(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
骨折ラインまたは関節によって隔てられた第1骨セグメントと第2骨セグメントを含む骨構造部を定着または固定するためのアセンブリであって、下記のアンカー本体、末端側アンカー、基端側アンカー、および細長いインプラント構造体を備えるアセンブリ。
アンカー本体は、第1骨セグメントおよび第2骨セグメント内に導入できるよう、そのサイズおよび形状が定められていて、第2骨セグメントの内部領域に位置する末端部と、第1骨セグメントの外部領域に位置する基端部と、第1骨セグメントと第2骨セグメントの間の骨折ラインまたは関節を渡って延在する中間領域と、を備える。
末端側アンカーは、第2骨セグメントの内部領域に固定されていて、アンカー本体の上記末端部に連結されることで当該末端部を第2骨セグメント内に係止する。
基端側アンカーは、第1骨セグメントの外部領域に固定されていて、アンカー本体の上記基端部に連結されることで、上記末端側アンカーと協働して、アンカー本体を圧縮状態に置き、第1骨セグメントおよび第2骨セグメントを骨折ラインまたは関節に沿って定着させる。
細長いインプラント構造体は、アンカー本体の上記中間領域に支持されて、第1骨セグメントと第2骨セグメントの間の骨折ラインまたは関節を渡って延在しており、当該インプラント構造体に沿って骨の内部成長または貫通成長を与えるよう処理された外表面領域を含んでいて、アンカー本体によって圧縮状態に保持されて定着されるべき第1骨セグメントおよび第2骨セグメントの定着または固定を促進する。
上記基端側アンカーは、末端側アンカーと協働して、インプラント構造体を圧縮状態に置き、それによって、骨の内部成長または貫通成長を与える領域を第1骨セグメントおよび第2骨セグメント内の骨に密接させる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
明細書中での開示は詳述で正確であるが、これは当業者が本発明を実施できるようにするためである。ここに開示した物理的な具体例は、単なる例示であって、他の具体的な構造をもって具体化されてもよいものである。好ましい具体例を説明しているが、その詳細は、請求項の記載で特定される本発明から逸脱することなく変更可能である。
【0020】
I. 圧縮ステム・アセンブリ
図1、2は、それぞれ組立図および分解図であって、圧縮ステム・アセンブリ10の代表的な形態を示している。このアセンブリ10のサイズおよび形状は、骨の断片の定着のために(すなわち、1つの骨の異なる部分を定着させるために)、あるいは固定されるべき各骨の定着のために(すなわち、隣接する、および(または)関節によって連結された2以上の各骨を定着させるために)、決定されている。
説明を簡便にするため、アセンブリ10を骨定着/固定圧縮アセンブリと呼ぶこともある。これは、当該アセンブリが、2またはそれ以上の各骨を定着させる機能も、また、1つの骨の2以上の部分を固定する機能も、あるいはその両方の機能も、いずれをも行ない得ることを示している。ここに使用されるように、「隣接する骨セグメント(bone segments)」あるいは「隣接する骨領域」とは、次のいずれの状態をも意味している。すなわち、1つの骨の骨折ライン、あるいは、異なる骨領域間の隙間または関節である。
図1において、骨セグメントまたは隣接する骨領域は、図示を目的として、解剖学的詳細を伴わず概略的に示している。後の説明では(例えば、
図13〜16、
図20〜22において)、骨セグメントまたは隣接する骨領域は、骨盤の仙骨と腸骨の間の関を含む特定の解剖学的詳細と一緒に図示している。当該関節は、解剖学的には、仙腸関節(SI関節)と呼ばれる。
【0021】
図1、2に示したように、圧縮ステム・アセンブリ10は、アンカー本体12を含む。アンカー本体12は、(
図1に示したように)隣接する骨セグメントまたは骨領域内に、圧縮状態で配置できるように、そのサイズおよび形状が決められている。図示した具体例では、アンカー本体12は、円筒状のアンカー・ピン、あるいはロッドの形態を為している。しかしながら、アンカー本体12は、他の幾何形状を為していてもよい。
【0022】
アンカー本体12の末端は、末端側アンカー・スクリュー14に係止される。このアンカー・スクリュー14は、上記隙間または関節の一側方において骨の内部領域に連結されている。当該隙間または関節の他の一側方においては、アンカー本体12の基端が、アンカー・ナット16およびアンカー・ワッシャ18を用いて、骨の外部領域に固定される。
末端側アンカー・スクリュー14とアンカー・ナット16によって、アンカー本体12は圧縮状で保持される。そして、そのようにされている限りは、アンカー本体12は、隣接する骨セグメントあるいは骨領域を圧縮し、定着させる。
【0023】
骨領域あるいはセグメントの内部において、アンカー本体12は、細長いステムのような、カニューレ状インプラント構造体20を保持する。インプラント構造体20は内腔部22を有していて、アンカー本体12上をスライドさせて配置することができる。
図2に示すように、インプラント構造体20は、少なくともその長さの一部に渡って形成された領域24を含んでいる。この領域24は、当該構造体の表面上へ、または表面内部へと骨が成長することを促進する。あるいは、当該構造体の一部または全体に渡って骨が成長することを促進する。
インプラント構造体20の表面に沿って形成された、骨を内部成長(in-growth)または貫通成長(through-growth)させるための領域24は、インプラント構造体20の表面上に、またはその内部へ、あるいはこれを貫通して、骨が内部成長(in-growth)または貫通成長(through-growth)することを促進する。
インプラント構造体20の表面上に、またはその内部へ、あるいはこれを貫通して、骨が内部成長(in-growth)または貫通成長(through-growth)することは、アンカー本体12で圧縮保持されている骨セグメントあるいは骨領域の固定プロセスまたは骨折治癒時間を速めることを助ける。
【0024】
A. アンカー本体、ナット、およびワッシャ
アンカー本体12、ナット16およびワッシャ18は、人工補綴の分野において使用可能な材料から、例えば、機械加工、型成形、押出しによって作ることができる。使用可能な材料は、圧縮力が作用した状態で埋め込むことが可能であって、周囲の骨または組織に長時間さらされても、重大な生物学的吸収(bio-absorption)あるいは再吸収(resorption)が生じることのない材料である。アンカー本体12、ナット16、およびワッシャ18は、骨折した部位あるいは固定すべき部位を安定させるのに十分な一定時間の間、所定位置に留まることが意図されている。
そのような材料としては、それらに限定されるものではないが、チタン、チタン合金、タンタル、クロム・コバルト、医療用鋼材(surgical steel)、あるいは他の総合関節置換金属(total joint replacement metal)、および(または)セラミック、焼結ガラス、人工骨、何らかの非接合金属(uncemented metal)、またはセラミック表面、あるいはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0025】
長さに関しては(
図1を参照)、アンカー本体12は、隣接する一方の骨セグメントあるいは領域から、その間の隙間または関節を超えて、隣接する他方の骨セグメントあるいは領域内に少なくとも部分的に入り込み得る長さにサイズ決めされている。アンカー本体12の長さおよび直径は、解剖部位に従ってサイズ決めされる。
局所構造の形態論は、医療専門家であれば、人間解剖学のテキストブックを使用し、かつその部位における疾患または外傷に関する知識に基づいて、一般的に理解できる。医師は、目的とする骨領域の形態論に関して以前に示された分析に基づき、例えば、単純なフィルムX線、透視検査用X線、MRI、あるいはCTスキャンを使用して、アンカー本体12の寸法を確認することができる。アンカー本体12用の代表的な直径は、3.2mm〜3.5mmである。
【0026】
図2に最も良く示されているように、アンカー本体12の少なくとも基端領域および末端領域は、その筒状本体の回り形成された外部螺旋形畝あるいはスクリュー・ネジ26、28を含んでいる。望まれる場合には代わりの構成として、アンカー本体12の全長に沿ってネジを切ってもよい。望ましくは、スクリュー・ネジ26、28は、アンカー本体12の基端および末端において同方向に形成される。例えば、右方向ネジが望ましい。
【0027】
ネジ26が形成されたアンカー本体12の基端部は、使用時に、隣接する1つの骨セグメントまたは領域の外側に一定距離だけ延在するよう、その寸法が決められる。このようにして、基端側領域は、使用時にアンカー・ナット16およびワッシャ18を取り付けることができるよう外部に露出する。アンカー・ナット16は相補的な内ネジを含んでいて、この内ネジは、アンカー本体12の基端側外面に形成された外ネジ26と係合するように、そのサイズおよび形状が決められている。
3.2mmのアンカー本体12に対しては、アンカー・ナット16およびアンカー・ワッシャ18の代表的な直径は、それぞれ、3.2mmおよび8mmである。
【0028】
ネジ28が形成されたアンカー本体12の末端部は、隣接する他方の骨セグメントあるいは領域内へと少なくとも部分的に入り込み得るように、そのサイズが決められている。そこでアンカー本体12の末端部は、アンカー・スクリュー14に連結されることとなるが、これについて次に説明する。
【0029】
B. アンカー・スクリュー
アンカー本体12、ナット16、およびワッシャ18と同様に、アンカー・スクリュー14は、人工補綴の分野において使用可能な耐久性材料から、例えば、機械加工、型成形によって作ることができる。使用可能な材料は、骨内にネジ込むことが可能であって、周囲の骨または組織に長時間さらされても、重大な生物学的吸収(bio-absorption)あるいは再吸収(resorption)が生じることのない材料である。
アンカー・スクリュー14は、圧縮アセンブリ10の他の構成要素と同様に、骨折した部位あるいは固定すべき部位を安定させるのに十分な一定時間の間、所定位置に留まることが意図されている。そのような材料としては、それらに限定されるものではないが、チタン、チタン合金、タンタル、クロム・コバルト、医療用鋼材(surgical steel)、あるいは他の総合関節置換金属(total joint replacement metal)、および(または)セラミック、あるいはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0030】
アンカー・スクリュー14は、隣接する他方の骨セグメントあるいは領域内において、アンカー本体12のネジ切りされた末端領域28の終端と係合し得る距離だけ延在するよう、そのサイズが決められている。
図2に最も良く示されているように、アンカー・スクリュー14は、その筒状本体の回りに形成された外部螺旋形畝あるいはスクリュー・ネジ30を含んでいる。
外ネジ30は、骨内で回転した時にある目的を達成するために、そのサイズおよび形状が決められている。すなわち、アンカー・スクリュー14が、骨内にネジ込まれることによって前進配置される。骨内に配置されたアンカー・スクリュー14は、軸方向への移動および分離に対して抵抗する。アンカー・スクリュー14の代表的な長さ範囲は5mm〜20mmであるが、これも局所的解剖学見地からの要求によって変更され得る。アンカー・スクリュー14の代表的な直径は約7mmである。
【0031】
アンカー・スクリュー14はさらに、その内腔に形成された内部螺旋形畝あるいはスクリュー・ネジ32を含んでいる。内側のスクリュー・ネジ32は、アンカー本体12の末端側に形成された相補的な外部スクリュー・ネジ28と係合するよう、そのサイズおよび形状が決められている。
アンカー・スクリュー14の内側スクリュー・ネジ32と係合したとき、アンカー・スクリュー14は、アンカー本体12の末端領域を骨に係止して、アンカー本体12が軸方向に移動するのを阻む。前に説明したように、アンカー・スクリュー14(末端領域上)、およびアンカー・ナット16とアンカー・ワッシャ18(基端領域上)が、アンカー本体12を圧縮状態で保持し、それによって、隣接する骨セグメントあるいは骨領域を圧縮・定着させる。
【0032】
別例として、アンカー・スクリュー14に代えて、内部にネジが切られた構成要素(外側にネジが無くてもよい)が、最も末端側の骨セグメントに形成した内腔の中にしっかりと固定できるように(例えば、締まり嵌めや、接着剤を利用する)、そのサイズおよび形状が決められてもよい。最も末端側の骨セグメントとは、上記内腔が終結している骨セグメントである。
アンカー・スクリュー14と同様に、締まり嵌めおよび(または)接着剤は、インプラント構造体の全体を係止する。アンカー・スクリュー14と組み合わせて接着剤を使用することも可能である。
【0033】
C. インプラント構造体
インプラント構造体20は、人工補綴の分野において使用可能な材料から、例えば、機械加工、型成形、押出しによって作ることができる。使用可能な材料は、周囲の骨または組織に長時間さらされても、重大な生物学的吸収(bio-absorption)あるいは再吸収(resorption)が生じることのない材料である。インプラント構造体20は、圧縮アセンブリ10の他の構成要素と同様に、骨折した部位あるいは固定すべき部位を安定させるのに十分な一定時間の間、所定位置に留まることが意図されている。
そのような材料としては、それらに限定されるものではないが、チタン、チタン合金、タンタル、チバニウム(アルミニウム、バナジウムおよびチタン)、クロム・コバルト、医療用鋼材(surgical steel)、あるいは他の総合関節置換金属(total joint replacement metal)、および(または)セラミック、焼結ガラス、人工骨、何らかの非接合金属(uncemented metal)、またはセラミック表面、あるいはそれらの組み合わせを挙げることができる。
別例として、インプラント構造体20は、適切な耐久性を有する生物学材料、または金属と生物学材料の組合せから形成されてもよい。例えば、生体適合性の骨充填材料である。インプラント構造体20は、例えばアクリル性の骨セメント等、流動性のある生物学的材料から型成形されてもよい。当該アクリル性の骨セメント等は、例えばUVライトによって硬化されて、流動性の無い固体材料となる。
【0034】
インプラント構造体20は、解剖部位に従ってサイズ決めされる。局所構造の形態論は、医療専門家であれば、人間解剖学のテキストブックを使用し、かつその部位における疾患または外傷に関する知識に基づいて、一般的に理解できる。医師は、目的とする骨領域の形態論に関して以前に示された分析に基づき、例えば、単純なフィルムX線、透視検査用X線、MRI、あるいはCTスキャンを使用して、インプラント構造体20の寸法を確認することができる。
【0035】
図3〜7に示すように、インプラント構造体20は、様々な外形および断面形状を有することができる。インプラント構造体20は、例えば、大略曲線(丸、楕円形)の断面を有していてもよいし(
図3参照)、または全体的に直線で構成された断面(正方形、長方形、三角形)を有していてもよい(
図4参照)し、あるいはそれらの組合せからなる断面を有していてもよい。
図2では、インプラント構造体20を断面三角形に描いているが、このような形状であれは、埋め込まれると、回転および微少変位を有効に防ぐことができる。
【0036】
図5、6に示すように、インプラント構造体20は、曲線状(
図5)か直線状(
図6)である場合、その軸方向に沿う少なくとも一部分にテーパ領域34を含んでいてもよい。これは、インプラント構造体20の幅または直径が、軸方向に沿って徐々に増加するということを意味している。
望ましくは、テーパ領域34は、使用に際して、インプラント構造体20の基端領域(すなわち、インプラント構造体20の骨内に進入する最終部分)に対応する。幅または直径の増加割合は変更可能である。例えば、7mmの通常直径のインプラント構造体20の場合は、最大増加割合は、約0.25mmから1.25mmまでとすることができる。テーパ領域34が存在することで、隣接する骨セグメントまたは領域における圧縮力の生成および維持をさらに確実なものとなる。
【0037】
隣接する骨セグメントまたは領域における圧縮力の生成および維持をさらに確実なものとするため(
図7参照)、インプラント構造体20は、曲線状、直線状、あるいはテーパ状のいずれの形態である場合にも、(歯、ウイング、その他の形態の)突出する骨グリップ面36を含むことができる。
歯またはウイング36は、インプラント構造体20の表面から例えば2〜4mm突出することができ、インプラント構造体20の基端および末端において圧縮力の方向に面を向ける。これにより、圧縮アセンブリによって圧縮されたときに、骨セグメント中に進入し易くなる。
【0038】
図1、2で示したように、骨を内部成長(in-growth)または貫通成長(through-growth)させる領域24は、インプラント構造体20の全外表面に渡って延在している。あるいは、当該領域24は、隣接する骨セグメントの両側(または骨折ライン)において一定の距離部分だけをカバーしていてもよい。
骨を内部成長(in-growth)または貫通成長(through-growth)させる領域24は、例えば、貫通孔、および(または)多様な表面パターン、および(または)多様な表面性状、および(または)細孔、またはそれらの組合せを含んでいてもよい。当該領域24の形状は、変更することが勿論可能である。例示すると、当該領域24は、オープンメッシュ構造、ビード形状、小柱形状を含んでいてもよく、または、孔あるいは窓(fenestration)を含んでいてもよい。
骨を内部成長(in-growth)または貫通成長(through-growth)させるものであれば、どのような構造であって十分である。
【0039】
骨を内部成長(in-growth)または貫通成長(through-growth)させる領域24は、コーティング、ラッピング、または表面処理を施されることで、骨を内部成長または貫通成長させる。あるいは、当該領域24は、それ自体が本質的に骨の内部成長または貫通成長を促進する構造を有する材料から形成してもよい。例えば、多孔性メッシュ、ヒドロキシアパタイト、または他の多孔性表面である。領域24は、当該領域を貫通して骨が成長するための孔を含んでいてもよい。
【0040】
好ましい具体例においては、骨を内部成長(in-growth)または貫通成長(through-growth)させる領域24は、インプラント構造体20上に、多孔性プラズマ・スプレー・コーティングを有する。これによって生体力学的に厳格な定着/固定システムが形成されるが、これは、信頼性の高い定着/固定、および大荷重耐性キャパシティーをサポートするよう設計されたものである。
【0041】
骨を内部成長(in-growth)または貫通成長(through-growth)させる領域24は、他の多様なコーティングで覆われていてもよい。例えば、抗菌剤、抗血栓剤、骨形成誘発剤(osteoinductive agent)、あるいはそれらの組合せである。望まれる場合には、それらを用いてインプラント構造体20の全体をコーティングしてもよい。
【0042】
D. 圧縮ステム・アセンブリのインプランテーション
図8A〜8Lは、圧縮ステム・アセンブリ10をインプラントするための代表的な行程を、図解を目的として概略的に示している。より詳述には、圧縮ステム・アセンブリ10のSI関節への特定のインプラント技術について、解剖学的に重きを置いた説明を後述する。
【0043】
医師は、定着あるいは固定すべき(関節固定)隣接する骨セグメントあるいは骨領域を特定する(
図8A)。
従来の可視化技術の助けを借りて、すなわち例えば、TVスクリーンに表示されるライブ映像を作り出す(Cアームまたはフルオロスコープ等の)X線画像インテンシファイヤを使用して、ガイド・ピン38が従来の手段によって導入される(
図8B)。ガイド・ピン38は、隣接する1つの骨セグメントあるいは領域を貫通し、中間の隙間または関節を通過し、隣接する他方の骨セグメントあるいは領域内へと部分的に進入する。
【0044】
筒状のドリル・ビット40をガイド・ピン38上に通し(
図8C)、案内挿入経路または内腔部42を形成する。この内腔部42は、隣接する1つの骨セグメントあるいは領域を貫通し、中間の隙間または関節を通過し、隣接する他方の骨セグメントあるいは領域内へと部分的に進入する。
単一のドリル・ビットまたは複数のドリル・ビット40を使用して、骨の断片または表面を貫通するようドリル加工し、所望のサイズおよび形状の案内内腔部42を形成する。案内内腔部42から末端側にある骨の部位は、ドリル加工せずにそのまま残され、そこにアンカー・スクリュー14が装着される。案内内腔部42が完成すれば、筒状のドリル・ビット40を取り外す。
【0045】
インプラント構造体20の外形および寸法に適合する外形および寸法を有するブローチ44(図示した実施形態では三角形)を、ガイド・ピン38上でタップして、案内内腔部42に通す(
図8D)。
当該形状のブローチ44が案内内腔部42のエッジに沿ってカッティングを行い、所望のプロファイルを作り出す(図示した実施形態では三角形)。当該プロファイルによって、インプラント構造体20は、隣接する1つの骨セグメントあるいは領域を貫通し、中間の隙間または関節を通過し、隣接する他方の骨セグメントあるいは領域内へと部分的に進入して、保持される。
【0046】
ブローチ44を引き抜く(
図8E)。そして、アンカー・スクリュー14(その内部スクリュー・ネジ32は、筒状ネジ・スクリュー・ドライバー46の末端部に係合している)を、ガイド・ピン38上に通し、さらに末端側の骨セグメント内のブローチ加工された内腔48の終端部にまで通す。アンカー・スクリュー14は、ブローチ加工された内腔48の終点を超えて、ドリル加工されずそのまま残された骨内に、スクリュー・ドライバー46を操作することによって、ネジ込まれる(
図8F)。
例えば、アンカー・スクリュー14は、ブローチ加工された内腔48の終点を少なくとも5mm超えて、骨内に前進し、埋め込まれる。
【0047】
ネジ・スクリュー・ドライバー46は、逆回転させることによって、アンカー・スクリュー14から外される。そして、ガイド・ピン38が外される(
図8G)。アンカー本体12が挿入され、そのネジ切りされた末端部28が、アンカー・スクリュー14の内側スクリュー・ネジ32とネジ係合する(
図8H)。
【0048】
図8Hに示したように、その推奨されるサイズおよび形状により、ネジ切りされた末端部28がアンカー・スクリュー14と適切にネジ係合するとき、アンカー本体12のネジ切りされた基端部26は、ブローチ加工された内腔48の基端部外側に一定距離だけ突出する。
【0049】
インプラント構造体20は、インプラント構造体20の末端側がアンカー・スクリュー14の基端側に当接するまでアンカー本体12上をスライドさせることで、当該アンカー本体12上に通される(
図8I)。
【0050】
アンカー・ワッシャ18は、突出しているアンカー本体12のネジ切りされた基端部26上をスライドさせて通され、骨の外表面に当接する(
図8J)。アンカー本体12のネジ切りされた基端部26に、アンカー・ナット16をネジ係合させる(
図8K)。所望の圧縮力がアセンブリ10によって骨領域に負荷されるまで、手動(または電動)チャック50を使用して、アンカー・ナット16をアンカー・ワッシャ18に対して締め付ける(
図8L)。
圧縮により、隣接する骨セグメント間の距離が短くなり、同時に、インプラント構造体20は、ブローチ加工された内腔48内に圧縮状態で配置される。これにより、骨を内部成長させる領域24と、ブローチ加工された内腔内部の骨とが、密接に接触することが確実となる。
【0051】
骨を内部成長または貫通成長させる領域24において、インプラント構造体20の表面に沿って圧縮により作り出される密接な接触は、インプラント構造体20上への、同構造体内への、または同構造体内を貫通しての、内部成長または貫通成長を促進させ、したがって、固定行程または骨折治癒時間が短くなる。
【0052】
後により詳しく説明するように、ある1つの骨セグメントに対して、2以上の圧縮ステム・アセンブリ10をインプラントすることが可能である。例えば、後述するように(例えば、
図20)、1つのSI関節を固定するために、そのような圧縮ステム・アセンブリを3つインプラントすることが可能である。
【0053】
E.他の実施形態
(1) 末端側のアンカープレート
圧縮ステム・アセンブリ10の別例を
図31〜
図33に示している。使用において、圧縮ステム・アセンブリ10は、既に説明したように、骨の定着または関節固定を目的として、隙間または関節によって隔てられた隣接する骨セグメントまたは領域内にインプラントできるように、そのサイズおよび形状が決められている。
【0054】
この実施形態(
図31)では、アンカー本体12、ナット16、およびワッシャ18は、既に説明したのと同じようにして、そのサイズおよび形状が決められる。同様に、インプラント構造体20は、全体的に直線で構成される断面形状を有するように、そのサイズおよび形状が決められている。これも、
図4を参照して既に説明した通りである。
【0055】
この実施形態では、ネジが切られたアンカー・スクリュー14に代えて、全体的に直線で構成されたアンカープレート58によって、アセンブリ10の末端部が骨内に係止される。アンカープレート58は、人工補綴の分野において使用可能な硬質で耐久性のある材料から、例えば機械加工または型成形によって作ることができる。使用可能な材料は、骨の内部に切り込んで進入可能であって、周囲の骨または組織に長時間さらされても、重大な生物学的吸収(bio-absorption)あるいは再吸収(resorption)が生じることのない材料である。
【0056】
図31、32に最も良く示しているように、直線から構成されるアンカープレート58は、インプラント構造体自体の直線状の断面形状に適合するように、そのサイズおよび形状が決められている。
図示した構成においては、インプラント構造体20は、ほぼ三角形の断面形状を有しており、アンカープレート58もまたそのような形態を為している。そのため、アンカープレート58は、3つの頂点64を含んでいる。アンカープレート58の各頂点間の辺は、鋭く加工されていて、骨カッティングエッジ72を構成している。
【0057】
アンカープレート58は、その幾何学的中心位置に腔60を含んでいる(
図31)。内部螺旋状畝あるいはネジ62が、腔60の内面に形成されている。この内部スクリュー・ネジ62は、アンカー本体12の末端領域に形成された相補的な外部スクリュー・ネジ28と適合するように、そのサイズおよび形状が決められている。
これによって、アンカー本体12の末端領域は、アンカープレート58とネジ係合できる(
図32)。アンカー本体12にネジ係合されると、アンカープレート58は、アンカー本体12と共に回転する(
図33)。
【0058】
既に説明した方法によって(
図8A〜
図8D)ブローチ加工された内腔48内にインプラント構造体20を導入するに先立って、アンカー本体12は、インプラント構造体20の内腔22内に通され、そして、アンカー本体12の末端側のネジ切りされた部分28に、アンカープレート58がネジ係合される。ネジ切りされた部分28は、インプラント構造体20の末端部を越えて突出するように、そのサイズが決められている。
さらに、
図32に示すように、アンカープレート58は、インプラント構造体20の末端部と整合するように回転方向の位置も決められている。この整合した位置においては(
図32)、アンカープレート58の3つの頂点64は、インプラント構造体20の末端部の3つの頂点66と重なって、一致する。インプラント構造体20、アンカー本体12、およびアンカープレート58は、1つのユニットとして、ブローチ加工された内腔48内に、
図32に示した姿勢で導入される。整合した位置では、アンカープレート58は、ブローチ加工された内腔48内にインプラント構造体20を通すことを妨げることはない。
【0059】
ブローチ加工された内腔の終点に接触すると、アンカー本体58の基端部を60°回転させる(
図33)。この回転によって、アンカープレート58は、張り出た骨グリップ位置へと移動する。この位置では、アンカープレート58はもはや、インプラント構造体20の末端部とは整合していない(
図33)。
この張り出た骨グリップ位置において、三角形のアンカープレート58の頂点64は、インプラント構造体20の三角形の辺68から半径方向外側に張り出している。アンカープレート58は、インプラント構造体20の末端部において、拡張された横方向面積を与える。この面積は、インプラント構造体自体の断面積よりも大きい。
【0060】
アンカープレート58を骨グリップ位置へと回転させている間、アンカープレート58のカッティングエッジ72は、骨内部へと前進し、骨を切断する。これにより、アンカープレート58は、骨セグメントあるいは領域において、骨内部に据え付けられる(
図34)。骨グリップ位置にあるアンカープレート58は、アンカー本体12の末端部を骨内に係止する。アンカープレート58は、アンカー・スクリュー14とほとんど同じ方法で、軸方向の移動および分離を防止する。
【0061】
インプラント構造体20の辺68は、当該構造体20の末端部において、切欠き70を含んでいることが好ましい(
図31、32)。アンカープレート58がその骨グリップ位置にまで回転したとき、アンカープレート58の本体が頂点間の戻り止めに隣接して、切欠き70内に位置することとなるように(
図33)、切欠き70は、そのサイズおよび形状が決められている。
切欠き70内に位置したとき、アンカー本体12の基端部において、既に説明したようにしてアンカー・ナット16およびワッシャ18でさらに締め付けると、アンカープレート58は、骨をグリップする係止位置にロックされる。アンカー・ナットを締め付けることによって、インプラント構造体20は、末端側のアンカープレート58と基端側のナット/ワッシャの間で圧縮され(
図34)、それにより、圧縮ステム・アセンブリ10を構成する。
【0062】
(2) 2ピースで構成される圧縮インプラント構造体
圧縮インプラント構造体の他の実施形態を
図35A、35Bに示した。既に説明したように、使用に際して、インプラント構造体は、隙間または関節によって分離されている隣接する骨セグメントの内部に植設され、骨定着または関節固定を行うことを目的として、そのサイズおよび形状が決められる。
【0063】
この実施形態(
図35A)では、既に説明したのと同様に、インプラント構造体は、円または曲線で構成される断面形状を有することができる。既に説明したインプラント構造体とは異なり、
図35Aに示したインプラント構造体20は、一緒に使用する2つのインプラント構成要素74、78からなる。
【0064】
既に説明したのと同様に、インプラント構成要素74、78のそれぞれは、人工補綴の分野において使用可能な耐久性のある材料から、例えば、機械加工、型成形、押出しによって作ることができる。使用可能な材料は、周囲の骨または組織に長時間さらされても、重大な生物学的吸収(bio-absorption)あるいは再吸収(resorption)が生じることのない材料である。
インプラント構成要素74、78のそれぞれは、既に説明したのと同様に、骨を内部成長または貫通成長させる領域を外面に備えている。
【0065】
インプラント構造体を導入するに先立って、隣接する骨セグメントを貫通するように、ブローチ加工された内腔が、既に説明したのと同じやり方(
図8A〜
図8D)で形成される。インプラント構成要素74は、最も末端側の骨セグメントにブローチ加工された内腔の終端部にしっかりと固定できるように、そのサイズおよび形状が決められている。この固定は、例えば締まり嵌め、および(または)接着剤を使用して行われる。インプラント構成要素74によって、インプラント構造体の全体が係止される。
【0066】
インプラント構成要素74は、さらにポスト76を含んでいる。このポストは、ブローチ加工された内腔を通って、ブローチ加工された内腔が始まる最も基端側の骨セグメント内にまで延在している。ポスト76は内ネジ80を含んでいる。
【0067】
第2のインプラント構成要素78は、最も基端側の骨セグメントにブローチ加工された内腔内に導入され得るよう、そのサイズおよび形状が決められている。第2のインプラント構成要素78は内腔を含んでいて、その結果
図35Bに示したように、当該インプラント構成要素78は、第1のインプラント構成要素74のポスト76上にスライドさせるようにして装着することができる。
【0068】
アンカー・スクリュー16(ワッシャ18と共に使用することが望ましい)は、外部スクリュー・ネジを含んでいる。この外部スクリュー・ネジは、ポスト76内に形成された相補的な内部スクリュー・ネジ80と係合し得るように、そのサイズおよび形状が決められている。アンカー・スクリュー16を締めると、第1および第2のインプラント構成要素74、78が互いに引き寄せられて、その結果、インプラント構造体が圧縮状態となる(
図35B)。
【0069】
(3) 半径方向圧縮
(スプリット・インプラント構造体)
他の実施形態であるインプラント構造体82を
図36A、36Bに示した。既に説明したように、使用に際して、インプラント構造体82は、隙間または関節によって分離されている隣接する骨セグメントの内部に植設され、骨定着または関節固定を行うことを目的として、そのサイズおよび形状が決められる。
インプラント構造体82は、半径方向圧縮を行うべく配置されるよう、そのサイズおよび形状が決められている。
【0070】
既に説明したのと同様に、インプラント構造体82は、円または曲線で構成される断面形状を有する本体を含むことができる。既に説明したのと同様に、インプラント構造体82は、人工補綴の分野において使用可能な材料から、例えば、機械加工、型成形、押出しによって作ることができる。使用可能な材料は、周囲の骨または組織に長時間さらされても、重大な生物学的吸収(bio-absorption)あるいは再吸収(resorption)が生じることのない材料である。
インプラント構造体82は、既に説明したのと同様に、骨を内部成長または貫通成長させる領域を外面に1または2以上備えている。
【0071】
既に説明したインプラント構造体とは異なり、インプラント構造体82の基端部は、スプリット84を有する弱められた軸方向領域を含んでいる。セルフタッピング−スクリュー16がさらに含まれている。スクリュー16は、ネジが切られたテーパ状の本体を含んでいる。テーパ状本体は、スクリューヘッドに向かうにつれて直径が増加する楔型の形態を為している。
スクリュー16は、セルフタッピングタイプのものであって、スプリット84内にネジ込まれるとき、自身のためのネジ部を作り出しながら徐々に前進し得るように、そのサイズおよび形状が決められている(
図36B)。
【0072】
インプラント構造体84を導入するに先立って、隣接する骨セグメントを貫通するように、ブローチ加工された内腔が、既に説明したのと同じやり方(
図8A〜
図8D)で形成される。
図36Aに示したように、インプラント構造体84は、ブローチ加工された内腔内に導入される。
インプラント構成要素84は、最も末端側の骨セグメントにブローチ加工された内腔の終端部にしっかりと固定できるように、そのサイズおよび形状が決められている。この固定は、例えば締まり嵌め、および(または)接着剤を使用して行われる。締まり嵌め、および(または)接着剤によって、インプラント構造体84の全体が係止される。
【0073】
ブローチ加工された内腔内にインプラント構造体84が導入された後、タッピンネジ16(ワッシャ18と共に使用することが望ましい)は、回転させられることによってスプリット84内へと徐々に前進する。
図36Bに示したように、スクリュー16のネジ切りされた本体の楔形状によって、インプラント構造体84の本体は、スプリット84に沿って半径方向外側へと拡げられる。
スプリット84の回りでインプラント構造体82の本体の直径が拡がることにより、インプラント構造体82の基端部が隣接する骨に押し付けられる。スプリット84の回りでインプラント構造体82の本体が半径方向に拡張することで、インプラント構造体82の基端部が骨に押し付けられる。
このような半径方向への押し付けにより、ブローチ加工された内腔内において、骨の内部成長領域と骨とが確実に圧接し、同時に、骨セグメント内でのインプラント構造体82の回転および軸方向移動が防止される。
【0074】
F. 圧縮を利用しないインプラント構造体
ここで説明した圧縮ステム・アセンブリ10を利用することなく、あるいは、インプラント構造体の圧縮を達成するための他の手段を利用することなく、骨折部位の定着させるために(つまり、同じ骨の異なる部分の定着)、または固定すべき骨を本体全体に渡って定着させるために(関節固定)、
図2に示したような骨を内部成長および(または)貫通成長させる領域を有する細長いステム状のインプラント構造体20のサイズおよび形状が決められてもよい。
ここで説明ような圧縮ステム・アセンブリ10を利用することなく、骨折部位を定着させるために(つまり、同じ骨の異なる部分の定着)、または固定すべき骨を本体全体に渡って定着させるための、骨を内部成長および(または)貫通成長させる領域24を有する細長いステム状のインプラント構造体20が、例えば、2005年5月24日に出願された米国特許出願第11/136,141号において説明されている。当該内容は、言及することにより、本件明細書中に取り込まれる。
【0075】
II. インプラント構造体を使用した仙腸関節の関節固定
図2(および他の別形態)に示したような細長いステム状のインプラント構造体20により、最小侵襲的な方法で、圧縮ステム・アセンブリ10を利用して、あるいはそれを利用することなく、SI関節(
図9、10において、前方斜視図および後方斜視図を示している)の固定が可能となる。
これらのインプラント構造体20は、選択的に使用可能な2つの外科アプローチを使用して有効に植設することが可能である。すなわち、(i)横方向からのアプローチ、または(ii)後横方向からのアプローチである。いずれの手続においても従来の、横方向からの、および(または)後横方向からの可視化技術による支援を伴うことが望ましい。例えば、TVスクリーンに表示されるライブ映像を作り出す(Cアームまたはフルオロスコープ等の)X線画像インテンシファイヤによる支援である。
【0076】
A. 横方向からのアプローチ
(1) 圧縮ステム・アセンブリを使用しない場合
横方向からのアプローチの一実施形態においては(
図11、12、13A/B)、1または2以上のインプラント構造体20が、腸骨からSI関節、そして仙骨S1内へと横方向に貫通するように導入される(その際、圧縮ステム・アセンブリ10は使用しない)。この経路およびインプラント構造体20の最終的な配置は、
図12および
図13A/Bに最も良く示されている。
図示した実施形態では、このような方法で3つのインプラント構造体20が配置されている。さらに、図示した実施形態では、インプラント構造体20は断面形状が三角形であるが、既に説明したような他の断面形状を有するインプラント構造体20を使用してもよい。
【0077】
横方向からのインプラント手続を試みる前に、医師は、定着または固定すべきSI関節セグメントを特定する(関節固定)。これには例えば、ファーバーテスト(Faber Test)、CTガイデド・インジェクション(CT-guided injection)、またはSI関節のX線/MRIを使用する。
【0078】
横方向および前後方向(A-P)のCアームに支援されて、かつ、患者を(腹を下にして)うつ伏せにさせて、医師は、(横方向からの視覚化を使用して)大坐骨切痕(greater sciatic notch)の位置合わせをして、真の横位置を実現する。仙骨管の後方皮質と整合する位置からスタートし、それに続いて血液組織分離を行い、腸骨まで至る3cmの切り口を形成する。
横方向から見ると、腸骨上に配置されたガイド・ピン38(スリーブ付き)(例えば、シュタインマンピン)は、仙骨S1端部プレートより下方から始まって、仙骨管のちょうど前方位置にまで延在している。前後および横方向から見ると、ガイド・ピン38は、前方へ浅い角度で(
図13Aに示すように、例えば、水平方向から15°〜20°)、S1端部プレートと平行となるべきである。
横方向から見ると、ガイド・ピン38は、仙骨前壁の後方に位置すべきである。前後方向に見ると、ガイド・ピン38は、下方のS1小孔よりも上方に位置するとともに、中央ラインの横方向に位置すべきである。このことは、
図8A、
図8Bに示したシーケンスにほぼ相当している。ガイド・ピン38を取り外す前に、軟組織プロテクタ(図示せず)をガイド・ピン38上にスライドさせて、腸骨に対してしっかりと押し付けることが望ましい。
【0079】
ガイド・ピン38上を(かつ軟組織プロテクタを通して)、案内内腔42が、既に説明したようなやり方で、ドリル形成される(
図8Cに概略的に示している)。案内内腔42は、腸骨を貫通して、SI関節を貫通して、そしてS1内へと延在する。ドリル刃先40が除去される。
【0080】
ある形状のブローチ44が、ガイド・ピン38上を(かつ軟組織プロテクタを通して)案内内腔42内にネジ込まれて、ブローチ加工された内腔48を形成する。この内腔48は、インプラント構造体20に適したプロファイルを有する。プロファイルは、図示した形態においては三角形である。これは、
図8Dに示したシーケンスにほぼ相当している。ブローチ加工された内腔48の三角形のプロファイルは
図11に示している。
【0081】
図11、12に示したように(この実施形態では、圧縮スリーブ・アセンブリを使用せずに)、三角形のインプラント構造体20は、ガイド・ピン38上の軟組織プロテクタを通して、腸骨を通過して、SI関節を横切り、そしてS1へとたたき込むことができる。そして、インプラント構造体20の基端が腸骨の横壁に対して面一となる(
図13A、13Bも参照)。
インプラント構造体20を腸骨の横壁と面一の状態(
図13A、13B参照)でブローチ加工した経路内に残したまま、ガイド・ピン38および軟組織プロテクタを引き抜く。図示した実施形態では、さらに2つのインプラント構造体20がこのやり方で植設される(
図12に最も良く示されている)。
【0082】
インプラント構造体20は、局所的解剖学に従ってそのサイズが決められる。SI関節に対しては、代表的なインプラント構造体20のサイズは、局所的解剖学によって、長さが約35mm〜約55mm、直径が約7mmである。
局所構造の形態論は、医療専門家であれば、人間解剖学のテキストブックを使用し、かつその部位における疾患または外傷に関する知識に基づいて、一般的に理解できる。医師は、目的とする骨領域の形態論に関して以前に示された分析に基づき、例えば、単純なフィルムX線、透視検査用X線、MRI、あるいはCTスキャンを使用して、インプラント構造体20の寸法を確認することができる。
【0083】
(2) 圧縮ステム・アセンブリを使用する場合
図14〜16A/Bに示したように、横方向からのアプローチにおいては、既に説明したような圧縮ステム・アセンブリ10を使用して、1または2以上のインプラント構造体20を、腸骨、SI関節、そして仙骨S1へと、横方向に貫通させて導入することもできる。その経路および最終的なインプラント構造体の配置は、
図16A、16Bに最も良く示されている。
図11〜13A/Bに示した実施形態と同じようにして、3つのインプラント構造体が配置される。さらに、
図11〜13A/Bに示した実施形態と同じようにインプラント構造体の断面形状は三角形であるが、既に説明したように、他の断面形状のものを使用してもよい。
横方向からアプローチするこの実施形態では、ブローチ加工された内腔48が形成された後直ちにインプラント構造体20が挿入されるのではない。そうではなく、圧縮ステム・アセンブリ10の構成要素が最初に内腔48内に設置されて、そこに、インプラント構造体20を受け入れる。
【0084】
より詳しくは、ブローチ加工された内腔48を既に説明したように形成した後、軟組織プロテクタを所定位置に残したまま、ガイド・ピン38を外す。圧縮ステム・アセンブリ10のアンカー・スクリュー14は、仙骨S1内でブローチ加工された内腔48の終端を超えた位置に、
図8G〜8Eに概略的に示した方法で配置される。
この構成では、圧縮ステム・アセンブリ10のアンカー・スクリュー14を配置するために、案内内腔42およびブローチ加工された内腔48の終点を越えた領域において、仙骨S1内の一定量の骨が、ドリル加工されずにそのまま残される。アンカー・スクリュー14は、仙骨S1内の当該ドリル加工されずに残された領域内へと前進して、
図16A、16Bに示したように埋められる。そして、アンカー本体12のネジ切りされた末端部28と連結される。
【0085】
既に説明し
図8Hに示したように、アンカー本体12のネジ切りされた末端部28は、仙骨S1内のアンカー・スクリュー14とネジ係合する。このとき、アンカー本体12の他の部分は、基端側へ向かってSI関節および腸骨を貫通し、
図16A、16Bに示すように、腸骨の横壁から一定距離だけ外側に突出する。
この後、既に説明し
図8Iに示したように、インプラント構造体20は、アンカー本体12上をスライドさせて腸骨の横壁と面一の状態に設置される。そして、既に説明し
図8J〜8Lに示したように、アンカー・ワッシャ18およびナットをアンカー本体12の基端部に取り付けて、締め付ける。これにより、アセンブリ10が圧縮状態となる。最終的な組立状態を、
図15および16A/Bに示している。
【0086】
図14、15に示したように、3つの圧縮ステム・アセンブリ10は、横方向アプローチによって、SI関節を横切って設置することができる。アンカー・ナット16を締め付けることで各圧縮ステム・アセンブリが圧縮状態とされると、近隣する圧縮ステム・アセンブリのインプラント構造体が前進して、腸骨の横壁の向こう側へとわずかに突出し得る。これが生じた場合には、突き出たインプラント構造体20は、アンカー・ピン12上でさらに腸骨内へと、ゆっくりと叩き込むことができる。
【0087】
B. 後横方向からのアプローチ
(1) 圧縮ステム・アセンブリを使用しない場合
図17〜19A/Bに示したように、1または2以上のインプラント構造体は、(圧縮ステム・アセンブリ10を使用せずに)後横方向からのアプローチによって導入することができ、腸骨の後腸骨棘から入って、SI関節を通過して、仙骨翼まで延在する。この経路および最終的なインプラント構造体20の配置は、
図18および19A/Bに最も良く示されている。
図示した実施形態では、このようなやり方で3つのインプラント構造体20が配置される。さらに、図示した実施形態では、インプラント構造体20の断面形状は三角形であるが、既に説明したように、他の断面形状であってもよい。
【0088】
後横方向からのアプローチにおいては、エントリー・ポイントである腸骨の後腸骨棘に存在する軟組織が少ないが故に、横方向からのアプローチの場合よりも軟組織の破壊が少ない。したがって、この部位からインプラント構造体20を導入すると、切り口をより小さく、より流動的なものとすることが可能となる。
さらに、インプラント構造体20は、後横方向からのルートに沿って、厳密な横方向ルートからの場合よりも多くの骨を通過する。そのため、SI関節のより多くの表面積がその部分に含まれることとなり、その結果、SI関節をより良好に定着または固定することができる。さらに、後横方向からのアプローチを採用すれば、L5神経根を含むすべての神経根を避けて通ることが可能となる。
【0089】
後横方向からのアプローチのためのセット・アップは、大略的には、横方向からのアプローチの場合と同じである。セット・アップには、定着または固定すべきSI関節セグメント(関節固定)を特定することが含まれており、例えば、ファーバーテスト(Faber Test)、CTガイデド・インジェクション(CT-guided injection)、またはSI関節のX線/MRIを使用して行う。これらは、患者が(腹を下にして)うつ伏せの状態で、かつ横方向Cアームおよび前後方向Cアームで援助されながら、行われるのが望ましい。
同じ器具を使用して、ガイド・ピン38上に案内内腔42が形成される。ただし、案内内腔42は、腸骨の後腸骨棘から始まって、SI関節を通過して、仙骨翼で終わる。案内内腔42は、既に説明したように(
図17参照)、ブローチを使用して、所望のプロファイルを有する形状とされる。そして、インプラント構造体20が、
図18および19A/Bに示した方法で、ブローチ加工された内腔48内に挿入される。
三角形のインプラント構造体20が、(この実施形態では、圧縮スリーブ・アセンブリ10を使用することなく)、ガイド・ピン38上を、軟組織プロテクタを通して、腸骨の後腸骨棘から、SI関節を通過して、仙骨翼で終わるところまで叩き込まれる。そのときインプラント構造体20の基端部は、
図18に示したように、腸骨の後腸骨棘と面一になる。
図17および
図19A/Bに示したように、3つのインプラント構造体20が、このようなやり方で導入される。後ろからの横方向ルートに沿う骨の解剖学的形態論により、異なるサイズのインプラント構造体を導入することが推奨される(最も長いものと、それよりも短い他のもの)。
【0090】
(2) 圧縮ステム・アセンブリを使用する場合
図20〜22A/Bに示したように、後横方向からのアプローチにおいては、既に説明したような圧縮ステム・アセンブリ10を使用して、1または2以上のインプラント構造体20を、腸骨の後腸骨棘から入って、SI関節を通過して、仙骨翼内に進入するように導入することもできる。その経路および圧縮ステム・アセンブリ10を備えたインプラント構造体20の最終的な配置は、
図22A/Bに最も良く示されている。
図17〜19A/Bに示した実施形態と同じようにして、3つのインプラント構造体が配置される。さらに、
図17〜19A/Bに示した実施形態と同じようにインプラント構造体の断面形状は三角形であるが、既に説明したように、他の断面形状のものを使用してもよい。
後横方向からアプローチするこの実施形態では、ブローチ加工された内腔48が形成された後直ちにインプラント構造体20が挿入されるのではない。そうではなく、
図20に示して既に説明したように、圧縮ステム・アセンブリ10の構成要素が最初に内腔48内に設置されて、そこに、インプラント構造体20を受け入れる。
【0091】
既に説明したように、後横方向からのアプローチのためのセット・アップは、大略的には、横方向からのアプローチの場合と同じであって、患者が(腹を下にして)うつ伏せの状態で、かつ横方向Cアームおよび前後方向Cアームで援助されながら、行われるのが望ましい。同じ器具を使用して、ガイド・ピン38上に案内内腔42が形成される。案内内腔42は、腸骨の後腸骨棘から始まって、SI関節を通過して、仙骨翼で終わる。案内内腔42は、既に説明したように(
図20参照)、ブローチを使用して、所望のプロファイルを有する形状とされる。
この構成では、圧縮ステム・アセンブリ10のアンカー・スクリュー14を配置するために、案内内腔42およびブローチ加工された内腔48の終点を越えた領域において、仙骨翼内の一定量の骨が、ドリル加工されずにそのまま残される。アンカー・スクリュー14は、仙骨翼内の当該ドリル加工されずに残された領域内へと前進して、
図22A/Bに示したように埋められる。そして、アンカー本体12のネジ切りされた末端部28と連結される。
仙骨翼の形態論によれば、アンカー・スクリュー14は、横方向アプローチにおいて仙骨S1内に埋められる場合よりも短くてもよい。
【0092】
既に説明し
図8Hに示したように、アンカー本体12のネジ切りされた末端部28が、仙骨翼内のアンカー・スクリュー14とネジ係合する。そして、
図21〜22A/Bに示したように、アンカー本体12の他の部分は、SI関節を貫通して基端側へと延在して、腸骨の上腸骨棘の外側に一定距離だけ突出する。
この後、既に説明し
図8Iに示したように、インプラント構造体20は、アンカー本体12上をスライドさせて腸骨の上腸骨棘と面一の状態に設置される。そして、既に説明し
図8J〜8Lに示したように、アンカー・ワッシャ18およびナットをアンカー本体12の基端部に取り付けて、締め付ける。これにより、アセンブリ10が圧縮状態となる。最終的な組立状態を、
図21および22A/Bに示している。
【0093】
図20、21に示したように、3つの圧縮ステム・アセンブリ10は、後横方向アプローチによって、SI関節を横切って設置することができる。前に説明したように、アンカー・ナット16を締め付けることで各圧縮ステム・アセンブリが圧縮状態とされると、近隣する圧縮ステム・アセンブリ10のインプラント構造体20が前進して、腸骨の上腸骨棘の向こう側へとわずかに突出し得る。これが生じた場合には、突き出たインプラント構造体20は、アンカー本体12上でさらに上腸骨棘へと、ゆっくりと叩き込むことができる。
【0094】
C. 結論
後方からのアプローチ、あるいは後横方向からのアプローチのいずれかを使用すれば、既に説明したように、1または2以上のインプラント構造体20のそれぞれを、圧縮ステム・アセンブリ10を使用して、または使用せずに、あるいはその組み合わせによって、最少侵襲的な方法で、SI関節を横切るよう挿入することができる。
組織にアクセスする従来の器具、栓子、カニューレ、および(または)ドリルは、この目的に使用することができる。挿入経路を形成する前、あるいはインプラント構造体20の挿入前において、開先加工(joint preparation)、軟骨組織の除去、あるいはスクレーピングは必要ない。したがって、インプラント構造体20の最大外径と同じ、またはほぼそれに近いサイズで形成された最小侵襲的な挿入経路を形成する必要はある。
【0095】
圧縮ステム・アセンブリ10の使用を伴う、あるいは伴わないインプラント構造体20を使用することで、自己由来の骨移植材、追加的な茎状スクリューおよび(または)ロッド、中空のモジュラー固定スクリュー、カニューレ状の圧縮スクリュー、ジョイント内でネジが切られたケージ、あるいは骨折定着スクリューが不要となる。
【0096】
代表的な処置では、患者の体格およびインプラント構造体20のサイズに応じて、1〜6個、あるいは多分8個のインプラント構造体20が必要となる。インプラント後、固定が行われる間、患者は、SI関節に負荷が作用するのを避けるよう助言されるであろう。その期間は、患者の健康状態および術後プロトコルの遵守度合いに依存し、6〜12週間またはそれ以上である。
【0097】
インプラント構造体20を使用することで、従来の開腹手術の場合よりも侵襲性の少ない外科技術が可能となり、広範囲に渡る軟組織の除去は不要となる。SI関節に対して横方向からアプローチおよび後横方向からアプローチすることで、直線的な外科アプローチが提供され、これは、最小侵襲性の外科技術を補う。
インプラント構造体20のプロファイルおよびデザインは、回転および微少移動を最小限にする。チタンから作った硬質のインプラント構造体20を使用すれば、術後直ぐにSI関節が安定する。骨を内部成長させる領域24は、不規則な表面に多孔性のプラズ・マスプレー・コーティングが施されていて、安定した骨の定着/固定を支援する。インプラント構造体20および外科アプローチによって、術後の耐荷重キャパシティーが最大限となるよう設計された大きな固定表面積が実現され、かつ、大きな負荷がかかるSI関節を安定させるよう設計された、生物力学的に厳格なインプラントが提供される。
【0098】
III. 他の構造体を使用した仙腸関節の関節固定
従来の横方向および(または)前後方向(A−P)での可視化技術の援助下で、SI関節に対して横方向からのアプローチおよび後横方向からのアプローチを行うことで、他の形態の定着/固定構造体を使用して、最小侵襲的な方法によるSI関節の定着が可能となる。
いずれのアプローチによっても、切り口のサイズが最少限となり、軟組織の除去が最小限となり、腱への刺激が最少限となり、痛みが少なく、感染症および合併症のリスクが少なく、失血が最小限となる。
【0099】
例えば(
図23および
図24A/Bを参照)、1または2以上のスクリュー状構造体52(例えば、中空のモジュラー係止スクリュー、カニューレ状の圧縮スクリュー、あるいは骨折定着スクリュー)を、本明細書で説明した横方向からのアプローチによって、腸骨を貫通し、SI関節を通過し、そして仙骨S1内へと横方向に導入することができる。この経路および最終的なスクリュー状構造体52の配置を、
図23および
図24A/Bに示している。
既に説明したように、スクリュー状構造体は、植設後に回転しないようにそのサイズおよび形状が決められているとともに、骨を内部成長させる材料、あるいは骨を貫通成長させる構造を備えていることが望ましい。
【0100】
同様に、1または2以上のスクリュー状構造体52は、本明細書で説明した後横方向からのアプローチによって、腸骨の後腸骨棘から入って、SI関節を通過して、仙骨翼で終わるよう、導入することができる。この経路および最終的なスクリュー状構造体52の配置を、
図25および
図26A/Bに示している。
既に説明したように、スクリュー状構造体52は、植設後に回転しないようにそのサイズおよび形状が決められているとともに、骨を内部成長させる材料、あるいは骨を貫通成長させる構造を備えていることが望ましい。
【0101】
別の例として、骨移植材料を含んでいる1または2以上の固定ケージ構造体54を、本明細書で説明した横方向からのアプローチによって、腸骨を貫通し、SI関節を通過し、そして仙骨S1内へと横方向に導入することができる。この経路および最終的な固定ケージ構造体54の配置を、
図27および
図28A/Bに示している。
そのような構造体54は、
図27および
図28A/Bに示しているように、仙骨S1内に植設されるアンカー・スクリュー要素56を含んでいてもよい。
【0102】
同様に、1または2以上の固定ケージ構造体54は、本明細書で説明した後横方向からのアプローチによって、腸骨の後腸骨棘から入って、SI関節を通過して、仙骨翼で終わるよう、導入することができる。この経路および最終的な固定ケージ構造体54の配置を、
図29および
図30A/Bに示している。
そのような構造体54は、
図27および
図28A/Bに示しているように、仙骨翼内に植設されるアンカー・スクリュー要素56を含んでいてもよい。
【0103】
IV. 結論
以上の説明は、本発明の原理を図示することを目的としたものに過ぎないと、理解されるべきである。さらに、この分野における当業者にとっては、多数の修正および変更が容易であるが故に、ここに図示し説明した構造および操作そのままのものとして本発明が限定されるのは望ましくない。好ましい具体例について説明してきたが、その詳細は、特許請求の範囲で特定される本発明から逸脱することなく、変更することが可能である。