特許第5771302号(P5771302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5771302
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】往復圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   F04B39/00 107F
   F04B39/00 104C
   F04B39/00 107A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-45147(P2014-45147)
(22)【出願日】2014年3月7日
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】592215583
【氏名又は名称】株式会社加地テック
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100143465
【弁理士】
【氏名又は名称】竹尾 由重
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【弁理士】
【氏名又は名称】時岡 恭平
(74)【代理人】
【識別番号】100162248
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100100262
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 勉
(72)【発明者】
【氏名】植田 秀作
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】松岡 隆史
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−037380(JP,A)
【文献】 特開平10−306777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内を往復摺動するピストンと、ガイドシリンダ内を往復摺動するクロスヘッドと、一端が前記ピストンに、他端が前記クロスヘッドにそれぞれ結合されたピストンロッドとを備えた往復圧縮機において、
前記ピストンロッドが貫通するブロックには液封部が設けられている一方、前記ピストンとピストンロッドの結合部及び前記ピストンロッドとクロスヘッドの結合部のうち、少なくとも一方の結合部は、凸状球面又は凹状球面を有する中間部材を介在して両結合部材をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ前記中間部材の凸状球面又は凹状球面の中心回りに微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成されていることを特徴とする往復圧縮機。
【請求項2】
前記ブロックにはピストンロッドを軸方向に摺動可能に支持する軸受が設けられている請求項1記載の往復圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車に用いる水素ガスなどを高圧ないし超高圧に圧縮する往復圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスを高圧に圧縮する往復圧縮機は、複数段の圧縮部を有し、低段側の圧縮部で圧縮されたガスを高段側の圧縮部に順次供給して圧縮を繰り返し行うようになっている。また、他の圧縮機と組み合わせて使用し、低段側である他の圧縮機で圧縮されたガスを圧縮部に吸入して一段高圧に圧縮するようにすることもある。
【0003】
そして、このような往復圧縮機の圧縮部、特に高段側の圧縮部は、例えば特許文献1に開示されているように、低段側の圧縮部に連通された圧縮室を有するシリンダと、このシリンダ内に往復摺動可能に配置されたピストンと、このピストンにピストンロッドを介して連結され、ガイドシリンダ内を往復摺動するクロスヘッドと、一端がこのクロスヘッドに連結され、他端がクランクシャフトに連結された連接棒とを備え、クランクシャフトの回転運動をクロスヘッド及びピストンの往復運動に変換し、ピストンの往復運動によりシリンダの圧縮室内にガスを吸入して圧縮するようになっている。
【0004】
また、このような圧縮部においては、シリンダの圧縮室で圧縮されたガスがクランクケース側にまで漏れ出るのを防止するために、ピストンの外周面に複数のピストンリングを装着するだけでなく、ピストンロッドが貫通するブロックにシール装置を設けることが行われている。近年、このシール装置として、前記ブロックに油などを貯留する液封部を形成してなる液封式のものが提案され、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−303270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記液封式のシール装置では、そのシール性を確保するためにピストンロッドを所定位置に正確に配置する必要があり、それに伴い、シール装置の各部品の加工精度や組み付け精度を高める必要がある。
【0007】
また、前記ピストンロッドとピストン又はクロスヘッドの結合部は、ピンやねじ部などを用いて両部材を結合するのが普通であるが、この場合、ピストン側又はクロスヘッド側の部品の加工精度や組み付け精度をも高める必要がある。特に、ピストン側の部品の加工精度や組み付け精度が低く、ピストンとピストンロッドとが設定通りに結合されていない場合には、ピストン側に無理な力が作用し、ピストンリングなどが摩耗し易くなるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、前述した液封式のシール装置(液封部)を装備するに当たり、ピストンとピストンロッドの結合部及びピストンロッドとクロスヘッドの結合部のうち、少なくとも一方の結合部を改良することにより、部品の加工精度や組み付け精度を高めることなく、ピストンロッドを設定通りに配置でき、液封部のシール性を高め得る往復圧縮機を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、往復圧縮機として、シリンダ内を往復摺動するピストンと、ガイドシリンダ内を往復摺動するクロスヘッドと、一端が前記ピストンに、他端が前記クロスヘッドにそれぞれ結合されたピストンロッドとを備えることを前提とする。そして、前記ピストンロッドが貫通するブロックに液封部を設ける一方、前記ピストンとピストンロッドの結合部及び前記ピストンロッドとクロスヘッドの結合部のうち、少なくとも一方の結合部は、凸状球面又は凹状球面を有する中間部材を介在して両結合部材をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ前記中間部材の凸状球面又は凹状球面の中心回りに微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成する。
【0010】
この構成では、ピストンロッドが貫通するブロックに液封部が設けられているため、シリンダの圧縮室で圧縮されたガスがクランクケース側にまで漏れ出るのを効果的に防止することができる。その上、ピストンとピストンロッドの結合部及びピストンロッドとクロスヘッドの結合部のうち、少なくとも一方の結合部は、凸状球面又は凹状球面を有する中間部材を介在して両結合部材をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ前記中間部材の凸状球面又は凹状球面の中心回りに微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成されているため、この結合部との関係からは仮に部品の加工精度などがそれ程高くない場合でもピストンロッドを所定位置に配置することができ、液封部によるシール性を高く確保することができる。また、部品の加工精度や組み付け精度が低く、ピストンロッドとピストン又はクロスヘッドとが設定通りに結合されていない場合でも、前記結合部のピストン側又はクロスヘッド側に無理な力が作用することはない。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の往復圧縮機において、前記ブロックに、ピストンロッドを軸方向に摺動可能に支持する軸受を設ける構成にする。この構成では、ブロックに設けた軸受によりピストンロッドが軸方向に摺動可能に支持されているため、ピストンロッドの動作中にぶれが生じるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の往復圧縮機によれば、ピストンロッドが貫通するブロックに設けた液封部によって、シリンダの圧縮室で圧縮されたガスがクランクケース側にまで漏れ出るのを効果的に防止することができる上、ピストンとピストンロッドの結合部及び/又はピストンロッドとクロスヘッドの結合部が、それらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ中間部材の凸状球面又は凹状球面の中心回りに微少角度の範囲内で互いに揺動可能に設けられているため、部品の加工精度や組み付け精度がそれ程高くない場合でもピストンロッドを所定位置に配置することができ、液封部によるシール性を高く確保することができる。また、部品の加工精度や組み付け精度が低く、ピストンロッドとピストン又はクロスヘッドとが設定通りに結合されていない場合でも、前記結合部のピストン側又はクロスヘッド側に無理な力が作用することはないので、ピストン側又はクロスヘッド側の部品の耐久性の向上などに寄与することができる。
【0013】
特に、請求項2に係る発明では、ブロックに設けた軸受によりピストンロッドが軸方向に摺動可能に支持されているため、ピストンロッドの動作中にぶれが生じるのを防止することができ、液封部によるシール性をより高く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の実施形態に係る2段式往復圧縮機の配管系統図である。
図2図2は前記往復圧縮機の高段側圧縮部のピストンロッド付近の構造を示す縦断側面図である。
図3図3図2のX付近の拡大図である。
図4図4図2のY付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る2段式往復圧縮機Aの全体構成を示し、この往復圧縮機Aは、低段側の圧縮部1と、高段側の圧縮部2とを備えている。この両圧縮部1,2は、同一の又は別々の駆動部3により駆動される。
【0017】
前記低段側の圧縮部1は、圧縮室11を有するシリンダ12と、このシリンダ12内に往復摺動可能に配置されたピストン13とを備え、このピストン13の往復摺動によりシリンダ12の圧縮室11内にガスを吸い込んで所定圧に圧縮するようになっている。この低段側の圧縮部1で圧縮されたガスは、連絡通路14を通してタンク15内に貯留され、所定圧(例えば35MPa)に維持される。
【0018】
前記高段側の圧縮部2は、前記タンク15に連絡通路16を介して連通された圧縮室21を有するシリンダ22と、このシリンダ22内に往復摺動可能に配置されたピストン23とを備え、低段側の圧縮部1から吐出されタンク15内に貯留された圧縮ガスをピストン23の往復摺動によりシリンダ22の圧縮室21内に吸い込んで一段高圧(例えば100MPa)に圧縮するように構成されている。この高圧側の圧縮部2で圧縮された圧縮ガスは、送出通路24を通して送出されるようになっており、この送出通路24には圧縮部2で圧縮された圧縮ガスを冷却するためのクーラ25が設けられている。
【0019】
前記駆動部3は、図1に示す高段側の圧縮部2を駆動するものの場合、ピストン23の基端に一端が結合されたピストンロッド31と、このピストンロッド31の他端が結合されかつガイドシリンダ32内に往復摺動可能に配置されたクロスヘッド33と、このクロスヘッド33に一端が連結された連接棒34と、この連接棒34の他端が連結されかつクランクケース35に回転自在に支持されたクランクシャフト36と、このクランクシャフト36にプーリとベルトとからなる動力伝達機構37を通して動力伝達可能に連結された駆動モータ38とを備え、駆動モータ38の回転力によりクランクシャフト36の回転及びガイドシリンダ32内でのクロスヘッド33の往復摺動を引き起こし、最終的にシリンダ22内でのピストン23の往復摺動を引き起こすようになっている。尚、図1中、41はタンク15内の所定圧のガスを高段側の圧縮部2のシリンダ22中間部でシリンダ22の内周面とピストン23の外周面との隙間に導入するためのガス導入通路、42は高段側の圧縮部2のシリンダ22の圧縮室21側からクランクケース35側(詳しくは後述する中間ブロック51の上部側)にまで漏れた圧縮ガスを低段側の圧縮部1の吸い込み側に戻すための戻し通路、43はこの戻し通路42に設けられたフィルタである。
【0020】
前記高段側の圧縮部2のケース構造は、図2に示すように、クランクケース35に中間ブロック51を介在してシリンダ22が取り付けられ、このシリンダ22の先端(上端)にシリンダヘッド(図示せず)が取り付けられている。シリンダ22の内面には円筒状のシリンダライナ52が嵌め込んで固着され、このシリンダライナ52内をピストン23が往復摺動するようになっている。ピストン23は、ピストンロッド31よりも直径が小さい棒状のものであり、このピストン23の外周面には複数のピストンリング53,53,…が軸方向に沿って所定間隔毎に装着されている。
【0021】
前記中間ブロック51には、ピストンロッド31が上下方向に貫通しかつその軸方向に摺動可能に配置されているとともに、ピストンロッド31の外周に圧縮ガスのクランクケース35側への漏れを防止するための液封部54が形成されている。この液封部54は、図示していないが、液封部54内の油を所定深さに維持するための油給排機構を有している。また、中間ブロック51には、液封部54の上方位置及び下方位置でそれぞれピストンロッド31の外周面との間のシール性を保つためのシール材55,56,57,58が設けられているとともに、液封部54の上方位置でピストンロッド31を軸方向に摺動可能に支持する中間軸受59が設けられている。
【0022】
前記ピストン23とピストンロッド31の結合部は、両結合部材23,31をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成されており、この構成は、図3に拡大詳示している。
【0023】
すなわち、前記ピストン23とピストンロッド31の結合部には円盤状の中間部材61が介在されており、この中間部材61の中心部には下側部分の内径が上側部分の内径よりも大きい段付きの第1の貫通孔62が設けられているとともに、中間部材61の周縁部には複数の第2の貫通孔63が円周方向に所定角度毎に設けられている。そして、中間部材61は、前記第1の貫通孔62に配置した円筒状の第1のスペーサ64及び座金65を貫通する第1の締結ボルト66によりピストン23に固定されている一方、前記各第2の貫通孔63に配置した円筒状の第2のスペーサ67及び円環状の裏当て材68のボルト孔69を貫通するねじ棒及びナット70によりピストンロッド31の結合フランジ部31aに固定されている。前記座金65の直径は、第1の貫通孔62の小径部分62aの内径よりも大きくかつ大径部分62bの内径よりも小さく設定されており、前記第1のスペーサ64の長さは、第1の貫通孔62の小径部分62aの深さよりも若干大きく設定され、第1のスペーサ64の外径は、第1の貫通孔62の小径部分62aの内径よりも若干小さく設定されている。また、前記第2のスペーサ67の長さは、第2の貫通孔63の深さよりも若干大きく設定され、第2のスペーサ67の外径は、第2の貫通孔63の内径よりも若干小さく設定されている。このような設定により各部材間に隙間が設けられ、それにより、ピストン23とピストンロッド31とは、それらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能に結合されている。
【0024】
更に、前記中間部材61の下面には、第1の貫通孔62の周囲に下方に膨出する環状の膨出部71が形成され、この膨出部71の先端面には凸状球面72が形成されている。前記ピストンロッド31には前記膨出部71が嵌合する平面視が円形状の凹部73が形成され、この凹部73の底面の中心部には、第1の締結ボルト66の頭部との干渉を回避するための中心穴74が設けられているとともに、凹部73の底面の周縁部には、前記凸状球面72と面接触する凹状球面75が形成されている。前記凹部73の内径は、膨出部71の外径よりも若干大きく設定されている。このような構成及び前述した各部材間に隙間を設けるための設定により、ピストン23とピストンロッド31とは、前記両球面72,75の中心回りに微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合されている。
【0025】
一方、前記ピストンロッド31とクロスヘッド33の結合部は、前述したピストン23とピストンロッド31の結合部と同じく、両結合部材31,33をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成されており、この構成は、図4に拡大詳示している。
【0026】
すなわち、前記ピストンロッド31とクロスヘッド33の結合部には3つの中間部材である第1、第2及び第3の中間部材81,82,83が介在されている。第1の中間部材81は円盤状のものであり、この第1の中間部材81の中心部には第1の貫通孔84が設けられているとともに、第1の中間部材81の周縁部には複数の第2の貫通孔85が円周方向に所定角度毎に設けられている。また、第1の中間部材81の下面には、第1の貫通孔84と第2の貫通孔85とで挟まれた領域に凸状球面86が形成されている。そして、第1の中間部材81は、ピストンロッド31の端部に植設したねじ部87を第1の貫通孔84に挿入し、ナット88をねじ部87に螺合して締結することでピストンロッド31の端部に固定されている。
【0027】
前記第3の中間部材83は、直径が第1の中間部材81のそれよりも一回り大きい円板状のものであり、この第3の中間部材83の中心部には、上面側に第2の中間部材82を収容するための平面視が円形状の収容凹部89が形成されているとともに、この収容凹部89の底面の中心部に前記ナット88及びねじ部87との干渉を回避するための中心孔90が設けられている。また、第3の中間部材83の周縁部には複数の第3の貫通孔91が円周方向に所定角度毎に設けられている。そして、第3の中間部材83は、その下面をクロスヘッド33の上面部に当接した状態で前記各第3の貫通孔91を貫通する第1の締結ボルト92によりクロスヘッド33の上面部に固定されている。
【0028】
前記第1の中間部材81は、各第2の貫通孔85に配置した円筒状のスペーサ93及び円環状の裏当て材94のボルト孔95を貫通する第2の締結ボルト96により第3の中間部材83に固定されている。前記スペーサ93の長さは、第2の貫通孔85の深さよりも若干大きく設定され、スペーサ93の外径は、第2の貫通孔85の内径よりも若干小さく設定されている。
【0029】
前記第2の中間部材82は、外径が前記収容凹部89の内径よりも若干小さい円環状のものであり、この第2の中間部材82には前記凸状球面86と面接触する凹状球面97が形成されている。このような構成及び各部材間に隙間を設けるための設定により、ピストンロッド31とクロスヘッド33とは、それらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ前記両球面86,97の中心回りに微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合されている。
【0030】
次に、前記実施形態の作用効果について説明するに、2段式往復圧縮機Aの高段側の圧縮部2においては、ピストンロッド31が貫通する中間ブロック51に液封部54が設けられているため、シリンダ22の圧縮室21で圧縮されたガスがクランクケース35側にまで漏れ出るのを効果的に防止することができる。
【0031】
その上、ピストン23とピストンロッド31の結合部は、両結合部材23,31をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成されているため、この結合部との関係からは仮に部品の加工精度などがそれ程高くない場合でもピストンロッド31を所定位置に配置することができ、液封部54によるシール性を高く確保することができる。また、ピストン23側の部品(シリンダライナ52やピストンリング53など)の加工精度や組み付け精度が低く、ピストン23とピストンロッド31とが設定通りに結合されていない場合でも、前記結合部のピストン23側などに無理な力が作用することはないので、ピストンリング53などの摩耗を抑制することができ、耐久性の向上に寄与することができる。
【0032】
特に、本実施形態の場合、中間ブロック51に設けた中間軸受61によりピストンロッド31が軸方向に摺動可能に支持されているため、ピストンロッド31の動作中にぶれが生じるのを防止することができ、液封部54によるシール性をより高く確保することができる。
【0033】
また、ピストンロッド31とクロスヘッド33の結合部は、両結合部材31,33をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成されているため、この結合部との関係からは仮に部品の加工精度などがそれ程高くない場合でもピストンロッド31を所定位置に配置することができ、液封部54によるシール性をより一層高く確保することができる。また、クロスヘッド33側の部品の加工精度や組み付け精度が低く、ピストンロッド31とクロスヘッド33とが設定通りに結合されていない場合でも、前記結合部のクロスヘッド33側などに無理な力が作用することはないので、クロスヘッド33側の部品の耐久性の向上などに寄与することができる。
【0034】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば前記実施形態では、ピストン23とピストンロッド31の結合部において、両結合部材23,31を微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するために、中間部材61の下面の、第1の貫通孔62の周囲に下方に膨出する環状の膨出部71を形成し、この膨出部71の先端面に凸状球面72を形成する一方、ピストンロッド31に、前記膨出部71が嵌合する平面視が円形状の凹部73を形成し、この凹部73の底面に前記凸状球面72と面接触する凹状球面75を形成したが、本発明は、この構成の代わりに、膨出部71及び凹部73を省略し、中間部材61の下面の、第1の貫通孔62の周囲に凸状球面又は凹状球面を形成するとともに、ピストンロッド31に、この凸状球面又は凹状球面と面接触する凹状球面又は凸状球面を形成するように構成してもよい。
【0035】
また、前記実施形態では、ピストン13とピストンロッド31の結合部及びピストンロッド31とクロスヘッド33の結合部において、それぞれ両結合部材13,31又は31,33をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成したが、本発明は、場合によっては、ピストン13とピストンロッド31の結合部及びピストンロッド31とクロスヘッド33の結合部のうち、いずれか一方の結合部において、両結合部材13,31又は31,33をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成してもよい。
【0036】
さらに、前記実施形態では、2段式往復圧縮機Aの高段側の圧縮部2に適用した場合について述べたが、本発明は、その他1段式又は多段式の往復圧縮機にも同様に適用することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
A 2段式往復圧縮機
2 高段側の圧縮部
22 シリンダ
23 ピストン
31 ピストンロッド
32 ガイドシリンダ
33 クロスヘッド
51 中間ブロック
54 液封部
59 中間軸受
61 中間部材
72,86 凸状球面
81 第1の中間部材
82 第2の中間部材
97 凹状球面
【要約】
【課題】部品の加工精度や組み付け精度を高めることなく、ピストンロッドを設定通りに配置でき、液封部のシール性を高め得る往復圧縮機を提供する。
【解決手段】往復圧縮機は、シリンダ22内を往復摺動するピストン23と、ガイドシリンダ32内を往復摺動するクロスヘッド33と、一端が前記ピストンに、他端が前記クロスヘッドにそれぞれ結合されたピストンロッド31とを備える。前記ピストンロッドが貫通するブロック51に液封部54を設ける一方、前記ピストンとピストンロッドの結合部及び前記ピストンロッドとクロスヘッドの結合部のうち、少なくとも一方の結合部は、両結合部材をそれらの軸線と直交する方向に微少距離の範囲内で互いに摺動可能にかつ微少角度の範囲内で互いに揺動可能に結合するように構成する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4