(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771281
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】製剤シリンジユニット用保管ケース
(51)【国際特許分類】
A61J 1/14 20060101AFI20150806BHJP
A61J 1/06 20060101ALI20150806BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20150806BHJP
A61M 5/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
A61J1/00 390S
A61J1/06 M
A61M5/28
A61M5/00 510
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-542813(P2013-542813)
(86)(22)【出願日】2012年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2012006572
(87)【国際公開番号】WO2013069209
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年4月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-246777(P2011-246777)
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 敏明
(72)【発明者】
【氏名】高畑 幸広
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−326192(JP,A)
【文献】
特開2007−216009(JP,A)
【文献】
特表2002−507952(JP,A)
【文献】
特表平5−509059(JP,A)
【文献】
米国特許第4420085(US,A)
【文献】
国際公開第00/51667(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/055608(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製剤投与装置に装着される製剤シリンジユニットを収納するための保管ケースであって、
上面が開口した基体と、
前記基体の開口を覆うカバーと、
を備え、
前記基体は、その内部に、筒状の製剤シリンジユニットを保持する凹部を有し、
前記凹部は、前記製剤シリンジユニットの一端と他端とをそれぞれ保持する保持部と、収納されたとき前記製剤シリンジユニットの本体部に対応する位置に設けた、製剤シリンジユニットを着脱するための中央凹部と、を有し、
前記中央凹部は、前記保持部よりも下方に配置された底部を有し、前記製剤投与装置を立設して配置可能に形成されている、
保管ケース。
【請求項2】
前記中央凹部は更に、その外周部に、前記基体の上方へ突出する保持壁を有する、
請求項1に記載の保管ケース。
【請求項3】
前記保持壁は、前記中央凹部の外周部の一部に形成されている、
請求項2に記載の保管ケース。
【請求項4】
前記中央凹部は、前記保持部間に配され、前記保持部より大きい開口部を有する、
請求項1に記載の保管ケース。
【請求項5】
製剤投与装置に装着される製剤シリンジユニットを収納するための保管ケースであって、
第1面に開口する、二つの第1凹部と前記第1凹部の間に配された第2凹部とを有する基体と、
前記基体の前記第1面に対し開閉可能に取り付けられたカバーと、
を備え、
前記第1凹部は、筒状の製剤シリンジユニットを収納するとき前記製剤シリンジユニットの両端をそれぞれ保持するように形成され、
前記第2凹部は、前記第1凹部と連通し且つ前記第1凹部より深く形成され、前記第1面において前記第1凹部よりも大きく開口する開口部を有し、
前記第2凹部は、前記製剤投与装置の一部を収納することにより前記製剤投与装置を立設して保持するように形成されている、
保管ケース。
【請求項6】
前記第2凹部は、その外周部に、前記基体の第1面より突出する保持壁を有する、
請求項5に記載の保管ケース。
【請求項7】
前記保持壁は、前記第2凹部の外周部の一部に形成されている、
請求項6に記載の保管ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、成長ホルモン等の製剤を投与する際に活用する製剤シリンジユニットを収納するための保管ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、成長ホルモンを投与する際に活用する製剤シリンジユニットは、製剤投与装置に装着され、1日に1回もしくは数回投与が行われる(例えば、下記特許文献1)。そして、その投与が終わると、製剤シリンジユニットは、製剤投与装置から取り外され、保管ケースに入れられた状態で冷蔵庫などに保管される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−17545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記保管ケースは、上面が開口した基体と、この基体の開口を覆うカバーとを備えた構成を有する。製剤シリンジユニットは、この基体内に収納された状態で、カバーをかぶせ、冷蔵庫などに保管される。そして、製剤の投与時には、この保管ケースから製剤シリンジユニットを取り出し、上述のごとく、製剤投与装置に装着する。つまり、この保管ケースは、製剤シリンジユニットの保管時には必要なものであるが、製剤投与時には、何ら活用されておらず、むしろ、邪魔な存在となることもある。
【0005】
そこで、本発明は、製剤投与時にも有効活用できる製剤シリンジユニット用の保管ケースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの観点によれば、製剤投与装置に装着される製剤シリンジユニットを収納するための保管ケースは、上面が開口した基体と、同基体の開口を覆うカバーとを備える。基体は、その内部に、筒状の製剤シリンジユニットを保持する凹部を有する。この凹部は、製剤シリンジユニットの一端と他端とをそれぞれ保持する保持部と、収納されたとき製剤シリンジユニットの本体部に対応する位置に設けた、製剤シリンジユニットを着脱するための中央凹部とを有する。中央凹部は更に、保持部よりも下方に配置された底部を有し、製剤投与装置を立設して配置可能に形成されている。これにより、所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、製剤投与時にも有効活用できる製剤シリンジユニット用の保管ケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる製剤シリンジユニット用の保管ケースの斜視図
【
図5】保管ケースに立設配置する製剤投与装置の斜視図
【
図10】本発明の他の実施形態にかかる製剤シリンジユニット用の保管ケースの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を添付図面とともに説明する。
(実施の形態1)
図1から
図3に示すように、本実施形態の保管ケース100は、製剤投与装置に装着される製剤シリンジユニット4を収納するための保管ケースであって、上面が開口した長方形状の基体1と、この基体1の上面(第1面の一例)を覆うカバー2とにより構成されている。具体的には、基体1の長辺とカバー2の長辺部分をヒンジ3により連結し、このヒンジ3を軸としてカバー2を基体1の上面に対して開閉させるようになっている。
【0010】
また、基体1は、その内部に、筒状の製剤シリンジユニット4を保持する凹部5を有する。この凹部5は、製剤シリンジユニット4の一端と他端とを保持する保持部6(第1凹部の一例)と、保持部6間に配された中央凹部7(第2凹部の一例)とを有する。中央凹部7は、収納されたときの製剤シリンジユニット4の本体部、例えば製剤シリンジユニット4の中部の外周部に対応する位置に設けられている。中央凹部7は、保持部6よりも大きく開口した開口部7a(
図4)を有し、開口部7aは、後述するように製剤シリンジユニット4を保管ケースに対し着脱するときに用いられる。中央凹部7は、
図4に示すごとく、保持部6よりも下方に配置された底部5aを有し、後述する製剤投与装置8(
図6)の後端部を保持することにより製剤投与装置8を立設して配置可能に形成されている。つまり、凹部5は、製剤シリンジユニット4を保持することと製剤投与装置8を立設・保持することを兼用している。
図1に示す製剤シリンジユニット4を凹部5より取り出した後には、製剤投与装置8を凹部5に立設配置することができるように形成されている。
【0011】
また、このような製剤投与装置8の立設配置状態を安定させるために、中央凹部7は、開口部7aを囲むその外周部において、外周部全体から上方へ突出する保持壁9を設けている。
以上の構成において、製剤シリンジユニット4は、
図1に示すごとく、基体1の凹部5内に収納される。保管ケース100は、その状態で、上面開口部をカバー2を閉じ、例えば冷蔵庫などで保管される。そして、使用時には、
図1に示すごとく、カバー2を開放することで、製剤シリンジユニット4を表出させる。この状態で、製剤シリンジユニット4の本体部の両側に位置する、製剤シリンジユニット着脱用の開口部7aから指を凹部5内に挿入し、製剤シリンジユニット4を指で凹部5外につまみ出す。製剤シリンジユニット4は、続いて、製剤投与装置8に装着される。
【0012】
このように、製剤シリンジユニット4が製剤投与装置8に装着され保管ケース100に収納されていないとき、保管ケース100は、
図2に示すごとく、基体1の凹部5が開放されている。この凹部5の中央凹部7内に、製剤投与装置8の後端部を挿入し、
図5に示すごとく、製剤投与装置8を立設配置する。つまり、本実施形態においては、凹部5の中央凹部7は、製剤投与装置8の後端部の形状とほぼ同じで、若干、開口径を製剤投与装置8の後端部より大きくしている。このため、上述のごとく、中央凹部7内に、製剤投与装置8の後端部を挿入し、
図5に示すごとく、製剤投与装置8を立設配置することができる。
【0013】
製剤投与装置8の一例を
図6および
図7に示す。
図6に示すごとく、製剤投与装置8は、全体的には長形状で、その先端部には先端キャップ10を備えている。この製剤投与装置8の内部には、
図7に示すごとくインナーケース11が設けられている。このインナーケース11内に、製剤シリンジユニット4が、
図8に示すごとく、装着される。また、製剤シリンジユニット4の先端には、注射針12が装着される。その状態で、スライドモータ50によりピストン駆動部25を矢印A1方向に駆動させることにより、ピストンユニット13を含めたインナーケース11を矢印A2方向に移動させる。このスライドモータ50の駆動により、インナーケース11はスライド動作し、注射針12が先端キャップ10から飛び出したり引っ込んだりする刺針抜針動作を行なう。一方、ピストンモータ51の駆動により、ピストンユニット13に組込んだピストン13aがスライド動作可能で、
図8の左方向に動作する事で製剤シリンジユニット4は、液剤と固剤の混合・溶解、空気抜き、及び、製剤の投与を行う。
【0014】
以下、
図9A〜
図9Fを参照して、ピストンユニット13に組込んだピストン13aの駆動による製剤投与装置8の動作について具体的に説明する。
図9Aは、製剤シリンジユニット4を示す。この製剤シリンジユニット4は、円筒形の製剤シリンジ14と、その外周に設けた円筒形のカバー15により構成されている。また、製剤シリンジ14の後端側と中部にはパッキン16、17が設けられ、これらパッキン16、17間には、液剤18が収納されている。さらに、製剤シリンジ14の中部と先端間には、固剤19が収納されている。この状態において、パッキン16を
図9A、
図9B、及び
図9Cに示すごとく、ピストンユニット13に組込んだピストン13aにより先端側に押していく。この時、
図9Cのごとく、製剤シリンジ14の中部に設けたバイパス路20にパッキン17が到達した時点で、このバイパス路20を介して固剤19に液剤18が混合され始める。そして、やがては、
図9D及び
図9Eに示す状態となって、液剤18と固剤19が混合・溶解されることになる。
【0015】
このような液剤18と固剤19との混合・溶解は、
図5に示すごとく、製剤投与装置8を保管ケース100の基体1の凹部5に立設配置した状態で行うことができる。よって、本実施形態による、保管ケース100の基体1が製剤投与装置8を立設配置できる構成により、利便性を極めて高いものにすることができる。
なお、
図9Eの後、製剤投与装置8は空気抜きをする必要がある。この時も、製剤投与装置8を、
図5に示すごとく、基体1の凹部5に立設配置した状態で行う。空気抜きは、製剤投与装置8を立設した状態で行わなければ、注射針12から空気とともに製剤が無駄に排出されてしまう。よって、
図5に示すように製剤投与装置8を立設配置状態とできることは、この点においても極めて利便性が高い。
【0016】
その後、保管ケース100の基体1の凹部5から製剤投与装置8を取り外し、その状態で、注射針12とピストンユニット13を含むインナーケース11を先端側に移動させることで、刺針および製剤の投与が行われる。
なお、
図1に示すように、保管ケース100のカバー2には、製剤シリンジユニット4の上面にあわせて、凹部21を設けている。また、基体1の凹部5の隣には、注射針12の保護キャップ(図示せず)を仮置きする凹部22を設けている。
【0017】
以上のように、上記実施形態による製剤シリンジユニット用の保管ケース100は、上面が開口した基体1と、この基体1の開口を覆うカバー2とを備える。基体1は、その内部に、筒状の製剤シリンジユニット4を保持する凹部5を有する。凹部5は、製剤シリンジユニット4の一端と他端とをそれぞれ保持する保持部6と、収納されたとき製剤シリンジユニット4の本体部に対応する位置に設けた、製剤シリンジユニット4を着脱するための中央凹部7とを有する。中央凹部7は、保持部6よりも下方に配置された底部5aを有し、製剤投与装置を立設して配置可能に形成されている。これにより、保管ケース100は、製剤投与時にも活用できるものとなる。
【0018】
すなわち、本実施形態においては、保管ケース100の基体1はその内部に、筒状の製剤シリンジユニット4を保持する凹部5を有し、この凹部5は、製剤シリンジユニット4の一端と他端とをそれぞれ保持する保持部6と、収納されたとき製剤シリンジユニット4の本体部に対応する位置に設けた、製剤シリンジユニット4を着脱するための中央凹部7とを有する。更に中央凹部7の底部5aは、保持部6よりも下方に配置され、製剤投与装置を立設して配置可能に形成されている。
このため、製剤シリンジユニット4を保管ケース100の基体1の凹部5から取り出した後には、凹部5に製剤投与装置8を立設して配置することができる。これにより、保管ケース100は、製剤投与時にも活用できるものとなる。この点を具体的に説明すると、製剤投与時には、製剤投与装置8を水平面に対し立設させた状態で、例えば、空気抜きや、液剤と固剤の混合・溶解をさせる必要がある。この時、製剤投与装置8を保管ケース100の凹部5に立設配置することができるため、それらの作業が極めてスムーズに行えるものとなる。従って、本実施形態に係る保管ケース100は、例えば、成長ホルモンを収納した製剤シリンジユニット4を保管する保管ケースとしての活用だけでなく、製剤投与装置8を立設させるものとして活用することができる。
【0019】
(実施の形態2)
図10は、他の実施の形態に係る製剤シリンジユニット用の保管ケース200を示す。この実施の形態では、カバー2には、製剤シリンジユニット4の上面を押さえるリブ23を設けている。また、本実施の形態に係る保管ケース200においては、凹部5における中央凹部7は、その外周部の一部においてのみ上方へ突出する保持壁29を設けている。その他の構成については、上記実施の形態1と同様であるため、同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
(その他実施の形態)
上記実施の形態においては、保管ケース100,200の凹部5は、保持部6により製剤シリンジユニット4を保持すると共に、中央凹部7により製剤投与装置8を立設可能に保持しているが、これに限定されない。保管ケースは、製剤シリンジユニット4を保持する部分と製剤投与装置8を立設・保持する部分とを別々に形成してもよいし、製剤シリンジユニット4を保持する部分及び製剤投与装置8を立設・保持する部分の一部のみ共通の部分として形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る製剤シリンジユニット用保管ケースは、例えば、成長ホルモン等の製剤を投与する際に活用する製剤シリンジユニットを保管する保管ケース等として有用である。
【符号の説明】
【0021】
1 基体
2 カバー
3 ヒンジ
4 製剤シリンジユニット
5 凹部
6 保持部
7 中央凹部
7a 開口部
8 製剤投与装置
9 保持壁
10 先端キャップ
11 インナーケース
12 注射針
13 ピストンユニット
13a ピストン
14 製剤シリンジ
15 カバー
16、17パッキン
18 液剤
19 固剤
20 バイパス路
21、22 凹部
23 リブ
29 保持壁