(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771255
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】自走式作業機械
(51)【国際特許分類】
B66C 23/40 20060101AFI20150806BHJP
F02B 61/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
B66C23/40
F02B61/00 B
F02B61/00 C
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-204515(P2013-204515)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2014-69972(P2014-69972A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2013年9月30日
(31)【優先権主張番号】20 2012 009 418.1
(32)【優先日】2012年10月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507186322
【氏名又は名称】マニトワック・クレーン・グループ・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】Manitowoc Crane Group France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・シュトゥールヴォルト
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−074386(JP,U)
【文献】
特開2012−126464(JP,A)
【文献】
特表2010−521391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/40
F02B 61/00
B60K 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式作業機械、特に移動式クレーンは、前記作業機械を移動させるように構成された車台(1)と、車台(1)に回転可能に搭載された上部構造体(2)と、駆動原動機(4)を有する駆動装置(3)とを備え、前記駆動装置(3)は、前記上部構造体と前記車台の間に形成され、前記上部構造体と前記車台の間で前記駆動原動機(4)によって出力された動力をモーメントの形で伝達するように構成されたモーメント伝達部(5)を備え、
前記上部構造体および前記車台の回転軸受の付近に延びる軸線の周り、特に前記上部構造体の回転軸線(7)の周りのモーメントを、少なくとも一つの、特に全ての被駆動要素(10)が受け、
前記モーメント伝達部(5)は、前記上部構造体と前記車台の間に延在し、前記上部構造体(2)の前記回転軸線(7)に平行に延在していない軸(11)を備える
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
自走式作業機械、特に移動式クレーンは、前記作業機械を移動させるように構成された車台(1)と、車台(1)に回転可能に搭載された上部構造体(2)と、駆動原動機(4)を有する駆動装置(3)とを備え、前記駆動装置(3)は、前記上部構造体と前記車台の間に形成され、前記上部構造体と前記車台の間で前記駆動原動機(4)によって出力された動力をモーメントの形で伝達するように構成されたモーメント伝達部(5)を備え、
前記上部構造体および前記車台の回転軸受の付近に延びる軸線の周り、特に前記上部構造体の回転軸線(7)の周りのモーメントを、少なくとも一つの、特に全ての被駆動要素(10)が受け、
前記モーメント伝達部(5)は、前記上部構造体および前記車台の前記回転軸受(6)の付近に配置され、および/または、前記上部構造体(2)の前記回転軸線(7)に平行に延在する少なくとも1つの出力軸(12)を備えるギヤボックス(8)を備え、ギヤボックス(8)の前記回転軸線は、前記上部構造体(2)の前記回転軸線(7)上に位置しない
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
前記ギヤボックス(8)は、前記上部構造体(2)の前記回転軸線(7)周りのモーメントを出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記ギヤボックスは、伝達方向に応じて前記上部構造体(2)または前記車台(1)に回転が固定された状態で結合される
ことを特徴とする請求項2または3に記載の作業機械。
【請求項5】
油圧ポンプ、特に前記上部構造体に供給するための油圧ポンプは、被駆動要素(10)を形成し、特に、前記回転軸受(6)の付近において前記上部構造体(2)の前記回転軸線(7)に平行に延在し、および/または前記回転軸受(6)の付近に配置されている軸線の周りに伝達されるモーメントによって駆動される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記駆動原動機(4)は、前記車台(1)に配置され、特に前記作業機械の単一の駆動原動機である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記モーメントは、前記上部構造体および前記車台の前記回転軸受(6)の付近に延びる軸線の周り、特に前記上部構造体(2)の前記回転軸線(7)の周りに伝達される
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項8】
前記駆動装置(3)は、前記上部構造体(2)に動力を供給するための駆動系(13)と、前記車台に動力を供給するための駆動系(14)との間で前記駆動原動機(4)により出力される動力を分割および/または切り替え、特に可変に分割する伝達ギヤボックス(9)を備え、特に、前記上部構造体および前記車台の前記駆動系の各動力要求に応じてそれを分割する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項9】
前記駆動装置(3)は、前記上部構造体を駆動する前記駆動原動機(4)によって出力される動力を用いる
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項10】
少なくとも一つの被駆動要素(10)が入力軸(15)、特に前記上部構造体(2)の前記回転軸線(7)に平行に延在し、および/または前記上部構造体(2)の前記回転軸線(7)上に位置しない回転軸線を備える
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式作業機械、特に移動式クレーンに関し、作業機械を移動させるように構成された車台と、該車台に回転可能に取り付けられた上部構造体と、駆動原動機を有する駆動装置とを備える。
【背景技術】
【0002】
現在の移動式クレーンは、駆動原動機を備え、該駆動原動機が出力した動力は、移動式クレーンを作業場間で移動させるために使用される。これら駆動原動機は通常、車台に固定して配置されたディーゼルエンジンである。また、上部構造体と該上部構造体に配置された装置に動力を供給するために、大抵、もう一つのディーゼルエンジンが上部構造体に配置されている。近年、軸重および排ガス規制の順守に関する法的規定がより厳しくなったことが、上部構造体に配置されたディーゼルエンジンを車台から上部構造体への油圧エネルギの伝達に置き換える方向へ移行するのを促してきた。そのため、かつて移動式クレーンの移動専用に設けられた車台上の駆動原動機は、上部構造体に動力を供給することもできる。しかしながら、このようなシステムには、エネルギ伝達時の高い動力損失、特に漏洩による問題が伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の問題を解決する自走式作業機械、特に移動式クレーンを提供することを目的とする。特に、予め規定された軸重および排ガス規制を順守しながら、自走式作業機械または移動式クレーンの信頼性とエネルギ効率を高めることが本発明の目的である。
【0004】
この目的は、請求項1の主題によって解決される。従属請求項は、本発明に係る主題を有利に発展させる。
【0005】
簡潔にするために、本発明について、以下に移動式クレーンの例を用いて説明する。当然ながら、本発明に係る概念は、車台と該車台上に回転自在に搭載された上部構造体とを備えたあらゆる自走式作業機械、例えば、他の昇降装置または建設機械、特に掘削機に適用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る移動式クレーンは、移動式クレーンを移動するように構成された車台、該車台に回転可能に取り付けられた上部構造体、および駆動原動機からなる駆動装置を備え、駆動装置は、上部構造体と車台の間に形成され、駆動原動機により出力された動力を上部構造体と車台の間でモーメントの形で伝達するように構成されたモーメント伝達部を備える。
【0007】
換言すれば、本発明に係る移動式クレーンは、車台と上部構造体の両方に動力を供給する駆動原動機を備え、この駆動原動機は、移動式クレーンの単一の駆動原動機または内燃機関であることが考えられ、さらに、内燃機関の代替として電動モータが考えられる。駆動原動機が出力する動力を駆動原動機に対して固定して搭載されていない装置が使用できるようにするために、すなわち、駆動原動機が車台上に配置され、かつ装置が上部構造体上に配置されている場合、または駆動原動機が上部構造体上に配置され、かつ装置が車台上に配置されている場合、本発明は、モーメント伝達部を、上部構造体と車台の間で駆動原動機が出力する動力をモーメントとして伝達するための移動式クレーンの駆動装置の一部と見なす。
【0008】
そのため、従来技術で従来公知のような、車台と上部構造体の間の油圧回転継手は、もはや必要が無く、その結果、漏れ損失の危険もない。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、駆動原動機は、移動式クレーンの車台に配置される。移動式クレーンを移動させるために公知のクレーンに設けられた駆動原動機は、代わりに、上部構造体と車台の両方に動力を供給する役割を果たすことができる。
【0010】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、上部構造体と車台の間で伝達されるモーメントは、上部構造体および車台の回転軸受の付近に延びる軸線の周り、特に上部構造体の回転軸線の周りに伝達される。このような目的に適している伝達手段は、当業者に知られており、モーメント軸線の位置および向きは、本発明の実施には直接関連しない。しかし、上部構造体の回転軸線の周りに伝達されるモーメントが伝達される実施形態が好ましい。
【0011】
モーメントを伝達するために、上部構造体と車台の間に延在する軸を設けることができ、その結果、伝達されるモーメントは、車台の付近にある軸へ伝えられると共に、上部構造体の付近にある軸から伝えられる、またはその逆に伝えられる。しかしながら、軸の代わりに、例えば、カップリング、トルクコンバータまたはギヤボックスなど当業者に知られており、上部構造体と車台の間にいわば「インターフェイス」を形成する、上部構造体と車台の間でトルクを伝達するための他の適切な手段を設けることも同様に考えられる。
【0012】
他の好ましい実施形態によれば、モーメント伝達部はギヤボックスを備え、該ギヤボックスは、具体的には、上部構造体および車台の回転軸受の付近に配置されている。この場合、駆動原動機の端部においてモーメントがその中へ送られ、回転軸受の端部においてモーメントがその外へ送られる斜交ギヤボックスが特に好ましい。ギヤボックスの適切な出力速度は、有利には、対応するギヤ比によって達成することができる。そのため、例えば油圧ポンプなど、小型で安価な駆動装置を使用することができる。
【0013】
ギヤボックスまたは斜交ギヤボックスは、上部構造体の回転軸線の周り、または回転軸受の付近においてこれと平行に延在する軸線の周りにモーメントを出力することが考えられる。
【0014】
他の好ましい実施形態によれば、ギヤボックスまたは斜交ギヤボックスは、伝達装置の従属関係に応じて、上部構造体または車台に回転が固定された状態で結合されている。駆動モーメントがギヤボックスによって上部構造体に中継される場合、結果的にギヤボックスは、車台に回転が固定された状態で結合されなければならない。逆に、上部構造体に回転が固定された状態で結合されているギヤボックスは、車台の方向にモーメントを出力することができる。
【0015】
駆動装置は、駆動原動機と、ギヤボックスまたは斜交ギヤボックスとの間を力が進行するように構成され、駆動原動機が出力する動力を、上部構造体に動力を供給するための駆動系と車台に動力を供給するための駆動系との間で分割する伝達ギヤボックスを備えるのがより好ましく、駆動原動機が出力する動力を各動力要求に応じてこれらの駆動系間で可変に分割することができる伝達ギヤボックスが特に好ましく、具体的には駆動系を遮断するオプションが考えられる。
【0016】
また、上部構造体および車台の回転軸受の付近、特に上部構造体の回転軸線の付近に、駆動原動機の動力によって駆動される少なくとも一部の素子またはユニットを配置することが考えられる。
【0017】
それから、伝達されるモーメントは、具体的には、上部構造体の回転軸線の周りで受けるのが好ましい。換言すれば、できるだけ多くの駆動要素またはユニットが斜交ギヤボックスに対して一列に、かつ上部構造体の回転軸線上に配置されるのが好ましい。このような駆動要素は、例えば、上部構造体の油圧ポンプにすることができる。そのため、少なくとも一方、特に全ての駆動要素またはユニットは、上部構造体の回転軸線の周りにモーメントを受けるのが特に好ましい。
【0018】
他の好ましい実施形態によれば、油圧ポンプは、回転軸受の付近において上部構造体の回転軸線と平行に配置することができる。また、モーメント伝達部が、上部構造体と車台の間に延在し、特に、上部構造体の回転軸線と平行に延在しない軸を備えることも考えられる。
【0019】
また、回転軸受の付近に配置されたギヤボックスは、上部構造体の回転軸線と平行に延在する出力軸を備えることができ、該出力軸の回転軸線は、具体的には、上部構造体の回転軸線上に位置しない。
【0020】
また、伝達ギヤボックスは、上部構造体用の駆動系と車台用の駆動系の間で、駆動原動機が出力する動力を分割する/可変に分割するだけでなく、駆動系のいずれかを完全に遮断し、いわば、上部構造体用の駆動系と車台用の駆動系の間で「切り替える」ように構成することができる。したがって、伝達ギヤボックスが出力した全ての動力は、これらの駆動系の一方に供給される。
【0021】
また、駆動装置は、上部構造体を駆動するための駆動原動機が出力する動力を使用することができる。また、少なくとも一つの駆動要素は、入力軸を備えることができ、該入力軸の回転軸線は、具体的には、上部構造体の回転軸線と平行に延在し、および/または上部構造体の回転軸線上に位置しない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下、本発明について、好適な実施形態に基づいて、および添付の図面を参照することによって、より詳細に説明する。本発明は、ここで説明した特徴のいずれかを、個別におよび適切に組み合わせて備えてもよい。
【0023】
【
図1】上部構造体と車台の間に形成されたモーメント伝達部を備える本発明に係る移動式クレーンを示す。
【
図2】本発明に係るモーメント伝達部の好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明に係る移動式クレーンを示しており、これは、車台1と、該車台1に回転自在に搭載された上部構造体2と、駆動装置3とを備える。駆動装置3は、車台1上に配置された駆動原動機4を備え、手動ギヤボックス(図示せず)と駆動軸を介して伝達ギヤボックス9に動力を出力する。
【0025】
伝達ギヤボックス9は、パワースプリットとして機能し、ある軸を介して移動式クレーンの駆動輪と、別の軸を介して斜交ボックス8との両方に動力を中継する。上部構造体と車台の各動力要求に応えるために、上部構造体または車台に出力される動力の比率は、駆動系の一方または他方を遮断するまで伝達ギヤボックス9によって変更することができる。
【0026】
斜交ギヤボックス8は、上部構造体2の回転軸線7上に配置され、上部構造体2の方向にこの軸線の周りのトルクを出力する。
【0027】
油圧ポンプ10は、上部構造体2の回転軸線7の周囲に配置され、斜交ギヤボックス8により出力されたモーメントを受けて上部構造体2に油圧を供給する。
【0028】
図2は、本発明に係るモーメント伝達部の特に好ましい実施形態を示している。駆動原動機4が出力する動力は、図の左側に示すように、軸を介して伝達ギヤボックス9に供給され、そこで、伝達ギヤボックス9は、この動力を要求に応じて駆動系13、14間で分割するか、またはこれらの駆動系の一方を完全に遮断し、すべての動力を他方の駆動系で使用できるようにする。駆動系14は、特に車両を駆動するために車台1に設けられる一方、駆動系13(プロペラ軸13)は、ギヤボックス9が出力する動力を他のギヤボックス8に中継する。このギヤボックスによって、実質的に水平に延びる軸線周り(軸13に接続されたギヤボックス8の入力軸周り)を回転するモーメントは、垂直軸線の周り(軸11の上流に接続された出力軸12の周り)を回転するモーメントに変換され、出力軸12を介して出力される。出力軸の回転軸線は、上部構造体2の回転軸線7と平行に延びているが、それと重ならないことが分かる。同じことが油圧ポンプ10に配置された入力軸15の回転軸線に当てはまる。車台1から上部構造体2にモーメントの形で動力を伝達するように、ギヤボックス8の出力軸12とポンプ10の入力軸15との間には他のプロペラ軸11が設けられ、出力軸12と入力軸15を互いに接続する。出力軸12も入力軸15も上部構造体2の回転軸線7上に延在しないので、軸11は、回転軸線7に対して斜めに延在する、すなわち、回転軸線7上になく、かつ回転軸線7に平行に延在しない。
【0029】
上部構造体2が回転軸受6を介して車台1に対して回転され次第、軸12、15の相対的な位置が変更され、該位置を補正するために、プロペラ軸11は、その長さを変更可能に構成することができる。