【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0023】
(フェノール樹脂の製造)
[実施例1]
撹拌装置、冷却器、温度計を備えたフラスコに、カルダノール180g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液12g、フルフラール100gを加え、昇温中に生成する水を除きながら、150℃で6時間反応した。メチルイソブチルケトン(以下「MIBK」)を300g加え希釈した後、pH5になるよう10質量%塩酸を加え、水洗にて脱塩した。その後、11kPaの減圧下で160℃まで昇温し、MIBKおよび水を留去し、230gのフェノール樹脂(A)を得た。
【0024】
[実施例2]
撹拌装置、冷却器、温度計を備えたフラスコに、カルダノール120g、フェノール385g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液29g、フルフラール144gを加え、昇温中に生成する水を除きながら、150℃で6時間反応した。pH5になるよう10質量%塩酸を加え、11kPaの減圧下で150℃まで昇温し、未反応のフェノール286gを留去した。MIBKを300g加え希釈した後、水洗にて脱塩した。その後、11kPaの減圧下で160℃まで昇温し、MIBKおよび水を留去し、291gのフェノール樹脂(B)を得た。
【0025】
[実施例3]
撹拌装置、冷却器、温度計を備えたフラスコに、カルダノール180g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液12g、フルフラール115g、92質量%パラホルムアルデヒド3.5gを加え、昇温中に生成する水を除きながら、150℃で6時間反応した。MIBKを300g加え希釈した後、pH5になるよう10質量%塩酸を加え、水洗にて脱塩した。その後、11kPaの減圧下で160℃まで昇温し、MIBKおよび水を留去し、251gのフェノール樹脂(C)を得た。
【0026】
[実施例4]
撹拌装置、冷却器、温度計を備えたフラスコに、カルダノール120g、フェノール456g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液29g、フルフラール144g、92質量%パラホルムアルデヒド8.2gを加え、昇温中に生成する水を除きながら、150℃で6時間反応した。pH5になるよう10質量%塩酸を加え、11kPaの減圧下で150℃まで昇温し、未反応のフェノール266gを留去した。MIBKを300g加え希釈した後、水洗にて脱塩した。その後、11kPaの減圧下で160℃まで昇温し、MIBKおよび水を留去し、281gのフェノール樹脂(D)を得た。
【0027】
[比較例1]
撹拌装置、冷却器、温度計を備えたフラスコに、カルダノール180g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液10g、フルフラール58gを加え、昇温中に生成する水を除きながら、150℃で6時間反応した。MIBKを300g加え希釈した後、pH5になるよう10質量%塩酸を加え、水洗にて脱塩した。その後、11kPaの減圧下で160℃まで昇温し、MIBKおよび水を留去し、188gのフェノール樹脂(E)を得た。
【0028】
[比較例2]
撹拌装置、冷却器、温度計を備えたフラスコに、CNSL56g、硫酸0.28gを加え、200℃で10時間反応させた。50℃に降温し、フェノール188g、50質量%ホルマリン78g、硫酸0.94gを添加し、100℃で5時間反応した。その後、11kPaの減圧下で180℃まで昇温し、未反応のフェノール70gを留去し、210gのフェノール樹脂(F)を得た。
【0029】
[比較例3]
撹拌装置、冷却器、温度計を備えたフラスコに、フェノール169g、群栄化学工業製異性化糖HF55(固形分75質量%)72g、硫酸1.1gを加え、昇温中に生成する水を除きながら、155℃で1時間反応した。その後、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム0.85gを加え中和した。200℃、11kPaで未反応のフェノール76gを留去し、119gのフェノール樹脂(G)を得た。
【0030】
[比較例4]
撹拌装置、冷却器、温度計を備えたフラスコに、フェノール300g、タピオカでんぷん100g、パラトルエンスルホン酸一水和物18.6gを加え、3時間還流反応を行った。その後、30質量%水酸化ナトリム水溶液7.1gを加え、5分間撹拌した。さらに、イオン交換水500g、50質量%ホルマリン74g、ヘキサメチレンテトラミン45gを加え、70℃にて6時間反応を行った。その後、11kPaの減圧下で90℃まで昇温し、未反応のフェノール139gおよび水を留去し、249gのフェノール樹脂(H)を得た。
【0031】
[比較例5]
原料として非植物由来原料であるフェノールとホルムアルデヒドとを使用した、植物由来率0質量%の固形レゾール型フェノール樹脂(PS−1180 群栄化学工業社製)をフェノール樹脂(I)とした。
【0032】
実施例1〜4及び比較例1〜5で得られたフェノール樹脂(A)〜(I)の軟化点、ゲルタイム、トルク発生時間、重量平均分子量を以下の方法で測定した。また、実施例1〜4及び比較例1〜4で得られたフェノール樹脂(A)〜(H)の植物由来率を以下の方法で算出した。これらの結果を表1に示す。
ただし、フェノール樹脂(E)についてはペースト状のためゲルタイム及びトルク発生時間は測定出来ず、フェノール樹脂(H)及びフェノール樹脂(I)については、自硬性樹脂のため硬化剤を使用した場合のゲルタイムは測定しなかった。
【0033】
[軟化点]
JIS K6910に従って測定した。
[ゲルタイム(硬化剤あり)]
得られたフェノール樹脂1.0gに0.1gのヘキサメチレンテトラミンを加え、180℃の熱板上で溶融し、撹拌しながらゲル化するまでの時間を測定した。
[ゲルタイム(硬化剤なし)]
得られたフェノール樹脂1.0gを180℃の熱板上で溶融し、撹拌しながらゲル化するまでの時間を測定した。
[トルク発生時間(硬化剤あり)]
得られたフェノール樹脂2.8g、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学社製)0.4g、木粉3.2g(カネキ燃料社製)を粉砕混合し、直径約3cmのタブレット状に成形した。得られた成形物についてキュラストメーター(CURELASTOMETER JSR社製)を使用し、160℃にて60kgf・cmのトルクが発生するまでの時間を測定した。
[トルク発生時間(硬化剤なし)]
得られたフェノール樹脂2.8g、木粉3.2g(カネキ燃料社製)を粉砕混合し、直径約3cmのタブレット状に成形した。得られた成形物についてキュラストメーター(CURELASTOMETERJSR社製)を使用し、160℃にて60kgf・cmのトルクが発生するまでの時間を測定した。このトルク発生時間が遅いほど、加熱混練しやすくなる。
[重量平均分子量]
重量平均分子量とは、得られたレゾール型バイオマスフェノール樹脂をテトラヒドロフランに溶解した溶液を測定試料とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を下記条件により測定し、ポリスチレン標準物質による検量線から算出した。
GPC測定条件
装置:HLC−8120(東ソー社製)
カラム:TSK−GEL3000HXL、2000HXL、2000HXL(東ソー社製)
検出器:UV−8020(東ソー社製)
[植物由来率]
実施例1、2、3、4比較例1、2、4については式(A)、比較例3については式(B)をもとに植物由来率を算出した。
式(A):植物由来率[%]=100−{[(フェノール仕込み質量)−(留去した未反応フェノール質量)+〔(92質量%パラホルムアルデヒド仕込み質量)×0.92×0.47〕+〔(50質量%パラホルムアルデヒド仕込み質量)×0.5×0.47〕+〔(ヘキサメチレンテトラミン仕込み質量)×1.3×0.47〕+(中和塩の質量(理論値))]/(樹脂収量質量)×100}
ここで、0.47とは、樹脂骨格中のホルムアルデヒド由来の量を算出する係数である。すなわち、樹脂骨格中のホルムアルデヒド由来の架橋基(−CH
2−)の分子量(14)をホルムアルデヒド(HCHO)の分子量(30)で除した数値である。
また1.3とは、ヘキサメチレンテトラミンより生成したホルムアルデヒドの量を算出する係数である。すなわち、ヘキサメチレンテトラミン1molより6molのホルムアルデヒドが生成するため、ホルムアルデヒドの分子量(30)に6を掛けて、ヘキサメチレンテトラミンの分子量(140)で除した数値である。
式(B):植物由来率[%]=[(CNSL仕込み質量)/(樹脂収量質量)]×100
【0034】
【表1】
【0035】
表1の結果より、実施例1〜4で得られたフェノール樹脂(A)〜(D)は、重量平均分子量が10,000以上となり、固形で扱いやすく、植物由来率も高い。また、トルク発生時間も長いため混練しやすく、硬化剤を使用しなくても硬化することが確認できた。
比較例1で得られたフェノール樹脂(E)は植物由来率が高いものの、重量平均分子量が3,800と低いためペースト状となり混練時の取り扱いが困難のため、ゴム組成物としては使用できない。
比較例2及び3で得られたフェノール樹脂(F)及び(G)は、ノボラック型フェノール樹脂であるため、重量平均分子量が小さくても固形であるが、植物由来率が低い。また硬化剤不使用では1時間経過後も硬化しない。
比較例4で得られたフェノール樹脂(H)は、植物由来率が低く、トルク発生時間が短いため混練性が悪く、硬化剤を使用しない場合のゲルタイムが短い。
比較例5で得られたフェノール樹脂(I)は、すべて非植物由来率を原料として使用しているため植物由来率はゼロとなり、トルク発生時間が短いため混練性が悪く、硬化剤を使用しない場合のゲルタイムが短い。
【0036】
(ゴム材料の作製)
ゴム組成物の製造で使用した各種配合材料について、以下まとめて説明する。
天然ゴム(NR):RSS3号
カーボンブラック:HAF(三菱化学社製)
オイル:ダイアナプロセスAH40(出光興産社製)
老化防止剤:ノクラック6C(大内振興化学社製)
ステアリン酸:ステアリン酸さくら(日本油脂社製)
硫黄:硫黄(鶴見化学工業社製)
亜鉛華:酸化亜鉛(堺化学社製)
硬化剤:ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学社製)
加硫促進剤:ノクセラーNS−P(大内振興化学社製)
硬化助剤:水酸化カルシウム(北上石灰社製)
【0037】
(硬化剤を使用したゴム材料の作製)
[実施例5]
フェノール樹脂(A)10g、天然ゴム100g、カーボンブラック60g、ワックス2g、オイル4g、老化防止剤2g、滑剤としてステアリン酸4g、亜鉛華5gを加圧ニーダーにて、140℃5分間混練した。これに硫黄2.5g、硬化剤5g、加硫促進剤1.5gを添加し、2軸ロールにて100℃5分間混練し、シート状の未加硫ゴム組成物を得た。
【0038】
[実施例6〜8 比較例6、7]
フェノール樹脂(A)を表2に示すフェノール樹脂に変更した以外は、実施例5と同様にして、未加硫ゴム組成物を得た。
ただし、フェノール樹脂(E)については、ペースト状のため混練できず、フェノール樹脂(H)及びフェノール樹脂(I)については自硬性樹脂のため、それぞれ実施はしなかった。
【0039】
(硬化剤を使用しないゴム組成物の製造)
[実施例9]
フェノール樹脂(A)10g、天然ゴム100g、カーボンブラック60g、ワックス2g、オイル4g、老化防止剤2g、滑剤としてステアリン酸4g、亜鉛華5gを加圧ニーダーにて、140℃5分間混練した。これに硫黄2.5g、硬化助剤0.5g、加硫促進剤1.5gを添加し、2軸ロールにて100℃5分間混練し、シート状の未加硫ゴム組成物を得た。
【0040】
[実施例10〜12、比較例8〜11]
フェノール樹脂(A)を表3に示すフェノール樹脂に変更した以外は、実施例9と同様にして、未加硫ゴム組成物を得た。
ただし、フェノール樹脂(E)については、ペースト状のため混練できず実施はしなかった。また、比較例10及び11のフェノール樹脂(H)及びフェノール樹脂(I)は、混練中に硬化し、均一に混練することができず、未加硫のゴム組成物を得ることができなかった。
【0041】
(加硫物の製造)
[比較例12]
天然ゴム100g、カーボンブラック60g、ワックス2g、オイル4g、老化防止剤2g、滑剤としてステアリン酸4g、亜鉛華5gを加圧ニーダーにて、140℃5分間混練した。これに硫黄2.5g、加硫促進剤1.5gを添加し、2軸ロールにて100℃5分間混練し、シート状の未加硫ゴム組成物を得た。
【0042】
実施例5〜12及び比較例6〜9、12で得られた未加硫ゴム組成物を150mm×150mm×2mmの金型を用い、150℃にて30分間プレス加硫することで試験片を得た。得られた試験片について、硬さ、破断強度、破断伸びを以下の方法により測定した。硬化剤を使用した実施例5〜8及び比較例6〜7の測定結果を表2に、硬化剤を使用しなかった実施例9〜12及び比較例8〜12の測定結果を表3に示す。
【0043】
[硬さ]
JIS K6253に準じ、テクロック製タイプAデュロメーターGS−719Gを使用し、硬さ(ショアA)を測定した。この硬さの値が大きいほど硬い加硫物が得られ、補強性に優れている。
[破断強度・破断伸び]
JIS K6251に準じ、東洋精機製ストログラフV10−Cにて、ダンベル状3号とした試験片の破断強度及び破断伸びを測定した。破断強度及び破断伸びの値が高いほど引張り強度に優れている。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
硬化剤を使用した表2の結果より、実施例5〜8は比較例6〜7と比べて、硬く、ゴム補強効果が大きい。また破断強度、破断伸びにも優れることがわかった。
硬化剤を使用した表3の結果より、実施例9〜12は問題なく混練することができ、フェノール樹脂を含有しない比較例13と比較し、硬さ、破断強度、破断伸びのすべてが向上しており、ゴム補強効果に優れる。
一方、比較例8及び9では硬化せずに試験片を作製することができなかった。
また、比較例10及び11では混練中に硬化が進んでしまい、均一に混練することが出来なかった。
さらに実施例5〜12は植物由来率の高いフェノール樹脂を使用しているため、ゴム組成物全体でも植物由来率が高くなり、二酸化炭素量増加の抑制効果があると考えられる。