特許第5771151号(P5771151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771151高エネルギー密度のウルトラキャパシタ用活性炭材料の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771151
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】高エネルギー密度のウルトラキャパシタ用活性炭材料の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/08 20060101AFI20150806BHJP
   H01G 9/042 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C01B31/08 A
   H01G9/04 331
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-542318(P2011-542318)
(86)(22)【出願日】2009年12月15日
(65)【公表番号】特表2012-512130(P2012-512130A)
(43)【公表日】2012年5月31日
(86)【国際出願番号】US2009067977
(87)【国際公開番号】WO2010075054
(87)【国際公開日】20100701
【審査請求日】2012年12月17日
(31)【優先権主張番号】12/335,078
(32)【優先日】2008年12月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ガドカリー,キショー ピー
(72)【発明者】
【氏名】マーク,ジョーゼフ エフ
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/019105(WO,A1)
【文献】 特開2008−098354(JP,A)
【文献】 特開2008−207982(JP,A)
【文献】 特表2007−529403(JP,A)
【文献】 特開平11−349318(JP,A)
【文献】 特開2002−104817(JP,A)
【文献】 特開2008−120610(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0207442(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101037200(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00−31/36
H01G 9/042
WPI
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系電極を製造する方法であって:
小麦粉、トウモロコシ粉末、米粉およびジャガイモ粉からなる群より選択される天然の非リグノセルロース性炭素前駆体と無機化合物の水性混合物を形成し;
前記水性混合物を不活性または還元性雰囲気下で加熱して第1の炭素材料を形成し;
前記第1の炭素材料から前記無機化合物を除去して活性炭材料を生成し;
前記活性炭材料から炭素系の電極を形成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
炭素系電極を製造する方法であって:
小麦粉、トウモロコシ粉末、米粉およびジャガイモ粉からなる群より選択される天然の非リグノセルロース性炭素前駆体を不活性または還元性雰囲気下で加熱して第1の炭素材料を形成し;
前記第1の炭素材料を無機化合物と混合して混合物を形成し;
前記混合物を不活性または還元性雰囲気下で加熱して、前記無機化合物を前記第1の炭素材料内に取り込み;
前記第1の炭素材料から前記無機化合物を除去して活性炭材料を生成し;
前記活性炭材料から炭素系の電極を形成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項3】
炭素系電極を製造する方法であって:
小麦粉、トウモロコシ粉末、米粉およびジャガイモ粉からなる群より選択される天然の非リグノセルロース性炭素前駆体を不活性または還元性雰囲気下で加熱して中間炭素材料を形成し;
前記中間炭素材料を酸化雰囲気下で加熱して活性炭材料を生成し;
前記活性炭材料から炭素系電極を形成する、
各工程を有してなる方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、「高エネルギー密度のウルトラキャパシタ用活性炭材料の形成方法(Methods For Forming Activated Carbon Material for High Energy Density Ultracapacitors)」という発明の名称で2008年12月15日に出願した米国特許出願第12/335,078号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、炭素系の電極に関し、さらに詳細には、多孔質の活性炭材料、およびこのような電極の製造に使用するための活性炭材料を調製する方法に関する。本発明はまた、炭素系の電極を備えた高出力密度のエネルギー蓄積装置にも関する。
【背景技術】
【0003】
ウルトラキャパシタなどのエネルギー蓄積装置は、離散的電力パルスを必要とする多くの用途に使用されうる。これらの用途は携帯電話からハイブリッド車にまで及ぶ。ウルトラキャパシタの重要な特徴は、供給することができるエネルギー密度である。多孔質の分離装置および/または有機電解質によって隔てられた2つ以上の炭素系電極を備えうる装置のエネルギー密度は、概して、炭素系電極の特性によって決定される。
【0004】
高エネルギー密度の装置に取り込むのに適した炭素系の電極が知られている。例えば、これらの電極の基礎を築く高性能炭素材料は、合成フェノール樹脂前駆体から作られうる。しかしながら、合成樹脂のコストが高いことに起因して、これら炭素系の電極のコストは高くなりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、より高エネルギー密度の装置を実現可能にする炭素系電極を形成するために使用することができる、より安価な炭素材料を提供することは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、ウルトラキャパシタおよび他の高出力密度エネルギー蓄積装置に使用するための炭素系電極内に取り込むのに適した活性炭材料は、天然の非リグノセルロース性の材料から誘導される。非リグノセルロース性の材料を多孔質の活性炭材料の前駆体として使用することによって、採算の合う、高出力、高エネルギー密度の装置を形成することができる。本明細書で定義するように、他に明確に定義されない限り、「天然の非リグノセルロース性炭素前駆体」とは、少なくとも1種類の天然の非リグノセルロース性炭素前駆体を意味する。同様に、「無機化合物」についての言及は、少なくとも1種類の無機化合物を意味する。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、活性炭材料は、天然の非リグノセルロース性炭素前駆体と無機化合物の水性混合物を形成し、前記水性混合物を不活性または還元性雰囲気下で加熱して前記炭素前駆体を炭化し、前記無機化合物を除去して前記活性炭材料を製造することによって調製される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、活性炭材料は、天然の非リグノセルロース性炭素前駆体を不活性または還元性雰囲気下で加熱して第1の炭素材料を形成し、前記第1の炭素材料を無機化合物と混合して水性混合物を形成し、前記水性混合物を不活性または還元性雰囲気下で加熱して前記無機化合物を前記第1の炭素材料内に取り込み、前記第1の炭素材料から前記無機化合物を除去して、多孔質の活性炭材料を製造することによって調製される。
【0009】
本発明の追加の特性および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その記載から当業者に容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含めた本明細書に記載される本発明を実施することによって認識されよう。
【0010】
前述の概要および後述する詳細な説明は、本発明の実施の形態を提示し、特許請求の範囲に記載される本発明の性質および特徴を理解するための外観または枠組みを提供することを意図していることが理解されるべきである。添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本明細書のさまざまな実施の形態を例証し、説明と共に、本発明の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】リグノセルロース性炭素前駆体から誘導された炭素材料の比較例を示すSEM顕微鏡写真。
図2】天然の非リグノセルロース性炭素前駆体から誘導された本発明の炭素材料を示すSEM顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
活性炭材料を製造する方法は、
天然の非リグノセルロース性炭素前駆体と無機化合物の水性混合物を形成し、
前記水性混合物を不活性または還元性雰囲気下で加熱して前記炭素前駆体を炭化し、
前記炭化した炭素前駆体から前記無機化合物を除去する、
各工程を有してなる。
【0013】
活性炭材料を製造するためのさらなる方法は、
天然の非リグノセルロース性炭素前駆体を不活性または還元性雰囲気下で加熱して第1の炭素材料を形成し、
前記第1の炭素材料を無機化合物と混合して混合物を形成し、
前記混合物を加熱して前記無機化合物を前記第1の炭素材料内に取り込み、
前記第1の炭素材料から前記無機化合物を除去する、
各工程を有してなる。有利には、前記混合工程は、前記第1の炭素材料を前記無機化合物の水性混合物と混合することを含みうる。
【0014】
前述の方法のいずれかに従って形成された多孔質の活性炭材料は、高エネルギー密度装置に使用するための炭素系電極を形成するのに適している。
【0015】
混合工程の間に、無機化合物は、天然の非リグノセルロース性炭素前駆体の構造または第1の炭素材料の構造内に取り込まれうる。1つの手法では、無機化合物を、最初に、水などの溶媒に溶解させる。次に、無機化合物を含む混合物を、前記天然の非リグノセルロース性炭素前駆体または前記第1の炭素材料と混合し、前記天然の非リグノセルロース性炭素前駆体または前記第1の炭素材料への前記無機化合物の取り込みを可能にするのに有効な時間、前記混合物を寝かせておく。混合物は、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間またはそれ以上の時間(例えば、0.5〜8時間)、寝かせることができる。
【0016】
非リグノセルロース性の炭素前駆体および無機化合物は、任意の適切な比で混合することができる。天然の非リグノセルロース性炭素前駆体の無機化合物に対する比は、重量パーセントで表して、約10:1〜1:10の範囲でありうる。非限定的な、典型的な比としては、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8および1:9が挙げられる。1つの実施の形態によれば、無機化合物の、天然の非リグノセルロース性炭素前駆体に対する比は、1以上(例えば、10:1、9;1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1または1:1)である。
【0017】
同様に、第1の炭素材料および無機化合物は、任意の適切な比で混合することができる。天然の非リグノセルロース性炭素前駆体の、無機化合物に対する比は、重量パーセントで表して、約10:1〜1:10(例えば、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8または1:9)の範囲でありうる。
【0018】
無機化合物が天然の非リグノセルロース性炭素前駆体に取り込まれる実施の形態では、(随意的に寝かせた)混合物を、前記炭素前駆体を炭化するのに有効な温度で加熱する。混合物は、不活性または還元性雰囲気で加熱することができる。混合物を、所定の時間(例えば、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間またはそれ以上の時間)、約600℃〜900℃(例えば、600、650、700、750、800、850または900℃)の温度で加熱し、その後冷却することができる。加熱工程の間、天然の非リグノセルロース性炭素前駆体は分解し、炭素を形成する。
【0019】
無機化合物が第1の炭素材料に取り込まれる実施の形態では、混合物は、前記無機化合物を前記第1の炭素材料内に取り込むのに有効な温度で加熱される。混合物を、所定の時間(例えば、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間またはそれ以上の時間)、約300℃〜850℃の温度で加熱し、その後冷却することができる。
【0020】
冷却後、無機化合物を取り込んだ炭素材料を溶媒ですすいで、無機化合物を除去する。無機化合物の抽出に好ましい溶媒は水である。随意的に、抽出溶媒に酸を含めてもよい。無機化合物を除去する方法の1つは、炭素材料を、水および酸で連続してすすぐ工程を含む。無機化合物を除去するさらなる方法は、炭素材料を水性の酸混合物(例えば、酸と水の混合物)ですすぐ工程を含む。抽出の際に用いられる酸には塩酸が含まれうる。無機化合物を抽出する工程は、先に無機化合物が充填された体積によって細孔が画成された、多孔質の活性炭材料を形成する。本発明はまた、前述の方法のいずれか1つに従って作られた多孔質の活性炭材料にも関する。
【0021】
本発明の方法を用いて作られた炭素材料は、約300m2/gより大きい比表面積、例えば、350、400、500または1000m2/gより大きい比表面積を有しうる。
【0022】
炭素系の電極を製造する方法は、
天然の非リグノセルロース性炭素前駆体と無機化合物の水性混合物を形成し、
前記水性混合物を不活性または還元性雰囲気下で加熱して前記炭素前駆体を炭化し、
前記炭化した前駆体から前記無機化合物を除去し、
得られた多孔質の活性炭材料から炭素系の電極を形成する、
各工程を有してなる。
【0023】
炭素系の電極を製造するためのさらなる方法は、
天然の非リグノセルロース性炭素前駆体を不活性または還元性雰囲気で加熱して第1の炭素材料を形成し、
前記第1の炭素材料を無機化合物と混合して混合物を形成し、
前記混合物を加熱して前記無機化合物を前記第1の炭素材料内に取り込み、
前記第1の炭素材料から前記無機化合物を除去して多孔質の活性炭材料を製造し、
前記多孔質の活性炭材料から炭素系の電極を形成する、
各工程を有してなる。
【0024】
炭素系の電極を製造するためのさらに別の方法は、
天然の非リグノセルロース性炭素前駆体を不活性または還元性雰囲気で加熱して中間炭素材料を形成し、
前記中間炭素材料を酸化雰囲気下で加熱し、
得られた多孔質の活性炭材料から炭素系の電極を形成する、
各工程を有してなる。酸化雰囲気は、蒸気(H2O)、COおよび/またはCO2を含みうる。
【0025】
随意的に、炭素系の電極を製造する前述の方法と併せて、多孔質の活性炭材料を、カーボンブラックおよび/または、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または他の適切な結合剤などのポリマー性の結合剤と混合し、圧縮して、炭素系の電極を形成することができる。
【0026】
例として、約100〜300μmの厚さを有するカーボン紙は、60〜90重量%の活性炭材料、5〜20重量%のカーボンブラックおよび5〜20重量%のPTFEを含む粉末混合物を回転および加圧することによって調製することができる。カーボンシートを型打ちするか、またはカーボン紙からパターン化し、導電性の電流コレクタへと薄板状にして、炭素系の電極を形成することができる。
【0027】
高エネルギー密度装置はウルトラキャパシタを含みうる。ウルトラキャパシタは、ロールケーキの形状、プリズムの形状、ハニカムの形状、または他の適切な配置を有しうる。本発明に従って作製した炭素系の電極は、炭素−炭素ウルトラキャパシタまたはハイブリッドウルトラキャパシタ内に取り込むことができる。炭素−炭素ウルトラキャパシタでは、両方の電極は炭素系電極である。他方では、ハイブリッドウルトラキャパシタにおける電極の1つは炭素系であり、他の電極は、酸化鉛、酸化ルテニウム、水酸化ニッケルなどの擬似容量性の材料、または導電性ポリマー(例えば、パラフルオロフェニル−チオフェン)などの別の材料でありうる。
【0028】
有利には、本発明の炭素系電極を用いて作製されたウルトラキャパシタは、市販の炭素材料に由来する電極を使用して作製されたウルトラキャパシタのエネルギー密度の2倍を超えるエネルギー密度を示す。
【0029】
本発明に従って用いられる無機化合物としては、水酸化アルカリまたは塩化物(例えば、NaOH、KOH、NaCl、KCl)、リン酸、またはCaCl2またはZnCl2などの他の適切な塩が挙げられる。
【0030】
炭素前駆体は、天然の非リグノセルロース性物質である。本明細書で定義するように、セルロースとリグニンの両方を含む物質はリグノセルロースであり、例えば、リグニンに密接に結合したセルロースを有する植物の木質の細胞壁の主要部分を構成する、幾つかの密接に関係した物質のいずれかが挙げられる。本発明と共に用いられる非リグノセルロース性の炭素前駆体は、リグニンおよびセルロースのうち少なくとも一方を実質的に含まない。実質的に含まないとは、リグニンおよびセルロースのうち少なくとも一方が、例えば、最大でも、炭素前駆体の組成の0.5、1または2重量%しか構成しないことを意味する。
【0031】
1つの実施の形態では、天然の非リグノセルロース性の炭素前駆体は、セルロースを含み、リグニンを実質的に含まない。さらなる実施の形態では、天然の非リグノセルロース性の炭素前駆体は、リグニンを含むが、セルロースを実質的に含まない。さらなる実施の形態では、天然の非リグノセルロース性の炭素前駆体は、リグニンおよびセルロースを実質的に含まない。天然の非リグノセルロース性炭素前駆体は、合成樹脂などの合成物質ではない。
【0032】
木材(wood)を意味するラテン語であるリグニンは、植物に剛性を与える化合物である。リグニンは、非晶質の構造および大きい分子量を有する3次元ポリマーである。植物繊維における3つの主成分のうち、リグニンは水に対し最小の親和性を有する。加えて、リグニンは熱可塑性物質である(すなわち、リグニンは比較的低い温度で軟化し始め、温度の上昇に伴って、容易に流体化する)。
【0033】
セルロースは植物繊維の基本的構成成分である。セルロース分子は、例えば、長鎖における、互いに連結した、すなわち、束になって結合している、ミクロフィブリルと呼ばれるグルコース単位を含みうる。ヘミセルロースもまた植物繊維において観察される。ヘミセルロースは、典型的には、比較的短い分岐鎖における、互いに連結した多糖である。通常は親水性であるヘミセルロースは、通常、セルロース・ミクロフィブリルと密接に関連し、セルロースをマトリクス内に埋め込む。
【0034】
農業に由来する典型的なリグノセルロース繊維は、例えば、わら、麻、亜麻、サイザル麻、およびジュートに見られる。他方では、非リグノセルロース繊維は、リグニンおよび/またはセルロースを実質的に含まない。
【0035】
天然の非リグノセルロース性炭素前駆体は、小麦粉、クルミ粉末、トウモロコシ粉末、トウモロコシデンプン、米粉、およびジャガイモ粉などの食用の粒子から誘導することができる。他の天然の非リグノセルロース性炭素前駆体としては、ビート、キビ、大豆、オオムギ、および綿が挙げられる。非リグノセルロース性の材料は、遺伝子操作されている、またはされていない、作物または植物から誘導することができる。
【0036】
典型的な非リグノセルロース性の炭素前駆体は小麦粉である。小麦粉は、小麦の種子である小麦穀粒を粉砕することによって生成される。小麦穀粒は3つの主要部位:内胚乳、胚芽、およびふすまを有する。全粒小麦粉は穀粒の3つの部位のすべてを含むが、精白小麦粉は内胚乳のみを粉砕したものである。
【0037】
組成的には、追加の成分も天然に存在するが、精白小麦粉には主にデンプンが含まれる。精白小麦粉中の主成分は、かっこ内におよそのパーセンテージを示すが、デンプン(68〜76%)、タンパク質(6〜18%)、水分(11〜14%)、ガム(2〜3%)、脂質(1〜1.5%)、灰分(<0.5%)および糖類(<0.5%)である。
【0038】
デンプンは精白小麦粉の大部分を構成する。デンプン量が「少ない」と見なされている強力粉でさえも、他の成分のすべてを合計した量よりも多くのデンプンを含む。デンプンは、典型的には、小さい粒子または顆粒として小麦粉中に存在する。タンパク質の大部分は、デンプン顆粒を一緒に結合し、それらを内胚乳内の所定の位置に保持する。グルテン形成タンパク質であるグルテニンおよびグリアジンは、典型的には、内胚乳におけるタンパク質の約80%を構成する。精白小麦粉中の他のタンパク質としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、およびリパーゼなどの酵素が挙げられる。デンプン以外の小麦粉中の他の炭水化物としては、ガム、特にペントサンガムが挙げられる。ペントサンガムは、水溶性の食物繊維源である。脂質は油および乳化剤を含み、灰分は無機物質(無機塩類)を含み、これら無機物質として、銅、カリウム、ナトリウム、および亜鉛が挙げられる。
【実施例】
【0039】
本発明は、以下の実施例によって、さらに明確になるであろう。
【0040】
実施例1
小麦粉を、最初に、窒素流下、800℃で2時間、炭化した。次に、得られた炭化前駆体を、KOH溶液(水中、46重量%)と、1:5(重量/重量)の炭素:KOHの比で混合した。混合物を、窒素下で800℃まで、2時間加熱し、室温まで冷却した。冷却した混合物を、水、次に希HClで洗浄し、カリウムを除去した。流出液のpHをモニタリングすることによって、カリウムの完全な除去を確認した。炭素粉末生成物を乾燥し、微粉末(〜10マイクロメートル)になるまで粉砕した。
【0041】
80gの炭素粉末を10gのカーボンブラックおよび10gのPTFEと混合して、十分に混合した塊を得た。次に、この混合物をロールミルで引き伸ばし、およそ〜100マイクロメートルの厚さを有する、しっかりとした膜を得た。薄膜をスタンピングすることによって炭素系の電極を製造した。
【0042】
炭素系の電極を、アセトニトリル中、1.5Mのテトラエチルアンモニウム−テトラフルオロホウ酸塩(TEA−TFB)に浸漬した。多孔質の分離装置も電解質溶液に浸漬し、電極/分離装置/電極の積層体を、対向するアルミニウム電流コレクタを備えたボタン電池へと組み立てた。太陽電池性能を測定するため、標準的なボルタンメトリ試験およびガルバノスタット試験を行った。活性炭電極の容量キャパシタンスは96F/cm3であった。
【0043】
実施例2
小麦粉の代わりにトウモロコシ粉末を用いた以外は実施例1の実験を繰り返した。活性炭電極の容量キャパシタンスは97F/cm3であった。
【0044】
実施例3(比較例)
KOH(45重量%)水溶液を水性のフェノール樹脂(Georgia Pacific GP(登録商標)510D34)と3:1の重量比で混合することによって、比較例となる樹脂系の炭素材料を調製した。125℃で24時間、次に、175℃で24時間、オーブンで加熱することによって混合物を硬化し、黄褐色をした発泡状態の個体を得た。硬化した混合物を機械力によって小片に粉砕し、黒鉛坩堝内に入れ、レトルト炉(CM Furnaces社製、モデル1216FL)に入れて炭化/活性化した。
【0045】
加熱炉温度を、200℃/時間の速度で800℃まで上昇させ、800℃で2時間保持し、次に自然に冷却させた。加熱サイクル全体を通じて、加熱炉を窒素ガスでパージした。
【0046】
周囲温度まで冷却した後、炭素材料を脱イオン水に数分間浸漬し、ろ過し、既知量の37%HCl溶液(炭素1gあたり2mL)に1時間浸漬し、ろ過し、次に、流出液のpHが脱イオン源と同一になるまで脱イオン水で繰り返し洗浄した。最後に、炭素を真空オーブンで一晩、110℃で乾燥し、所望の粒径になるまで粉砕した。
【0047】
実施例1に記載した手順を用いて測定した容量キャパシタンスは105F/cm3であった。
【0048】
実施例4(比較例)
ウルトラキャパシタ用途に使用するために開発された、市販のPICA炭素(リグノセルロースの材料から誘導)を本発明の炭素材料に代えて使用し、実施例1に記載されるボタン型電池の手順を用いて試験した。容量キャパシタンスは45F/cm3であった。図1Aおよび1Bは、この材料のブロック様の粒状の構造を有するSEM顕微鏡写真を示している。BET表面積は1800m2/gであった。
【0049】
実施例5(比較例)
さらに、実施例1に従ったボタン電池の手順を用いて、株式会社クラレから市販されるカーボン−YP50(リグノセルロースの材料から誘導)を特徴化した。容量キャパシタンスは65F/cm3であった。
【0050】
実施例6
小麦粉をKOH溶液(水中、46重量%)で混合し、1:3の比(重量/重量)の小麦粉:KOHを得た。混合物を1時間寝かし、小麦粉の構造内にKOHを取り込ませた。次に、混合物を、制御雰囲気の加熱炉に入れ、窒素流下、800℃まで4時間加熱し、窒素下で室温まで冷却した。
【0051】
冷却後、混合物を、最初に水で、次に希HClで洗浄し、カリウムを除去した。流出液のpHをモニタリングすることによって、カリウムの完全な除去を確認した。炭素材料を乾燥し、微粉末(〜10マイクロメートル)になるまで粉砕した。
【0052】
炭素材料のSEM顕微鏡写真を図2に示す。比較実施例4のPICA炭素とは対照的に、本発明の炭素は、炭素材料の薄片を含んでいた。この構造は、電極の作製の間に、炭素材料の充填を促進すると考えられる。
【0053】
実施例1の手順に従って、ボタン電池を組み立てた。容量キャパシタンスは95F/cm3であった。
【0054】
実施例7(比較例)
小麦粉に代えてクルミ殻粉末を使用した以外は、実施例6の実験を繰り返した。容量キャパシタンスは59F/cm3であった。この実施例は、リグノセルロースの前駆体を使用して達成された、低い容量キャパシタンスを示した。
【0055】
実施例8
トウモロコシ粉末を用い、粉末:KOHの比を1:5にし、700℃に設定した加熱炉内でサンプルを加熱した以外は、実施例6の実験を繰り返した。
【0056】
実施例9
米粉を用いて実施例6の実験を繰り返した。炭素を結合剤と混合し、実施例1に記載される手順に従って電極を作製した。容量キャパシタンスは80F/cm3であった。
【0057】
実施例10
小麦粉のKOHに対する比を1:1に変更した以外は、実施例6の実験を繰り返した。炭素を結合剤と混合し、実施例1に記載されるように電極を作製した。容量キャパシタンスは88F/cm3であった。
【0058】
実施例11
小麦粉を、最初に、窒素下、800℃で4時間、炭化した。得られた炭化前駆体材料を、1:3(重量/重量)の炭素:KOHの比で、KOH溶液(水中、46重量%)と混合した。次いで、混合物を窒素下で800℃まで4時間加熱し、窒素下で室温まで冷却させた。冷却後、混合物を水で洗浄し、最後に希HClで洗浄して、カリウムを除去した。流出液のpHをモニタリングすることによって、カリウムの完全な除去を確認した。次に、炭素を乾燥し、微粉末(〜10マイクロメートル)になるまで粉砕し、結合剤と混合し、実施例1に記載されるように電極を作製した。容量キャパシタンスは94F/cm3であった。
【0059】
実施例12
トウモロコシ粉末を用いて実施例11の実験を繰り返した。炭素を結合剤と混合し、実施例1に記載されるように電極を作製した。容量キャパシタンスは91F/cm3であった。
【0060】
実施例13
小麦粉を、最初に、窒素下で850℃まで炭化した後、二酸化炭素中で活性化した。得られた炭素を結合剤と混合し、実施例1に記載されるように電極を作製した。容量キャパシタンスは80F/cm3であった。
【0061】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明にさまざまな変更および変形をなしうることは、当業者には明白であろう。本発明の精神および物質を取り込んだ開示される実施の形態の変更、組合せ、サブコンビネーションおよびバリエーションは、当業者に想起されうることから、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にあるすべてのものを含むものと解釈されるべきである。
図1A
図1B
図2