(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる車両駆動装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。以下の説明では、各車輪にモータを備えたインホイール型の構成を例に説明する。この実施の形態では、モータ駆動の電力を無線により非接触に車両から車輪に電力伝送する構成である。
【0015】
(車両の構成)
図1は、実施の形態にかかる車両駆動装置が搭載された車両の構成を示す概要図である。車両100は、左右の前車輪FL,FRと、左右の後車輪RL,RRを有する4輪駆動車である。これら四つの各車輪FL,FR,RL,RRのハブには、それぞれインホイール型のモータユニットM1〜M4が設けられ、独立に駆動される。
【0016】
これらモータユニットM1〜M4には、それぞれモータ駆動用のインバータ回路(後述する)と、第2バッテリ等が設けられ、各インバータ回路はコントローラ(ECU)101の制御に基づき、モータユニットM1〜M4を駆動する。このコントローラ101には各種情報が入力され、トルク配分された結果、各モータユニットM1〜M4に設けられたモータ(インホイールモータ)を駆動する。
【0017】
コントローラ101に対する入力としては、以下がある。ハンドル102からは操舵角が入力される。アクセルペダル103からは、全トルク指令値が入力される。ブレーキペダル104からはブレーキ量が入力される。シフトブレーキ105からはシフトブレーキ量が入力される。セレクタ106からはR,N,D等のセレクトポジションが入力される。
【0018】
また、各車輪FL,FR,RL,RRのモータユニットM1〜M4には、それぞれ回転速度Vを検出するセンサが設けられており、各車輪FL,FR,RL,RRの回転速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrrがコントローラ101に入力される。
【0019】
このほか、車両100には、加速度センサとヨーレートセンサ(不図示)が設けられ、検出した加速度およびヨーレートがコントローラ101に入力される。
【0020】
コントローラ101は、上記の入力に基づき、各車輪FL,FR,RL,RRを駆動する。駆動のための制御信号S1〜S4は、各車輪FL,FR,RL,RRごとに適切にトルク配分され、各モータユニットM1〜M4に供給される。
【0021】
また、車両100には、バッテリが搭載され、車両100全体に対して電源供給する。バッテリは、車両側に設けられ、車両外部の外部電源より取得した直流電力を蓄える第1蓄電池(第1バッテリ)111と、モータユニットM1〜M4内部に設けられ、第1バッテリ111との間で電力伝送される第2蓄電池(第2バッテリ)とからなる。各車輪FL,FR,RL,RRのモータユニットM1〜M4は、第2バッテリに蓄電された電力により駆動される。これらバッテリとしては、ニッケル水素、リチウムイオン等の二次電池や燃料電池などが適用される。また、バッテリの代わりに電気二重層キャパシタを用いてもよい。図中L1〜L4が電源ラインである。
【0022】
なお、回生時には、モータへの電源供給(力行)のときとは逆に、モータユニットM1〜M4によって発生した電力をバッテリ側に供給する。この回生とは、車両100を運転するドライバによるブレーキペダル104の操作や、走行中にアクセルペダル103の踏み込みを緩和することによって、モータに発生する逆起電力を用いた発電を示す。
【0023】
車両側および車輪側(モータユニットM1〜M4)の電源ラインL1〜L4上には、それぞれ電圧変換部が設けられる。この電圧変換部は、車両側に設けられる第1変換器(DC−AC変換部)121(121a〜121d)と、車輪側各モータユニットM1〜M4内部に設けられるAC−DC変換部(後述する)によって構成される。車両側と車輪側には、電力を無線送電するための電力伝送アンテナ122(122a〜122d)、123(123a〜123d)が設けられる。
【0024】
そして、コントローラ101は、車両側の第1バッテリ111から供給可能な電源ラインL1〜L4の各電源を、制御信号S11〜S14により、車輪別のモータユニットM1〜M4に供給制御する。この際、電源ラインL1〜L4の電源は、車両側のDC−AC変換部121(121a〜121d)により直流電力が交流電力に変換される。そして、一対の電力伝送アンテナ122(122a〜122d)、123(123a〜123d)により、車輪側のモータユニットM1〜M4に無線送電される。
【0025】
そして、車輪側のモータユニットM1〜M4に設けられるAC−DC変換部により交流電力が直流電力に変換された後、第2バッテリに供給される。第2バッテリに蓄電された電力を用いて、後述するインバータ203(203a〜203d)は、モータユニットM1〜M4のモータを駆動する。
【0026】
なお、上記モータユニットM1〜M4のモータの回生時には、車輪側のモータユニットM1〜M4から車両側(第1バッテリ111)に向けて電力を無線送電することができる。
【0027】
(車両駆動装置の構成)
図2は、車両駆動装置の構成を示すブロック図である。車両駆動装置200は、モータへ電源を供給してモータを駆動する。また、車両100の走行状態等により、第1バッテリ111と第2バッテリ212a間での電力伝送を制御する。
【0028】
以下、車両100と、モータユニットM1間の電源ラインL1上の構成について説明することとし、図中添え字「a」は、電源ラインL1およびモータユニットM1に対応していることを示す。なお、他の電源ラインL2〜L4についても同様の構成であり、説明は省略する。
【0029】
はじめに、電源ラインL1について、車両100から車輪側のモータユニットM1側への電源を供給する各構成について説明する。車両100側には、第1バッテリ111が設けられ、電源ラインL1を介してDC−AC変換部121aに接続されている。DC−AC変換部121aは、直流電力を交流電力に変換し、電力伝送アンテナ(送電アンテナ)122aに出力する。
【0030】
車輪側のモータユニットM1には、電力伝送アンテナ122aと対の電力伝送アンテナ(受電アンテナ)123aが設けられる。この電力伝送アンテナ123aは、車両側の電力伝送アンテナ122aから送電された電力を受電する。これら電力伝送アンテナ122a,123aには、たとえば、巻回されたコイルを用いることができ、車両100と車輪のモータユニットM1との間を非接触で電力伝送できる。
【0031】
電力伝送アンテナ123aで受電した電力は、第2変換器(AC−DC変換部)201aにより交流電力が直流電力に変換され、双方向チョッパ202aに出力される。双方向チョッパ202aは、双方向(正方向あるいは逆方向)への電力伝送を行うための回路である。
【0032】
双方向チョッパ202aの出力は、第2バッテリ212aに出力される。これにより、車両側の第1バッテリ111の電源を車輪側の第2バッテリ212aに供給し(正方向)、第2バッテリ212aに蓄電されるとともに、インバータ203aを介してモータユニットM1内のモータMに供給され、モータMを駆動させる。
【0033】
モータMの回生時には、モータMで発生した電力がインバータ203aを介して第2バッテリ212aに供給されるとともに、双方向チョッパ202a〜AC−DC変換部201a〜電力伝送アンテナ123a〜電力伝送アンテナ122a〜DC−AC変換部121a〜第1バッテリ111の経路(電源ラインL1)を介して電力伝送することができる(逆方向)。これにより、第2バッテリ212aを介して第1バッテリ111への蓄電を行うことができる。なお、AC−DC変換部201aとDC−AC変換部121aは共に双方向であるため、この場合は、AC−DC変換部201aはDC−AC変換を行い、DC−AC変換部121aはAC−DC変換を行う。また、123aは送電アンテナとなり、122aは受電アンテナとなる。
【0034】
車両100に設けられるコントローラ101は、受電手段への給電を制御する給電制御手段(残量制御部)221と、車輪の回転駆動を制御する駆動制御手段(トルク制御部)222とを有している。残量制御部221は、第2バッテリ212aに対する電源供給を制御する。第1バッテリ111および第2バッテリ212aのバッテリ量(バッテリ残量)は、残量制御部221が検出しており、たとえば、第2バッテリ212aのバッテリ残量が少なくなったときには、DC−AC変換部121a、AC−DC変換部201aに対し、車両100から車輪のモータユニットM1に対する電力伝送を制御信号S11を介して行う。この際、制御信号S11により双方向チョッパ202aは、車両100からモータユニットM1へ向う正方向の電力伝送を行う。
【0035】
一方、残量制御部221は、モータMの回生時に、モータユニットM1から車両側へ向う逆方向の電力伝送を行う場合についても、制御信号S11を用いて行う。この場合、双方向チョッパ202aに対しては、伝送の有無を制御する。伝送を行わない制御時には、第2バッテリ212aから第1バッテリ方向への電力伝送は行わない。伝送を行う制御時には、電力伝送の方向を第2バッテリ212aから第1バッテリ111の方向に切り替える。
【0036】
トルク制御部222は、全トルク指令値を走行状態に応じて各車輪FL,FR,RL,RRごとにトルク配分する。図示の右前輪FRのモータユニットM1に対しては、インバータ203aに対するトルク配分値を制御信号S1aで出力することにより行う。
【0037】
また、モータユニットM1は、第2バッテリ212aの電流値および電圧値を信号S1bとしてコントローラ101に出力し、モータMの回転速度を信号S1cとしてコントローラ101に出力する。
【0038】
これら制御信号S1a〜S1cと、S11は、車両100と車輪側のモータユニットM1との間で有線接続された制御線を介して伝送させる。これら制御信号S1a〜S1cと、S11については、データ送信できればよいため、制御線に細線を用いることができ、大容量の電力伝送を行うような太線を用いる必要はないため、車輪の操舵性を低下させることがない。
【0039】
図3は、インバータの回路例を示す図である。インバータ203aは、第2バッテリ212aから供給される直流電力をモータMの3相交流電力に変換する。U,V,Wの各相±にそれぞれダイオード301と、駆動トランジスタ302とを設け、PWM変調により、電圧と周波数を制御した正弦波を生成してモータMの各相に供給してモータMを回転駆動する。
【0040】
図4は、双方向チョッパの回路例を示す図である。双方向チョッパ202aは、一次側ハーフブリッジ回路401と、二次側ハーフブリッジ回路402と、リアクトル403とを備えている。一次側ハーフブリッジ回路401は、AC−DC変換部201aに接続されるスイッチング素子404と、ダイオード405を有している。二次側ハーフブリッジ回路402は、第2バッテリ212aに接続されるスイッチング素子406と、ダイオード407とを有している。リアクトル403は、一次側と二次側との間に接続されている。そして、スイッチング素子404,406の制御により、リアクトル403を介して一次側から二次側への正方向の電力伝送、あるいは二次側から一次側への逆方向の電力伝送を行うことができる。
【0041】
上記構成により、車両100側に第1バッテリ111を設け、インバータ203aと第2バッテリ212aをモータユニットM1に内蔵して設けているため、DCの電源を車両100側から供給することにより、モータMを駆動することができる。この際、車両100と車輪のモータユニットM1との間におけるDC電力の供給は、大電流を必要としない。これは、モータの駆動には、第2バッテリ212aに蓄電されている電力を用いるためであり、大きなトルクを出力する際に必要な電力量を多少の余裕を持って第2バッテリ212aに蓄電しておけばよい。したがって、第1バッテリ111と第2バッテリ212aの間の電力伝送を連続的に行うようにしておけば、大電流を流さなくても済むのである。このため、車両100と、車輪のモータユニットM1にそれぞれ電力伝送アンテナ122a,123aを設け、非接触な無線による電力伝送を行うことができる。
【0042】
(バッテリ間の電力伝送の概要)
図5は、バッテリ間の電力伝送の概要を示す図である。4輪駆動の場合、四つのモータユニットM1〜M4を有し、第1バッテリ111は、これら四つのモータユニットM1〜M4のモータMを駆動する比較的大きな容量を有するものを用いる。一方、モータユニットM1(およびM2〜M4)にそれぞれ設ける第2バッテリ212aは、単一のモータMを駆動すればよく、比較的小容量のものを用いることができ、重量を軽量化できる。
【0043】
第1バッテリ111と、第2バッテリ212aとの間における電力伝送は、モータユニットM1内の第2バッテリ212aの残量(現在値B1)が、常に目標残量値BS(Set)に近づくように制御する。この制御は、上記コントローラ101の残量制御部221が行う。目標残量値BSは、充電上限値BU(Upper)と充電下限値BL(Lower)との間の所定値に設定される。図中RL(Lower)は、現在値B1と充電下限値BLとの差分であり、第2バッテリ212aで使用可能な容量である。
【0044】
電力の伝送方向は、上述したように双方向、すなわち正方向と逆方向がある。正方向は、第1バッテリ111→第2バッテリ212aの方向である。逆方向は、第2バッテリ212a→第1バッテリ111の方向である。
【0045】
コントローラ101は、基本的には、
1.正方向への電力伝送は、力行制御時に行う。力行制御は、たとえば、アクセルペダル103の踏み込みを検出したときに行う。
2.逆方向への電力伝送は、回生制御時に行う。回生制御は、たとえば、ブレーキペダル104の踏み込みを検出したときに行う。
【0046】
そして、コントローラ101(残量制御部221およびトルク制御部222)は、充電の現在値B1が第2バッテリ212aの充電上限値BUを超えないように、回生時の回生電力を制御する。また、充電の現在値B1が第2バッテリ212aの充電下限値BLを下回らないように、力行時の力行電力を制御する。
【0047】
(電力伝送の制御内容)
図6は、電力伝送にかかる全体の制御内容を示すフローチャートである。コントローラ101が行う電力伝送とトルク制御の処理について示している。はじめに、コントローラ101は、モータユニットM1〜M4のセンサにより、現在の走行速度を検出する。また、アクセルペダル103とブレーキペダル104の踏み込みを検出する(ステップS701)。
【0048】
そして、現在の走行状態と制御形態の組み合わせを特定する(ステップS702)。上記のように、
1.アクセルペダル103の踏み込みを検出したときには、力行制御と特定する。
2.ブレーキペダル104の踏み込みを検出したときには、回生制御と特定する。このほか、
3.アクセルペダル103およびブレーキペダル104の踏み込みを検出せず、かつ、車両100の速度が遅い場合には、力行制御と特定する。この場合、後述する擬似クリープトルクの制御を行う。
4.アクセルペダル103およびブレーキペダル104の踏み込みを検出せず、かつ、車両100の速度が速い場合には、回生制御と特定する。この場合、後述する擬似エンジンブレーキの制御を行う。
5.アクセルペダル103およびブレーキペダル104の踏み込みを検出せず、かつ、車両100の速度が中程度(速くなく、また遅くない速度)の場合には、制御なし(惰行運転)と特定する。
【0049】
つぎに、制御形態がいずれであるかを判断する(ステップS703)。制御形態が力行制御のときには(ステップS703:力行)、力行トルク制御を行い(ステップS704)、ステップS706に移行する。制御形態が回生制御のときには(ステップS703:回生)、回生トルク制御を行い(ステップS705)、ステップS706に移行する。制御形態が惰行の場合には(ステップS703:惰行)、特に制御を行わず、ステップS706に移行する。
【0050】
つぎに、ステップS706では、上述した無線による電力伝送制御を行い(ステップS706)、処理を終了する。コントローラ101は、上記の各処理を経時的に連続して行う。
【0051】
(力行トルク制御について)
図7は、力行トルク制御の制御内容を示すフローチャートである。
図6のステップS704に示した力行トルク制御の詳細な制御内容を示している。はじめに、コントローラ101は、モータユニットM1〜M4にそれぞれ設けられる第2バッテリ212(212a〜212d:ただし212b〜212dはモータユニットM2〜M4の第2バッテリを指し不図示)の各値を検出する(ステップS801)。
【0052】
第2バッテリ212(212a〜212d)の充電下限値はBLとし、現在値(残量)はB1〜B4とし、現在の電圧はV1〜V4とする。モータユニットM1〜M4の第2バッテリ212a〜212dは、モータMの駆動状態に対応してそれぞれ現在値B1〜B4が異なり常に変動する。
【0053】
つぎに、アクセルペダル103の踏み込み量と、所定のトルク配分値により、各車輪(各モータユニットM1〜M4)へのトルク配分値T1〜T4を決定し、後述するモータ効率マップを用いた電力推定方法により、必要な力行電力W1〜W4を算出する(ステップS802)。
【0054】
つぎに、第2バッテリ212の電力使用可能な容量RLを算出する(ステップS803)。具体的には、モータユニットM1〜M4にそれぞれ設けられる第2バッテリ212(212a〜212d)について、
使用可能な容量RL1〜RL4=現在値B1〜B4−充電下限値BL
により算出する。
【0055】
つぎに、各モータユニットM1〜M4で必要な力行電力W1〜W4と、ステップS803で算出した第2バッテリ212(212a〜212d)で使用可能な容量RL1〜RL4とを比較する(ステップS804)。この結果、各モータユニットM1〜M4で必要な力行電力W1〜W4が対応する第2バッテリ212(212a〜212d)で使用可能な容量RL1〜RL4を超えた場合には(ステップS804:Yes)、力行電力が使用可能な容量RL1〜RL4以下となるように、各車輪のトルク配分値を再計算する(ステップS805)。すなわち、全トルク指令値をトルク配分する際に、残量が少ない第2バッテリ212のモータユニットへのトルク配分値を少なくし、その割合で、他のモータユニットのトルク配分値も少なくする。
【0056】
一方、ステップS804で各モータユニットM1〜M4で必要な力行電力W1〜W4が対応する第2バッテリ212(212a〜212d)で使用可能な容量RL1〜RL4に収まっていれば(ステップS804:No)、ステップS805の処理を行わず、ステップS806に移行する。
【0057】
そして、ステップS806では、各モータユニットM1〜M4に対するトルク配分値を用いて、力行トルク制御を行い(ステップS806)、処理を終了する。
【0058】
(回生トルク制御について)
図8は、回生トルク制御の制御内容を示すフローチャートである。
図6のステップS705に示した回生トルク制御の詳細な制御内容を示している。回生時には、モータMが電力を発生する。はじめに、コントローラ101は、モータユニットM1〜M4にそれぞれ設けられる第2バッテリ212(212a〜212d)の各値を検出する(ステップS901)。第2バッテリ212の充電上限値はBUとし、現在値(残量)はB1〜B4とし、現在の電圧はV1〜V4とする。
【0059】
つぎに、ブレーキペダル104の踏み込み量と、所定のトルク配分値により、各車輪(各モータユニットM1〜M4)へのトルク配分値T1〜T4を決定し、後述するモータ効率マップを用いた電力推定方法により、回生電力W1〜W4を算出する(ステップS902)。
【0060】
つぎに、第2バッテリ212の電力回生可能な容量RUを算出する(ステップS903)。具体的には、モータユニットM1〜M4にそれぞれ設けられる第2バッテリ212(212a〜212d)について、
回生可能な容量RU1〜RU4=充電上限値BU−現在値B1〜B4
により算出する。
【0061】
つぎに、各モータユニットM1〜M4での回生電力W1〜W4と、ステップS903で算出した第2バッテリ212(212a〜212d)で回生可能な容量RUとを比較する(ステップS904)。この結果、各モータユニットM1〜M4の回生電力W1〜W4が対応する第2バッテリ212(212a〜212d)で回生可能な容量RU1〜RU4を超えた場合には(ステップS904:Yes)、回生電力が回生可能な容量RU1〜RU4以下となるように、各車輪のトルク配分値を再計算する(ステップS905)。すなわち、全トルク指令値をトルク配分する際に、残量が多い第2バッテリ212のモータユニットへのトルク配分値を少なくし、その割合で、他のモータユニットのトルク配分値も少なくする。
【0062】
一方、ステップS904で各モータユニットM1〜M4の回生電力W1〜W4が対応する第2バッテリ212(212a〜212d)で回生可能な容量RU1〜RU4に収まっていれば(ステップS904:No)、ステップS905の処理を行わず、ステップS906に移行する。
【0063】
そして、ステップS906では、各モータユニットM1〜M4に対するトルク配分値を用いて、回生トルク制御を行い(ステップS906)、処理を終了する。
【0064】
(電力伝送の制御手順)
つぎに、上述した無線による電力伝送の制御手順について説明する。
図9は、実施の形態にかかる無線による電力伝送の制御手順の一例を示すフローチャートである。
図9の説明では、モータユニットM1に設けられる第2バッテリ212aに対する電力伝送を例に説明するが、他のモータユニットM2〜M4に設けられる第2バッテリ212b〜212dについても同様の処理を行えばよい。
【0065】
はじめに、コントローラ101は、第2バッテリ212aの各値を検出する(ステップS1001)。第2バッテリ212aの目標残量はBSとし、現在値(残量)はB1とし、現在の電圧はV1とする。また、モータユニットMに対する無線の電源ラインL1の最大電流をAmaxとする。この最大電流Amaxは、電源ラインL1上に設けられる無線伝送にかかる電力伝送アンテナ122a,123aのコイルや、ドライバIC等によって許容値(電流許容値)が異なる。
【0066】
つぎに、電力伝送可能な上限値Cmaxと、伝送したい電力Dとを下記式により算出する(ステップS1002)。
電力伝送可能な上限値Cmax=電源ラインL1の最大電流Amax×現在の電圧V1
伝送したい電力D=BS−B1
【0067】
上記の伝送したい電力Dとは、電源ラインL1上の第1バッテリ111と第2バッテリ212aとの間で電力伝送したい電力である。たとえば、力行時には、割り当てられたトルク配分値に対応して、第1バッテリ111から第2バッテリ212aへの正方向に向けてモータMを駆動するために必要な電力である。回生時には、回線電力を第1バッテリ111に伝送しようとする電力に相当する。
【0068】
つぎに、電力伝送の電力値を決定する(ステップS1003)。電力伝送の電力値は、伝送したい電力Dの絶対値|D|と、電力伝送可能な上限値Cmaxとのうち、小さい方の電力値を用いて行う。このため、伝送したい電力Dの絶対値が電力伝送可能な上限値Cmaxを超えていれば(ステップS1003:Yes)、伝送したい電力Dが正の場合、電力伝送可能な上限値Cmaxを伝送する電力Dとして決定する。また、伝送したい電力Dが負の場合、電力伝送可能な上限値−Cmaxを伝送する電力Dとして決定する(ステップS1004)。
【0069】
一方、ステップS1003において、伝送したい電力Dの絶対値が電力伝送可能な上限値Cmaxを超えていなければ(ステップS1003:No)、ステップS1004の処理を行わず、伝送したい電力Dをそのまま用い、ステップS1005に移行する。
【0070】
そして、ステップS1005では、差分容量Dを第1バッテリ111から第2バッテリ212aに無線の電源ラインL1を介して電力伝送する。Dの値が負の場合には、回生時であるため、第2バッテリ212aから第1バッテリ111に無線の電源ラインL1を介して電力伝送する(ステップS1005)。
【0071】
(力行トルク指令値について)
図10は、力行時のトルク指令値を示す図表である。アクセルペダル103の踏み込み量(横軸)に対する力行トルク指令値(縦軸)の関係を示している。コントローラ101のトルク制御部222は、図示のように、これらアクセルペダル103の踏み込み量と、力行時の全トルク指令値とは、比例する直線関係で制御するのではなく、アクセルペダル103の踏み込み量に対してはじめはなだらかに変化する曲線を有して力行トルク指令値を出力する。また、車両100の前進時に比べて後退時の力行トルク指令値は、さらになだらかとなるよう設定している。
【0072】
(回生トルク指令値について)
図11は、回生時のトルク指令値を示す図表である。ブレーキペダル104の踏み込み量(横軸)に対する回生トルク指令値(縦軸)の関係を示している。コントローラ101は、図示のように、ブレーキペダル104の踏み込み量に対し、回生トルク指令値は、ほぼ直線関係となるよう制御している。また、車両の前進時に比べて後退時の回生トルク指令値は、なだらかに変化するよう設定している。
【0073】
(擬似クリープトルクと擬似エンジンブレーキについて)
図12は、ペダルを離したときのトルク指令値を示す図表である。コントローラ101は、アクセルペダル103もブレーキペダル104も踏まれない場合、図示のように、車速に応じてトルク指令値を変えている。
【0074】
そして、車速が遅い場合は、プラス(+)のトルクとして擬似クリープトルクを生成する。車速が速い場合は、マイナス(−)のトルクとして擬似エンジンブレーキを生成する。図示の例では、車速が40km/h程度以上で擬似エンジンブレーキをかけ、60km/h程度が最も大きなトルク値をかけるようになっている。60km/h程度以上の速度では、次第に小さなトルク値をかけるようになっている。車速が中程度の場合は(図中Nの速度領域)、トルク指令値をゼロにして惰行運転する。
【0075】
また、通常モードとエコモードとを切り替えるように構成した場合、切り替えたモード別に、車速に対するトルク指令値の特性を変えてもよい。図示の例では、通常モードに比べてエコモード時には、擬似クリープトルク値を少なくし、擬似エンジンブレーキは、マイナスの大きなトルク値としている。
【0076】
(モータ効率マップを用いたモータの電力推定)
つぎに、モータ効率マップを用いたモータMの消費電力(回生電力)推定について説明する。
図13は、モータ効率マップを示す図表である。効率マップ1400は、モータMの回転速度−トルク特性を示すものであり、横軸は回転速度、縦軸はトルクである。コントローラ101の記憶部には、図示の4象限の効率マップ1400をあらかじめ格納しておく。
【0077】
効率マップ1400の第1〜第4象限は、それぞれ、
1.正転力行:前進中にアクセルペダルを踏んでいる状態
2.逆転力行:後退中にアクセルペダルを踏んでいる状態
3.逆転回生:後退中にブレーキペダルを踏んでいる状態
4.正転回生:前進中にブレーキペダルを踏んでいる状態
である。
【0078】
コントローラ101のトルク制御部222は、アクセルペダル103やブレーキペダル104の踏み込み量から、全トルク指令量を算出する。そして、この全トルク値を所定のトルク配分によって、各車輪のモータMごとのトルク配分値Tに配分する。
【0079】
また、コントローラ101は、車両100の走行中、各モータユニットM1〜M4のセンサにより回転速度Vfl,Vfr,Vrl,Vrrを検出する。ここでは、回転速度をωとして説明する。そして、コントローラ101は、モータMについて、効率マップ1400を参照し、トルクTと回転速度ωから効率ηを得る。
【0080】
そして、コントローラ101は、以下の式から、力行時の消費電力と、回生時の回生電力をそれぞれ推定する。
・力行時
効率η=(T・ω)/(V・I)
・回生時
効率η=(V・I)/(T・ω)
(V,Iは、モータMの電圧と電流、あるいはインバータ203の電圧と電流)
【0081】
上記の(V・I)がモータMの力行時の消費電力、および回生時の回生電力Wに相当する。コントローラ101は、上述したように、第2バッテリ212(212a〜212d)について、現在値と、使用可能あるいは回生可能な電力量を求める。そして、使用可能あるいは回生可能な電力量と、算出した上記消費電力(回生電力)とを比較し、範囲内に収まるように、モータMに対するトルク配分値を修正する。
【0082】
そして、効率マップ1400を用いることにより、より正確にモータMの消費電力(回生電力)を判断できるようになる。これにより、電力伝送時における必要な電力量(伝送したい電力D)を精度よく推定することができ、電力伝送時の電力量を正確に算出でき、効率的な電力伝送を行うことができるようになる。
【0083】
効率マップ1400は、あらかじめ取得しておくに限らない。たとえば、車両100の走行中に効率マップ1400を作成してもよい。コントローラ101は、効率マップ生成部を備え、走行時にモータMの消費電力と、回転数とを取得して、上記の効率マップ1400を生成する。
【0084】
このほか、あらかじめ取得した効率マップ1400を更新する構成とすることもできる。この際、
・モータMに流れる電流Iからトルク値を検出
・レゾルバ等の回転位置センサにより車輪の回転速度を検出
・第2バッテリ212aとインバータ203a間に設けた電流センサおよび電圧センサにより電流と電圧を検出し、電力を算出
コントローラ101は、上記の検出および算出によって、車両100の走行時に、記憶部に格納した効率マップ1400を随時更新していくことができる。
【0085】
(トルク配分例)
つぎに、各車輪のモータMに対するトルク配分値の再配分例について説明する。
図14は、バッテリ残量が少なくなったときのトルクの再配分例を説明する図である。コントローラ101に対し、たとえば、アクセルペダル103の踏み込みにより、全トルク指令値が100[Nm]として入力された場合を例に説明する。
【0086】
図14中の(a)に示すように、仮に、コントローラ101のトルク制御部222が、トルク配分値として、左右の前輪を20[Nm]、左右の後輪を30[Nm]にトルク配分としたとする。
【0087】
ここで、
図14の(b)に示すように、左前輪FLのモータユニットM2に設けられた第2バッテリ212(212bに相当)のバッテリ残量が少なくなり、左前輪FLのモータMで16[Nm]しか出力できなくなったとする。これに対応して単に左前輪FLだけのトルクを下げてしまうと、左右の前輪の駆動力がアンバランスになり、車両100の進行の向きが変わるという影響が生じる。
【0088】
このため、コントローラ101のトルク制御部222は、
図14(c)に示すように、トルクの再配分を行う。すなわち、左右の前輪に対し、同じトルク16[Nm]となるようトルク配分する。また、前輪のトルクを20[Nm]から16[Nm」]に変更した割合(4/5)に対応して左右の後輪についても、同じ割合にするため、30[Nm]から24[Nm]にトルクを変更する。この場合、全トルク値は、100[Nm]から80[Nm]に変更されることになる。
【0089】
上記説明では、第2バッテリ212の残量が少なくなることに基づくトルクの再配分について説明したが、バッテリ212が満充電に近い場合に、車両100の制動時(ブレーキ時)についても、同様に行う。ただし、この場合、制動力としてモータMの回生ブレーキだけでは足りなくなるため、この不足分の制動力は機械式ブレーキを併用する必要がある。
【0090】
(協調ブレーキについて)
協調ブレーキとは、モータMによる回生ブレーキと、油圧制御による機械式ブレーキとを組み合わせて、必要な制動力を生成するブレーキである。回生ブレーキと機械式ブレーキの組み合わせについては、各種方法がある。
【0091】
たとえば、常に、回生ブレーキと機械式ブレーキとを所定の比率でいずれも使用する方法、所定の制動量までは回生ブレーキを使用し、所定の制動量以上となると機械式ブレーキを加えて用いる方法、所定の制動量までは機械式ブレーキを使用し、所定の制動量以上となると回生ブレーキを加えて用いる方法、等がある。
【0092】
図15−1は、実施の形態で用いる協調ブレーキの制御特性を示す図である。横軸は速度、縦軸は制動トルクである。モータMは、速度が低いとき回転数が小さい。したがって、図示のように、このような速度が低いときには逆起電力も小さくなるため、大きな回生ブレーキを得ることができない。
【0093】
したがって、実施の形態のコントローラ101では、モータMの回生ブレーキだけではなく、回生ブレーキでは得られない不足分の制動トルクを機械式ブレーキにより得る協調ブレーキ制御を行うようにしている。図示の例では、機械式ブレーキの制動トルクは、回生ブレーキと逆の特性を有し、速度が低いほど大きく、速度が高くなるにつれて減少させている。これにより、ブレーキペダル104の踏み込み量に対応した制動トルク値を、回生ブレーキと機械式ブレーキ双方の制動力により得る。
【0094】
また、第2バッテリ212の現在値が満充電に近くなって大きな回生ブレーキをかけることができない場合、コントローラ101は、低速時と同じように、回生ブレーキの制動トルクの割合を小さくし、機械式ブレーキによる制動トルクの割合を大きくして、必要な制動トルクを得るよう協調ブレーキ制御を行う。
【0095】
図15−2は、実施の形態で用いる協調ブレーキの他の制御特性を示す図である。図示の例では、回生ブレーキによって発生する電力が充電できなくなった時点で、次第に回生ブレーキによる制動トルクの割合を小さくし、逆に機械式ブレーキによる割合を大きくさせている。
【0096】
以上説明したように、制動トルクをモータMによる回生ブレーキだけではなく、機械式ブレーキを併用する協調ブレーキ制御により、広範囲な速度に渡り必要な制動トルクを発生させることができ、車両100の走行を安全に行うことができるようになる。そして、第2バッテリ212の充電容量の変化により、第2バッテリ212に充電できないような状態が生じたときであっても、必要な制動トルクを得ることができるようになる。
【0097】
(電力伝送の他の制御手順)
図16は、バッテリ間の他の電力伝送の概要を示す図である。この例では、第2バッテリ212aのバッテリ量についての各項目に二つの項目を加えている。これらは、無線放電実施判断値BJ+(プラス)と、無線充電実施判断値BJ−(マイナス)である。
【0098】
無線放電実施判断値BJ+は、第2バッテリ212aの目標残量値BSと充電上限値BUとの間に設定する。また、無線充電実施判断値BJ−は、目標残量値BSと充電下限値BLとの間に設定する。
【0099】
図17は、無線による電力伝送の制御手順の他の例を示すフローチャートである。はじめに、コントローラ101は、第2バッテリ212aの各値を検出する(ステップS1701)。
図16に示したように、第2バッテリ212aの目標残量はBSとし、現在値(残量)はB1とし、現在の電圧はV1とする。また、モータユニットMに対する無線の電源ラインL1の最大電流をAmaxとする。この最大電流Amaxは、電源ラインL1上に設けられる無線伝送にかかる電力伝送アンテナ122a,123aのコイルや、ドライバIC等によって許容値(電流許容値)が異なる。また、上限側の無線放電実施判断値BJ+と、下限側の無線充電実施判断値BJ−とを用いる。
【0100】
つぎに、第2バッテリ212aの現在値B1が下限側の無線充電実施判断値BJ−未満であるか判断する(ステップS1702)。第2バッテリ212aの現在値B1が下限側の無線充電実施判断値BJ−未満であれば(ステップS1702:Yes)、下限側の無線充電実施判断値BJ−から現在値B1を引いた値を伝送したい電力Dとする(ステップS1703)。
【0101】
一方、第2バッテリ212aの現在値B1が下限側の無線充電実施判断値BJ−を超えていれば(ステップS1702:No)、第2バッテリ212aの現在値B1が上限側の無線放電実施判断値BJ+を超えているか判断する(ステップS1704)。第2バッテリ212aの現在値B1が上限側の無線放電実施判断値BJ+を超えていれば(ステップS1704:Yes)、上限側の無線放電実施判断値BJ+から現在値B1を引いた値を伝送したい電力Dとする(ステップS1705)。第2バッテリ212aの現在値B1が上限側の無線放電実施判断値BJ+未満であれば(ステップS1704:No)、処理を終了する。
【0102】
上記の処理により、第2バッテリ212aの現在値が、上限側の無線放電実施判断値よりも大きい場合、あるいは下限の無線充電実施判断値よりも小さい場合は、現在値との差分のみの電力を無線により電力伝送させるようにする。
【0103】
上記ステップS1703,ステップS1705の処理後、電力伝送可能な上限値Cmaxを下記式により算出する(ステップS1706)。
電力伝送可能な上限値Cmax=無線により電力伝送できる最大電流Amax×現在の電圧V1
【0104】
上記の伝送したい電力Dとは、電源ラインL1上の第1バッテリ111と第2バッテリ212aとの間で電力伝送したい電力である。たとえば、力行時には、割り当てられたトルク配分値に対応して、第1バッテリ111から第2バッテリ212aへの正方向に向けてモータMを駆動するために必要な電力である。回生時には、回線電力を第1バッテリ111に伝送しようとする電力に相当する。
【0105】
つぎに、電力伝送の電力値を決定する(ステップS1707)。電力伝送の電力値は、伝送したい電力Dの絶対値|D|と、電力伝送可能な上限値Cmaxとのうち、小さい方の電力値を用いて行う。このため、伝送したい電力Dの絶対値が電力伝送可能な上限値Cmaxを超えていれば(ステップS1707:Yes)、伝送したい電力Dが正の場合、電力伝送可能な上限値Cmaxを伝送する電力Dとして決定する。また、伝送したい電力Dが負の場合、電力伝送可能な上限値−Cmaxを伝送する電力Dとして決定する(ステップS1708)。
【0106】
一方、ステップS1707において、伝送したい電力Dの絶対値が電力伝送可能な上限値Cmaxを超えていなければ(ステップS1707:No)、ステップS1708の処理を行わず、伝送したい電力Dをそのまま用い、ステップS1709に移行する。
【0107】
そして、ステップS1709では、差分容量Dを第1バッテリ111から第2バッテリ212aに無線により電力伝送する。Dの値が負の場合には、第2バッテリ212aから第1バッテリ111に無線により電力伝送する(ステップS1709)。
【0108】
上記の電力伝送の制御処理によれば、無線による電力損失が無視できない場合、現在値が無線充電実行判断値を超えたときのみ、非接触充電による電力伝送を実施している。これにより、無線による電力伝送量は、現在値が無線充電実施判断値あるいは無線放電実施判断値に近づくようにする。これにより、充電上限値と充電下限値に近づきにくくできるため、過充電や過放電を防止するための力行トルクや回生トルク制限の必要性が少なくなる。
【0109】
(車輪および電力伝送アンテナの構造例)
図18−1,
図18−2は、それぞれ車輪および電力伝送アンテナの構造例を示す図である。
図18−1は、電力伝送アンテナを地面に対し垂直に設けた構造例である。車両100の車輪1800は、ホイール1801にタイヤ1802が装着されてなる。ホイール1801内部には、モータ(インナーモータ)Mが設けられる。
【0110】
ホイール1801と、車両100との間には、サスペンション1803が上下に設けられ、路面の凹凸による車輪1800(タイヤ1802)の上下ストロークをサスペンション1803が吸収する。
【0111】
そして、車輪1800側には、上述したインバータ203と、第2バッテリ212と、電力伝送アンテナ123と、受信回路(AC−DC変換部201,双方向チョッパ202を含む)1810が設けられる。車両100側には、電力伝送アンテナ123と対向するように電力伝送アンテナ122と送信回路(DC−AC変換部121を含む)1811が設けられる。これら一対の電力伝送アンテナ122,123の面は、地面に対し垂直に設けられている。
【0112】
上記構成において、路面の凹凸による車輪1800の上下ストロークが大きいと、一対の電力伝送アンテナ122,123の中心がずれ、無線による電力伝送の効率が低下する。このため、車輪1800の上下ストローク量を検出し、後述するように、車輪1800の上下ストローク量に応じて電力伝送アンテナ122を上下方向に移動させ、中心のずれをなくす。
【0113】
図18−2は、電力伝送アンテナを地面に対し水平に設けた構造例である。図示の例では、車輪1800の上部位置に地面に対し水平に一対の電力伝送アンテナ122,123を設けている。この図に示す例では、車輪1800が上下にストローク動作しても、一対の電力伝送アンテナ122,123間は、中心のずれは生じないが、電力伝送アンテナ122, 123間の距離が変化するため、無線による電力伝送効率が変化する。
【0114】
このため、この実施の形態では、車輪1800の上下ストローク量に対応して一対の電力伝送アンテナ122,123のうち一方(たとえば、車両100側の電力伝送アンテナ122)を同方向(上下)に移動させることにより、伝送効率がよい状態を保ち電力伝送を行うようにする。
【0115】
図19−1,
図19−2は、それぞれ電力伝送アンテナの移動構造例を示す図である。
図19−1は、
図18−1に示した電力伝送アンテナを地面に対し垂直に設けた構造例において、電力伝送アンテナ122を上下方向に移動自在にする構造を示している。この図に示すように、電力伝送アンテナ122は、アクチュエータ(あるいはサーボモータやステッピングモータ等のモータ)1901により上下移動可能である。また、一対の電力伝送アンテナ122,123には、相互のずれの位置を検出するための位置検出器1902が設けられている。
【0116】
位置検出器1902は、たとえば、車輪1800側にLEDやレーザ等の発光部1902aを設け、車両100側に発光部1902aの光を受光する受光部1902bを設けて構成する。これにより、一対の電力伝送アンテナ122, 123の相互のずれの状態を検出できる。あるいは、距離センサを設けて地面までの距離を測定し、一対の電力伝送アンテナ122,123の相互のずれの状態を検出する構成とする。
【0117】
図19−2は、
図18−2に示した電力伝送アンテナを地面に対し水平に設けた構造例において、電力伝送アンテナ122を上下方向に移動自在にする構造を示している。この構造例では、電力伝送アンテナ122は、アクチュエータ1901により上下移動可能とする。また、一対の電力伝送アンテナ122,123には、相互のずれの位置を検出するための位置検出器1902を設ける。
【0118】
位置検出器1902は、たとえば、距離センサを用いて一対の電力伝送アンテナ122, 123間の上下方向のずれを検出する構成とする。
【0119】
(アンテナ位置制御の構成例−その1)
図20は、位置検出器を用いた場合のアンテナ位置制御の構成を示すブロック図である。このアンテナ位置制御にかかる構成は、コントローラ101の残量制御部221の一機能として設けられる。そして、この構成例1では、位置検出器1902として距離センサを用い、この距離センサを車両100側に配置し、車輪1800側の電力伝送アンテナ123との間の距離を測定する。
【0120】
アンテナ位置制御部2001は、平地での停止時等、当初(たとえば基準の上下ストローク位置)に対応した位置指令に対し、車両100の走行時における路面の凹凸に起因する偏差が位置検出器(距離センサ)1902から入力される。制御演算部2002は、この偏差分を検出し、駆動回路2003を介してアクチュエータ(あるいはサーボモータ等)1901を動作させる。この際、アクチュエータ1901の動作方向は、一対の電力伝送アンテナ122,123の中心のずれを解消する方向であり、たとえば、車輪1800が上方向にストローク動作したときには、アクチュエータ1901を同じ上方向に移動させる。
【0121】
この結果、位置検出器1902では、偏差(中心のずれ)を少なくできたことを検出できるようになり、常に偏差が0となった位置でアクチュエータ1901を保持させることができるようになる。このように、フィードバックループにより、常に、一対の電力伝送アンテナ122,123を同じ中心位置となるよう制御することができ、電力の伝送効率を常に良好な状態に保つことができるようになる。
【0122】
図21は、
図20に示したアンテナ位置制御部の回路構成を示すブロック図である。
図20に示したアンテナ位置制御部2001の制御演算部2002は、コントローラ101の一機能を用いることができる。位置検出器(距離センサ)1902の出力をコントローラ(CPU)101で取り込み、アクチュエータ1901近傍に設けた駆動回路2003により駆動信号を生成して、アクチュエータ(M)1901を駆動し、電力伝送アンテナ122を移動させる。
【0123】
(アンテナ位置制御の構成例−その2)
図22は、位置検出器を用いた場合のアンテナ位置制御の他の構成を示すブロック図である。この構成例2では、人員の乗車時の重量変化等のタイミングで車両100に対する車輪1800の上下ストローク量を検出し、一対の電力伝送アンテナ122,123の上下位置を制御する構成である。
【0124】
アンテナ位置制御部2201は、車両100に対する人員の乗車のタイミングで、位置検出器(距離センサ)1902の出力により車両100に対する一対の電力伝送アンテナ122,123の偏差が検出される。制御演算部2202は、平地での停止時等、当初(たとえば基準の上下ストローク位置)に対応した位置指令に対し、位置検出器1902から入力される偏差分を検出し、駆動回路2203を介してアクチュエータ(あるいはステッピングモータ等)1901を動作させる。
【0125】
この際、駆動回路2203は、偏差に対応してこの偏差を解消する方向にアクチュエータ1901を介して電力伝送アンテナ122を移動させ、一対の電力伝送アンテナ122,123による電力の伝送効率を常に良好な状態に保つことができるようになる。上記の制御演算部2202は、コントローラ101の一機能で構成することができる。
【0126】
図23は、
図22に示すアンテナ位置制御部が行うアンテナ位置の制御内容を示すフローチャートである。この
図23に示す処理は、
図19−1に示した一対の電力伝送アンテナ122,123が地面に対して垂直に配置された構成に対して適用され、制御演算部2202が設けられるコントローラ101が実行する制御内容であり、車両100に対する人員の乗車時のタイミングで実行される。これに限らず、所定の間隔で継続的に実行してもよい。
【0127】
はじめに、制御演算部2202は、距離センサ1902により、電力伝送アンテナ122と地面間の距離を検出する(ステップS2301)。つぎに、あらかじめ設定してある基準となる電力伝送アンテナ122と地面間の距離と、ステップS2301で検出された距離との位置ずれ量を算出する(ステップS2302)。
【0128】
そして、制御演算部2202は、この位置ずれ量から電力伝送アンテナ122を移動させる制御量を演算する(ステップS2303)。一対の電力伝送アンテナ122,123は、
図19−1に示したように、地面に対して垂直に配置されており、ステップS2302で検出された位置ずれ量は、一方の電力伝送アンテナ123の中心に対して他方の電力伝送アンテナ122が上記の上下ストローク量を有して位置ずれした状態である。
【0129】
したがって、制御演算部2202は、駆動回路2203を介してアクチュエータ1901に対し、この位置ずれ量相当だけ電力伝送アンテナ122を上下に移動させる駆動信号を出力し、位置ずれを解消させる(ステップS2304)。たとえば、車両100に対して車輪1800が上方向に移動したときには、電力伝送アンテナ122に対し電力伝送アンテナ123が上方向に位置ずれするため、この際には、アクチュエータ1901により電力伝送アンテナ122を上方向に位置ずれ量分だけ移動させる。
【0130】
図24は、
図22に示すアンテナ位置制御部が行うアンテナ位置の他の制御内容を示すフローチャートである。
図24に示す処理は、
図19−2に示した一対の電力伝送アンテナ122,123が地面に対して水平に配置された構成に対して適用され、制御演算部2202が設けられるコントローラ101が実行する制御内容である。
【0131】
はじめに、制御演算部2202は、距離センサ1902により、一対の電力伝送アンテナ122,123間の距離を検出する(ステップS2401)。つぎに、あらかじめ設定してある基準となる一対の電力伝送アンテナ122,123間の距離と、ステップS2401で検出された距離との位置ずれ量を算出する(ステップS2402)。
【0132】
そして、制御演算部2202は、この位置ずれ量から電力伝送アンテナ122を移動させる制御量を演算する(ステップS2403)。一対の電力伝送アンテナ122,123は、
図19−2に示したように、地面に対して水平に配置されており、ステップS2402で検出された位置ずれ量は、一方の電力伝送アンテナ123に対して他方の電力伝送アンテナ122が上記の上下ストローク量を有して距離が変化した状態である。
【0133】
したがって、制御演算部2202は、駆動回路2203を介してアクチュエータ1901に対し、この位置ずれ量(距離変化)相当だけ電力伝送アンテナ122を上下に移動させる駆動信号を出力し、位置ずれを解消させる(ステップS2404)。たとえば、車両100に対して車輪1800が下方向に移動したときには、電力伝送アンテナ122に対し電力伝送アンテナ123が離れるため、この際には、アクチュエータ1901により電力伝送アンテナ122を下方向に位置ずれ量(距離変化)分だけ移動させる。
【0134】
(アンテナ位置制御の構成例−その3)
図25は、位置検出器を用いた場合のアンテナ位置制御の他の構成を示すブロック図である。この構成例3では、位置検出器1902として光検出センサを用い、この光検出センサにより一対の電力伝送アンテナ122,123間の位置ずれを検出する。
【0135】
位置検出器である光検出センサ1902は、一対の電力伝送アンテナ122,123に発光部と受光部を配置してなり、発光部から発光された光を受光部(光検出部)1902bで検出する。位置演算部2504は、光検出部1902bの検出出力に基づき、一対の電力伝送アンテナ122,123間の相対的な位置ずれ量を検出する。
【0136】
そして、制御演算部2502には、平地での停止時等、当初(たとえば基準の上下ストローク位置)に対応した位置指令に対し、車両100の走行時における路面の凹凸に起因する偏差が位置演算部2504から入力される。制御演算部2502は、この偏差分を検出し、駆動回路2503を介してアクチュエータ(あるいはサーボモータ等)1901を動作させる。この際、アクチュエータ1901の動作方向は、一対の電力伝送アンテナ122,123の中心のずれを解消する方向であり、たとえば、車輪1800が上方向にストローク動作したときには、アクチュエータ1901を同じ上方向に移動させる。
【0137】
この結果、制御演算部2502では、偏差(中心のずれ)を少なくできたことを検出できるようになり、常に偏差が0となった位置でアクチュエータ1901を保持させることができるようになる。このように、フィードバックループにより、常に、一対の電力伝送アンテナ122,123を同じ中心位置となるよう制御することができ、電力の伝送効率を常に良好な状態に保つことができるようになる。
【0138】
図26は、
図25に示したアンテナ位置制御部の回路構成を示すブロック図である。
図25に示したアンテナ位置制御部2501の制御演算部2502、および位置演算部2504は、コントローラ101の一機能を用いることができる。位置検出器(光検出センサ)1902の出力をコントローラ(CPU)101で取り込み、アクチュエータ1901近傍に設けた駆動回路2503により駆動信号を生成して、アクチュエータ(M)1901を駆動し、電力伝送アンテナ122を移動させる。
【0139】
図27−1,
図27−2は、位置検出器として用いる光検出センサの構成例を示す図である。
図27−1に示すように、車両100側の電力伝送アンテナ122には、光を発光する発光部2701を設け、車輪1800側の電力伝送アンテナ123には、発光部2701の光を受光する受光部2702(光検出部1902b)を設ける。
【0140】
受光部2702は、電力伝送アンテナ123の上下ストローク方向に沿って複数設けられている。
図27−2に示すように、車両100に対する車輪1800の上下ストロークにより、電力伝送アンテナ122に対する電力伝送アンテナ123の中心位置がずれる。複数の受光部2702の検出出力は、
図25に示した位置演算部2504に出力され、位置演算部2504は、最も強い光強度で受光した受光部2702により、電力伝送アンテナ122の位置(ずれ量)を求めることができる。
【0141】
車両100にアクティブサスペンションシステムが搭載されている場合、路面の凹凸や車体の動きをセンサで検出し、コントローラ101が各車輪のダンパーを制御して車両100の路面変化の振動を吸収でき、コーナリングの安定性を得ることができるようになっている。上述した位置検出器は、アクティブサスペンションシステムに用いられているセンサを利用することもできる。
【0142】
以上説明した実施の形態によれば、車両と車輪にそれぞれバッテリを設け、車両と車輪の間を非接触な無線により電力伝送する構成とした。これにより、車両と車輪との間に大容量の電力伝送ケーブルを設ける必要がなく、ケーブルの損傷や交換を不要にできる。また、相互のバッテリ間での電力伝送は、車輪側の第2バッテリの容量が常に目標残量値に近づくよう制御する。これにより、常時モータに対して安定な電力を供給できるようになる。
【0143】
さらに、電力伝送を車両の走行状態にあわせて、力行時と回生時、および各モータに対するトルク配分、および制動トルクの変化に対応して制御するため、運転の安全性を確保できるとともに、電力伝送を効率的に行えるようになる。
【0144】
そして、車輪の上下ストロークを検出して、このストローク量に応じて電力伝送アンテナを移動させることにより、路面の凹凸等の影響を受けず一対の電力伝送アンテナの伝送効率がよい状態で電力伝送できるようになる。
【0145】
なお、本実施の形態で説明した方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。