【実施例】
【0020】
本発明の実施例を以下の図面に従って説明する。
図1は本発明の第一の形態の筆記具用インキカートリッジを表す断面図であり、
図2は
図1の蓋体の断面図及び外観説明図であり、
図3は
図1の筆記具用インキカートリッジを収容したマーキングペンを表す断面図である。また、
図4は第二の形態の筆記具用インキカートリッジに適用される蓋体の断面図及び外観説明図である。
【0021】
実施例1(
図1乃至3参照)
筆記具用インキカートリッジ1は、上端を開口し下端が閉鎖された有底円筒状体であり、合成樹脂(具体的にはポリエチレン樹脂)の射出成形またはブロー成形により得られる容器2の上方開口部分の内側壁面に栓体3が嵌着され、更に上方に蓋体5が冠着されている。また、前記容器2内部は、栓体3上方を筆記具嵌合用の空間部23とし、栓体3下方を水性インキ4が直接収容されるインキ収容部21(内径5.5mm)として適用される略円筒有底体であり、インキ収容部21内周には、軸方向に三本のリブ22が等間隔に延設される。尚、栓体3を固定する位置には、容器内壁面に環状突部を設けることができ、栓体3をより確実に嵌着保持することも可能である。
【0022】
前記栓体3はポリエチレン樹脂成形物からなる円盤状物(外径5.8mm)であり、径方向の弾性を有するように薄肉状に形成される。これにより、カートリッジ組立時に容器2内に圧入することで所望の位置で保持できるとともに、槍体74による押圧開放が可能となる。
【0023】
前記蓋体5は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)の射出成形により得られる成形物であり、カートリッジの栓体3が容器開口部方向に移動することを抑制するものである。また、前記蓋体5には、槍体74が貫通可能な孔部51が形成されており、蓋体5が付いたカートリッジを筆記具内に収容した際、槍体74が前記孔部51を介して容器2上方(開口部近傍)の空間部23に配置できるものである。そのため、軸方向に余分な距離(空間)を必要とすることなくカートリッジを収容できる。
前記蓋体5は、容器2の開口を外側から被覆するように開口近傍の外壁面を挟持する環状の挟着部52と、前記挟着部52の略中心から軸方向に延設される脚部53とを一体に成形したものであり、前記挟着部52には槍体74の横断面よりも大きい形状の孔部51が形成されている。前記孔部51、挟着部52、脚部53が一体成形されるため、製造が容易且つ安価なものとなる。
【0024】
前記挟着部52には、容器2が軸方向への若干の移動(遊び)が可能となるようにテーパー部を形成することができる。これにより各部材の成形ばらつきを吸収できるため、前記効果をより確実に発現できる。
【0025】
前記脚部53は、挟着部52から軸方向に延設される端部が栓体3の中心近傍と接触する円筒部材である。本実施例では、挟着部52となる環状部材の内壁の一部分から径方向に延設される薄板を介して軸方向に延設されているため、薄板の撓みを利用した微動が可能である。これにより各部材の成形ばらつきを吸収できる。
【0026】
筆記具(
図3参照)
前記蓋体5を取り付けた筆記具用インキカートリッジ1を収容した筆記具6を
図3により説明する。尚、筆記具6はキャップ式マーキングペンであるが、
図3はキャップを外した状態の図面である。
【0027】
前記筆記具6は、ペン体76とペン芯75とカートリッジ接続部73を備えた前軸7に、カートリッジ1を収納する後軸8が螺合されることで構成されるマーキングペンである。
前記ペン体76は、蓋体5を外したインキカートリッジの接続時に、カートリッジ内のインキを筆記先端に供給するインキ誘導芯と一体に形成されており、合成樹脂製繊維(例えば、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維等)の樹脂加工により得られる棒状体である。尚、筆記先端となる前端は砲弾状に研削され、インキ供給する後端部外周面はテーパー状に面取りされている。
【0028】
前記ペン芯75は、インキ流量調整部材とも呼ばれるものであり、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、前記円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心に前記インキ誘導芯(ペン体76)が配置される。
前記ペン芯の材質としては、多数の円盤体を櫛溝状とした構造に射出成形できる合成樹脂であれば汎用のポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等いずれを用いることもできる。
【0029】
前記前軸7は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)の射出成形により得られる略筒状体である本体71に、ペン芯75及びペン体76を内設しており、ペン体76は樹脂製のホルダー77によって保持されている。
また、前記本体71の後方には、カートリッジ本体2の開口部が接続される円筒状の接続部73と、後軸8が螺合される円筒状の螺合部72が一体成形されている。
更に、前記接続部73の後端には、カートリッジ接続時に栓体3の一部を押圧開放するための槍体74が扇形板状に延設されている。
前記螺合部72、接続部73、槍体74が本体71後方に一体で成形されているため、各パーツを組み立てる必要がなくなり、製造コストを安価にできる。
【0030】
前記前軸7後方の螺合部72には、槍体74がインキカートリッジ1の蓋体孔部51を貫通した状態でインキカートリッジ1を収容する後軸8が螺着される。
前記後軸8は、底部となる一端を封鎖する樹脂製筒状部材であり、開口部内壁に螺着用溝が形成されている。
【0031】
前記槍体74の軸方向の長さ(距離M)と、蓋体5に形成される脚部53の軸方向の長さ(距離L)は、L>Mとなるように設定されている。そのため、前記カートリッジ収容状態の筆記具6が落下等による衝撃を受けた際、カートリッジ1が軸方向に激しく移動した場合であっても槍体74の後端が栓体3と接触することを抑制できるため、軸筒内での不用意なインキ漏れを確実に防止できる。その際、蓋体5に孔部51が形成されるために後軸8内の空間(軸方向のスペース)を余分に設ける必要がなくなり、軸筒内でのカートリッジ1の移動距離が小さくすむことからも前記不具合が発生し難いものとなっている。
【0032】
前記
図3の筆記具6は保管時の形態であり、使用時には、後軸8を外して収容するカートリッジ1を取り出した後、容器2開口部から蓋体5を取り外す。その後、容器2の空間部23内に槍体74及び接続部73を挿入するようにカートリッジが嵌入接続されることで、槍体74により栓体縁部が押圧され栓体3が開放してインキ4がペン体76(インキ誘導芯)に供給される。最後に後軸8を再び螺合部72に螺着することで筆記状態となる。
【0033】
実施例2(
図4参照)
本実施例の筆記具用インキカートリッジ1は、上方に嵌着される蓋体5以外は実施例1と同様の形態で構成されているため、
図4では蓋体5の縦断面図(a)と上方視認図(b)のみを示す。
【0034】
前記蓋体5は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)の射出成形により得られる成形物であり、カートリッジの栓体3が容器開口部方向に移動することを抑制するものである。また、前記蓋体5には、槍体74が貫通可能な切欠状の孔部51が略円筒の対向する二カ所に形成されており、蓋体5が付いたカートリッジ1を筆記具内に収容した際、槍体74が前記孔部51を介して容器2上方(開口部近傍)の空間部23に配置できるものである。そのため、軸方向に余分な距離(空間)を必要とすることなくカートリッジ1を収容できる。
前記蓋体5は、容器2の開口部を外側から部分被覆するように、開口部近傍の対向する外壁面を挟持するR状(上面扇形状)対称形の挟着部52と、前記挟着部52間の略中心から延設される脚部53とを一体に成形したものである。そのため、R状挟持部が形成されていない部分は、槍体74の横断面よりも大きい切り欠き形状(孔部51)として形成されている。前記挟着部52と脚部53が一体成形されるため、製造が容易且つ安価なものとなる。
【0035】
前記脚部53は、対向するR状の挟着部52を繋ぐように設けられる薄板の略中心から軸方向下向きに延設される円筒部材であり、下端が栓体3の中心近傍と接触するように形成されている。そのため、挟着部52を容器2開口部に装着することで、栓体3の開口部方向への移動を抑制することが可能となり、落下衝撃等による不用意なインキ漏れを防止できる。
【0036】
前記蓋体5を装着した筆記具用インキカートリッジ1を、実施例1と同様の筆記具6に収容した場合、槍体74が前記切欠状の孔部51を介して容器2上方(開口部近傍)の空間部23に配置できるため、後軸後方に余分な距離(空間)を必要とすることなく、前軸7と後軸8を螺着してカートリッジ1を筆記具内に収容できる。
尚、使用時には、前軸7から後軸8を外して収容するカートリッジ1を取り出した後、容器2開口部から蓋体5を取り外し、容器2の空間部23内に槍体74及び接続部73を挿入するようにカートリッジを嵌入接続することで、槍体74により栓体縁部が押圧され栓体3が開放してインキ4がペン体76(インキ誘導芯)に供給される。最後に後軸8を再び螺合部72に螺着することで筆記状態となる。