(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象組織内の目標計測位置における前記対象組織に関する運動を計測するために設定されたドプラ計測位置に対して超音波を送受波することにより得られた受信信号に基づいて、前記ドプラ計測位置における前記運動を示すドプラ波形を生成するドプラ波形生成手段と、
前記運動の計測の計測項目に応じて前記ドプラ波形の波形評価を行うことにより、前記ドプラ波形が、当該計測項目についての計測結果として前記目標計測位置における適正なドプラ波形であるための適正条件を満たすか否かを評価する波形評価手段と、
前記ドプラ波形が前記適正条件を満たさない場合に、前記ドプラ計測位置を変更するドプラ計測位置変更手段と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、ドプラ計測位置が外乱要因によって不適切な箇所へ移動してしまった場合、適正なドプラ波形が得られなくなる。その事態をユーザ(医師、検査技師等)が認識できなければ、診断上支障が生じる。その事態をユーザが認識できたとしても、ドプラ計測位置を当初設定した位置へ戻すには煩雑な操作が求められる。一方、ドプラ計測位置は、診断対象とする部位(例えば僧帽弁流出側)へ正確に位置決めることが必要であるが、そのためには一般に時間を要し、また熟練を要する。ドプラ計測位置の設定に際してのユーザの負担を軽減することが求められている。
【0009】
なお、特許文献1に記載の発明は、血流が存在する位置に新たなドプラ計測位置を設定しているため、新たなドプラ計測位置におけるドプラ波形が診断データとして有用であるか等、目標計測位置における適切なドプラ波形であるか否かについては保証されていない。
【0010】
本発明の目的は、ドプラ計測位置を目標計測位置に変更することが可能な超音波診断装置を提供することにある。或いは、本発明の目的は、ドプラ計測においてユーザの負担を軽減することにある。或いは、本発明の目的は、ドプラ計測結果をドプラ計測制御に役立てられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る超音波診断装置は、対象組織内の目標計測位置における前記対象組織に関する運動を計測するために設定されたドプラ計測位置に対して超音波を送受波することにより得られた受信信号に基づいて、前記ドプラ計測位置における前記運動を示すドプラ波形を生成するドプラ波形生成手段と、前記ドプラ波形の波形評価を行うことにより、前記ドプラ波形が前記目標計測位置における適正なドプラ波形であるための適正条件を満たすか否かを評価する波形評価手段と、前記ドプラ波形が前記適正条件を満たさない場合に、前記ドプラ計測位置を変更するドプラ計測位置変更手段と、を備えるものである。
【0012】
望ましくは、前記ドプラ計測位置変更手段は、前記適正条件を満たすドプラ波形が得られる計測位置に前記ドプラ計測位置を変更する。また、望ましくは、前記適正条件は、前記ドプラ波形生成手段が生成した現在ドプラ波形と、それに比較される基準波形と、の一致度についての条件であり、前記波形評価手段は、前記一致度に基づいて前記適正条件を満たすか否かを判定する。また、望ましくは、前記波形評価手段は、前記基準波形の形態と前記現在ドプラ波形の形態とに基づいて、前記一致度として波形形態一致度を計算する。また、望ましくは、前記波形評価手段は、前記基準波形の特徴を表すパラメータと前記現在ドプラ波形の特徴を表すパラメータとに基づいて前記一致度としてパラメータ一致度を計算する。
【0013】
ドプラ波形生成手段は、例えばユーザにより手動で設定されたドプラ計測位置においてドプラ計測を行い、ドプラ計測位置における血流速度分布(スペクトラム)を示すドプラ波形を生成する。一方、波形評価手段は、ドプラ波形生成手段が生成したドプラ波形が目標計測位置におけるドプラ波形として適切であるか否かを波形評価によって判定する。その判定が波形生成と同時進行でつまりリアルタイムで実行されるのが望ましい。設定されたドプラ計測位置において得られたドプラ波形が適切なものであれば、設定されたドプラ計測位置は当初設定したあるいは理想的な目標計測位置にあると判断できる。波形評価の方法あるいは評価基準を適宜設定することによって目標計測位置を定義することが可能である。例えば、計測されたドプラ波形が適切であるか否かの判定を、計測されたドプラ波形と基準波形との間の一致度に基づいて行ってもよい。また、計測されたドプラ波形の特徴を示すパラメータ(例えば波高や波形厚)と基準波形の特徴を示すパラメータとを比較することで判定するようにしてもよい。その場合でもその実体は波形比較である。波形評価手段により計測されたドプラ波形が目標計測位置におけるドプラ波形として適切でないと判定された場合、これは設定されたドプラ計測位置は目標計測位置ではないことを示すため、ドプラ計測位置変更手段は、設定されたドプラ計測位置を変更する処理を行う。変更後のドプラ計測位置が目標計測位置となるまでドプラ計測位置の変更を連続的に行うのが好ましい。
【0014】
ドプラ波形は、ドプラ計測位置での運動状態を如実に反映したものであり、ドプラ波形は一般にドプラ計測位置のずれ(例えば血流に対する相対的なずれ)に対して敏感に反応する。よって、そのようなドプラ波形を評価対象とすることにより、客観的かつ迅速にドプラ計測位置が適正なものであるか否かを判定することが可能である。ドプラ波形の評価方法として、波形特徴量それ自体を絶対的に評価する方法、基準波形との直接的又は間接的な比較により相対的に評価する方法、等がある。ドプラ波形は一般に複雑な形態を有しており、その絶対的な評価は難しいので、後者の方法を採用するのが望ましい。その場合、基準波形として、今回のドプラ計測開始時にサンプリングされたドプラ波形、過去においてサンプリングされたドプラ波形、シミュレーションにより生成されたドプラ波形、等があげられる。計測位置ごとに基準波形を用意するのが望ましい。
【0015】
上記構成において、前記波形評価手段は、前記一致度に基づく評価値を算出して表示部に表示することが望ましい。評価値は、例えば現在ドプラ波形が目標計測位置におけるドプラ波形としてどの程度適切であるかを示す指標である。評価値を表示部に表示させることで、ユーザに対して、現在のドプラ計測位置が目標計測位置に対してどの程度ずれているのかの指標を提示することができる。ユーザは、評価値を確認することで、ドプラ計測位置の自動的変更が始動する前に、ドプラ計測位置の微調整を自ら行う等の対処を行うことが可能になる。なお、評価値の表示は、ドプラ計測位置の自動的変更を行わない場合において特に有用である。評価値の時間変化をグラフとして表示すれば評価値の推移あるいは変化傾向から位置ずれ補正の要否を予測することが可能となる。
【0016】
上記構成において、望ましくは、前記波形評価手段は、前記対象組織の拍動周期における所定の時相区間において、前記ドプラ波形が前記適正条件を満たすか否かを判定する。また、望ましくは、前記対象組織は心臓であり、前記波形評価手段は、前記心臓の心電波形に基づいて前記所定の時相区間を決定する。時相区間を適宜設定することで、波形評価の確実性や応答性の調整を行うことができる。例えば、心電波形に基づいて時相区間を決定する場合は、R波からR波までの区間、すなわち1拍動周期の全部分を波形評価の対象とすれば、計測ドプラ波形と基準波形との一致度をより正確に算出することができる。これにより、波形評価の確実性が担保される。一方、1拍動周期の一部のみを波形評価の対象とすれば、1拍動周期の波形全部を評価するわけではないため、計測ドプラ波形と基準波形との一致度の正確性は低下するものの、迅速に波形評価を終えることができるため波形評価の応答性が向上することになる。時相区間は、ドプラ計測の対象部位等に応じて自動的に設定されるようにしてもよい。
【0017】
上記構成において、望ましくは、前記ドプラ計測位置変更手段は、前記ドプラ計測位置に基づいて定められる探索範囲内において、新たに設定する計測位置を探索する。例えば、設定されたドプラ計測位置近傍を探索範囲とすることができる。これは、設定されたドプラ計測位置が目標計測位置でなかった場合においても、目標計測位置は設定されたドプラ計測位置の近傍に存在する場合が多いことに基づくものである。設定されたドプラ計測位置近傍において新たに設定するドプラ計測位置を探索することで、より早期に目標計測位置にドプラ計測位置を設定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ドプラ計測位置を目標計測位置に変更することができる。また、本発明によれば、ドプラ計測においてユーザの負担を軽減することができる。また、本発明によれば、ドプラ計測結果をドプラ計測制御に役立てられるようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る超音波診断装置の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成概略図である。
【0021】
プローブ10は、対象組織に対して超音波の送受波を行う超音波探触子である。対象組織は血液が流れる生体組織であり、本実施形態では心臓である。血管その他の循環器組織が対象となってもよい。プローブ10は複数の振動素子からなるアレイ振動子を有しており、そのアレイ振動子によって超音波ビームBが形成される。また、超音波ビームBを電子走査することにより走査面Sが形成される。電子走査方式としては、例えば電子セクタ走査方式や電子リニア走査方式等があげられる。プローブ10に、いわゆる2Dアレイ振動子を設け、3次元データを取得してもよい。後述するように、プローブ10により超音波ビームが走査されることで得られる受信信号に基づいて、対象組織の断層画像や、対象組織内の血流分布を示すカラードプラ画像が生成される。また、特定の方位(及び深さ)に対してドプラ観測を行うことにより血流の速度スペクトルの時間変化を示すドプラ波形が形成される。ドプラ計測モードとしてはPWモード及びCWモードが知られている。以下に説明する波形評価等はいずれのモードにも適用可能なものである。
【0022】
送受信部12は、プローブ10が備える複数の振動素子を励振する複数の送信信号をプローブ10へ送ることで、プローブ10において超音波を発生させる。また、送受信部12は、プローブ10が備える複数の振動素子から得られる複数の受信信号を整相加算処理して受信ビームすなわち整相加算処理後の受信信号(ビームデータ)を形成する。このように、送受信部12は、送信ビームフォーマと受信ビームフォーマの機能を備えている。
【0023】
画像形成部14は、送受信部12からの受信信号に基づいて種々の画像を形成する。画像形成部14は、断層画像形成部16及びカラードプラ画像形成部18を含んで構成されている。
【0024】
断層画像形成部16は、ユーザにより設定される撮像設定、例えば、超音波ビームの走査範囲やゲイン設定等に基づいて、送受信部12からの受信信号から超音波画像である断層画像を生成する。断層画像は、本実施形態において、対象組織の断面が画像として表されたBモード画像である。複数の2次元断層画像データに基づいて3次元画像が形成されてもよい。断層画像は記憶部30に記憶されるとともに、表示制御部24によって表示部26に表示される。
【0025】
カラードプラ画像形成部18は、ユーザにより設定された領域において行われたドプラ計測により得られた受信信号に基づいて、対象組織内の血流の2次元速度分布を算出する。そして、算出された速度分布に基づいて、速度の輝度値への変換及び色付け等を行い、これにより血流を示す色が重畳されたカラードプラ画像を生成する。なお、後述する表示制御部24は画像合成機能を有しており、断層画像形成部16が形成した断層画像上にカラードプラ画像を合成し、これによりカラーフローマッピング(CFM)画像を形成する。
【0026】
ドプラ計測位置設定部20は、対象組織内にドプラ計測位置を設定する。ドプラ計測位置設定部20により設定されたドプラ計測位置に対して、プローブ10から超音波が送受波される。そして、その受信信号に基づいて、後述するドプラ波形生成部22によりドプラ計測位置における血流運動を示すドプラ波形が形成される。ドプラ計測位置設定部20は、入力部42からの指示に基づいてドプラ計測位置を設定する。例えば、ユーザは、表示部26に表示されたBモード画像上において、入力部42に含まれるトラックボール等を用いてドプラ計測位置を示すカーソルを動かし、所望の位置にカーソルを移動させることでドプラ計測位置を特定する。ドプラ計測位置設定部20は、入力部42により特定された位置をドプラ計測位置に設定する。また、ドプラ計測位置の設定を自動的に行うようにしてもよい。例えば、Bモード画像から対象組織の形態の特徴を示す基準部位に基づいてドプラ計測位置を特定してもよいし、CFM画像が有する血流情報に基づいてドプラ計測位置を特定するようにしてもよい。
【0027】
ドプラ波形生成部22は、ドプラ計測位置において行われたパルスドプラ、連続波ドプラ、カラードプラ、パワードプラ、及び組織ドプラ等によるドプラ計測により得られた受信信号を周波数解析することにより得られたスペクトル情報に基づいて、各速度成分値を輝度に変換することで、ドプラ計測位置における血流等の組織の速度分布を表すドプラ波形を生成する。ドプラ計測位置における組織の速度は複数の速度成分(速度成分分布)を有しているのが一般的であり、各時点においてそれぞれの速度成分がそれぞれ輝度に変換される。計測された速度成分分布のうち、流速成分が強い程その輝度が高くなる。以上のようであるから、ドプラ波形は各時刻においてある一定の幅を持ち、ドプラ波形は帯状の速度成分値を持つ波形(厚みを持った波形)として生成される。ドプラ波形は、常時更新されるものであり、記憶部30に記憶されるとともに、表示制御部24によって表示部26に表示される。
【0028】
表示制御部24は、画像形成部14、ドプラ波形生成部22、後述の生体信号計測器28、及び後述の警告生成部40から出力される信号に対して処理を行い処理後のデータを表示部26に出力する。
【0029】
表示部26は、例えばCRT、LCDといったモニタであり、画像形成部14が形成した各種画像、生体信号計測器28が取得した生体信号波形、ドプラ波形生成部22が生成したドプラ波形、並びに警告生成部40が生成した警告等が表示される。また、表示部26には、ドプラ計測位置を示すカーソルも表示される。
【0030】
生体信号計測器28は、対象組織の生体信号を受信して生体信号データを生成する。生体信号データは、例えば心電波形や心音波形等である。生体信号データは表示制御部24に送られ表示部26に表示されるとともに、記憶部30に記憶される。
【0031】
記憶部30は、画像形成部14により形成された断層画像及びカラードプラ画像、ドプラ計測位置設定部20により設定されたドプラ計測位置、生体信号計測器28により計測された生体信号、及びドプラ波形生成部22により形成されたドプラ波形等が記憶される。また、超音波診断装置が有する種々の機能を動作させるためのプログラムや計測演算や推定演算の方式が格納されている。記憶部30は、例えば半導体メモリ、光ディスク、磁気ディスク等の記憶媒体である。或いは、ネットワークで接続される外部記憶媒体でもよい。
【0032】
記憶部30には、適正なドプラ波形を示す情報である適正波形情報32が記憶されている。適正波形情報32は、現在設定されているドプラ計測位置に対して超音波を送受波することにより取得されたドプラ波形(以下「現在ドプラ波形」と記載)を評価するために、現在ドプラ波形と比較するために用いられる。適正なドプラ波形は対象組織内の計測位置、或いは計測項目毎に異なるため、適正波形情報32は計測位置或いは計測項目毎にそれぞれ用意される。また、計測位置や計測項目が同じであっても被検体によって適正なドプラ波形が異なる場合があるため、適正波形情報32は被検体毎に用意されてもよい。
【0033】
適性波形情報32は、ドプラ波形そのもの(基準波形)であってよい。当然ながら、基準波形はドプラ波形として適切な波形である。この場合、例えば過去のドプラ計測により得られたドプラ波形が基準波形として記憶部30に記憶される。或いは、過去のドプラ計測により得られたドプラ波形のうち、ユーザにより指定されたもののみを基準波形として記憶するようにしてもよい。また、過去のドプラ計測により得られたドプラ波形を平均化したものを基準波形とするようにしてもよく、理想的なドプラ波形を用意し、これを基準波形としてもよい。今回のドプラ計測の開始時に、つまり計測位置設定時に、取得されたドプラ波形を適正波形情報32として記憶するようにしてもよい。
【0034】
適正波形情報32は、ドプラ波形それ自体ではなく、ドプラ波形の特徴を示す波形パラメータであってもよい。波形パラメータは、例えば過去のドプラ計測により得られたドプラ波形から求められる。波形パラメータとしては、例えば、波高、波形厚、減衰時間、及びノイズ量等がある。波形パラメータは、過去のドプラ計測により得られた波形から求められたもの、理想的なドプラ波形が有するパラメータであってもよい。
【0035】
波形評価区間設定部34は、現在ドプラ波形の評価を行う対象となる時間的な区間を設定する。例えば、生体信号計測器28が心電波形を取得した場合、当該心電波形に基づいて、R波から次のR波までの区間を心臓の1拍動周期として把握できる。そして、この区間を波形評価区間と設定することができる。この場合、心臓の1拍動周期毎に現在ドプラ波形が切り出され、評価されることになる。また、R波から任意の時間の区間だけを波形評価区間として設定することもできる。この区間は任意に設定してよく、ドプラ計測を行う項目に応じて設定してもよい。例えば、心臓の収縮期における血流速度を計測する場合には、心臓の収縮期のみにおいてドプラ波形の評価を行えば十分である。このような場合には、心電波形に基づいて、心臓の収縮期を波形評価区間に設定する。
【0036】
ドプラ波形評価部36は、現在ドプラ波形の評価を行う。現在ドプラ波形の評価は、波形評価区間設定部34により設定された区間において、現在ドプラ波形と適正波形情報32とを比較することにより行う。上述の通り、適正波形情報32は、計測位置や被検体等に応じて複数記憶されているため、ドプラ波形評価部36は、ユーザにより設定される計測項目等に応じて、適切な適正波形情報32を選択する。ドプラ波形評価部36が選択する適正波形情報32は、ユーザがドプラ計測を行いたい位置(以下目標計測位置と記載)における適正なドプラ波形或いは当該ドプラ波形のパラメータである。なお、目標計測位置は、1点の位置を示すものではなく、ある程度の範囲を有する概念である。本実施形態では、以下に説明するドプラ評価値が閾値以上となるドプラ波形が得られる計測位置の範囲を目標計測位置としている。
【0037】
同一の計測項目に対しても様々なパターンの適正波形情報32が記憶されている。例えば、計測項目「左室流入血流」に対応する適正波形情報32には、例えば種々の病変に応じた基準波形群が記憶されている。したがって、ドプラ波形評価部36は、基準波形群と現在ドプラ波形との比較評価を行って、基準波形群中から現在ドプラ波形に最も類似する波形を特定し、特定された基準波形との間で評価を行う。
【0038】
ドプラ波形評価部36は、現在ドプラ波形の評価を行うことで、現在ドプラ波形のドプラ評価値を算出する。ドプラ評価値は、現在ドプラ波形が目標計測位置におけるドプラ波形としてどの程度適正な波形であるかを示す指標であり、現在ドプラ波形と適正波形情報32とを比較して得られる一致度に基づいて算出される。ドプラ評価値は100分率で表されてよく、例えば現在ドプラ波形と適正波形情報32とが完全一致した場合に100となり、一致度が低下するにつれ評価値の数値も低下していく。算出されたドプラ評価値は、表示制御部24に送られて表示部26に表示される。
【0039】
現在ドプラ波形と適正波形情報32との比較は、様々な方法において行うことができる。例えば、適正波形情報32として基準波形が記憶されている場合は、相互相関関数等を用いた相関演算により現在ドプラ波形と基準波形との形状を比較する。
【0040】
適正波形情報32として波形パラメータが記憶されている場合は、現在ドプラ波形から適正波形情報32に対応するパラメータを抽出し、対応するパラメータ同士を比較する。例えば、波形パラメータとして波高、波形厚、ノイズ量、及び減衰時間の波形パラメータが適正波形情報32として記憶されている場合、ドプラ波形評価部36は、現在ドプラ波形の波高、波形厚、ノイズ量、及び減衰時間を抽出し、それぞれのパラメータを適正波形情報32と比較する。
【0041】
ドプラ波形評価部36は、算出したドプラ評価値に基づいて、現在ドプラ波形が適正な波形であるか否かを判定する。具体的には、算出したドプラ評価値が設定された閾値以上である場合は、現在ドプラ波形が適正波形であると判定し、ドプラ評価値が閾値より小さい場合は、現在ドプラ波形が適正な波形でないと判断する。当該閾値は、ユーザによって変更可能であってよい。閾値が高い程、現在ドプラ波形が適正波形であると判定される条件が厳しくなる。つまり、目標計測位置の範囲が狭まることになる。したがって、ドプラ計測位置をより精度良く設定したい場合は、閾値を高く設定すればよい。
【0042】
適正波形情報32は目標計測位置における適正なドプラ波形或いは波形パラメータであるから、現在ドプラ波形と適正波形情報32との一致度が低い、すなわち現在ドプラ波形のドプラ評価値が閾値より小さいということは、現在のドプラ計測位置が目標計測位置に設定されていないことを示している。したがって、このような場合は、現在のドプラ計測位置を目標計測位置に設定することが必要になる。
【0043】
ドプラ計測位置変更部38は、ドプラ波形評価部36が算出したドプラ評価値が閾値より小さい場合に、ドプラ計測位置を目標計測位置に変更する処理を行う。新たなドプラ計測位置は、様々な基準に基づいて設定することができる。新たなドプラ計測位置の設定方法は、後に
図4から
図6を用いて説明する。
【0044】
ドプラ計測位置変更部38により新たなドプラ計測位置が設定されると、ドプラ波形生成部22は、新たなドプラ計測位置において行われたドプラ計測により得られた受信信号に基づいてドプラ波形を生成する。そして、ドプラ波形評価部36が再度ドプラ波形の評価を行う。再度の波形評価において、ドプラ評価値が閾値より小さい場合は、ドプラ計測位置変更部38により再度ドプラ計測位置が変更される。このように、ドプラ計測位置変更部38は、ドプラ評価値が閾値以上になるまでドプラ計測位置を変更し続ける。これにより、ドプラ計測位置をドプラ評価値が閾値以上になる位置、すなわち目標計測位置に変更させる。
【0045】
警告生成部40は、ドプラ波形評価部36が算出したドプラ評価値が閾値以下である場合に、ユーザにそのことを認知させるための警告を生成する。警告は、表示部26にメッセージを表示するものであってもよいし、音或いは光による警告であってもよい。もちろん、これらを組み合わせた警告であってもよい。警告を発する閾値は、ドプラ計測位置変更部38がドプラ計測位置を変更する閾値と同じでなくてもよい。例えば、警告を発する閾値をドプラ計測位置の変更閾値よりも高く設定すれば、例えばユーザの手ぶれ等により徐々にドプラ計測位置が目標計測位置からずれていくような場合に、ドプラ計測位置が変更される前に警告を発して、ユーザにドプラ計測位置がずれていること及びドプラ計測位置を目標計測位置に戻すよう促すことができる。
【0046】
入力部42は、装置の各種操作を行うインターフェイスであり、キーボード、トラックボール、スイッチ、ダイヤル等の入力機器である。また、音声入力が可能であってもよい。入力部42は、ドプラ計測位置の設定、ドプラ計測を行う断面の種類、及び計測項目を設定するため等に用いられる。
【0047】
制御部44は、例えばCPUであり、システム全体を制御する。また、入力部42からユーザにより入力される指示に基づく制御を行うように動作する。
【0048】
以上が本実施形態に係る超音波診断装置の構成である。以下、
図1を参照しつつ
図2及び
図3を用いてドプラ波形評価部36の処理を説明する。
【0049】
図2は、現在ドプラ波形と適正波形情報とが比較される様子を示す概念図である。
図2には、ドプラ波形生成部22により生成された現在ドプラ波形50及び52と基準波形60との形状が、相互相関関数等を用いた相関演算により比較される様子が示されている。なお、現在ドプラ波形50及び52、並びに基準波形60は、心臓の1拍動周期分のドプラ波形である。これらは、波形評価区間設定部34により設定される波形評価区間に基づいて、ドプラ波形生成部22が生成したドプラ波形及び基準波形からそれぞれ切り出されたものである。
【0050】
上述の通り、現在ドプラ波形は波形厚を有する上、各時点においてその波形厚が異なる等、複雑な形状となっている。したがって、現在ドプラ波形50及び52と基準波形60との比較は、波形外形のみの比較とするようにしてもよい。波形外形とは、各時点において最も輝度が高い点、すなわち最も多く計測された流速成分の値を結んだ線であってもよく、各時点において計測された最高流速値を結んだ線であってもよい。
【0051】
波形外形のみの比較によると、比較される両波形間の各時刻における血流分布のばらつきの相違は検出できない。しかしながら、波形外形のみの比較においても、波高や減衰時間の比較は可能であり、ドプラ計測位置のずれを検出する意味においては波形外形のみの比較でも足りる場合が多い。波形外形のみの比較とすることにより、比較処理における演算量が低減させ、比較に要する時間を低減させることができる。もちろん、波形厚も考慮した波形比較を行うようにしてもよい。
【0052】
図2の例においては、現在ドプラ波形50の形状は基準波形60とほぼ同様であるため、そのドプラ評価値は100に近い数値が算出される。しかしながら、現在ドプラ波形52の形状は、基準波形90とは異なるものとなってしまっており、そのドプラ評価値はかなり低い数値(例えば20)が算出される。現在ドプラ波形が適正か否かの判断するドプラ評価値の閾値を50に設定すれば、現在ドプラ波形50は適正なドプラ波形であり、現在ドプラ波形52はそうではないと判定される。したがって、現在ドプラ波形50が計測されたドプラ計測位置は目標計測位置であり、現在ドプラ波形52が計測されたドプラ計測位置は目標計測位置ではないと判断できる。
【0053】
また、適正波形情報としてドプラ波形の特徴を示す波形パラメータを用いてもよい。
図3は、波形パラメータの例を示す図である。波形パラメータとして波高70及び72、減衰時間74、波形厚76、並びにノイズ量78が含まれる。波高70及び72は、ドプラ波形の高さであり、これは波形評価区間における血流のピーク時における流速を示すものである。減衰時間74は、血流速度がピークから0近傍になるまでの時間である。波形厚76は、上述の通り各時刻における血流速度の分布を表す。波形厚76が厚い程、その時刻のドプラ計測位置における血流速度の最高速度と最低速度との差が大きいことになる。ノイズ量78は、ノイズ、すなわちドプラ波形に含まれる血流速度を示すものではないと思われる部分の量である。ノイズであるか否かはノイズの波高等に基づいて判断される。
【0054】
適正波形情報として波形パラメータが用いられた場合は、現在ドプラ波形からこれらのパラメータを抽出し、適正波形情報とそれぞれのパラメータを比較し総合判断することでドプラ評価値を算出する。各パラメータについて重み付けをした上でドプラ評価値を算出してもよい。例えば、波形パラメータのうち波高が重要である場合には、波高の重み付けを大きくすることで、波高パラメータをドプラ評価値に大きく影響させることができる。これらの重み付けはユーザによって変更可能であってよく、また、計測項目に応じて異なる重み付けが設定されるようにしてもよい。
【0055】
以下、
図1を参照しつつ
図4から
図6を用いてドプラ計測位置変更部38の処理を説明する。
【0056】
図4は、現在のドプラ計測位置に基づいた探索範囲の例を示す図である。
図4には、断層画像形成部16により生成されるBモード画像80が示されている。
図4の例では対象組織は心臓である。Bモード画像80は対象組織である心臓82の断層画像となっており、心臓の左心室、左心房、右心室、及び右心房の断面が示されている。カーソル84が示す位置が現在のドプラ計測位置を示している。
【0057】
ドプラ波形評価部36において現在ドプラ波形のドプラ評価値が閾値以下であると判定されると、ドプラ計測位置変更部38は、現在ドプラ計測位置を中心とした矩形90を探索範囲として確定し、確定した探索範囲内において変更後のドプラ計測位置を設定する。これは、目標計測位置は現在のドプラ計測位置近傍に存在している場合が多いことに基づくものである。探索範囲の形状は、矩形90の他に、円形或いはスパース等であってもよい。探索範囲内における新たなドプラ計測位置の設定方法としては、力まかせ探索やランダム探索や山登り法などの一般的な探索手法を適用できる。所定の範囲に限って新たなドプラ計測位置を探索することにより、より早期に目標計測位置を見つけることを可能にしている。
【0058】
図5は、対象組織の基準部位に基づいた探索範囲の例を示す図である。ドプラ計測位置変更部38は、対象組織の基準部位、例えば心腔の輪郭や弁輪位置等の特定部位に基づいて探索範囲を確定するようにしてもよい。例えば、Bモード画像80を解析することにより心腔の輪郭を抽出し、心腔の輪郭内部を探索範囲とする。或いは、計測項目も参照して探索範囲を決定してもよい。例えば、計測項目として「左室流入血流」が指定されている場合には、
図5に示すように、画像解析により左室輪郭92を特定し、左室輪郭92内側を探索範囲とする。ユーザが設定した計測項目に即した範囲を探索範囲とし、この範囲に限って探索することにより、より早期に目標計測位置を見つけることを可能にするだけではなく、ユーザの意図しない位置にドプラ計測位置が設定されることを防ぐことを可能にしている。
【0059】
また、対象組織における特徴的な部位、例えば弁輪位置94を検出して、この弁輪位置94近傍の所定範囲を探索範囲としてもよい。心臓におけるドプラ計測は、弁間の血流速度を計測するために行われる場合が多い。このような場合に、目標計測位置である弁間により近い特徴的な部位である弁輪位置94を基準として探索範囲を確定することで、探索範囲をより正確な位置に確定できる。
【0060】
図6は、血流情報に基づいた探索範囲の例を示す図である。ドプラ計測位置変更部38は、カラードプラ画像形成部18が形成したカラードプラ画像に基づいて探索範囲を確定するようにしてもよい。
図6には、Bモード画像80にカラードプラ画像が重畳されたCFM画像86が示されている。CFM画像86には血流の速度分布96が示されている。速度分布96は、順流は赤、逆流は青等で着色されており、流速はその明度で示されるものである。ドプラ計測位置変更部38は、CFM画像86において、着色されている範囲、すなわち血流の速度分布96が示されている範囲を探索範囲とする。これは、ドプラ計測は血流速度を計測するために行われる場合が多く、この場合、目標計測位置は血流の存在する位置(特に血流の速度が大きい位置)である場合が多いことに基づくものである。
【0061】
以下、表示部26の表示例を参照しながら、本実施形態の具体的な処理を説明する。
【0062】
図7は、ドプラ計測位置が目標計測位置からずれた様子を示す図である。
図1を参照しながら
図7を説明する。
図7には、表示部26に表示される画面が示されている。画面上部中央には、断層画像形成部16により形成されたBモード画像80が表示されている。対象組織は心臓82である。Bモード画像80は、ドプラ計測が開始されるとフリーズされ(静止画状態とされ)るため、ドプラ計測中においては、Bモード画像80にはドプラ計測開始直前の心臓82の断層画像が表示される。Bモード画像80上に、現在のドプラ計測位置を示すカーソル84が示されている。
【0063】
画面下部には、ドプラ波形生成部22により生成された現在ドプラ波形100及び生体信号計測器28により計測された心電波形102が表示されている。現在ドプラ波形100は、カーソル84が示すドプラ計測位置における血流速度を示す波形である。現在ドプラ波形100が含まれるグラフの横軸は時間を表し、縦軸は血液の流速を表す。心電波形102は、心臓82の活動の様子を電気的に示す波形であり、生体信号計測器28が取得した生体信号に基づいて生成される。心電波形102が含まれるグラフの横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。現在ドプラ波形100及び心電波形102のグラフには現在時刻を示す現時刻バー110が示されている。心電波形102により、ユーザは、現在ドプラ波形100と心臓82の拍動周期における時相との関係を把握することができる。
【0064】
画面上部右側には、ドプラ評価値の時間的な推移を示すドプラ評価値波形104、及び現在のドプラ評価値を表示するドプラ評価値欄124が表示されている。ドプラ評価値欄124は、現在時刻におけるドプラ評価値の値であり、上述の通り現在ドプラ波形と適正波形情報32との比較によって算出される。ドプラ評価値は百分率で示されており、数値が高い程適正な波形である。ドプラ評価値波形104が含まれるグラフの横軸は時間を表し、縦軸はドプラ評価値を表す。ドプラ評価値波形104が含まれるグラフにも現在時刻を示す現時刻バー112が表示されている。ユーザはドプラ評価値波形104により、ドプラ評価値の時間的推移を把握することができる。
【0065】
画面上部左側には、断面種類欄120及び計測項目欄122が表示されている。断面種類欄120は、Bモード画像80の断面種類を表示する欄である。断面種類は、ユーザにより入力部42から入力されてもよいし、或いは、断層画像解析部16がBモード画像に対して解析を行うことにより、断面種類を自動判定するようにしてもよい。
図7に示されたBモード画像80の断面種類は「心尖部4腔断面」である。計測項目欄122は、ドプラ計測の対象を表示する欄である。計測項目は、ユーザにより入力部42から入力される。断面種類や計測項目に基づいて、ドプラ評価値の算出のため現在ドプラ波形との比較に用いる適正波形情報が選択される。
【0066】
現在ドプラ波形100及び心電波形102が複数の時間的区間T1、T2、T3、及びT4に分割されている。これは、波形評価区間設定部34により設定される波形評価区間を示すものである。波形評価区間を示す一点鎖線等は実際には表示されていないが、ユーザが波形評価区間を把握できるよう、これらを表示するようにしてもよい。
図7の例においては、波形評価区間は心臓の1心拍の期間に設定されている。
【0067】
図7の例は、波形評価区間T1、T2、及びT3においてはドプラ計測位置が目標計測位置に設定されていたが、波形評価区間T4において手ぶれ等によりドプラ計測位置が目標計測位置からずれてしまった例である。現在ドプラ波形100が示す通り、T4においては、ドプラ波形の波高が低くなる等T1〜T3におけるドプラ波形とは異なるものとなっている。ドプラ評価値欄124が示す通り、現在時刻(波形評価区間T4に含まれる)におけるドプラ評価値は20となっている。本実施形態では、ドプラ波形が適正であるか否かの判断の基準となるドプラ評価値の閾値は50に設定されており、波形評価区間T4における現在ドプラ波形は、ドプラ波形評価部36に適正なドプラ波形ではないと判定される。
【0068】
適正なドプラ波形ではないと判定されたことをユーザが把握できるよう、波形評価区間T4における現在ドプラ波形は、適正であると判定された区間の現在ドプラ波形とは異なる色で表示される等、両波形が識別可能な態様で表示される。また、ドプラ波形評価値が閾値以下となった場合は、警告生成部40により生成された警告メッセージを併せて表示される。
【0069】
図8は、ドプラ計測位置が目標計測位置に再設定された様子を示す図である。
図1を参照しながら
図8を説明する。
図8は、
図7の状態から一定時間経過した後の表示部26の表示を示すものである。
図7には、波形評価区間T1〜T4が示されていたが、
図8においては波形評価区間T3〜T6が示されている。
図7における波形評価区間T3及びT4と
図8における波形評価区間T3及びT4は同一の区間である。
【0070】
上述の通り、波形評価区間T4において、ドプラ波形評価部36によりドプラ評価値が閾値以下であると判定された。すなわち、波形評価区間T4においてドプラ計測位置が目標計測位置からずれたと判定された。それを受けて、波形評価区間T4の経過時において、ドプラ計測位置変更部38によりドプラ計測位置を変更する処理が行われる。そして、波形評価区間T5において、変更後のドプラ計測位置における現在ドプラ波形が生成される。
【0071】
図8の例では、波形評価区間T5における現在ドプラ波形のドプラ評価値も閾値以下と判定された。すなわち、変更後のドプラ計測位置も目標計測位置ではなかったことになる。そのため、波形評価区間T5の経過時において、ドプラ計測位置変更部38により再度ドプラ計測位置が変更される。そして、波形評価区間T6において、再度変更されたドプラ計測位置における現在ドプラ波形が生成される。波形評価区間T6における現在ドプラ波形のドプラ評価値は、ドプラ評価値欄124に示されるよう90になっており、閾値である50以上となっている。すなわち、再度変更されたドプラ計測位置は目標計測位置ということになる。以上のように、
図8の例では、2回のドプラ計測位置変更処理により、ドプラ計測位置が目標計測位置に変更されている。
図8に示されるドプラ評価値波形104には、ドプラ評価値が徐々に改善されていく様子が示されている。
【0072】
以下、本実施形態に係る超音波診断装置の処理の流れを説明する。
図9は、本実施形態に係る超音波診断装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図1を参照しながら、
図9のフローチャートについて説明する。
【0073】
ステップS10において、ドプラ計測位置設定部20は、初期ドプラ計測位置を設定する。上述のように、ユーザが入力部42におけるトラックボール等を用いて、表示部26に表示されたBモード画像上においてカーソルを動かすことにより初期ドプラ計測位置を指定する。ドプラ計測位置設定部20は、指定された位置を初期ドプラ計測位置に設定する。
【0074】
ステップS12において、ドプラ波形生成部22は、ドプラ計測位置に対して送受波された超音波信号に基づいて、ドプラ計測位置における血流速度示す現在ドプラ波形を生成する。
【0075】
ステップS14において、波形評価区間設定部34は、生体信号計測器28が取得した心電波形に基づいて、現在ドプラ波形の評価の対象となる区間である波形評価区間を設定する。本実施形態では、心電波形に基づいて心臓の1心拍期間が波形評価区間として設定される。
【0076】
ステップS16において、ドプラ波形評価部36は、ステップS12で生成された現在ドプラ波形の評価を行い、ドプラ評価値を算出する。現在ドプラ波形の評価はステップS14において設定された波形評価区間において行う。また、現在ドプラ評価値の算出は、上述の通り、記憶部30に記憶された適正波形情報32と現在ドプラ波形とを比較することで行う。
【0077】
ステップS18において、表示制御部24は、ドプラ波形評価部36から算出したドプラ評価値を受け取り、ドプラ評価値を表示部26に表示する処理を行う。
【0078】
ステップS20において、ドプラ波形評価部36は、ドプラ評価値が閾値以上であるか否かを判定する。ドプラ評価値が閾値以上であれば、現在のドプラ計測位置は目標計測位置であると判断できるため、再度ステップS12に戻り、そのまま継続して現在のドプラ計測位置においてドプラ計測を行う。ドプラ評価値が閾値よりも小さい場合、現在のドプラ計測位置は目標計測位置からずれてしまっていると判断できるため、以下のステップS22及びS24において警告の出力及びドプラ計測位置の変更を行う。
【0079】
ステップS22において、警告生成部40は、ドプラ評価値が閾値より小さいことをトリガとして警告メッセージを表示制御部24に出力し、表示制御部24は当該警告メッセージを表示部26に表示させる処理を行う。
【0080】
ステップS24において、ドプラ計測位置変更部38は、ドプラ評価値が所定より小さいことをトリガとして、現在のドプラ計測位置を変更する処理を行う。ドプラ計測位置の変更処理の終了後、再度ステップS12に戻り同様の処理を行う。変更されたドプラ計測位置が目標計測位置であるか否かの判断は、再度のステップS20において判断される。このように、ドプラ評価値が閾値より小さい限りにおいて、すなわちドプラ計測位置が目標計測位置でない位置に設定されている限りにおいて、ドプラ位置の変更が連続的に行われる。この処理によって、目標計測位置からずれてしまったドプラ計測位置を目標計測位置に再度設定する。
【0081】
本実施形態によれば、体動や手ぶれ等によってドプラ計測位置が目標計測位置からずれても、常に良好なドプラ波形が取得できるようにドプラ計測位置を探索して修正するように動作する。したがって、ユーザがドプラ計測位置を再設定する手間を軽減することが可能になる。これにより、検査効率を向上させるだけではなく、誰でも良好なドプラ波形が得られるようにドプラ計測位置を変更することができるので、ユーザ間における計測結果の差を低減させることができる。
【解決手段】ドプラ波形生成部22は、設定されたドプラ計測位置においてドプラ計測を行い、現在ドプラ波形を生成する。ドプラ波形評価部36は、生成された現在ドプラ波形を評価し、現在ドプラ波形が目標計測位置における適正なドプラ波形であるか否かを判定する。現在ドプラ波形が目標計測位置における適正な波形でないと判定された場合に、ドプラ計測位置変更部38は、ドプラ計測位置を変更する処理を行う。ドプラ計測位置の変更は、変更後のドプラ計測位置が目標計測位置となるまで連続的に行う。