特許第5771235号(P5771235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5771235-給湯装置 図000002
  • 特許5771235-給湯装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771235
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   F24H1/10 303B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-102658(P2013-102658)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-224615(P2014-224615A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】岩間 優子
(72)【発明者】
【氏名】森 寛理
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−222393(JP,A)
【文献】 特開2001−33096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気温を取得する大気温取得手段と、熱交換器に接続された水通路内の水温を取得する水温取得手段と、該水通路内の水の凍結を防ぐための凍結防止運転を開始するか否かの判断を行う開始判断手段とを備える給湯装置において、
前記開始判断手段は、
前記大気温取得手段で取得した大気温と前記水温取得手段で取得した水温との差が所定の基準値未満である場合は、前記凍結防止運転を開始するか否かを前記大気温に基づいて判断し、
前記大気温取得手段で取得した大気温と前記水温取得手段で取得した水温との差が前記基準値以上である場合は、前記凍結防止運転を開始するか否かを前記水温に基づいて判断する
ことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯装置において、
前記開始判断手段は、
前記大気温取得手段で取得した大気温に基づいて判断する場合には、該大気温が所定の第1閾値温度未満になると、前記凍結防止運転を開始すると判断し、
前記水温取得手段で取得した水温に基づいて判断する場合には、該水温が前記第1閾値温度よりも高い第2閾値温度未満になると、前記凍結防止運転を開始すると判断する
ことを特徴とする給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水通路内の水が凍結しないように凍結防止運転を実行可能な給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置では、冬場などに水通路内の水が凍結しないように、水通路を温めるヒーターが設けられている。そして、大気温センサーで検出される大気温が所定の閾値温度よりも低下すると、ヒーターのスイッチを入れたり、水通路内の水を循環させるポンプを動作させたりするなどの凍結防止運転が行われる。
【0003】
こうした凍結防止運転を行う給湯装置では、大気温センサーが故障していると、凍結防止運転を適切なタイミングで開始することができない。そこで、大気温センサーの出力に基づいて断線や短絡などの異常を検出し、異常がなかった場合に、大気温センサーで検出した大気温に基づいて凍結防止運転を開始する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−239151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、提案されている技術では、断線や短絡には至らない接触不良や、センサー素子の経時劣化などで大気温センサーの検出精度が低下するような異常(中間故障)は検出することができず、また、大気温センサーの断線や短絡を検出した場合でさえ、大気温と関係なく凍結防止運転を開始して高温の湯が供給されることがあるので、大気温センサーが正常でない場合に凍結防止運転を適切に実行することができていないという問題があった。
【0006】
この発明は従来の技術における上述した課題に対応してなされたものであり、大気温センサーの中間故障を検出可能とすると共に、大気温センサーが正常でない場合でも適切に凍結防止運転を実行することが可能な給湯装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明の給湯装置は次の構成を採用した。すなわち、
大気温を取得する大気温取得手段と、熱交換器に接続された水通路内の水温を取得する水温取得手段と、該水通路内の水の凍結を防ぐための凍結防止運転を開始するか否かの判断を行う開始判断手段とを備える給湯装置において、
前記開始判断手段は、
前記大気温取得手段で取得した大気温と前記水温取得手段で取得した水温との差が所定の基準値未満である場合は、前記凍結防止運転を開始するか否かを前記大気温に基づいて判断し、
前記大気温取得手段で取得した大気温と前記水温取得手段で取得した水温との差が前記基準値以上である場合は、前記凍結防止運転を開始するか否かを前記水温に基づいて判断する
ことを特徴とする。
【0008】
空気と水との熱容量の違いから大気温と水温とでは、大気温が先に低下し水温が遅れて低下する。このため、大気温の低下に基づいて凍結防止運転の開始を判断することで、水が凍結する前の適切なタイミングで凍結防止運転を開始することができる。もっとも、大気温を取得する大気温取得手段にも中間故障を含めた異常が発生している可能性がある。そこで、本発明の給湯装置では、大気温と水温とを比較して、その差が基準値以上である場合は、大気温ではなく水温に基づいて凍結防止運転の開始を判断する。給湯装置では必ず水温を参照して給湯運転を行っており、水温取得手段に異常があって正しい水温を取得できない場合は給湯運転を停止するので、給湯運転をしているということは、水温取得手段は正常であると考えてよい。従って、水温に対して大気温が基準値以上に外れていれば、大気温取得手段に中間故障が発生していると判断することができる。この場合は、大気温の代わりに水温に基づいて凍結防止運転の開始を判断することができるので、大気温取得手段が正常でない場合でも適切に凍結防止運転を実行することができる。
【0009】
また、上述した本発明の給湯装置では、開始判定手段が大気温に基づいて判断する場合には、第1閾値温度未満になると凍結防止運転を開始すると判断し、水温に基づいて判断する場合には、第1閾値温度よりも高い第2閾値温度未満になると、凍結防止運転を開始すると判断することとしてもよい。
【0010】
水温は大気温よりも遅れて低下する。このため、凍結防止運転を開始する水温の閾値温度(第2閾値温度)を、凍結防止運転を開始する大気温の閾値温度(第1閾値温度)よりも高く設定しておくことによって、水温に基づいて判断する場合でも、凍結防止運転を開始するタイミングを、大気温に基づいて判断する場合に合わせることができ、その結果、適切なタイミングで凍結防止運転を開始することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例の給湯装置1の内部構造を示した説明図である。
図2】凍結防止運転制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施例の給湯装置1の内部構造を示した説明図である。給湯装置1は、全体を覆うハウジング10と、ハウジング10内に収容された燃焼部100と、ハウジング10内で燃焼部100の上方に設けられた熱交換器120などを備えている。
【0013】
燃焼部100は、燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させるバーナー102と、バーナー102に燃料ガスを供給するガス通路104と、バーナー102に燃焼用空気を供給する燃焼ファン110などを備えている。ハウジング10内には燃焼缶20が設けられており、バーナー102は、熱交換器120と共に燃焼缶20の中に収容されている。また、ガス通路104には、ガス通路104を開閉する電磁弁106と、ガス通路104を通過する燃料ガスの流量を制御する比例弁108とが設けられている。バーナー102での燃焼により生じる燃焼排気は、燃焼ファン110の風で上方の熱交換器120に向けて送られ、燃焼缶20の上部に設けられた排気筒22からハウジング10の外部に排出される。
【0014】
熱交換器120は、バーナー102からの燃焼排気が間を通過する複数枚の熱交換フィン122と、複数枚の熱交換フィン122を何度も貫通するように蛇行する通水管124とを備えている。通水管124の一端には給水通路130が接続されており、給水通路130を通って熱交換器120に水が供給される。この給水通路130には、給水通路130内の水の流れを検出する水流センサー134が設けられている。水流センサー134で水流を検出すると、バーナー102で混合ガスの燃焼が開始されるので、通水管124を流れる水が、熱交換器120を通過する燃焼排気によって加熱されて湯となる。また、通水管124の他端には給湯通路132が接続されており、給湯通路132を通って風呂の浴槽(図示省略)などに湯が供給される。この給湯通路132には、給湯装置1から出ていく湯の温度(出湯温)を検出する出湯温センサー136が設けられている。
【0015】
また、給湯装置1には、装置全体を制御するコントローラー150が搭載されており、電磁弁106、比例弁108、燃焼ファン110、水流センサー134、出湯温センサー136等がコントローラー150に接続されている。コントローラー150は、バーナー102で混合ガスを適切に燃焼させるために、水流センサー134で検出される水の流量や、リモコン(図示省略)等で設定された給湯温度などを参照し、必要とされる熱量に応じて比例弁108の開度や燃焼ファン110の回転速度を制御している。
【0016】
さらに、本実施例の給湯装置1の内部には、大気温を検出する大気温センサー138や、冬場などに給水通路130内の水が凍結しないように給水通路130を温めるヒーター140が設けられており、大気温センサー138およびヒーター140もコントローラー150に接続されている。そして、本実施例のコントローラー150は、給水通路130内の水の凍結を防ぐ凍結防止運転を適切なタイミングで開始するために、以下のような凍結防止運転制御処理を実行している。尚、本実施例の大気温センサー138は、本発明の「大気温取得手段」に相当している。
【0017】
図2は、コントローラー150が実行する凍結防止運転制御処理のフローチャートである。凍結防止運転制御処理では、まず初めに、出湯温センサー136が正常であるか否かを判断する(STEP100)。コントローラー150は、出湯温センサー136について以下の異常がないかを確認している。本実施例の出湯温センサー136は、温度変化によって電気抵抗が変わるサーミスター(図示省略)を備えており、サーミスターの出力に基づいて断線や短絡などの異常がないかを判断する。また、本実施例の給湯通路132は、風呂の浴槽内の湯を循環させて再加熱するための追い焚き回路(図示省略)と接続されており、この追い焚き回路には、浴槽に供給される湯の温度(風呂湯温)を検出する風呂湯温センサー(図示省略)が設けられている。湯張り時の風呂湯温は出湯温とほぼ同じになることから、風呂湯温と出湯温とを比較して、その差の絶対値が7℃以上である場合は、サーミスターの経年劣化などで温度の検出精度が低下する異常(以下、このような異常を中間故障と呼ぶ)が生じていると判断する。これらの異常が発生すると、正確な出湯温を把握できず高温の湯が供給される可能性があることから、給湯装置1では給湯運転自体を停止するようになっている。このような場合、STEP100では出湯温センサー136が正常ではないと判断されるので(STEP100:no)、凍結防止運転を行うことなく、凍結防止運転制御処理も停止する。
【0018】
これに対して、出湯温センサー136が正常である場合は(STEP100:yes)、出湯温センサー136で検出される出湯温から給水温(給水通路130内の水の温度)を計算する(STEP102)。コントローラー150は、先ず、水流センサー134で検出される水の流量と、バーナー102での燃焼により発生する熱量とに基づいて熱交換器120における水の上昇温度を求め、その上昇温度を出湯温から差し引いて給水温を算出する。尚、本実施例の出湯温センサー136およびコントローラー150は、本発明の「水温取得手段」に相当している。
【0019】
こうして給水温を計算したら、大気温センサー138で検出される大気温を取得する(STEP104)。大気温センサー138も出湯温センサー136と同様にサーミスター(図示省略)を備えており、その出力に基づいて大気温を検出する。そして、大気温と給水温とを比較し、その差の絶対値が基準値(本実施例では20℃)以上であるか否かを判断する(STEP106)。給水温の変化は大気温の変化と連動するので、その差が20℃未満である場合は(STEP106:no)、大気温センサー138は正常であると判断し、大気温に基づいて凍結防止運転を開始する。
【0020】
ここで、熱容量の違いから大気温は水温よりも早く低下する。大気温が氷点下まで下がると、やがて水温も氷点下まで下がると考えられるので、大気温の低下に基づいて凍結防止運転を開始すれば、水が凍結する前の適切なタイミングで凍結防止運転を開始することが可能である。また、風があたる部分では周囲よりも温度が低くなる可能性があること考慮し、本実施例では、凍結防止運転を開始する大気温の閾値温度が3℃に設定されているため、大気温センサー138で検出される大気温が3℃未満であるか否かを判断する(STEP108)。そして、大気温が3℃以上である場合は(STEP108:no)、凍結防止運転を行う必要はないと判断し、そのままSTEP100に戻って、上述した処理を繰り返す。尚、本実施例のコントローラー150は、本発明の「開始判断手段」に相当している。
【0021】
一方、大気温が3℃未満である場合は(STEP108:yes)、凍結防止運転を開始する(STEP110)。本実施例の凍結防止運転は、ヒーター140をONにして給水通路130を温めるようになっている。尚、凍結防止運転の態様は、これに限られず、例えば、給水通路130に循環回路や循環ポンプを設けておき、給水通路130内の水を循環させてもよい。また、ヒーター140は、1つに限られず、複数設けておいてもよく、凍結の発生し易い箇所や、凍結により破損し易い箇所に設置することとしてもよい。
【0022】
凍結防止運転を開始すると、大気温センサー138で検出される大気温が7℃以上になったか否かを判断する(STEP112)。大気温が7℃未満である場合は(STEP112:no)、凍結防止運転を継続したまま、大気温が7℃以上になるまで待機状態となる。そして、大気温が7℃以上になった場合は(STEP112:yes)、ヒーター140をOFFにして凍結防止運転を終了する(STEP114)。
【0023】
以上では、STEP106の判断にて大気温と給水温との差の絶対値が基準値(20℃)未満である場合について説明したが、20℃以上の差がある場合は(STEP106:yes)、大気温センサー138の異常を報知する(STEP116)。ここで、大気温と給水温との差が基準値以上となるのは、大気温が正しくない場合と、給水温が正しくない場合とがあり得るが、前述のように正常であることを確認済みの出湯温センサー136で検出した出湯温から計算される給水温は正しいことが担保されているので、大気温センサー138に異常(中間故障)が発生していると判断することができる。尚、異常の報知は、図示しない表示部でエラー表示を行うなどして実行する。
【0024】
異常を報知すると、続いて、STEP102で計算した給水温が15℃未満であるか否かを判断する(STEP118)。本実施例では、大気温センサー138の中間故障を検出すると、大気温の代わりに給水温に基づいて凍結防止運転の開始を判断するので、大気温センサー138が正常でなくても凍結防止運転を必要なときに開始することができる。本実施例では、凍結防止運転を開始する給水温の閾値温度が15℃に設定されているため、給水温が15℃以上である場合は(STEP118:no)、凍結防止運転を行う必要はないと判断して、そのままSTEP100に戻る。
【0025】
一方、給水温が15℃未満である場合は(STEP118:yes)、ヒーター140をONにして凍結防止運転を開始する(STEP120)。給水温は大気温よりも遅れて低下するので、それを考慮して給水温の閾値温度(15℃)を、前述した大気温の閾値温度(3℃、STEP108)よりも高く設定しておくことによって、給水温に基づいて判断する場合でも、凍結防止運転を開始するタイミングを、大気温に基づいて判断する場合に合わせることができる。
【0026】
凍結防止運転を開始したら、給水温が17℃以上になったか否かを判断する(STEP122)。STEP122では、出湯温センサー136で検出される出湯温から改めて給水温を計算し、その給水温が17℃未満である場合は(STEP122:no)、凍結防止運転を継続したまま、再計算した給水温が17℃以上になるまで待機状態となる。
【0027】
その後、給水温が17℃以上になった場合は(STEP122:yes)、ヒーター140をOFFにして凍結防止運転を終了する(STEP124)。このように大気温センサー138が正常でない場合でも給水温に基づいて凍結防止運転の終了を判断するので、凍結防止運転が実行され続けるようなことはなく、不要となったら凍結防止運転を終了させることができる。
【0028】
以上、本実施例の給湯装置1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0029】
例えば、前述した本実施例では、出湯温センサー136で検出される出湯温から給水温を計算していた。しかし、給水通路130に給水温センサーを設けておき、給水温を直接的に検出してもよい。この場合は、複数の給水温センサーを設けておき、互いの検出値を比較して、給水温センサーが正常であるか否かを確認してもよい。そして、給水温センサーの中間故障を検出した場合は、正確な給水温を把握できておらず、大気温との比較から大気温センサー138が正常であるか否かを判断することもできないので、凍結防止運転制御処理を停止することとしてもよい。
【0030】
また、大気温センサー138は、必ずしも給湯装置1の内部に設置する必要はなく、ハウジング10の外側面などに設置しておいてもよい。大気温センサー138をハウジング10の外部に設置すれば、内部に設置する場合に比べて早く大気温の低下を検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1…給湯装置、 10…ハウジング、 20…燃焼缶、
22…排気筒、 100…燃焼部、 102…バーナー、
104…ガス通路、 106…電磁弁、 108…比例弁、
110…燃焼ファン、 120…熱交換器、 122…熱交換フィン、
124…通水管、 130…給水通路、 132…給湯通路、
134…水流センサー、 136…出湯温センサー、 138…大気温センサー、
140…ヒーター、 150…コントローラー。
図1
図2