(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1による排気消音装置では、消音効果が十分とはいえない。特に、排気ガスの流速が大きい高回転時では、流動抵抗が大きく出力低下を招く一方で、満足のいく消音効果が得られない。
【0005】
本発明の目的は低回転ないし中回転時にはもちろん、排気ガスの流速が大きい高回転時でも出力低下を招くことなく、大きな消音効果が得られる排気消音装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る排気消音装置は、一方側から導入された排気
ガスを消音して他方側へ排出する排気消音装置であって、前記他方側から一方側にかけて
、第1室、第2室および第3室が順に並んで配置された消音室形成部と、前記消音室形成
部の外側に一端部が開口し、前記一端部から他端部に延びるにつれて前記
第3室および第
2室を順に通過して、他端部が前記第1室に開放される入口パイプと、一端部が第2室に
開放され、一端部から他端部に延びるにつれて前記第1室を通過して、前記消音室形成部
の外側に他端部が開口する出口パイプと、前記第1室と第2室とを連通する第1連通路と
、前記第2室と第3室とを連通する第2連通路とを備え、前記入口パイプのうち前記第3
室に臨む周壁部分に、入口パイプ内の空間と第3室とを連通する導出孔が形成されている
。
【0007】
この構成によれば、入口パイプの一端部から導入された排気ガスの大部分は、入口パイプをパイプ長手方向に進んで他端部から第1室に導入される。入口パイプの一端部から導入された排気ガスの一部は、第3室に導入される。パイプ周壁の導出孔は、パイプ長手方向に対して交差する方向に開口するので、第3室に導入される排気ガスは、第1室に導出される排気ガスに比べて少ない。エンジンの低回転時には入口パイプ内の圧力が低いために導出孔から導出される排気ガスが少ないのに対し、入口パイプは第3室および第2室を通過して第1室まで長く延びているから、排気ガスの多くが長い入口パイプを通って第1室に導かれることで、高い消音効果を得ることができる。エンジンの高回転時には入口パイプ内の圧力が高くなり、第3室に導かれる排気ガスの量が増えるので、入口パイプを通過した多量の排気ガスが第1室に詰まることを防いで、排気通路の抵抗増大による出力低下を抑えることができる。
【0008】
本発明において、前記第2連通路は、入口端が第3室に位置するパイプにより形成されて、前記入口端が前記導出孔よりも前記一方側に位置することが好ましい。この構成によれば、導出孔から第3室に入った排気ガスが第2室に移動する際に、入口パイプの排気方向上流側に向きを変える必要があり、入口パイプから第3室を経由して第2室へ移動する排気ガスの移動経路を長くして、消音効果を高めることができる。
【0009】
本発明において、前記第1連通路と第2連通路における出口端の少なくとも一部同士が互いに対向することが好ましい。この構成によれば、第1室からの排気ガスと第3室からの排気ガスとが衝突してエネルギーを失うので、消音効果が向上する。
【0010】
本発明において、前記入口パイプのうち、導出孔が形成される前記導出孔形成部分よりも一端部寄りの部分に、排気ガスをパイプ長手方向に沿って流すように整流する整流構造体が設けられていることが好ましい。この構成によれば、整流された排気ガスが導出孔形成部分に導かれるので、導出孔から第3室に導かれる排気ガスが過度になるのを防ぐことができる。たとえば、整流構造体をハニカム構造またはパイプ状の触媒で兼用することにより、部品点数を削減できる。
【0011】
本発明において、さらに、前記入口パイプは、前記一端部の横断面積よりも、導出孔が形成される導出孔形成部分の横断面積が小さく設定され、前記導出孔形成部分よりも一端部寄りの部分には、排気ガスがパイプ長手方向に沿って流れる流速を高める絞り部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、排気ガスの流速を速めることで、導出孔から第3室に導かれる排気ガスが過度になるのを防止することができる。
【0012】
本発明において、前記消音室形成部を構成する本体ケースの前記一方側から他方側に延びる軸心に対して、前記入口パイプが偏位して配置され、前記入口パイプのうち、本体ケースに近接する対向部分を除いた部分に前記導出孔が形成されていることが好ましい。この構成によれば、導出孔から第3室に排出された排気ガスが、本体ケースにおける入口パイプに近接する近接部分に勢いよく衝突することが防がれる。これにより、この近接部分の局所的な温度上昇が抑制される。また、例えば本体ケースの内面に吸音材が装着されている場合、この吸音材が排気ガスの衝突による熱影響によって局所的に損傷するのも防止できる。
【0013】
本発明にかかる車両は、本発明の排気消音装置を備えており、前記排気消音装置は前記消音室形成部を構成する筒型の本体ケースを有し、前記入口パイプが、前記本体ケースにおける車体に対向した一側部に近接している。この構成によれば、車体内側に比べて車体外側の温度が比較的低くなって、ライダーの足元への熱影響が軽減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低回転時には入口パイプ内の圧力が低く、排気ガスの多くが長い入口パイプを通って第1室に導かれることで、高い消音効果を得ることができる。高回転時には入口パイプ内の圧力が高くなり、入口パイプの周壁の導出孔から第3室に導かれる排気ガスの量が増えるので、入口パイプを通った多量の排気ガスが第1室に詰まることを防いで、排気通路の抵抗増大による出力低下を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら詳述する。
図1に示す自動二輪車は、車体フレームFRの前半部を構成するメインフレーム1の前端にフロントフォーク2が支持され、このフロントフォーク2の下端に前輪3が支持されている。フロントフォーク2の上端にはハンドル4が取り付けられている。メインフレーム1の後端下部には、スイングアームブラケット5が形成され、このスイングアームブラケット5に、スイングアーム7の前端がピボット軸8を介して上下揺動自在に支持されている。このスイングアーム7の後端には後輪9が支持されている。前記メインフレーム1の後部に連結された左右一対のシートレール10が車体フレームFRの後半部を構成している。前記前輪3と後輪9との間でメインフレーム1の中央下部には複数気筒のエンジンEが支持されており、このエンジンEにより後輪9を駆動する。前記シートレール10の上部の前部にはライダー用シート11が、後部には同乗者用シート12がそれぞれ支持されている。
【0017】
後輪9の両側方には、エンジンEからの排気ガスGを排出する排気管14の後端に接続される排気消音装置(マフラー)15が配置され、この排気消音装置15は同乗者用のフットレスト16を車体フレーム1に支持するブラケット17に、ボルトのような取付具18で取り付けられて、シートレール10に支持されている。
【0018】
排気消音装置15は、平面視で車体の前後方向軸に平行で、かつ側面視で後輪9の前側から後方斜め上方に延びる、細長い筒状である。この排気消音装置15について、
図1のII−II線断面図である
図2および縦断面図である
図3により説明する。
【0019】
図2に示す排気消音装置15は、上流側である一方側(
図2の左側)から導入された排気ガスGを消音して下流側である他方側(
図2の右側)へ排出する装置であって、本体ケース20内に、前記他方側から前記一方側にかけて、第1室21、第2室22および第3室23が順に並んで配置された消音室形成部24を備えている。前記本体ケース20は外周壁20aとその内側の内周壁20bと一端壁20cと他端壁20dとを有し、外周壁20aと内周壁20の間にグラスウールのような吸音材26が充填されている。内周壁20bは多数の貫通した小孔が形成されたパンチングメタルからなる。
【0020】
排気消音装置15は、入口通路を形成する入口パイプ25と、出口通路を形成する出口パイプ27とを有する。入口パイプ25は、一端壁20cを貫通して消音室形成部24の一方側(前端側)に一端部25aが開口し、一端部25aから他端部25bに延びるにつれて第3室23および第2室22を順に通過して、他端部25bが第1室21に開放されている。入口パイプ25は、第2室22を通過する部分には径方向に貫通する貫通孔が形成されていない。ここで、本体ケース20がその軸心C1に合致した長手方向に沿って長く延びているので、入口パイプ25の長さを可及的に長くすることができ、これによって、エンジンの低回転時の消音効果が高まる。
【0021】
出口パイプ27は、一端部27aが第2室22に開放され、一端部27aから他端部27bに延びるにつれて第1室21を通過し、他端壁20dを貫通して消音室形成部24の他方側(後端側)に他端部27bが開口している。出口パイプ27は、第1室21を通過する部分には径方向に貫通する貫通孔が形成されていない。
【0022】
消音室形成部24の第1室21と第2室22は第1の隔壁31によって区画され、第2室22と第3室23は第2の隔壁32によって区画されている。隔壁31,32は内周壁20bに、例えば溶接によって固定されている。さらに、第1室21と第2室22とは第1連通路28により連通され、第2室22と第3室23とは第2連通路29により連通されている。さらに、入口パイプ25のうち第3室23に臨む周壁部分である導出孔形成部分Rに、入口パイプ25内と第3室23とを連通する複数の導出孔30が形成されている。これら導出孔30により、入口パイプ25内の排気ガスGの一部が第3室に導出される。各導出孔30は、入口パイプ25の径方向に向かって開口しており、したがって、入口パイプ25の下流方向の径方向斜め外方に向かって開口する場合と比較して、第3室23での導出量を抑制できる。
【0023】
第3室23は、第1室21および第2室22よりも、長手方向、つまり本体ケース20の軸心C1方向の寸法が大きく設定されている。したがって、導出孔30から第3室23に流入した排気ガスGが、長手方向に移動できる余地が大きくなり、それだけ第2連通路29に入るまでの移動量を大きくして、消音効果を高めることができる。
【0024】
導出孔30は1つでも複数でもよい。この実施形態では、導出孔30は、入口パイプ25における第3室23に入っている部分のうち、下流側の部分に複数設けられており、入口パイプ25内の流れ方向の前後で周方向にずれて並ぶ千鳥配置とされている。導出孔30が円孔である場合、その直径は、入口パイプ25の内径よりも小さく設定されることで、導出孔30から第3室23に入る排気ガスGの導出量が過剰となるのを防止できる。導出孔30が1つである場合、直径20mm以下とするのが好ましい。導出孔30が複数である場合、その数に応じて好ましい直径が小さくなり、この実施形態では3mmである。また、導出孔30は、入口パイプ25の周方向および軸心C2方向に間隔をあけて形成されることで、1つの大きな導出孔が形成される場合に比べて、入口パイプ25の強度低下を抑制できる。
【0025】
入口パイプ25は、入口端25aから出口端25bにかけて直列に連結された第1〜第4の入口パイプ片25c〜25fからなる。第1の入口パイプ片25cは円径断面のパイプを曲げて形成されている。第1の入口パイプ片25cと第3の入口パイプ片25eとの間に触媒コンバータ37が接続されており、この触媒コンバータ37の外周壁が真直な円筒状の第2の入口パイプ25dを形成している。曲がった第3の入口パイプ片25eは、長手方向に沿った分割線で2分割された半体同士を溶接して一体化したものである。真直な円筒状の第4の入口パイプ片25fは、鋼板を筒状に巻き、継ぎ目部位W(
図3、
図4)で継ぎ目溶接(溶接ビード5mm)した巻きパイプからなり、その上流部分に導出孔30が形成されている。このように、入口パイプ25における導出孔形成部分Rは直管状であるから、湾曲管形状の場合に比べて、導出孔30の開口方向である入口パイプ25の径方向に沿った排気速度成分が小さくなるので、導出孔30からの導出量が不測に増大するのを抑制できる。
【0026】
前記触媒コンバータ37は、排気ガスGを酸化して浄化するもので、例えば、セラミック製のハニカム構造体に酸化触媒を担持させている。この触媒コンバータ37の外周壁を第2の入口パイプ片25dとして利用しているので、触媒コンバータを別途パイプ片で覆う場合に比べて、部品点数および材料を低減できるとともに、触媒コンバータ部分を小形化して、第3室23の容積を大きくすることができる。
【0027】
第1連通路28は、
図3に示すように、第1の隔壁31に支持された第1パイプ35により形成され、第2連通路29は、第2の隔壁32に支持された第2パイプ36により形成されている。第1パイプ35の内側の第1連通路28は、入口端28aが第1室21に、出口端28bが第2室22にそれぞれ臨み、入口パイプ25を挟んで上下に一対設けられている。同様に、第2パイプ36の内側の第2連通路29は、入口端29aが第3室23に、出口端29bが第2室22にそれぞれ臨み、入口パイプ25を挟んで上下に一対設けられている。第1パイプ35および第2パイプ36はそれぞれ、第1の隔壁31と第2の隔壁32に貫通して支持されている。第1パイプ35の入口端35aおよび第2パイプ36の入口端36aは、流動抵抗を減少させるために、軸方向外方に向かって滑らかに湾曲しながら拡径している。出口パイプ27の入口端27aも同様の形状となっている。
【0028】
一対の第1連通路28と一対の第2連通路29は、対応する各連通路28,29の軸心C3,C4が合致しており、これによって、第1連通路28の出口端28bと第2連通路29の出口端29bとが互いに対向している。したがって、両連通路28,連通路29からの排気ガスGが衝突してエネルギーを失い、消音が促進される。第1連通路28,第2連通路29同士は完全に対向していなくともよく、少なくとも一部同士が互いに対向していればよい。
【0029】
また、出口パイプ27の入口端27aは両連通路28,29の出口端28b、29bに対して、本体ケース20の軸心C1方向にずれて、この例では前側(一方側)にずれて配置されている。したがって、両連通路28,29の出口端28b、29bから流出した排気ガスGが十分混ざり合ったのち、長い経路を通って出口パイプ27に流入するので、消音効果が向上する。特に、出口パイプ27の入口端27aが第2連通路29の出口端29bよりも前側に位置しているので、出口パイプ27を長くできることから、さらに消音効果が向上する。
【0030】
第2連通路29の入口端29aは、
図2に示す導出孔30よりも上流側である一方側寄り(
図2の左側)に位置するように設定されている。したがって、導出孔30から第3室23内に導出された排気ガスGは一旦入口パイプ25の上流側へ偏向したのち入口端29に流入する。
【0031】
触媒コンバータ37は、排気ガスGの流れ方向に向いた目を持つハニカム構造であり、したがって、排気ガスGをパイプ長手方向に沿って流すように整流する整流構造体しても作用する。この触媒コンバータ37は、パイプ構造であってもよく、やはり整流作用を発揮する。入口パイプ25における導出孔形成部分Rよりも上流側に触媒コンバータ37が配置されているので、すべての排気ガスGを浄化できるとともに、導出孔30を通過して低温となる前の高温の排気ガスGと接触させることで、触媒の活性を高めることができる。
【0032】
入口パイプ25は、上流側である一端部(
図2の左端)の横断面積(通路面積)よりも導出孔30が形成される導出孔形成部分Rの横断面積(通路面積)が小さくなるように設定され、前記導出孔形成部分Rよりも一端部寄りの第3の入口パイプ片25eには、通路を絞って排気ガスGがパイプ長手方向に沿って流れる流速を高める絞り部38が形成されている。
【0033】
図2に示すように、入口パイプ25は、消音室形成部24を構成する本体ケース20の周壁における車体内側寄りである一側部20eに近接している。つまり、本体ケース20の長手方向の軸心C1に対して、入口パイプ25の長手方向の軸心C2が車体内側寄りに位置するように、入口パイプ25が偏位して配置されている。これに対し、出口パイプ27の入口側である前部27cは、入口パイプ25よりも本体ケース20の他側部20f側に偏位して配置されている。出口パイプ27の後部27dは本体ケースの一側部20eと他側部20fの中間に位置しており、前部27cと後部27dの間は滑らかに曲がった中間部27eにより形成されている。出口パイプ27の全体は、
図3から明らかなように、入口パイプ25と同一の上下方向位置にあり、したがって、側方から見て、入口パイプ20の第4パイプ片20fと重合している。
【0034】
入口パイプ25および出口パイプ27から、本体ケース20の一側部20eと他側部20fを通る第1横方向(車体の左右方向)T1に対し、前記第1パイプ35および第2パイプ36は、第1横方向T1と本体ケース20の軸心C1方向とに直交する、
図3に示す第2横方向T2に離間して、入口パイプ25および出口パイプ27の両側に一対ずつ配置されている。
【0035】
本体ケース20は、一方側から他方側に延びるにつれて、つまり長手方向下流側に向かって、次第に拡幅するテーパ状となっている。したがって、本体ケース20の長手方向下流にある第1室21の長手方向寸法を抑制しながら、第1室21の容積を大きくして、消音効果を高くできる。
図2のIV−IV線断面図である
図4に示すように、本体ケース20はほぼ五角形の横断面形状を有する角筒形である。本体ケース20の軸心C1に対し、入口パイプ25の軸心C2は前述のとおり、車体に対向したケース一側部(
図4の左側部)20e寄りに偏位し、第2連通路29の軸心C4はケース他側部(
図4の右側部)20f寄りに偏位して、入口パイプ25の斜め上方と斜め下方に位置している。軸心C2は軸心C1と同一の高さにあり、五角形の中心線CC上にある。この中心線CCは、本体ケース20の一側部20eと他側部20fを通る第1横方向T1に合致している。導出孔30は入口パイプ片25fの溶接ビードが形成された継ぎ目部位Wから離間した部分、つまり入口パイプ片25fのうち、本体ケース20に近接する対向部分を除いた部分に形成されている。
【0036】
図2のV−V線断面図である
図5に示すように、本体ケース20の軸心C1に対して、第1連通路28の軸心C3は若干、ケース他側部20f寄りに偏位して、入口パイプ25の斜め上方と斜め下方に位置している、出口パイプ27の軸心C5は第1連通路28よりもさらにケース他側部20f寄りに偏位し、入口パイプ25と同一高さに位置している。つまり、軸心C5は五角形断面の中心線CC上に位置している。
【0037】
本体ケース20の他端壁20dを出口パイプ27の後部が貫通して支持されている。出口パイプ27の27bの軸心C5は本体ケース20の軸心C1よりも若干、車体内側寄りに偏位し、かつ五角形断面の中心線CC上に位置している。
【0038】
このように、排気消音装置15は、その内部構造が、第1横方向T1から見た
図3に示されたとおり、軸心C1を挟んで、上下対称である。したがって、この消音装置15を
図1の車体の左右両側に配置する場合、一方の排気消音装置15と同一構造のものを上下逆にして他方の排気消音装置とすることができるので、部品点数を削減できる。
【0039】
つぎに、排気消音装置15の作用について説明する。
図1のエンジンEから排気管14を経由して排気消音装置15に排気ガスGが導入される。
図2に示す入口パイプ25の一端部25aから導入された排気ガスGの大部分は、入口パイプ25をパイプ長手方向に進んで他端部25bから第1室21に導入される。入口パイプ25の一端部25aから導入された排気ガスGの一部は導出孔30を通って第3室23に導入される。パイプ周壁の導出孔30は、パイプ長手方向に対して交差する方向に開口しているので、導出孔30から第3室23に導入される排気ガスGは、第1室21に導出される排気ガスGに比べて少ない。第1室21に入った排気ガスGは、矢印P1で示すように、第1連通路28を通って、第2室22に導入される。
【0040】
低回転時には、入口パイプ25内の圧力が低いので、導出孔30から第3室23に導出される排気ガスGの量は少なく、排気ガスGの多くが入口パイプ25を通って第1室21に導かれる。ここで、入口パイプ25は第3室23および第2室22を通過して第1室21まで長く延びているから、入口パイプ25内で高い消音効果が得られる。高回転時には、入口パイプ25内の圧力が高くなり、導出孔30から第3室23に導かれる排気ガスGの量が増大する。これにより、入口パイプ25を通って第1室21内に入った多量の排気ガスGが第1室21内で詰まることを防いで、排気通路の抵抗の増大による出力低下を抑えることができる。入口パイプ25の長さの適切な設定等により、エンジンの低回転時には、第1室21を共鳴室として機能させることにより、消音効果をさらに向上させることができる。
【0041】
第2連通路29は、入口端29aが第3室23に位置する第1パイプ35により形成されて、入口端29aが導出孔30よりも一方側に位置するので、導出孔30から出た排気ガスGは、第3室23において矢印P2のように、流れの向きが入口パイプ25の排気方向上流側に大きく偏向されて第2連通路29に入るので、排気ガスGの移動経路が長くなって消音効果が大きくなる。
【0042】
また、
図3に示したように、第1連通路28の出口端28bと第2連通路29の出口端29bとが互いに対向しているので、第1連通路28の出口端28bから矢印P3で示すように排出された排気ガスGと、第2連通路29の出口端29bから矢印P4で示すように排出された排気ガスGとは、第2室22で衝突して、その排気エネルギーを失ったのち、出口パイプ27を経て大気に放出される。これにより、消音効果が向上する
【0043】
また、触媒コンバータ37により整流された排気ガスGが導出孔形成部分Rに導かれるので、排気ガスGが入口パイプ25の導出孔30から第3室23に過度に導出されるのを防ぐことができる。しかも触媒コンバータ37が整流構造体を兼ねているので、部品点数を削減できる。触媒コンバータ37を備えない比較例に対して、触媒コンバータ37を備えた本発明の実施形態の場合には、加速走行時の騒音が0.5dB低減した。
【0044】
図2に示す入口パイプ25は、一端部25aの横断面積(通路面積)よりも、導出孔30が形成される導出孔形成部分Rの横断面積(通路面積)が小さく設定され、導出孔形成部分Rよりも一端部寄りの部分には、排気ガスGがパイプ長手方向に沿って流れる流速を高める絞り部38が形成されているので、導出孔形成部分Rを通る排気ガスGの流速を速めることで、排気ガスGが入口パイプ25から第3室23に過度に導出されるのをさらに効果的に防ぐことができる。
【0045】
図2に示したように、消音室形成部24を構成する本体ケース20の軸心C1に対して、入口パイプ25の軸心C2が車体内側に偏位して配置され、前記入口パイプ25のうち、本体ケース25の車体内側に位置するケース一側部20eに対向する
図4の対向部分Wが本体ケース25に近接する。ここで、この対向部分Wを除いた部分に導出孔30が形成されているので、導出孔30から第3室23に排出された排気ガスGが、第1パイプ35に最も近接する、本体ケース20の近接部分20gに勢いよく衝突することが防がれ、この近接部分20gの局所的な温度上昇が抑制される。また、本体ケース20の内面に吸音材26が装着されている場合、この吸音材26が排気ガスGの衝突による熱影響により局所的に損傷するのも防止できる。さらに、対向部位Wは、前述のとおり、溶接された継ぎ目部位であるから、この継ぎ目部位Wを除く部分に導出孔30が形成されることで、入口パイプ25の強度低下を防ぐことができる。
【0046】
さらに、入口パイプ25が、
図2に示す本体ケース20における車体に対向したケース一側部20eに近接しているので、車体内側に比べて車体外側の温度が比較的低くなって、ライダーの足元への熱的影響が軽減される。
【0047】
また、
図3から明らかなように、本体ケース20の軸心C1付近に位置する入口パイプ25および出口パイプ27に対し、その両側に第1パイプ35および第2パイプ36が一対ずつ配置されているから、本体ケース20内に各パイプ25,27,35,36をバランスよく配置して、本体ケース20内、つまり消音室形成部24内のスペースを有効利用できる。
【0048】
本発明は、自動二輪車のほか、四輪バギー、不整地走行車など、内燃機関であるエンジンを搭載する種々の車両の排気消音装置に適用できる。本発明の排気消音装置は、特に、エンジンが高速回転する自動二輪車に好適に用いられる。また、上記実施形態では、
図1の排気消音装置15を後輪9の両側に配置したが、これに限定されず、後輪9の一側方のみ、または上方に配置する場合や、エンジンEの下方に配置する場合、エンジンEと後輪の間に配置する場合も、本発明を適用できる。
【0049】
さらに、上記実施形態では、
図2の排気消音装置15の本体ケース20は、上流端部である一端壁20cから下流端部である他端壁20dへと、後方に延びているが、これに限定されない。例えば、エンジンの下方に配置される場合、上流端部から下流端部へと、車幅方向に延びる形状であってもよい。また、第1室21〜第3室23の間に、他の室が介在してもよい。
【0050】
また、分離した複数の排気消音装置が設けられる場合、少なくとも1つの排気消音装置に本発明を適用してもよい。例えば、
図1の後輪9の前端部よりも前方に第1の排気消音装置が配置され、その後方に第2の排気消音装置が配置される場合、第1と第2のいずれか一方のみ、または両方に本発明を適用することができる。
【0051】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲から定まるこの発明の範囲内のものと解釈される。