であることが示されている。SDLでは、励起の領域および密度が、入射ポンプ光の直径および電力によって変倍され、ポンプ電力は、電気的にポンプされたレーザにおけるポンプ電力よりずっと大きい長さスケールにわたって吸収される。したがって、レーザ処理工程においてより多くの光学活性層を組み込むことができ、よって、より多くの出力電力を獲得することができる。所与の構成について、熱飽和(thermal roll−over)によって制限されない場合、出力電力は、破滅的光学反射鏡損傷(catastrophic optical mirror damage)(COMD)の発生による制限しか受けない。SDLにおいて、共振器は、発光活性領域および高反射性分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector)(DBR)反射鏡を備える半導体利得構造と、レーザ出力のための部分透過性の外部反射鏡との間に形成される。これらのデバイスは、本来的にビーム品質が高く(M
2〜1)、高出力電力であり(マルチワット動作)、共振器内周波数逓倍との適合性を有するため、周波数逓倍に非常に好適である。共振器内周波数逓倍は、キャビティ内で、タンデムキャビティ配列において利用できる場の強さと比べて何オーダも高い場の強さを利用することができる。光場強度に対する変換効果の二次依存性により、共振器内周波数逓倍は、第二高調波発生によってより高い光学的出力をもたらす。共振器内周波数逓倍の前提条件は、不可避的に損失を増加させる非線形光学結晶の挿入に耐えるのに十分な基本レーザ動作の安定性を有していることである。
【0006】
これまでのところ、使用されている半導体利得構造は、ほとんど例外なくガリウムヒ素/アルミニウムガリウムヒ素(GaAs/AlGaAs)系に基づくものである。大部分の他の半導体材料系とは異なり、ほとんどひずみの発生しないGaAs/AlGaAs材料系は、一回のエピタキシャル工程で、GaAs/AlGaAs層と、InGaAs量子井戸といった発光層からの高反射率多層スタックを成長させることを可能にする。しかし、高電力遠紫外線発光は、基本の赤外線波長からの二段の周波数逓倍によって初めて達成される。また、SDL構造における量子井戸(QW)の直接光ポンピングも実際に行われている。この手法では、キャリア緩和過程によりチップに対する熱負荷が低減され、ポンプとSDLの発光エネルギーの差がより小さいことによりエネルギー不足が軽減される。しかし、ポンプ光とQWの相互作用長が小さく、非共振吸収により振動子強度が低減されるため、QWにおける直接吸収が不十分になる。マイクロキャビティが、レーザ波長とポンプ波長における二次共振との両方で同時に基本共振を示せば、吸収効率は大幅に改善される。これは2つの方法で実現できる。1つの方法は、垂直外入射角にするためにマイクロキャビティの共振周波数をより短い波長に向かわせるシフトを使用するものである。別の方法は、垂直入射においてポンプ波長とレーザ波長の両方で共振が生じるキャビティ厚を使用するものである。
【0007】
従来のレーザダイオードの簡潔さと比べて、SDLは、少なくともポンプ・レーザ・ダイオード、半導体利得構造および出力結合反射鏡を備える光学装置の位置合わせを犠牲にして実現される。装置の位置合わせは、基本的には、ポンプ・レーザ・スポットをSDLキャビティ内でレーザビームの幅に適合させることを含み、これは、外部反射鏡の湾曲によって決定される。しかしこれは、SDL装置が比較的大きく、機械的応力の影響を受けやすいことを示すものである。携帯用機器など多くの用途では、装置がコンパクトで丈夫なことは重要な課題である。
【0008】
ヒ化物ベース系に関して現在知られているものを窒化物ベースの材料へと拡張させようとする動機付けは存在するが、そのためには多くの障害がある。これまで提供されているコンパクトで高電力のポンプ源は、3.0〜2.8eV(405〜445nm波長)の発光エネルギーを有し、これはGaNバンド端(3.4eV)より低い。加えて、2.7〜2.6eVの発光SDLを3.4eVでポンピングする場合のエネルギー不足もすでに、20%の効率損失になる。したがって、(GaAsベースのSDLと同様の)GaNバンド端を上回るより高い電力での光ポンピングは実用的ではない。
【0009】
GaNのエネルギーを下回るバンド端エネルギー(波長)を有するポンプ源を使用するには、その利得構造がポンプ波長での共振吸収のために設計されている必要がある。前述のように、これは2つの方法(ポンプ光の入射を傾けること、または特定のキャビティ厚を選択すること)で行うことができる。しかし、SDLのレーザ波長に対して利用できるポンプ源波長によっては、ポンプ源/利得構造位置合わせが簡単であることまたは利得構造内のQWの位置決めが理由で、利得構造のうちのどちらか一方が有利に働く。
【0010】
GaNは、可視の窒化物ベース発光体における主要なマトリックス材料であり、基礎となる成長機構が原因で、十分な厚さの低バンドギャップ窒化物で容易に置き換えることができない。別の重要な問題が、十分な冷却を与えるための半導体チップの熱管理である。窒化物は、機械的および化学的耐性を有する材料であり、普通は、サファイアなどの同程度に丈夫な基板上で成長させるため、基板除去およびヒートシンクへの再ボンディングのためにGaAsに関して公知の方法を使用するという選択肢が利用できない。
【0011】
窒化物ベースのVECSELを実現する場合のもう1つの難しい問題は、エピタキシャル工程における高反射性多層スタックの半導体構造チップへの実装である。必要な99.9%の高反射率を達成するために、必要とされる多数のひずみAlGaN/GaN層または無ひずみInAlGaN/GaN層の対(60超など)が、クラッキングまたは粗さにより表面品質を劣化させ、最終的にはレーザ動作を低下させることになる。しかも、そのようなエピタキシャル成長反射鏡の高反射率ストップバンドの幅はやや狭く、ポンプ波長とレーザ波長の両方で高反射率を得ることを困難にする。
【0012】
よって、ヒ化物ベース系で利用される技法を、窒化物ベースの素子で用いることが望まれているが、(a)ヒ化物ベース系と窒化物ベース系との材料特性の差が大きいこと、(b)高電力ポンプ源の利用に制限があること、および(c)素子製造における差異が大きいことを含む障害は、材料系の単純な置換えを選択することができないことを意味している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって本開示は、400nmから550nmまでのスペクトル域の波長を有する窒化物ベースのSDLを対象とするものである。本開示は、ガリウムヒ素ベースの素子に関して当分野で公知のものを、窒化物ベースの素子に単に拡張することによるいくつかの課題を克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本明細書で開示するのは、市販の高電力窒化ガリウム(GaN)ベースのレーザダイオードと併用するように最適化された、窒化インジウムガリウム(InGaN)半導体利得構造を使用する、高電力高輝度可視発光を提供する窒化物ベースのSDL設計である。代替の実施形態では、利得チップが、市販の高輝度LEDと併用するように最適化される。チップのレイアウトは基板除去処理に非常に適するものである。したがって、超小型で調節しやすい遠紫外線発光素子が提供される。
【0016】
本開示の一態様によれば、ポンプ波長の共振吸収を有するInGaN層で構成された半導体利得構造が提供される。
【0017】
本開示の別の態様によれば、InGaN層はQWの周りのバリアとして機能する。
【0018】
本開示の別の態様によれば、層スタック内の各個別InGaN層の幅と位置が、ひずみによる制限に追従しながら定在波パターンとの最大限のオーバーラップを生じる。
【0019】
本開示の別の態様によれば、半導体利得チップの上に高反射率多層反射器が堆積され、各個別InGaN層の幅と位置は、フリップチップ設計によるものである。
【0020】
本開示の別の態様によれば、半導体構造の全長は、垂直入射条件下でレーザ波長とポンプ波長での同時共振を提供する。この設計は、例えば、ポンプ波長とレーザ波長との差が40nmを超えるときなどに選択され得る。
【0021】
本開示の別の態様によれば、半導体構造の全長は、垂直入射の下で、460nmのレーザ波長と395から425nmまでのポンプ波長での同時共振を提供する。
【0022】
本開示の別の態様によれば、前述のような半導体構造の上に、レーザ波長で99.9%超の高反射率を有し、ポンプ波長で10%未満の低反射率を有する、誘電体多層反射器が堆積される。
【0023】
本開示の別の態様によれば、そのような誘電体反射鏡は、おおよそ0.21の屈折率コントラストを有する、レーザ波長の四分の一波長の厚さの17.5層の対からなる。
【0024】
本開示の別の態様によれば、そのような誘電体多層反射器は、SiO
2とSi
3N
4のレーザ波長の四分の一波長の層でできている17.5層の対からなる。
【0025】
本開示の別の態様によれば、そのような誘電体反射鏡は、78nmSiO
2層とSi
3(O
xN
1−x)
4の四分の一波長厚の層でできている17.5以上の対からなる。
【0026】
本開示の別の態様によれば、半導体構造の全長は、垂直外入射条件の下で、レーザ波長とポンプ波長での同時共振を提供する。この設計は、例えば、ポンプ波長とレーザ波長の差が40nm未満であるときなどに選択され得る。
【0027】
本開示の別の態様によれば、半導体構造の全長は、垂直外入射の下で、460nmのレーザ波長と435nmから455nmまでのポンプ波長での同時共振を提供する。
【0028】
本開示の別の態様によれば、前述のような半導体構造の上に、レーザ波長で(例えば少なくとも99.9%の)高反射率を有し、ポンプ波長で(例えば少なくとも99%の)高反射率を有し、ポンプ波長の共振条件で垂直外入射する誘電体多層反射器が堆積される。
【0029】
本開示の別の態様によれば、前述のような誘電体多層反射器は、おおよそ0.39の屈折率コントラストを有するレーザ波長で四分の一波長厚のわずか5.5層の対からなる。
【0030】
本開示の別の態様によれば、前述のような誘電体多層反射器は、TiO
2とSiO
2のレーザ波長で四分の一波長層のわずか5.5層の対からなる。
【0031】
本開示の別の態様によれば、素子製造時に、例えばサファイア(Al
2O
3)などとすることのできる成長基板の除去後にエッチング処理で除去され得る犠牲InGaN層が設けられる。
【0032】
本開示の別の態様によれば、利得チップ層構造への犠牲InGaN層の上部界面は、レーザ波長での定在光波パターンの波腹位置にある。
【0033】
本開示の別の態様によれば、素子製造時に、例えばサファイア(Al
2O
3)などとすることのできる成長基板の除去後に、最初に成長させるGaNバッファ層を選択的に除去するためのエッチング停止層として働くことのできるAlGaN層が設けられる。
【0034】
本開示の別の態様によれば、基板に向かってエッチング停止AlGaN層の下部界面は、レーザ波長での定在光波パターンの波腹位置にある。
【0035】
本開示の別の態様によれば、基板除去に使いやすい化学工程を可能にする成長基板としてケイ素が使用され得る。
【0036】
本開示の別の態様によれば、半導体利得チップ層構造を成長させるために、研磨され、薄片化され、半導体利得チップの熱拡散器として働く、熱伝導性透明基板が使用される。
【0037】
本開示の別の態様によれば、熱伝導性基板として炭化ケイ素または窒化アルミニウム(AlN)が使用され得る。
【0038】
本開示の別の態様によれば、熱拡散器として炭化ケイ素または窒化アルミニウム(AlN)が使用される場合、利得チップの層構造は前述の通りであり、レーザ波長とポンプ波長の両方での定在波パターンの波腹の位置において、ポンプ波長で少なくとも20%の反射率を提供する、AlGaN/GaN層でできたエピタキシャル成長させた多層スタックがさらに挿入される。
【0039】
本開示の別の態様によれば、活性層は、活性QW領域内部の分極電界を低減するために、GaN(11
22)/m−サファイア型板またはGaN(11
22)基板上に形成され得る。
【0040】
本開示の別の態様によれば、InGaN半導体利得構造にエッチング処理でピラーが設けられ、ポンピングのため到達可能な(accessible)立体角を大きくすることができる。
【0041】
本開示の別の態様によれば、半導体利得構造は、構造の横方向の大角度ポンピングを可能にするピラーとして形成され得る。
【0042】
以上は、本開示のいくつかの固有の態様、特徴、および利点の概要である。しかし、この概要は網羅的なものではない。よって、本開示の上記その他の態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を、本願において提出する特許請求の範囲に照らして考察すれば、より明らかになるであろう。
【0043】
添付の図面において、類似の符番は、様々な図面間で類似の要素を表す。例示のためではあるが、各図面は縮尺通りには描かれていない。
【発明を実施するための形態】
【0045】
最初に、本発明の詳細を必要以上に不明瞭にしないように、周知の出発原料、加工技術、構成要素、装置およびその他周知の詳細の説明を省略することを指摘しておく。よって、詳細が通常は周知である場合、それらの詳細に関する選択の提言または指示については、本発明の適用に委ねるものとする。
【0046】
次に
図1を参照すると、本発明の一実施形態によるシステム10の概略図が示されている。システム10の各要素を以下でさらに詳細に論じる。システム10はポンプ光源12を備え、ポンプ光源12の出力は、レンズ群(optics)14の焦点を半導体利得構造16の第1の端面に当てることによって合わせられる。半導体利得構造16の出力は、凹面出力結合反射鏡20に向けられており、そこで99%を超える光が半導体利得構造16に反射される。このシステム10は、任意選択で、(本明細書で開示するすべての実施形態に適用可能であるが、
図1の実施形態にのみ示し)周波数逓倍光の生成を可能にする非線形結晶18をさらに備えていてもよい。
【0047】
一実施形態において、ポンプ光源12は、370〜425nmの範囲で、一具体的実施形態では好ましくは405nmで発光する、市販の高電力窒化ガリウム(GaN)ベースのレーザダイオード(あるいは、複数のレーザダイオード)である。そのような光源の一例が、米国特許第7547925号明細書に開示されている。ポンプ光源12の出力電力は、3〜10ワットの範囲とすることができる。1つまたは複数のレンズで構成される集光システム14を使用して、50kW/cm
2超の電力密度を達成するために、直径50〜200μmのポンプ光スポットサイズが提供される。ポンプ光源12の出力は、半導体利得構造16を駆動する光ポンプを形成する。半導体利得構造16は、例えば、440nm〜550nmの範囲内など、所望の波長の光ビームを出力する。出力結合反射鏡20は、99.5%以上の半導体利得構造の出力波長での反射鏡反射率を提供するために、誘電体層で被覆されている。
【0048】
次に
図2を参照すると、半導体利得構造16の一実施形態が示されている。まず、半導体利得構造16の構造に注目し、次いで、その製造についての簡単に概説する。一般に半導体利得構造16は、複数(5〜20など)の量子井戸構造22を備え、各構造は、2.5nmのIn
xGa
1−xN量子井戸層22a(0.10≦x≦0.5、例えばx=0.2)と、QW層22aの下(22b)または上(22c)に配置される、5〜25nm厚のIn
yGa
1−yNポンプ光吸収(PLA)バリア層(0.0<y≦0.4、例えばy=0.1)とを備える。各量子井戸構造22の間には、個々の量子井戸間の電荷キャリア拡散を阻止すると共に、半導体利得構造16の表面に向かう電荷キャリア拡散も阻止するように働くGaNの拡散阻止層24が配置される。一般に、各GaN層24の厚さは、ポンプとレーザ両方の波列の波腹間隔に適合するように選択される。したがって、隣接する量子井戸構造22間の間隔は、その利得構造16内での相対的位置によって決まる。さらに、量子井戸層22aの下(22c)と上(22b)のどちらでPLAバリア層が用いられるかも、レーザビーム36とポンプ光26の定在波パターン28aおよび28bの相対的位置によって決まる。ポンプ光源12によって提供されるビーム26は、半導体利得構造16をポンピングする。ビーム26は、半導体利得構造16内で定在波28を形成する。量子井戸構造22は、それぞれのIn
0.2Ga
0.8N量子井戸22aが、レーザビーム36の定在波パターン28aの波腹位置に位置決めされるように、相互に間隔を置いて配置される。
【0049】
利得構造16は、全部でN層からなり、ポンプ波長とレーザ波長の整数倍であり、次式で求められる光学的厚さOTを有する。
Σ
GN(厚さ
n)(屈折率
n)
式中、層nは、量子井戸層、バリア層、および拡散層を含む。すなわち、利得構造16は、各層の厚さにその層の屈折率を掛けた積の合計であり、ポンプ波長とレーザ波長の整数倍でもある厚さを有する。
【0050】
前述のように、半導体利得構造のサブキャビティ(量子井戸とバリアの領域)が、レーザ波長とポンプ波長の二次共振で同時に基本共振を示す場合、吸収効率は大幅に改善される。利得構造を2つの別個の波長で同時に共振させるためには、利得構造のサブキャビティの全長を媒体における各波長の商で割ったもの(例えば、(405/n
1)/(460/n
2))が、可能な限り整数に近くなければならない。
【0051】
半導体利得構造16はさらに、エピタキシャル成長させた窒化物層24に隣接して誘電体分布ブラッグ反射器(DBR)構造32を備える。一実施形態において、DBR30は、460nmで99.9%の反射率をもたらす、17.5対の59nmSiN
x/78nmSiO
2四分の一波長層からなる。
【0052】
半導体利得構造16の製造に関して、半導体層22a〜c、24、およびDBR30は、例えば、前述の米国特許第7547925号明細書に開示され、記載されているように、有機金属気相成長法(metalorganic vapor phase epitaxy)(MOVPE)によって、サファイアといった、ポンプ光の波長において透明である基板(不図示)上で成長させることができる。
【0053】
動作時に、半導体利得チップはかなり熱くなり得ることが知られている。熱による損傷または性能損を低減するために、DBR30を含む半導体利得構造16は、逆さまにして第1のヒートシンク32a上に取り付けられる。ヒートシンク32aは、例えば、銅または他の熱伝導性材料で構成される。次いで、例えば、米国特許第6757314号明細書に開示され、記載されているように、レーザリフトオフ(laser lift−off)(LLO)法を行って基板が除去される。次いで、第2のヒートシンク32bが、利得構造の露出した裏面に取り付けられる。
図2には、その下部と上部にヒートシンク32aおよび32bを備える完成した構造が反転して示されている。
【0054】
ヒートシンク32aは、半導体利得構造16の裏面ポンピングのための小さい開口34を有する。ヒートシンク32bも、ヒートシンク32aと同じ直径の小さい開口を有する。これらの開口は相互に重なり合う中心を有する。それによって、表面法線に平行なチップのポンピングが可能になり(すなわち、ポンプ光源12と半導体利得構造16を同軸上に位置合わせさせることができ)、
図1に示すように、構造のすべての光学部品の直線的配置が可能になる。
【0055】
最後に、外部出力結合反射鏡20の被覆は、460nmで99.5%の反射率、405nmで99%の反射率を生じるように設計されている。それによって、少なくともポンプ波長の第2の往復が、PLAの吸収効率を増強するよう促される。
【0056】
詳細例1
以下は、本開示の一実施形態による、まず半導体利得構造を形成し、次に完全な発光素子を形成するためのステップおよび条件の具体例である。この例によれば、全キャビティ長は、405nmポンプ波長で約14λ/2の長さを有するように選択され、これは、460nmレーザ波長での12λ/2の長さに対応する(レーザ波長は一般に460nm〜500nmの範囲である)。それによって、11の発光InGaN層およびPLAを、405nmのポンプ波長または460nmのレーザ波長を有する光の定在波パターンの波腹に配置された状態で組み込むことができる。
【0057】
c面サファイアを基板として用いる有機金属化学気相堆積法(metalorganic chemical vapor phase deposition)(MOCVD)を使用してエピタキシャル成長を行わせる。基板は、表面清浄のために5分間にわたりおおよそ1050°Cの水素雰囲気中で焼きなまし処理される。次に、おおよそ550°Cで15nm〜20nm厚のGaN(またはAlN)核生成層が堆積される。これに続いて、1060°Cで8μm厚のGaN層を成長させ、10
8cm
−2以下の線欠陥密度を有する原子的に平滑な層がもたらされる。そのような表面および材料品質は、(分子線エピタキシ法、水素化物気相エピタキシ法などといった)他の方法を使用して、かつ/またはバルクGaN、SiC、Siなどのような他の基板を使用して実現されてもよい。バルクGaNの場合には、核生成層は不要であり、成長は、1060°Cで成長させる8μm厚のGaN層から開始する。しかし、半導体利得構造の詳細は、使用される具体的方法または用いられる基板にかかわらず、大体において同じである。
【0058】
利得構造製作順序は、T>1000°Cで成長させる20nmのAl
0.1Ga
0.9Nエッチング停止層から開始する。この層は、基板はく離後のGaNバッファ層の選択的ウェットエッチングを可能にする。積層順序は以下のように進む。
【0059】
T>1050°Cで60nmのGaNを成長させる。
【0060】
T=750°Cで20nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0061】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0064】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0065】
T=750°Cで20nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0068】
750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0069】
750°Cで10nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0070】
750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0071】
750°Cで10nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0074】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0075】
T=750°Cで10nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0076】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0077】
T=750°Cで10nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0078】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0081】
T=750°Cで10nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0082】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0083】
T=750°Cで10nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0084】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0087】
T=750°Cで20nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0088】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0091】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0092】
T=750°Cで20nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0095】
次いで、17.5周期の78nmSiO
2/59nmSi
3N
4を備える分布ブラッグ反射器(DBR)が、電子ビーム蒸着法(EBE)やスパッタリングといった公知の方法を使用して、周期的利得媒体の上に形成される。このDBRは、ポンプ光が吸収され得る場合には半導体利得構造に貫通することができるように、460nmの波長では99.9%を超え、405nm〜410nmの波長範囲では5%を下回る反射率を有する。一般に、DBRは、440nmから550nmまでの波長の光に対して少なくとも99.9%の反射率を有し、370nm〜425nmの波長範囲の光に対しては5%を下回る反射率を有する。
【0096】
半導体利得構造は、例えば米国特許第6562648号明細書などに記載されている材料および方法を使用し、そのDBR面を下に向けて銅ヒートシンク上に取り付けられる。銅サブマウントは、ペルチェ(Peltier)冷却器といった能動冷却素子上への取り付けを容易にするのに適した寸法を有する。加えて、サブマウントも冷却素子も、ポンプ光透過のための直径1mmのビアホールを有する。
【0097】
次いで、サファイア基板が、前述の米国特許第6562648号明細書および米国特許第6617261号明細書に記載されているように、レーザリフトオフによって除去される。GaN基板の場合、基板は50μmの厚さまで機械的に薄片化される。露出した裏面は、Weyher 他によるJ. Cryst. Growth, Volume 182, Number 1, December 1997, pp. 17−22(6)に記載されているような方法によって、実効値で1nmを下回る粗度まで研磨される。その後、最初のGaNバッファ層が、80°CのKOHにおいて紫外線励起(UV−enhanced)湿式化学エッチングを使用するエッチング処理で、Al
0.1Ga
0.9Nエッチング停止層(ESL)まで除去される。
【0098】
直径1mmのビアホールを有する銅板が、半導体利得構造の裏面に、ビアホールと銅サブマウントの穴とが位置合わせされるように固定される。銅板は、ペルチェ冷却銅サブマウントに適切に接続されている。それによって、半導体利得構造の裏面も冷却され得る。次いで、完成したチップホルダが、全空間次元において冷却素子上に固定される。
【0099】
出力結合反射鏡と利得構造は、利得構造の表面に当たる出力結合反射鏡の焦点と同じ光軸上に位置合わせされる。出力結合反射鏡の反射率は460nmの光では99.5%である。出力結合反射鏡の湾曲の半径は、利得構造上で、ポンプ光のスポットサイズと等しいレーザビームのスポットサイズを提供するように選択される。それによって、不使用の利得構造領域の寄生ポンピングによる損失が回避される。405nmの波長を有し、1つまたは複数のファイバに結合された1つまたは複数のポンプレーザが、別々に取り付けられ、電気的に制御される。ファイバ出力は、出力結合反射鏡および利得構造と同じ光軸上で、(利得構造自体、サブマウント、前面冷却板、および冷却素子を備える)利得構造モジュールの裏面に固定される。レンズを使用して、ポンプ光の焦点がビアホールを通して利得構造上に合わせられる。レンズの焦点距離は、ポンプ光の対応するスポットサイズを、出力結合反射鏡の方を向いた利得構造面の利得構造上のレーザビームのスポットサイズに適合させるように選択される。
【0100】
装置はさらに、レーザ素子の出力を成形する要素を備えていてもよい。そのような要素には、それだけに限らないが、可視光を遠紫外線光に変換するための周波数逓倍非線形結晶、単一周波数動作を得るためのエタロンや回折格子といった波長選択要素、半導体利得チップと出力結合反射鏡の間に挿入され得る、モード同期のための飽和性吸収体が含まれる。
【0101】
よって、この第1の実施形態は、遠紫外線光出力を生成するための非線形結晶といった周波数変換素子の挿入を可能にする窒化物ベースの材料系を利用したコンパクトで丈夫な素子を提供するものであることが理解されるであろう。また、上記実施形態のいくつかの変形も明らかになるであろう。例えば、DBR30は、窒化物層上でエピタキシャル成長させてもよく、かつ/または異なる材料で構成され、異なる層の厚さ、全体の厚さを有していてもよい。量子井戸構造層22a、バリア層22b〜c、および電荷キャリア拡散層24の材料および寸法は、前述のものと異なっていてもよく、実際、単一構造の内部において層ごとに異なる場合もある。さらに、ポンプ源12と素子16の出力の波長も、前述のものと異なっていてもよい。加えて、構造の上面に接合されるヒートシンク32が銅以外の材料で形成されていてもよい。
【0102】
本開示の別の実施形態では、ポンプ光源12と半導体利得構造16が、同軸ではない(ポンプ光が、利得構造の主光軸と平行でない方向で利得構造に入射する)ように位置合わせされた素子34が提供される。この実施形態を
図3に示す。この第2の実施形態は、量子井戸構造22におけるポンプ光の吸収を増強する手段として、例えば、共振空洞増強光検出器(Resonant−Cavity−Enhanced photodetector)(RCE−PD)などにおいて用いられるような、共鳴的に励起された吸収を使用する。445nmで共振空洞効果を得るために、半導体サブキャビティ42の有効光路長を低減し、分布ブラッグ反射器構造44のストップバンドをより短い波長に向かってシフトさせる適切な角度αで、ポンプ光38を構造34の表面40に入射させ、結果として生じる定在波パターンを、InGaNのPLAの位置に適合させる。この実施形態では、分布ブラッグ反射器(DBR)44は、EBE法やスパッタリングといった公知の方法を使用して周期的利得媒体の上に形成された6と1/2周期の38nmTiO
2/78nmSiO
2を含み得る。このDBRは、460nmの波長で99.9%を超える反射率を有する。ストップバンドは、光の入射角が増大するに従ってより短い波長へと連続してシフトする。それによって、共鳴的に励起される吸収効果は、高反射性の反射鏡を利用することができる。
【0103】
一実施形態において、利得構造サブキャビティは、(400nmから550nmまでの範囲の)レーザ波長の整数倍に等しい、その主光(レーザ発振)軸に沿って測定される光学的厚さと、ポンピング波長の整数倍に等しい、主光(レーザ発振)軸に対し傾いている主(ポンピング)光軸に沿って測定される光学的厚さとを有し、ポンピング波長はレーザ波長より最大で40nm短い。
【0104】
半導体利得チップ内には、x
in=20%、幅2.5nmの5〜20のIn
xGa
1−xN量子井戸46aが、半導体サブキャビティ42において発する定在波パターン48の波腹位置に配置される。各量子井戸層46aは、y
in=15%、厚さ11.5nmのIn
yGa
1−yNポンプ光吸収(PLA)バリア層46bの上に形成される。各量子井戸構造46の間には、個々の量子井戸間での電荷キャリア拡散を阻止すると共に、半導体利得構造34の表面に向かう電荷キャリア拡散も阻止するように働くGaNの拡散阻止層50が配置される。半導体サブキャビティ42の各層は、前述のように、有機金属気相成長法(MOVPE)により、ポンプ光の波長で透明な、サファイアといった基板上で成長させることができる。
【0105】
この場合もやはり、動作に際して構造34によって発生する熱の放散を改善するために、誘電体DBR44を含む半導体サブキャビティ42は、銅といったヒートシンク52上に逆さまにして移行させる(is transferred)。次いで、基板を除去するために、前述のように、レーザリフトオフ(LLO)工程が行われ得る。
【0106】
外部の出力結合反射鏡20(
図1)の被覆は、460nmの入射光の99.5%を反射するように作られる。ポンプ光の吸収が共鳴的に励起されるように、ポンプ光の入射角αは、表面40に対して約30〜50度(すなわち表面法線に対して30〜50度)に設定される。それによって、有効光共振器長が短縮され、445nmの波長で共振するようになる。
【0107】
図4を参照すると、本発明の一実施形態によるシステム54の概略図が示されている。システム54は、半導体利得構造ポンピングするのに使用される、例えば445nmの光を発する、前述の種類のポンプ光源12を備える。ポンプ光源12と焦点レンズ群14は(前述の)半導体利得構造34に対して、レンズ群14の焦点を半導体利得構造34の第1の端面上に、その第1の端面に対しておおよそ30〜50度(すなわち法線に対しておおよそ40度)の角度で合わせることによってポンプ光源12の出力の焦点が合わせられるように配置される。半導体利得構造34の出力は、99%超の光が半導体利得構造16に反射される凹面出力結合反射鏡20に向けられる。このシステム54は任意選択でさらに、周波数逓倍光の生成を可能にする非線形結晶18を備えていてもよい。
【0108】
半導体利得構造面(すなわち素子16を含む構造10)に垂直に入射するポンプ光の反射率スペクトルが、
図5に示すモデル化結果で例示されている。半導体利得構造(すなわち素子34を含む構造54)の表面法線に対して40度の角度で入射するポンプ光の反射率スペクトルが、
図6に示すモデル化結果で例示されている。
【0109】
また、この第2の実施形態は、第1の実施形態と比べてレンズ群が実際上「折り畳まれて」いるため、潜在的によりコンパクトな全体構造も提供する。また、上記実施形態のいくつかの変形も明らかであろう。例えば、DBR52は、窒化物層上にエピタキシャル成長させてもよく、かつ/または異なる材料で構成され、異なる層の厚さ、全体の厚さを有していてもよい。量子井戸構造層46a、バリア層46b〜c、および電荷キャリア拡散層50の材料および寸法は、前述のものと異なっていてもよく、実際、単一構造の内部において層ごとに異なる場合もある。さらに、ポンプ源12と素子54の出力の波長も、前述のものと異なっていてもよい。ポンプ光38の入射角は、表面法線に対して30〜50度より大きくても小さくてもよい。加えて、構造の上面に接合されるヒートシンク32が銅以外の材料で形成されてもよい。
【0110】
詳細例2
この具体例では、全キャビティ長が、460nmで10λ/2の長さを有するように選択される。それによって、20の発光InGaN層およびPLAを、460nmのレーザ波長を有する光の定在波パターンの波腹に配置された状態で組み込むことができる。
【0111】
c面サファイアを基板として用いる有機金属化学気相堆積法(MOCVD)を使用してエピタキシャル成長を行わせる。基板は表面清浄のために5分間にわたり1050°Cの水素雰囲気中で焼きなまし処理される。次に、550°Cで15〜20nm厚のGaN(またはAlN)核生成層が堆積される。これに続いて、1060°Cで8μm厚のGaN層を成長させ、10
8cm
−2以下の線欠陥密度を有する原子的に平滑な層がもたらされる。
【0112】
そのような表面および材料品質は、(分子線エピタキシ法、水素化物気相エピタキシ法などといった)他の方法を使用して、かつ/またはバルクGaN、SiC、Siなどといった他の基板を使用して実現されてもよい。バルクGaNの場合には、核生成層は不要であり、成長は、1060°Cで成長させる8μm厚のGaN層から開始する。しかし、半導体利得構造の詳細は、使用される具体的方法または用いられる基板にかかわらず、大体において同じである。
【0113】
構造形成工程は、T>1000°Cで成長させる20nm厚のAl
0.1Ga
0.9Nエッチング停止層から開始する。この層は、基板はく離後のGaNバッファ層の選択的ウェットエッチングを可能にする。積層順序は以下のように進む。
【0114】
T>1050°Cで65nmのGaNを成長させる。
【0116】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.15Ga
0.8N層
【0117】
T=750°Cで11.5nmのIn
0.15Ga
0.8N層
【0118】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.15Ga
0.8N層
【0119】
T=750°Cで11.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0123】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.15Ga
0.8N層
【0124】
T=750°Cで11.5nmのIn
0.15Ga
0.8N層
【0125】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.15Ga
0.8N層
【0126】
T=750°Cで11.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0128】
このように堆積された利得構造の上に、EBE法やスパッタリングといった公知の方法を使用して6と1/2周期の38nmTiO
2/78nmSiO
2を備える分布ブラッグ反射器(DBR)が形成される。このDBRは、460nmの波長で99.9%を超える反射率を有する。全体構造は、35度の入射角では445nmで共振を有する。
【0129】
この半導体利得構造が、米国特許第6562648号明細書に記載されているような材料および方法を使用し、DBR面を下にして銅サブマウントヒートシンクに取り付けられる。銅サブマウントは、ペルチェ冷却器といった能動冷却素子の取り付けを容易にするのに適した寸法を有する。
【0130】
次いで、サファイア基板が、米国特許第6562648(B1)号明細書および米国特許第6617261(B2)号明細書に記載されているように、レーザリフトオフによって除去される。GaN基板の場合、基板は、50μmの厚さまで機械的に薄片化される。露出した裏面は、Weyher 他によるJ. Cryst. Growth, Volume 182, Number 1, December 1997, pp. 17−22(6)に記載されている方法によって、実効値で1nmを下回る粗度まで研磨される。その後、最初のGaNバッファ層が、80°CのKOHにおいて紫外線励起湿式化学エッチングを使用するエッチング処理でAl
0.1Ga
0.90Nエッチング停止層(ESL)まで除去される。
【0131】
直径1mmのビアホールを有する銅板が、チップの裏面に固定される。銅板は、ペルチェ冷却銅サブマウントに適切に接続されている。それによって、裏面にも冷却が提供される。次いで、完成したチップホルダが、全空間次元において冷却素子上に固定される。
【0132】
出力結合反射鏡(OCM)と利得チップ(GC)は、GCの表面に当たる(OCM)の焦点と同じ光軸上に位置合わせされる。OCの湾曲の半径は、GC上にポンプ光のスポットサイズと等しいレーザビームのスポットサイズを提供するように選択される。それによって、不使用のGC領域の寄生ポンピングによる損失が回避される。445nmの波長を有し、1つまたは複数のファイバに結合された1つまたは複数のポンプレーザが、別々に取り付けられ、電気的に制御される。ファイバ出力は、OCMと利得チップの光軸に対して35度の角度で、利得チップモジュールの露出領域の前に固定される。レンズを使用して、ポンプ光の焦点が固定された銅板のビアホールを通して利得チップ上に合わせられる。レンズの焦点距離は、ポンプレーザの対応するスポットサイズを、チップ表面の利得チップ上のVECSELレーザモードのスポットサイズに適合させるように選択される。OCMの反射率は460nmの波長で99.5%である。
【0133】
別の実施形態では、高輝度発光ダイオード(HB−LED)といった複数のポンプ源62が、ピラー構造として形成された光半導体利得構造64の周りに集められている素子60が提供される。この実施形態を
図7、8および9に示す。前述のように、半導体利得構造64は、高反射性DBR反射鏡66と、例えば、前述の種類の10量子井戸構造などからなる半導体サブキャビティ68を備える。例えば、各量子井戸構造は、半導体サブキャビティ68で発生する定在波パターンの波腹位置に配置された、2周期の11.5nmIn
0.10Ga
0.90NPLA層と、x
in=20%、2.5nm幅のIn
xGa
1−xN量子井戸層を備える。各量子井戸構造の間には、個々の量子井戸間の電荷キャリア拡散を阻止すると共に、半導体利得構造64の表面に向かう電荷キャリア拡散も阻止するように働く、74nmGaNの拡散阻止層が形成される。半導体サブキャビティ68の各層は、例えば、有機金属気相成長法(MOVPE)などによって成長させることができる。この構成においてサブキャビティの全長は、レーザ波長で、例えば460nmなどで共振するように選択される。
【0134】
動作に際して構造64によって生成される熱は、半導体サブキャビティ68とDBR66が固定されている、銅板といったヒートシンク70によって放散され得る。半導体サブキャビティ68とDBR66とを最初に製作するための基盤を除去するには、レーザリフトオフ(LLO)工程が使用され得る。
【0135】
前述の実施形態とは対照的に、半導体サブキャビティ68は、例えば、側壁が露出した直径200mmなどの柱状構造を生み出すために、化学アシスト・イオン・ビーム・エッチング法(chemical assisted ion beam etching)(または他の適切な方法)によってエッチング処理される。これにより、ポンプ源62(高輝度LEDなど)を用いたポンピングのために到達すべき立体角を大きくすることができる。LEDの光出力は、平行に、柱状の半導体サブキャビティ68上に焦点を合わせられる。一実施形態では、半導体サブキャビティ68の(軸方向に見た場合の)断面は、
図9Aに示すように円形とすることができる。しかし、以上の開示が与えられた場合には、例えば、(本発明のこの態様の範囲を示すが、用いられ得る様々な断面を制限するためのものではない)
図9B〜9Eに示すような、他の多くの長方形および非長方形の断面も可能である。
【0136】
詳細例3
この例では、全キャビティ長が、460nmで6λ/2の長さを有するように選択される。それによって、DBR構造と半導体エアインターフェースの間に垂直導波路が形成される。
【0137】
c面サファイアを基板として用いる有機金属化学気相堆積法(MOCVD)を使用してエピタキシャル成長を行わせる。基板は表面清浄のために5分間にわたり1050°Cの水素雰囲気中で焼きなまし処理される。次に、550°Cで15〜20nm厚のGaN(またはAlN)核生成層が堆積される。これに続いて、1060°Cで8μm厚のGaN層を成長させ、10
8cm
−2以下の線欠陥密度を有する原子的に平滑な層がもたらされる。
【0138】
そのような表面および材料品質は、(分子線エピタキシ法、水素化物気相エピタキシ法などといった)他の方法を使用して、かつ/またはバルクGaN、SiC、Siなどといった他の基板を使用して実現されてもよい。バルクGaNの場合には、核生成層は不要であり、成長は、1060°Cで成長させる8μm厚のGaN層から開始する。しかし、半導体利得構造の詳細は、使用される具体的方法または用いられる基板にかかわらず、大体において同じである。
【0139】
半導体利得構造サブキャビティ積層順序は、T>1000°Cで成長させる20nmのAl
0.1Ga
0.9Nエッチング停止層から開始する。この層は、基板はく離後のGaNバッファ層の選択的ウェットエッチングを可能にする。積層順序は以下のように進む。
【0140】
T>1050°Cで65nmGaNを成長させる。
【0142】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0143】
T=750°Cで11.5nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0144】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0145】
T=750°Cで11.5nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0149】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0150】
T=750°Cで11.5nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0151】
T=750°Cで2.5nmのIn
0.2Ga
0.8N層
【0152】
T=750°Cで11.5nmのIn
0.1Ga
0.9N層
【0154】
PECVDや熱蒸着法といった公知の方法を使用して周期的利得媒体の上に6と1/2周期の38nmTiO
2/78nmSiO
2を含む透明分布ブラッグ反射器(DBR)が形成される。このDBRは、460nmの波長で99.9%を超える反射率を有する。
【0155】
半導体チップは、米国特許第6562648号明細書に記載されているような材料および方法を使用し、DBR面を下にして銅ヒートシンクに取り付けられる。銅サブマウントは、ペルチェ冷却器といった能動冷却素子の取り付けを容易にするのに適した寸法を有する。次いで、サファイア基板が、米国特許第6562648号明細書および米国特許第6617261号明細書に記載されているように、レーザリフトオフによって除去される。GaN基板の場合、基板は、50μmの厚さまで機械的に薄片化される。次いで、露出した裏面が、Weyher 他によるJ. Cryst. Growth, Volume 182, Number 1, December 1997, pp. 17−22(6)に記載されているような方法によって、実効値で1nm rmsを下回る粗度まで研磨される。その後、最初のGaNバッファ層が、80°CのKOHにおいて紫外線励起湿式化学エッチングを使用するエッチング処理でAl
0.1Ga
0.9Nエッチング停止層(ESL)まで除去される。
【0156】
利得構造サブキャビティの上面には、出力結合反射鏡の特性(湾曲の半径など)によって定義される、レーザビームのスポットサイズに等しい直径の円形領域が定義される。これは、フォトレジスト(AZ1518など)の4μmのスピンコーティングを行い、続いて、エッチマスクを形成するメサ(mesa)領域を除くチップ領域全体を露出させることによって行われる。次いで、露出させた領域が、化学アシスト・イオン・ビーム・エッチング法(CAIBE)や反応性イオンエッチング(reactive ion etching)(RIE)といった、塩素ベースのドライエッチング法を使用してエッチング処理される。エッチングは、DBR構造に達すると停止する。任意選択で、プラズマ励起化学蒸着(plasma−enhanced chemical vapor deposition)または原子層堆積ツールを使用して、側壁が(例えば、ポンプ波長による四分の一波長厚を有するSiO
2層などの)反射防止膜で被覆されてもよい。次いで、完成したチップホルダが、全空間次元において冷却素子上に固定される。
【0157】
出力結合反射鏡と利得構造は、利得構造の表面に当たる出力結合反射鏡の焦点と同じ光軸上に位置合わせされる。出力結合反射鏡の湾曲の半径は、利得構造上で、利得構造ピラーの上面の面積とおおよそ等しいレーザビームのスポットサイズを提供するように選択される。それによって、不使用の利得構造領域の寄生ポンピングによる損失が回避される。出力結合反射鏡の反射率は、460nmの光では99.5%である。405nmの光を発するための複数のポンプレーザが、利得構造ピラーの周囲に別々に取り付けられ、電気的に制御される。各レーザの焦点が、レンズを使用してピラー構造の側壁上に合わせられる。
【0158】
上記実施形態のいくつかの変形が企図される。これらの変形には、それだけに限らないが、半導体サブキャビティ68の柱の直径が異なるもの、レーザダイオードといった代替のポンプ源、ポンプ源波長の範囲、共振空洞LEDといった方向出力を有するLEDとしてのポンプ源の使用、DBRの一部または全部に五酸化タンタル(Ta
2O
5)を使用したものなどが含まれる。以上の開示を提示されれば、当業者は、他のそのような変形、具体的には、本開示の範囲内にあるそれぞれの特定の用途に対する最適化されたパラメータを理解するはずである。
【0159】
前述の実施形態の一変形によれば、Al
0.1Ga
0.9Nエッチング停止層は、例えば、(Al、Ga)Nのバッファ層と周期的量子井戸構造の間の50〜100nm厚のInGaN犠牲層で置き換えられてもよい。成長基板の(レーザリフトオフなどによる)除去と、フォトリソグラフィおよび垂直エッチングによるメサ構造72の定義の後で、基板除去工程により損傷を受けたバッファ層自体が、Stonas他によるAppl. Phys. Lett.78, 1945(2001)と同様の方法を使用してInGaN層を横方向にエッチング処理することによって除去される。好ましいメサ構造は、長方形の側壁を有する円形ものである。メサ直径は、出力結合反射鏡によって定義されるレーザビームのスポットサイズと適合するように、50μm〜1000μmの範囲である。
【0160】
以上によれば、成長法の1つは、半導体層と関連する各層をサファイア成長基板上に成長させるものである。しかし、代替の基板が用いられてもよい。一実施形態では、代替基板は、結晶ケイ素で構成される。この実施形態では、前述のような半導体利得構造の形成に加えて、Dadgar他によるPhys. Stat. Sol. (c)0, No. 6, 1583−1606(2003)に記載されているように、室温まで冷却する間に増大する熱ひずみを補正する成長温度における圧縮ひずみを導入するために、バッファ層構造に複数の薄いAlN/GaN層も形成される。このような層は、QW位置に適合させた正しい定在波パターンを維持するために、特定の位置に挿入される。成長後、適切な酸を使用してSi基板の選択的な化学的除去を行うことができる。
【0161】
他の代替基板は、半極性(特にGaN(10
13)、GaN(11
22)、GaN(20
21))および非極性GaN(特にGaN(10
10))であり、サファイア型板を含んでいてもよい。そのような方向付けは、GaN(0001)基板とは異なるひずみ緩和機構を可能にし、したがって、GaN/Al
xGa
1−xN−DBR構造のクラッキングを回避することができる。そのため、半極性または非極性基板上に形成される利得構造は、モノリシック集積エピタキシャルGaN/Al
xGa
1−xN−DBR構造を含めることにより、基板を除去するステップを省くことができる。前述の構造と比べて、量子井戸構造および半導体利得構造の他の要素の個々の層の厚さに対する多少の調整が企図される。これは、GaN(0001)基板と比べて、AlGaNおよびInGaNに関して分極電界が低減され、ひずみの符号が反転されると共に、GaNおよびサファイアの各層の屈折率が異なることによるものである。
【0162】
さらに、SiCやAlNといった代替基板が用いられてもよい。これらの基板材料では、半導体利得構造を形成する前述の各ステップに加えて、反射鏡状の表面を得るために、成長後に基板の裏面を研磨する必要がある。これらの実施形態における基板はヒートシンクとして機能する。したがって、エピタキシャル成長させた構造の上に高反射率DBRが位置する。活性領域の上に成長させるエピタキシャルDBRは、活性領域より低品質で、不利益なものとなる可能性が高いため、エピタキシャル成長後に堆積させた誘電体DBRを使用することが好ましい。