(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような通風路では、通風路で導かれた走行風が、車体に沿って進むことからハンドルグリップを握ったライダーの腕に当たり、快適な走行の妨げになる。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、走行風がライダーの手に当たるのを緩和することのできる鞍乗型車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる鞍乗型車両は、前部がカウリングで覆われた鞍乗型車両であって、前記カウリングの外側面に、カウリングの前端近傍から操舵角ゼロ状態のハンドルバーのグリップ下方まで延びるガイド溝が形成され、前記ガイド溝は、走行風を前記グリップ前方近傍まで前後方向に案内し、グリップ前方近傍において走行風の流れる向きを変えて車体外側へ案内する。
【0007】
この構成によれば、ガイド溝内にグリップの方向に向かって進入した走行風をグリップ前方近傍において流れの向きを変化させることで、ガイド溝の前部、つまりカウリングの前端近傍で流れの向きを変化させる場合と比較して、ガイド溝内を流れる走行風をグリップの近傍において車幅方向外側へ効果的に押し出すことができ、これによって、ガイド溝の外側を流れる走行風も外側に偏向させることができるから、ライダーの腕に走行風が衝突するのを緩和することができる。
【0008】
本発明において、車体の前後方向と直交する断面において、カウリングにおける前記ガイド溝が形成された部位の車幅方向外側端面が、前端部から後方に進むにつれて車幅方向外側に膨出し、前記ガイド溝の車幅方向深さは、前記ガイド溝の前半部では、前端部から後方に進むにつれて大きくなり、前記連結部近傍に設けられる最深部で最も深くなり、前記ガイド溝の後半部では、前記最深部から後方に進むにつれて小さくなり、前記ガイド溝の最深部よりも後方に、内面が外側方下方に向くガイド面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、カウルが膨出するのに応じてガイド溝が深くなることで、ガイド溝に案内される走行風は、最深部に達するまで車幅方向外側に流れることが抑制され、最深部を過ぎてから急に車幅方向外側に案内されることになる。これによって走行風の向きを急変化でき、ライダーの腕に当たる走行風を一層緩和できる。
【0009】
前記ガイド面が形成される場合、前記ガイド溝の前方に、内側から外側へ向かって斜め後方に延び、かつ後方に凹むように湾曲した凹面からなる偏向面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、偏向面によりガイド溝へ入る走行風が少なくなり、その結果、ライダーの腕に向かう走行風も少なくなり、走行風がライダーの腕に当たるのを緩和できる。
【0010】
本発明において、前記ガイド溝は、側面視で逆V字形状に形成され、前記グリップ前方近傍に向かって前後方向に延びる前半部と、この前半部に対して鈍角をなすように傾斜した後半部と、前記前半部と後半部を連結し、頂点を含む連結部とを有し、前記ガイド溝の少なくとも後半部の内面が外側方下方に向くガイド面を有することが好ましい。この構成によれば、ガイド溝で案内された走行風の一部を後半部に導くことで、走行風の一部をグリップから遠ざかる方向に案内できる。また、V字形の後半部にガイド面を有するから、このガイド面によって走行風を後方下向き、つまりグリップから下方に離れる方向に案内することが可能となり、その結果、ライダーの腕に走行風が衝突するのを効果的に緩和することができる。
【0011】
前記ガイド溝が側面視で逆V字形状に形成される場合、前記後半部では、前記ガイド溝の底部が、後方に進むにつれて車幅方向外側に傾斜していることが好ましい。この構成によれば、ガイド溝の後半部に導入された走行風を外側に導いて、ガイド溝を出た走行風が運転者から遠ざかるようにすることで、ライダーの腕に走行風が当たるのが一層緩和される。
【0012】
前記ガイド溝が側面視で逆V字形状に形成される場合、前記ガイド溝の後部がライダーの膝よりも下方に向かっていることが好ましい。この構成によれば、腕だけでなく、走行風が膝に当たるのも緩和される。
【0013】
本発明において、前記カウリングがさらに、外側へ膨出してライダーの下腿に走行風が当たるのを防止する膨出部を有することが好ましい。この構成によれば、走行風が膝に当たるのが、さらに緩和される。
【0014】
本発明において、前記カウリングの側部に排風口が形成され、前記排風口を横切って排風口からの排風を整流して後方へ案内する整流フィンを有し、前記整流フィンは、前端部が前記排風口の縁部に設けたスリットに挿入されていることが好ましい。この構成によれば、整流フィンにより走行中の排風の乱れが少なくなるうえに、停止時の排風がライダーに向かうのを抑制することができる。また、前記整流フィンは、前端部が前記排風口の縁部に設けたスリットに挿入されているので、整流フィンの前端部によってカウリングの外面に沿う走行風の乱れが生じるのを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鞍乗型車両によれば、グリップ前方近傍において走行風の流れる向きを変化させるので、カウリングの前端近傍で変化させる場合と比較して、グリップの近傍の走行風を車幅方向外側へ効果的に押し出すことができるから、ライダーの腕に走行風が衝突するのを緩和することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明が適用される自動二輪車を示す。この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、メインフレーム1の後部に連結されて車体フレームFRの後半部を構成するリヤフレーム2とからなり、このメインフレーム1の前端にヘッドパイプ3が取り付けられ、このヘッドパイプ3に回動自在に挿通されたステアリングシャフト(図示せず)を介してフロントフォーク10が支持され、このフロントフォーク10の下端部に前輪12が支持されている。フロントフォーク10の上端部にハンドル14および速度計、エンジン回転計などの計器を有する計器ユニット16が取り付けられている。
【0018】
前記メインフレーム1の後端下部には、スイングアームブラケット18が設けられ、このスイングアームブラケット18に、スイングアーム20が、前端部に挿通されたピボット軸22を介して上下揺動自在に支持されている。このスイングアーム20の後端部には後輪24が支持されている。メインフレーム1の中央下部には多気筒エンジンEが支持されている。前記エンジンEのシリンダヘッド26には複数の排気管28が接続され、これら排気管28は車体後部の両側に一つずつ配置されたマフラ30に接続されている。エンジンEの前方には、走行風Aによりエンジン冷却水を冷却するラジエータ31が配置されている。
【0019】
前記リヤフレーム2にライダー用および同乗車用シート32、33が支持されている。リヤフレーム2は、両シート32、33の下方にあたる側部が、テールカバー36によって覆われている。メインフレーム1の上部、つまり、車体上部で、前記ハンドル14とシート32との間には、燃料タンク38が取り付けられている。また、車体前部に、前記ハンドル14の前方から車体前部の側方にかけての部分を覆う樹脂製のカウリング40が装着されている。カウリング40には、ヘッドランプユニット42が装着され、このヘッドランプユニット42の上方に位置してエンジンEへの燃焼用空気を取り入れる空気取入口44が形成されている。カウリング40の下方には、排気管28およびエンジンEの前部下方を側方から覆うエンジンカバー46が装着されている。
【0020】
カウリング40は、車体の前部上方を覆い、前記ヘッドランプユニット42の取付用開口および前記空気取入口44が形成されるアッパカウル48と、アッパカウル48の下部に連なり、車体の前部下方からメインフレーム1およびラジエータ31の側方を覆うサイドカウル50と、サイドカウル50の後方に連なり、車体の側方を覆うニーグリップカバー52とを有する。
【0021】
カウリング40の側部、具体的には、サイドカウル50とニーグリップカバー52との間に、ラジエータ31およびエンジンEを通過した走行風Aが排出される排風口54が形成されており、ニーグリップカバー52に、この排風口54を横切って排風口54からの排風を整流して後方へ案内する複数の整流フィン56が設けられている。この実施形態では、互いに平行に若干後ろ上がりに延びる4本の整流フィン56が上下方向に並んで設けられているが、数はこれに限定されない。
図3に示すように、サイドカウル50の外側の走行風Aが、前後方向に横断する整流フィン56に沿って真っすぐに流れることにより、排風口54から外側方へ流出する走行中の排風Wが整流された走行風Aに引き込まれることで、乱れが少なくなるうえに、停止時の排風Wが排風口54から上方へ流出してライダーに向かうのを抑制することができる。
【0022】
ガイド溝60の長手方向に沿ったII−II線断面図を含む平面図である
図2に示すように、ハンドル14は、前方に進むに連れて、車体の前後方向中心線Cに向かうように逆Vの字状に傾斜した左右一対のハンドルバー14aを有し、ハンドルバー14aの外端部に前記グリップ58が形成されている。グリップ58は外側の一部分が、
図2に示した操舵角ゼロの状態で、カウリング40の外側面よりも車体外側方に突出している。ハンドルバー14aの内端部は、ヘッドパイプ3に支持されたトップブリッジ59に固定されている。トップブリッジ59の前方に、前記計器ユニット16が配置されている。
【0023】
図1のカウリング40の外側面、具体的には、サイドカウル50の上部の外側面に、カウリング40の前端40a近傍から操舵角ゼロ状態のハンドル14のグリップ58下方まで延びるガイド溝60が形成されている。ガイド溝60は、カウリング40におけるヘッドランプユニット42の後端のほぼ直下方に前端60aを有し、操舵角ゼロ(直進走行)のときのグリップ58の外端58aのほぼ直下方に後端60bを有している。
【0024】
前記ガイド溝60は、側面視で逆V字形状に形成され、ほぼグリップ58の方向に向かって若干後ろ上がりに傾斜して前後方向にグリップ58前方近傍まで延びる前半部62と、この前半部62に対して鈍角をなすように傾斜して後ろ下がりに延びる後半部64と、前半部62と後半部64を連結し、頂点Pを含む連結部66とを有している。ガイド溝60の後半部64は、ライダーの膝Kよりも下方に向かっている。ここで、グリップ58の前方近傍とは、車体前部の計器ユニット16またはトップブリッジ59よりも後方で、グリップ58の最前端である内端部58bの前方または下方をいう。ガイド溝60の形状の詳細については後述する。
【0025】
図3の斜視図に示すように、サイドカウル50は、その下部に、サイドカウル50の他の部分よりも外側へ膨出して、ライダーの下腿に走行風Aが当たるのを防止する膨出部74を有している。膨出部74は、前端部から後方に進むにつれて上方に延びており、
図1に示すように、膨出部74の後部がライダーの脚の前方近傍に位置し、ライダーの脚への風圧を緩和する。
【0026】
また、ガイド溝60の前方で車体内側に、内側から外側へ向かって斜め後方に延びる凹面からなる偏向面70が形成されている。偏向面70は、カウリング40の前端40aに当たる走行風の一部を車体外側に導くもので、
図2に示すように、外表面が後方へ若干凹入している。
【0027】
図4の拡大側面図に示すように、ガイド溝60の後半部64の内面には、外側方下方に向くガイド面68が設けられている。つまり、ガイド溝60は、前半部62により走行風Aをグリップ58前方近傍まで前後方向に案内し、グリップ58前方近傍において後半部64により走行風Aの流れる向きを変えて、後方下方の車体外側へ案内する。本実施形態では、ガイド面68は、ガイド溝60の後半部64の内面に設けられているが、後半部64の内面に加えて前半部62の後部の内面にも設けてもよい。
【0028】
側面視で、グリップ58の外端58aから頂点Pまでの前後方向距離D1は、グリップ58の外端58aからカウリング40の前端40aまでの距離D2の1/2以下であることが好ましい。D1/D2が1/2以上であると、ガイド溝60のガイド面68の前端が前方に寄り過ぎる結果、ガイド面68により一旦外側へ向かった走行風Aが内側へ戻されて、グリップ58を握ったライダーの手および腕HAに当たり易くなる。側面視で、前半部62および後半部64の長手方向に沿った溝中心線C1,C2が前後方向となす傾斜角度α、βはそれぞれ、例えば、10〜20°、10〜25°であり、両溝中心線C1,C2のなす交差角γは135〜160°の鈍角である。前半部62は前後方向にほぼ平行に延びる(α=0°)ようにしてもよい。
【0029】
図2に示すように、ガイド溝60が形成されるカウリング40の前後方向の部位において、車幅方向外側端面40bが、前端部40aから後方に進むにつれて車幅方向外側に膨出している。ガイド溝60の前後方向と直交する横断面の形状は、
図5(A)〜(D)に示すように、台形ないしV字形であり、底面60d、上部溝面60eおよび下部溝面60fからなる内面を有する。
【0030】
図5(A)および
図5(B)に示す前半部62では、ガイド溝60の横断面形状は台形状であり、上部溝面60eは斜め下方外側を、下部溝面60fは斜め上方外側を、底面60dは外側方をそれぞれ向いており、後方に進むにつれて、底面60dの上下寸法hが小さくなる。
【0031】
図5(C)に示す連結部66および
図5(D)に示す後半部64では、ガイド溝60の横断面形状はほぼV字形状であり、前半部と同様に、上部溝面60eは斜め下方外側を、下部溝面60fは斜め上方外側を、上下寸法hの小さい底面60dは外側方をそれぞれ向いている。
【0032】
ガイド溝60の車幅方向深さdは、
図5(A)および
図5(B)に示す前半部62では、前端部60a(
図4)から後方に進むにつれて大きくなり、
図5(C)に示す連結部66近傍に設けられる最深部72で最も深くなり、
図5(D)に示す後半部64では、最深部72から後方に進むにつれて小さくなり、ガイド溝60の最深部72よりも後方に、内面が外側方下方に向く上部溝面60eである前記ガイド面68が形成されている。ガイド溝60の底部60bは、
図2から明らかなとおり、後方に進むにつれて車幅方向外側に傾斜している。つまり、
図5(D)の水平面Hに対するガイド面68のなす角θが後方に進むにつれて小さくなっている。
【0033】
図2に示すように、カウリング40の先端40a付近は流線形状に形成され、前端40aから後方に進むにつれて車幅方向に広がる形状に形成されている。具体的には、カウリング40の車幅方向外側端面40bは、前端40aから変曲点Iまでは急激に広がり、変曲点Iより後方では緩やかに広がっている。本実施形態では、ガイド溝60は、変曲点Iより後方に形成され、偏向面70は変曲点Iより前方に形成されている。したがって、ガイド溝60の先端は、車体の前後方向中心線Cから側方に十分離れて位置している。換言すれば、ガイド溝60の先端は、カウリング40の先端40aのやや後方で、先端40aから大きく車幅方向に離れた位置に設定される。
【0034】
図6Aは、偏向面70の下縁と、ガイド溝60の最も深い部分、つまり前半部62の底部60dおよび後半部64の底部60dとを含む、
図4のVIA-VIA線(V字形)に沿った線断面図で、
図6Bは、偏向面70の下縁と、前半部62の底部60dを含む、
図4のVIB-VIB線(直線)に沿った線断面図である。
【0035】
図6Aに示すように、ガイド溝60の前半部62における最も深い部分(底部60d)を前後方向に結んだ第1ラインL1は、車体の前後方向中心線Cにほぼ平行に延びている。つまり、ガイド溝60の前半部62では、走行風Aはほぼ前後方向に沿って案内される。偏向面70の最も深い部分70a(
図4)を前後方向に結ぶ第2ラインL2は、後方に進むにつれて車幅方向外方へ大きく広がり、変曲点I近傍でガイド溝60の前半部62に屈曲して連なっている。これらラインL1、L2の成す角θ1は好ましくは30〜60°であり、より好ましくは35〜50°であり、この実施形態では42°である。これにより、ガイド溝60の前半部62に向かう走行風Aが、偏向面70に案内された走行風Aで車幅方向外方へ押し出され、ガイド溝60を流れる走行風Aを減らすことができる。
【0036】
ガイド溝60の後半部64における最も深い部分(底部60d)を前後方向に結んだ第3ラインL3は、後方に進むにつれて緩やかに外側に広がり、この第3ラインL3の前端は第1ラインL1に屈曲して連なっている。上下方向から見たこれらラインL1、L3の成す角θ2は、好ましくは5〜20°であり、より好ましくは7〜15°であり、この実施形態では10°である。これにより、ガイド溝60の前半部62に沿ってほぼ前後方向に案内された走行風Aが、後半部64によりガイド溝60から車幅方向外側に向けて案内される。
【0037】
図6Bに示すように、後半部64における上部溝面60eを前後方向に結ぶ第4ラインL4は、後方に進むにつれて車幅方向外方へ大きく広がっている。これにより、ガイド溝60の前半部62に沿って後方に導かれた走行風Aの一部が、ガイド溝60の頂点P(
図1)付近における上部溝面60eに案内されて車幅方向外方へ押し出され、ガイド溝60の後半部64を通ってライダーの脚に向かう走行風Aを少なくすることができる。
【0038】
このように、本実施形態のガイド溝60は、走行風Aを滑らかな曲線に沿って案内する場合に比べて、
図6Aに示す偏向面70、ガイド溝60の前半部62および後半部64において、それぞれ異なる角度を有する3つの面を用いて走行風Aを案内することで、ライダーの腕および上半身に向かう走行風Aを効果的に低減できる。さらに、
図3に示すように、V字形のガイド溝60の後半部64は後方に進むにつれて下方に延びているから、
図6Bに示す後半部64の上部溝面60eで車幅方向外方へ押し出され、
図3に矢印で示すように、上下方向に幅を持たせてグリップ58近傍の前方で車幅方向外側に走行風Aが案内され、上下方向の広範囲にわたってライダーの腕および上半身に向かう走行風Aを一層効果的に低減できる。
【0039】
さらに、前半部62と後半部64が一直線に並んだI字形とした場合には、
図3に丸印で示すガイド溝60の後端Qが、カウリング40の上縁となることから、V字形の場合よりも後半部64が短くなるので、後端部で溝深さが急変化することになり、応力集中を招き易い。これに対して、本実施形態では、ガイド溝60がV字形であるから、ガイド溝60の後半部64の長さを大きくできる分だけ溝深さの変化を緩やかにできるので、応力集中を緩和してカウリング40の剛性を向上できる。例えば、ガイド溝60の近傍で、部分的にカウリング40を補強したり、肉厚にしたりする必要がなくなる。
【0040】
図1に示すように、サイドカウル50は、その中央部に側面視で、後方に凸部が向いたほぼV字上の前記排風口54が形成されている。サイドカウル50単品の側面図である
図7に示すように、排風口54の前縁部54aに、前記整流フィン56が挿入されるスリット76が複数、この例では4つ形成されている。各スリット76は、排風口54に連なる溝または切り込みからなる。排風口54の後縁部54bの中央部からサイドカウル50の後縁にかけて、ニーグリップカバー52が配置される、車体内側へ凹んだ凹所78が形成されている。前記膨出部74は、サイドカウル50の前縁の下部から排風口54の下方、さらに凹所78の下方を通ってサイドカウル50の後縁下部にまで延びている。
【0041】
図8に示すように、膨出部74は下部の方が上部よりも膨出量が大きく設定されており、最も車体外側に膨出する下部が、エンジンカバー46に滑らかに連なっている。また、
図2に示すように、膨出部74は、後方に進むにつれて外側方に膨出しており、
図1のライダーの脚の前方近傍に位置する後部で、最も膨出量が大きくなる。
【0042】
図9に示すように、ニーグリップカバー52は、側面視でほぼ矩形のカバー本体80を有し、カバー本体80の前縁部80aは、排風口54の後縁部54bに合致した形状を有している。カバー本体80は、サイドカウル50の凹所78(
図7)に収納される整流部82と、整流部82から後方に延び、整流部82よりも上下方向寸法が小さいニーグリップ部84とからなる。
【0043】
整流部82には、4本の前記整流フィン56の後半部56bが型成形により一体成形されている。整流フィン56の前半部56aは、カバー本体80の前縁部80aから前方に突出して形成されている。4本の整流フィン56のうち、1番上の整流フィン56と2番目の整流フィン56の前端部56aa同士が補強部材86により連結されている。同様に、1番下の整流フィン56と下から2番目の整流フィン56の前端部56aa同士も補強部材86により連結されている。後半部56bは、整流部82の外表面から外側方に突出して形成されている。さらに、ニーグリップ部84の外表面には、整流フィン56の後端56baに連なるように溝88が形成され、自動二輪車の外観を向上させている。この実施形態では、上から3つの整流フィン56に連なる溝88が形成されている。
【0044】
図7に示すように、ニーグリップカバー52は、カバー本体80が車体の外表面になるように、整流部82をサイドカウル50の凹所78に装着し、さらに、
図10に示すように、整流フィン56の前端部56aaをスリット76に挿入する。このとき、整流フィン56の前端部56aaの補強部材86は、サイドカウル50の内側に形成された係合溝90に係合される。つまり、ニーグリップカバー52がサイドカウル50に装着された状態で、隣接する整流フィン56の前端部56aaおよびスリット76が、サイドカウル50の内面側に位置する補強部材86により補強されている。これにより、走行中に、整流フィン56が振動するのを防止できる。また、整流フィン56の前端部56aaが、スリット76に挿入されているので、整流フィン56の前端部56aaがサイドカウル50の外側表面から突出しないので、この前端部56aaによって、
図1のカウリング40の外面に沿う走行風Aの乱れが生じるのを抑制できる。
【0045】
上記構成において、
図2に示すように、ガイド溝60の前半部62内にグリップ58の方向に向かって進入した走行風Aをグリップ58近傍において流れの向きを変化させることで、ガイド溝60の前部、つまりカウリング40の前端40a近傍で変化させる場合と比較して、ガイド溝60内を流れる走行風Aを、グリップ58の近傍において車幅方向外側へ効果的に押し出すことができ、これによってガイド溝60の外側を流れる走行風A1も外側に偏向させることができるから、ライダーの腕HAに走行風A,A1が衝突するのを緩和することができる。また、ガイド溝60の後半部64が後ろ下がりに傾斜しているから、ガイド溝60内の走行風Aを後方斜め下方に案内するので、走行風Aを腕HAからさらに遠ざけることができる。
【0046】
図4に示すように、ガイド溝60で案内された走行風Aの一部を後半部64に導くことで、走行風Aの一部をグリップ58から遠ざかる方向に案内できる。さらに、ガイド溝60の前半部62は前後方向に延びており、後ろ下がりとならないから、車両に鈍重なイメージを与えることがない。また、後半部64にガイド面68を有するから、グリップ58近傍において走行風Aの流れる向きを変えて車体外側へ案内することが可能となり、その結果、ライダーの腕に走行風Aが衝突するのを緩和することができる
。
【0047】
図5(A)および(B)に示すように、ガイド溝60の前半部62では、後方に進むにつれてカウリング40の外端部40bが膨出するのに応じてガイド溝60の深さdが大きくなることで、ガイド溝60に案内される走行風Aは、
図5(C)の最深部72(連結部66)に達するまで車幅方向外側に流れることが防がれ、
図4に示す連結部66を過ぎてから急に車幅方向外側に案内されることになる。これによって走行風Aの向きを急変化でき、ライダーの腕に当たる走行風Aを一層緩和できる。
【0048】
また、ガイド溝60の後半部64に導入された走行風Aを外側に導いて、ガイド溝60を出た走行風Aが運転者から遠ざかるようにすることで、ライダーの腕に走行風Aが当たるのが一層緩和される。
【0049】
さらに、ガイド溝60の前方に偏向面70を設けたことで、ガイド溝60へ入る走行風Aが少なくなり、その結果、ライダーの腕に向かう走行風Aも少なくなり、走行風Aがライダーの腕に当たるのを緩和できる。
【0050】
図1に示すように、ガイド溝60の後部60bがライダーの膝Kよりも下方に向かって傾斜しているので、腕HAだけでなく、走行風Aが膝Kに当たるのも緩和される。さらに、サイドカウル50が、ライダーの下腿に走行風Aが当たるのを防止する膨出部74を有しているので、走行風Aが膝Kに当たるのが、さらに緩和される。
【0051】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。例えば、上記実施形態では、ガイド溝60はV字状に形成されていたが、円弧状あるいは直線状に形成してもよい。また、良好な風防効果を得られるという点で、カウリングが形成される車両全般に適用できる。さらに、駆動源としてエンジンを用いた車両のほか、電動モータを用いた車両にも適用可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。