(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
LEDチップが収容されるための上方に開口した凹部が形成された支持部材と、この支持部材に支持された一対のリード部材と、を備え、前記一対のリード部材が、互いに離間領域を隔てて前記凹部の底面に配設されて、それぞれが当該凹部から前記支持部材の外側に延出している支持部材付きのLED用リードフレームであって、
前記支持部材は、絶縁材料からなる基体と、前記凹部の表面において前記離間領域を除く領域に形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる膜厚50nm以上の反射膜と、を備え、
前記リード部材は、銅または銅合金からなる基板と、前記凹部の内側において前記基板上に形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる膜厚50nm以上500nm以下の反射膜と、この反射膜上に形成されたPd,Au,Ptから選択される1種以上からなる膜厚5nm以上50nm以下の貴金属膜と、を備えることを特徴とするLED用リードフレーム。
前記基板と前記反射膜との間に、膜厚0.5μm以上のNiめっき膜または膜厚0.1μm以上のAgめっき膜をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたLED用リードフレーム。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るLED用リードフレームは、光源としてLEDチップを搭載してワイヤボンディングにより接続される発光装置を構成するための部品であり、発光装置の形状および形態、ならびにLEDチップの搭載形態、製品としてユーザに提供する形態等に応じて、所要の形状および形態に構成される。以下、本発明のLED用リードフレームについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るLED用リードフレーム(以下、リードフレーム)について、
図1を主に参照して説明する。本発明に係るリードフレーム1は、発光装置の光源であるLEDチップ(
図2、
図3参照)を発光させる駆動電流を供給するための配線であり、かつ、前記LEDチップの発光した光を反射させる反射板である。リードフレーム1は、ここでは
図2および
図3に示すように、発光装置の正極・負極の一対のリード部材1a,1cとして組み立てられて使用される。
【0028】
図1(a)に示す第1実施形態に係るリードフレーム1は、基板11と、基板11の少なくとも一方の面に形成された反射膜13と、さらにその上に形成された貴金属膜14と、を備える。反射膜13および貴金属膜14は、基板11のLEDチップが搭載される側の面になる上面(以下、適宜表面という)のみに形成されていてもよいし、基板11の下面(裏面)を含めた両面に形成されていてもよく、さらには、基板11の表面の一部の領域、例えば発光装置に組み立てられたときにLEDチップの発光した光が入射する領域のみに形成されていてもよい。例えば、
図3に示すように発光装置のリード部材1a,1cとして使用される場合は、リードフレーム1は、帯状に成形され、LEDチップ搭載部22の底面に配設される領域(インナーリード部、
図2(b)参照)の上面側に反射膜13および貴金属膜14が形成されていればよい。また、リードフレーム1において、発光装置に組み立てられたときにリード部材1a,1cの外側に延出される領域(アウターリード部、
図2(b)参照)のような、外部の配線基板等にはんだで接続される領域においては、反射膜13および貴金属膜14は形成されていてもよいし、形成されずに基板11が露出していてもよいが、反射膜13が表面に露出しないように、すなわち反射膜13のみが形成されることがないようにする。リードフレーム1は、これら以外の領域においては、基板11が露出していてもよいし、反射膜13、貴金属膜14の2層またはいずれか1層のみが形成されていてもよい。次に、第1実施形態に係るリードフレームを構成する要素について、詳細に説明する。
【0029】
(基板)
基板11は、銅(Cu)またはCu合金からなり、リードフレーム1の形状に成形される。Cu合金としては、Cuを主成分とし、Ni,Si,Fe,Zn,Sn,Mg,P,Cr,Mn,Zr,Ti,Sb等の元素の1種または2種以上を含有する合金、例えばCu−Fe−P系銅合金を用いることができる。基板11は、その板厚について特に限定されないが、形状と同様に、発光装置の形状および形態等に応じて決定され、圧延等により、この所要の厚さの素板(圧延板)とし、これをプレス加工やエッチング加工等により所要の形状に成形することによって製造することができる。
【0030】
さらに、基板11は、硝酸を主成分とする強酸の混合液(キリンス酸)等の酸による表面のエッチングを行ったり、コイニングにより基板11の表面の凹凸を潰しておくことにより、表面が平滑化されていることが好ましい。前記したように、基板11はCuまたはCu合金からなる圧延板を成形加工して製造されるが、圧延面に形成された酸化皮膜や、この酸化皮膜が脱落して圧延により埋め込まれた酸化物を除去するために、圧延後の研磨工程が必須である。この工程により研磨痕が表面に残るため、研磨工程後においては基板11表面が粗くなる。ここで、リードフレーム1の表面の凹凸が激しい(高い突起や深い谷が多い)と、そのような表面に入射した光は拡散反射による反射が多くなって正反射率が減少する。リードフレーム1において、表面の正反射率が低く、拡散反射による反射が多いと、発光装置としたときに光の取出し効率が低下する。反射膜13の表面性状はその下地の表面形状が保持され易く、さらに最表面の貴金属膜14は極めて薄いため、基板11の表面粗さがリードフレーム1の表面粗さと略一致する。そのため、反射膜13の形成前において、基板11はできるだけ表面を平滑化しておくことが好ましい。
【0031】
(反射膜)
本発明に係るリードフレーム1において、反射膜13は、発光装置としたときにLEDチップから照射される光を反射する役割を有し、反射率の高いアルミニウム(Al)で形成される。Alは、熱による凝集が生じ難く、またCuが熱拡散し難いため、基板11からCuが拡散して変色することがない。さらにAlは、大気中等の酸化雰囲気で表面に自然酸化膜(不働態皮膜)を形成することで、発光装置として十分な耐硫化性および耐ハロゲン性を有する。反射膜13の成分はAl単体に限定されず、工業上の純Al(1000系Al)、さらにAlの高反射率が保持されればAl合金で形成されてもよい。例えば、Al−Gd合金であれば耐アルカリ性の高い反射膜となる。このような反射膜13は、当該反射膜13の成分すなわちAlまたはAl合金で形成された蒸発源を用いて物理蒸着法にて成膜することができる(後記の製造方法にて詳細に説明する)。
【0032】
反射膜13は、発光装置としたときにLEDチップから照射される光を透過させずに反射させるために、膜厚は50nm以上とする。一方、反射膜13は、膜厚が500nmを超えて厚く設けられても、反射率のさらなる向上の効果が飽和し、また、成膜時間が長くなって生産上好ましくないため、膜厚は500nm以下とすることが好ましい。
【0033】
ここで、反射膜13は、AlまたはAl合金で形成されているため、前記したように大気等に曝されると、表面に膜厚10nm程度、少なくとも5nm程度の自然酸化膜が形成される。酸化アルミニウムはワイヤボンディングにおけるワイヤとの圧着性やはんだ付け性が低いため、反射膜13が最表面に設けられたリードフレームでは、LEDチップとの間や外部の配線基板等との間で接続不良を生じる虞がある。さらに、酸化アルミニウム膜は、Cuの酸化膜等と異なり、一般的なはんだに添加されるフラックスでは除去され難い。なお、はんだ付け性が高いとは、はんだの溶滴に接触した部分で溶融してはんだと合金化することと、はんだの溶滴の濡れ性が高いことを指し、酸化アルミニウムははんだと合金化せず濡れ性も低い。そこでリードフレーム1は、反射膜13上すなわち最表面に、ワイヤとの圧着性およびはんだ付け性に優れた貴金属膜14を備えることにより、ワイヤボンディング性およびはんだ付け性が付与される。また、反射膜13は、表面に酸化膜が形成された状態では貴金属膜14との密着性が低く、貴金属膜14が剥離して圧着したワイヤごと離脱する虞がある。さらに、貴金属膜14は薄いので、リードフレームのはんだ付けにおいて、はんだの溶滴に接触して表面が溶融すると、その下の酸化膜が露出することになり、貴金属膜14が設けられない場合と同様に、はんだの濡れ性が低下する。そのため、反射膜13と貴金属膜14の界面における酸化膜(貴金属膜14が形成される前の反射膜13表面の酸化膜)は、膜厚5nm未満とする。詳しくは後記の製造方法にて説明するが、貴金属膜14の形成前において、反射膜13表面に酸化膜が形成されていない(除去されている)ようにする。
【0034】
(貴金属膜)
貴金属膜14は、反射膜13上の、リードフレーム1の最表面に設けられ、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)から選択される1種以上からなる金属または合金で形成される。貴金属膜14は、リードフレーム1がLEDチップを搭載されて発光装置に組み立てられる際のワイヤボンディング性、および組み立てられた発光装置を配線基板等に実装する際のはんだ付け性を付与する。すなわちPd,Au,Ptは、Au等からなるワイヤの圧着性がよく、またはんだ付け性(はんだとの合金化容易性、はんだの濡れ性)も十分有し、極めて薄い膜であっても十分なワイヤボンディング性およびはんだ付け性が得られる。また、Pd,Au,Ptは、その表面に不動態皮膜を形成しないにも関わらず耐食性に優れているので、リードフレーム1の配線としての導電性を低下させることがなく、また反射率が比較的高いので、リードフレーム1の反射率が反射膜13のAlが有する高反射率から大きく低下することがない。
【0035】
貴金属膜14は、リードフレーム1に十分なワイヤボンディング性およびはんだ付け性を付与するために、膜厚は5nm以上とする。一方、貴金属膜14は、反射率がAl(反射膜13)よりは低いために、膜厚が厚過ぎるとリードフレーム1の反射率が低下する。また、貴金属膜14は材料のコストが高いため、厚くするとリードフレーム1のコストが高くなる。したがって、貴金属膜14の膜厚は50nm以下とする。このように、貴金属膜14は膜厚が比較的薄くかつ均一に形成されることから、スパッタリング法のような膜厚の制御の容易な物理蒸着法にて、当該貴金属膜14の成分すなわちPd,Au,Ptから選択される1種以上で形成された蒸発源を用いて成膜することが好ましい(後記の製造方法にて詳細に説明する)。なお、スパッタリング法でPd,Au,Ptがこのような薄い膜に成膜された場合、貴金属膜14はピンホールを有する膜になり易いが、ワイヤボンディング性やはんだ付け性への影響はなく、またピンホールを介して反射膜13の表面(界面)における間隙に不働態皮膜が形成されても、貴金属膜14の密着性が劣化することはない。
【0036】
本発明の別の実施形態として、反射膜の下にNiめっき膜またはAgめっき膜をさらに形成してもよい。すなわち、
図1(b)に示す第1実施形態の変形例に係るリードフレーム1Bは、基板11と、基板11の少なくとも一方の面に形成された下地めっき膜(Niめっき膜、Agめっき膜)12と、その上に形成された反射膜13と、さらにその上に形成された貴金属膜14と、を備える。下地めっき膜12についても、反射膜13および貴金属膜14と同様に、少なくとも発光装置に組み立てられたときにLEDチップの発光した光が入射する領域のみに形成されていればよく、上面や両面の全体に形成されていてもよい。また、Ni膜やAg膜ははんだ付け性がよく、すなわち下地めっき膜12ははんだ付け性が良好であるため、アウターリード部に形成された場合に、その上に反射膜13および貴金属膜14を形成せずに露出させてもよい。したがって、リードフレーム1Bは、例えば
図4(c)に示すように、基板11の全面(表面、裏面、端面)に下地めっき膜12が形成され、上面(表面)にのみ反射膜13および貴金属膜14(図中、13/14として1層で表す)が形成されていてもよい。基板11、反射膜13、および貴金属膜14は、それぞれ
図1(a)に示すリードフレーム1と同じであるため、同じ符号を付し説明を省略する。以下、下地めっき膜12について説明する。
【0037】
(下地めっき膜)
リードフレーム1Bにおいて、下地めっき膜12は基板11の表面に形成されて反射膜13の下地として設けられる。前記した通り、物理蒸着法にて成膜された反射膜13はその下地の表面性状が保持され易く、すなわち基板11に直接に反射膜13が設けられると基板11の表面形状が保持され、そのままリードフレーム1の表面性状となる。そこで、本変形例においては、当該基板11の表面の凹凸を埋めて平滑な表面を形成するめっき膜を、CuまたはCu合金からなる基板11表面への成膜が容易で比較的反射率の高い金属で形成して、反射膜13の下地とする。このような金属として、ニッケル(Ni)、Ag、Cu、クロム(Cr)、すず(Sn)を適用することができ、特にNi,Agが好ましい。基板11の表面粗さにも影響されるが、当該下地めっき膜12の表面を十分に平滑にするために、膜厚は、Niめっき膜の場合は0.5μm以上、Agめっき膜の場合は0.1μm以上とすることが好ましい。下地めっき膜12の膜厚の上限は規定しないが、膜厚が過剰に厚くても表面の平滑化の効果が飽和し、また不必要に厚く形成されると生産性が低下し、さらにAgめっき膜についてはコストが増大するため、Niめっき膜、Agめっき膜のいずれの場合も8μm以下とすることが好ましい。
【0038】
Niめっき膜は、平滑な表面を形成するめっき膜であれば、成分はNi単体に限定されず、例えば、Ni−Co合金、Ni−P合金、Ni−Fe合金等のNi合金で形成されるめっき膜であってもよく、また、電気めっき等の公知のめっき方法で形成することができる。さらに、光沢Niめっき膜であれば、基板11の表面粗さに対していっそう平滑な表面を形成することができるため、好ましい。
【0039】
Agめっき膜は、平滑な表面を形成するめっき膜であれば、成分はAg単体(純Ag)に限定されず、例えば、Ag−Au合金やAg−Pd合金のような貴金属との合金、あるいはAg−Bi合金等のAg合金で形成されるめっき膜であってもよい。また、Agめっき膜は、公知のめっき方法で形成される無光沢Agめっき、半光沢Agめっき、光沢Agめっきのいずれであってもよいが、発光装置としたときにLEDチップから照射された光を高効率で外部へ出射するためには光沢Agめっきが最も好ましい。
【0040】
Cu,Cr,Snで下地めっき膜12を形成する場合も、平滑な表面を形成するめっき膜であれば公知のめっき方法で形成されるめっき膜であってよい。一般的には、光沢銅めっき、光沢クロムめっき、リフロー処理を施した光沢すずめっき等が挙げられる。
【0041】
このように、反射膜13の下地として下地めっき膜12が設けられることで、発光装置に組み立てられたときに光の取出し効率に優れたリードフレーム1Bが容易に得られる。
【0042】
リードフレーム1,1B(以下、適宜まとめてリードフレーム1という)の平面視形状は特に限定されず、発光装置の形状および形態等に応じて設計され、例えば、後記の発光装置の基板11A(
図4(a)参照)のように、リードフレーム1が複数個連結された構成としてもよい。また、リードフレーム1はコイル状の条材等でもよく、この場合は、発光装置の製造時に当該発光装置の形状等に応じて切断、成形等加工される。
【0043】
(リードフレームの製造方法)
本発明の第1実施形態に係るリードフレームは、前記の構成を形成できる方法であれば特に制限されず、いずれの方法により製造してもよい。例えば、
図1(a)に示すリードフレーム1は、基板11を作製する基板作製工程S1、基板11に反射膜13を形成するアルミニウム成膜工程S5、そして、反射膜13表面に貴金属膜14を形成する貴金属成膜工程S6を行う方法によって製造することができる(図示省略)。なお、各工程には説明のために符号を付す。以下に、リードフレーム1の製造方法の一例を説明する。
【0044】
基板作製工程S1は、材料のCuまたはCu合金を連続鋳造して鋳造板(例えば、薄板鋳塊)を製造し、次に、焼鈍、冷間圧延、中間焼鈍および時効処理、さらに、仕上げ圧延、研磨等の工程を経て、所要の厚さの素板を製造する。この素板を切断やプレス加工等によりリードフレーム1の形状に成形して基板11を得ることができる。
【0045】
反射膜13および貴金属膜14は、それぞれスパッタリング法のような物理蒸着法にて、当該反射膜13、貴金属膜14の各組成に合わせた、すなわちAl(またはAl合金)、貴金属でそれぞれ形成された蒸発源(ターゲット)を用いて成膜することができる。例えば、ターゲットを設置する複数の電極を備えて、電圧を印加する電極の切換えの可能なスパッタリング装置を用いることで、アルミニウム成膜工程S5および貴金属成膜工程S6を連続して行うことができる。
【0046】
反射膜13と基板11との密着性をよくするために、アルミニウム成膜工程S5においては、成膜前に表面にArイオンビームを照射したり、Ar雰囲気中で高周波を印加することにより、基板11表面に存在する汚れを除去することが好ましい。まず、Al(またはAl合金)ターゲットおよび貴金属ターゲットを別の電極に設置し、基板11をスパッタリング装置のチャンバー内に載置する。次に、チャンバー内を1.3×10
-3Pa以下の圧力まで真空排気した後、チャンバー内にArガスを導入して、チャンバー内圧力を所定の圧力、例えば2×10
-2Pa程度に調整する。そして、イオンガンに所定の放電電圧を印加してArイオンを発生させ、さらに所定の加速電圧とビーム電圧を印加することにより、Arイオンビームを基板11表面に照射する。その後、チャンバー内にArガスを導入しながら、チャンバー内の圧力を0.27Pa程度に調整し、Alターゲットに直流電圧(出力100W)を印加することによりスパッタリングを行って、反射膜13を成膜する。反射膜13の形成が完了したら、Alターゲットへの電圧印加を停止して当該工程S5を完了し、引き続いて貴金属成膜工程S6として、貴金属ターゲットに直流電圧(出力100W)を印加することによりスパッタリングを行って、貴金属膜14を成膜することでリードフレーム1を製造できる。それぞれのターゲットへの電圧印加時間を制御して、反射膜13および貴金属膜14を所望の膜厚に形成することができる。
【0047】
このように、同一のスパッタリング装置を用いてチャンバー内をAr等により低酸素雰囲気として反射膜13および貴金属膜14を連続して成膜すると、反射膜13表面が大気に曝されることがないため、自然酸化膜が形成されることなく、貴金属膜14が反射膜13上に密着性よく形成される。一方、反射膜13、貴金属膜14を異なる成膜装置で形成したり、反射膜13の形成後にチャンバーを開放して蒸発源を交換する等により、反射膜13表面が大気に曝された場合は、貴金属成膜工程S6において、貴金属膜14の成膜前に、反射膜13表面に形成された自然酸化膜を除去する。具体的には、反射膜13にArイオンビームを照射したり、Ar雰囲気中で高周波を印加することにより、反射膜13表面に形成された自然酸化膜を除去することができる。すなわち、アルミニウム成膜工程S5における反射膜13の成膜前の基板11表面の汚れの除去と同様の処理を行えばよい。チャンバー内の真空排気やArガスによる圧力調整等の一連の作業は、アルミニウム成膜工程S5と同様であるので、説明は省略する。
【0048】
図1(b)に示すリードフレーム1Bは、前記リードフレーム1の製造におけるアルミニウム成膜工程S5の前に、基板11に下地めっき膜(Niめっき膜、Agめっき膜)12を形成する下地めっき工程(めっき工程)S2をさらに行う方法によって製造することができる(図示省略)。工程S1,S5,S6はリードフレーム1の製造の製造方法にて説明したので省略し、以下に、下地めっき工程S2について説明する。
【0049】
下地めっき膜12としてNiめっき膜を形成する場合、その成膜に際して、予め基板11を脱脂液による脱脂、電解脱脂、および酸溶液によって前処理を行うことが好ましい。前処理は、例えば、基板11を、脱脂液に浸漬して脱脂した後、対極をステンレス304として、リードフレーム側がマイナスとなるようにして直流電圧を印加して30秒間程度電解脱脂を行い、さらに、10%硫酸水溶液に10秒程度浸漬することによって行うことができる。
【0050】
Niめっき膜は、例えば、ワット浴、ウッド浴、スルファミン酸浴等の公知のめっき浴を用い、Ni板を対極とし、電流密度5A/dm
2、めっき浴温度50℃等の条件で電気めっきを行うことによって成膜することができる。また、光沢剤を添加しためっき浴を用いて光沢Niめっき膜とすることもできる。この電気めっきにおいては、電流密度やめっき通板速度(めっき時間)等を調整することによって、所望の膜厚のNiめっき膜を得ることができる。
【0051】
下地めっき膜12としてAgめっき膜を形成する場合も、その成膜に際して、Niめっき膜の形成と同様に、予め基板11に前処理を行うことが好ましい。Agめっき膜は、純Agで形成する場合、例えば、シアン浴、チオ硫酸塩浴等の公知のめっき液を用い、Ag(純度99.99%)板を対極とし、電流密度5A/dm
2、めっき浴温度15℃等の条件で電気めっきを行うことによって成膜することができる。また、光沢剤を添加しためっき浴を用いて光沢Agめっき膜とすることもできる。この電気めっきにおいては、Niめっきと同様に、電流密度やめっき通板速度(めっき時間)等を調整することによって、所望の膜厚のAgめっき膜を得ることができる。
【0052】
なお、基板11の片面(上面)のみ、あるいはさらに一部の領域のみに下地めっき膜(Niめっき膜、Agめっき膜)12を形成する場合は、下面や前記領域以外にマスキングテープ等でマスキングした後、めっき浴で電気めっきを行うことによって、基板11の所望の部位のみに下地めっき膜12を形成することができる。
【0053】
リードフレーム1Bの製造においては、アルミニウム成膜工程S5および貴金属成膜工程S6では、下地めっき膜12を形成した基板11をスパッタリング装置のチャンバー内に載置する。さらにアルミニウム成膜工程S5では、反射膜13と下地めっき膜12との密着性をよくするために、成膜前に下地めっき膜12表面にArイオンビームを照射したり、Ar雰囲気中で高周波を印加することにより、下地めっき膜12表面に存在する汚れを除去してもよい。
【0054】
以上のように、前記工程S1,S5,S6をこの順に行うことによりリードフレーム1を製造することができる。また、工程S1,S2,S5,S6をこの順に行うことによりリードフレーム1Bを製造することができる。また、下地めっき工程S2において、基板11(11A)をマスキングせず全面に下地めっき膜12を形成し、アルミニウム成膜工程S5、貴金属成膜工程S6にて、片面(表面)にのみ反射膜13および貴金属膜14を形成すると、
図4(c)に示すリードフレーム1Bを製造することができる。また、基板作製工程S1における基板11の成形前に、下地めっき工程S2を、あるいはさらにアルミニウム成膜工程S5および貴金属成膜工程S6を行ってから、リードフレーム1(1B)の形状に加工して製造することもできる。
【0055】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係るLED用リードフレームについて、
図5を参照して説明する。第1実施形態に係るLED用リードフレームと同じ要素については、同じ符号を付し、説明を省略する。第2実施形態に係るLED用リードフレームは、LEDチップを光源として搭載される表面実装型の発光装置(
図2参照)を構成するための部品である。
【0056】
図5(a)、(b)に示すように、第2実施形態に係る支持部材付リードフレーム(LED用リードフレーム)10Bは、上方に開口した凹状のLEDチップ搭載部(凹部)22が形成された支持部材2Bと、この支持部材2Bに支持された正極・負極の一対のリード部材1a,1cと、を備える。リード部材1a,1cは、LEDチップ搭載部22の底面に、互いに離間して配設されて、それぞれが当該LEDチップ搭載部22から支持部材2Bの外側に延出、すなわち支持部材2Bの内側(LEDチップ搭載部22)から外側へ突き抜けた構成となる。支持部材付リードフレーム10Bが発光装置に組み立てられたとき、支持部材2BはLEDチップ搭載部22内に光源であるLEDチップを収容するための器および台座であり、リード部材1a,1cはこのLEDチップに駆動電流を供給するための配線になる。第2実施形態に係るLED用リードフレームは、前記の第1実施形態に係るLED用リードフレーム1を一対のリード部材とし、これを、LEDチップが収容されるための凹部が形成された支持部材で支持する構造であることから、以下、支持部材付リードフレームと称する。次に、第2実施形態に係る支持部材付リードフレームを構成する要素について、詳細に説明する。
【0057】
(リード部材)
図5(a)に示すように、リード部材1a,1cは帯状で、その長手方向に沿って並設され、LEDチップ搭載部22の底面にて長手方向中心に対して右寄りの位置で間隔を空けて対向し、それぞれが支持部材2Bの外側(
図5における左右両側)へ貫通している。したがって、LEDチップ搭載部22において、左側のリード部材1aが、右側のリード部材1cよりも長く、底面の中央まで配設されている。リード部材1a,1cの、LEDチップ搭載部22の底面に配置された領域をインナーリード部、支持部材2Bの外側に延出された領域をアウターリード部と称する(
図2(b)参照)。このように、リード部材の一方(リード部材1a)がLEDチップ搭載部22の底面中央に配設されることで、支持部材付リードフレーム10Bに搭載されるLEDチップが安定して載置されて、このリード部材1aがLEDチップから下方へ照射された光を好適に反射することができる。詳しくは、リード部材1aのインナーリード部の、LEDチップ搭載部22の底面の略中央(
図5(a)に太破線の枠で示す領域)にLEDチップが載置される。さらにリード部材1a,1cのインナーリード部におけるLEDチップの両側(図における左右)における領域が、ワイヤボンディングのための領域となる。すなわちインナーリード部は、搭載されるLEDチップを電気的に接続するための領域であり、同時に、このLEDチップの発光した光を反射させる反射板を構成する。そして、アウターリード部は、外部の電源または配線に電気的に接続するための領域、すなわちはんだ付けのための領域である。
【0058】
リード部材1a,1cは、第1実施形態に係るリードフレーム1(
図1(a)参照)からなり、すなわち基板11と、基板11の少なくとも一方の面に形成された反射膜13と、さらにその上に形成された貴金属膜14と、を備える。
図5(b)に示すように、リード部材1a,1cは、反射膜13および貴金属膜14を備える面を上に向けて、支持部材2BのLEDチップ搭載部22の底面に配置される。また、
図5(b)においては、リード部材1a,1cはリードフレーム1からなるが、
図3に示す第1実施形態と異なり、反射膜13および貴金属膜14はインナーリード部にのみ設けられ、アウターリード部および支持部材2Bに埋設された領域は、基板11のみを備える。かかる構造については、後記の製造方法にて説明する。また、リード部材1a,1cは、
図6に示す変形例に係る支持部材付リードフレーム10Cのように、基板11と反射膜13との間に下地めっき膜(Niめっき膜、Agめっき膜)12を備えたリードフレーム1B(
図1(b)参照)と同様の構成としてもよい(
図6においては、反射膜13は貴金属膜14と共に13/14として1層で表す)。リード部材1a,1cを構成する基板11等の各要素は、第1実施形態に係るリードフレーム1,1Bと同様であるので、説明を省略する。
【0059】
(支持部材)
支持部材2Bは、
図2に示す発光装置の支持部材2と同様に、凹状のLEDチップ搭載部(凹部)22が形成されたカップ状の樹脂成形体(基体)21を備え、さらにLEDチップ搭載部22の表面に形成された反射膜23を備える。LEDチップ搭載部22は上方に広がって開口し、底面とこれを囲む4面の側面とから構成される平面視で長方形の四角錐台である。LEDチップ搭載部22の形状はこれに限定されず、例えば平面視で正方形であったり、上方に広がって開口した円錐台でもよい。また、LEDチップ搭載部22におけるリード部材1a,1cに挟まれた領域(空間)を、底面および側面を含めて、離間領域28と称する。支持部材2Bは、支持部材付リードフレーム10Bが使用される発光装置の形状および形態、ならびにLEDチップの実装形態、製品としてユーザに提供する形態等に応じて所望の形状に成形される。
【0060】
樹脂成形体21は支持部材2Bの基体であり、絶縁材料である樹脂を支持部材2Bの形状に成形してなる。したがって、樹脂成形体21は、その外側から内側(LEDチップ搭載部22)へリード部材1a,1cがそれぞれ貫通するように、射出成形(インサート成形)等によって、リード部材1a,1cと一体的に成形されることが好ましい。樹脂は、耐熱性が200℃以上のものであればよく、ポリアミド(PA)樹脂等のエンジニアリングプラスチック、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等のスーパーエンジニアリングプラスチック等を用いることができる。また、樹脂成形体21の、LEDチップ搭載部22を形成する面(底面および側面)は、表面に反射膜23を形成されて発光装置としたときの反射面となるので、基板11と同様に、正反射率を高くするために平滑な表面にすることが好ましい。
【0061】
支持部材2Bは、その内面すなわちLEDチップ搭載部22の表面(底面および側面)における離間領域28を除く領域に、反射膜23を備える。反射膜23は、リード部材1a,1c(リードフレーム1)に設けられた反射膜13と同様に、アルミニウム(Al)またはAl合金で形成され、リード部材1a,1cにおける反射膜13と組成や膜厚が同一であっても異なっていてもよいが、膜厚は反射膜13と同様に50nm以上とする。このような反射膜23が形成されることにより、LEDチップ搭載部22の表面の反射率が高くなり、発光装置としたときに光の取出し効率がいっそう向上する。なお、LEDチップ搭載部22の各表面(底面および側面)に形成される反射膜23は、同じ膜厚でなくてよい。また、LEDチップ搭載部22の底面におけるリード部材1a,1cの配置される領域(インナーリード部の下)には反射膜23が形成されなくてよい。
【0062】
これらのことから、リード部材1a,1cと一体的に射出成形された樹脂成形体21に対して、反射膜23を成膜することができる。さらに後記するように、樹脂成形体21を、反射膜13を形成する前のリード部材1a,1c(基材11または下地めっき膜12を形成した基材11)と一体的に射出成形し、インナーリード部(基材11または下地めっき膜12)およびLEDチップ搭載部22(樹脂成形体21)の表面に、反射膜13,23を一体に成膜することができる。さらに、LEDチップ搭載部22を上方に広がって開口した形状とすることで、当該LEDチップ搭載部22の開口部(上方)から底面に向けて反射膜13,23を物理蒸着法で成膜すれば、底面上のリード部材1a,1cのインナーリード部および底面だけでなく、傾斜した側面にも反射膜23が同時に成膜される。
【0063】
さらに、反射膜13,23と同様に、樹脂成形体21(支持部材2B)に支持されてLEDチップ搭載部22の底面上に配されたリード部材1a,1cに、物理蒸着法で貴金属膜14を成膜すると、LEDチップ搭載部22の各面にも同じ組成の貴金属膜が成膜される(
図5(b)および
図6においては省略する)。このような貴金属膜は、リード部材1a,1cにおける貴金属膜14と同様に、膜厚50nm以下であれば反射膜23の高反射率を阻害しないので形成されてもよい。なお、支持部材付リードフレーム10Bが発光装置に組み立てられる際に、支持部材2BのLEDチップ搭載部22の表面にはワイヤボンディングされないので、リード部材1a,1c(リードフレーム1)のように貴金属膜を反射膜23上に設ける必要はなく、反射膜23は露出していてもよい。また、
図5(b)において、LEDチップ搭載部22の表面に、リード部材1a,1c表面を含めて一体に反射膜を示しているが、樹脂成形体21上に形成されたものは反射膜23、基板11上すなわちリード部材1a,1c表面に形成されたものは反射膜13とする。
【0064】
ここで、LEDチップ搭載部22の表面(底面および側面)の全領域にAlまたはAl合金からなる反射膜、あるいはさらに貴金属膜が形成されていると、この反射膜等を介してリード部材1a,1c間が短絡する。したがって、LEDチップ搭載部22の底面および側面(長手方向に沿った側面)の離間領域28における領域には、反射膜23および貴金属膜は形成されない。また、反射膜23等は、LEDチップ搭載部22の表面以外、すなわち支持部材2Bの上面(側壁の上端面)や外側の側面等にも形成されてもよいが、離間領域28の延長上で、リード部材1a,1cの各インナーリード部から連続して形成されないようにする。すなわち、反射膜23は、LEDチップ搭載部22の底面の、リード部材1aの配置される領域に連続する領域と、リード部材1cの配置される領域に連続する領域とで、離間領域28を隔てて完全に分離される。このような反射膜23の形成方法は、後記の製造方法で詳細に説明する。
【0065】
(支持部材付リードフレームの製造方法)
第2実施形態に係る支持部材付リードフレーム10Bは、前記の構成を形成できる方法であれば特に制限されず、いずれの方法により製造してもよい。例えば、
図5(a)、(b)に示す支持部材付リードフレーム10Bは、第1実施形態に係るリードフレーム1の製造方法における基板作製工程S1、アルミニウム成膜工程S5、貴金属成膜工程S6に、さらに樹脂成形工程S3およびマスク工程S4を行う方法によって製造することができる(図示省略)。以下に、第2実施形態に係る支持部材付リードフレームの製造方法の一例を説明する。
【0066】
基板作製工程S1は、前記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。この工程で、リード部材1a,1cの形状に成形された基板11を得る。
【0067】
樹脂成形工程S3は、射出成形(インサート成形)等によって、樹脂成形体21をリード部材1a,1cと一体的に成形する。詳しくは、樹脂成形体21の外側から内側(LEDチップ搭載部22)へ、基板11が貫通するように、樹脂を前記基板11と一体的に成形する。なお、樹脂成形体21のLEDチップ搭載部22の底面となる面は、リード部材1a,1cの上面(基板11の上面)と面一であることが好ましいが、例えば基板11の下面と面一に成形されてもよい。
【0068】
次に、リード部材1a,1cのインナーリード部における基板11表面に反射膜13を、樹脂成形体21のLEDチップ搭載部22における表面に反射膜23を、それぞれ形成する(アルミニウム成膜工程S5)。しかしながら、LEDチップ搭載部22の開口部から底面に向けて、そのまま、すなわちLEDチップ搭載部22表面の全領域に反射膜13,23を成膜すると、前記したように、LEDチップ搭載部22表面の反射膜(アルミニウム膜)を介してリード部材1a,1c間が短絡することになる。そこで、この短絡を防止するために、アルミニウム成膜工程S5の前にマスク工程S4を行う。以下、マスク工程S4について説明する。
【0069】
マスク工程S4はアルミニウム成膜工程S5および貴金属成膜工程S6の準備工程であり、LEDチップ搭載部22の離間領域28をマスクすることにより、後続の工程S5,S6でこの離間領域28に反射膜13,23および貴金属膜14が形成されないようにする。マスク方法は特に規定されず、公知の方法を適用できるが、一例としては、
図5(c)に示すように、LEDチップ搭載部22(内部空間)のC−C線矢視断面形状と同じ逆台形の上に樹脂成形体21の側方へ張り出す耳部を有する平面視形状で、LEDチップ搭載部22の底面上におけるリード部材1a,1c間距離と同じ厚さの板状のマスク(マスク板)を用いる。そして、このマスク板を樹脂成形体21のLEDチップ搭載部22に、離間領域28の位置に合わせて、開口部から底面に向けて嵌装する。マスク板の構成は特に制限されず、例えば、銅、アルミニウム、チタン、SUS等の金属材料をエッチングやプレス加工等で作製されたものを用いることができる。このマスク板をLEDチップ搭載部22に嵌装した状態で、アルミニウム成膜工程S5および貴金属成膜工程S6を行う。また、このとき、支持部材2B(樹脂成形体21)におけるLEDチップ搭載部22の表面以外(外側表面)、あるいはさらにリード部材1a,1cのアウターリード部を覆うマスク(図示せず)も設けてもよい。
【0070】
アルミニウム成膜工程S5および貴金属成膜工程S6は、それぞれ前記第1実施形態における工程S5,S6と同様であり、所定の組成および膜厚の反射膜13,23および貴金属膜14を、リード部材1a,1cのインナーリード部も含めてLEDチップ搭載部22に、一体に成膜する。第1実施形態と同様に、工程S5,S6を連続して行ってもよいし、アルミニウム成膜工程S5の後、反射膜13,23の表面が大気等に曝された状態で、貴金属成膜工程S6にて自然酸化膜を除去してから貴金属膜14を成膜してもよい。
【0071】
ここで、基板11を貫通させた樹脂成形体21は、スパッタリング装置のチャンバー内において、LEDチップ搭載部22の底面およびリード部材1a,1c上面をAlターゲットおよび貴金属ターゲットに対向する向きに載置されることが好ましい。このように載置されることで、LEDチップ搭載部22の側面の傾斜角度にもよるが、この側面への成膜の方が、底面やリード部材1a,1c上面への成膜よりも成膜速度が遅くなる。したがって、アルミニウム成膜工程S5においては、樹脂成形体21のLEDチップ搭載部22の側面に形成される反射膜23の必要な膜厚に合わせて成膜すればよい。一方、貴金属成膜工程S6においては、貴金属膜はリード部材1a,1c表面にのみ必要なので、かかる面における貴金属膜14の膜厚に合わせて成膜すればよく、貴金属膜が樹脂成形体21上(反射膜23上)にも形成されてもリード部材1a,1cにおける貴金属膜14の膜厚以下であれば、何ら問題はない。
【0072】
反射膜13,23および貴金属膜14を成膜した後、LEDチップ搭載部22からマスク板を外すと、
図5(a)、(b)に示すように、LEDチップ搭載部22の表面において、底面および側面にわたって、反射膜23等が形成されず樹脂成形体21が露出した領域が、離間領域28に沿って帯状に存在する支持部材2Bとなり、支持部材付リードフレーム10Bが製造される。このように離間領域28に反射膜23等の金属膜が形成されないようにすることによって、反射膜23等を介してリード部材1a,1c間で短絡することを防止して絶縁性を確保することができる。また、リード部材1a,1cの各インナーリード部間(離間領域28)には、樹脂成形体21を構成する樹脂、あるいは発光装置に組み立てられたときに封止樹脂が充填されるので、リード部材1a,1c間の絶縁性は保持される。なお、マスク板の板厚はリード部材1a,1c間距離(離間領域28の幅)と一致していなくてもよく、リード部材1a,1c間の短絡を防止できれば、反射膜23の形成されない領域はこれに限られず、離間領域28より広くても狭くてもよい。
【0073】
以上のように、前記の工程S1,S3,S4,S5,S6をこの順に行うことにより、第2実施形態に係る支持部材付リードフレーム10Bを製造することができる。
【0074】
図6に示す支持部材付リードフレーム10Cのように、リード部材1a,1cにリードフレーム1B(
図1(b)参照)を適用する場合は、第1実施形態と同様に、基板11に下地めっき膜12を形成する下地めっき工程(めっき工程)S2をさらに行う。すなわち、支持部材付リードフレーム10Bの製造方法と同様の工程S1,S3,S4,S5,S6に、さらに下地めっき工程(めっき工程)S2をアルミニウム成膜工程S5の前までに行う方法によって製造することができる。下地めっき工程S2は、前記第1実施形態における工程S2と同様であるので、説明を省略する。なお、第1実施形態に係るリードフレーム1Bの製造方法と同様に、基板作製工程S1における成形前に、下地めっき工程S2を行ってからリード部材1a,1cの形状に加工してもよい。また、支持部材付リードフレーム10Cにおいては、下地めっき工程S2で基板11(11A)の下面にマスキングを施して、上面にのみ下地めっき膜12を形成しているが、
図4(c)に示す支持部材付リードフレーム10Aのリード部材1a,1c(リードフレーム1B)のように、基板11Aの両面さらに端面にも下地めっき膜12を形成してもよい。このようにして得られた下地めっき膜12が形成された基板11Aについて、樹脂成形工程S3を行って支持部材2Cを形成すればよく、以降は、工程S4,S5,S6をこの順に行って支持部材付リードフレーム10Cが製造される。
【0075】
以上のように、前記の工程S1,S2,S3,S4,S5,S6をこの順に行うことにより、第2実施形態の変形例に係る支持部材付リードフレーム10Cを製造することができる。しかし、本変形例においては、リード部材1a,1cの下地めっき膜12が形成される部位に応じて、下地めっき工程S2を行う順序を変更して製造することができる。例えば、基板11を作製してリード部材1a,1cの形状に成形し(工程S1)、下地めっき膜12の形成前に、この基板11と一体的に樹脂成形体21を成形する(工程S3)。次に、樹脂成形体21を貫通した基板11に、電気めっきにより下地めっき膜12を形成する(工程S2)。電気めっきによれば、絶縁材料からなる樹脂成形体21の表面にはめっき膜は形成されない。そして、前記と同様に、樹脂成形体21のLEDチップ搭載部22にマスク板を嵌装して(工程S4)から、下地めっき膜12および樹脂成形体21の表面に反射膜13,23および貴金属膜14を形成する(工程S5,S6)。このような工程S2と工程S3の順序を入れ替えて製造された支持部材付リードフレームにおいては、リード部材1a,1cの支持部材2Cに埋設された領域(インナーリード部−アウターリード部間)は基板11のみで構成され、下地めっき工程S2において基板11の下面にマスクを設けなくてもインナーリード部の下面(裏面)には下地めっき膜12が形成されない。
【0076】
なお、支持部材付リードフレーム10Cは、マスク工程S4において
図5(c)に示すマスク板のみを用いたため、支持部材2Cの上面やリード部材1a,1cのアウターリード部にも、反射膜23,13および貴金属膜14が形成されるが、マスク板の耳部により支持部材2Cの外側表面における離間領域28の延長上には、反射膜23等は形成されず、リード部材1a,1c間の短絡は生じない。
【0077】
〔発光装置〕
次に、本発明の第1、第2実施形態に係るLED用リードフレーム(リードフレームおよび支持部材付リードフレーム)を用いた発光装置についてその一例を説明する。
第2実施形態およびその変形例に係る支持部材付リードフレーム10B,10Cを用いて発光装置に組み立てる方法の一例は、次の通りである。まず、リード部材1aのインナーリード部表面のLEDチップ搭載部22の略中央(
図5(a)に示すLEDチップ載置領域)にシリコーンダイボンド材等からなる接着剤を塗布して、その上にLEDチップを接着して固定する。次に、ワイヤボンディングにより、金ワイヤでLEDチップの電極をリード部材1a,1cの各インナーリード部に接続する。そして、LEDチップ搭載部22にエポキシ樹脂等の封止樹脂を充填することにより封止して、LEDチップを光源として搭載した表面実装型の発光装置(
図2参照)となる。なお、LED用リードフレーム10Cにおいては、基板11Aで複数個を連結された状態で発光装置に製造されてから
図6に示す太破線で切り離されて使用される。また、一対の電極が上下両面にそれぞれ設けられたLEDチップを搭載した発光装置を組み立てることもできる。下面にn電極が設けられたLEDチップの場合は、負極のリード電極1cがLEDチップ搭載部22の略中央まで配設された支持部材付リードフレームとし、LEDチップを、導電性の接着剤を用いてn電極をリード電極1cに電気的に接続しつつ搭載し、ワイヤボンディングにより上面のp電極をリード部材1aに接続すればよい。
【0078】
第1実施形態およびその変形例に係るリードフレーム1,1Bも、所定の平面視形状に成形したものが貫通するように、前記の第2実施形態等と同様に樹脂成形体21(支持部材2,2A)を成形することで、支持部材付リードフレーム10,10Aを製造して、表面実装型の発光装置の部品とすることができる。したがって、第2実施形態に係る支持部材リードフレームの製造方法における樹脂成形工程S3のように、樹脂をリードフレーム1,1Bと一体的に射出成形すればよく、すなわち支持部材リードフレームの製造方法における工程S1,S2,S5,S6,S3をこの順に行うことになる。例えば、
図4(a)に示す第1実施形態の変形例における基板11Aを適用してリードフレーム1Bを製造し、
図4(b)に破線で示すように一体的に支持部材2Aを形成することで、
図4(c)に示す支持部材付リードフレーム10Aが得られる。このようにして得られる支持部材付リードフレーム10,10Aは、
図3および
図4(c)に示すように、支持部材2,2A(樹脂成形体21)のLEDチップ搭載部22表面に反射膜23等の金属膜が形成されていないこと以外は、それぞれ第2実施形態に係る支持部材付リードフレーム10B,10C(
図5(b)、
図6)と同様の構造となる。したがって、樹脂成形体21に白色樹脂を適用する等、表面の反射率が高くなるようにすることが好ましい。あるいは射出成形によらずに、例えばLEDチップを囲む枠を樹脂で成形してリードフレーム1に取り付けてもよい(図示せず)。この枠の取付けは、LEDチップの搭載の前でも後でもよい。
【0079】
第1実施形態およびその変形例に係るリードフレーム1,1Bは、支持部材2等を形成せずに、例えば砲弾型の発光装置に製造されてもよい(図示せず)。この場合は、基板11を、異形条材(圧延幅方向に板厚の異なる圧延板)の板厚の厚い部位をプレス鍛造でカップ形状に成型して、このカップ形状の外側に板厚の薄い部位が帯状に延出された形状に作製する。そして、この基板11のカップ形状の内側表面に下地めっき膜12、反射膜13、および貴金属膜14を形成してリードフレームとする。カップ形状の内面がリード部材1aのインナーリード部とLEDチップ搭載部22とを兼ね、帯状の部位がアウターリード部となる。これに、別部材で作製したリードフレーム1(基板11のみで構成されてもよい)をリード部材1cとして合わせて一組のリードフレームとする。このようなリードフレームでは、LEDチップはカップ形状の内底面に搭載されてワイヤボンディングされ、カップ形状の内部に封止樹脂を充填して封止される。このような構造とすることで、リードフレーム1をLEDチップの下方のみならず側方の反射面に構成することもできる。
【0080】
以上のようなリードフレーム1,1Bまたは支持部材リードフレーム10〜10Cを用いて得られる発光装置において、反射膜13はAg膜と異なり、熱による凝集や変色が生じ難く、耐硫化性および耐ハロゲン性に優れ、さらにリードフレーム1等は少なくとも表面近傍にAgを含有する膜を備えないため、Agのナノ粒子の析出を引き起こし難く、エポキシ樹脂等の封止樹脂を変色させることがないため、LEDチップが発光した光を安定して反射させて、長期に高効率で取り出すことができる。さらに、このような発光装置は、リードフレーム1等の表面に設けられた貴金属膜14によって、はんだ付けにより配線基板等に実装することが可能であり、また当該発光装置が組み立てられた際のワイヤボンディング性が良好なため、接合不良が生じない。
【0081】
以下、本発明の実施例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【実施例1】
【0082】
〔試料作製〕
下記のようにして、
図1(a)に示す積層構造のリードフレーム1の試料を、反射膜および貴金属膜のそれぞれの成分および膜厚を変化させて作製し、
図1(b)に示す積層構造のリードフレーム1Bの試料を、下地めっき膜の成分および膜厚を変化させて作製した。
【0083】
(基板の作製)
厚さ0.1mmのCu−Fe−P系銅合金板(KLF194H、(株)神戸製鋼所製)を、プレス加工して、
図4(a)に示す形状の基板(基板11A)を作製した。
【0084】
(Niめっき膜の形成)
試料No.9〜13,21について、前記基板に下地めっき膜としてNiめっき膜を形成した。めっき前処理として、基板を脱脂液に浸漬して、対極をステンレス304として、基板側がマイナスとなるようにして直流電圧を印加して30秒間電解脱脂を行った後、10%硫酸水溶液に10秒浸漬した。前処理後の基板の表面(全面)に、下記成分、液温50℃のワット浴で、対極をNi板とし、電流密度:5A/dm
2で、光沢Niめっきを施して、表1に示す膜厚のNiめっき膜を形成し、めっき浴から引き上げて水洗した。
Niめっき浴成分
硫酸Ni:250g/L
塩化Ni: 40g/L
硼酸 : 35g/L
添加剤A: 3ml/L
添加剤B:10ml/L
【0085】
(Agめっき膜の形成)
試料No.14〜18について、前記基板に下地めっき膜としてAgめっき膜を形成した。前記Niめっき膜の形成と同様のめっき前処理を基板に行った。そして、試料No.14,15,18について、前処理後の基板の表面(全面)に、下記成分、液温15℃のシアン浴で、対極をAg(純度99.99%)板とし、電流密度:5A/dm
2で、光沢Agめっきを施して、表1に示す膜厚のAgめっき膜を形成し、めっき浴から引き上げて水洗した。
Agめっき浴成分
シアン化銀カリウム(I):50g/L
シアン化カリウム :40g/L
炭酸カリウム :35g/L
添加剤C :3ml/L
【0086】
試料No.16,17について、前処理後の基板の表面(全面)に、液温25℃の、Bi濃度:100mg/LのAg−Bi合金めっき浴で、対極をPt板とし、電流密度:3A/dm
2で、Ag−Bi合金めっきを施して、表1に示す膜厚のAg−Bi合金めっき膜を形成し、めっき浴から引き上げて水洗した。また、Ag(Ag−Bi合金)めっき膜の組成を分析するために、ステンレス304をダミー基板として同じ条件でめっき膜を形成した。このめっき膜をダミー基板から剥離させて硝酸で溶解後、溶解した硝酸の液を、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置(ICPS−8000、島津製作所製)を用いて分析することにより、組成を求めた。
【0087】
Niめっき膜およびAgめっき膜の各膜厚は、めっき速度に基づいてめっき通電時間を調整することで制御した。具体的には、ダミー基板に前記それぞれのめっきと同じ条件で一定時間めっきを施した。そして、Niめっき膜およびAg(純Ag)めっき膜については、ダミー基板のめっき前との重量差を測定することによりNi,Agの付着量を求め、この付着量をめっき面積、Ni,Agの理論密度、およびめっき時間で割ることにより単位時間に析出するNiめっき膜厚(めっき速度)を算出した。Ag(Ag−Bi合金)めっき膜については、ダミー基板のめっき膜の厚さを断面SEM観察により測定してめっき速度を算出した。それぞれの下地めっき膜について、めっき速度から所望の膜厚を形成するめっき時間を算出した。
【0088】
(反射膜、貴金属膜の成膜)
基板または下地めっき膜を形成した基板に、下記の方法で反射膜および貴金属膜を形成した。基板を、表1に示す反射膜および貴金属膜の組成に合わせた金属ターゲット(直径10.16cm(4インチφ)×厚さ5mm)を設けたスパッタリング装置のチャンバー内に載置した。次に、真空ポンプでチャンバー内圧力が1.3×10
-3Pa以下となるように真空排気した後、Arガスをチャンバー内に導入してチャンバー内圧力を0.27Paに調整した。この状態で、反射膜用の金属ターゲット、貴金属膜用の金属ターゲットに順次、直流電圧(出力100W)を印加してスパッタリングを行い、表1に示す膜厚の反射膜および貴金属膜の2層の金属膜を成膜し、リードフレーム1,1Bの試料を作製した。なお、試料No.19,22は、反射膜のみを形成した。
【0089】
(反射膜および貴金属膜の膜厚の測定)
反射膜および貴金属膜の各膜厚は、X線光電子分光分析(XPS)を行って測定した。試料の表面について、全自動走行型X線光電子分光分析装置(Physical Electronics社製Quantera SXM)を用いて、表1に示す貴金属膜に含有される金属元素、反射膜に含有されるAl、および基板のCuまたは下地めっき膜のNi,Agの各濃度を、表面から深さ方向へ測定した。試料表面から、貴金属膜に含まれる金属元素の濃度が最高濃度の1/2まで減少した深さまでを貴金属膜の膜厚とし、さらに前記深さから、Alの濃度が最高濃度の1/2まで減少した深さまでを反射膜の膜厚とした。測定条件は、X線源:単色化Al−Kα、X線出力:43.7W、X線ビーム径:200μm、光電子取出し角:45°、Ar
+スパッタ速度:SiO
2換算で約0.6nm/分とした。
【0090】
〔評価〕
得られたリードフレームの試料について、下記の方法で、表面の反射率、耐硫化性、ワイヤボンディング性、およびはんだ付け性を評価した。結果を表1に示す。
【0091】
(反射率評価)
自動絶対反射率測定システム(日本分光株式会社製)を用いて、入射角5°、反射角5°の条件で、波長250〜850nmにおける分光反射率を測定して正反射率を求めた。正反射率50%以上を合格とした。
【0092】
(耐硫化性評価)
耐硫化試験として、硫化水素濃度3ppm、温度40℃、湿度80%に調整したチャンバー内に、試料を96時間暴露した。試験後、前記と同様に正反射率を測定し、耐硫化試験による正反射率の低下が10ポイント未満のものを合格とした。
【0093】
(ワイヤボンディング試験)
試料の
図4(b)に示すリード部材1a,1c間(インナーリード部、
図2(b)参照)を、マニュアルボンダ(KULICKE and SOFFA INDUSTRIES社製、Model 4127)を用いて、線径φ25μmの金(純Au)線(田中貴金属工業製)をボンディングワイヤとしてワイヤボンディングした。そして、光学顕微鏡で観察しながら金線の中央をピンセットで掴んで引っ張ることにより試験を行った。その結果、金線が試料のボンディング箇所から剥離することなく金線を切ることができた場合をワイヤボンディング性が良好であるとして「○」、少なくとも一方のボンディング箇所から金線が剥離した場合を不良であるとして「×」で評価した。また、金線が試料の表面に圧着せず、ワイヤボンディングできなかったものも不良であるとして「××」で評価した。
【0094】
(はんだ付け性評価)
試料をホットプレートで250℃に加熱し、直径約5mmのはんだボール(Sn−3.0at%Ag−0.5at%Cu)を溶融させて、試料の表面に垂らした後、試料をホットプレートから外して冷却してはんだを凝固させた。そして、凝固したはんだ溶滴の試料表面における濡れ接触角を測定した。
図7に示すように、試料を側面視で(試料の表面に水平な方向から見て)観察し、はんだ溶滴の端点と頂点とを結ぶ線分(図中に破線で示す)が試料表面となす角θを測定し、2θをはんだ溶滴の濡れ接触角であるとした。はんだ溶滴の濡れ接触角2θが小さいほどはんだの濡れ性がよいことを示し(
図7(a)参照)、濡れ接触角2θが大きくなるとはんだの濡れ性が低下する(
図7(b)参照)。濡れ接触角2θが80°以下であれば、はんだの濡れ性を十分に有してはんだ付けによる実装が可能であるので、はんだ付け性合格とし、特に2θ<45°をはんだ付け性優良として「◎」、45°≦2θ≦80°をはんだ付け性良好として「○」で評価した。一方、濡れ接触角2θが80°を超えて大きいとはんだ付けによる実装が困難になり、80°<2θ≦90°を「△」、2θ>90°を「×」で評価した。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、試料No.1〜18は、AlまたはAl合金からなる反射膜に貴金属膜を被覆した本発明に係るリードフレームの実施例であるため、優れた耐硫化性、ならびに良好なワイヤボンディング性およびはんだ付け性を示した。特に、反射膜の下地にNiめっき膜またはAgめっき膜を設けた試料No.9〜18は、初期反射率も高く、光の取出し効率に優れていた。
【0097】
これに対して、試料No.19は反射膜としてAg膜のみを設けたため、初期反射率は高かったが、耐硫化試験によるAg膜の劣化が著しく、反射率が低下した。同様にAg膜を反射膜として、その上に貴金属膜を設けた試料No.20は、耐硫化試験において貴金属膜のピンホールから硫化水素雰囲気が浸入し、Ag膜が劣化した。また、試料No.21は反射膜の膜厚が不足し、下地にNiめっき膜を設けていても十分な初期反射率が得られなかった。
【0098】
試料No.22,23は、反射膜は本発明の範囲であるため良好な初期反射率および耐硫化性が得られたが、試料No.22は貴金属膜を設けていないために反射膜表面に自然酸化膜が形成され、試料No.23は貴金属膜の膜厚が不足したため、それぞれ金線が圧着されずワイヤボンディングすることができず、またはんだ付け性が低下した。反対に、試料No.24は貴金属膜の膜厚が過剰であるために、初期反射率が低下した。試料No.25は、表面に貴金属膜ではなくCu膜を設けたために、耐硫化試験によりCu膜が劣化して反射率が低下した。
【実施例2】
【0099】
〔試料作製〕
実施例1と製造方法の一部を変えて、
図1(a)、(b)に示す積層構造のリードフレーム1,1Bの試料を作製した。
【0100】
基板の作製および試料No.28の膜厚0.5μmのNiめっき膜の形成は、実施例1と同様に行った。さらに反射膜として膜厚150nmのAl膜を実施例1の試料No.1と同じ条件でスパッタリング装置にて成膜した後、一旦チャンバーを開放した。次に、前記反射膜の成膜と同様に、再びチャンバー内を真空排気した後、Arガスを導入してチャンバー内圧力を0.27Paに調整してから、貴金属膜として膜厚20nmのPd膜を実施例1の試料No.1と同じ条件で成膜して、リードフレーム1,1Bの試料を作製した。なお、試料No.26については、チャンバー内圧力調整後、貴金属膜(Pd膜)の成膜前に、基板に直流電圧(出力100W)を3分間印加して、反射膜の表層を除去した。
【0101】
〔測定、評価〕
得られたリードフレームの試料について、実施例1と同様の方法で、表面の反射率、耐硫化性、ワイヤボンディング性、およびはんだ付け性を評価した。結果を表2に示す。また、表2に実施例1の試料No.1,10の結果を併記する。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示すように、試料No.26は、反射膜と貴金属膜を連続で成膜することなく、同じ積層構造の試料No.1と同程度の初期反射率および耐硫化性が得られた。さらに、試料No.26は、貴金属膜の成膜前に反射膜の表層の除去を行うことで反射膜表面に形成された自然酸化膜が除去されたために、貴金属膜が反射膜(Al膜)上に密着性よく形成されて、試料No.1と同様に良好なワイヤボンディング性およびはんだ付け性が得られ、本発明に係るリードフレームを製造できることが確認できた。これに対して、試料No.27,28は、それぞれ同じ積層構造の試料No.1,10と同程度の初期反射率および耐硫化性が得られたが、貴金属膜が反射膜表面に形成された自然酸化膜上に成膜されたために密着性に劣った。その結果、ワイヤボンディングすることはできたが、引張試験にて金線が試料から剥離し、ボンディング箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると、貴金属膜と反射膜との界面で剥離を生じたことが確認された。さらに、試料No.27,28は、はんだ溶滴に接触して表面の貴金属膜が溶融して酸化膜が露出したために、はんだの濡れ性が低下した。これらのことから、貴金属膜と反射膜との間に酸化膜のないことが望ましいことがわかる。