特許第5771261号(P5771261)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771261
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】医療用連発磁気パルス発生装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/40 20060101AFI20150806BHJP
   A61N 2/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   A61N1/40
   A61N1/42 Z
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-250624(P2013-250624)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-107176(P2015-107176A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2015年3月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507076126
【氏名又は名称】株式会社IFG
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】592200338
【氏名又は名称】日本素材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 利彦
(72)【発明者】
【氏名】森 仁
(72)【発明者】
【氏名】八島 建樹
(72)【発明者】
【氏名】森 和美
(72)【発明者】
【氏名】高木 敏行
(72)【発明者】
【氏名】出江 紳一
(72)【発明者】
【氏名】金高 弘恭
(72)【発明者】
【氏名】永富 良一
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−176320(JP,A)
【文献】 特表平11−511661(JP,A)
【文献】 特表2008−522572(JP,A)
【文献】 特開平02−243169(JP,A)
【文献】 特開昭59−197262(JP,A)
【文献】 特開昭57−022770(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2298370(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/40
A61N 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部位に渦電流を生じさせる磁気治療用のパルスコイルと、充放電用コンデンサと、充放電用コンデンサからの放電電流をパルスコイルに供給するスイッチング半導体素子とを環状に直列接続した放電回路部と、
1次側コイルが交流電源に接続され、2次側コイルが全波整流回路の入力端子に接続された昇圧トランスと、
スイッチング半導体素子に接続され、スイッチング半導体素子の導通タイミングを制御する制御部と、
充放電用コンデンサの両端子にその出力端子がそれぞれ接続された全波整流回路とで構成され、
全波整流回路のいずれかの出力端子と充放電用コンデンサのいずれかの端子、或いは前記全波整流回路の両端子と充放電用コンデンサの両端子との間に、充放電用コンデンサの順又は反転放電時に放電回路部から全波整流回路に流入する分流電流抑制用のインダクタ又は抵抗の少なくともいずれか一方が接続されている医療用磁気パルス発生装置において、
分流電流抑制用のインダクタ又は分流電流抑制用の抵抗の少なくともいずれか一方と、昇圧トランスの2次側コイルとで構成される充電回路部のインダクタンスの総和である全インダクタンス(L)、充電回路部の直流抵抗の総和である全直流抵抗(R)、充放電用コンデンサのキャパシタンス(C)、との関係が「数1」を充たすことにより共振型充電回路とし、加えて前記全インダクタンス(L)、キャパシタンス(C)、該全直流抵抗(R)との関係が「数2」を充たすことを特徴とする医療用連発磁気パルス発生装置。
【数1】
【数2】
(但し、「数2」中のTは連発パルスの繰り返し時間間隔を示す。)
【請求項2】
対象部位に渦電流を生じさせる磁気治療用のパルスコイルと、充放電用コンデンサと、充放電用コンデンサからの放電電流をパルスコイルに供給するスイッチング半導体素子とを環状に直列接続した放電回路部と、
1次側コイルが交流電源に接続され、2次側コイルが全波整流回路の入力端子に接続された昇圧トランスと、
スイッチング半導体素子に接続され、スイッチング半導体素子の導通タイミングを制御する制御部と、
スイッチング半導体素子の両端子にその出力端子がそれぞれ接続された全波整流回路とで構成され、
全波整流回路のいずれかの出力端子とスイッチング半導体素子のいずれかの端子、或いは前記全波整流回路の両端子とスイッチング半導体素子の両端子との間に、充放電用コンデンサの順又は反転放電時に放電回路部から全波整流回路に流入する分流電流抑制用のインダクタ又は抵抗の少なくともいずれか一方が接続されている医療用磁気パルス発生装置において、
分流電流抑制用のインダクタ又は分流電流抑制用の抵抗の少なくともいずれか一方と、昇圧トランスの2次側コイルと、パルスコイルで構成される充電回路部のインダクタンスとの総和である全インダクタンス(L)、充電回路部の直流抵抗の総和である全直流抵抗(R)、充放電用コンデンサのキャパシタンス(C)、との関係が「数1」を充たすことにより共振型充電回路とし、加えて前記全インダクタンス(L)、キャパシタンス(C)、該全直流抵抗(R)との関係が「数2」を充たすことを特徴とする医療用連発磁気パルス発生装置。

【数1】
【数2】
(但し、「数2」中のTは連発パルスの繰り返し時間間隔を示す。)
【請求項3】
スイッチング半導体素子は、サイリスタ単体、又は該サイリスタと該サイリスタに逆並列接続された反転電流用ダイオード、或いは双方向導通素子であることを特徴とする請求項1〜2に記載の医療用磁気パルス発生装置。
【請求項4】
パルスコイルの対象部位側の面又はその反対側の面に振動部材が更に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療用磁気パルス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末梢神経を連発磁気パルスで刺激することにより、筋肉に持続する大きな収縮を起こすための医療用連発磁気パルス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パルス電流は産業の広い分野で使われており、電気集塵機、プラズマ発生器、レーザー等の産業用の高電圧パルスから、弱いパルス電流で筋肉を動かす医療用の低周波治療器まで、多くの製品が実用化されている。産業機器用のパルス電流の多くは、高電圧(3〜10kV)、小電流(数mA〜数A)、高周波数(30〜100kHz)、狭いパルス巾(1〜10μs)が特徴である。その理由は電圧が高くパルス巾が狭いパルスほど、瞬間的に高エネルギーを発生できることによる。
【0003】
このような、鋭い高電圧パルスの発生を目的とするパルス電源については、数多くの特許出願が成されている。特許文献1は高電圧の超短パルスを発生させる目的で、コンデンサとコイルの共振回路を直列に多段接続する「パルス圧縮技術」が示されている。パルス圧縮回路に使われるコイルは、一定以上の電流が流れるとコアが飽和する可飽和リアクトルであって、コイルの役割はLC共振と、磁気飽和によりコイル電流が急増するスイッチ素子の両方の働きをしている。
【0004】
パルス電圧を安定化させる方法が特許文献2に示されている。このために、充放電用コンデンサと複数個のインダクタ(コイル)を直列接続し、かつ各インダクタは個別のコンデンサと電源とスイッチから成るLC共振回路を構成して、それらの複数共振回路のタイミングをずらすことでパルス電圧を安定化する点が特徴である。この発明のコイルは可飽和リアクトルではなく、また、共振周波数が高く空心コイルが使われているので、コアの飽和の問題はない。
【0005】
医療分野で使われているパルス電流使用機器として、低周波治療器がある。特許文献3によれば、皮膚に貼った電極を通して電圧100V以下(数mA程度)、パルス幅が50μs〜1msのパルス電流で末梢神経を刺激し、筋収縮を起すことができる。低周波治療器は小電力で筋収縮を起すことができるので、装置をきわめて小型にできる。しかしながら、電極を皮膚に貼り付ける手間と、大きな筋収縮を起す場合に、電気刺激は感電なので大きな疼痛を伴う問題がある。電極を皮下に埋め込むと疼痛の問題を回避できるが、電極線と皮膚の接触部分から化膿しやすい問題がある。
【0006】
低周波治療器とは別のパルス電流応用医療機器に磁気刺激装置がある。これは磁気パルスによって生じる誘導電流で神経を刺激する方法であって、電極を皮膚に貼らなくても良い利点がある。磁気刺激は、電圧1400V程度、電流が2000A程度、パルス幅0.2m秒程度のパルス電流を瞬時に磁気刺激コイルに流して強い磁場を発生し、磁場によって生体に発生する誘導電流で神経を刺激する。この場合の1パルスの電気エネルギーは一般的に100ジュール程度である。一方、上記の産業用パルス電源の場合、電圧が10kV、電流が100mA、パルス幅が1μsほどであり、1パルスあたりの電気エネルギーは数百分の一ジュール程度であって、磁気刺激パルスよりも極めて小さい。
【0007】
尿失禁の治療に用いるパルス磁気刺激装置が特許文献4に示されている。この発明は連発磁気パルスを用いるとしているので、コンデンサは急速な充放電を繰り返す必要がある。この発明に記載されている電気回路の説明は、電源電圧が100〜3kV、コンデンサの容量が300μF、突入電流の防止を保護抵抗で行うとする内容にとどまっており、磁気パルスの連発化にともなう消費電力の増大、内部素子の発熱の問題などについては特に記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−200446号公報
【特許文献2】特開2003−9548号公報
【特許文献3】特開2004−255104号公報
【特許文献4】特開平9−276418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パルス電流はコンデンサに蓄えた電荷を瞬時的に放電して発生させる。この過程は産業用機器、医療機器、医療用磁気刺激装置ともに同じである。前記装置において、電圧が低いパルス、あるいは巾が狭いパルスを発生する装置は、エネルギーが少ないので、コンデンサは小容量であり、充電時間は短い。一方、医療用磁気刺激装置のように、高エネルギーの磁気刺激用パルスを連発させる必要のある装置では、大容量コンデンサへの充放電を高速で繰り返す必要がある。一般的に放電時間は充電時間よりも遥かに短いので、そのためには、コンデンサへの充電時間を連発パルスの放電時間間隔よりも短縮あるいは同等程度の時間としなければならない。
【0010】
充電時間を短縮するためには、充電電流を大幅に増大させる必要がある。このためには、(1)高圧電圧を発生させる昇圧トランスの高圧化・大容量化、(2)昇圧トランスからの電圧を整流するブリッジ回路部の大容量化、(3)充電電流を制限する制限抵抗の大容量化、(4)場合によっては、複数のコンデンサおよび充電回路による多チャンネルシステムの採用が必要となる。これらは、すべて装置サイズ・重量・消費電力の大幅な増大を意味している。このために、連続パルスの発生可能な磁気パルス発生装置は大きく重く消費電力が大きいものとなっており、小型軽量の連発磁気パルス発生装置は実現していない。
【0011】
これらの理由によって、大型・重量化した医療用連発パルス磁気刺激装置を、持ち運び、移動して使用することは困難であり、また商用の100V電源では容量が不足しているため使用できる場所が限定されてしまっている。もし、商用100V電源で動作する可搬型電源による連発パルス磁気刺激が可能になれば、皮膚電極を使わずに、磁気パルスによって筋収縮の制御を病室において行うことが容易になる。連発磁気パルス刺激は、電気刺激のような疼痛を伴うことなく、四肢の大きな筋収縮を起すことができる利点があり、リハビリ分野での応用を拡大できる。
【0012】
本発明の主たる目的は、前述の内容から分かるように医療用連発パルス磁気刺激装置を小型化することで、そのために構成部品の小型軽量化、充電時間の短縮化を図ることにあり、付加的な目的としては磁気発生手段をモノフェーズとして特殊な磁気治療に使ったり、バイフェーズとして刺激を倍加させて高い治療効果を挙げることにあり、更には振動による磁気刺激を緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題に鑑み、本発明は、以下の技術を用いて上記の課題を解決した。請求項1に記載の発明(図1図4)は、
対象部位3に渦電流を生じさせる磁気治療用のパルスコイル6と、充放電用コンデンサ4と、充放電用コンデンサ4からの放電電流をパルスコイル6に供給するスイッチング半導体素子7とを環状に直列接続した放電回路部Kと、
1次側コイル1aが交流電源2に接続され、2次側コイル1bが全波整流回路5の入力端子5aに接続された昇圧トランス1と、
スイッチング半導体素子7に接続され、スイッチング半導体素子7の導通タイミングを制御する制御部8と、
充放電用コンデンサ4の両端子P1,P2にその出力端子5b、5bがそれぞれ接続された全波整流回路5とで構成され、
全波整流回路5のいずれかの出力端子5b、5bと充放電用コンデンサ4のいずれかの端子P1,P2、或いは前記全波整流回路5の両端子5b、5bと充放電用コンデンサ4の両端子P1,P2との間に、充放電用コンデンサ4の順又は反転放電時に放電回路部Kから全波整流回路5に流入する分流電流11b抑制用のインダクタ9又は抵抗10の少なくともいずれか一方が接続されている医療用磁気パルス発生装置において、
分流電流11b抑制用のインダクタ9又は分流電流11b抑制用の抵抗10の少なくともいずれか一方と、昇圧トランス1の2次側コイル1bとで構成される充電回路部J1のインダクタンスの総和である全インダクタンス(L)、充電回路部の直流抵抗の総和である全直流抵抗(R)、充放電用コンデンサのキャパシタンス(C)、との関係が「数1」を充たすことにより共振型充電回路とし、加えて前記全インダクタンス(L)、キャパシタンス(C)、該全直流抵抗(R)との関係が「数2」を充たすことを特徴とする医療用連発磁気パルス発生装置である。
【数1】
【数2】
(但し、「数2」中のTは連発パルスの繰り返し時間間隔を示す。)
【0014】
請求項2に記載の発明(図5図6)は、
対象部位3に渦電流を生じさせる磁気治療用のパルスコイル6と、充放電用コンデンサ4と、充放電用コンデンサ4からの放電電流をパルスコイル6に供給するスイッチング半導体素子7とを環状に直列接続した放電回路部Kと、
1次側コイル1aが交流電源2に接続され、2次側コイル1bが全波整流回路5の入力端子5aに接続された昇圧トランス1と、
スイッチング半導体素子7に接続され、スイッチング半導体素子7の導通タイミングを制御する制御部8と、
スイッチング半導体素子7の両端子P1,P2にその出力端子5b,5bがそれぞれ接続された全波整流回路5とで構成され、
全波整流回路5のいずれかの出力端子5b,5bとスイッチング半導体素子7のいずれかの端子P1,P2、或いは前記全波整流回路5の両端子5b,5bとスイッチング半導体素子7の両端子P1,P2との間に、充放電用コンデンサ4の順又は反転放電時に放電回路部Kから全波整流回路5に流入する分流電流12b抑制用のインダクタ9又は抵抗10の少なくともいずれか一方が接続されている医療用磁気パルス発生装置において、
分流電流12b抑制用のインダクタ9又は分流電流12b抑制用の抵抗10の少なくともいずれか一方と、昇圧トランス1の2次側コイル1bと、パルスコイル6とで構成される充電回路部J2のインダクタンスの総和である全インダクタンス(L)、充電回路部J2の直流抵抗の総和である全直流抵抗(R)、充放電用コンデンサ4のキャパシタンス(C)、との関係が「数1」を充たすことにより共振型充電回路とし、加えて前記全インダクタンス(L)、キャパシタンス(C)、該全直流抵抗(R)との関係が「数2」を充たすことを特徴とする医療用連発磁気パルス発生装置である。
【数1】
【数2】
(但し、「数2」中のTは連発パルスの繰り返し時間間隔を示す。)
【0015】
請求項1又は2の発明に拠れば、インダクタ9又は抵抗10により、充放電用コンデンサ4の順又は反転放電時に放電回路部Kから分流して全波整流回路5に流入する分流電流11b,12bを抑制して、微小電流とすることができ、全波整流回路5を構成するブリッジダイオードD1〜D4を小容量のものにすることができ、装置の小型化が可能になる。
【0016】
また、請求項1又は2に記載の医療用連発磁気パルス発生装置において、昇圧トランス1の2次側コイル1bと、分流電流11b抑制用のインダクタ9又は分流電流11b抑制用の抵抗10の少なくともいずれか一方とで構成される充電回路部J1、又は、請求項2に記載の医療用連発磁気パルス発生装置において、昇圧トランス1の2次側コイル1bと、分流電流12b抑制用のインダクタ9又は分流電流12b抑制用の抵抗10の少なくともいずれか一方、及びパルスコイル6で構成される充電回路部J2の総和である全インダクタンスL、充電回路部J1,J2それぞれの直流抵抗の総和である全直流抵抗R、充放電用コンデンサ4のキャパシタンスC、との関係が上記「数1」を充たすことにより共振型充電回路とし、加えて前記全インダクタンスL、キャパシタンスC、該全直流抵抗Rとの関係が上記「数2」を充たす医療用連発磁気パルス発生装置である。なお、上記2式を満足すれば、微小分流電流11b、12b用のインダクタ9や直流抵抗Rを設けない場合もある。
【0017】
数式1を満たすことで、請求項1又は2の回路では、充電パルスPを短時間発生させるだけで、充放電用コンデンサ4への充電を完了させることが可能となる。そして、数式2を満たすことで、充放電用コンデンサ4への充電電流の流入時間(=充電時間t)を連発パルスの繰り返し時間間隔Tと同程度(0.5T〜2T)とすることができ、後述する実施例1からも分かるように、充電電流の大きさを十分に抑えながら、次の充放電用コンデンサ4の放電タイミングまでにほぼ充電を完了することが可能となる。換言すれば、充電時間tを連発パルスの繰り返し時間間隔Tに等しいかそれ以下にする事が好ましい。即ち、充電時間tが0.5T〜1Tであれば、十分な充電が出来るが、1Tを越え、2Tまででは充放電用コンデンサ4への充電はフル充電には達しないものの、治療には使用可能なレベルとなる。充電時間tが2Tを越えると充電不足となり磁気刺激には不足する。このように充電時間tを短縮化することで強い磁気パルスの連続発生を可能にできる。
【0018】
請求項3はスイッチング半導体素子7に関し、スイッチング半導体素子7は、サイリスタ7a単体、又は該サイリスタ7aと該サイリスタ7aに逆並列接続された反転電流用ダイオード7b、或いは双方向導通素子7cであることを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明に拠れば、スイッチング半導体素子7が充電されたコンデンサ4に対して順方向に接続されたサイリスタ7a単体の場合には、パルスコイル6に流れる順方向の放電電流11はモノフェーズとなり、強力な可塑性誘導刺激法に用いることが出来る。これに対して、スイッチング半導体素子7が充電されたコンデンサ4に対して順方向に接続されたサイリスタ7aと該サイリスタ7aに逆並列接続された反転電流用ダイオード7b、或いは双方向導通素子7cの場合には、パルスコイル6に流れる放電電流は順方向の放電電流11と、それに続くその逆方向の反転電流12とで構成されたバイフェーズとなり、1度の放電で2度の末梢神経の刺激が可能となり、治療効果を高められるだけでなく、放電電流11又は反転電流12の内のコンデンサ4に戻る分流電流11a、12aによる充電が可能になり、次の充電量を小さくすることができる。なお、後述するように分流電流11a、12aは放電電流11や反転電流12とほぼ等しい。
【0020】
請求項4は、請求項1〜3のいずれかに記載の医療用磁気パルス発生装置において、パルスコイル6の対象部位3側の面又はその反対側の面に振動部材6aが更に配置されていることを特徴とする医療用磁気パルス発生装置である。
【0021】
パルスコイル6の対象部位3側(即ち、患部側)の面又はその反対側の面に振動部材6aを配置すれば、パルスコイル6に断続して生成する磁気により、振動部材6aが振動して対象部位3側(即ち、患部側)に機械的振動を与え、断続的に発生する渦電流による末梢神経の刺激を紛らわせることができ、磁気治療時の違和感を緩和することができる。振動部材6aとしては、磁場により強く磁化される強磁性体、例えば、鉄、コバルト、ニッケルとそれらの合金、フェライトなどのブロック又は板などが用いられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、医療用磁気パルス発生装置からの末梢神経刺激用の強い磁気パルスを連発化する上で大きな障害となっている充電電流の増大の問題を、消費電力が多い大容量の抵抗や重く嵩張る大型の昇圧トランス、多チャンネル化された充電回路等を用いず解決することができ、装置の小型軽量化および省電力化を図ることが可能となった。この小型・省電力化により、従来は運搬が難しく使用場所が限定されている医療用連続磁気パルス発生装置の使用機会がより拡大されることが期待でき、更に回路に工夫を加えることにより、磁場の発生条件を変えて特殊な治療や、高い刺激による治療効果の向上や、更には従来電気刺激装置によって行われている治療を、疼痛が少なく取扱いが容易な磁気刺激による治療に置換することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の医療用連発磁気パルス発生装置の回路の第1実施例である。
図2図1の第1変形例の部分図面である。
図3図1の第2変形例の部分図面である。
図4図1の第3変形例の部分図面である。
図5】本発明の医療用連発磁気パルス発生装置の回路の第2実施例である。
図6図5の更なる変形例の部分図面である。
図7図1〜6の回路のパルスコイルに振動部材を設けた部分図面である。
図8】本発明のモノフェーズ放電時の充電波形と放電波形の図である。
図9】本発明のバイフェーズ放電時の充電波形と放電波形の図である。
図10】本発明における全波整流回路を通過する分流電流用の抵抗の抵抗値がゼロの場合の全波整流回路に流れる電流波形である。
図11】本発明における全波整流回路を通過する分流電流用の抵抗の抵抗値が0.53Ωの場合の全波整流回路に流れる電流波形である。
図12】本発明における全波整流回路を通過する分流電流用のインダクタのインダクタンス値が111μHの場合の全波整流回路に流れる電流波形である。
図13】本発明におけるインダクタの全波整流回路を通過する分流電流に対する抑制効果を示す図である。
図14】本発明における抵抗の全波整流回路を通過する分流電流に対する抑制効果を示す図である。
図15】本発明におけるLCR共振型回路のコンデンサに流入する電流が最大になる時間と、リアクタンス及びキャパシタの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。本発明は医療用連発磁気パルス装置を小型化することを主たる目的とし、その上で全波整流回路を通過する分流電流の処理及び小型化を妨げる最大の課題となる充放電用コンデンサ4への充電電流増大の問題の解決を目指して本発明者らは鋭意研究を行った。この結果、第1に充放電用コンデンサ4の放電時の全波整流回路5へ流れ込む分流電流11b,12bを抑制することにより全波整流回路5を構成するブリッジダイオードD1〜D4の容量を著しく小さいものにすることができた。換言すれば、充放電用コンデンサ4の順方向の放電時(図1)、又は電圧反転時(図5)に流れる、全波整流回路5を通過する分流電流11b,12bは低抵抗および/または低インダクタンスにて抑制可能であること、第2に、装置内の回路の前述の全インダクタンスL、全直流抵抗R、充放電用コンデンサ4のキャパシタンスCの相互関係を適切に設定することにより、順方向の充電電流を十分抑制し、かつ連発磁気パルスの発生が可能な充電速度を得られること、第3に、充放電用コンデンサ4に並列に接続した、放電素子であるスイッチング半導体素子7を双方向型とし、スイッチング半導体素子7のダイオード7b(又は、双方向導通素子7c)によって充放電用コンデンサ4からの逆放電を可能にすることによって、パルスコイル6に発生する磁気パルスを順方向と逆方向のバイフェーズ(プラスマイナス双峰型)波形とすれば、1回の充電で2度の電気刺激を与えることが出来て治療効果を倍加させることが出来、同時に充放電用コンデンサ4への再充電によって消費電力を低減できること、或いは、1回の充電で1度の電気刺激を行うモノフェーズ波形とすることにより、特殊な磁気刺激治療の道を開いたことを見出した。これらの知見に基づく以下の手段と条件によって、医療用連続パルス磁気刺激装置の小型軽量化を可能にした。
【0025】
上記のように、従来の医療用連発磁気パルス発生装置をそのまま適用しようとすれば、大きく且つ重くならざるを得なかった。再説すればその原因は、患部に与える磁気パルス間の間隔を短くすると、充放電用コンデンサを充電するための時間を十分にとることができず、そのため充電電流を大きくせざるを得なかったことに端を発する。充電電流の大きさの制御は一般的に電流を制限する抵抗を昇圧トランスと充放電用コンデンサの間に挿入することで行っている。抵抗は電流によって発熱するので必然的にこの電流制限抵抗では大きな電力損失がある。例えば、100μFのコンデンサに1000Vの直流を充電する場合、突入電流防止に1kΩの抵抗を使うならば1Aの電流が流れて1秒間で充電できる。しかし抵抗は1kWの大きなジュール発熱を伴う。そこで抵抗値を10kΩに増やすと電流は0.1Aに減り、発熱は100Wに低下するが、充電時間は10秒間と長くなる。即ち、抵抗を電流制限素子として使って連続磁気パルスを発生させるには、(1)電流制限抵抗の抵抗値を小さくし、かつ熱容量を大きくする、あるいは、(2)充電回路を多チャンネル化して、順次磁気パルスを発生させる必要があり、これらは共に装置の大型化の原因となる。
【0026】
そこで本発明では、電流制限の主体として本回路の全インダクタンス(昇圧トランス1の2次側コイル1bや全波整流回路5を通過する分流電流11b,12b抑制用のインダクタ9、回路によってはこれにパルスコイル6を加えた全インダクタンス)を用いることとした。すなわち本回路の大きな全インダクタンスにより、充電開始時の電流の急増大を抑制し充電電流を制御する方式の回路について研究を行った。本発明を用いた連発磁気パルス発生装置の回路図の一例を「図1」に示す。
【0027】
図1の回路は、放電回路部Kと充電回路部J1とで構成され、放電回路部Kは患者の対象部位3に近接又は接触させて用いられ、筋肉に微小時間の連続パルス状の渦電流を生じさせてその末梢神経を刺激する磁気治療用のパルスコイル6と、充放電用コンデンサ4と、充放電用コンデンサ4からの放電電流11をパルスコイル6に供給するスイッチング半導体素子7とを環状に直列接続して構成されている。この実施例では、スイッチング半導体素子7は、全波整流回路5の、充電電流が出力される一方の出力端子5bからパルスコイル6に向かう順方向のサイリスタ7aと該サイリスタ7aに逆並列接続された反転電流用ダイオード7bとで構成されている。そして、図1では前記分流電流抑制用のインダクタ9は前記一方の出力端子5bとスイッチング半導体素子7の端子P1との間で直列接続されている。制御部8はスイッチング半導体素子7の導通タイミング(=連続磁気パルスの繰り返し時間間隔T)を制御するもので、スイッチング半導体素子7のサイリスタ7aに接続されている。
【0028】
充電回路部J1は、昇圧トランス1の2次側コイル1bと、全波整流回路5と、分流電流抑制用のインダクタ9(又は、該インダクタ9に替えて用いられる分流電流抑制用の抵抗10)及び充放電用コンデンサ4とで構成されている。昇圧トランス1は、その1次側コイル1aが交流電源2に接続され、2次側コイル1bが全波整流回路5の入力端子5aに接続されている。全波整流回路5は、その両出力端子5b,5bが充放電用コンデンサ4の両端子P1,P2にそれぞれ接続されている。そして、全波整流回路5のいずれかの出力端子5b,5bと充放電用コンデンサ4のいずれかの端子P1,P2或いは両端子5b,P1(5b,P2)との間に分流電流抑制用インダクタ9又は分流電流抑制用抵抗10の少なくともいずれか一方が接続されている。即ち、充電電流が出力される一方の出力端子5bと端子P1、又は他方の出力端子5bと端子P2との間のいずれか一方に、分流電流抑制用のインダクタ9だけを、又は分流電流抑制用の抵抗10だけを直列接続する場合、或いは、一方の出力端子5bと端子P1に該インダクタ9が設けられ、他方の出力端子5bと端子P2との間に該抵抗10をそれぞれ接続する場合、或いはその逆、及び両出力端子5bと両端子P1,P2の間に該インダクタ9同士又は該抵抗10同士がそれぞれ接続されている場合がある。
【0029】
図2は分流電流抑制用のインダクタ9に替えて抵抗10を用いた例を示す。インダクタ9、抵抗10の配置位置は、前述のように全波整流回路5の一方の出力端子5b又は反対側の他方の出力端子5bのいずれの側に直列接続してもよい。
【0030】
同様に本発明を用いた医療用連発磁気パルス発生装置の回路図の他例を「図5」に示す。該回路においては、充放電用コンデンサ4と、スイッチング半導体素子7の位置が交代しているだけで、その余は図1と同じである。なお、この場合、サイリスタ7aの入力側端子P1は、全波整流回路5の充電電流が出力される側の出力端子5b側に接続されている。
【0031】
図1,5の回路では、昇圧トランス1の1次側コイル1aに商用電流が流れると2次側コイル1bには所定の電圧に昇圧された状態で電流が流れ、2次側の電流は、全波整流回路5によって整流された後、分流電流抑制用のインダクタ9(又は図示していないが、分流電流抑制用の抵抗10)を介して充放電用コンデンサ4に充電される(図9参照)。サイリスタ7aに制御部8からトリガ信号を与えて充放電用コンデンサ4に充電された電荷(順方向放電電流11)をパルスコイル6に順方向に瞬時に流すと、順方向の強いパルス磁場がパルスコイル6に発生し、パルスコイル6に接して又は近接して配置された患部の筋肉に渦電流を発生させ、末梢神経を刺激する。この順方向の放電時において、図1の場合、パルスコイル6を通過した放電電流11は、分流して反転電流用(逆流用)ダイオード7b及び全波整流回路5を通って再び充放電用コンデンサ4に戻る。全波整流回路5を通って再び充放電用コンデンサ4に戻る分流電流11bは、インダクタンス9(又は同抵抗10)の存在によって大幅に抑制され、充放電用コンデンサ4に直接戻る分流電流11aより遥かに小さいものとなり、全波整流回路5のダイオードD1〜D4を害することはないし、充放電用コンデンサ4に対する分流電流11aによる逆向きの充電を殆ど阻害しない。その結果、充放電用コンデンサ4は分流電流11aにより電圧が逆向きに充電された状態となる。続いて電圧が逆向きに充電された充放電用コンデンサ4からは逆方向の反転電流が放電され、パルスコイル6に逆方向の磁場が形成され、前述同様、患部の筋肉に渦電流を発生させ、末梢神経を刺激する。
【0032】
図5の場合、前記順方向の放電時において、パルスコイル6を通過した放電電流11はそのまま、充放電用コンデンサ4に戻り、電圧が逆向きに充電された状態となる。そして電圧が逆向きに充電された充放電用コンデンサ4からは逆方向の反転電流12が放電され、パルスコイル6に逆方向の磁場が形成され、前述同様、患部の筋肉に渦電流を発生させ、末梢神経を刺激する。この反転電流12は端子P2で分流し、分流電流12aは反転電流用ダイオード7bを通り、分流電流12bは全波整流回路5を通って再び充放電用コンデンサ4に充電される。全波整流回路5を通って再び充放電用コンデンサ4に戻る分流電流12bは、インダクタンス9(又は同抵抗10)の存在によって大幅に抑制され、逆流用ダイオード7bを通過して充放電用コンデンサ4に直接戻る分流電流11aより遥かに小さいものとなり、全波整流回路5のダイオードD1〜D4を害しない。即ち、図1,5の回路では、いわゆるバイフェーズ波形といわれる磁場波形(磁場は両極方向に一度ずつ飛び出したプラスマイナス双峰型のパルス状磁界)となって放電が終了する。
【0033】
この再充電により充放電用コンデンサ4は放電前に持っていた電荷のかなりの部分を再度取り戻すことになり、充電回路部J1,J2から充放電用コンデンサ4に流し込むエネルギーはハッチングの部分だけとなり、かなり低減される(図9)。このため、後述するモノフェーズ方式の装置と比較して、装置内で使用する素子を小さくすることが可能となり、装置の大幅な小型軽量化、省電力化が見込める。
【0034】
図3は、図1のスイッチング半導体素子7がサイリスタ7a単体で構成されている場合で、この場合は、逆流用ダイオード7bが存在しないため、反転電流12がパルスコイル6に流れず、パルスコイル6から発生する磁場は片極方向にだけ出たパルス状の磁界(図8参照)となり、いわゆるモノフェーズ波形といわれる磁場波形となって放電が終了する。この場合、充放電用コンデンサ4は0又はマイナス電圧になり、ここからのチャージとなるため、充放電用コンデンサ4への充電回路部J1からのチャージはバイフェーズ方式の場合に比べて大きな電力が必要となる。これを図8のハッチングで示す。なお、この場合も順方向放電電流11の分流電流11bは全波整流回路5を流れることになるが、インダクタ9(又は抵抗10)により抑制されて全波整流回路5のブリッジダイオードD1〜D4は上記同様保護されることになる。
【0035】
図4,6は、図1,5のスイッチング半導体素子7が双方向導通素子(トライアック)7cの場合で、双方向で制御部8のトリガー信号を受けて順方向放電電流11及び逆方向の反転電流12を流してバイフェーズ方式で磁気刺激することになる。それ以外は図1図5と同じである。
【0036】
また、上記回路内の素子の特性を「数式1」を従って設定すれば、図8,9の充電電流波形で示される充電パルスPを短時間発生させるだけで、充放電用コンデンサ4への充電を完了させることが可能である。
即ち、図1の本充電回路部J1では、昇圧トランス1の2次側コイル1bと、抵抗10に代えて又は抵抗10と共にインダクタ9が使用された場合には該インダクタ9を含めたインダクタンスの総和である全インダクタンスL、
昇圧トランス1の2次側コイル1bと前述のようにインダクタ9が使用された場合には該インダクタ9の直流抵抗分、或いはインダクタ9に代えて使用された又はインダクタ9と併用された場合には該抵抗10を含めた直流抵抗の総和である全直流抵抗R、充放電用コンデンサ4のキャパシタンスC、との関係が「数式1」を充たすことにより本回路を共振型充電回路とした。
即ち、本充電回路部J1の全インダクタンスLは、(i)2次側コイル1bのインダクタンスだけの場合と、(ii)2次側コイル1bのインダクタンス+インダクタ9のインダクタンスの場合があり、本充電回路部J1の全直流抵抗Rは、(a)2次側コイル1bの直流抵抗分だけの場合、(b)2次側コイル1bの直流抵抗分+インダクタ9の直流抵抗分の場合、(c)2次側コイル1bの直流抵抗分+抵抗10の場合、(d)2次側コイル1bの直流抵抗分+インダクタ9の直流抵抗分+抵抗10の場合がある。
また、図5の本充電回路部J2では、図1の場合にパルスコイル6が更に加わることになり、昇圧トランス1の2次側コイル1bと、パルスコイル6、抵抗10に代えて又は抵抗10と共にインダクタ9が使用された場合には該インダクタ9のインダクタンスを含めた総和である全インダクタンスL、昇圧トランス1の2次側コイル1bとパルスコイル6、前述のようにインダクタ9が使用された場合にはインダクタ9の直流抵抗分、或いはインダクタ9に代えて使用された又はインダクタ9と併用された場合には該抵抗10を含めた抵抗10の直流抵抗の総和である全直流抵抗Rとの関係が「数式1」を充たすことにより、本回路を共振型充電回路とした。これにより従来装置のような徐々に電流が減衰していく減衰型の電流波形ではなく、図8,9のような幅の短いパルス状の充電電流波形で充電されることになり、上記のように充放電用コンデンサ4への充電を短時間で完了させることが出来る。
【0037】
【数1】
【0038】
そして、「数式2」を充たすことにより、充放電用コンデンサ4に充電電流が流れ込む充電電流流入時間tと連発パルスの繰り返し時間間隔Tとを同程度とすることが出来る。換言すれば、充電電流流入時間tを連発パルスの繰り返し時間間隔Tの半分を越え、2倍未満とすることで、連発パルスの繰り返しを実現できる。この内、充電電流流入時間tを0.5Tを越え、1T以下とすることが好ましい。充電電流流入時間tを0.5Tより短くしようとすれば、充電電流量が大きくなり過ぎて装置の小型化の目的から逸れることになり、2T以上となると、充電に時間が掛り過ぎて充電電圧が不足する。
【0039】
【数2】
【0040】
上記の点を詳述すると、この充電パルスPの積分値(=図8,9の充電電流波形のハッチングの部分)は充放電用コンデンサ4の充電電荷量(=図8,9の放電電流波形のハッチングの部分)に相当している。そして、回路内素子への負担を最小化するためには、充電パルスPの高さを低くするとともに充電パルスPの幅を広げることで同程度の積分値を得ることが望ましい。しかし、この幅が広がりすぎると次の放電までにこの充電パルスPによる充電が間に合わなくなってしまうため、この充電パルスPの幅、すなわち充放電用コンデンサ4への充電電流の流入時間tを連発パルスの繰り返し時間間隔Tと同程度とすることが必要である。この充電パルスPの幅(充電時間t)は、「数式2」の中辺の数式で表すことができ、この値を連発パルスの繰り返し時間間隔Tの0.5倍から2.0倍の範囲とすれば、前述のように充電電流を十分に抑えながら、次の充放電用コンデンサ4の放電タイミングまでにほぼ充電を完了することが可能となる。また、用途によって様々なパルスコイル6をとりかえながら使用するような装置の場合は、各コイルのインダクタンスの値を用いて計算した結果が「数式2」を充たしていることが望ましい。
【0041】
上記インダクタ9および抵抗10は、「数式1」、「数式2」を充たす充電回路部J1,J2とするための調整用程度の素子であり、不足しているインダクタンスや抵抗を補う程度の小さな素子であり、従来装置の大容量抵抗と置換すればかなりの小型軽量化が可能となる。また、これらの素子がなくとも「数式1」、「数式2」の式を充たしている場合は素子自体が不要であり、省略することも可能である。ただし、少なくともどちらか一方の素子は再度後述するように分流電流11b、12bの抑制のための素子として必要となる。
【0042】
本回路の全直流抵抗Rを0.5Ω一定とし、充放電用コンデンサ4の容量を50、100、150マイクロファラッド(μF)とし、全インダクタンスLを0.5〜4ヘンリー(H)、の範囲で変化させた場合に、充放電用コンデンサ4への充電電流の流入時間tを「数式2」によって計算した結果を図15に示す。図15の結果は、抵抗Rを0.1〜1Ωの範囲で変えてもほとんど同じであった。この図15を用いておよその素子の特性を決定することができる。例えば、連発磁気パルス間隔Tを20〜40ミリ秒として、充放電用コンデンサ4の充電時間tを設定するには、充放電用コンデンサ4の容量を100〜150μFの場合、本回路のインダクタンスが2〜4Hとなるように設計することが必要であることがわかる。
【0043】
なお、本発明方式の回路を用いた場合、前述のように充放電用コンデンサ4の順方向放電電流11の分流電流11b(図1)、或いは電圧反転時に分流電流12bが全波整流回路(ブリッジ整流器)5を流れてしまう。この電源回路を流れる電流の向きを図1及び図5の曲線で示す。11は正充電時のコンデンサ4の放電時の電流の順方向の流れ(細い実線)であって、一方、12はコンデンサ電圧反転時に流れる反転電流の流れ(細い破線)を示す。前述のように、図1の場合は、順方向放電電流11の分流電流11bが全波整流回路5を流れる。図5の場合、順方向放電電流11は全波整流回路5を流れないが、逆方向の反転電流12の分流電流12bが全波整流回路5を通る。図10〜12は全波整流回路5に流入する分流電流11b、12bを測定した結果を示す。図10はインダクタ9も抵抗10も設けない場合であって、0.15ミリ秒(磁気パルスの幅)の間に約120Aという大電流が流れている。これは分流電流11b、12bを妨げる素子が全波整流回路5と充放電用コンデンサ4の間にないためにいくらでも電流が流せる状態となっている結果として生じている。この大電流によって、全波整流回路5は短時間で焼損してしまう。
【0044】
一方、図11は抵抗10として0.53Ωの抵抗を入れた場合であって、全波整流回路5に流入する分流電流11b,12bは6A程度に減少している。また、図12図1又は図5のインダクタ9として111μHのインダクタ9を入れた場合であって、全波整流回路5に流入する分流電流11b,12bは7A程度に減少している。このように比較的小さな素子を全波整流回路5と充放電用コンデンサ4の間に挿入するだけで、分流電流11b,12bを大幅に低減することが可能である。
【0045】
次に、本発明の詳細を実施例に基づいて説明する。なお、この実施例は当業者の理解を容易にするためのものである。すなわち、本発明は明細書の全体に記載される技術思想によってのみ限定されるものであり、本実施例によってのみ限定されるものでないことは理解されるべきことである。
【実施例1】
【0046】
本発明による図15の計算結果に基づいて充電回路部J1、J2の全インダクタンスLが4.3H、全直流抵抗が0.5Ω、充放電用コンデンサ4の容量が100μF、パルスコイル6のインダクタンスが15μHである連発磁気パルス磁気刺激装置を作製した。回路構成は図2又は図5の構成とした。全波整流回路5の出力電圧を350〜600Vの範囲で変化させ、放電素子7のトリガ信号の周期を20〜100ミリ秒の間で変化させて連発磁気パルスを発生させた。「数式2」によれば、この放電回路部Kのコンデンサ4に充電電流が流入する時間は33ミリ秒(30Hz)である。実験によれば10〜30Hzの連発磁気パルスの場合は、各電圧とも、次回の放電開始前に充電電圧は充電可能な最大電圧に達し、40Hz、50Hzの場合は電源電圧の95〜90%まで充電された。
【0047】
次に図1又は図5のインダクタ9のインダクタンスを0.11〜1.150mHの間で変化させて、全波整流回路5に流入する分流電流11b,12bを測定した。この結果を図13に示す。試験したインダクタンスの範囲では分流電流11b、12bは7〜3Aであって、全波整流回路5の破損防止効果を得られた。しかしながら、インダクタンスを1mH以上に増すと、40,50Hz連発パルスの充電速度がさらに遅くなった。従って、インダクタ9のインダクタンスは0.1〜1mHが適切であった。また、図1又は図5の抵抗10の抵抗値を0.15〜1.1Ωの間で変化させて、全波整流回路5に流入する分流電流11b,12bを測定した。この結果を図14に示す。0.15Ωの場合、分流電流11b,12bは18Aであって、全波整流回路5の定格電流を越えたが、パルス幅が短いので全波整流回路5は破損しなかった。0.25〜1.1Ωの範囲では分流電流11b,12bは10〜3Aであって、全波整流回路5の破損防止効果を得られた。しかしながら、抵抗を1Ω以上に増すと、ジュール発熱で抵抗の温度が上がるので、冷却用のファンが必要となった。これらの結果から、抵抗10の抵抗値は0.2〜1Ωが適切であった。
【0048】
従来の磁気刺激用パルス発生装置は、非常に大きく重い電源トランスや高圧用素子を必要としており、小型軽量化することは困難であった。しかし磁気刺激を本願記載の充電電流の低減方法を採用した回路により構成することにより装置を大幅に小型・軽量化することができた。さらに本発明の効果として、電源の発熱が低減できたので、末梢神経の刺激が可能な強度の磁界パルスを3時間以上連続で発生させることが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
脳機能障害により四肢の運動に支障がある場合も、末梢神経と筋肉が正常であれば、連発磁気パルスによる刺激によって少ない疼痛で四肢を大きく動かすことが可能となる。さらに、本発明を用いた装置は小型軽量でかつ、消費電力が少ないので、連発磁気パルスを長時間にわたって発生できる。これらの機能によって、四肢麻痺患者のリハビリ用の装置として広く活用されることが期待される。
【符号の説明】
【0050】
1:昇圧トランス,1a:1次側コイル,1b:2次側コイル,2:交流電源,3:対象部位,4:充放電用コンデンサ,P1・P2:端子,5:全波整流回路,5a:入力端子,5b:出力端子,D1〜D5:全波整流回路のブリッジダイオード,6:パルスコイル,6a:振動部材,7:スイッチング半導体素子,7a:サイリスタ,7b:反転電流用ダイオード,7c:双方向導通素子,8:制御部,9:分流電流抑制用のインダクタ,10:分流電流抑制用の抵抗,11:(順方向の)放電電流,11a:分流電流,11b:抑制された分流電流,12:反転電流,12a:分流電流,12b:抑制された分流電流,J1・J2:充電回路部,K:放電回路部,P:充電パルス。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15