(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記固定ベースから上記第1および第2アームを経由して上記ハンドおよび上記追加のハンドまでつながる配線を備え、上記配線は、スリップリングを介して上記ハンドおよび上記追加のハンドに接続されている、請求項3に記載のワーク搬送装置。
【背景技術】
【0002】
半導体製造等の分野において、ウエハ等のワークを搬送する際にワーク搬送用のロボット(ワーク搬送装置)が用いられている。ワーク搬送装置は、たとえば、ウエハが収容されたロードポートと、プロセスチャンバとの間でワークの搬送を行うのに用いられる。
【0003】
図7は、従来のワーク搬送装置を備えたワーク搬送システムの構成例を示す。同図に示されたワーク搬送システム90は、2つのロードポート91と、トランスファチャンバ92と、プロセスチャンバ93と、ワーク搬送装置94とを備えている。ロードポート91は、たとえば、複数のワークWを保持したカセットを収容可能に構成されており、直線状に配列される。トランスファチャンバ92は、複数のロードポート91に隣接して設けられており、このトランスファチャンバ92内にワーク搬送装置94が配置される。ワーク搬送装置94は、たとえば2段のアームおよびワーク保持用のハンドが互いに水平面内で回動自在に連結された水平多関節ロボットにより構成される。プロセスチャンバ93は、トランスファチャンバ92に対してロードポート91とは反対側に隣接して設けられている。プロセスチャンバ93においては、加熱処理、加工処理、あるいは検査処理などの処理がワークWに対してなされる。
【0004】
図8は、ワーク搬送装置94の概略構成を表す側面図である。ワーク搬送装置94は、中心軸が垂直方向に延びる筒状の固定ベース941と、昇降ベース942と、中空状の下段アーム943および上段アーム944と、ハンド945とを備えている。昇降ベース942は、固定ベース941に支持されており、図示しない昇降機構によって昇降可能とされている。下段アーム943は、昇降ベース942に対して垂直軸O1を中心として回動可能に基端が支持されており、図示しない下段アーム駆動機構によって回動させられる。上段アーム944は、下段アーム943の先端に対して垂直軸O2を中心として回動可能に基端が支持されており、図示しない上段アーム駆動機構によって回動させられる。
【0005】
ハンド945は、上段アーム944の先端に対して垂直軸O3を中心として回動可能に基端が支持されており、ハンド駆動機構946によって垂直軸O3周りに回動させられる。ハンド駆動機構946は、昇降ベース942に支持されるハンド駆動用のモータ947、およびこのモータ947の回転出力をハンド945に伝達するハンド伝動機構948を含んで構成される。ハンド伝動機構948は、減速機949を有している。減速機949はハンド945の基端の直下に配されており、ハンド945の基端が減速機949の出力軸に連結されている。かかる構成により、モータ947を駆動させると、ハンド945は垂直軸O3周りに回動させられる。
【0006】
そして、上記構成のワーク搬送装置94においては、下段アーム駆動機構、上段アーム駆動機構、ハンド駆動機構946の動作を適宜制御することによって、すべてのロードポート91およびプロセスチャンバ93に対して、ワークWの搬出入が可能とされている。
【0007】
ワーク搬送装置94によるワーク搬送において、搬送対象物であるワークWは大型化する傾向にある。たとえば半導体製造において、ウエハ(ワークW)のサイズは直径300mmから450mmにシフトしつつある。このようなワークWの大型化に伴い、ロードポート91内のカセットのピッチが大きくなり、昇降ストロークを大きくする必要がある。また、ワークWが大きくなると、ワークWの水平方向への移動距離も大きくする必要がある。
【0008】
その一方、ロードポート91およびプロセスチャンバ93の間におけるワークWの搬送時間は、生産性低下を防止する観点から延長することができず、ワークWが大きくなっても同程度に保つ必要がある。したがって、ワークWが大きくなると、下段アーム943、上段アーム944、およびハンド945の回動動作を相対的に高速で行う必要があり、各駆動機構を構成するモータや減速機も大型化する傾向にある。さらに、ワークWの搬送先の高さ(ロードポート91に対するワークWの受け渡しが可能な下限位置)については、ワークWが大きくなっても種々の制約によって変更できない場合がある。
【0009】
このようなことから理解されるように、ワークWが大型化する場合、ワーク搬送装置94の高さを低く維持(低床化)しつつ高速でのワークWの搬送を高精度で行うことが求められる。しかしながら、上記従来の構造のワーク搬送装置94では、ハンド駆動用のモータ947が昇降ベース942に支持されているので、ハンド駆動に関してモータ947からハンド945に至るまでの動力伝達経路が比較的に長い。したがって、高速でのワーク搬送を行うのに適しておらず、上記要求を満たすことは困難であった。また、ワーク搬送を効率よく行う観点から、ワーク保持用の2つのハンドが上下に配されたダブルハンド式のワーク搬送装置も知られている。ダブルハンド式のワーク搬送装置の場合、追加のハンド用の駆動機構としてモータおよび伝動機構をさらに備えることになるので、ワーク搬送装置の全体の高さが嵩む傾向にある。このことは、低床化の阻害要因となり、ワークWの大型化への対応がより困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、低床化を維持しつつ高速でのワーク搬送を行うのに適したワーク搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0013】
本発明によって提供されるワーク搬送装置は、固定ベースと、上記固定ベースに支持されて昇降する昇降ベースと、上記昇降ベースに対して第1垂直軸を中心として回動可能に基端が支持された第1アームと、上記第1アームの先端に対して第2垂直軸を中心として回動可能に基端が支持された第2アームと、上記第2アームの先端に対して第3垂直軸を中心として回動可能に支持されたワーク保持用のハンドと、上記ハンドを回動駆動するハンド駆動機構と、を備え、上記ハンド駆動機構は、上記第1アームの内部に配置されたモータと、上記第1アームの内部ないし上記第2アームの内部に配置され、上記モータの回転出力を上記ハンドに伝達する伝動機構と、を含んで
おり、上記伝動機構は、上記モータの直下に位置し、上記モータの出力軸の回転を減速する減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた第1プーリと、上記第2垂直軸に沿って軸転可能に配置された中間伝動軸と、この中間伝動軸の一端に取り付けられた第2プーリと、上記中間伝動軸の他端に取り付けられた第3プーリと、上記ハンドに一端が連結され、上記第3垂直軸に沿って軸転可能に配置された作動軸と、この作動軸の他端に取り付けられた第4プーリと、上記第1プーリと上記第2プーリ間に掛け回された第1無端ベルトと、上記第3プーリと上記第4プーリ間に掛け回された第2無端ベルトと、を含んでおり、上記第1アームは、上記第1垂直軸を中心とした回動において上記昇降ベースに干渉しないように下方に膨出する膨出部を有し、上記モータ、上記減速機、上記第1プーリ、上記第2プーリ、および上記第1無端ベルトは、上記膨出部の平面的領域内に位置しており、かつ、上記第1プーリ、上記第2プーリ、および上記第1無端ベルトは、上記膨出部の内部に配置されていることを特徴としている。
【0016】
好ましい実施の形態においては、上記固定ベースから上記第1および第2アームを経由して上記ハンドまでつながる配線を備え、上記配線は、スリップリングを介して上記ハンドに接続されている。
【0017】
好ましい他の実施の形態においては、上記第2アームの先端に対して上記第3垂直軸を中心として回動可能に支持されたワーク保持用の追加のハンドと、上記追加のハンドを回転駆動する追加のハンド駆動機構と、をさらに備え、上記追加のハンド駆動機構は、上記第1アームの内部に配置された追加のモータと、上記第1アームの内部ないし上記第2アームの内部に配置され、上記追加のモータの回転出力を上記追加のハンドに伝達する追加の伝動機構と、を含んで
おり、上記追加の伝動機構は、上記追加のモータの直下に位置し、上記追加のモータの出力軸の回転を減速する追加の減速機と、この追加の減速機の出力軸に取り付けられた追加の第1プーリと、上記第2垂直軸に沿って軸転可能に上記中間伝動軸と同軸状に配置された追加の中間伝動軸と、この追加の中間伝動軸の一端に取り付けられた追加の第2プーリと、上記追加の中間伝動軸の他端に取り付けられた追加の第3プーリと、上記追加のハンドに一端が連結され、上記第3垂直軸に沿って軸転可能に上記作動軸と同軸状に配置された追加の作動軸と、この追加の作動軸の他端に取り付けられた追加の第4プーリと、上記追加の第1プーリと上記追加の第2プーリ間に掛け回された追加の第1無端ベルトと、上記追加の第3プーリと上記追加の第4プーリ間に掛け回された追加の第2無端ベルトと、を含んでおり、上記追加のモータ、上記追加の減速機、上記追加の第1プーリ、上記追加の第2プーリ、および上記追加の第1無端ベルトは、上記膨出部の平面的領域内に位置しており、かつ、上記追加の第1プーリ、上記追加の第2プーリ、および上記追加の第1無端ベルトは、上記膨出部の内部に配置されている。
【0019】
好ましい実施の形態においては、上記第1アームは、上記第1垂直軸を中心とした回動において上記昇降ベースに干渉しないように下方に膨出する膨出部を有し、上記伝動機構の一部および上記追加の伝動機構の一部は、上記膨出部の内部に配置されている。
【0020】
好ましい実施の形態においては、上記固定ベースから上記第1および第2アームを経由して上記ハンドおよび上記追加のハンドまでつながる配線を備え、上記配線は、スリップリングを介して上記ハンドおよび上記追加のハンドに接続されている。
【0021】
本発明に係るワーク搬送装置においては、ハンドを駆動させるためのモータと伝動機構の一部とを第1アームの内部空間に配置することにより、第2アームの先端において伝動機構が占める高さを低く抑えることができ、また固定ベースないし昇降ベースの高さを実質的に低く抑えることができる。その結果、ワーク搬送装置の低床化を図ることができる。また、伝動機構が第1アームの内部ないし第2アームの内部に配置されているので、モータからハンドまでの動力伝達経路が比較的に短くなる。このような構成は、高速でのワーク搬送を高精度で行うのに適している。さらに、伝動機構の一部を担う減速機を第1アームの内部に配置する構成によれば、回動要素の剛性を実質的に向上させることができる。かかる構成によれば、ワークの大型化や高速での高精度のワーク搬送について、容易に対応することが可能となる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0025】
図1〜
図6は、本発明に係るワーク搬送装置の一例を示している。本実施形態のワーク搬送装置Aは、固定ベース1と、昇降ベース2と、長手状の下段アーム3および上段アーム4と、ウエハ等の薄板状のワークWを載置保持しうる2つのハンド5A,5Bと、これらハンドを回動駆動させるハンド駆動機構6A,6Bとを備え、たとえばウエハ等の薄板状のワークWの搬送を行うように構成されたものである。
【0026】
図2に表れているように、固定ベース1は、底壁部11と、筒状の側壁部12とを有し、略四角柱状の外形を有するハウジングとして構成されたものである。
【0027】
昇降ベース2は、固定ベース1に対して昇降可能に支持されている。具体的には、たとえば、固定ベース1の内部には上下方向に延びる一対のガイドレール13が設けられ、昇降ベース2に設けられたスライダ21が上記ガイドレール13に対して上下方向にスライド移動可能に支持されている。また、固定ベース1の内部にはネジ軸14が回転自在に支持され、昇降ベース2には、上記ネジ軸14に螺合するナット22が設けられている。固定ベース1の下部には昇降用のモータ15が設けられ、このモータ15の出力軸に設けられたプーリ16と、上記ネジ軸14に設けられたプーリ17との間に無端ベルト18が掛け回されている。かかる構成により、昇降用のモータ15が駆動すると、上記ネジ軸14が回転させられ、当該ネジ軸14の回転により、昇降ベース2が昇降させられる。このようにして、昇降ベース2を固定ベース1に対して昇降させる昇降機構が構成される。
【0028】
昇降ベース2には、固定ベース1の側壁部12に外側から緩く嵌合する筒状の昇降カバー23が設けられている。昇降カバー23は、昇降ベース2とともに昇降して固定ベース1の上部を常時覆うカバーである。この昇降カバー23は、昇降ベース2が上限位置まで上昇した状態においてもその下端寄りの部分が固定ベース1の外周部にオーバーラップした状態を維持することができるように、十分な高さ寸法を有している。
【0029】
昇降カバー23の上部には、減速機24が支持されている。減速機24は、後述する下段アーム駆動機構を担うものであり、昇降カバー23の上部に形成された開口に臨むように配置されている。本実施形態では、減速機24として、たとえばクロスローラベアリングが内蔵されたユニットタイプのものが用いられる。後述する減速機34,621a,621bについても同様にクロスローラベアリングが内蔵されたものが用いられる。
【0030】
図2に表れているように、下段アーム3は、たとえば中空状の略四角柱形状とされており、長手方向が水平となる姿勢で昇降ベース2に支持されている。下段アーム3の基端31の下部には開口が形成されており、この開口の周囲部分と上記減速機24の出力軸とが連結されている。これにより、下段アーム3は、減速機24を介して昇降ベース2に対して垂直軸O1を中心として回動可能に支持されている。
【0031】
本実施形態では、下段アーム3は、下方に膨出する膨出部33を有している。膨出部33は、垂直軸O1を中心とした下段アーム3の回動において昇降ベース2(昇降カバー23)に干渉しないように、下段アーム3の先端寄りに設けられている。
【0032】
また、上記した昇降ベース2には下段アーム駆動用のモータ25が設けられ、垂直軸O1から偏倚する位置に下段アーム用中間伝動軸26が設けられている。この下段アーム用中間伝動軸26は、軸受261を介して昇降ベース2に対して回転自在に支持されている。そして、モータ25の出力軸に設けられたプーリ251と下段アーム用中間伝動軸26の下端に設けられたプーリ262との間に無端ベルト263が掛け回され、下段アーム用中間伝動軸26の上端に設けられたプーリ264と減速機24の入力軸に設けられたプーリ241との間に無端ベルト265が掛け回されている。かかる構成により、下段アーム用のモータ25が駆動すると、プーリ251、無端ベルト263、プーリ262、下段アーム用中間伝動軸26、プーリ264、無端ベルト265、プーリ241、および減速機24の連係によって、下段アーム3は、垂直軸O1周りに回動させられる。このようにして、下段アーム3を垂直軸O1周りに回動させる下段アーム駆動機構が構成される。
【0033】
下段アーム3の先端32の上部には、減速機34が支持されている。減速機34は、後述する上段アーム駆動機構を担うものであり、下段アーム3の先端32の上部に形成された開口に臨むように配置されている。
【0034】
上段アーム4は、たとえば中空状の略四角柱形状とされており、長手方向が水平となる姿勢で下段アーム3に支持されている。上段アーム4の基端41の下部には開口が形成されており、この開口の周囲部分と上記減速機34の出力軸とが連結されている。これにより、上段アーム4は、減速機34を介して下段アーム3に対して垂直軸O2を中心として回動可能に支持されている。
【0035】
また、上記した昇降ベース2には上段アーム駆動用のモータ27が設けられ、減速機24の中空部に貫通する状態で上段アーム用中間伝動軸28が設けられている。この上段アーム用中間伝動軸28は、軸受281を介して下段アーム3の基端31の下部内周に支持されるとともに、軸受282を介してプーリ241の内周に支持されている。これにより、上段アーム用中間伝動軸28は、垂直軸O2周りに回転自在とされている。そして、モータ27の出力軸に設けられたプーリ271と上段アーム用中間伝動軸28の下端に設けられたプーリ283との間に無端ベルト284が掛け回され、上段アーム用中間伝動軸28の上端に設けられたプーリ285と減速機34の入力軸に設けられたプーリ341との間に無端ベルト286が掛け回されている。かかる構成により、上段アーム用のモータ27が駆動すると、プーリ271、無端ベルト284、プーリ283、上段アーム用中間伝動軸28、プーリ285、無端ベルト286、プーリ341、および減速機34の連係によって、上段アーム4は、垂直軸O2周りに回動させられる。このようにして、上段アーム4を垂直軸O2周りに回動させる上段アーム駆動機構が構成される。
【0036】
ハンド5A,5Bは、ボックス状の基部51a,51bと、先端が二股のフォーク状とされたワーク保持部52a,52bとを有し、中心線が水平となる姿勢で上段アーム4に支持されている。
【0037】
また、ハンド5A,5B(ワーク保持部52a,52b)の適所には、ワークWの有無を検出するための在荷センサ(図示略)が設けられている。当該在荷センサとしては、たとえば反射型フォトインタラプタが用いられる。
【0038】
ハンド5Aの基部51aには、垂直下向きに延びる筒状の作動軸53aが設けられている。
図3に表れているように、この作動軸53aは、上段アーム4の先端42の上部に形成された開口に嵌挿された状態で軸受421を介して上段アーム4に対して回転可能に支持されており、垂直軸O3に沿って配置されている。これにより、ハンド5Aは、上段アーム4の先端42に対して垂直軸O3を中心として回動可能に支持されている。
【0039】
ハンド5Bの基部51bには、垂直下向きに延びる筒状の作動軸53bが設けられている。この作動軸53bは、上記した作動軸53aに内挿された状態で軸受532,533を介して当該作動軸53aと同軸状に配置されている。これにより、ハンド5Bもまた、ハンド5Aと同様に上段アーム4の先端42に対して垂直軸O3を中心として回動可能に支持されている。
【0040】
図2に表れているように、ハンド駆動機構6A,6Bは、ハンド駆動用のモータ61a,61bと、モータ61a,61bの回転出力をハンド5A,5Bに伝達するための伝動機構62a,62bとを備えている。
【0041】
モータ61a,61bは、下段アーム3の内部に配置されており、伝動機構62a,62bは、下段アーム3の内部ないし上段アーム4の内部に配置されている。
【0042】
より具体的には、伝動機構62a,62bはそれぞれ、モータ61a,61bの出力軸の回転を減速する減速機621a,621bと、中間伝動軸622a,622bと、上記した作動軸53a,53bとを備えて構成されている。
【0043】
図4に表れているように、減速機621a,621bは、モータ61a,61bの出力軸に連結されており、下段アーム3の内部に収容されている。減速機621a,621bの出力軸には、プーリ623a,623bが設けられている。
【0044】
中間伝動軸622a,622bは、下段アーム3の先端32ないし上段アーム4の基端41に跨るようにして、減速機34の中空部に貫通する状態で設けられている。中間伝動軸622bは、軸受631を介して上段アーム4の基端41の下部内周に支持されるとともに、軸受632を介してプーリ341の内周に支持されている。中間伝動軸622bの下端にはプーリ624bが設けられており、中間伝動軸622bの上端にはプーリ625bが設けられている。中間伝動軸622aは、軸受633を介してプーリ625bの内周に支持されるとともに、軸受634を介してプーリ624bの内周に支持されている。中間伝動軸622aの下端にはプーリ624aが設けられており、中間伝動軸622aの上端にはプーリ625aが設けられている。中間伝動軸622a,622bは、上記構成から理解されるように、垂直軸O2に沿って回転可能とされており、互いに同軸状に配置されている。
【0045】
作動軸53aの下端には、プーリ531aが設けられている。また、作動軸53bの下端には、プーリ531bが設けられている。
【0046】
そして、減速機621a,621bの出力軸に設けられたプーリ623a,623bと中間伝動軸622a,622bの下端に設けられたプーリ624a,624bとの間に無端ベルト626a,626bが掛け回され、中間伝動軸622a,622bの上端に設けられたプーリ625a,625bと作動軸53a,53bの下端に設けられたプーリ531a,531bとの間に無端ベルト627a,627bが掛け回されている。かかる構成により、モータ61a,61bが駆動すると、減速機621a,621b、プーリ623a,623b、無端ベルト626a,626b、プーリ624a,624b、中間伝動軸622a,622b、プーリ625a,625b、無端ベルト627a,627b、プーリ531a,531b、および作動軸53a,53bの連係によって、ハンド5A,5Bは、垂直軸O3周りに回動させられる。このようにして、ハンド5A,5Bを垂直軸O3周りに回動させるハンド駆動機構6A,6Bが構成される。
【0047】
上記構成のワーク搬送装置Aにおいては、下段アーム駆動機構、上段アーム駆動機構、およびハンド駆動機構6A,6Bの動作を独立して制御することが可能であり、下段アーム3、上段アーム4、およびハンド5A,5Bを垂直軸O1,O2,O3周りに回動させることができる。したがって、下段アーム3、上段アーム4、およびハンド5A,5Bのそれぞれの回動を適宜制御することにより、これらが垂直軸O1,O2,O3周りに回動し得る範囲でハンド5A,5Bを所望の位置に移動させることができる。また、昇降用のモータ15を一方向に回転させることにより、昇降ベース2を上昇させることができ、モータ15を他方向に回転させることにより、昇降ベース2を下降させることができる。これにより、ハンド5A,5Bを所定範囲内で所望の高さに上下移動させることができる。
【0048】
なお、固定ベース1と昇降カバー23との間、昇降カバー23と下段アーム3との間、下段アーム3と上段アーム4との間、および上段アーム4とハンド5A,5Bとの間には、それぞれ、必要に応じて図示しないシール部材が介装される。これにより、ワーク搬送装置Aの内部空間は外部に対して気密シールされ、たとえばワーク搬送装置A内部のパーティクルが周囲へ拡散することは防止される。
【0049】
本実施形態のワーク搬送装置Aにおいては、ハンド5A,5Bに載せたワークWを的確に保持するために、真空吸引力を利用してワークWを吸着保持するワーク保持機構が設けられている。
【0050】
ワーク保持機構は、たとえば、固定ベース1または昇降ベース2に設けられる真空ポンプと、ハンド5A,5Bに設けられる真空吸引口と、これら真空ポンプおよび真空吸引口を接続するための管路とを備えて構成される。上記のように各アーム3,4およびハンド5A,5Bを相対回動するように構成する場合、各ハンド5A,5Bの真空吸引口を真空ポンプに接続するための上記管路を、下段アーム3、上段アーム4およびハンド5A,5Bの回動を妨げない状態で設ける必要がある。このような管路は、たとえば垂直軸O1,O2に沿うように設けられるパイプ軸と、アーム3,4内に設けられる配管と、垂直軸O3に沿うように設けられる軸方向流路と、ハンド5A,5B内に設けられる分岐配管とを備えて構成される。
【0051】
上記配管とパイプ軸の端部とは、アーム3,4内に設けられた中継室を介して連通しており、中継室とパイプ軸の端部とは、たとえばOリングを介して気密かつ相対回転可能に接続されている。このような垂直軸O1,O2に沿うパイプ軸、中継室、およびアーム3,4内の配管の接続構造については、詳細な図示説明は省略するが、たとえば特開2003−188231号公報記載の構造(同公報の
図7参照)と同様の構造によって実現することが可能である。
【0052】
図5は、上段アーム4およびハンド5A,5Bの間におけるワーク吸着用の管路の概略構造を示している。同図に表れているように、ハンド5Bの作動軸53bの下部および中間部には、環状の中継室(環状中継室534,535)が設けられている。環状中継室534は、上段アーム4内の配管43に連通している。環状中継室534,535は、軸方向流路536を介して連通している。環状中継室535には、ハンド5Bの基部51bに延びる分岐配管538が接続されている。また、ハンド5Aの作動軸53aにおける環状中継室535に対応する位置には、ハンド5Aの基部51aに延びる分岐配管537が設けられている。
【0053】
そして、上段アーム4内の配管43と環状中継室534との間にはOリング54が介装されており、これによって配管43および環状中継室534は気密かつ相対回転可能に連通している。また、環状中継室535と分岐配管537との間にはOリング55が介装されており、これによって環状中継室535および分岐配管537は気密かつ相対回転可能連通している。
【0054】
ハンド5Aの分岐配管537の適所には、当該分岐配管537を開閉切り替えするための電磁弁(図示略)が設けられており、分岐配管537の端部は、たとえばワーク保持部52aに設けられた真空吸引口(図示略)に接続されている。また、ハンド5Bの分岐配管538の適所には、当該分岐配管538を開閉切り替えするための電磁弁が設けられており、分岐配管538の端部は、たとえばワーク保持部52bに設けられた真空吸引口(図示略)に接続されている。
【0055】
上記構成の管路を含むワーク保持機構によれば、下段アーム3、上段アーム4およびハンド5A,5Bの相互間の回動位置関係がいずれの場合でも、上記真空吸引口に臨むワークWを吸着保持することができる。また、ハンド5A,5Bの分岐配管537,538に設けられた各電磁弁の開閉を適宜切り替えることによって、2つのハンド5A,5Bについて各別にワークWを吸着保持する状態とワークWを吸着保持しない状態とを切り替えることができる。
【0056】
本実施形態のワーク搬送装置Aにおいては、ハンド5A,5Bに設けられた上記在荷センサとの間での信号の伝送、および上記電磁弁に対する給電や信号の伝送を行うための配線を備えている。当該配線は、固定ベース1から昇降ベース2、下段アーム3および上段アーム4を経由してハンド5A,5Bまでつながっている。また、上記配線は、固定ベース1および昇降ベース2の間、昇降ベース2および下段アーム3の間、ならびに下段アーム3および上段アーム4の間において、相対位置の変化に対応するように、たとえばカールコードのような多芯ケーブルやフラットケーブルによって構成される。
【0057】
図6は、上段アーム4およびハンド5A,5Bの間における上記配線の概略構成を示している。同図に表れているように、上段アーム4の先端42には、下部から垂直上向きに延びる軸部44が設けられており、この軸部44の内部を配線45が通っている。
【0058】
ハンド5Bの作動軸53bの内側には、スリップリング7が設けられている。スリップリング7は、回転体に対して環状の電路とブラシとを介して電気的接続をとるためのものであり、上記環状電路およびブラシに対して上段アーム4側の配線45およびハンド5A,5B側の配線56が接続されている。このようにスリップリング7が設けられることによって、上段アーム4とハンド5B間のエンドレスでの相対回転を許容しつつ上段アーム4側の配線45とハンド5A,5B側の配線56との電気的接続が適切に維持される。
【0059】
ハンド5A,5B側の配線56は、分岐部を介してハンド5A,5B内に各別に配されるハンド用配線56a,56bを含んで構成されており、ハンド用配線56a,56bは、上記在荷センサや上記電磁弁に接続されている。なお、ハンド5Aに通じるハンド用配線56aは、ハンド5A,5Bの回動による相対位置の変化に対応するように、たとえばフラットケーブルによって構成される。ハンド5A,5Bの相対回動を許容するためには、ハンド用配線56aの長さに余裕をもたせておく必要がある。ここで、ハンド用配線56aがフラットケーブルによって構成される場合、ハンド5A側に設けられたケース57内の巻取り部58に対し、ハンド用配線56aを、厚み方向に重なるように巻き付けることが可能である。
【0060】
上記構成のワーク搬送装置Aにおいて、ハンド5A,5Bを回動駆動させるハンド駆動機構6A,6Bは、モータ61a,61b、およびモータ61a,61bの回転出力をハンド5A,5Bに伝達するための伝動機構62a,62bを備えている。そして、上記モータ61a,61bは、下段アーム3の内部に配置され、伝動機構62a,62bは、下段アーム3の内部ないし上段アーム4の内部に配置されている。このような構成によれば、モータ61a,61bを下段アーム3の内部空間に効率よく配置することが可能である。したがって、ハンド駆動用のモータを固定ベース1ないし昇降ベース2の内部に配置する従来の構成と比べて、固定ベース1ないし昇降ベース2の高さを低く抑えることができる。このことは、ワーク搬送装置Aの低床化に資する。
【0061】
また、伝動機構62a,62bが下段アーム3の内部ないし上段アーム4の内部に配置された構成によれば、モータ61a,61bからハンド5A,5Bまでの動力伝達経路が比較的に短くなる。したがって、本実施形態のワーク搬送装置Aは、ハンド駆動用のモータを固定ベース1ないし昇降ベース2の内部に配置する従来の構成と比べて、高速でのワーク搬送を行うのに適している。
【0062】
さらに、回動可能な下段アーム3の内部にモータ61a,61bが配置された構成によれば、回動しない固定ベース1ないし昇降ベース2の内部にハンド駆動用のモータが配置された従来の構成と比べて、ハンド5A,5Bの駆動制御が容易となる。このことは、高速でのワーク搬送を高精度で行ううえで好ましい。
【0063】
伝動機構62a,62bの一部を担う減速機621a,621bは、モータ61a,61bに隣接して下段アーム3の内部に配置されている。このような構成によれば、減速機621a,621bをも下段アーム3の内部空間に効率よく配置することが可能であり、ハンド駆動用の減速機をハンドの基端付近に配置する従来の構成と比べて、ハンド5A,5Bの高さを実質的に低くすることができる。このことは、ワーク搬送装置Aの低床化に資する。
【0064】
また、減速機621a,621bは重量が比較的に大きいところ、これら減速機621a,621bを、下段アーム3から上段アーム4を経てハンド5A,5Bに至る回動要素の先端寄りのハンド5A,5B近傍に配置せずに、上記回動要素の基端寄りである下段アーム3内に配置している。これにより、上記回動要素の剛性を実質的に向上させることができ、たとえばワークWの大型化や高速での高精度のワーク搬送について、容易に対応することが可能となる。
【0065】
下段アーム3は、下方に膨出する膨出部33を有し、この膨出部33の内部に伝動機構62a,62bの一部(本実施形態では
図4に示すように、減速機621a,621b、プーリ623a,623b、プーリ624a,624b、および無端ベルト626a,626b)が配置されている。このような構成によれば、下段アーム3の高さを実質的に低く維持しつつ、伝動機構62a,62bを下段アーム3内に効率よく配置することが可能である。このことは、ワーク搬送装置Aの低床化を図るうえで好ましい。
【0066】
本実施形態のワーク搬送装置Aは、2つのハンド5A,5Bを有するいわゆるダブルハンド式である。ダブルハンド式のワーク搬送装置Aにおいても、
図2〜
図4を参照すると理解されるように、ハンド5A,5Bの駆動のためのモータ61a,61bおよび伝動機構62a,62bを下段アーム3の内部に効率よく配置することできる。このことは、ワーク搬送装置Aの低床化を図るうえで好ましい。
【0067】
本実施形態では、ハンド5Aとハンド5Bとの間の配線(ハンド用配線56a)は、フラットケーブルによって構成され、当該ハンド用配線56aは、ハンド5A側の巻取り部58に巻回されている。詳細な図示説明は省略したが、このような構成によれば、巻取り部58を収容するケース57としては、フラットケーブルの幅と同程度の高さ寸法を確保すればよいので、ハンド5A,5Bの高さを低く抑えることができる。本実施形態と異なり、ハンド用配線としてカールコードを用いた場合には、当該カールコードの動作範囲を確保するために配線収容用のケースの高さ寸法が大きくなり、また、ハンド用配線として中空状のスリップリングを用いた場合には、当該スリップリングの外形寸法が大きいためにスリップリング収容用のケースの高さが嵩張ってしまう。したがって、ハンド用配線56aをフラットケーブルによって構成することは、ハンド5A,5Bの高さを低く抑えるのに適しており、ワーク搬送装置Aの低床化に寄与する。
【0068】
本実施形態のワーク搬送装置Aは、上述のように真空吸引力を利用したワーク保持機構を備えており、ハンド5A,5B内において分岐配管537,538に設けられた電磁弁によって、ハンド5A,5Bについて各別にワークWの吸着保持のオン−オフを切り替えることができる。このような構成によれば、真空吸引口が設けられるワーク保持部52a,52bに近い位置に上記電磁弁が設けられているので、ワークWの吸着保持のオン−オフの応答性に優れている。このことは、高速でワーク搬送を行うのに適している。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るワーク搬送装置各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【0070】
上記実施形態においては、2つのハンド5A,5Bを具備するダブルハンド式の場合を例に挙げて説明したが、たとえば1つのハンドのみを具備するワーク搬送装置にも本発明は適用可能である。