(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
多数のツール及び使い捨て品が用いられる多くの環境があり、これらは、例えば、手術室、格納庫、ガレージ等を含む。
【0003】
手術室は、侵襲的な手術が患者に行われる施設である。典型的に、多数の人々が手術に参加し、これらは、主任外科医を含み、時には、外科医助手、麻酔医、手術室看護師及び外回り看護師を含む。参加する人員達は、行われる外科手術により異なる多数のツール(例えば、メス、鉗子、及びその他のツール)を使用する。また、多数の使い捨て品(例えば、血液及びその他の液体を吸収するために、又はその他の目的で用いられる様々な寸法のスポンジ)も用いられる。
【0004】
意図的でなく患者の身体内に残されるツール又は使い捨て品が全く無いことを確認するために、全てのツール及び使い捨て品を追跡することに集中的な取り組みがなされている。それゆえ、注意深いカウンティング(個数点検)が、手術前、手術中、及び手術後に実行されており、これは、ごみ箱に投げ入れられた使用済の使い捨て品を数え上げることも含む。
【0005】
個数点検は煩雑な作業であり、集中的なリソース(精神集中、人員の時間及び手術室の休止時間を含む)を必要とする。また、ツール及び使い捨て品を手術の終了に向って個数点検することにより、患者の身体が切開されている状態の時間も長くなり、関連する危険性も増大する。
【0006】
さらに、個数点検は、間違いが常に生じないことはなく、ツール又は使い捨て品が最後に患者の身体内に残される場合が非常に多く、これは深刻な損傷を生じ、死に至らしめる場合もある。
【0007】
別の問題は、ツールの寿命に関する。例えば、手術中に使用されたツールは、さらなる使用の前に消毒又は滅菌されなければならない。その他の制約は、ツールに必要なメンテナンス作業に関する。例えば、刃は、刃を使用する手術が所定回数行われた後には必ず研がれなければならないであろう。別の例としては、近接する疾患を有する患者に行われる手術にて使用されたツールは、さらなる使用の前に追加の滅菌が必要となる場合がある、などである。ツールの各々が適切に使用及び維持されることを確認することは、費用もかかり、リソース(記録管理及び追跡、手作業などを含む)も必要とする。現時点では、例えば破損器具が手術室に戻されるような事態を回避するための、コンピュータ化された正式なツール追跡手順はない。また、器具ツールの問題又は状態に関して手術室の人員が中央滅菌供給ユニット(Central Sterilizing Supply Unit(CSSU))の人員と通信する正式な手順もなく、これが、患者に対して致命的な結果を生じることがある。
【0008】
これらと類似のことが、別の環境、例えば、格納庫、ガレージ等においても考慮される。これらの環境において、例えば、エンジン内にツールも使い捨て品も全く残されていないことを、エンジンの適切な機能の宣言が可能であることを示す前に確認することが必要であり、また、ツールには定期的なメンテナンスが必要であろう。
【0009】
現在の技術は、ツールの識別に関する技術的問題に対する答えを提示しない。これらの問題は、識別されるべきツールと識別装置との間に接触がない場合の不十分なカバレッジ(適用範囲)及び識別、並びに、金属的環境又は集中的な放射線環境(例えば手術室)により生じる問題などを含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の開示は、複数のツール又は使い捨て品が識別又は掌握(rack)されなければならない環境に関する。例示的な実施形態の詳細な説明は、手術室の環境に関するものであるが、制約事項、及び、提示される実施詳細は、他の環境、例えばガレージ、格納庫などにも類似である。
【0019】
本開示は、全てのツール及び使い捨て品に無線周波数識別子(Radio Frequency Identifier)(RFID)タグを備え付けること、及び、ツール及び使い捨て品のための全ての可能な場所に、アンテナを、ツール及び使い捨て品を識別するために備え付けることに関する。識別された物品(アイテム)は、コンピュータ化されたアプリケーションにより連続的に監視される。
【0020】
既存のRFIDシステムは、これらのシステムを手術室の環境に対して不適切にする多くの問題を有する。第1に、手術室は、手術室内のツール、備え付け品及びその他の物品の多くが金属からつくられているため、非常に金属的な環境である。この金属的環境が、タグの共振周波数をシフトさせ、それにより、適切な識別を排除する場合がある。別の問題は、手術室内の多数の電磁放射線源(モニタ、センサ、ペースメーカ、及びその他の機器を含む)により生じる。
【0021】
さらに別の問題は、タグとアンテナとの間で必要とされる接触に関する。手術室は複雑な環境であり、追加の要求条件(例えば、ツールを所定の方向又は位置に配置する)を強要できない。従って、ツールとアンテナとの間の接触が保証されることができず、これもまた識別を妨害する。
【0022】
これらの問題は、ツール及び使い捨て品が配置されている全ての場所を、金属的環境により影響を受けないアンテナ(そして、尚且つ、アンテナから数センチメートルまで離して、且つ様々な角度で配置されたタグも識別するように十分に感度が高いアンテナ)に変えることにより解決される。
図1は、前記場所がアンテナとして機能している手術室の概略図である。以下に、様々な場所及びアンテナの詳細を、
図3,
図4、
図5及び
図6に関して提示する。
図7A,
図7B及び
図7Cは、タグをツールに取り付けるための詳細を示す。
【0023】
ここで、
図1を参照する。
図1は、識別及び追跡のシステム及び方法が必要とされる手術室の概略図を示す。
【0024】
典型的な手術室は、手術を受ける患者110が横たわる手術台104を含む。外科医108が患者110の傍らに立ち、患者に手術を施す。外科医108は、器具台112からツールを取る手術室看護師から、必要に応じてツールを受け取る。ツールは、ツールに触らずにツールの包装を解くだけの外回り看護師により器具台112上に配置される場合がある。
【0025】
外科医108又は別のチーム人員が、ツールを、患者110より上又は患者110の付近に配置された移動可能なトレイ116(しばしばメーヨと称される)上に配置することができる。手術室の各々が、手術の複雑性、外科医及びその他のチーム人員の人数、個人的選択などの因子に応じて、典型的には1以上の器具台及び1以上のメーヨを有する。
【0026】
チーム人員は、清潔なスポンジを、1以上の清潔なスポンジ箱又はスポンジディスペンサ120から取り出し、使用済みのスポンジを、1以上のゴミバケツ124に投げ込む。
【0027】
こうして、手術終了時には、手術前に手術室にあった全てのツール及び使い捨て品が、器具台112の上、メーヨ116の上、清潔なスポンジ箱120内、又はゴミバケツ124内(これらを集合的に「ユーティリティ」(“utilities”)と称す)にあるべきである。
【0028】
手術開始前に、チームに利用可能な全てのツール及び使い捨て品が登録される。手作業によるカウンティング(個数点検)の全てを省くために、RFIDタグが、いずれのツール及び使い捨て品にも取り付けられる。登録は、識別(例えば、使い捨てでないツールのための)を含むことができ、或いは、各タイプの物品の個数(例えば、特別なタイプのスポンジの個数)を示すだけでもよい。ツール及び使い捨て品がその上又はその内部に配置される全てのユーティリティに、ユーティリティの上又は内部に配置されたツール及び使い捨て品が連続的に追跡されるように、且つ、識別され得るように、アンテナが備え付けられる。こうして、手術終了時、又はその他の任意の時点で、登録されたツール及び使い捨て品が、追跡されたツール及び使い捨て品と比較されて、行方不明の物品が特定される。
【0029】
手術室にはワンド128も備えられる。ワンド128もアンテナであり、患者110の身体内の物品を、患者110の付近でワンドを振ることにより識別及び追跡するために用いられる。また、ワンド128は、最初の登録の後に(例えば、追加のスポンジのパック又は追加のツールが必要な場合に)追加のツール又は使い捨て品をシステムに導入するために用いられることもできる。
【0030】
ここで、
図2を参照する。
図2は、複数の物品を識別するために用いられるRFID識別システムを示す。RFIDシステムは、1以上の物品を識別することを目的としている。識別されるべき物品、例えば、物品11(200)、物品12(204)、物品21(210)、又は物品22(214)の各々に、固有の識別子を有するタグが取り付けられる。タグは、任意的に、RFIDタグである。
図2において、物品11(200)はタグ11(202)を有し、物品12(204)はタグ12(206)を有し、物品21(210)はタグ21(212)を有し、物品22(214)はタグ22(216)を有する。タグの各々が、読み出し可能であり、任意的に書き込み可能である。本開示に関し、固有の識別子を有するように(例えば、識別子をタグ上に焼付けることにより)製造された、ライトワンス型の(write−once)タグが用いられる。
【0031】
タグの各々が、1以上のアンテナ、例えば、アンテナ1(220)又はアンテナ2(224)から信号を受信して、タグの固有の識別子を有する信号を送信する。アンテナは、その信号からエネルギーを引き出してタグにエネルギーを与えるために、及び、タグとリーダとを通信させるために用いられる。アンテナの幾何学的形状は、システムの動作にとって重要である。本開示に関し、アンテナは、器具台上に、メーヨの上部に、ごみ箱の中に、清潔なスポンジ箱内に、及び、ワンド内に配置される。
【0032】
タグは、アクティブ又はパッシブであってよく、アクティブタグは独自の電源を含む。パッシブタグは、リーダから放出される電力を、エネルギー源としてのアンテナを介して用いる。本開示に関し、物品の寸法、品質、及び、物品の幾つかが使い捨てであることにより、パッシブタグが好ましい。
【0033】
各アンテナにより発信される信号は複数のタグにより受信されることができ、各タグにより発信される信号は複数のアンテナにより受信されることができる。
【0034】
全てのアンテナにより受信された信号は、マルチプレクサ228に転送され、マルチプレクサ228は、これらの信号を多重化し、この多重化信号をリーダ232に転送する。リーダ232は、受信したこれらの信号の固有の識別子を識別し、データをコンピューティングプラットフォーム236に、インタフェース(例えば、RS232)を介して転送する。本開示に関し、様々なリーダが用いられ得る。これらは、例えば、英国、キネティクス・オブ・ジャージー社(Kenetics of Jersey, Great Britain)(www.kenetics−group.com)による、HF−LR、HF−LRMG1、又は、EzMUX−HFであるが、これらのリーダに限定されない。マルチプレクサは、特には、同時にサポートできるアンテナの個数により選択されることができる。
【0035】
コンピューティングプラットフォーム236は、パーソナルコンピュータ、メインフレームコンピュータ、或いは、メモリデバイス(図示せず)、CPU又はマイクロプロセッサデバイス、及び、幾つかのI/Oポート(図示せず)が設けられた、その他の任意のタイプのコンピューティングプラットフォームであってよい。コンピューティングプラットフォーム236は、1以上のアプリケーション240を実行する。アプリケーション240は、任意のプログラミング言語にて、及び、任意の開発環境下でプログラミングされた、相互に関連したコンピュータ命令のセットである。アプリケーション240のいずれもが、記憶装置(ストレージデバイス)244にデータを記憶し、且つ、記憶装置244からデータを読み出すことができる。記憶装置244は、大容量記憶装置(例えば、CD、DVD又はレーザディスクなどの光学記憶装置)、磁気記憶装置(例えば、テープ又はハードディスク)、半導体記憶装置(例えば、フラッシュデバイス、メモリスティック)等である。アプリケーション240のいずれもが、例えば、手術室で利用可能な全てのタグのリストを手術前に保持することができ、また、最終報告以来報告されていない全ての物品に関する報告を周期的に提示することができる。
【0036】
コンピューティングプラットフォーム236は、1以上のアプリケーション240と共に、特定のプロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ(DSP)又はマイクロコントローラ)に接続されるファームウェアとして実現されることができ、或いは、ハードウェア又はコンフィギュラブルハードウェア(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)若しくは、特定用途向け集積回路(ASIC))として実現されることができる。
【0037】
複数のアプリケーションが、タグを有するツール及び使い捨て品を、追跡、識別、及び維持するために用いられることができる。複数のアプリケーションが、同一の、若しくは異なるデータベース、又は、その他の記憶された関連する情報(例えば、タグが最後に識別されたのはいつか、どのアンテナによりタグが識別されたかなど)にアクセスすることができる。
【0038】
こうして、アプリケーションは、以下のオプションの任意の1以上を提供することができる。すなわち、手術開始時に利用可能なツールのコレクションを作成すること;ツールをコレクションに追加すること;ツール(例えば、手術室から持ち出されたツール)をコレクションから除外すること;以前の所定期間中に識別されていない全てのツールに関する報告をコレクションから受けること;行方不明のツールをユーザに「OK」と表示させること;手術室の人員と中央滅菌供給ユニット(Central Sterilizing Supply Unit)の人員とが、器具の状態、問題、及びメンテナンスに関して通信することを可能にすること;特別なメンテナンスを必要とする、手術中に用いられた全てのツール関して後に報告すること、などである。
【0039】
その他の複数のアプリケーション及びオプションが、特定の環境における特定の動作、手順、及び要求条件を補助するように与えられることができることが理解されよう。
【0040】
手術室に関し、タグにより発信される信号は、このような環境に適応した所定の周波数の信号でなければならない。幾つかの環境において、この周波数は13.56MHzである。この周波数は、液体媒体、金属的環境にて良好な性能を呈し、且つ、電磁ノイズに対して比較的耐性がある。
【0041】
ここで、
図3を参照する。
図3は、フラット(平面アンテナ)の分解図を示す。この平面アンテナは、器具台の台面上に、又は、メーヨの台面上に、ツール及び使い捨て品が平面アンテナ上に配置されるように配置される。平面アンテナは、平面アンテナ上に配置されたRFIDタグ担持(tag−carrying)ツールを識別することを要求されている。
【0042】
平面アンテナは、一般に、非導電性のケースからつくられ、このケースは、物理的アンテナを形成する、部分的に重なり合う複数のフラットワイヤループを含む。安定した周波数の信号をアンテナが発信するように、金属的環境(例えば手術室)が平面アンテナに与える影響を排除し、且つ、アンテナのための既知の安定した金属的環境を形成することが要求される。それゆえ、平面アンテナは金属層を含み、この金属層は、ワイヤループ下に(すなわち、ワイヤループと、ワイヤループ下の、アンテナが配置される面との間に)配置されている。こうして、その他の金属性物体、例えば、器具台又はメーヨの台面は、予期しない影響を生じず、また、アンテナの周波数に影響を与えない。しかし、金属面は、アンテナにより放出されるエネルギーの少なくとも一部を吸収してカバレッジ(適用範囲)を低減する場合がある。それゆえ、ワイヤループと金属層との間に空間が形成される。
【0043】
図3に示されている平面アンテナの一実施例は、以下に詳細に示す層状に配置された部品を含む。
【0044】
平面アンテナの寸法は、平面アンテナが配置される面(例えば器具台)の寸法に応じて変えられ得る。典型的には、アンテナの幅及び奥行きは、約10cm〜150cmの間で変化する。
【0045】
平面アンテナは、アンテナをその上部から底部まで取り囲む上蓋304及び底蓋306を含む。上蓋304及び底蓋306は、非導電性の材料、例えば、プラスチック、木、合板等からつくられる。
【0046】
上蓋304の下に、上蓋304をアンテナループ312から一定の距離に保つための複数のスペーサ308が存在する。この距離は、ループ312を冗長圧力から遠ざけておき、且つ、ループの冷却を可能にするために必要である。スペーサ308も非導電性材料からつくられ、また、寸法及び密度が変えられることができる。スペーサの各々は、好ましくは、直角プリズムである。
図3に示されている実施形態において、24個のスペーサが存在し、これらのスペーサの高さは約0.5cm〜3cmであり、幅及び長さは数ミリメートル〜数センチメートルである。
【0047】
スペーサ308の下に複数のアンテナループ312がある。アンテナループ312の各々が、導電性材料(例えば銅ストリップ)からつくられたループであり、約1mm〜約20mmの幅、及び、約0.1mm〜1cmの厚さを有する。しかし、複数のアンテナが互いに近接し又は重なり合って配置される場合、各アンテナの金属の、その他のアンテナの共振振動数に与える相互影響による較正の損失に関する問題が生じる。この問題は、ループの特定の重なり配置により解決する。この配置とは、幅が約3cm〜約30cmの範囲のループに関して、ループが1つの次元にて完全に重なり合い、他方の次元にて約20%重なり合う配置である。従って、隣り合う2つのいずれのループが約20%重なり合っても、これらのループの周波数は互いに影響を与えない。ループの幅は、約1cm〜約30cmの範囲で変えられ得る。ループの奥行きは平面アンテナの奥行きとほぼ等しい。ループの各々に、要求されるアンテナの共振周波数(例えば13.56MHzの周波数)を発生するように機能するコンデンサ316が配置されている。幾つかの実施形態において、単一のコンデンサ316の代わりに、周波数の微調整を可能にする一対の固定コンデンサと可変コンデンサとを用いることができる。例えば、固定コンデンサは50pF〜500pFの静電容量を有することができ、可変コンデンサは、3pF〜20pFの静電容量を有することができる。
【0048】
コンデンサ316の出力はシステムのマルチプレクサに送信される。
【0049】
マルチプレクサは、平面アンテナの面を、時分割式に作動させる(すなわち、任意の所与の時点で、最大でも1つのアンテナループが信号を発信する)。信号を発信するループは、所定の時間(例えば、10ミリ秒間〜1000ミリ秒間)ごとに変わる(交代する)。特定のループが信号を発信すると、その特定のループが再び信号を発信する前に、その他の全てのアンテナが信号を発信する。信号を発信するループは、好ましくは、固定ループにて交代する。
【0050】
時分割式の信号発信は、平面アンテナのカバレッジを増大し、より多くのツールが識別されることを保証する。これは、以下の理由による。すなわち、所定量のエネルギーを絶え間なく提供する単一のループにより面全体が取り囲まれる場合、より小さいループにより取り囲まれる場合と比較して、平均的に、より多くの金属ツールがこの単一のループにより取り囲まれることになる。従って、エネルギーのかなりの部分がこれらのツールにより吸収されることになり、ツールの幾つかは識別されないであろう。同量のエネルギーが、より少数のツールを取り囲む、より小さいループにより放出される場合、ツールにより吸収されるエネルギーが、より少量になり、より多くのツール及び使い捨て品が識別される。全てのツールを連続的に識別することは要求されない。従って、信号を発信するループが交代する速度が約0.125回〜約1000回/秒であり、且つ、平面アンテナが8つの板を含む場合、全てのツールが、少なくとも毎秒識別され、これは、全ての実際の目的に十分である。信号を発信する板が交代する速度、及び板の枚数は、識別されるべきツールの最小数又は最大数に関する実際の要求条件、及び、各ツールが最低でもどの程度頻繁に識別されるべきかにより導き出されることが理解されよう。
【0051】
エネルギーが、面全体ではなく面のより小さい部分に放出されることにより、タグが面に接触せずに面よりも数センチメートル上にあるツール、又は、タグが面に平行でなく面と共に非ゼロ角度を形成するツールもまた識別されることも保証される。要求されるエネルギーレベルは、ループの寸法、及び、要求されるカバレッジ性能(すなわち、識別されなくてはならないツールの高さ及び角度がどのくらいであるか)から導き出される。
【0052】
アンテナループ312の下に、アンテナループ312を絶縁体層(例えばFR4ボード324)に取り付けるためのオプショナルの絶縁体パッチ320が設けられる。FR4ボードは、例えばプリント回路基板(PCB)に用いられる板である。板324は、実質的に、アンテナと同じ幅及び奥行きを有する。
【0053】
板324の下に、アンテナループ312と金属層322との間に空間を形成するように設計された、スペーサからつくられたスペーシング層328が配置される。平面アンテナの重量を不必要に増大させないために、スペーサ324は中実層を形成せずともよく、アンテナループ312が金属層322から一定距離に保持されるように配置され得る。スペーサ328は、任意の要求される配列で、例えば十字形状に配置されることができる。スペーサ328は、任意の絶縁材料(例えば木、発泡スチロール等)からつくられることができる。
【0054】
スペーサ328の下に導電性の板332が配置される。導電板332は、板324と類似のFR4ボードから形成されることができ、次いで、その上面及び底面が、導電層(例えば、1/1oz(約28g)の銅シート)により被覆又はコーティングされる。
【0055】
導電板332の下に、ケーブル装置336が配置される。ケーブル装置336は電源(図示せず)に接続されて、電力をアンテナループ312に供給する。
【0056】
開示されている平面アンテナ構造は、可変寸法のアンテナの構造に柔軟性をもたらすことができる。アンテナループの個数を、要求される平面アンテナ寸法に従って増大又は低減し、且つ、板寸法を変更することにより、任意の寸法のアンテナを、大規模な試験及び較正を行わずにつくることができる。
【0057】
開示された平面アンテナが、非水平位置にても用いられ得ることが理解されよう。例えば、平面アンテナは、器具戸棚の後壁として、戸棚内に吊り下げられたツールを識別するために用いられることができる。ツールは、非導電性の手段(例えば、非導電性の釘又は非導電性の棚)を用いて導入されるべきである。
【0058】
ここで、
図4を参照する。
図4は、ツール及び使い捨て品を収容及び識別するための清潔なスポンジ箱(spinge bin)の概略図である。タグが付けられた全ての物品を追跡及び識別することの一部として、清潔なスポンジ箱内のタグ付き物品も識別されなければならず、従って、スポンジ箱は、物体を識別するためのアンテナとしても機能する。スポンジ箱は、通常、箱の上端が開放された矩形の容器400であるが、その他の任意の開放容器も用いられることができる。スポンジ箱は、手術に必要な清潔なスポンジを快適に収容するための寸法を有する。ほぼ矩形ベースのスポンジ箱の寸法の例は、スポンジ箱の幅及び各壁の高さが、約5cm〜約40cmの範囲、円形ベースのスポンジ箱に関しては、直径が約5cm〜約20cm、等である。スポンジ箱は、非導電性の滅菌可能な材料からつくられる。スポンジ箱の外側が導電性のループ404により囲まれている。ループ404は、任意的に、
図2の平面アンテナのワイヤループ312を形成しているワイヤと類似のワイヤからつくられる。幾つかの実施形態において、ループは、幅が数ミリメートル(例えば5mm)で厚さが0.1mm〜5mmの銅ストリップからつくられる。ワイヤは、好ましくは、スポンジ箱を、一定の高さ(スポンジ箱の底部より上に約0.5cm〜スポンジ箱の上縁より下に約0.5cmの範囲で変化してよい)にて取り囲むが、これは必須ではない。ループ404は、ループを電源に接続しているケーブル構造物408を通して電力供給を受ける。ループ404の端部は、要求されるスポンジ箱アンテナの共振周波数を発生させるように機能するコンデンサ(図示せず)に接続されている。手術室の環境において、この周波数は、好ましくは13.56MHzである。
図2の平面アンテナと同様に、コンデンサは、周波数の微調整を可能にするために、2つのコンデンサ、すなわち、50pF〜500pFの静電容量を有する固定コンデンサ、及び、3pF〜20pFの静電容量を有する可変コンデンサとして実現されることができる。
【0059】
ループ404が、任意的に、絶縁カバー(図示せず)により覆われることが理解されよう。絶縁カバーは、静電容量を微調整するために、コンデンサに対応する位置に穴を備えることができる。
【0060】
スポンジ箱は、手術室のいずれの場所にも配置されることができるため、これらの場所は、アンテナの共振周波数を妨害し得る金属面上も含む。従って、スポンジ箱のアンテナの共振周波数が、アンテナ下の任意の面により影響を受けないように既知の安定的な金属環境を形成するために、金属層が、スポンジ箱の底部の下に配置され得る。しかし、この金属層が、アンテナにより放出されるエネルギーの一部を吸収する場合があるため、スポンジ箱の底部と金属層との間にスペーサ層が配置される。また、この金属層が他のアンテナを妨害し得る場合(例えば、
図3に関連して先に記載した平面アンテナ上にスポンジ箱が配置される場合)、それを防止するために、さらに別のスペーサ層が金属層の下に配置され得る。
【0061】
こうして、スペーサ、金属層、及び、別のスペーサを含む3層構造の基盤がスポンジ箱の底部に取り付けられ得る。スペーサ層の各々は、プラスチック、発泡スチロール、木、又は別の非導電性材料からつくられることができ、且つ、約5mmの最小高さを有するべきである。金属層は、銅コーティングされたPCBボード又はその他の任意の導電層からつくられることができる。
【0062】
ここで、ごみ箱の概略図を示す
図5を参照する。ごみ箱はアンテナとしても機能し、タグ付きの使用済みスポンジ、又は、ごみ箱内のその他のタグ付き物品を識別する。
【0063】
図3及び
図4に関連して先に詳細に記載した機構と同様に、ごみ箱は、RFIDアンテナを形成するように、導電ループ及び電気部品を有するバケツ(バケット)を含む。アンテナに与える金属的環境の影響を排除するために、バケツ周囲に、既知の安定的な金属環境をもたらす金属層があり、また、ループにより放出されるエネルギーを金属層が吸収することを防止するために、金属層とバケツとの間に空間が形成されている。
【0064】
これは、
図5に見られるように、2つのバケツ(一方が他方の内部に配置される)を用いることにより達成される。内側のバケツは外側のバケツよりも小さく、複数のワイヤループを含み、外側バケツは、その内側が金属層により覆われている。2つのバケツは、これらのバケツ間に配置されたプラスチック製又はその他のスペーサにより互いに所定の距離だけ離されており、これらのスペーサが、内部バケツが外側バケツ内で移動することを防止している。
【0065】
そして、バケツ構造は上蓋502を含み、上蓋502は、絶縁材料、例えばプラスチックからつくられている。この構造は、さらに、これもまた絶縁材料からつくられた内側バケツ508を含み、内側バケツ508の外面上に、1以上のアンテナループ、例えばループ509のような3本のループが取り付けられている。ループは、好ましくは、内側バケツの周囲にほぼ均等に分布されている。各ループは、導電材料、例えば、
図4の清潔なスポンジ箱の周囲のループ404からつくられる。ループは、円形、矩形、角部が切り取られた矩形、又は、その他の任意の形状であってよい。この文脈において、用語「円形」又は「矩形」は、平坦に広げられた形状を示す。この形状は、当然ながら、ほぼ円筒状の物体、例えば内側バケツ上に配置されるとき、物体の形状に従って変化する。ループは、例えば、約1mm〜約20mmの幅、及び、0.1mm〜1cmの厚さを有する銅ストリップからつくられることができる。ループ509は、上記の
図3のコンデンサ316のいずれかと同様のコンデンサ510を含む。コンデンサは、ワイヤ(図示せず)を介してシステムのマルチプレクサに接続されている。ループはコンデンサとマルチプレクサとの間に接続され、ケーブル514を通して電源から電力供給を受ける。
【0066】
この構造は、さらに、導電層512と、絶縁材料からつくられた外側バケツ516とを含む。導電層512は、外側バケツ516の内側に取り付けられる金属ネット又は接着剤層(例えば、銅ストリップ1/1oz(約28g))として実現され得る。
【0067】
導電層512が、ループ509により放出されるエネルギーの大部分を吸収せず、従って、カバレッジを低減することのないように、アンテナループ509と導電層512との間に一定の距離を保持することが必要である。この距離を形成するために、内側バケツ508は、その外側に、立方体又はその他の任意の形状に構成され得る少なくとも2つのスペーサ(図示せず)を含み得る。スペーサの厚さは、スペーサを有する内側バケツが外側バケツ内に配置されたときに、これらの2つのバケツ間に相対移動が生じないように、内側バケツの直径と外側バケツの直径との差の半分であるべきである。
【0068】
ループ509の周波数を微調整するために、コンデンサ510へのアクセスを可能にするように、外部バケツ516にアクセス開口部が穿設され得る。
【0069】
当業者には、ループが内側バケツ上に様々な方法で配置され得ることが理解されよう。例えば、可能な配置は、バケツをバケツの高さの半分の位置にて取り囲む1つのループ、及び、ループ509と類似であるが、バケツの上部及び下部にて寸法がより小さい2つ以上のループを含む。
【0070】
ここで、
図6を参照する。
図6は、RFIDタグを有する物品を識別するためのワンドの上面図である。ワンドも、RFID識別システム(例えば、上記の
図2に関連して詳細に記載したシステム)におけるアンテナとして機能する。ワンドは、非導電性の材料(例えば、FR4)からつくられたリング状の器具である。ワンドは、主要領域600(好ましくはほぼ円形)、及びハンドル604を有する。或いは、主要領域600は、その他の任意の形状、例えば矩形であってもよい。ワンドは、その周囲部付近に(例えば、ワンドの周囲から約0.1mm〜約2cmの距離に)ワイヤループ608を有する。ワイヤループ608は、
図2のアンテナ面の枠のいずれかの面の上のワイヤに類似したワイヤからつくられている。ループ608の1つの地点に、ワンドアンテナ周波数の要求される共振周波数を必要に応じて発生するために設計されたコンデンサ612がある。手術室環境において、この周波数は、好ましくは13.56MHzである。コンデンサ612は、その他端にて、RFIDリーダに接続されたマルチプレクサに接続されている。ワンドの周波数の微調整を可能にするために、コンデンサ612を、2つのコンデンサ、すなわち、50pF〜500pFの静電容量を有する固定コンデンサと、3pF〜20pFの静電容量を有する可変コンデンサとして実現することも可能である。また、ループは、コンデンサ612に接続された部分又はその付近にて、ループに電力を供給するために電源にその他端が接続されたワイヤにも接続されている。
【0071】
ワンドは様々な方法で用いられることができる。1つの使用例は、他のいずれのアンテナによっても検出されなかった行方不明のタグ付き物品の位置を特定することである。物品を探しているとき、ワンドは、部品が存在し得る領域の近く(例えば、患者の身体付近)に運ばれる。別の使用例において、ワンドは、手術室の準備をするときに通常導入される物品以外の追加の物品を手術室に導入するために用いられる。このような物品は、予め準備されたセット以外の物品(例えば、特別な若しくは追加のツール)、又は、手術中に追加される物品(例えば、追加のスポンジ)を含み得る。
【0072】
ここで、
図7Aを参照する。
図7Aは、RFIDタグが取り付けられた例示的な手術ツールを示す。ツールは、その通常の動作部品704,708と、RFIDタグを保持するように設計された、追加の分離不能なタグ保持部712とを含む。
【0073】
ツール及び使い捨て品を識別するために用いられるタグは、軽量で且つ耐久性を有するべきである。ツールに関する既存の基準を満たすために、タグは、少なくとも2000サイクルの滅菌(最低温度が134℃で少なくとも18分間の滅菌を意味する)に耐えるべきである。幾つかの実施形態において、例えば、シンガポールのバンスキー社(Vanskee of Tradehub)(www.vanskee.com)により製造される10mmのタグ、又は、アメリカ合衆国、マサチューセッツ州、バーリントンのタグシス・RFIDグループ社(Tagsys RFID Group, Inc.)により製造される16mmのタグなどを用いることができる。
【0074】
タグは、ツールの動作を妨害しないように取り付けられるべきである。さらに別の要求条件は、ツールが通常セットされる位置(例えば、ハサミは、通常、垂直にではなく水平方向に配置される)においてタグが垂直方向にならないことである。
【0075】
ここで、
図7Bを参照する。
図7Bは、タグのハウジング部である部分712を示す。タグハウジング部712は、ツールに取り付けられ、且つ、好ましくは、ツールと同一の材料からつくられ、従って、さらなる滅菌問題は生じない。タグハウジングは、ほぼ円形であり、2つのリング、すなわち、第1のリング716及び第2のリング720のように形成され、これらのリングの平坦な部分にて取り付けられる。リング716とリング720とは、同一の外径h1を有する。リング716は、リング720の内径h3よりも大きい内径h2を有する。リング716の内径h2は、用いられるRFIDタグがリング716内に嵌め込まれ、且つリング720上に移動せずに載置されることができるように配置されている。
【0076】
リング716及びリング720は、それぞれ、タグにより発信される信号がリングにより完全に吸収されないように、対応する位置に切欠き724及び728を有する。幾つかの実施形態においては、リング716における1つの切欠きで十分であり得るため、切欠き728を省略することができる。幾つかの実施形態において、タグハウジング部が単一の部品として製造されることができ、2リング構造は説明のためのみに用いられることが理解されよう。
【0077】
ここで、
図7Bのリング構造を示す
図7Cを参照する。リングは、タグと患者の身体との接触を排除するように、絶縁性の頑丈な生体適合性カバー736により覆われている。カバー736もまた、少なくとも2000サイクルの滅菌に耐えるべきである。カバー736は、リングを、少なくとも1つの領域、例えば、例示的な領域740,744にて露出させるべきである。これは、リング構造物をツールに、溶接又はその他の方法で取り付けるためである。
【0078】
使い捨て物品、例えばスポンジに連結されたタグが、物品に施される手順と同一の手順、例えば滅菌に耐えられるべきであることが理解されよう。また、タグが生体適合性の外側部分を有するべきであり、且つ、偶然に外れてしまわないことを保証する方法で物品に取り付けられるべきであることも理解されよう。商業的クリーニング店にて用いられているようなタグ(例えば、中国のデイリーRFID社(Daily RFID Co.)(http://www.rfid−in−china.com)により製造されているタグ)を、このような目的のために用いることができる。
【0079】
開示されたシステムは、タグを有する複数の物品を識別及び追跡するために、複数のアンテナを含む。アンテナは、タグ付き物品が存在し得る場所、例えば器具台、メーヨ、ごみ箱、及び清潔なスポンジ箱に一体化される。非常に金属的な環境にて識別及び追跡を安定的に実行するために、開示された全てのアンテナに独自の金属層が設けられ、これらの金属層が、アンテナの調整時に考慮される既知の安定的な金属的環境をもたらす。そして、アンテナにより放出されるエネルギーの大部分を金属層が吸収しないように、アンテナと金属層との間に既知の一定の間隔が維持される。
【0080】
当業者には、本開示が、開示された原理に従うさらなるアンテナの設計を教示することが理解されよう。この設計は、アンテナから既知の一定距離にある、既知の一定の金属的環境を含む。また、本開示が特定の環境に限定されずに、これらの原理に従って構成されるアンテナが、ガレージ、格納庫、倉庫、アーティストスタジオ、生産ライン等を含む任意の環境にて用いられ得ることが理解されよう。
【0081】
また、本開示は、タグとアンテナとの接触を有さずに動作することができるその他の識別プロトコルに関連し、従って、RFIDに限定されない。アンテナとツールとが任意の既知のプロトコルを用いて通信することができ、その結果が任意のアプリケーションにより処理され得る。
【0082】
当業者には、本開示が、以上に詳細に示され且つ説明されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本開示の範囲は、以下に記す特許請求の範囲によってのみ定義される。