(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
医療分野では、容器に入れられた血液、尿、試薬等の液体試料を他の容器へ分注する装置が広く用いられている。このような分注装置は、液体試料を吸引および吐出するノズルを有する。ノズルは、分注元の容器に入れられた液体(親検体)を吸引した後、分注先の容器の位置へ移動しその容器に液体(子検体)を注入する。
【0003】
分注を行う際には、先の工程で分注された液体が混入すること、つまりコンターミネーションは好ましくない。そのため、ノズルとして、ノズル本体とそれに装着されるノズルチップとからなるものが用いられる。ノズルチップは、一般に、分注が実行されるごとに未使用のものに交換される。そこで、分注装置には、未使用のノズルチップを供給するノズルチップ搬送装置を備えているものがある。
【0004】
ノズルチップ搬送装置は、
図8に示されるようなチップ搬送路100によってノズルチップ10を搬送する。ノズルチップ10は、胴体部とチップヘッド10aとを有する。チップヘッド10aの径は胴体部の径よりも大きい。チップ搬送路100は、板面を対向させて配置された一対の搬送板102からなり、一対の搬送板102の間にあるノズルチップ10のチップヘッド10aの下面を各搬送板102の上辺で支持する。チップ搬送路100には機械振動が与えられ、ノズルチップ10は機械振動によってチップ搬送路100に沿って搬送される。なお、下記の特許文献1および2には、このようなチップ搬送路を用いた装置が記載されている。
【0005】
ノズルチップ搬送装置には、チップ搬送路100にノズルチップ10をセットする機構が設けられている。ところが、この機構の構成によっては、
図8に示されるように、チップ搬送路100によって直接支持されているノズルチップ10の開口から他のノズルチップ10の先端が嵌り込み、これら2つのノズルチップ10が嵌合することがある。下側のノズルチップ10に嵌合した上側のノズルチップ10は、下側のノズルチップ10の搬送の妨げになる。そこで、特許文献1に記載の装置は、上側に嵌合したノズルチップを保持する経路を有し、下側のノズルチップを自重により落下させて、下側のノズルチップを上側のノズルチップから分離する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本発明の実施形態に係るノズルチップ搬送装置の構成が模式的に示されている。ノズルチップ搬送装置は、例えば、未使用のノズルチップを分注装置に供給する装置として用いられる。
【0020】
図1に示される例では、ノズルチップ受付部12は容器状に形成され、ユーザによって補充されたノズルチップ10を収容する。コンベア14は、ノズルチップ受付部12に収容されたノズルチップ10を上方向に搬送し、コンベア14の最上部からノズルチップ10をチップガイド16に落下させる。チップガイド16は、下方ほど間隔が狭くなるよう板面が斜めに対向する1対のガイド板を有し、ノズルチップ10を供給チップ搬送路18にセットする。供給チップ搬送路18には第1振動源30が設けられている。供給チップ搬送路18上のノズルチップ10は、第1振動源30から供給チップ搬送路18に与えられた機械振動によって、矢印32の方向に搬送されチップ分離装置20に至る。
【0021】
チップ分離装置20は、供給チップ搬送路18に直接支持され搬送された搬送対象ノズルチップ10Aの上に、別のノズルチップ10Bが嵌合しているときは、機械的駆動力によって搬送対象ノズルチップ10Aを上側のノズルチップ10Bから分離する。そして、搬送対象ノズルチップ10Aを対象チップ搬送路22に送出し、上側のノズルチップ10Bを嵌合チップ搬送路28に送出する。他方、搬送対象ノズルチップ10Aの上に嵌合したノズルチップ10Bがないときは、チップ分離装置20は、搬送対象ノズルチップ10Aを対象チップ搬送路22に送出する。なお、チップ分離装置20の詳細な構成および動作については後述する。
【0022】
対象チップ搬送路22には第2振動源34が設けられている。対象チップ搬送路22上のノズルチップ10は、第2振動源34から対象チップ搬送路22に与えられた機械振動によって、矢印36の方向に搬送されチップ配列機構24に至る。
【0023】
嵌合チップ搬送路28には第3振動源38が設けられている。嵌合チップ搬送路28上のノズルチップ10は、第3振動源38から嵌合チップ搬送路28に与えられた機械振動によって、矢印40の方向に搬送されチップ受付部12に戻る。チップ受付部12に戻ったノズルチップ10は、再びコンベア14によって搬送され、チップ配列機構24に向けて搬送される。
【0024】
チップラック26には、ノズルチップ10が差し込まれる穴が配列されている。チップ配列機構24は、搬送されたノズルチップ10をチップラック26の穴に差し込む。チップラック26に配列されたノズルチップ10は、分注を行う過程においてチップラック26から取り出されノズル本体に装着される。
【0025】
チップ配列機構24には、対象チップ搬送路22によって順次搬送されたノズルチップ10を1つずつチップラック26に差し込むマニピュレータを採用してもよい。マニピュレータには、他のノズルチップ10が差し込まれていない穴の位置まで移動してノズルチップ10を差し込むものや、ノズルチップ10を差し込む位置が固定されたものがある。ノズルチップ10を差し込む位置が固定されたものを用いる場合、チップラック26を水平方向に移動させるチップラック駆動機構が採用される。チップラック駆動機構は、マニピュレータによって差し込まれようとしているノズルチップ10の位置と、そのノズルチップ10が差し込まれる穴の位置とが一致するようチップラック26を移動させる。
【0026】
このようなノズルチップ搬送装置の構成によれば、供給チップ搬送路18において、搬送対象ノズルチップ10Aの上にノズルチップ10Bが嵌合しているときは、嵌合した上側のノズルチップ10Bから搬送対象ノズルチップ10Aが機械的駆動力によって分離された上で、搬送対象ノズルチップ10Aがチップ配列機構24に搬送される。さらに、上側のノズルチップ10Bは、チップ受付部12に搬送され、再びチップ配列機構24に向けて搬送される。
【0027】
なお、ここでは、嵌合チップ搬送路28が、ノズルチップ10をチップ受付部12に搬送する構成としている。このような構成の他、嵌合チップ搬送路28が、ノズルチップ10を別途設けられた回収箱に搬送する構成としてもよい。
【0028】
チップ分離装置20の詳細な構成について説明する。
図2(a)および(b)にはチップ分離装置20の斜視図および側面図がそれぞれ示されている。チップ分離装置20は、ノズルチップセンサ42、チップ分離部材48、チップガイド50、コントローラ54、および駆動機構56を備える。
【0029】
供給チップ搬送路18および嵌合チップ搬送路28は、板面を対向させて配置された一対の搬送板からなる。嵌合チップ搬送路28は、供給チップ搬送路18の終端の上方、あるいは、供給チップ搬送路18の終端よりも上流側の上方に始端を有し、供給チップ搬送路18の終端の上方を通ってチップ受付部12に至る。
【0030】
嵌合チップ搬送路28には、ノズルチップ10Bを検出するノズルチップセンサ42が設けられている。ノズルチップセンサ42は、嵌合チップ搬送路28によって搬送されているノズルチップ10Bが所定の検出位置に到来すると、駆動機構56を制御するコントローラ54に検出信号を出力する。ここで、検出位置は、後述するように、ノズルチップ10Bがチップ分離部材48の突起部におけるスリットに入った位置である。
【0031】
ノズルチップセンサ42としては、例えば、光を放射する光放射部44、および光を受光する受光部46を備えるものが用いられる。この場合、光放射部44は、嵌合チップ搬送路28をなす一方の搬送板に配置され、受光部46は、嵌合チップ搬送路28をなす他方の搬送板に配置される。ノズルチップ10Bが光放射部44と受光部46との間を通過すると、光放射部44から放射され、受光部46で受光されていた光が遮られる。受光部46は、これに応じて検出信号をコントローラ54に出力する。
【0032】
チップ分離部材48は、供給チップ搬送路18からノズルチップ10Aが送出される領域に配置されている。チップ分離部材48は、概して上下方向に長い形状を有し、駆動機構56によって上下方向に駆動される。
図2(a)および(b)には、チップ分離部材48が最上部に位置している状態が示されている。
【0033】
図3(a)、(b)、(c)および(d)には、それぞれ、チップ分離部材48の斜視図、上面図、正面図、および側面図が示されている。ただし、ノズルチップ10の搬送方向を奥行き方向とした図を正面図としている。また、正面図における右方向をx軸方向、奥行き方向をy軸方向、上方向をz軸方向として座標軸を定義する。
【0034】
チップ分離部材48は、金属、樹脂等の剛性の高い材料によって形成されている。チップ分離部材48は、z軸方向に伸びる柱状本体58、柱状本体58の上端部からy軸負方向(供給チップ搬送路18側)に向けて水平に突出する突出部60、および、y軸正負方向に開口し、z軸正方向に開放されたスリット64を有する。
【0035】
突出部60の奥行きdは、ノズルチップ10のチップヘッドの径と同じ程度か、それより若干短くすることが好ましい。スリット64は、嵌合チップ搬送路28によって搬送されるノズルチップ10Bを通過させるものであり、ノズルチップ10の胴体部の径よりもx軸方向の幅が広く、ノズルチップ10のチップヘッドの径よりもx軸方向の幅が狭い。スリット64の最下部には、供給チップ搬送路18側の縁の角を平坦化した面取り面62が形成されている。
【0036】
柱状本体58の供給チップ搬送路18側に対向する案内面66、突出部60の先端面68および下面70は、後述のように、搬送対象ノズルチップ10Aを案内する面として機能するため、平坦に加工されている。本実施形態においては、チップ分離部材48の背面および上面は、任意の形状とすることができる。
【0037】
チップ分離部材48の形状および大きさは、使用されるノズルチップの形状および大きさに適合したものとする。そこで、形状および大きさが異なる複数種のチップ分離部材48を予め準備しておき、使用されるノズルチップの形状および大きさに応じて、チップ分離部材48を交換してもよい。また、突出部60を大きさの異なるものに交換可能な構造としてもよいし、スリット64の幅を調整する機構を採用してもよい。
【0038】
図2に戻り、チップ分離部材48の下方には、チップガイド50および対象チップ搬送路22が設けられている。対象チップ搬送路22は、板面を対向させて配置された一対の搬送板からなり、供給チップ搬送路18の終端の下方、あるいは、供給チップ搬送路18の終端よりも上流側の下方に始端を有する。対象チップ搬送路22は、始端からノズルチップ10の搬送先であるチップ配列機構24に至る。
【0039】
チップガイド50は、下方向に幅が狭まるよう板面が対向する1対のガイド板52を有する。一方のガイド板52の下辺は、対象チップ搬送路22をなす一方の搬送板の上辺に接合され、他方のガイド板52の下辺は、対象チップ搬送路22をなす他方の搬送板の上辺に接合されている。
【0040】
次に、チップ分離装置20の動作について説明する。ここでは、
図2(a)および(b)に示されるように、上側にノズルチップ10Bが嵌合した状態で搬送対象ノズルチップ10Aが供給チップ搬送路18から送出されるものとする。
【0041】
供給チップ搬送路18から送出された搬送対象ノズルチップ10Aは、チップ分離部材48の突出部60の下に至る。この際、搬送対象ノズルチップ10Aがチップ分離部材48の案内面66に接触した場合には、搬送対象ノズルチップ10Aは、案内面66によって先端が下方を向くよう向きが調整される。供給チップ搬送路18から搬送対象ノズルチップ10Aが送出されると共に、上側のノズルチップ10Bは嵌合チップ搬送路28によって搬送され、チップ分離部材48のスリット64を通過する。
【0042】
上側のノズルチップ10Bが、チップ分離部材48の突出部60におけるスリット64に入ると、ノズルチップセンサ42は上側のノズルチップ10Bを検出し、検出信号をコントローラ54に出力する。コントローラ54は、検出信号に応じて駆動機構56を制御し、チップ分離部材48を下方向に駆動する。
【0043】
図4には、チップ分離部材48が下方向に駆動されている状態が示されている。チップ分離部材48が下方向に駆動されると、突出部60の下面70は搬送対象ノズルチップ10Aのチップヘッドの上面に接触し、搬送対象ノズルチップ10Aのチップヘッドの上面を押下する。これによって、搬送対象ノズルチップ10Aは上側のノズルチップ10から分離し落下する。
【0044】
上述のように、チップ分離部材48のスリットの最下部には、供給チップ搬送路18側に面取り面が設けられている。これによって、搬送対象ノズルチップ10Aがスリットの最下部に接触した場合に、搬送対象ノズルチップ10Aの向きが乱されることが回避される。
【0045】
上側のノズルチップ10Bから分離し落下した搬送対象ノズルチップ10Aは、チップガイド50に案内されて対象チップ搬送路22にセットされ、対象チップ搬送路22によって搬送される。他方、上側のノズルチップ10Bは、搬送対象ノズルチップ10Aが分離された後も引き続き嵌合チップ搬送路28によって搬送される。
【0046】
図5には、チップ分離部材48が最下部に位置し、搬送対象ノズルチップ10Aが対象チップ搬送路22によって搬送され、上側のノズルチップ10Bが嵌合チップ搬送路28によって搬送されている状態が示されている。この状態の後、チップ分離部材48は上方向に駆動され、最上部に戻る。
【0047】
図5に示されているように、チップ分離部材48が最下部に位置しているときには、突出部60の先端面68は供給チップ搬送路18の終端近傍に位置し、ノズルチップ10の行く手を塞ぐ。供給チップ搬送路18の終端に向かう次のノズルチップ10は、そのチップヘッドの側面が突出部60の先端面68に接触し、供給チップ搬送路18の終端の手前で滞留する。これによって、チップ分離部材48が上方向に駆動されたときに、次のノズルチップ10が跳ね上げられることが回避される。
【0048】
このように、チップ分離部材48の突出部60は、搬送対象ノズルチップ10Aのチップヘッドの上面を押下する機能、および、供給チップ搬送路18の終端に向かう次のノズルチップ10を供給チップ搬送路18上に一時的に滞留させる機能を有するものである。これらの機能を有する構造であれば、突出部60は、供給チップ搬送路18の終端よりも上流側に及んでもよいし、供給チップ搬送路18の終端まで及ばなくてもよい。
【0049】
次に、上側にノズルチップ10が嵌合していない状態で、搬送対象ノズルチップ10Aが搬送された場合について説明する。この場合、嵌合チップ搬送路28においてノズルチップ10Bが検出されないため、
図6に示されるように、チップ分離部材48は最上部の位置で停止している。搬送対象ノズルチップ10Aは、供給チップ搬送路18から送出されると、自重によりチップ分離部材48の突出部60より下方に落下する。この際、搬送対象ノズルチップ10Aがチップ分離部材48の案内面66に接触した場合には、搬送対象チップは、案内面66によって先端が下方を向くよう向きが調整された上で下方に案内される。また、チップ分離部材48のスリットの最下部には、供給チップ搬送路18側に面取り面が設けられている。これによって、搬送対象ノズルチップ10Aがスリットの最下部に接触した場合に、搬送対象ノズルチップ10Aの向きが乱されることが回避される。落下した搬送対象ノズルチップ10Aは、チップガイド50に案内されて対象チップ搬送路22にセットされ、対象チップ搬送路22によって搬送される。
【0050】
本実施形態に係るチップ分離装置20によれば、搬送対象ノズルチップ10Aの上に別のノズルチップ10Bが嵌合しているときは、機械的駆動力によって搬送対象ノズルチップ10Aが上側のノズルチップ10Bから分離される。これによって、搬送対象ノズルチップ10Aが上側のノズルチップ10Bから確実に分離される。
【0051】
また、搬送対象ノズルチップ10Aの上に嵌合したノズルチップ10Bは、対象チップ搬送路22とは別の嵌合チップ搬送路28に搬送され、チップ受付部12に戻される。搬送対象ノズルチップ10Aの上に嵌合したノズルチップ10Bの上に、さらに別のノズルチップが嵌合した場合であっても、搬送対象ノズルチップ10Aの上に嵌合していた2つのノズルチップは、嵌合した状態で嵌合チップ搬送路28によって搬送され、チップ受付部12に戻される。
【0052】
本実施形態におけるチップ分離部材48は、供給チップ搬送路18から送出された搬送対象ノズルチップ10Aの向きを案内面66によって調整し下方に案内する機能、突出部60の下面70によって搬送対象ノズルチップ10Aのチップヘッドの上面を押下する機能、さらには、チップ分離部材48が最下部に位置しているときに、供給チップ搬送路18の終端に向かう次のノズルチップ10を供給チップ搬送路18上に滞留させる機能を有する。このように、チップ分離部材48は、単一の部材であるものの、ノズルチップ10を案内する複数の機能を併せ持つ。
【0053】
チップ分離部材48の駆動機構の構成例について説明する。
図7には、チップ分離部材48の駆動機構が示されている。駆動機構は、レール72、レールガイド74、モータ76、ピニオンギア78、およびラックギア80を備える。
【0054】
レール72は、チップ分離部材48と長手方向を揃えてチップ分離部材48の正面に取りつけられている。レール72は、チップ分離部材48から突出する形状を有する。レール72は、チップ分離装置20の筐体に固定されたレールガイド74に嵌合しながら、上下にスライド可能となっている。これによって、チップ分離部材48はレール72と共に上下運動が可能となる。
【0055】
モータ76は、チップ分離装置20の筐体に固定されている。ピニオンギア78は、モータ76のシャフトに取り付けられている。ラックギア80は、チップ分離部材48と長手方向を揃えてチップ分離部材48の背面に取りつけられている。ラックギア80は、ピニオンギア78と噛み合い、モータ76およびピニオンギア78の回転に伴い上下に運動する。これによって、モータ76の回転駆動力によってチップ分離部材48が上下に運動する。
【0056】
チップ分離部材48の駆動機構には、チップ分離部材48を上方向または下方向に付勢する機構を設けてもよい。この場合、付勢方向とは反対方向にチップ分離部材48を駆動させるときのみ、モータ76を駆動すればよいため、制御処理が単純化される。また、電磁石によって直線方向の駆動力を発生する電磁駆動源、および、そのような電磁駆動源の駆動力の作用方向を上下方向に変換し、チップ分離部材48を駆動する機構を採用してもよい。