(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記請求項1に記載の導電性ゴム組成物を筒状に成形し、架橋させるとともに、その外周面に、紫外線照射による酸化膜が形成されたローラ本体を備えることを特徴とする現像ローラ。
【背景技術】
【0002】
前記レーザープリンタや静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置は、例えば高速化、高画質化、カラー化、小型化といった改良が次々に進むことで広く普及してきた。また、こうした改良は現在も絶え間なく続けられている。
例えばレーザープリンタでは、今後のさらなる普及を目指して、より一層の小型化とメンテナンスフリー化とを図るために研究開発が続けられている。そしてこの流れに沿って、前記レーザープリンタの現像部に組み込んで、感光体の表面に形成された静電潜像をトナー像に現像するために用いられる現像ローラについても、さらなる小型化が求められている。
【0003】
前記現像部においては、量規制ブレードによって所定の圧力で現像ローラのローラ本体の外周面にトナーを接触させることで、当該トナーを帯電させるとともに前記外周面に付着させ、次いで付着させたトナーを現像ローラの回転に伴って感光体の表面に搬送して、当該表面に形成された静電潜像に接触させることで、前記静電潜像をトナー像に現像する。
【0004】
多くのレーザープリンタにおいて現像ローラは、感光体およびトナー容器と一体のカートリッジとして、前記レーザープリンタの筐体に対して着脱自在に設けられている。そしてカートリッジ内のトナーがなくなった際には前記カートリッジごと、現像ローラや感光体も新しいものと交換することにより、レーザープリンタのメンテナンスフリー化が図られている。
【0005】
前記現像ローラは、通常、導電性ゴム組成物を円筒状に成形するとともに架橋させてローラ本体を形成し、当該ローラ本体の中心の通孔に金属等からなるシャフトを挿通して電気的に接合するとともに機械的に固定して構成される。
また前記導電性ゴム組成物は、例えば共重合成分としてエチレンオキサイドを含みイオン導電性を有する共重合ゴム(イオン導電性ゴム)と、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等とを少なくとも含むゴム分に、当該ゴム分を架橋させるための架橋剤、架橋促進剤等の各種添加剤を配合する等して調製される。
【0006】
近年の、レーザープリンタのさらなる小型化の要求に対応したり、小型でしかもフルカラー化に対応したレーザープリンタ等を開発したりするためには、前記カートリッジを現状よりもさらに小型化する必要がある。
そのため現像ローラには、
・ 現状よりも小径化すること、
・ 小径化しても従来と同等程度のニップ厚を維持した状態で感光体の表面に圧接させるとともに、トナーへの負担を低減するべく、ローラ本体を低硬度化して柔軟性を高めること、
・ 同じくトナーへの負担を低減するべく、ローラ本体の外周面の摩擦係数をできるだけ低くすること、
・ 低硬度化しても圧縮永久歪みが小さい状態を維持することで、圧接により変形したのち前記圧接を解除しても元の状態になかなか復元されない、いわゆる「ヘタリ」を生じにくくして、前記ヘタリにより形成画像に画像ムラが生じるのを防止できること、
等が求められている。
【0007】
このうちトナーへの負担を低減することは、特に1つのカートリッジ内に収容したトナーによって形成する画像の枚数が多い、いわゆる高耐久向けのレーザープリンタ等において重要である。
すなわち1回の画像形成には、カートリッジ内に収容したトナーのごく一部しか使用されず、残りの大部分のトナーは前記カートリッジ内を繰り返し循環する。そのためカートリッジ内に設けられてトナーと繰り返し接触する現像ローラ等が、前記トナーにどれだけの負担(ダメージ)を与えるか、あるいは与えないかが、同じトナーを繰り返し画像形成に使用した際に、形成画像の画質をどれだけの間、良好な状態で維持し続けることができるか否かを決定する上での大きな鍵となる。
【0008】
負担が大きすぎると、トナーが粉砕されたり逆に凝集したりして粒度分布が広がったり、帯電特性が変動したりするなど、トナーの劣化を生じて、形成画像にカブリが発生しやすくなる。カブリとは、劣化したトナーが形成画像の余白部分にも拡がって画質を低下させる現象である。
例えば特許文献1に記載されているように、前記トナーへの負担を低減するべく、ローラ本体の柔軟性を高めるためには、例えば前記イオン導電性ゴムと併用するゴム分として、従来のNBRに比べて柔軟な架橋物を形成しうるスチレンブタジエンゴム(SBR)を用いるのが有効である。
【0009】
また現像ローラのローラ抵抗値やローラ本体の圧縮永久ひずみ等を調製するため、前記ゴム分としては、さらにクロロプレンゴム(CR)を配合するのも有効である。
またローラ本体の外周面の摩擦係数を低下させるためには、架橋後のローラ本体の外周面に、例えば酸化性雰囲気中で紫外線を照射し、それによって前記外表面を構成する導電性ゴム組成物の架橋物それ自体を酸化させて酸化膜を形成するのが有効である。
【0010】
前記酸化膜は、上記のようにローラ本体の外周面を構成する導電性ゴム組成物の架橋物それ自体が酸化されて形成されるため、例えば任意の塗剤を塗布して形成される被覆層と比べて、形成時にほこり等を巻き込んだりするといった問題を生じることなく、厚みや表面形状等の均一性に優れている。
しかも塗剤等を別に用意することなく、前記のように紫外線を照射してローラ本体の外周面を構成する導電性ゴム組成物の架橋物を酸化させるだけで簡単に形成できるため、現像ローラの生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを極力抑制することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
《導電性ゴム組成物》
本発明の導電性ゴム組成物は、ゴム分、
導電性カーボンブラック、および前記ゴム分を架橋させるための架橋成分を含むものであって、
前記ゴム分は、スチレンブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、およびクロロプレンゴムの3種で、かつ前記ゴム分の総量100質量部中に占めるスチレンブタジエンゴムの割合が40質量部以上、80質量部以下であるとともに、
前記架橋成分としては、前記ゴム分の総量100質量部あたり、1.0質量部以上、1.5質量部以下の硫黄系架橋剤
および促進剤を含み、前記促進剤は0.2質量部以上、0.6質量部以下のチオウレア系促進剤、0.1質量部以上、0.5質量部以下のチウラム系促進剤、および1.0質量部以上、2.0質量部以下のチアゾール系促進剤
の3種であることを特徴としている。
【0025】
〈ゴム分〉
(SBR)
SBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成される種々のSBRがいずれも使用可能である。またSBRとしては伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
【0026】
さらにSBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRがいずれも使用可能である。スチレン含量や架橋度を変更することで、ローラ本体の各種物性を調整することができる。
特にSBRとしては、前記スチレン含量が20〜40%で、かつムーニー粘度が30〜60ML1+4(100℃)であるものなどが好ましい。
【0027】
これらSBRの1種または2種以上を使用することができる。
SBRの配合割合は、前記のようにゴム分の総量100質量部中の40質量部以上、80質量部以下に限定される。SBRの配合割合を前記範囲内とすることで、後述する架橋成分の量規定と相まって、先に説明した本願発明の効果を奏することができる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、SBRの配合割合は、前記範囲内でも、ゴム分の総量100質量部中の50質量部以上であるのが好ましい。
【0028】
前記SBRや、以下に説明する他のゴム分、あるいは架橋成分等の配合割合は、それぞれの成分として同系の2種以上を併用する場合は、当該併用する2種以上の成分の合計の配合割合である。1種単独の場合は、いうまでもなく当該1種の成分の配合割合である。
またSBRとして油展タイプのものを用いる場合、前記配合割合は、当該油展SBR中に含まれる固形分としてのSBRの配合割合である。
【0029】
(エピクロルヒドリンゴム)
エピクロルヒドリンゴムとしては、繰り返し単位としてエピクロルヒドリンを含む種々の重合体が挙げられる。
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、例えばエピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、およびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0030】
特にエピクロルヒドリンゴムとしては、エチレンオキサイドを含む共重合体が好ましく、かかる共重合体におけるエチレンオキサイド含量は30〜95モル%、中でも55〜95モル%、特に60〜80モル%であるのが好ましい。
エチレンオキサイドは電気抵抗値を下げる働きがあるが、エチレンオキサイド含量が前記範囲未満であると、かかる電気抵抗値の低減効果が小さい。一方、エチレンオキサイド含量が前記範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に電気抵抗値が上昇する傾向がある。また、架橋後のローラ本体の硬度が上昇したり、架橋前の導電性ゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇したりするおそれもある。
【0031】
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、特にエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)が好ましい。
前記ECOにおけるエチレンオキサイド含量は30〜80モル%、特に50〜80モル%であるのが好ましい。またエピクロルヒドリン含量は20〜70モル%、特に20〜50モル%であるのが好ましい。
【0032】
またエピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)を用いることもできる。
前記GECOにおけるエチレンオキサイド含量は30〜95モル%、特に60〜80モル%であるのが好ましい。またエピクロルヒドリン含量は4.5〜65モル%、特に15〜40モル%以上であるのが好ましい。さらにアリルグリシジルエーテル含量は0.5〜20モル%、特に2モル%以上であるのが好ましい。
【0033】
なおGECOとしては、前記3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体のほかに、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではいずれの共重合体も使用可能である。
特にエピクロルヒドリンゴムとしては、アリルグリシジルエーテル含量が2〜20モル%で、かつムーニー粘度が40〜80ML1+4(100℃)であるGECOなどが好ましい。
【0034】
エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、前記ゴム分の総量100質量部中の10質量部以上、30質量部以下であるのが好ましい。
配合割合が前記範囲未満では、現像ローラのローラ抵抗値が上昇し、現像に使用した際にトナー帯電量が低下して、形成画像の画像濃度が低下するおそれがある。一方、前記範囲を超える場合にはローラ本体にトナーが付着しやすくなって、却って形成画像の画像濃度が低下するおそれがある。またローラ本体の柔軟性が低下して、トナーへの負担が増加するおそれもある。
【0035】
(CR)
CRは、例えばクロロプレンを乳化重合させて合成され、その際に用いる分子量調整剤の種類によって硫黄変性タイプと非硫黄変性タイプに分類される。
このうち硫黄変性タイプのCRは、クロロプレンと、分子量調整剤としての硫黄とを共重合させたポリマをチウラムジスルフィド等で可塑化し、所定の粘度に調整して得られる。
【0036】
また非硫黄変性タイプのCRは、メルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ等に分類される。
このうちメルカプタン変性タイプのCRは、例えばn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調整剤として使用して、前記硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。またキサントゲン変性タイプのCRは、アルキルキサントゲン化合物を分子量調整剤として使用して、前記と同様にして合成される。
【0037】
またCRは、その結晶化速度に基づいて当該結晶化速度が遅いタイプ、中程度であるタイプ、および速いタイプに分類される。
さらにCRとしては、クロロプレンと他の共重合成分との共重合ゴムを用いてもよい。前記他の共重合成分としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、およびメタクリル酸エステル等の1種または2種以上が挙げられる。
【0038】
特にCRとしては、ムーニー粘度が40〜60ML1+4(100℃)で、かつ結晶化速度の速いタイプのものなどが好ましい。
CRの配合割合は、前記SBR、およびエピクロルヒドリンゴムの残量である。SBR、エピクロルヒドリンゴム、およびCRの総量が100質量部となるように、前記CRの配合割合を設定すればよい。
【0039】
〈架橋成分〉
前記ゴム分を架橋させるための架橋成分として、本発明では、硫黄系架橋剤、チオウレア系促進剤、チウラム系促進剤、およびチアゾール系促進剤を用いる。
(硫黄系架橋剤)
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄や有機含硫黄化合物等が挙げられる。また有機含硫黄化合物等としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等が挙げられる。特に硫黄が好ましい。
【0040】
前記硫黄系架橋剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり1.0質量部以上、1.5質量部以下に限定される。硫黄系架橋剤の配合割合を前記範囲内とすることで、先に説明したSBRや、他の架橋成分の量規定と相まって、先に説明した本願発明の効果を奏することができる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、硫黄系架橋剤の配合割合は、前記範囲内でも、ゴム分の総量100質量部あたり1.2質量部以上であるのが好ましく、1.3質量部以下であるのが好ましい。
【0041】
(チオウレア系促進剤)
チオウレア系促進剤としては、例えばテトラメチルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレア、(C
nH
2n+1NH)
2C=S〔式中、nは1〜10の整数を示す。〕で表されるチオウレア等の1種または2種以上が挙げられる。
前記チオウレア系促進剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、0.6質量部以下に限定される。チオウレア系促進剤の配合割合を前記範囲内とすることで、先に説明したSBRや、他の架橋成分の量規定と相まって、先に説明した本願発明の効果を奏することができる。
【0042】
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、チオウレア系促進剤の配合割合は、前記範囲内でも、ゴム分の総量100質量部あたり0.3質量部以上であるのが好ましく、0.5質量部以下であるのが好ましい。
(チウラム系促進剤)
チウラム系促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の1種または2種以上が挙げられる。
【0043】
前記チウラム系促進剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、0.5質量部以下に限定される。チウラム系促進剤の配合割合を前記範囲内とすることで、先に説明したSBRや、他の架橋成分の量規定と相まって、先に説明した本願発明の効果を奏することができる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、チウラム系促進剤の配合割合は、前記範囲内でも、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上であるのが好ましく、0.4質量部以下であるのが好ましい。
【0044】
(チアゾール系促進剤)
チアゾール系促進剤としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0045】
前記チアゾール系促進剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり1.0質量部以上、2.0質量部以下に限定される。チアゾール系促進剤の配合割合を前記範囲内とすることで、先に説明したSBRや、他の架橋成分の量規定と相まって、先に説明した本願発明の効果を奏することができる。
なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、チアゾール系促進剤の配合割合は、前記範囲内でも、ゴム分の総量100質量部あたり1.3質量部以上であるのが好ましく、1.7質量部以下であるのが好ましい。
【0046】
(他の架橋成分)
架橋成分として、前記硫黄系架橋剤と3種の促進剤を併用することにより、本発明の効果が得られているため、基本的に、さらに他の架橋成分を配合する必要はないが、前記架橋剤、促進剤の反応を補助する促進助剤を併用することは可能である。
促進助剤としては、酸化亜鉛等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸、その他従来公知の促進助剤の1種または2種以上が挙げられる。
【0047】
促進助剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に2質量部以下であるのが好ましい。
〈導電性カーボンブラック〉
上記各成分にさらに、ローラ本体に電子導電性を付与するべく充填剤としての導電性カーボンブラックを配合することで導電性ゴム組成物が調製される。導電性カーボンブラックの配合割合は、例えば非多孔質のローラ本体に良好な柔軟性を付与することを考慮すると、ゴム分の総量100質量部あたり50質量部以下、特に10質量部以下であるのが好ましい。
〈その他〉
導電性ゴム組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。前記添加剤としては、例えば受酸剤、可塑成分(可塑剤、加工助剤等)、劣化防止剤、
上記導電性カーボンブラック以外の充填剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、気泡防止剤、共架橋剤等が挙げられる。
【0048】
このうち受酸剤は、ゴム分の架橋時にエピクロルヒドリンゴムから発生する塩素系ガスの、ローラ本体内への残留と、それによる架橋阻害や感光体の汚染等を防止するために機能する。
前記受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、分散性に優れていることからハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
【0049】
また、前記ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用するとより高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をより一層確実に防止できる。
前記受酸剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.2質量部以上、特に1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下、特に5質量部以下であるのが好ましい。
【0050】
配合割合が前記範囲未満では、受酸剤を含有させることによる前記効果が十分に得られないおそれがある。また前記範囲を超える場合には、架橋後のローラ本体の硬さが上昇するおそれがある。
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、トリクレジルホスフェート等の各種可塑剤やワックス等が挙げられる。
【0051】
また加工助剤としてはステアリン酸等の脂肪酸などが挙げられる。
これら可塑成分の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり5質量部以下であるのが好ましい。例えばローラ本体の外周面に、必要に応じて酸化膜を形成する際にブリードを生じたり、画像形成装置への装着時や運転時に感光体の汚染を生じたりするのを防止するためである。かかる目的に鑑みると、可塑成分としては極性ワックスを使用するのが特に好ましい。
【0052】
劣化防止剤としては、各種の老化防止剤や酸化防止剤等が挙げられる。
このうち酸化防止剤は、現像ローラのローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制する働きをする。前記酸化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラック(登録商標)NEC−P〕、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル〔大内新興化学工業(株)製のノクラックNBC〕等が挙げられる。
【0053】
ローラ本体の外周面に酸化膜を形成する場合で、導電性ゴム組成物に酸化防止剤を配合する場合は、前記酸化膜の形成が効率よく進むように、前記酸化防止剤の配合割合を適宜設定するのが好ましい。
充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、カーボン、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0054】
充填剤を配合することにより、ローラ本体の機械的強度等を向上できる。また充填剤として酸化チタンを配合することにより、トナーの付着を抑制することもできる
。
充填剤の配合割合は、例えば非多孔質のローラ本体に良好な柔軟性を付与することを考慮すると、ゴム分の総量100質量部あたり50質量部以下、特に10質量部以下であるのが好ましい。
【0055】
スコーチ防止剤としては、例えばN−シクロへキシルチオフタルイミド、無水フタル酸、N−ニトロソジフエニルアミン、2,4−ジフエニル−4−メチル−1−ペンテン等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロへキシルチオフタルイミドが好ましい。
スコーチ防止剤の配合割合は、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
【0056】
共架橋剤とは、それ自体が架橋するとともにゴム分とも架橋反応して全体を高分子化する働きを有する成分を指す。
前記共架橋剤としては、例えばメタクリル酸エステルや、あるいはメタクリル酸またはアクリル酸の金属塩等に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマ類、ジオキシム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0057】
このうちエチレン性不飽和単量体としては、例えば
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) 前記(a)(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) 前記(a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルステロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0058】
また前記(c)の不飽和カルボン酸類のエステルとしては、モノカルボン酸類のエステルが好ましい。
前記モノカルボン酸類のエステルとしては、例えば
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ぺンチル(メタ)アクリレート、i−ぺンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
べンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等の1種または2種以上が挙げられる。
【0059】
前記各成分を含む本発明の導電性ゴム組成物は、従来同様に調製できる。まずゴム分を、所定の割合で配合して素練りし、次いで架橋成分以外の添加剤を加えて混練した後、最後に架橋成分を加えて混練することで導電性ゴム組成物が得られる。前記混練には、例えばニーダ、バンバリミキサ、押出機等を用いることができる。
《現像ローラおよび画像形成装置》
図1は、本発明の現像ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【0060】
図1を参照して、この例の現像ローラ1は、前記本発明の導電性ゴム組成物の架橋物からなる筒状のローラ本体2と、前記ローラ本体2の中心の通孔3に挿通されたシャフト4とを備えている。
ローラ本体2は、現像ローラ1をできるだけ生産性良く、かつ低コストで製造するとともに、前記ローラ本体2の耐久性や圧縮永久ひずみ等を向上するために、非多孔質でかつ、基本的には図に示すように単層構造に形成するのが好ましい。
【0061】
しかしローラ本体2は、場合によっては、外周面5側の外層とシャフト4側の内層の2層構造に形成してもよい。その場合は、少なくとも外層を前記導電性ゴム組成物によって形成すればよい。またローラ本体2は、場合によっては多孔質構造に形成してもよい。
シャフト4は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成される。ローラ本体2とシャフト4とは、例えば導電性を有する接着剤等により電気的に接合されると共に機械的に固定されて一体に回転される。
【0062】
ローラ本体2の外周面5には、図中に拡大して示すように酸化膜6が形成される。酸化膜6が低摩擦層として機能してトナーの付着を抑制したり、トナーへの負担を低減したりできる。
前記現像ローラ1は、先に説明した各成分を含む本発明の導電性ゴム組成物を用いて、従来同様に製造することができる。
【0063】
すなわち導電性ゴム組成物を、押出成形機を用いて混練しながら加熱して溶融させた状態で、前記ローラ本体2の断面形状、すなわち円環状に対応するダイを通して長尺の筒状に押出成形する。
次いで前記筒状体を冷却して固化させたのち、通孔3に架橋用の仮のシャフトを挿通して加硫缶内で加熱して架橋させる。
【0064】
次いで外周面に導電性の接着剤を塗布したシャフト4に装着しなおして、前記接着剤が熱硬化性接着剤である場合は加熱により前記熱硬化性接着剤を硬化させてローラ本体2とシャフト4とを電気的に接合するとともに機械的に固定する。
そして必要に応じてローラ本体2の外周面5を所定の表面粗さになるように研磨したのち、さらに前記外周面5を酸化膜6によって被覆すると、
図1に示す現像ローラ1が製造される。
【0065】
酸化膜6は、例えば酸化性雰囲気中で、架橋後のローラ本体に紫外線を照射することによって形成される。すなわちローラ本体2の外周面5を構成する導電性ゴム組成物の架橋物それ自体を、所定波長の紫外線を所定時間照射して酸化させることで、前記外周面5に酸化膜6が形成される。
この際、ローラ本体2が前記本発明の導電性ゴム組成物からなり、架橋後、紫外線を照射する前の前記ローラ本体2中には炭素−炭素二重結合が適度に残存していることから、先に説明したように、できるだけ短時間の紫外線の照射によって、前記ローラ本体2の外周面に、厚みが大きくかつ緻密で、摩擦係数の低減効果に優れた良好な酸化膜を形成することができる。
【0066】
照射する紫外線の波長は、前記基材ゴムを効率よく酸化させて、前記機能に優れた酸化膜6を形成することを考慮すると100nm以上であるのが好ましく、400nm以下、特に300nm以下であるのが好ましい。また照射の時間は30秒間以上、特に1分間以上であるのが好ましく、30分間以下、特に15分間以下であるのが好ましい。
前記現像ローラ1は、例えばレーザープリンタ等の、電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、感光体の表面に形成される静電潜像を、帯電させたトナーによってトナー像に現像するために好適に使用することができる。
【0067】
その場合、前記ローラ本体2は、前記紫外線の照射によって形成された、摩擦係数の低減効果に優れた良好な酸化膜6を備えるため、ゴム分としてSBRを含み、柔軟であることと相まってトナーへの負担を低減する効果に優れるとともに、感光体の汚染を生じない上、圧縮永久ひずみが小さくヘタリをも生じにくい。
そのため前記現像ローラ1によれば、当該現像ローラ1を組み込む特に高耐久向けのレーザープリンタのカートリッジや、当該カートリッジを着脱自在に装着するレーザープリンタ等の画像形成装置を、現状よりも一層小型化することが可能となる。
【0068】
ローラ本体2の厚みは、前記現像ローラの小径化、軽量化を図りながら適度なニップ幅を確保するために、0.5mm以上、中でも1mm以上、特に2mm以上であるのが好ましく、10mm以下、中でも7mm以下、特に5mm以下であるのが好ましい。
本発明の現像ローラを組み込む画像形成装置としては、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置が挙げられる。そのいずれにおいても、現像ローラ1の小径化、並びにカートリッジの小型化が可能であることから、画像形成装置の全体での小型化が可能となる。
【実施例】
【0069】
〈実施例1〉
(導電性ゴム組成物の調製)
ゴム分としては、SBR〔非油展タイプ、JSR(株)製のJSR1502〕60質量部、GECO〔ダイソー(株)製のエピオン(登録商標)ON301、EO/EP/AGE=73/23/4(モル比)〕20質量部、およびCR〔昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT〕20質量部を配合した。
【0070】
前記ゴム分合計100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、下記表1に示す各成分のうち架橋成分以外を加えて混練した後、架橋成分を加えてさらに混練して導電性ゴム組成物を調製した。
【0071】
【表1】
【0072】
表1の各成分は下記のとおり。
硫黄系架橋剤:粉末硫黄
チオウレア系促進剤:エチレンチオウレア〔2−メルカプトイミダゾリン、川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S〕
チウラム系促進剤:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)TS〕
チアゾール系促進剤:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM〕
促進助剤:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
充填剤:導電性カーボンブラック〔電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標)〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A(登録商標)−2〕
表中の質量部は、前記ゴム分の総量100質量部あたりの質量部である。
【0073】
(現像ローラの作製)
前記ゴム組成物を押出成形機に供給して外径φ16mm、内径φ5〜5.5mmの筒状に押出成形した後、前記筒状体を、外径φ3mmの架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させた。
次いで前記筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤を塗布した外径φ6mmのシャフトに装着し直して、オーブン中で160℃に加熱して前記シャフトに接着したのち両端をカットし、外周面を、円筒研磨機を用いてトラバース研磨したのち仕上げとして鏡面研磨をして外径がφ13mm(公差0.05)になるように仕上げて、前記シャフトと一体化されたローラ本体を形成した。
【0074】
次いで、研磨後のローラ本体の外周面を水洗いしたのち、UVランプから前記外周面までの距離が5cmになるように設定して紫外線照射装機〔セン特殊光源(株)製のPL21−200〕にセットし、自動的に回転させながら、波長184.9nmの紫外線を、外周面の全体で15分間照射することで前記外周面に酸化膜を形成して現像ローラを製造した。
【0075】
〈実施例2〉
ゴム分として、前記SBR40質量部、GECO30質量部、およびCR30質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを作製した。
〈実施例3〉
ゴム分として、前記SBR80質量部、GECO10質量部、およびCR10質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを作製した。
【0076】
〈比較例1〉
ゴム分として、前記SBR35質量部、GECO32.5質量部、およびCR32.5質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを作製した。
〈比較例2〉
ゴム分として、前記SBR85質量部、GECO7.5質量部、およびCR7.5質量部を配合したこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを作製した。
【0077】
〈実施例4、5、比較例3、4〉
硫黄系架橋剤としての硫黄の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり0.9質量部(比較例3)、1.0質量部(実施例4)、1.5質量部(実施例5)、1.6質量部(比較例4)としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを作製した。
【0078】
〈実施例6、7、比較例5、6〉
チアゾール系促進剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり0.9質量部(比較例5)、1.0質量部(実施例6)、2.0質量部(実施例7)、2.1質量部(比較例6)としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを作製した。
【0079】
〈実施例8、9、比較例7、8〉
チウラム系促進剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり0.05質量部(比較例7)、0.1質量部(実施例8)、0.5質量部(実施例9)、0.55質量部(比較例8)としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを作製した。
【0080】
〈実施例10、11、比較例9、10〉
チオウレア系促進剤の配合割合を、ゴム分の総量100質量部あたり0.1質量部(比較例9)、0.2質量部(実施例10)、0.6質量部(実施例11)、0.7質量部(比較例10)としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを作製した。
【0081】
〈比較例11〉
ゴム分として、前記SBR50質量部、GECO20質量部、およびCR30質量部を配合するとともに、ゴム分の総量100質量部あたりの各成分の配合割合を、硫黄0.75質量部、チアゾール系促進剤0.5質量部、チウラム系促進剤1.0質量部、チオウレア系促進剤0.85質量部、充填剤としての導電性カーボンブラック5.0質量部、受酸剤3.0質量部とし、かつグアニジン系促進剤としての1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔大内新興化学工業(株)製のノクセラーDT〕0.8質量部を配合するとともに、促進助剤としての酸化亜鉛を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性ゴム組成物を調製し、現像ローラを作製した。このものは、特許文献1の実施例3を再現したものに相当する。
【0082】
〈質量変化率測定〉
架橋後、紫外線を照射する前のローラ本体中に残存する炭素−炭素二重結合の量は、トルエンによる質量変化率によって評価することができる。
すなわち前記各実施例、比較例で形成した、紫外線を照射する前のローラ本体から、日本工業規格JIS K6258:2003「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−耐液性の求め方」に規定された試験片を切り出し、当該試験片をトルエンに浸漬して、温度23℃の条件で、前記規格に所載の測定方法に則って測定した質量変化率が大きいほど、ローラ本体中に残存する炭素−炭素二重結合の量が多いと評価することができる。
【0083】
ここでは、質量変化率が300%以上であるものを合格、300%未満のものを不合格とした。
〈圧縮永久ひずみ率測定〉
前記各実施例、比較例で調製したゴム組成物を用いて、日本工業規格JIS K6262:2006「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−常温,高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方」に規定された大型試験片を作製し、前記試験片を用いて、試験温度70±1℃、試験時間22時間の条件で圧縮試験を実施し、圧縮する前の試験片の厚みt
0、圧縮時に使用したスペーサの厚みt
1、および圧縮を解除して30分後の試験片の厚みt
2から、下記式(1):
【0084】
【数1】
【0085】
によって圧縮永久ひずみ率CS(%)を求めて、前記各ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体の圧縮永久ひずみを、下記の基準で評価した。
○:圧縮永久ひずみ率CSが10%以下であった。合格。
×:圧縮永久ひずみ率CSが10%を超えた。不合格。
〈摩擦係数測定〉
温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下、表面が水平となるように設置したアルミニウム製のプレートの前記表面上にテフロン(登録商標)シートを敷き、その上に、前記各実施例、比較例で作製した現像ローラを、前記テフロンシートとの間にPETシートを挟んで回転しないように固定した状態で、その自重によって前記PETシートに圧接させた。
【0086】
そして前記PETシートの一端につないだバネばかりを、前記プレートの面方向上で、かつ現像ローラの軸方向と直交方向に引っ張った際に生じた引張力Fを測定し、かかる引張力Fと、
N=[現像ローラの質量(g)]×0.001×9.8
から、式(2):
【0087】
【数2】
【0088】
によって摩擦係数μを求めた。
PETシートは、前記試験中に現像ローラのローラ本体がはみ出してテフロンシートの表面に直接に接触しない大きさとした。
そして摩擦係数μが0.10以下であったものを合格(○)、0.10を超えたものを不合格(×)とした。
【0089】
〈感光体汚染性評価〉
前記各実施例、比較例で作製した現像ローラを、市販のレーザープリンタ用のカートリッジに、純正の現像ローラの代わりに組み込んで、前記レーザープリンタに装着した。
そして温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下でモノクロのベタ画像とハーフトーン画像とを形成したのち、前記カートリッジをレーザープリンタから取り出して温度50℃、相対湿度90%の環境下で1週間静置したのち、再びレーザープリンタに装着して、温度23℃、相対湿度55%の常温常湿環境下でモノクロのベタ画像とハーフトーン画像とを形成して、形成画像に汚染ラインが発生していなかったものを感光体の汚染なし(○)、汚染ラインが発生していたものを感光体の汚染あり(×)として評価した。
【0090】
以上の結果を表2〜表5に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
先に説明した本発明の効果を得るためには、前記表2、表4、表5の実施例1〜3、比較例1、2、11の結果より、ゴム分の総量100質量部中に占めるスチレンブタジエンゴムの配合割合は40質量部以上、80質量部以下である必要があり、中でも特に50質量部以上であるのが好ましいことが判った。
また表2、表4、表5の実施例1、4、5、比較例3、4、11の結果より、ゴム分の総量100質量部あたりの硫黄系架橋剤の配合割合は1.0質量部以上、1.5質量部以下である必要があり、中でも特に1.2質量部以上であるのが好ましく、1.3質量部以下であるのが好ましいことが判った。
【0096】
また表2、表3、表4、表5の実施例1、6、7、比較例5、6、11の結果より、ゴム分の総量100質量部あたりのチアゾール系促進剤の配合割合は1.0質量部以上、2.0質量部以下である必要があり、中でも特に1.3質量部以上であるのが好ましく、1.7質量部以下であるのが好ましいことが判った。
また表2、表3、表5の実施例1、8、9、比較例7、8、11の結果より、ゴム分の総量100質量部あたりのチウラム系促進剤の配合割合は0.1質量部以上、0.5質量部以下である必要があり、中でも特に0.2質量部以上であるのが好ましく、0.4質量部以下であるのが好ましいことが判った。
【0097】
さらに表2、表3、表5の実施例1、10、11、比較例9〜11の結果より、ゴム分の総量100質量部あたりのチオウレア系促進剤の配合割合は0.2質量部以上、0.6質量部以下である必要があり、中でも特に0.3質量部以上であるのが好ましく、0.5質量部以下であるのが好ましいことが判った。