(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合突部が、前記底板の前寄りの部位において左右方向の中間部に設けられ、下方に向かって突出した後に前方に向かって折り曲げられていて、前記前側支持部の左右方向の中間部を後方から把持するように構成されている、請求項1のシート支持構造。
前記前側支持部が丸パイプからなり、その上面に当接する窪み部が前記底板の下面にて左右方向に延びるように形成されているとともに、当該窪み部に連なるように近接して前記係合突部が配設され、且つ該係合突部が前記丸パイプの外周に沿うように湾曲するJ字状とされている、請求項1又は2のいずれかのシート支持構造。
前記被支持部は、前記底板の中央よりも後寄りにおいて左右方向に互いに間隔を空けて設けられ、それぞれ前記底板の被嵌部に着脱可能に嵌め込まれた別体の弾性部材からなる、請求項1〜3のいずれか1つのシート支持構造。
前記弾性部材からなる左右の被支持部の間に、前記底板が下方に撓んだときに車体フレーム側に当接して支持されるように、追加の被支持部が設けられている、請求項4のシート支持構造。
前記ブラケットは、車体フレーム側の台座部に上方から重ね合わされて締結される基板部と、その左右少なくとも一側縁から折れ曲がって上方に延びる側板部とが、金属製の板材を曲げ加工して一体に形成されるとともに、前記側板部の上部に前記前側支持部が溶接されてなる、請求項1〜5のいずれか1つのシート支持構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記特許文献3の構造であっても、車体フレームに左右一対のシートレールを取り付けた上で、その上に支持部材を装着してシートを支持するという構造であり、その支持部材の四隅にそれぞれ高低2種類の支持座を設けなくてはならないから、あまり簡単な構造とはいえず、未だ重量やコストを削減する余地が残されている。
【0006】
しかも、前記支持部材の四隅にそれぞれ設けた支持座の高さを、高低それぞれ4つずつ同じ高さに揃えなくてはならないから、シートレールおよび支持部材の寸法の精度を高くしないと、シートのガタつきが発生してしまうという難がある。
【0007】
かかる点に鑑みて本発明の目的は、鞍乗型の車両におけるシートの支持構造を従来より一層、簡単なものとして寸法精度への要求を緩和しつつ、重量やコストのさらなる削減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成すべく本発明は、鞍乗型の車両において乗員が跨るシートの支持構造を対象として、前記シートの底板における前後方向の中央よりも前寄りに下方に突出する係合突部を設ける一方、中央よりも後寄りには車体フレーム側に当接して支持される被支持部を設ける。また、車体フレーム側に着脱可能に固定したブラケットには、前記係合突部によって把持されるとともに、前記シートの底板を下方から支持するよう左右に延びる棒状の前側支持部を設けている。
【0009】
前記の構成により、乗員の体重を受け止めるシートの後寄りの部位を車体フレーム側に当接させて安定的に支持する一方、シートの前寄りの部位は、左右に延びる棒状の前側支持部に載せるという簡単な構造としながら、この前側支持部をシートの底板の係合突部によって把持させることで、上下のみならず前後方向についても位置決めをして支持することができる。
【0010】
そして、前記前側支持部の設けられたブラケットが車体フレーム側に着脱可能に固定されているので、予め前側支持部の高さが異なる複数のブラケットを準備しておけば、これを入れ替えるだけで容易にシート高さを調整することができる。このように極めて簡単な構造で部品点数も少ないことから、重量やコストを従来より一層、削減できる。また、従来例のように多数の支持点の高さを揃える必要がないので、寸法精度の要求は緩くなり、このこともコスト削減に有利になる。
【0011】
好ましくは前記係合突部は、前記底板の前寄りの部位において左右方向の中間部に設け、下方に向かって突出した後に前方に向かって折れ曲がり、前記前側支持部の左右方向の中間部を後方から把持するように構成してもよい。なお、左右方向の中間部とは例えば左寄り、右寄り、およびそれらの中間の3つに等分したときの中間の部分としてもよい。
【0012】
その場合に前記前側支持部を丸パイプによって構成し、その上面が当接する窪み部を前記底板の下面において左右方向に延びるように形成するとともに、この窪み部に連なるように近接させて前記係合突部を設けて、前記丸パイプの外周に沿うように湾曲するJ字状に形成してもよい。
【0013】
こうすれば、前側支持部がシートの底板の窪みと係合突部との間に嵌まり込むようになるので、この前側支持部によるシートの位置決め及び支持状態をより安定化できる。よって、例えば車両の急制動時においてもシートの位置のずれを防止できる。
【0014】
一方で、シートの底板の後寄りに設ける前記被支持部は、左右方向に互いに間隔を空けて、それぞれ前記底板の被嵌部に着脱可能に嵌め込まれた別体の弾性部材によって構成してもよい。左右に間隔を空けて被支持部を設けることで、シートの後寄りで乗員の臀部の左右それぞれの荷重を受ける部位を安定的に支持することができる。なお、左右の被支持部の間に、底板が下方に撓んだときに車体フレーム側に当接するように追加の被支持部を設けてもよい。
【0015】
また、前記被支持部を一例としてゴムのような弾性部材によって構成することで、比較的高い周波数の振動を吸収し、乗り心地を改善することができる。この弾性部材も予め高さの異なるものを準備しておけば、それを交換することでシートの後寄りの部位の高さも調整可能になる。
【0016】
そうしてシートの後寄りの部位の被支持部を左右2箇所に設けた場合、前寄りの部位を支持するブラケットの前側支持部が左右方向の中間部において係合突部に把持されているため、この把持部位と前記被支持部とを合わせてシート(底板)は実質的に3点支持とみなすことができる。よって、車体フレームやブラケット、シートの底板などへの寸法精度の要求が緩和される。
【0017】
さらに、前記ブラケットとしては、例えば金属製の板材を曲げ加工して、車体フレーム側の台座部に上方から重ね合わせて締結する基板部と、その左右少なくとも一側縁から折れ曲がって上方に延びる側板部とを一体に形成し、この側板部の上部に前記前側支持部を溶接してもよい。こうすれば、ブラケットの材料および加工コストを抑制できる。
【0018】
その場合に、前記ブラケットの基板部の左右方向の他側には、車両装備品を固定するための押さえ部も一体に形成してもよい。車両装備品は例えばバッテリ、キャニスタ、ABSユニットなどのように、シートの近くに配設されるものであれば何でもよく、これらの押さえ部を前記のような板材の曲げ加工の際に一緒に形成すれば、さらなる低コスト化が図られる。
【0019】
また、前記ブラケットの基板部が締結される車体フレーム側の台座部には、燃料タンクを固定するためのブラケットも締結してもよい。こうすれば、シートを支持するための台座部を、該シートの前方に近接する燃料タンクの固定にも利用することができ、このことも低コスト化に寄与する。
【0020】
見方を変えれば本発明は、前記した請求項1〜8のいずれか1つに係るシート支持構造を備えた鞍乗型車両において、当該シートの高さを調整する方法である。すなわち、前記ブラケットとして、前記前側支持部の高さが異なる複数のものを予め準備しておき、そのうちの一つを選択することにより、当該選択したブラケットによって支持される前記シートの高さを調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、説明したように本発明に係る鞍乗型車両のシート支持構造は、シートの前寄りの部位を着脱可能なブラケットの前側支持部によって支持し、後寄りの部位は車体フレーム側に当接させて支持するという極めて簡単な構造であり、予め前側支持部の高さが異なる複数のブラケットを準備しておけば、これを入れ替えることによって容易にシート高さを調整することができる。従来例のように多数の支持点の高さを揃える必要がないので、寸法精度の要求が緩和されることも相俟って、重量やコストを可及的に削減できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る自動二輪車1(鞍乗型車両)について、図面を参照して説明する。
図1は、灯火類やカウルなどを取り除いて自動二輪車1の概略的な構成を表す左側面図であり、
図2は同様の平面図である。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、自動二輪車に騎乗したライダー(乗員)の見る方向を基準とする。
【0024】
自動二輪車1は、従動輪である前輪2と、駆動輪である後輪3とを備えている。前輪2は、略上下方向に延びる左右一対のフロントフォーク4の下端部に回転自在に支持されており、フロントフォーク4の上部は上下一対のフォークブラケット5を介してステアリング軸(図示せず)に支持されている。このステアリング軸は、自動二輪車1の車体フレームの一部をなすヘッドパイプ6に内挿されて回転自在に支持されている。
【0025】
また、左右のフロントフォーク4の上端部にはそれぞれハンドル7が取り付けられており、これらのハンドル7を掴んでライダーはフロントフォーク4および前輪2をステアリング軸の周りに操舵することができる。図示は省略するが、右側のハンドル7には、ユーザの右手によって把持されるスロットルグリップが一体的に設けられ、その前方には前輪2側のブレーキレバーが配設されている一方、左側のハンドル7の前方にはクラッチレバーが配設されている。
【0026】
図1、2に表れているように自動二輪車1の車体フレームは、ヘッドパイプ6からやや下向きに傾斜しつつ後方へ延びるメインフレーム8と、その後端にクロスメンバ9を介して連結されたリヤフレーム10とを備えている。リヤフレーム10は、
図2に表れているように車体幅のほぼ中央に位置するバックボーンフレーム11と、その後方に連なるリヤパイプフレーム12とからなる。仮想線で表すように、バックボーンフレーム11の上部にはライダーの騎乗するフロントシート13が配設され、その後方にはタンデムライダーのためのリヤシート14が配設されている。
【0027】
バックボーンフレーム11は、クロスメンバ9から下方に延びるピボットフレーム部と後方へ延びるリヤステー部とを一体化したものであり、ピボットフレーム部の左右両側にはそれぞれ板状のサブフレーム15が配設されて、車幅方向に延びるステー(図示せず)により連結されている。ピボットフレーム部とサブフレーム15との間にはピボット軸16aが架け渡されて、スイングアーム16の前端部を揺動可能に支持している。スイングアーム16の後端部には後輪3が回転自在に支持されている。
【0028】
一方、メインフレーム8は、ヘッドパイプ6から後方に向かって二股に分かれた左右のフレーム部材80からなり、その下方には、複数の気筒を有するエンジン20が搭載されている。エンジン20のシリンダブロック21およびシリンダヘッド22はやや前傾していて、シリンダブロック21の前部が、メインフレーム8から下方に垂下するダウンフレーム81に支持されている。また、シリンダブロック21の下部にはクランクケース23が取り付けられ、その後部に一体に設けられたトランスミッションケースがバックボーンフレーム11に支持されている。
【0029】
また、シリンダヘッド21の前部にはシリンダ毎に排気ポートが開口し、これに接続された排気マニホルド25は、エンジン20の下方において集合しサイレンサ26へと接続されている。排気マニホルド25の上方には、エンジン20の冷却液と走行風とを熱交換させるラジエータ27が配設されて、ダウンフレーム81に支持されている。一方、シリンダヘッド20の後部には吸気ポートが開口し、ここにはスロットルボディ28が接続されている。スロットルボディ28の上部は、吸気を濾過するためのエレメントを収容したエアクリーナ29の下部に接続されている。
【0030】
エアクリーナ29は、メインフレーム8の左右のフレーム部材80に囲まれて、その上面が左右のフレーム部材80よりも上方に膨出しており、その前部の左右両隅にそれぞれ設けられた吸気ダクト29aが、フレーム部材80の上下の丸パイプの間を通って前方に延びている。この吸気ダクト29aによって取り入れた走行風をスムーズにエアクリーナ29の内部に供給し、走行風圧を利用して空気の吸い込み効率を高めることができる。
【0031】
そして、エアクリーナ29の上方から後方にかけて燃料タンク30が配設され(破線で表す)、タンクカバー31によって覆われている。本実施形態では燃料タンク30の前方に電装品の配設スペースを設けるため、燃料タンク30をタンクカバー31内で後寄りに配置しており、その後端部はメインフレーム8の後端よりも後方にまで延びて、バックボーンフレーム11の前部とオーバーラップしている。
【0032】
そうして燃料タンク30の後端部が位置する車体中央付近のフレーム構造を拡大して、
図3に表す。この
図3にのみ符号を付すが、メインフレーム8の左右のフレーム部材80は、それぞれ、上下に並んだ2本の丸パイプ80a,80bによって構成され、その後端部同士を連結するジョイント部材82によってクロスメンバ9の上部に連結されている。クロスメンバ9は、一例としてプレス成形した2枚の鋼板9a、9bを前後方向に重ね合わせて概略矩形の厚板状とし、その下縁に沿うように厚肉の角パイプ9cを溶接して閉断面構造としたものである。
【0033】
この構造によりクロスメンバ9は、省スペースでありながら高い剛性を有しており、その上方から後方にかけて燃料タンク30の後端部を配置するスペースが確保されている。すなわち、
図3に表われているようにクロスメンバ9は、メインフレーム8の後端部であるジョイント部材82の下側の部位から、やや後傾しつつ下方に向かって延びていて、その後面から下部にかけてバックボーンフレーム11の前部が溶接されている。そして、クロスメンバ9の上方から後方にかけて燃料タンク30の後端部が位置づけられている。
【0034】
前記のようにバックボーンフレーム11は、クロスメンバ9から下方に延びるピボットフレーム部と後方へ延びるリヤステー部とを一体化したものであり、一例としてプレス成形した2枚の鋼板11a,11bを左右方向に重ね合わせて、前記のクロスメンバ9と同様に閉断面構造としている。この構造によりバックボーンフレーム11も、省スペースでありながら高い剛性を有していて、その左右両側に車両装備品の配設スペースが確保されている。
【0035】
そして、バックボーンフレーム11の前端部、即ちクロスメンバ9に溶接されている部位から後方のリヤパイプフレーム12まで延びるリヤステー部の上部には、左右に跨るように台座部17が配設されており、その前部にはタンクブラケット18を介して燃料タンク30の後端部が支持されている(
図5、7、8を参照)。台座部17の上面における前縁から1/3くらいまでは前方に向かって高くなる傾斜部とされ、この傾斜部にタンクブラケット18の後部が上方から重ね合わされて締結される。
【0036】
一方、台座部17の上面における後寄り2/3くらいの範囲は概ね水平になっていて、ここには、以下に詳細に述べるようにシートブラケット40が締結されて(
図5、7、8を参照)、フロントシート13の前寄りの部分を支持するようになる。つまり、台座部17は、フロントシート13を支持するシートブラケット40が締結される車体フレーム側の部材であり、本実施形態では前記のようにタンクブラケット18を固定する台座と共用することによって、低コスト化が図られている。
【0037】
−シートの支持構造−
図3には仮想線で表すようにフロントシート13は、燃料タンク30の後方に近接して配置されている。以下、
図4〜7を参照して、本実施形態におけるフロントシート13の支持構造について詳細に説明する。
図4は、フロントシート13を単体で表したものであり、(a)は斜め上から、また(b)は斜め下から視た斜視図である。
図5は、左側から透視してフロントシート13の支持構造を表した断面図であり、
図6は表皮やクッション材を省略して、また、
図7はさらに底板も省略して、シートブラケット40によるフロントシート13の支持構造を表した斜視図である。
【0038】
一例として
図4(a)に表われているようにフロントシート13は、前方ほど狭く且つ中央寄りの盛り上がった中凸形状とされている。そして、後方に向かうに従って徐々にシート幅が広がるとともに盛り上がりが小さくなってゆき、後端では概ね平坦に近くなる。シート前方の幅が狭く盛り上がりが大きいいので、ライダーは、コーナリングの際に体重を左右に移動させやすい。また、シート後方の幅が広いのでライダーの臀部が安定し、巡航時の乗り心地がよい。
【0039】
図4(b)の他、
図5および
図6にも表われているように、フロントシート13は、樹脂の成型品である底板130と、その上面に貼設されたウレタンフォームなどのクッション材131(
図5にのみ符号を付して表す)と、このクッション材131を上面から左右両側面および前後両面にかけて覆うシート表皮132とからなる。本実施形態では、底板130の左右両側縁からそれぞれ下方に垂下するように樹脂製のサイドカウル133(仮想線で表す)も配設されている。
【0040】
底板130は、全体としてはシート13と同じく前方の狭い台形状であり、その前縁から1/4くらいまでが前方に向かって高くなるように傾斜する前壁部130aとされ、この前壁部130aの下部の左右両側縁からそれぞれ後方に延びる側板部130bと、これら左右の両側板部130bの後縁を繋ぐ後壁部130cとが、いずれも底部130dと一体に形成された異形のトレイ状をなしている。
【0041】
また、前記底板130の前壁部130aの下縁と底部130dの前縁との間には、
図6に表われているように左右方向に延びる隆起部130eが形成されて、左右の側板部130bの間を繋いでいる。この隆起部130eを底板130の下方から見ると、
図4(b)のように左右方向に長い窪み部130fであり、ここには、
図5に表われているようにシートブラケット40のパイプ部材41(前側支持部)が収容されて、フロントシート13の前寄りの部分を支持するようになる。
【0042】
図5に表われているように、パイプ部材41の上部が当接する窪み部130fの奥の断面形状は概略円弧状であり、円形断面のパイプ部材41と好適に当接する。また、そうして窪み部130fに収容されたパイプ部材41の左右方向のほぼ中央を把持するように、窪み部130fの左右方向の中央付近でその後縁から前方斜め下向きに突出する舌片134(係合突部)が形成されている。この舌片134は、窪み部130fの後面に沿って下方に向かいながら湾曲し、前方に向かうように折り曲げられていて、
図5に表われているように円形断面のパイプ部材41を把持した状態で、その外周に沿うように湾曲するJ字状とされている。
【0043】
なお、
図4(b)や
図5、6にも表われているように、舌片134の上方において底板130には窪み部130fの底面から隆起部130eの上面まで貫通する開口130gが形成されている。これは、底板130を射出成形などによって成形する際の型抜きのためのものであり、舌片134を型抜きの方向(上方)に投射した形状である。また、
図4(b)にのみ仮想線で表すが、底板130には、後縁のほぼ中央部から後方に延びるステー135が設けられ、リヤシート14の下方にてリヤパイプフレーム12に固定されるようになっている。
【0044】
一方、フロントシート13の後部を支持するために、底板130の後寄りの部位には、左右方向に互いに間隔を空けて2つの被支持部が設けられている。本実施形態では、
図4(b)に表われているように底板130の底部130dにおける後縁の近傍で且つ左右の両側板部130bの近傍、言い換えると、それら左右両側板部130bと後壁部130cとに囲まれた隅部にそれぞれ、被支持部として別体のゴム足136(弾性部材)が配設されている。
【0045】
すなわち、前記底板130の左右の隅部にはそれぞれ、
図6に表われているように上方に膨出する円座部130hが形成されており、この円座部130hの裏側に形成された円形断面の凹部130i(被嵌部)に、一例として円柱状のゴム足136の上部が着脱可能に嵌め込まれている。ゴム足136の上部には、円座部130hの開口を貫通する小径の突部136aが形成されている一方、ゴム足136の下部は底板130の下面よりも下方に突出していて、その下端面が、リヤパイプフレーム12に溶接された受部材120(車体フレーム側の支持部材であり、
図7を参照)に当接し支持される。
【0046】
なお、
図4(b)および
図6に表われているように、前記左右のゴム足136の中間、正確にはそれらの中央の部位とその前方の舌片134との間において、底板130には下方に膨出する矩形状の浅突部130jが形成されている。この浅突部130jは、特に大柄なライダーが乗車し、その体重を受けてシート13のクッション材131が大きく沈み、底板130が予め設定した大きさ以上、下方に撓んだときにバックボーンフレーム11のリヤフレーム部の上面に当接する追加の被支持部である。
【0047】
そうしてフロントシート13の後寄りの部位が、左右に離れた2つのゴム足136を車体フレーム側に当接させることで安定的に支持される一方、フロントシート13の前寄りの部位は、前記したように底板130が窪み部130fにおいてシートブラケット40のパイプ部材41に載置される。このシートブラケット40は、
図7および
図8に表われているように、バックボーンフレーム11上の台座部17に締結されて、その上方を左右方向に延びるようにパイプ部材41を支持する支持部材42を備えている。
【0048】
一例としてパイプ部材41は例えば鋼管などを切断したもので、その長さは、シート後方の左右のゴム足136の間隔よりも狭い。また、支持部材42は、一例として鉄製の薄板材を曲げ加工してなり、
図8にのみ符号を付けて表すが、前記台座部17の上面に重ね合わされる基板部43と、その左右両側縁から折れ曲がってそれぞれ上方に延びる一対の側板部44,45とが一体に成形されている。
【0049】
前記の基板部43は概略矩形状であって、その右前寄りと左後寄りとの2箇所に対角状に丸穴43aが開口し、それぞれの丸穴43aに上方から挿入される2本のボルト19によって、台座部17の上面に締結されている。この2本のボルト19を緩めれば、シートブラケット40は容易に取り外すことができる。また、ボルト19の軸部には2つのゴムリング19aが外挿され、台座部17の上面と基板部43の下面との間、および、この基板部43の上面とワッシャ19bの下面との間に、それぞれ介在している。
【0050】
また、前記基板部43の右側縁のほぼ全体に亘って略垂直に上方に延びる概略矩形状の右側板部44が設けられている。この右側板部44の上縁の後寄りの部分にはパイプ部材41の外周に対応する円弧状の切り欠き部が形成されて、該パイプ部材41の外周に下方から溶接されている。また、右側板部44の上縁の前寄りの部分は内向き(左向き)に折り曲げられて三角形状の折曲片44aとされ、その後縁がパイプ部材41の外周に前方から溶接されている。
【0051】
一方、支持部材42の左側板部45は、基板部43の左側縁から上方斜め左側(外側)に向かって延びている。この左側板部45には、右側板部44と同様に上縁の後寄りの部分に円弧状の切り欠き部が形成され、パイプ部材41の外周に溶接されているとともに、左側板部45の上縁の前寄りには内向き(右向き)に折り曲げられた三角形状の折曲片45aが形成されて、パイプ部材41の外周に溶接されている。
【0052】
さらに、その左側板部45の後縁からは折れ曲がって下方に延びる垂下片45bが形成され、この垂下片45bの下端縁から前方に折り曲げられて、
図7に表われているようにバッテリ34(車両装備品)の上面に当接する当接片45cが形成されている。これらの垂下片45bおよび当接片45cによって、バッテリ34の押さえ部が構成されている。
【0053】
そのようにシートブラケット40を安価な鋼管や薄板材などによって構成したので、その材料および加工コストは抑制される。しかも、本実施形態ではシートブラケット40の支持部材42にバッテリ34の押さえ部も一体に形成しているので、個別に設けるのに比べて低コスト化が図られる。なお、
図7、8に表われているように当接片45cには丸穴が開口し、バッテリ34の上面に設けられた樹脂製のプラグ34aが嵌め込まれるようになっている。
【0054】
以上、説明したように本実施形態では、ライダーの体重を受けるフロントシート13の後寄りの部位は、左右に間隔を空けて設けた2つのゴム足136を直接、車体フレーム側の受部材120に当接させるようにしており、ライダーの臀部の左右それぞれの荷重を受ける部位を安定的に支持することができる。ゴム足136のばね定数や損失係数を適切に設定すれば、比較的高い周波数の振動を吸収して、乗り心地を改善することができる。
【0055】
一方、フロントシート13の前寄りの部位は、底板130の窪み部130fをシートブラケット40のパイプ部材41に載せて、このパイプ部材41を底板130の舌片134により把持する、という極めて簡単な構造で上下および前後に位置決めして支持することができる。底板130の窪み部130fと舌片134との間にパイプ部材41を嵌め込むようになるので支持状態が安定化し、例えば急制動時においてもフロントシート13の位置ずれを防止できる。
【0056】
そうしてシート前寄りで底板130の舌片134がパイプ部材41を把持する部位と、シート後寄りで左右2つのゴム足136が車体フレーム側の受部材120に当接する部位と、を合わせてフロントシート13は実質的に3点支持とみなすことができ、4点以上で支持する構造のように各支持点の高さを揃える必要がない。また、舌片134がパイプ部材41を把持する位置は多少、左右にずれても問題なく、フロントシート13の前縁部分がタンクカバー31の後部に当接する結果として決まる。よって、フロントシート13の底板130やシートブラケット40、さらには車体フレームなどの寸法精度はあまり高くしなくても済む。
【0057】
さらに、シートブラケット40は、ボルト19を緩めれば容易に取り外すことができるので、予めパイプ部材41の支持高さが異なる複数のシートブラケット40を準備しておいて、これを入れ替えることによってフロントシート13の高さを調整することができる。なお、ゴム足136についても高さの異なるものを複数、準備しておき、それを交換することによってフロントシート13の後寄りの部位の高さも調整可能である。
【0058】
−シート高さの調整−
次にシート高さを調整する手順について具体的に説明すると、まず、リヤシート14を外して、その下方に隠れているフロントシート13のステー135のリヤパイプフレーム12との固定を外した後に、フロントシート13の後部を後方に引きながら上方に持ち上げて、底板130の舌片134によるシートブラケット40のパイプ部材41の把持状態を解除する。こうして取り外したフロントシート13の後部からゴム足136を取り外して、より高さの高い別のゴム足137(
図9を参照)に取り替える。
【0059】
それからシートブラケット40の支持部材42の基板部43を締結する2本のボルト19を緩めて、車体フレーム側の台座部17からシートブラケット40を取り外し、予め準備しておいた別のシートブラケット46(
図9参照)に交換する。このシートブラケット46は、支持部材42の左右両側板部44,45が上下方向に長く、パイプ部材41をより高い位置に支持するとともに、その高さの差分に応じて所定量、パイプ部材41を前寄りに位置づけるように構成されている。
【0060】
そのシートブラケット46の支持部材42の基板部43を車体フレーム側の台座部17の上面に重ねて、2本のボルト19により締結した後に、パイプ部材41に底板130の舌片134を合わせてフロントシート13を装着する。こうすると、
図9に表われているようにフロントシート13の高さが、パイプ部材41の位置が高くなった分、高くなるとともに、そのパイプ部材41の位置が前進した分、前寄りになる。
【0061】
この結果としてフロントシート13の前縁部分が、ちょうどタンクカバー31の後端部の傾斜に沿って上下に移動するようになり、
図5のように低い位置においても
図9のように高い位置においても、タンクカバー31との間に隙間が空くことはない。また、フロントシート13の後端部は、
図5のように低い位置ではリヤシート14の前端部の下方に潜り込む一方、
図9のように高い位置ではリヤシート14の前端部に上方から重なるようになる。よって、燃料タンク30からフロントシート13、リヤシート14に亘って一体感が保たれ、見栄えが損なわれることはない。
【0062】
したがって、本実施形態に係る自動二輪車1のシート支持構造によると、ライダーの跨るフロントシート13の前寄りの部位を着脱可能なシートブラケット40によって支持する一方、後寄りの部位は2つのゴム足136を介して車体フレーム側に支持せしめる、という極めて簡単な構造であり、予め高さの異なる複数のシートブラケット40を準備しておけば、これを入れ替えるだけで容易にシート高さを調整することができる。
【0063】
しかも、フロントシート13の前寄りの支持部位が実質的に、シートブラケット40のパイプ部材41を把持する舌片134であり、後寄りを支持する2つのゴム足136と併せて3点支持とみなすことができるから、従来一般的な4点以上の支持構造に比べて寸法精度の要求が緩和される。よって、前記のように極めて簡単な構造で、部品点数も少ないことも相俟って、重量やコストを従来より一層、削減できる。
【0064】
−他の実施形態−
上述した実施形態の説明は例示に過ぎず、本発明、その適用物又はその用途を制限するものではない。本発明に係るシートの支持構造は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施形態の構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0065】
例えば前記の実施形態では、フロントシート13の前寄りの部分を支持するシートブラケット40を、円形断面のパイプ部材41と薄板材からなる支持部材42とによって構成したが、この構造には何ら限定されない。例えばパイプ部材41を角パイプによって構成してもよいし、パイプ以外の棒状の部材によって構成してもよい。
【0066】
同様に支持部材42も薄板材の曲げ加工品でなくてもよく、その形状も前記の実施形態には限定されない。例えば支持部材42は左右両側に側板部43,44を有しているが、これは例えば右側壁部43だけであっても、左側壁部44だけであってもよい。前記の実施形態では支持部材42にバッテリ34の押さえ部として垂下片45bおよび当接片45cを形成しているが、これらもなくてもよい。シートブラケット40を取付ける台座部17を、燃料タンク30のタンクブラケット18の取付座と共用する必要もない。
【0067】
また、前記の実施形態ではパイプ部材41のほぼ中央を、フロントシート13の底板130に設けた舌片134によって把持する構造としているが、舌片134は中央から左右いずれかにずれた部位に設けてもよい。例えば、底板130の下面を左右方向に左寄り、右寄り、およびそれらの中間の3つに等分した場合の中間の部分に、舌片134を設けてもよい。舌片134は前方に折れ曲がる形状に限らず、後方に折れ曲がっていてもよい。
【0068】
また、前記の実施形態ではフロントシート13の後寄りの部分に左右2つのゴム足136を間隔を空けて配設しているが、2つでなく3つとしてもよいし、左右方向に所定以上の長さがあれば1つであってもよい。また、着脱可能なゴム足136ではなく、弾性部材を貼着する構成としてもよい。シート高さの調整の際にゴム足136の高さは変更しなくても構わない。さらに、前記の実施形態では、左右2つのゴム足136の中間に、追加の被支持部として浅突部130jを設けているが、これを省略してもよい。
【0069】
さらにまた、上述した実施形態の自動二輪車1ではメインフレーム8の左右のフレーム部材80同士を閉断面構造のクロスメンバ9で連結し、その後方に閉断面構造のバックボーンフレーム11を連結しているが、これは好ましいフレーム構造の一例にすぎず、それ以外のフレーム構造であってもよい。シートブラケット40の台座部17をバックボーンフレーム11のリヤフレーム部に配設する必要はない。
【0070】
また、本発明に係る鞍乗型の車両は自動二輪車1に限らず、例えばATV(All Terrain Vehicle:不整地走行車両)、小型運搬車等であってもよいし、その駆動源はエンジン20に限定されず、例えば電動モータであってもよい。