特許第5771101号(P5771101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771101筆記具用インキカートリッジ及びそれを収容した筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771101
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】筆記具用インキカートリッジ及びそれを収容した筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 5/14 20060101AFI20150806BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   B43K5/14
   B43K8/02 E
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-201264(P2011-201264)
(22)【出願日】2011年9月15日
(65)【公開番号】特開2013-59964(P2013-59964A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】大川 彰一
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭38−519(JP,Y1)
【文献】 特開2011−104982(JP,A)
【文献】 実開昭56−8488(JP,U)
【文献】 仏国特許出願公開第739315(FR,A1)
【文献】 米国特許第2796850(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口され且つ他端が閉鎖された容器と、該容器を密栓する栓体とからなり、前記容器の開口部内に栓体を嵌着することで内部にインキ収容部を構成し、前記栓体が筆記具本体内に形成される槍体によって押圧開放されることで筆記具にインキが供給される筆記具用インキカートリッジであって、
前記栓体が容器の開口端部方向に移動することを抑制する蓋体が設けられ、前記蓋体には槍体が貫通可能な孔部が形成されることを特徴とする筆記具用インキカートリッジ。
【請求項2】
前記蓋体が、容器開口部を被覆するとともに、栓体と接触することを特徴とする請求項1記載の筆記具用インキカートリッジ。
【請求項3】
前記蓋体が、容器外壁面を挟持する挟着部と、前記挟着部から延設される脚部からなり、前記挟着部に孔部が形成されることを特徴とする請求項2記載の筆記具用インキカートリッジ。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用インキカートリッジを槍体が蓋体孔部を貫通した状態で収容してなる筆記具。
【請求項5】
前記槍体の軸方向長さMと、蓋体脚部の軸方向長さLが、L>Mである請求項4記載の筆記具。
【請求項6】
前記筆記具が、本体後方に一端を開口する着脱可能な後軸を備えており、前記蓋体を備えた筆記具用インキカートリッジを収容した状態で後軸が筆記具本体と接続可能である請求項4又は5に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用インキカートリッジとそれを収容した筆記具に関する。更には、落下時等に栓体が開放することを防止する筆記具用インキカートリッジとそれを収容した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記具に用いられるインキカートリッジとしては、インキを収容した容器の上方開口部に、球状、円盤状等の栓体(パッキング)を嵌着した構造が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
前記カートリッジは簡易な構造で構成されるため、筆記具装着時には筆記具の接続部分に形成される槍体によって、前記栓体が押圧され容易に開放できるものである。そのため単体での保管時には、落下等の衝撃や、保管時の温度や気圧の変化に伴う内圧上昇によって容器から栓体が外れ易く、インキ漏れを生じる虞がある。
また、前記インキカートリッジは、ユーザーが筆記具購入後に新品のカートリッジを取り付けて使用できるように、未開封状態(未使用状態)で槍体後方に配置され軸筒内に収容されることがある(例えば、特許文献3参照)。この場合、軸筒内をカートリッジが移動可能な状態で収容されるため、不用意な落下等で衝撃が加わった際に槍体と栓体が強く接触して栓体が外れてしまい、軸筒内でインキ漏れを生じる虞がある。また、前記収容状態では、軸筒内に槍体の長さ分の空間(筆記時には接続され不要となる空間)が必要となるため、軸筒や尾栓を長くする必要がある。
【0004】
前記インキカートリッジのインキ漏れを防止することを目的に、栓体の移動を抑制する蓋体を設けたものが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
前記カートリッジでは、蓋体によって栓体が容器の開口部方向に移動することを抑制しているため、単体での保管時には、落下等の衝撃や、温度や気圧の変化に伴う内圧上昇によって栓体が外れることがない。また、槍体後方に配置するように軸筒内に収容した場合であっても、槍体と栓体が直接接触することがなく栓体が外れることがない。そのため、インキ漏れを確実に防止できるものである。
しかしながら、インキカートリッジを槍体後方に配置するように軸筒内に収容した状態では、軸筒内に槍体の長さ分の空間(筆記時に接続された後には不要となる空間)が必要となったり、尾栓を浮かせた状態で保持する必要がある等、収容状態での筆記具の全長が長くなってしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−287494号公報
【特許文献2】特開2005−324336号公報
【特許文献3】実公平6−1830号公報
【特許文献4】特開2011−104982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題を解消するものであって、簡易な構造で構成されるインキカートリッジであっても、落下等の衝撃、温度や気圧の変化に伴う内圧上昇等によって栓体が外れることがなくインキ漏れを確実に防止できるとともに、未開封状態のインキカートリッジを槍体後方に配置した場合であっても、軸筒の延長や尾栓を浮かせた状態での保持等、筆記具全長を長くすることなく筆記具内に収容できる筆記具用インキカートリッジとそれを収容した筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一端が開口され且つ他端が閉鎖された容器と、該容器を密栓する栓体とからなり、前記容器の開口部内に栓体を嵌着することで内部にインキ収容部を構成し、前記栓体が筆記具本体内に形成される槍体によって押圧開放されることで筆記具にインキが供給される筆記具用インキカートリッジであって、前記栓体が容器の開口端部方向に移動することを抑制する蓋体が設けられ、前記蓋体には槍体が貫通可能な孔部が形成されることを特徴とする筆記具用インキカートリッジを要件とする。
更に、前記蓋体が、容器開口部を被覆するとともに、栓体と接触することを要件とし、前記蓋体が、容器外壁面を挟持する挟着部と、前記挟着部から延設される脚部からなり、前記挟着部に孔部が形成されることを要件とする。
更には、前記いずれかの筆記具用インキカートリッジを槍体が蓋体孔部を貫通した状態で収容してなる筆記具を要件とする。
更に、前記槍体の軸方向長さMと、蓋体脚部の軸方向長さLが、L>Mであること、前記筆記具が、本体後方に一端を開口する着脱可能な後軸を備えており、前記蓋体を備えた筆記具用インキカートリッジを収容した状態で後軸が筆記具本体と接続可能であることを要件とする。
尚、本発明において「上」とは、容器の開口方向を示し、「下」とは、容器の底部(閉鎖部)側を示し、「前」とは、筆記具のペン先側を示し、「後」とは、筆記具の軸側を示す。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、簡易な構造で構成されるインキカートリッジであっても、落下等の衝撃、温度や気圧の変化に伴う内圧上昇等によって栓体が外れることがないので、インキ漏れを確実に防止できる。
また、前記インキカートリッジを未開封状態で筆記具内の槍体後方に配置した場合であっても、空間を確保するための軸筒の延長や尾栓を浮かせた状態での保持等、筆記具の全長を延長することなく通常寸法を維持できる。そのため、カートリッジ単体のみならず、収容状態(筆記具装着前)においても、槍体と栓体との接触による軸筒内でのインキ漏れを確実に防止できる。また、前記栓体を取り付けた筆記具用インキカートリッジを通常寸法の筆記具内に収容できるため、インキがペン先に供給されていない状態でセリースに内包して陳列する場合であっても、同一セリース内で筆記具とインキカートリッジを並列配置した時のように横幅を大きくすることや、尾栓浮かせに伴う縦方向の延長等を抑制でき、販売時の小スペース化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の筆記具用インキカートリッジの一実施例を示す縦断面図である。
図2図1の筆記具用インキカートリッジに適用される蓋体を示す(a)縦断面図及び(b)上面視認図である。
図3図1の筆記具用インキカートリッジを収容した筆記具の一例を示す縦断面図である。
図4】筆記具用インキカートリッジの他の実施形態に適用される蓋体を示す(a)縦断面図及び(b)上面視認図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の筆記具用インキカートリッジは、容器の一端に設けられた開口部分に栓体を嵌着することで形成されるインキ収容部内に、水性インキ、油性インキ等の筆記具インキを収容してなる簡易構造の筆記具用インキカートリッジに対して、槍体が貫装される等、筆記具内に配設された際に槍体の距離分の空間を必要としない蓋体を設けたものである。
【0011】
前記容器は、一端(上方)を開口し、内部にインキ収容部を形成するための底壁(閉鎖部分)を他端(下方)に備えた筒状物であり、金属、樹脂等から形成されるものであるが、成形性が高く、安価に得られることから樹脂が好適である。また、径方向断面形状としてはどのような形状であってもよいが、栓体の組付性能が高い円形が好適である。
前記容器は透明、不透明のいずれであってもよいが、外側からインキ収容量が視認できるように、透明性を有する材質で形成することが好ましい。
更に、容器の内壁面には、軸方向に伸びるリブや溝を設けることができる。これにより、筆記具接続時のインキの誘導性を高めたり、透明性を有する場合には外側からの視認性を高めることが可能となる。
また、前記容器内壁面の上方部分(開口部近傍)には、栓体を挿入保持するために用いられるテーパー、リブ、溝部(ビード)等を形成することが好ましい。これにより、栓体取付時の挿入性を向上させたり、栓体の取付位置が明確になると共に、嵌着力を強固にすることができる。尚、前記加工が施されない場合には、開口部の形状に応じて栓体の形状及び外径を圧入密閉可能なものとすることが好ましい。
【0012】
前記栓体としては、開口部内に嵌着可能な大きさで開口部を密閉できる形状(円板状、球状等)の樹脂成形物や金属加工物が用いられ、長期間インキに接触しても変形や溶解がされ難い材質が適用される。特に、容器嵌着状態において、径方向に変形可能な材質を用いることで、栓体を容器内に圧入することで容易且つ確実に密栓することができる。
【0013】
前記インキ収容部には水性インキ又は油性インキのうち、適用する筆記具に応じたインキが内蔵される。
前記インキは、溶媒となる水又は有機溶剤中に染料、顔料等の着色剤、樹脂等の従来からインキを構成する組成物が添加される他、必要に応じて、酸化防止剤、耐ドライアップ性付与剤、紫外線吸収剤、防錆剤、潤滑剤、粘度調整剤、剥離剤、顔料分散剤、消泡剤、剪断減粘性付与剤、界面活性剤等の各種添加剤を用いることができる。
【0014】
前記構成からなる筆記具用インキカートリッジには、栓体が容器の開口端部方向に移動することを抑制する蓋体が着脱可能に設けられ、該蓋体には、筆記具本体内部に設けられる槍体を貫通可能とする孔部が形成される。
前記蓋体を取り付けることで、保管時に栓体が不用意にずれたり外れたりすることがなくなるため、落下や内圧変化に伴うインキ漏れを防止できる。更に、筆記具内に収容する際、蓋体に形成される孔部に槍体を貫装することができるため、軸筒や尾栓内に槍体の距離分の空間を確保する必要がなくなるので、カートリッジ収容状態における筆記具の全長を長くする必要がなくなる。
【0015】
前記蓋体は栓体の移動を抑制できるような形状、構造であればどのようなものであってもよいが、容器開口部を被覆すると共に栓体と接触する構造(蓋体押圧時に接触する略接触状態を含む)が好ましい。前記構造であれば蓋体の着脱が容易に行うことができ、蓋体を装着することで栓体の移動を確実に抑制できる。特に、前記蓋体は、少なくとも容器壁面(内壁面や外壁面)と、栓体上面とで面接触或いは二点以上での接触が可能な形状とすることが好ましい。
前記蓋体の被覆方法としては、蓋体が容器開口部近傍で保持される形態が適用でき、具体的には、蓋体が容器壁面(外縁部分)を外側から又は内側と外側から挟持する形状、対向する容器壁面を外側から挟持する形状、容器開口部内に蓋体が圧入嵌合できる形状等が例示できる。尚、前記被覆とは、開口全体を覆うものではなく、孔部が形成される部分被覆を意味している。
また、前記蓋体はいずれも、保管状態では容器の開口部側で確実に保持されると共に、使用時(筆記具取付時)には、容易に外すことができるように嵌着される。
【0016】
前記蓋体に設けられる槍体貫装用の孔部とは、蓋体取付時にカートリッジを筆記具内に収容した際、槍体が栓体を押圧することなく容器開口部内に保持するための貫通部分であり、切欠きや窪み等の形態を含むものである。
前記孔部により、蓋体を取り付けたカートリッジを筆記具内に収容した状態であっても、カートリッジ接続時に容器内に挿入される槍体の距離と同等の空間を軸筒内に確保する必要がなくなるため、蓋付カートリッジを収容するために軸筒を延設することや、尾栓を浮かせた状態で保持する等、筆記具の全長を延ばすことなく収容できる。
【0017】
前記筆記具用インキカートリッジは蓋体を取り外した後に筆記具に取り付けて使用されるが、前記筆記具としては、構造や形状を特に限定することなく、汎用の槍体を備えたカートリッジ式のボールペンやマーキングペン、万年筆等の形態で使用できる。
例えば、繊維ペン体、フェルトペン体、プラスチックペン体、万年筆型金属ペン体等のマーキングペンチップや、ボールペンチップをペン先として軸筒前方の筆記先端部に装着し、軸筒内部に筆記先端部と接続状態に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体に、インキカートリッジ内のインキを誘導し、該インキを筆記先端部に供給する構造、筆記先端部後方に櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させ、該インキ流量調節部材の後方にインキカートリッジを取り付ける構造、軸筒内部の筆記先端部とインキカートリッジとの間に弁機構を設け、前記筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペン(サインペン、フェルトペン、筆ペン等)、ボールペン、万年筆が挙げられる。
【0018】
尚、前記筆記具に設けられる槍体は、インキカートリッジを取り付けた際に栓体を押圧開放できる形状、構造であればどのようなものであってもよく、例えば、栓体の特定位置を押圧するための突起片や、球状栓体の略中心を押圧するための円柱や円筒部等が適用できる。前記槍体の形状に応じて蓋体の孔部は形成されており、カートリッジ開口部内の一定位置で槍体が保持される。
【0019】
また、前記カートリッジ式筆記具は、前述の蓋体を取り付けたインキカートリッジを筆記具内に交換可能(取出可能)に収容する構造を有しており、例えば、筆記具本体後方に着脱可能な軸筒や尾栓を備えたものが適用できる。
前記筆記具では、使用状態と同等の形状(通常寸法)で蓋付インキカートリッジが収容され、筆記具販売時にインキがペン先に供給されていない状態での陳列が可能となる。よって、筆記具と別体のカートリッジをセリース内に並列配置する等の必要がなくなるため、小スペース化が可能となる。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例を以下の図面に従って説明する。
図1は本発明の第一の形態の筆記具用インキカートリッジを表す断面図であり、図2図1の蓋体の断面図及び外観説明図であり、図3図1の筆記具用インキカートリッジを収容したマーキングペンを表す断面図である。また、図4は第二の形態の筆記具用インキカートリッジに適用される蓋体の断面図及び外観説明図である。
【0021】
実施例1(図1乃至3参照)
筆記具用インキカートリッジ1は、上端を開口し下端が閉鎖された有底円筒状体であり、合成樹脂(具体的にはポリエチレン樹脂)の射出成形またはブロー成形により得られる容器2の上方開口部分の内側壁面に栓体3が嵌着され、更に上方に蓋体5が冠着されている。また、前記容器2内部は、栓体3上方を筆記具嵌合用の空間部23とし、栓体3下方を水性インキ4が直接収容されるインキ収容部21(内径5.5mm)として適用される略円筒有底体であり、インキ収容部21内周には、軸方向に三本のリブ22が等間隔に延設される。尚、栓体3を固定する位置には、容器内壁面に環状突部を設けることができ、栓体3をより確実に嵌着保持することも可能である。
【0022】
前記栓体3はポリエチレン樹脂成形物からなる円盤状物(外径5.8mm)であり、径方向の弾性を有するように薄肉状に形成される。これにより、カートリッジ組立時に容器2内に圧入することで所望の位置で保持できるとともに、槍体74による押圧開放が可能となる。
【0023】
前記蓋体5は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)の射出成形により得られる成形物であり、カートリッジの栓体3が容器開口部方向に移動することを抑制するものである。また、前記蓋体5には、槍体74が貫通可能な孔部51が形成されており、蓋体5が付いたカートリッジを筆記具内に収容した際、槍体74が前記孔部51を介して容器2上方(開口部近傍)の空間部23に配置できるものである。そのため、軸方向に余分な距離(空間)を必要とすることなくカートリッジを収容できる。
前記蓋体5は、容器2の開口を外側から被覆するように開口近傍の外壁面を挟持する環状の挟着部52と、前記挟着部52の略中心から軸方向に延設される脚部53とを一体に成形したものであり、前記挟着部52には槍体74の横断面よりも大きい形状の孔部51が形成されている。前記孔部51、挟着部52、脚部53が一体成形されるため、製造が容易且つ安価なものとなる。
【0024】
前記挟着部52には、容器2が軸方向への若干の移動(遊び)が可能となるようにテーパー部を形成することができる。これにより各部材の成形ばらつきを吸収できるため、前記効果をより確実に発現できる。
【0025】
前記脚部53は、挟着部52から軸方向に延設される端部が栓体3の中心近傍と接触する円筒部材である。本実施例では、挟着部52となる環状部材の内壁の一部分から径方向に延設される薄板を介して軸方向に延設されているため、薄板の撓みを利用した微動が可能である。これにより各部材の成形ばらつきを吸収できる。
【0026】
筆記具(図3参照)
前記蓋体5を取り付けた筆記具用インキカートリッジ1を収容した筆記具6を図3により説明する。尚、筆記具6はキャップ式マーキングペンであるが、図3はキャップを外した状態の図面である。
【0027】
前記筆記具6は、ペン体76とペン芯75とカートリッジ接続部73を備えた前軸7に、カートリッジ1を収納する後軸8が螺合されることで構成されるマーキングペンである。
前記ペン体76は、蓋体5を外したインキカートリッジの接続時に、カートリッジ内のインキを筆記先端に供給するインキ誘導芯と一体に形成されており、合成樹脂製繊維(例えば、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維等)の樹脂加工により得られる棒状体である。尚、筆記先端となる前端は砲弾状に研削され、インキ供給する後端部外周面はテーパー状に面取りされている。
【0028】
前記ペン芯75は、インキ流量調整部材とも呼ばれるものであり、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、前記円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心に前記インキ誘導芯(ペン体76)が配置される。
前記ペン芯の材質としては、多数の円盤体を櫛溝状とした構造に射出成形できる合成樹脂であれば汎用のポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等いずれを用いることもできる。
【0029】
前記前軸7は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)の射出成形により得られる略筒状体である本体71に、ペン芯75及びペン体76を内設しており、ペン体76は樹脂製のホルダー77によって保持されている。
また、前記本体71の後方には、カートリッジ本体2の開口部が接続される円筒状の接続部73と、後軸8が螺合される円筒状の螺合部72が一体成形されている。
更に、前記接続部73の後端には、カートリッジ接続時に栓体3の一部を押圧開放するための槍体74が扇形板状に延設されている。
前記螺合部72、接続部73、槍体74が本体71後方に一体で成形されているため、各パーツを組み立てる必要がなくなり、製造コストを安価にできる。
【0030】
前記前軸7後方の螺合部72には、槍体74がインキカートリッジ1の蓋体孔部51を貫通した状態でインキカートリッジ1を収容する後軸8が螺着される。
前記後軸8は、底部となる一端を封鎖する樹脂製筒状部材であり、開口部内壁に螺着用溝が形成されている。
【0031】
前記槍体74の軸方向の長さ(距離M)と、蓋体5に形成される脚部53の軸方向の長さ(距離L)は、L>Mとなるように設定されている。そのため、前記カートリッジ収容状態の筆記具6が落下等による衝撃を受けた際、カートリッジ1が軸方向に激しく移動した場合であっても槍体74の後端が栓体3と接触することを抑制できるため、軸筒内での不用意なインキ漏れを確実に防止できる。その際、蓋体5に孔部51が形成されるために後軸8内の空間(軸方向のスペース)を余分に設ける必要がなくなり、軸筒内でのカートリッジ1の移動距離が小さくすむことからも前記不具合が発生し難いものとなっている。
【0032】
前記図3の筆記具6は保管時の形態であり、使用時には、後軸8を外して収容するカートリッジ1を取り出した後、容器2開口部から蓋体5を取り外す。その後、容器2の空間部23内に槍体74及び接続部73を挿入するようにカートリッジが嵌入接続されることで、槍体74により栓体縁部が押圧され栓体3が開放してインキ4がペン体76(インキ誘導芯)に供給される。最後に後軸8を再び螺合部72に螺着することで筆記状態となる。
【0033】
実施例2(図4参照)
本実施例の筆記具用インキカートリッジ1は、上方に嵌着される蓋体5以外は実施例1と同様の形態で構成されているため、図4では蓋体5の縦断面図(a)と上方視認図(b)のみを示す。
【0034】
前記蓋体5は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)の射出成形により得られる成形物であり、カートリッジの栓体3が容器開口部方向に移動することを抑制するものである。また、前記蓋体5には、槍体74が貫通可能な切欠状の孔部51が略円筒の対向する二カ所に形成されており、蓋体5が付いたカートリッジ1を筆記具内に収容した際、槍体74が前記孔部51を介して容器2上方(開口部近傍)の空間部23に配置できるものである。そのため、軸方向に余分な距離(空間)を必要とすることなくカートリッジ1を収容できる。
前記蓋体5は、容器2の開口部を外側から部分被覆するように、開口部近傍の対向する外壁面を挟持するR状(上面扇形状)対称形の挟着部52と、前記挟着部52間の略中心から延設される脚部53とを一体に成形したものである。そのため、R状挟持部が形成されていない部分は、槍体74の横断面よりも大きい切り欠き形状(孔部51)として形成されている。前記挟着部52と脚部53が一体成形されるため、製造が容易且つ安価なものとなる。
【0035】
前記脚部53は、対向するR状の挟着部52を繋ぐように設けられる薄板の略中心から軸方向下向きに延設される円筒部材であり、下端が栓体3の中心近傍と接触するように形成されている。そのため、挟着部52を容器2開口部に装着することで、栓体3の開口部方向への移動を抑制することが可能となり、落下衝撃等による不用意なインキ漏れを防止できる。
【0036】
前記蓋体5を装着した筆記具用インキカートリッジ1を、実施例1と同様の筆記具6に収容した場合、槍体74が前記切欠状の孔部51を介して容器2上方(開口部近傍)の空間部23に配置できるため、後軸後方に余分な距離(空間)を必要とすることなく、前軸7と後軸8を螺着してカートリッジ1を筆記具内に収容できる。
尚、使用時には、前軸7から後軸8を外して収容するカートリッジ1を取り出した後、容器2開口部から蓋体5を取り外し、容器2の空間部23内に槍体74及び接続部73を挿入するようにカートリッジを嵌入接続することで、槍体74により栓体縁部が押圧され栓体3が開放してインキ4がペン体76(インキ誘導芯)に供給される。最後に後軸8を再び螺合部72に螺着することで筆記状態となる。
【符号の説明】
【0037】
1 筆記具用インキカートリッジ
2 容器
21 インキ収容部
22 リブ
23 空間部
3 栓体
4 水性インキ
5 蓋体
51 孔部
52 挟着部
53 脚部
6 筆記具
7 前軸
71 前軸本体
72 螺合部
73 接続部
74 槍体
75 インキ流量調整部材
76 ペン体
77 ホルダー
8 後軸
図1
図2
図3
図4