(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プーリに係合又は接触可能な摩擦伝動部を有する摩擦伝動ベルトであって、前記摩擦伝動部が、エチレン−α−オレフィンエラストマーと鉱物系充填剤と界面活性剤とを含むゴム組成物で形成され、かつ前記界面活性剤の割合が前記鉱物系充填剤100質量部に対して10〜80質量部である摩擦伝動ベルト。
鉱物系充填剤が、炭酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、タルク、クレー及びシリカから選択された少なくとも一種である請求項1又は2記載の摩擦伝動ベルト。
エチレン−α−オレフィンエラストマーと鉱物系充填剤と界面活性剤とを含むゴム組成物で形成された未加硫ゴムシートを加硫することにより、請求項1〜10のいずれかに記載の摩擦伝動ベルトを製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
摩擦伝動ベルトは、プーリに係合又は接触可能な摩擦伝動部(又は摩擦伝動面)を有しており、摩擦伝動部は、エチレン−α−オレフィンエラストマーと鉱物系充填剤(又は非カーボン系充填剤)と界面活性剤とを含むゴム組成物で形成されている。
【0017】
エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−α−オレフィン系ゴム)は、耐熱性、耐久性、経済性に優れるとともに、ハロゲンを含まないため、環境にも優しい。エチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、特に制限されず、例えば、エチレン−α−オレフィンゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムなどが挙げられる。
【0018】
α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンなどの鎖状α−C
3−12オレフィンなどが挙げられる。α−オレフィンは、単独又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのα−オレフィンのうち、プロピレンなどのα−C
3−4オレフィン(特にプロピレン)が好ましい。
【0019】
エチレンとα−オレフィンとの割合(質量比)は、前者/後者=40/60〜90/10、好ましくは45/55〜85/15(例えば、50/50〜82/18)、さらに好ましくは55/45〜80/20(例えば、55/45〜75/25)程度であってもよい。
【0020】
ジエン系単量体としては、非共役ジエン系単量体、例えば、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどのC
5−15非共役ジエン系単量体などが例示できる。これらのジエン系単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
ジエン系単量体の割合は、4〜15質量%程度の範囲から選択でき、例えば、4.2〜13質量%(例えば、4.3〜12質量%)、好ましくは4.4〜11.5質量%(例えば、4.5〜11質量%)程度であってもよい。
【0022】
代表的なエチレン−α−オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−α−オレフィンゴム[例えば、エチレン−プロピレンゴム(EPR)]、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴム[例えば、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDMなど)]などが例示できる。
【0023】
これらのエチレン−α−オレフィンエラストマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのエチレン−α−オレフィンエラストマーのうち、EPDMなどのエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムが好ましい。なお、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムのヨウ素価は、例えば、3〜40、好ましくは5〜30、さらに好ましくは10〜20程度であってもよい。ヨウ素価が小さすぎると、ゴム組成物の加硫が不十分になって磨耗や粘着が発生し易く、ヨウ素価が大きすぎると、ゴム組成物のスコーチが短くなって扱い難くなると共に耐熱性が低下する傾向がある。
【0024】
鉱物系充填剤(又は非カーボン系粉粒状充填剤)は、被水時の摩擦係数の低下を抑制しつつ、乾燥時の摩擦係数を適度に低下させ、乾燥時と被水時との摩擦係数の差を低減できるためか、被水時の動力伝達性の向上とスリップ音の抑制に寄与しているようである。
【0025】
鉱物系充填剤としては、例えば、金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩など)、金属珪酸塩(例えば、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、アルミノ珪酸マグネシウム、タルク、クレー、マイカ、珪藻土、カオリン、ベントナイト、スメクタイト、ワラストナイト(ウォラストナイト)など)、充填剤としての金属酸化物(例えば、シリカ(乾式シリカ、湿式シリカ)、アルミナなど)などが例示できる。これらの鉱物系充填剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの鉱物系充填剤のうち、炭酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ(例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレーなど)が好ましく、特に、炭酸カルシウム、クレーが好ましい。
【0026】
鉱物系充填剤のpHは、JIS K5101に準拠して、7以上(例えば、7〜10)、好ましくは7.5〜9.8、さらに好ましくは8〜9.5程度であってもよい。界面活性剤が酸性を示すときゴム組成物の架橋反応が阻害される場合があるが、鉱物系充填剤のpHが上記範囲にあれば、鉱物系充填剤がゴム組成物中に安定に存在でき、かつゴム組成物の架橋反応を効率よく進行させて、架橋密度を高くでき、被水時の動力伝達性と耐発音性とをより一層改善できる。
【0027】
鉱物系充填剤の平均粒子径(一次平均粒子径)は、例えば、0.5〜20μm、好ましくは0.7〜15μm、さらに好ましくは1〜10μm(例えば、1〜5μm)程度であってもよい。なお、平均粒子径は、慣用の方法、例えば、空気透過法、レーザー回折法などで測定できる。
【0028】
鉱物系充填剤の比表面積は、例えば、0.1〜100m
2/g、好ましくは0.5〜50m
2/g、さらに好ましくは1〜10m
2/g程度であってもよい。なお、比表面積は、慣用の方法、例えば、空気透過法、窒素ガス吸着法などで測定できる。
【0029】
鉱物系充填剤の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば、1〜60質量部、好ましくは2〜55質量部、さらに好ましくは5〜50質量部(例えば、7〜45質量部、好ましくは10〜40質量部)程度であってもよい。鉱物系充填剤の量が少なすぎても多すぎても、ドライ(乾燥)状態とウェット(湿潤)状態との摩擦係数の差が大きくなるためか、スリップ音が発生し易く、ウェット時の伝達性能も低下する傾向にある。
【0030】
界面活性剤は、被水時の摩擦伝動部に摩擦係数の勾配が形成されるのを抑制し、被水時の摩擦係数を増大でき、摩擦伝動部とプーリとの間に形成される水膜を薄膜化して、摩擦伝動部とプーリとの摩擦力を向上できるためか、鉱物系充填剤とともに被水時の動力伝達性と耐発音性との両立に寄与していると推測される。界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤などであってもよいが、摩擦伝動部表面が親水性を維持して水膜を薄膜化でき、被水時の摩擦係数を増大できる点から、非イオン界面活性剤が好ましい。
【0031】
非イオン界面活性剤としては、例えば、エーテル型、エステル型、エステルエーテル型、含窒素型などが例示できる。エーテル型非イオン界面活性剤としては、例えば、(ポリ)アルカンポリオールアルキルエーテル(例えば、ポリC
2−3アルキレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノノニルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノデシルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノラウリルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノトリデシルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノセチルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノステアリルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノオレイルエーテルなどのポリC
2−3アルキレングリコールC
8−24アルキルエーテルなど)、(ポリ)アルカンポリオールアリールエーテル(例えば、ポリC
2−3アルキレングリコールモノオクチルフェニルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノノニルフェニルエーテルなどのポリC
2−3アルキレングリコールC
8−24アルキルC
6−10アリールエーテルなど)、(ポリ)アルカンポリオールアラルキルエーテル(例えば、ポリC
2−3アルキレングリコールモノクミルフェニルエーテルなどのポリC
2−3アルキレングリコールモノC
6−10アリールC
1−4アルキルエーテルなど)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどが例示できる。
【0032】
エステル型非イオン界面活性剤としては、3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステル、例えば、グリセリンモノステアリン酸エステルなどのグリセリンC
8−24脂肪酸エステル;ペンタエリスリトールジ牛脂脂肪酸エステルなどのペンタエリスリトールC
8−24脂肪酸エステル;ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖ジオレイン酸エステルなどのショ糖C
8−24脂肪酸エステル;ソルビタンモノ乃至トリオレイン酸エステルなどのソルビタンC
8−24脂肪酸エステル(又はソルビトールC
8−24脂肪酸エステル)などが例示できる。
【0033】
エステルエーテル型非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールモノラウリン酸エステルなどのポリC
2−3アルキレングリコールC
8−24脂肪酸エステルなど)、3価以上の多価アルコールのC
2−3アルキレンオキサイド付加体の脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレングリセリンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油などのポリオキシC
2−3アルキレングリセリンC
8−24脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステルなどのポリオキシC
2−3アルキレンソルビタンC
8−24脂肪酸エステル(又はポリオキシC
2−3アルキレンソルビトールC
8−24脂肪酸エステル)などが例示できる。
【0034】
含窒素型非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテルなどのC
8−24アルキルアミンのC
2−3アルキレンオキサイド付加体、脂肪酸アルカノールアミド又はそのC
2−3アルキレンオキサイド付加物(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ脂肪酸モノエタノールアミドなどのC
8−24脂肪酸アルカノールアミド又はそのC
2−3アルキレンオキサイド付加体など)などが例示できる。
【0035】
これらの非イオン界面活性剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの非イオン界面活性剤のうち、少なくともポリオキシエチレン単位を含む非イオン界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン単位とポリオキシプロピレン単位とを含む非イオン界面活性剤も好ましい。さらに、これらの非イオン界面活性剤のうち、エーテル型非イオン界面活性剤、例えば、ポリC
2−3アルキレングリコールC
10−16アルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどが好ましい。
【0036】
非イオン界面活性剤のHLBは、例えば、1〜20、好ましくは5〜17、さらに好ましくは8〜15程度であってもよい。HLBが小さすぎると、ウェット状態で発音し易くなり、HLBが高すぎると、発音抑制効果の速効性があるものの、持続性を欠くようである。
【0037】
界面活性剤の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば、1〜25質量部、好ましくは1.5〜20質量部、さらに好ましくは2〜15質量部(例えば、2〜10質量部)程度であってもよい。エチレン−α−オレフィンエラストマーに対して、界面活性剤の量が少なすぎると、ドライ状態とウェット状態との摩擦係数の差が大きくなるためか、ウェット状態で発音し易くなり、界面活性剤の量が多すぎても、摩擦伝動部に界面活性剤がブリードアウトし、動力伝達性能が低下し、ウェット状態で異音を発し易くなる。
【0038】
界面活性剤の割合は、鉱物系充填剤100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは3〜80質量部、さらに好ましくは5〜50質量部(例えば、10〜40質量部)程度であってもよい。
【0039】
界面活性剤の粘度は、25℃において、例えば、10〜250mPa・s、好ましくは15〜220mPa・s、さらに好ましくは20〜200mPa・s程度であってもよい。界面活性剤の粘度が低すぎると摩擦伝動ベルトの耐熱性が低下し、粘度が高すぎても摩擦伝動部を十分に改質できない。
【0040】
ゴム組成物は、必要に応じて、界面活性剤及び鉱物系充填剤以外の添加剤、例えば、可塑剤、カーボンブラック(又はカーボン系充填剤)、短繊維、加硫剤(又は架橋剤)、共加硫剤(又は共架橋剤)、加硫促進剤(又は架橋助剤)、加硫遅延剤、接着性改善剤、老化防止剤、粘着付与剤、安定剤、カップリング剤、可塑剤、滑剤、着色剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤のうち、可塑剤、カーボンブラック、短繊維、加硫剤、共加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤などが汎用される。
【0041】
可塑剤としては、特に制限されず、例えば、パラフィン系可塑剤、例えば、C
4−155パラフィン又はその誘導体(例えば、C
4−50パラフィン又はその誘導体)を用いる場合が多い。パラフィン系可塑剤としては、具体的には、直鎖状飽和炭化水素(例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカンなどのn−パラフィンなど)、分岐鎖状飽和炭化水素(例えば、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタンなどのイソパラフィンなど)、これらの飽和炭化水素の誘導体などが例示できる。なお、パラフィン系可塑剤は、例えば、日本油脂株式会社から「NAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油)」、出光興産株式会社から「PW−90(n−パラフィン系プロセスオイル)」、出光石油化学株式会社製から「IP−ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8重量%以上のイソパラフィン)」、三光化学工業株式会社製から「ネオチオゾール(n−パラフィン系プロセスオイル)」として入手できる。可塑剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。可塑剤は、室温で液状であるのが好ましい。
【0042】
可塑剤(例えば、パラフィン系可塑剤)の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば、1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部、さらに好ましくは3〜20質量部程度であってもよい。可塑剤の割合が上記範囲にあれば、摩擦伝動部の親水性を維持することができる。
【0043】
カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRFなどのファーネスブラックなどが例示できる。これらのカーボンブラックは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのカーボンブラックのうち、HAF、GPFなどが汎用される。
【0044】
カーボンブラックの割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば、10〜100質量部、好ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは30〜70質量部(例えば、40〜60質量部)程度であってもよい。また、カーボンブラックの割合は、鉱物系充填剤100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは5〜80質量部程度であってもよい。
【0045】
短繊維としては、例えば、天然繊維(綿、麻など)、再生繊維(レーヨン、アセテートなど)、無機繊維(金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維など)、合成繊維などが例示できる。合成繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、スチレン系繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、アクリル系繊維、ビニルアルコール系繊維、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリC
2−4アルキレンアリレート系繊維、液晶ポリエステル繊維などの全芳香族ポリエステル系繊維など)、ポリアミド系繊維(ポリアミド6、ポリアミド66などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維などの全芳香族ポリアミド系繊維など)、ポリウレタン系繊維などが例示できる。これらの繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの繊維のうち、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート系繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド66などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維など)などが汎用される。
【0046】
短繊維の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば、1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、さらに好ましくは10〜30質量部程度であってもよい。
【0047】
加硫剤は、硫黄系加硫剤と非硫黄系加硫剤とに分類できる。硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄(例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄など)、硫黄化合物(例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄などの塩化硫黄など)などが例示できる。
【0048】
非硫黄系加硫剤としては、有機過酸化物[例えば、ジアシルパーオキサイド(例えば、ジベンゾイルパーオキサイド)、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド(例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1−ジ−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼンなど)など]、加硫剤としての金属酸化物[例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛など]、有機多価アミン[例えば、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−オルト−クロロアニリンなど]などが例示できる。
【0049】
加硫剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい加硫剤は、少なくとも硫黄又は有機過酸化物を含んでおり、通常、硫黄と有機過酸化物と金属酸化物とを含んでいる場合が多い。
【0050】
加硫剤の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、30質量部以下、好ましくは0.01〜25質量部、好ましくは0.05〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜15質量部程度であってもよい。
【0051】
共加硫剤としては、例えば、臭化オレフィン、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸の金属塩(アルカリ土類金属塩、遷移金属塩など)など];オキシム類[例えば、キノンジオキシムなど]、マレイミド類[例えば、ビスマレイミド、フェニルマレイミド、N−N’−m−フェニレンビスマレイミドなど]、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレートなど];多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリル(イソ)シアヌレートなど]などが例示できる。
【0052】
共加硫剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。共加硫剤の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜15質量部(例えば、1〜10質量部)程度であってもよい。
【0053】
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系促進剤(例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラム・ジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラム・ジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)など)、チアゾ−ル系促進剤(例えば、2−メルカプトベンゾチアゾ−ル又はその塩など)、スルフェンアミド系促進剤(例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなど)、ウレア系促進剤(例えば、エチレンチオウレアなど)、これらの組み合わせなどが例示できる。
【0054】
加硫促進剤の割合は、エチレン−α−オレフィンエラストマー100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜15質量部(例えば、1〜10質量部)程度であってもよい。
【0055】
老化防止剤としては、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、これらの組み合わせなどが例示できる。老化防止剤の割合は、エチレン−α−オレフィン100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜15質量部(例えば、1〜10質量部)程度であってもよい。
【0056】
ゴム組成物(未加硫のゴム組成物)は、慣用の方法、例えば、各成分を、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混合機(又は混練機)を用いて混合(又は混練)することにより調製できる。
【0057】
摩擦伝動ベルトは、プーリに係合又は接触可能な摩擦伝動部が上記ゴム組成物で形成されている限り特に制限されない。摩擦伝動ベルトは、通常、圧縮層(又は圧縮ゴム層)を備えており、圧縮層の摩擦伝動部(又は摩擦伝動面)が上記ゴム組成物で形成されていてもよく、圧縮層全体が上記ゴム組成物で形成されていてもよい。
【0058】
図1は、本発明の摩擦伝動ベルトの一例を示す概略断面図である。
図1に示すVリブドベルト11は、ベルト長手方向に沿って心線12を埋設した接着層13と、この接着層13の一方の面に積層され、かつベルト幅方向に配向する短繊維16を含む圧縮層14と、接着層13の他方の面に形成されたカバー帆布からなる伸張層15とを備えている。圧縮層14にはV字状溝が切削されてリブ17が形成されている。なお、圧縮層14のリブ表面(リブ側面)18が摩擦伝動面である。
【0059】
心線12としては、通常、マルチフィラメント糸の撚糸コード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線12の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば、0.3〜3mm、好ましくは0.4〜2.5mm、さらに好ましくは0.5〜2mm程度である。心線12を構成する繊維は、前記短繊維と同様の繊維、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC
2−4アルキレンアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、これらの組み合わせなどが例示できる。なお、心線12は、接着層13との接着性を向上させるため、レゾルシンとホルマリンとラテックスとを含む処理液(RFL液)で処理(被覆又は含浸)してもよい。なお、RFL液は、摩擦伝動部を形成するゴム組成物の項で例示した添加剤を含んでいてもよい。
【0060】
接着層13は、摩擦伝動部を形成するゴム組成物と同種又は異種のゴム組成物で形成してもよい。接着層13を形成するゴム組成物において、ゴムとしては、圧縮層14、伸張層15のゴムの種類などに応じて適宜選択でき、例えば、オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー、ポリオクテニレンゴムなど)、ジエン系ゴム(例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムなど)、これらの組み合わせなどが例示でき、少なくともエチレン−α−オレフィンエラストマーを含むゴムであるのが好ましい。また、接着層13を形成するゴム組成物は、摩擦伝動部を形成するゴム組成物の項で例示した添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
伸張層15を構成する帆布としては、例えば、織物、編物、不織布などが例示できる。帆布を構成する繊維としては、前記短繊維と同様の繊維、例えば、綿、麻などの天然繊維;金属繊維、ガラス繊維などの無機繊維;ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリスチレン繊維、ポリフルオロエチレン繊維、ポリアクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アラミド繊維などの有機繊維、これらの組み合わせなどが例示できる。なお、織物は、前記繊維で構成された糸を、平織、綾織、朱子織などすることにより製織される。
【0062】
上記帆布はRFL液で処理してもよい。また、RFL液で処理された帆布に対して、未加硫ゴムを擦り込むフリクション処理を行ってもよく、未加硫ゴムと溶剤とを含むソーキング液で処理してもよい。
【0063】
図1に示す摩擦伝動ベルトは、例えば、円筒状の平坦な成形型に、伸張層用帆布と第1の接着層用未加硫ゴムシートとを順次巻き付け、この上に心線を螺旋状にスピニングし、さらに第2の接着層用未加硫ゴムシートと圧縮層用未加硫ゴムシートとを順次巻き付けて積層体を形成し、この積層体を前記成形型に押圧しながら加硫して加硫ベルトスリーブを作製し、加硫ベルトスリーブの圧縮層をグラインダーにより研削して複数のリブを形成し、前記加硫ベルトスリーブを所定幅に周方向に切断し、所定の数のリブを有するVリブドベルトに仕上げることにより、作製される。
【0064】
図2は、本発明の摩擦伝動ベルトの他の例を示す概略断面図である。
図2に示すVリブドベルト21は、圧縮層24と、この圧縮層24の一方の面に積層され、かつランダムに配向する短繊維26を含む伸張層25とを備えており、圧縮層24には、ベルト長手方向に延びる複数のリブ27が形成されており、これらのリブの表面には、短繊維が固着された植毛層29が形成されている。
【0065】
この例では、心線22がベルト長手方向に沿ってベルト本体内に埋設しており、心線22の中心は圧縮層24と伸張層25との境界に位置し、圧縮層24及び伸張層25の双方に接している。なお、心線22は前記と同様の心線を使用できる。
【0066】
圧縮層24は、心線22との接着性の点から、短繊維を含んでいない。圧縮層24を形成するゴム組成物は、短繊維を含まない限り、前記と同様のゴム組成物で形成できる。
【0067】
伸張層25は、短繊維を含む限り特に制限されず、摩擦伝動部を形成するゴム組成物と同種又は異種のゴム組成物で形成してもよい。伸張層25を形成するゴム組成物において、ゴムは前記接着層と同様のゴムが例示でき、短繊維以外の添加剤を含んでいてもよい。
【0068】
伸張層25に含有される短繊維は、ベルト幅方向など所定の方向に配向させてもよいが、この例ではランダムに配向しているため、多方向からの裂きや亀裂の発生を抑制できる。さらに、屈曲部を有する短繊維(例えば、ミルドファイバー)を選択すると、より多方向から作用する力に対して耐性ができる。
【0069】
なお、伸張層25には、背面駆動時の異音を抑制するため、背表面に凹凸パターンを形成してもよい。凹凸パターンとしては、編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターンなどが例示でき、特に織物パターンが好ましい。
【0070】
図2に示す摩擦伝動ベルトは、例えば、円筒状の金型の外周面に設けた伸張可能なブラダーの周面に、伸張層用未加硫ゴムシートを巻き付け、この上に心線を螺旋状にスピニングし、さらに圧縮層用未加硫ゴムシートを巻き付けて積層体を形成し、この金型を、内周面に成形用凹凸部を有する加硫型に嵌め込み、前記ブラダーを膨張させて前記積層体を加硫型の内周面に押圧しながら加硫して、複数のリブを有する加硫ベルトスリーブを作製し、この加硫ベルトスリーブを所定幅に周方向に切断し、所定の数のリブを有するVリブドベルトに仕上げることにより、作製される。
【0071】
このように、本発明の代表的な摩擦伝動ベルトは、ベルト長手方向に沿ってベルト本体に埋設する心線を有しており、ベルト本体は、一方の面(ベルト内周面)に凸部(リブ、コグなど)を有する圧縮層と、この圧縮層の他方の面(ベルト外周面)に積層された接着層及び/又は伸張層とを備えている。この摩擦伝動ベルトにおいて、圧縮層の凸部の側面がプーリに係合又は接触可能な摩擦伝動面であり、摩擦伝動面(凸部又は圧縮層)がエチレン−α−オレフィンエラストマーと鉱物系充填剤と界面活性剤とを含むゴム組成物で形成されている。
【0072】
摩擦伝動ベルトの乾燥時の摩擦係数(μ
1)は、例えば、0.7〜0.9、好ましくは0.71〜0.88、さらに好ましくは0.72〜0.86程度であってもよい。また、摩擦伝動ベルトの被水時(濡水時又は注水時)の摩擦係数(μ
2)は、例えば、0.45〜0.7、好ましくは0.47〜0.67、さらに好ましくは0.5〜0.65程度であってもよい。なお、これらの摩擦係数は、後述の実施例の方法により、滑り速度0.3m/秒の条件で測定できる。
【0073】
摩擦伝動ベルトの乾燥時と被水時との摩擦係数の差(μ
1−μ
2)は、例えば、0.3以下、好ましくは0.1〜0.29、さらに好ましくは0.15〜0.28程度であってもよい。また、摩擦伝動ベルトの乾燥時と被水時との摩擦係数の比は、例えば、前者/後者(μ1/μ2)=1.1/1〜1.7/1、好ましくは1.2/1〜1.6/1(例えば、1.3/1〜1.5/1)程度であってもよい。
【0074】
摩擦伝動部(又は摩擦伝動面)の水との接触角は、例えば、40〜75°、好ましくは45〜70°程度であってもよい。水との接触角が上記範囲にあれば、水との濡れ性を持続的に維持し易い。なお、水との接触角は、
図3に示すように、摩擦伝動面31に滴下した水滴30の投影写真から、φ/2法により、下記式に基づいて算出できる。
φ=2tan
−1(h/r)
(式中、φは接触角、hは水滴の高さ、rは水滴の半径を示す)
【0075】
摩擦伝動ベルトは、慣用の方法、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマーと鉱物系充填剤と界面活性剤とを含むゴム組成物で形成された未加硫ゴムシートを加硫することにより作製できる。例えば、プーリに係合又は接触可能な摩擦伝動面を有するベルト本体にベルト長手方向に沿って心線が埋設された摩擦伝動ベルトは、エチレン−α−オレフィンエラストマーと鉱物系充填剤と界面活性剤とを含む第1のゴム組成物で形成された第1の未加硫ゴムシートと、オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー)を含む第2のゴム組成物で形成された第2の未加硫ゴムシートとを含み、かつ第1の未加硫ゴムシートと第2の未加硫ゴムシートとの間に心線を挟持させたベルト本体前駆体を加硫することにより作製できる。より詳細には、前記摩擦伝動ベルトは、円筒状の成形型(例えば、表面がフラットな成形型、表面に凸部を有する成形型など)に、第1の未加硫ゴムシートと心線と第2の未加硫ゴムシートとを順次巻き付けて加硫することにより、加硫ベルトスリーブを形成し、この円筒状の加硫ベルトスリーブを所定幅に周方向にカッティングすることにより作製できる。なお、加硫温度は、例えば、120〜200℃、好ましくは150〜180℃程度であってもよい。
【実施例】
【0076】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0077】
(1)摩擦伝動面の水との接触角
水との接触角は、協和界面科学社製の全自動接触角形(CA−W型)を用いて、摩擦伝動面に滴下した水滴の投影写真から、φ/2法により測定した。なお、測定は滴下から60秒後に行い、評価した。
【0078】
(2)摩擦特性
摩擦係数(μ)−ベルト滑り速度(V)測定に用いた走行試験機は、
図4に示す形態で、駆動プーリ42(直径120mm)、従動プーリ43(直径110mm)、テンションプーリ44(直径60mm)、アイドラープーリ45,46,47(直径77mm)を配置して構成している。Vリブドベルト41を試験機の各プーリ42〜47に掛架し、Vリブドベルト41の従動プーリ43との巻き付け角度を50度、テンションプーリ44への巻き付け角度を180度、アイドラープーリ47への巻き付け角度を120度にして、駆動プーリ42の回転数0〜300rpm、ベルト張力30N/リブの試験条件で、駆動プーリ42に荷重を付与してVリブドベルト41を走行させ、従動プーリ43には負荷を与え走行させた。
【0079】
摩擦係数は、オイラーの公式に基づいて、ベルト滑り速度が0.3m/秒の条件で測定した。なお、ベルト滑り速度は、内蔵エンコーダにて算出されるベルト速度及びプーリ速度から算出した。ベルト速度は、背面アイドラー部の内蔵エンコーダにて算出され、背面アイドラー部でのスリップ率が0%であるとして算出した。
【0080】
ウェット時の摩擦係数は、A地点(従動プーリ43とアイドラープーリ47との間)でVリブドベルト41のリブ面に向けて注水し、常時ベルトが濡れている状態で測定した。
【0081】
(3)伝達性能試験
伝達性能試験に用いた走行試験機は、
図5に示す形態で、駆動プーリ52(直径120mm)、従動プーリ53(直径120mm)、テンションプーリ54(直径65mm)、アイドラープーリ55(直径80mm)を配置して構成している。Vリブドベルト51を試験機の各プーリ52〜55に掛架し、Vリブドベルト51の駆動プーリ52への巻き付け角度を180度、従動プーリ53への巻き付け角度を60°に調節した。
【0082】
伝達性能試験では、走行条件は、室温、駆動プーリ52の回転数2,000rpm、ベルト張力5kgf/リブであり、従動プーリ53に負荷を与えてスリップを促した。伝達性能は、スリップ率2%時の伝達トルクにより評価した。なお、ウェット時の伝達性能は、B地点(駆動プーリ52と従動プーリ53との間)でVリブドベルト51のリブ面に向けて注水し、常時ベルトが濡れている状態で測定した。
【0083】
(4)発音評価 発音評価に用いた試験機は、
図6に示す形態で、クランクプーリ62(直径140mm)、コンプレッサープーリ63(直径110mm)、オルタネータープーリ64(直径55mm)、ウォーターポンププーリ65(直径100mm),アイドラープーリ66(直径70mm)を配置して構成している。6PK1140のサイズのVリブドベルト61を試験機の各プーリ62〜66に掛架し、ベルト初張力を120N/リブとして走行させた。
【0084】
ベルト走行が停止している時に、C地点(クランクプーリ62とコンプレッサープーリ63との間)で2.0ccの注水を行った後に、ゼロからのエンジンスタートで始動時の発音有無を実験者によって自聴した。その結果、発音を確認できない場合には◎、僅かにスリップ音が確認できる場合には○、スリップ音が確認できるが、その音が比較的小さい場合には△、スリップ音が確認され、その音が大きい場合には×と評価した。
【0085】
(5)原料
EPDM:三井化学(株)製「EPT2060M」
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスOD3」
有機過酸化物:化薬アクゾ(株)製「パーカドックス14RP」
界面活性剤1:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C
12C
13合成アルコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加体)、日本乳化剤(株)製「ニューコール2304−Y」、HLB9.3
界面活性剤2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、花王(株)製「エマルゲンLS−106」、HLB12.5
界面活性剤3:ポリオキシエチレントリデシルエーテル、東邦化学(株)製「ペグノールTE−10A」
炭酸カルシウム:白石カルシウム(株)製「ホワイトンSSB」、平均1次粒子径1.5μm、pH9.8
タルク:竹原化学工業(株)製「STタルク」、平均1次粒子径9.0μm、pH9.0
クレー:竹原化学工業(株)製「シリカライト」、平均1次粒子径1.5μm、pH8.0
ポリアミド短繊維:旭化成(株)製「66ナイロン」
パラフィン系オイル:出光興産(株)製「PW−90」
HAFカーボンブラアック:東海カーボン(株)製「シースト3」
固体潤滑剤:グラファイト
【0086】
実施例1〜
9、参考例1〜4及び比較例1〜2
(圧縮層用未加硫ゴムシートの作製)
圧縮層用未加硫ゴムシートは、EPDMポリマー100質量部と、亜鉛華5質量部と、ステアリン酸1質量部と、老化防止剤2質量部と、共架橋剤(N,N’−m−フェニレンジマレイミド)2質量部と、有機過酸化物8質量部と、硫黄0.3質量部と、表1に示す所定量の添加剤とをバンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延することにより作製した。
【0087】
(接着層用未加硫ゴムシートの作製)
接着層用未加硫ゴムシートは、短繊維を配合しない点を除き、圧縮層用未加硫ゴムシートと同様に作製した。
【0088】
(Vリブドベルトの作製)
フラットな円筒状の成形モールドに、2プライのゴム付綿帆布及び接着層用未加硫ゴムシートを巻きつけ、この上にポリエステル繊維のロープからなる心線をスピニングし、さらに圧縮層用未加硫ゴムシートを巻き付けた後、圧縮層用未加硫ゴムシートの上に加硫用ジャケットを被せて、成形モールドを加硫缶内に入れて加硫した後、筒状の加硫スリーブを成形モールドから取り出す。加硫スリーブの圧縮層をグラインダーにより研削して複数のリブを形成してから、カッターにより個々3リブのベルトに切断して、Vリブドベルトに仕上げた。
【0089】
実施例及び比較例のVリブドベルトの水との接触角、摩擦特性、伝達性能試験、発音試験の結果を表に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表から明らかなように、比較例1では、被水時の摩擦係数及び伝達性能が低下し、発音評価でも小さな異音が確認された。比較例2では、水との接触角、乾燥時と被水時との摩擦係数の差が大きく、発音評価で大きな発音が確認されるとともに、乾燥時及び被水時の伝達性能も低い。
【0092】
これに対して、実施例1〜
9及び参考例1〜4では、鉱物系充填剤と界面活性剤とを組み合わせるため、水との濡れ性を示す接触角を低くできるとともに、乾燥時と被水時との摩擦係数の差を小さくでき、発音評価でスリップ音は認められず、乾燥時と被水時との双方で高い伝達性能が得られた。