特許第5771071号(P5771071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771071
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】シールド編組の接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6583 20110101AFI20150806BHJP
【FI】
   H01R13/6583
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-124436(P2011-124436)
(22)【出願日】2011年6月2日
(65)【公開番号】特開2012-252874(P2012-252874A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2014年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智治
【審査官】 佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−027881(JP,A)
【文献】 特開2009−087902(JP,A)
【文献】 実開平01−081879(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/648−13/6599
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線端に接続された端子金具を収容保持する樹脂製コネクタハウジングを収容し、且つ、前記電線端の外周を覆う筒状部を有したシールドシェルと、
前記筒状部の外周に嵌合装着されて、前記電線の外周を覆う筒状のシールド編組の端部を前記筒状部の外周面との間に挟装するシールドリングと、
を備え、
前記シールドリングと前記筒状部との間に前記シールド編組を挟装した状態で前記シールドリングを前記筒状部に圧接させることで、前記シールド編組と前記筒状部との電気的及び機械的な接続を果たすシールド編組の接続構造であって、
前記シールドリングの一部には、前記シールド編組に向けて突出した凸部が形成され、該凸部には、前記シールド編組の一部が突入する編組突入孔が貫通形成されていることを特徴とするシールド編組の接続構造。
【請求項2】
前記シールドリングには、複数個の前記編組突入孔が、周方向に適宜間隔を開けて装備されていることを特徴とする請求項1に記載のシールド編組の接続構造。
【請求項3】
前記凸部は、前記シールドリングを前記シールド編組に加締めることで形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のシールド編組の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドコネクタにおいてシールドシェルの筒状部とシールド編組との電気的及び機械的な接続を果たすシールド編組の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、シールドコネクタにおいてシールドシェルの筒状部とシールド編組との電気的及び機械的な接続を果たすシールド編組の接続構造の従来例を示したものである。
【0003】
ここに示したシールド編組の接続構造は、下記特許文献1に開示されたものである。図6に示したシールドコネクタ100は、電線110の端部に接続された端子金具120を収容保持する樹脂製コネクタハウジング130と、樹脂製コネクタハウジング130を収容するシールドシェル140と、電線110の外周を覆う筒状のシールド編組150と、シールド編組150の端部をシールドシェル140に接続するシールドリング160と、を備える。
【0004】
シールドシェル140は、図6に示すように、端子金具120に接続された電線110の端部の外周を覆う筒状部141を有している。
【0005】
シールド編組150を、電線110の外周に被せられると共に、端部が筒状部141の外周に被せられる。
【0006】
シールドリング160は、筒状部141の外周に嵌合装着されると、図7(a)に示すように、筒状部141の外周面との間に、シールド編組150の端部が挿入可能な環状の隙間170を形成する金属製の筒状部材である。
【0007】
図6に示したシールド編組の接続構造は、環状の隙間170にシールド編組150を挿通させた状態でシールドリング160の一部を筒状部141側に押圧変形させて、図7(b)に示すように、シールド編組150側に凸に変形した押圧凸部161を形成して、押圧凸部161と筒状部141とによってシールド編組150が挟持された状態を形成することで、シールド編組150と筒状部141との電気的及び機械的な接続を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−250995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1におけるシールド編組の接続構造では、図7(b)にも示したように、シールド編組150と押圧凸部161との接触状態が、滑らかな面による面接触状態で、押圧凸部とシールド編組との間の結合力を高めることが難しい。そのため、シールドシェル140の筒状部141とシールド編組150との電気的及び機械的な接続強度を高めることが難しいという問題があった。
【0010】
また、特許文献1におけるシールド編組の接続構造では、押圧凸部161の寸法を増大させて押圧凸部161による押圧面積を増大させることで、押圧凸部とシールド編組との間の結合力を高めて、筒状部141とシールド編組150との電気的及び機械的な接続強度を改善することができる。
【0011】
しかし、押圧凸部161の寸法を増大させると、シールドリング160の幅が増大して、シールドリング160の大型化や重量化を招くおそれがあった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、シールドシェルの筒状部とシールド編組との電気的及び機械的な接続強度を向上させることができ、しかも、シールドリングの幅を縮小してシールドリングの小型軽量化を図ることもできるシールド編組の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)電線端に接続された端子金具を収容保持する樹脂製コネクタハウジングを収容し、且つ、前記電線端の外周を覆う筒状部を有したシールドシェルと、
前記筒状部の外周に嵌合装着されて、前記電線の外周を覆う筒状のシールド編組の端部を前記筒状部の外周面との間に挟装するシールドリングと、
を備え、
前記シールドリングと前記筒状部との間に前記シールド編組を挟装した状態で前記シールドリングを前記筒状部に圧接させることで、前記シールド編組と前記筒状部との電気的及び機械的な接続を果たすシールド編組の接続構造であって、
前記シールドリングの一部には、前記シールド編組に向けて突出した凸部が形成され、該凸部には、前記シールド編組の一部が突入する編組突入孔が貫通形成されていることを特徴とするシールド編組の接続構造。
【0014】
(2)前記シールドリングには、複数個の前記編組突入孔が、周方向に適宜間隔を開けて装備されていることを特徴とする上記(1)に記載のシールド編組の接続構造。
【0015】
(3)前記凸部は、前記シールドリングを前記シールド編組に加締めることで形成されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のシールド編組の接続構造。
【0016】
上記(1)の構成によれば、シールドシェルの筒状部とシールドリングとの間に前記シールド編組を挟装した状態で、凸部が押圧されるシールド編組の一部が凸部に開口する編組突入孔に突入して、シールド編組と凸部との係合が凹凸嵌合となるため、凸部とシールド編組との間の結合力を高めることができる。しかも、編組突入孔を形成した分、凸部を形成する部位の面積が減少するため、凸部を形成する部位の押圧変形が容易になり、シールドシェルの筒状部に対する凸部の圧接力を向上させることができる。
【0017】
そして、これらの凸部とシールド編組との間の結合力の向上と、シールドシェルの筒状部に対する凸部の圧接力の向上とが相乗して、シールドシェルの筒状部とシールド編組との電気的及び機械的な接続強度を向上させることができる。
【0018】
また、シールド編組と凸部との係合が凹凸嵌合となって、凸部とシールド編組との間の結合力が向上するため、凸部の寸法を縮小しても凸部とシールド編組との間の結合力の低下を防止することができる。そのため、凸部の寸法を縮小させることでシールドリングの幅を縮小して、シールドリングの小型軽量化を図ることもできる。
【0019】
なお、シールドリングは、一部品からなるリング構造であってもよく、複数の分割体をボルト・ナット、加締め等で連結することでリング構造になるものであってもよい。
【0020】
また、凸部は、予めシールドリングに凸状又は凹凸状に形成されていてもよい。また、凸部は、シールドリングを加締める際に、凸状に形成されてもよい。
【0021】
上記(2)の構成によれば、シールドリングに装備された複数個の編組突入孔によって、シールド編組とシールドリングとの間と凹凸嵌合がシールドリングの周方向に適宜間隔で複数形成される。その結果、シールド編組とシールドリングとの間に、より安定した結合強度を確保することができ、シールドシェルの筒状部とシールド編組との電気的及び機械的な接続の信頼性を向上させることができる。
【0022】
上記(3)の構成によれば、シールドリングをシールド編組に加締めることで凸部が形成されるので、凸部の加工が容易である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるシールド編組の接続構造によれば、シールドリングに形成された凸部に開口する編組突入孔によってシールド編組と凸部との係合が凹凸嵌合となるため、凸部とシールド編組との間の結合力を高めることができる。しかも、編組突入孔を形成した分、凸部を形成する部位の面積が減少して、凸部の押圧変形が容易になり、シールドシェルの筒状部に対する凸部の圧接力を向上させることができる。
【0024】
そして、これらの凸部とシールド編組との間の結合力の向上と、シールドシェルの筒状部に対する凸部の圧接力の向上とが相乗して、シールドシェルの筒状部とシールド編組との電気的及び機械的な接続強度を向上させることができる。
【0025】
また、シールド編組と凸部との係合が凹凸嵌合となって、凸部とシールド編組との間の結合力が向上するため、凸部の寸法を縮小しても凸部とシールド編組との間の結合力の低下を防止することができる。そのため、凸部の寸法を縮小させることでシールドリングの幅を縮小して、シールドリングの小型軽量化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るシールド編組の接続構造の一実施形態を構成しているシールドシェルとシールド編組とシールドリングとの組立状態を示す斜視図である。
図2図1に示した組立体の平面図である。
図3図2のB−B断面図である。
図4図1に示したシールドリングの斜視図である。
図5図3のC部の拡大図である。
図6】従来のシールド編組の接続構造を示すシールドコネクタの要部の縦断面図である。
図7】(a)は図6のA部において押圧凸部を押圧形成する前の状態を示す拡大図、(b)は図6のA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るシールド編組の接続構造の好適な一実施形態について、図1図5を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明に係るシールド編組の接続構造の一実施形態を構成しているシールドシェルとシールド編組とシールドリングとの組立状態を示す斜視図、図2図1に示した組立体の平面図、図3図2のB−B断面図、図4図1に示したシールドリングの斜視図、図5図3のC部の拡大図である。
【0029】
この一実施形態のシールド編組の接続構造は、シールドコネクタにおいて利用されるもので、図1図3に示すように、シールドシェル10と、シールドリング20と、を備える。
【0030】
シールドシェル10は、電線端に接続された端子金具を収容保持する樹脂製コネクタハウジングを収容する。このシールドシェル10は、樹脂製コネクタハウジングに接続される電線端の外周を覆う筒状部11を有している。本実施形態の場合、筒状部11は、横断面形状が長円形の筒状である。この筒状部11は、樹脂製コネクタハウジングに接続される電線の外周を覆う筒状のシールド編組30の端部が被嵌装着される。
【0031】
シールドリング20は、図4に示すように、横断面形状が長円形の筒状である。このシールドリング20は、内径が筒状部11よりも大きく設定されている。このシールドリング20は、筒状部11の外周に嵌合装着されて、図5に示すように、筒状部11の外周面との間に、環状の隙間40を形成する。
【0032】
環状の隙間40は、電線の外周を覆う筒状のシールド編組30の端部が挿入可能な隙間である。
【0033】
本実施形態のシールド編組の接続構造は、図5に示すように、環状の隙間40にシールド編組30を挿通させた状態でシールドリング20の一部を筒状部11側に押圧変形させて、凸部21を形成する。このように形成した凸部を以下、押圧凸部21という。押圧凸部21は、シールド編組30側に凸の湾曲形状である。押圧凸部21の成形を容易且つ確実にするために、押圧凸部21と対向する筒状部11上には、図5に示すように、押圧凸部21の形状に相応する凹部形状12が予め形成されている。
【0034】
本実施形態のシールド編組の接続構造は、図5に示すように、押圧凸部21と筒状部11とによってシールド編組30が挟持された状態を形成することで、シールド編組30と筒状部11との電気的及び機械的な接続を果たす。
【0035】
本実施形態のシールド編組の接続構造の場合、図4に示すように、シールドリング20の押圧凸部21を形成する部位22には、予め、複数個の編組突入孔23が貫通形成される。
【0036】
ここに、押圧凸部21を形成する部位22とは、図4に示すように、シールドリング20の幅Wの内の中央部に位置する領域である。
【0037】
編組突入孔23は、押圧凸部21を形成する部位22がシールド編組30に向けて押圧変形させられたときに、図5に示すように、シールド編組30の一部31が突入する開口である。
【0038】
本実施形態のシールドリング20では、前述の複数個の編組突入孔23は、図4に示すように、周方向(図4で、矢印X方向)に適宜間隔を開けて装備されている。
【0039】
以上に説明した一実施形態のシールド編組の接続構造では、シールドシェル10の筒状部11とシールドリング20との間の環状の隙間40にシールド編組30を挿通させた状態でシールドリング20の一部31を筒状部11側に押圧変形させて押圧凸部21を形成した際、図5に示したように、押圧凸部21が押圧されるシールド編組30の一部31が押圧凸部21に開口する編組突入孔23に突入して、シールド編組30と押圧凸部21との係合が凹凸嵌合となる。そのため、押圧凸部21とシールド編組30との間の結合力を高めることができる。
【0040】
しかも、編組突入孔23を形成した分、押圧凸部21を形成する部位22の面積が減少するため、押圧凸部21を形成する部位22の押圧変形が容易になり、シールドシェル10の筒状部11に対する押圧凸部21の圧接力を向上させることができる。
【0041】
そして、これらの押圧凸部21とシールド編組30との間の結合力の向上と、シールドシェル10の筒状部11に対する押圧凸部21の圧接力の向上とが相乗して、シールドシェル10の筒状部11とシールド編組30との電気的及び機械的な接続強度を向上させることができる。
【0042】
また、シールド編組30と押圧凸部21との係合が凹凸嵌合となって、押圧凸部21とシールド編組30との間の結合力が向上するため、押圧凸部21の寸法を縮小しても押圧凸部21とシールド編組30との間の結合力の低下を防止することができる。そのため、押圧凸部21の寸法を縮小させることでシールドリング20の幅Wを縮小して、シールドリング20の小型軽量化を図ることもできる。
【0043】
また、以上に説明した一実施形態のシールド編組の接続構造では、シールドリング20に装備された複数個の編組突入孔23によって、シールド編組30とシールドリング20との間と凹凸嵌合がシールドリング20の周方向に適宜間隔で複数形成される。
【0044】
その結果、シールド編組30とシールドリング20との間に、より安定した結合強度を確保することができ、シールドシェル10の筒状部11とシールド編組30との電気的及び機械的な接続の信頼性を向上させることができる。
【0045】
なお、本発明のシールド編組30の接続構造は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0046】
例えば、編組突入孔23の装備数や、編組突入孔23の大きさは、適宜に設計変更可能である。また、筒状部11やシールドリング20の横断面形状も、長円形に限るものではなく、真円形状等にすることも考えられる。
【0047】
また、シールドリングは、複数に分割された分割体によりリング状に構成されてもよい。この場合、複数の分割体は、例えば、ボルト・ナットにより一体に連結されてシールドシェルに固定されてもよく、また、互いの端部を一体に加締めることにより連結されてシールドシェルに固定されてもよい。
【0048】
また、シールドリングは、円周部分の一カ所が開放され、開放された両端部に設けたフランジ部を例えば、ボルト・ナットにより締結することで縮径する構成であってもよい。
また、凸部は、予めシールドリングに凸状又は凹凸状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 シールドシェル
11 筒状部
12 凹部形状
20 シールドリング
21 押圧凸部
22 押圧凸部を形成する部位
23 編組突入孔
30 シールド編組
31 一部
40 環状の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7