特許第5771182号(P5771182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771182ガス混合制御装置及びガス混合制御方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771182
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ガス混合制御装置及びガス混合制御方法。
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20150806BHJP
   A61M 16/12 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   A61M16/00 315
   A61M16/12
   A61M16/00 345
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-501433(P2012-501433)
(86)(22)【出願日】2010年3月10日
(65)【公表番号】特表2012-521252(P2012-521252A)
(43)【公表日】2012年9月13日
(86)【国際出願番号】IB2010051044
(87)【国際公開番号】WO2010109364
(87)【国際公開日】20100930
【審査請求日】2013年3月8日
(31)【優先権主張番号】61/162,453
(32)【優先日】2009年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】アハマド,サミール
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−057492(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/008619(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0163592(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/003488(WO,A2)
【文献】 国際公開第2008/052364(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00−16/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガスを供給するための第1の経路;
第2のガスを供給するための第2の経路であって、前記第2のガスは、所定の割合の前記第2のガスを含む混合ガスを作り出すよう、前記第1のガスと混合される、第2の経路;
吸気相の間、前記第1の経路及び前記第2の経路からアクセスポートへと、前記混合ガスを供するための、かつ、呼気相の間、前記アクセスポートから前記第1の経路へと、排出ガスを供するための、導管;及び
引き続く吸気相の間、前記アクセスポートに供され前記混合ガス中の前記第2のガスの前記所定の割合を維持するために、ある遅延時間、前記第2の経路からの前記第2のガスの供給を遅らせるための制御装置であって、当該制御装置は、前記呼気相の間前記第1の経路が受けた前記排出ガスの量に基づいて、前記遅延時間の決定を行う、制御装置;
を含む人工呼吸器。
【請求項2】
前記第1のガスは大気を含み、前記第2のガスは酸素を含む、請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項3】
前記吸気相の間、前記混合ガスを加圧するための、かつ、前記呼気相の間、前記排出ガスを加圧するための、送風機をさらに含む、請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項4】
前記第1の経路は、前記呼気の間当該第1の経路が受けた前記排出ガスの流れを測定する第1の流れセンサーを含む、請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項5】
前記制御装置は、測定された前記排出ガスの流れに基づいて、前記呼気相の間前記第1の経路が受けた前記排出ガスの量を決定する、請求項4に記載の人工呼吸器。
【請求項6】
前記制御装置はさらに、決定された前記排出ガスの前記量を、所定の閾値と比較することにより、前記遅延時間決定する、請求項5に記載の人工呼吸器。
【請求項7】
前記制御装置は、決定された前記排出ガスの前記量が、前記閾値を超える場合に、所定の時間周期に等しい前記遅延時間を設定する、請求項6に記載の人工呼吸器。
【請求項8】
前記制御装置は、決定された前記排出ガスの前記量が、前記閾値を超えない場合に決定された前記排出ガスの前記量に対応する時間周期に等しい前記遅延時間を設定する、請求項6に記載の人工呼吸器。
【請求項9】
前記第2の経路は、前記制御装置の制御下で、前記第2のガスの供給を調節するための、バルブを含む、請求項5に記載の人工呼吸器。
【請求項10】
前記制御装置は、前記遅延時間の間、前記第2のガスの供給を停止するよう、前記バルブを制御する、請求項9に記載の人工呼吸器。
【請求項11】
前記バルブは、比例ソレノイドバルブを含む、請求項10に記載の人工呼吸器。
【請求項12】
大気をミキシングノードへと供給するための大気経路;
酸素を前記ミキシングノードへと供給するための酸素経路であって、前記酸素は、所定
の割合の酸素を有する混合ガスを得るために、前記大気と混合される、酸素経路;
吸気相の間、前記混合ガスの加圧を行うための、送風機;
前記吸気相の間、前記送風機からアクセスポートへと、前記加圧が行われた前記混合ガスを供するための、かつ、呼気相の間、前記アクセスポートから前記大気経路へと、排出ガスを供するための、導管;及び
前記呼気相の後の吸気相の間、前記混合ガス中の前記酸素の前記所定の割合を維持するために、ある遅延時間、前記酸素経路からの前記酸素のガスの供給を遅らせるための制御装置であって、当該制御装置は、前記呼気相の間前記第1の経路が受けた前記排出ガスの量に基づいて、前記遅延時間を決定する、制御装置;
を含む、人工呼吸器。
【請求項13】
前記酸素経路はバルブを含み、
前記制御装置は、前記遅延時間の間、前記酸素の供給を停止するよう、前記バルブを制御し、
前記バルブは、比例ソレノイドバルブを含む、
請求項12に記載の人工呼吸器。
【請求項14】
前記大気経路は、前記呼気相の間前記大気経路が受けた前記排出ガスの流れを測定するための、大気フローセンサーを含み、
前記制御装置は、決定された前記排出ガスの前記フローに基づいて、前記呼気相の間前記大気経路が受けた前記排出ガスの量を決定し
前記制御装置は、決定された前記排出ガスの前記量に基づいて、前記遅延時間を決定する、
請求項12に記載の人工呼吸器。
【請求項15】
前記大気経路は、前記呼気相の間前記大気経路が受けた前記排出ガス中の酸素の割合を測定するための、ガスセンサーを含み、
前記制御装置は、測定された前記排出ガス中の前記酸素の前記割合に基づいて、前記遅延時間を決定する、
請求項12に記載の人工呼吸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス混合制御装置及びガス混合制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器は、患者の呼吸を手伝う又は患者の呼吸の代わりになるために、大気及び/又は大気並びに追加の(補給)酸素の混合物といった、加圧されたガスのフローを、患者の気道に送る。人工呼吸器は、ガスが、吸気相(吸入に対応する)の間、患者に供給され、それに続く呼気相(呼気に対応する)の間、患者から受けとるよう、循環的に作動する。大気及び追加の酸素の混合物を供するため、例えば、人工呼吸器は、大気経路を通じた大気と、別個の酸素経路を通じた純酸素とを受け、それ故に、吸気相の間、患者に供される、所望の混合物を得るために、各々のガスの個別のレベルを制御する。
【0003】
通常、患者は、ガスフローを導く導管又は“リム(limbs)”を通じて、人工呼吸器と相互作用する。シングルリムの人工呼吸器は、吸気相及び呼気相のために、単一の導管を供する。患者は、同じ導管を通じて、吸入の間、人工呼吸器から(加圧された)ガスを受け、呼気の間、人工呼吸器にガスを排出することを意味する。通常、排出されたガスは、人工呼吸器の大気経路を通じて方向付けられる。吸入ガスフローが少なくとも一部の追加酸素を含むとき、例えば、呼気ガスフローは必然的に少なくとも一部の追加酸素を含み、大気経路内に“酸素汚染”をもたらす。したがって、吸入ガスフローの後続のサイクルの間、大気経路からのガスは、純大気よりもより高い濃度の酸素を含む。大気経路からのガスが、酸素経路からの追加的な酸素と混合されるとき、患者に供される混合されたガスは、酸素の所望の濃度よりもより高い濃度を有する。
【0004】
一方、ダブルリムの人工呼吸器は、吸入ガスフロー及び呼気ガスフローに関して、別々の導管を供することにより、大気経路の酸素汚染を避ける。それは、患者は、吸入の間、第1リムを通じて人工呼吸器から(加圧された)ガスを受け、呼気の間、別個の第2リムを通じて、人工呼吸器に(又は人工呼吸器の外側に)ガスを排出する、ということである。しかしながら、2つの別々の導管の包含及びメンテナンスは、人工呼吸器の複雑性及び費用を増大させる。例えば、適切な操作のために、吸入ガスフロー及び呼気ガスフローを適切な導管に方向付けるよう、バルブが含まれなければならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一様態において、人工呼吸器は、第1の経路並びに第2の経路、導管及び制御装置を含む。前記第1の経路は、第1のガスを供給するよう構成され、前記第2の経路は、第2のガスを供給するよう構成され、前記第2のガスは、該第2のガスの所定の割合有する混合ガスを作り出すよう、前記第1のガスと混合される。前記導管は、吸気相の間、前記第1経路及び前記第2経路からアクセスポート(access port)へと、前記混合ガスを供するよう、かつ、呼気相の間、前記アクセスポートから前記第1の経路へと、排出されたガスを供するよう、構成される。前記制御装置は、引き続く吸気相の間、前記アクセスポートに供された前記混合ガス内の前記第2のガスの前記所定の割合を維持するために、ある遅延時間で、前記第2の経路から第2のガスの供給を遅らせるよう構成される。
【0006】
本発明の他の様態において、人工呼吸器は、大気経路並びに酸素経路、送風機、導管及び制御装置を含む。前記大気経路は、大気をミキシングノード(mixing node)に供給するよう構成される。前記酸素経路は、所定の割合の酸素を有する混合ガスを得るために、前記酸素が大気と混合される、前記ミキシングノードに前記酸素を供給するよう構成される。前記送風機は、吸気相の間、前記混合ガスを加圧するよう構成される。前記導管は、前記吸気相の間、前記送風機からアクセスポートへと加圧された混合ガスを供し、かつ、呼気相の間、前記アクセスポートから前記大気経路へと排出されたガスを供するよう構成される。前記制御装置は、引き続く吸気相の間、前記混合ガス内の酸素の前記所定の割合を維持するために、ある遅延時間で、前記酸素経路から前記酸素ガスの供給を遅らせるよう構成される。
【0007】
本発明の他の様態において、吸気相の間、シングルリムの人工呼吸器により患者に供される混合ガスの含有量(contents)を制御するために供され、前記混合ガスは、大気に混合された所定の量の追加酸素を含む。前記方法は、呼気相の間、大気経路を通じて排出されたガスのフローの測定を行う段階であって、前記排出されたガスは、前記混合ガスの少なくとも一部の前記追加酸素を含む、段階;前記測定が行われた前記フローに基づいて、前記排出されたガスの量の計算を行う段階;前記計算が行われた前記量に基づいて、遅延時間の決定を行う段階;及び引き続く吸気相の間、前記排出されたガス内の前記一部の前記追加酸素を相殺するために、前記決定が行われた前記遅延時間の間、前記大気経路から分離した、酸素経路からの酸素のフローを停止する段階;を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、代表的な実施形態に係る、シングルリムの人工呼吸器の機能ブロック図である。
図2図2は、代表的な実施形態に係る、大気フロー及び酸素フローを示す図である。
図3図3は、代表的な実施形態に係る、ガス混合制御プロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次の詳細な説明において、説明の目的で制限の目的でなく、特有の詳細を開示する実施例が、本教示に係る実施形態の全体の理解を供するために、記載される。しかしながら、本開示の恩恵を有する当業者にとって、ここで開示された特有の詳細とは逸脱する本教示に係る他の実施様態が、添付の特許請求の範囲内にとどまるということが、明らかであろう。さらに、実施例の詳細を曖昧にしないよう、従来の装置及び方法の詳細が除外され得る。そのような方法及び装置は、明らかに、本教示の範囲内である。
【0010】
種々の実施形態において、シングルリムの人工呼吸器は、患者に供給される、周囲空気と混合された追加酸素の量を制御する。人工呼吸器の吸気相及び呼気相のサイクルを受けて、引き続く吸気相の酸素の量は、以前のサイクルの呼気相に由来する、大気経路内の過剰酸素(即ち、酸素汚染)を相殺するために、所定の期間の間、酸素フローを遅らせることにより制御される。
【0011】
図1は、代表的な実施形態に係る、シングルリムの人工呼吸器100の機能ブロック図である。説明の目的のために、ガス混合制御プロセスは、患者の呼吸の補助又は代理(substitution)のために、人工呼吸器システム(例えば、人工呼吸器100に具現化されるように)内の大気及び酸素を混合するよう方向付けられる。ガス混合制御プロセスは、本教示の範囲から逸脱することなく、人工呼吸器又は他のシステム内の他のガスを混合するよう方向付けることができるけれども。
【0012】
図1を参照して、人工呼吸器100は、大気経路120及び酸素経路140を含み、各々、周囲空気及び酸素を供給する。大気及び酸素は、ミキシングノード160で混合され、送風機162の入力に供される。大気と混合される酸素の量は、吸入ガス中の酸素の割合(fraction)(FiO)として知られる、混合ガス中の酸素の所望の割合又は濃度に基づいて、決定される。人工呼吸器100は、FiOの設定値に依存して、21パーセントを超えるような(100パーセントまで)、混合ガス中の酸素の割合を可能とする。混合ガス中の酸素の割合は、下記で議論されるように、例えば制御装置180の制御下で、酸素経路140により供給される酸素の量を調節することにより、制御される。
【0013】
示された実施形態において、大気経路120は、大気吸入口122、大気吸入口フィルタ124、大気フローセンサー126及びバイパス要素128を含む。吸気相の間(図1の矢印1a、1b及び1cにより示される)、大気吸入口122は、大気吸入口フィルタ124によりフィルタされる、周囲空気を誘引する。大気は、吸気相の間、圧力差(a pressure differential)を作り出す、送風機162の作動により大気吸入口122内に誘引される。他の実施形態において、大気吸入口122は、周囲空気を大気経路120へと独立して誘引するための、ポンプ又は他の手段を含んでも良い。大気の一部は、大気経路120を通る大気のフローレート(flow rate)を測定する、大気フローセンサー126を通るよう、そらされる。大気の残りの部分は、バイパス要素128を通る。示された実施形態において、大気フローセンサー126は、大気のそらされた部分のフローレートを決定し、その後、大気経路120内の大気の総量のフローレートを決定するよう外挿することができ、それ故、大気のフローの途絶を最小化できる。もちろん、他の実施形態が、本教示の範囲から逸脱することなく、如何なるタイプの大気フローセンサーを組み込んでも良い。計測された大気フローは、大気フローセンサー126により、制御装置180へと供することができ、計測された大気フローに基づいて大気の量を決定することができる。あるいは、大気フローセンサー126は、大気の量を決定しても良い。
【0014】
酸素経路140は、酸素吸入口142、酸素吸入口フィルタ144、バルブ145、酸素フローセンサー146及びバイパス要素148を含む。酸素吸入口142は、例えば、加圧された酸素タンク、酸素システムに取り付けられたウォール(wall)又はそれと同様のものから、純酸素を受ける、高圧用酸素吸入口であっても良い。酸素吸入口フィルタ144は、種々の実施形態で含まれなくても良いが、酸素は、吸気相の間、酸素吸入口フィルタ144によりフィルタされても良い。バルブ145は、例えば、制御装置180の制御下で、酸素経路140を通るよう許される酸素の量を、可変的に制限する。バルブ145は、例えば、比例ソレノイドバルブであっても良い。酸素経路140を通る酸素のフローを可変的に制限することは、ミキシングノード160で大気経路120からの大気と混合されるであろう酸素の量を調節し、したがって、混合ガス中の酸素の割合を決定する(例えば、大気と追加酸素の割合)。
【0015】
バルブ145を通る後、酸素の一部は、酸素経路140内のフローレート及び/又は酸素の量を測定する、酸素フローセンサー146を通るよう、そらされる。酸素の残存部分は、バイパス要素148を通る。大気フローセンサー126に関して上記で議論されたように、示された実施形態において、酸素フローセンサー146は、酸素のそらされた部分のフローレートを決定し、その後、酸素経路140内の酸素の総量のフローレートを決定するため外挿することができ、したがって、酸素のフローの途絶を最小化できる。もちろん、他の実施形態が、本教示の範囲から逸脱することなく、如何なるタイプの酸素フローセンサーを組み込んでも良い。酸素フローセンサー146により測定された酸素フローは、制御装置180へと供することができる。
【0016】
送風機162は、吸気相の間、ミキシングノード160から混合ガスを受け、アクセスポート164に供給される、可変的に制御された、加圧された混合ガスを出力する。例えば、送風機162は、領域内の圧力を制御しても良い。患者は、管状回路(tubing circuit)166を含む、単一の導管を通じて、混合ガスを受け、吸入する。管状回路166は、例えば、呼吸マスク(図不示)に取り付けられる、又は患者の気道に挿入可能である、気管内チューブ若しくは気管カニューレ(図不示)に取り付けられる、遠心端(distal end)を含む。種々の実施形態において、混合ガスのフロー及び/又は送風速度は、圧力に加えて又は圧力の代わりに制御されても良い。
【0017】
所望の圧力を維持するために送風機162への調節がなされるよう、圧力は、制御装置180及び/又は送風機162へと検出された圧力を供することができる、コンピュータ圧力センサー(machine pressure sensor)163により監視される。同様に、制御装置180又は操作者が、異なる圧力が実行されるべきであるということを決定する限りは、コンピュータ圧力センサー163が、所望の圧力が得られている、と示すまで、制御装置180は送風機162を調節する。種々の実施形態において、圧力センサーが、呼吸マスク又は他の患者接続(patient connection)において、追加的に又は変更的に配置されても良い。
【0018】
呼気相の間(図1の矢印2により示される)、大気経路120及び酸素経路を通る正のフローが中断され、患者は、管状回路166及びアクセスポート164を通って息を吐き出すことができる。吐き出された又は排出されたガスは、送風機162(排出ガスを、排出されるガス圧力に与圧しても良い)を通り、かつ、大気経路120の少なくとも一部を通る。呼気相の間、排出ガスのいくらかは、例えば、大気吸入口122又は他のベント(図不示)を通じて、人工呼吸器100から抜け出ても良い。しかしながら、例えば、引き続く吸気相(図1の矢印1a、1b及び1cにより示される)が始まるとき、排出ガスの全て又は一部は、大気経路120内に残るであろう。それが起こるとき、以前のサイクルからの、大気経路120内に残っている排出ガスは、より高い濃度の酸素を含み(例えば、以前の吸気相から)、“酸素汚染”の結果になる。より高い濃度の酸素を含む、大気経路120内の排出ガスが、ミキシングノード160で、引き続く吸気相の間、酸素経路140からの酸素と混合されるとき、結果として生じる患者に供される混合ガスは、所望の酸素含有量より、より高いであろうということである。
【0019】
より高い濃度の酸素を相殺するために、制御装置180によって、酸素経路140は、呼気相の終わりの後、ある期間の間、混合ノード160に追加的な酸素を供する前に、例えば、引き続く吸気相に準拠して、遅らされる。これにより、さもなければ送風機162に供される混合ガス中に含まれるであろう追加的な酸素が、効果的に取り除かれる。
【0020】
ある実施形態において、排出された大気内の追加的な酸素の量は、呼気相の間、フローセンサー126を通る逆向きの(reverse)大気フローを測定することにより、見積もることができる。制御装置180は、測定された排出ガスフローを受け、大気経路120内に存在する(例えば、一時的に蓄えられた)排出ガスの量を計算する。制御装置180は、その後、排出ガスの計算された量を、所定のしきい値と比較しても良い。
【0021】
排出ガスの計算された量が閾値を超えるときはいつでも、制御装置180は、例えば、所定の量が通るために必要とされるある期間の間、上で議論されたように、引き続く吸気相での酸素のフローを遅らせることにより、所定の量(閾値と同じであっても良い)で、酸素経路140からの酸素フローを減らす。排出ガスの計算された量が閾値を超えないときはいつでも、制御装置180は、計算された量に対応する量で、酸素経路140からの酸素フローを減らす。例として、説明の目的のために、所定の閾値が200mlであると、仮定することができる。したがって、もし、排出ガスの計算された量が500mlであるなら、例えば、制御装置180は、200mlで酸素経路140からの酸素フローを減らしても良い(例えば、酸素の200mlのフローに対応する期間の間、酸素経路140からの酸素の出力を遅らせることにより)。しかしながら、排出ガスの計算された量が100mlであるなら、例えば、制御装置180は、100mlで、酸素経路140からの酸素フローを減らしても良い。
【0022】
酸素フローが減らされる量及び/又は酸素フローが遅延される時間は、本教示の範囲から逸脱することなく、種々の手段により決定することができるということが、理解される。例えば、一実施形態において、制御装置180は、引き続く吸気相での酸素フローに関する、追加酸素の特有の量に対する、排出ガスの計算された量(例えば、排出ガス内の酸素含有量が希釈されないという仮定の上で)及び対応する量の削減及び/又は時間遅延に関連するアルゴリズムを実行することができる。他の実施形態において、大気経路120は、排出ガス中の酸素の、実際の割合を検出するよう構成されたセンサー(図不示)を含んでも良い。制御装置180は、その後、検出された割合と所望の酸素の割合との間の正確な相違を計算するために、酸素の検出された割合を使用することができ、かつ、計算された相違上の、引き続く吸気相での酸素フローに関して、対応する量削減及び/又は時間遅延にベースを作る(base)ことができる。
【0023】
当業者に理解されるであろうが、具体的に制御装置180を含む、図1で示される種々の“パーツ”の1つ以上は、ソフトウェア制御のマイクロプロセッサ、配線論理回路又はそれらの組み合わせを使用して、物理的に実行することができる。また、説明の目的のため、パーツは、図1で機能的に分離されているけれども、それらは、如何なる物理的実装において、様々に組合せることができる。
【0024】
例えば、制御装置180は、人工呼吸器100の機能性を供するために、メモリ(図不示)とつないで、ここで述べられた実施形態のガス混合制御プロセスを含む、1つ以上のソフトウェアアルゴリズムを実行するよう構成されたマイクロプロセッサとして、実行されても良い。制御装置180は、ここで議論された、人工呼吸器100の種々の機能及びガス混合制御プロセスを実行を許す、実行可能なソフトウェアコードを保管するための、不揮発性メモリを含んでも良いということである。
【0025】
図2は、代表的な実施形態に係る、大気フロー及び酸素フローを示すチャートである。チャートは、例えば、各々のフローセンサー126及び146で見受けられるような、2つの連続した吸気/呼気ガスフローサイクルを経た、大気フローを示すライン220と酸素フローを示すライン240(xでマークされた)を含む。縦軸は、1分あたり−60リットル(lpm)から、+60lpmまでの、10lpmの増加量(increments)での、ガスフローを示し、横軸は、5秒から15秒までの、1秒の増加量での、時間を示す。
【0026】
図2を参照して、領域Aは、患者が混合ガスを吸入する、第1の吸気相での活発な(active)吸入を示す。大気フローライン220及び酸素フローライン240の両方は、正のフロー(positive flow)を示す。
【0027】
領域Bは、患者が排出ガス(吸入された混合ガスと略同じ、大気及び酸素混合物を有すると仮定される)を吐き出す、第1の呼気相での活発な呼気を示す。排出ガスは、大気経路120を通じて方向付けられ、したがって、単に、フローセンサー126は、負のフローを検出するので、大気フローライン220は、負のフローを示す。一方で、酸素フローライン240は、領域Bにおいて、例えば、バルブ145の制御を介して、酸素経路140を通じた酸素の供給が閉鎖されることを示す、ゼロに行く。
【0028】
領域C及び領域Dは、例えば、リークを相殺し、設定圧力に制御するために、正のフローを示す。患者は、引き続く吸気相(即ち、領域Eにより示される)、物理的吸入をまだ開始していない。領域Cにおいて、送風機162は、第1の呼気相の終わりの、負の大気フローの後、圧力差を作り出すよう作動するので、大気フローライン220は、わずかな正のフローを示す。しかしながら、酸素フローライン240は、酸素経路140を通じた酸素の供給が未だ閉鎖されているということを示す、ゼロのままである。領域Cが占める時間周期は、第1の呼気相(領域B)からの酸素汚染された大気が、大気経路120から離れるよう、酸素フローが遅らせられなければならない、時間に対応する。上で議論されたように、時間周期の長さは、第1の呼気相の間、大気フローセンサー126により感知された排出ガスの量に基づいて、制御装置179により決定することができる。示された例において、大気フローライン220は、酸素フローの不足を相殺するために、領域Cにおいて、わずかに先が高くなる(peaks)。領域Dにおいて、酸素経路140からの酸素フローは、大気フローライン220及び酸素フローライン240の重複により示されるように、来たる吸入のために、再び開始する。示された実施形態は、呼気相の一部として、酸素フローが閉鎖される(領域C)、時間周期を示す。他の実施形態において、本教示の範囲から逸脱することなく、引き続く吸気相の一部の間、及び/又は、隣接する呼気相と吸気相との間、酸素フローを閉鎖されても良いということが、理解されるけれども。
【0029】
領域Eは、患者が再び、適切な酸素濃度を有する混合ガスを吸入する、第2の吸気相での活発な吸入を示す。大気フローライン220及び酸素フローライン240は、正のフローを示す。サイクルは、患者の呼吸プロセスとともに繰り返す。
【0030】
図3は、図1及び図2を参照して議論されるであろう、代表的な実施形態に係る、ガス混合制御プロセスのフローチャートである。図3での工程の全て又は一部は、例えば、制御装置180の制御により又は制御下で、実行されても良い。
【0031】
工程S310において、人工呼吸器100の種々の要素は、アクセスポート164で患者に供されるよう、混合ガスの所望のFiO2に基づいて、構成される。例えば、バルブ145は、ミキシングノード160で大気経路120からの大気と混合されるとき、混合ガス中の酸素の所望の割合を供する、酸素経路140を通る酸素の適切なフローのために、調節されても良い。工程S310の形態(configuration)を使用して、吸気相は、アクセスポート164を介する吸入に関して、患者に(所望のFiO2を有する)混合ガスを供するために、工程S312で実行される。
【0032】
工程S314において、呼気相は、患者が排出ガスを吐き出す間、実行される。排出ガスは、大気経路120に流れ、排出ガスの流れは、大気フローセンサー126により測定され、工程S316で制御装置180に供される。制御装置180は、例えば、工程S318で測定された大気フローに基づいて、排出ガスの量を計算する。
【0033】
工程S320において、制御装置は、酸素経路140からの酸素フローが、次の吸気相の間、遅らされ得る、遅延時間を決定する。上で議論されたように、遅延時間は、例えば、計算された量を閾値と比較すること、及び計算された量が閾値を超えるときはいつでも、所定の時間で、酸素フローを遅らせること、を含む、如何なる色々な技術を使用して、決定することができる。工程S322において、酸素フローは、例えば、次の吸気相の間の患者の吸入に先立って、バルブ145を通る酸素フローを一時的に閉鎖することによる、遅延時間の間、停止される。人工呼吸器100の循環操作により、S322を経た工程S312はその後、繰り返されても良い。もちろん、所望のFiOの如何なる変更が、工程S310で示されたように、人工呼吸器100の要素を再構成することを、必要とするであろう。
【0034】
好ましい実施形態がここで開示されるけれども、本発明の目的及び範囲内にとどまる、多くの変動が可能である。そのような変動は、ここでの明細書、図面及び特許請求の範囲の調査のあと、当業者にとって、明らかになるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内を除いては、制限されない。
図1
図2
図3