特許第5771330号(P5771330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771330
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】静電気放電保護用回路装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20150806BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20150806BHJP
   H02H 9/04 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H02H9/04 B
   H02H9/04 A
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-523299(P2014-523299)
(86)(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公表番号】特表2014-523145(P2014-523145A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2012064887
(87)【国際公開番号】WO2013020853
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2014年4月1日
(31)【優先権主張番号】102011109596.2
(32)【優先日】2011年8月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505325040
【氏名又は名称】アーエムエス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ams AG
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ラインプレヒト, ヴォルフガング
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−147068(JP,A)
【文献】 特開2007−096150(JP,A)
【文献】 特開2009−152484(JP,A)
【文献】 特開2008−251755(JP,A)
【文献】 特表2009−534845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
H02H 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続端子(IO)と第2の接続端子(VDD,VSS)との間での静電気放電のバイパスに適したバイパス装置(ECL)と、
補償装置(1)であって、第1の抵抗(RS)および電界効果トランジスタ(T1)の直列回路が前記第1の接続端子(IO)と前記第2の接続端子(VDD,VSS)との間に接続され、前記第1の抵抗(RS)と前記電界効果トランジスタ(T1)との間の接続ノード(K1)がRC直列回路(RF,CF)を介して前記電界効果トランジスタ(T1)のゲート端子(G1)に接続され、前記RC直列回路(RF,CF)は第2の抵抗(RF)とコンデンサ(CF)とを有し、前記接続ノード(K1)と前記ゲート端子(G1)との間でローパスフィルタとして作用し、前記RC直列回路(RF,CF)の時定数が前記第1の接続端子(IO)での静電気放電で予測されるパルスの立ち上がり時間より長くなるようにスケーリングされる補償装置と、
を備えることを特徴とする静電気放電保護用の回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回路装置において、
前記補償回路(1)は、電圧リミッタ(2)を備え、
前記電圧リミッタは、前記電界効果トランジスタ(T1)の前記ゲート端子(G1)と前記第2の接続端子(VDD,VSS)との間に接続され、前記電界効果トランジスタ(T1)のゲート電圧を前記電界効果トランジスタ(T1)のゲート絶縁破壊電圧より小さく維持することを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回路装置において、
前記電圧リミッタ(2)は複数の、ダイオードとして接続されたトランジスタ(T2,T3,T4)を備えることを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回路装置において、
前記回路装置は、停止装置(3)を備え、
前記停止装置は、停止信号に基づいて、前記電界効果トランジスタ(T1)の前記ゲート端子(G1)と前記第2の接続端子(VDD,VSS)とを接続することを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項4に記載の回路装置において、
前記停止装置(3)は、前記電界効果トランジスタ(T1)の前記ゲート端子(G1)を前記第2接続端子(VDD,VSS)に接続するトランジスタスイッチ(T5)を備えることを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回路装置において、
前記トランジスタスイッチ(T5)は、バイアス電流によって制御可能であることを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の回路装置において、
前記トランジスタスイッチ(T5)は、電源電位端子(VDD)における電圧に基づいて制御可能であることを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の回路装置において、
前記第1の接続端子(IO)における静電気放電のパルスが、前記電界効果トランジスタ(T1)の前記ゲート端子(G1)に対してフィルタ除去されるように、前記RC直列回路(RF,CF)はスケーリングされていることを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の回路装置において、
記第1の接続端子(IO)における有効信号のエッジが、前記電界効果トランジスタ(T1)の前記ゲート端子(G1)に対してフィルタ除去されるように、前記RC直列回路(RF,CF)はスケーリングされていることを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の回路装置において、
前記RC直列回路(RF,CF)の時定数が前記第1の接続端子(IO)での有効信号のエッジの立ち上がり時間より長くなるようにスケーリングされていることを特徴とする回路装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の回路装置において、
前記第1の接続端子(IO)は、入力/出力端子であり、前記第2の接続端子は基準電位端子(VSS)または電源電位端子(VDD)であることを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の回路装置おいて、
前記第1の抵抗(RS)は、最大で1kΩの値を有することを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の回路装置おいて、
前記予測されるパルスの立ち上がり時間は、20nsであることを特徴とする回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気放電保護用の回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、静電気放電によって重大な損傷を与えられ、あるいは破壊すらされてしまう。静電気放電(Electrostatic Discharge, ESD)によって、たとえば集積回路の接続端子で過電圧が生成されると、この回路を通る大電流が生じ得る。集積回路の個々の構成部分がこのような大電流に曝されない場合でも、この構成部分が損傷し、このため場合によっては集積回路全体が損傷され得る。
【0003】
このため、集積回路にはますますESD保護装置が使用される。この保護装置は静電気放電が生じた際に、放電をバイパスさせるための他の電流路を別に形成する。このような保護回路は、たとえば閾値電圧を越えるかまたはパルス状の過電圧が発生することによって起動される。
【0004】
静電気放電に対する充分な保護を得るためには、高い感度を有する適合したトリガ回路が用いられる。しかしながら、ESDパルスの発生の際には、実際の過電圧パルスの前に、電圧上昇が発生し、これが保護回路の信頼性に影響を与える。このような電圧過上昇は、とりわけ集積回路のESD耐性を調べる試験の際あるいは試験装置において発生し得る。これは、このような試験の有効性が制限される結果をもたらす。さらに、従来のESD保護回路の応答特性は不十分であり、これによって集積回路は、静電気放電に対して制限された信頼性で保護されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、静電気放電に対する信頼性のある手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、独立請求項に記載の発明により解決される。実施形態例および変形例は、それぞれ従属項に記載されている。
【0007】
たとえば静電気放電に対する保護のための回路装置の1つの実施形態は、第1の接続端子と第2の接続端子との間を迂回するのに適合したバイパス装置(Ableitvorrichtung)の他に、この第1および第2の接続端子の間に補償装置(Kompensationsvorrichtung)が追加で接続される。このバイパス装置は、たとえば独立した、あるいは組み込まれたトリガ部が接続されたバイパストランジスタを備える。補償装置は、たとえば上記の第1および第2の接続端子の間の電圧の振る舞いを監視し、静電気放電に先だって、たとえばチャージ(Ladungen)に基づいて過電圧をバイパスする。しかしながら、実際の静電気放電は、好ましくはバイパス装置でバイパスされる。とりわけこのバイパス装置の応答特性は、バイパスされたプリチャージ(Vor-Ladungen)によって改善される。
【0008】
回路装置の1つの実施形態によれば、この補償装置は第1の抵抗と電界効果トランジスタとの直列回路を備え、この直列回路は第1の接続端子と第2の接続端子との間に接続されている。この第1の抵抗と電界効果トランジスタとの間の接続ノードは、第2の抵抗とコンデンサとを備えるRC直列回路を介してこの電界効果トランジスタのゲート端子と接続されている。このRC直列回路は、上記の接続ノードと電界効果トランジスタのゲート端子との間でローパスフィルタとして機能する。
【0009】
この回路装置が動作しているときには、この電界効果トランジスタは、ゲート端子への適切な電圧によってON制御され(aufgesteuert)、たとえば第1の接続端子のプリチャージによる過電圧は、第1の抵抗およびこの電界効果トランジスタの制御経路を介して第2の接続端子に導かれてバイパスされる。特にバイパスはバイパス電流によって行われ、このバイパス電流は特に第1の抵抗の値によって決定されている。たとえば、この第1の抵抗の値を最大で1kΩに設定すると、電界効果トランジスタの電流制限を可能とし、また充分かつ信頼性のある、過電圧のバイパスも可能とすることができる。
【0010】
過電圧または第1の接続端子のプリチャージに基づくプリチャージ電圧は、たとえば数十V程度である。好ましくない場合には、このプリチャージ電圧は、ESD保護回路の絶縁破壊電圧のほとんどすぐ下まで上昇する。
【0011】
電界効果トランジスタの制御経路の電流制限を行う、この第1の抵抗を介して、たとえば電界効果トランジスタのスナップバック(Spannungsruckschlag)が阻止される。
【0012】
RC直列回路のコンデンサは、ミラーコンデンサのように作用し、第1の接続端子での低周波電圧は、電界効果トランジスタをON制御(aufsteuern)することができる。これに対し高周波信号は、フィルターすなわちフィルター除去され、これにより電界効果トランジスタのON制御には関与しない。とりわけ、たとえばプリチャージ電圧は、ESDパルスと比較すると、直流のように作用する。これはプリチャージは実際のESDパルスより長時間維持されるからである。
【0013】
電界効果トランジスタのON制御の際には、たとえば第1の接続端子での電圧は、少なくともこの電界効果トランジスタの閾値電圧まで放電される。
【0014】
様々な実施形態で、第1の接続端子での静電気放電のパルスが、電界効果トランジスタのゲート端子に対しては、フィルタあるいはフィルタ除去されるように、RC直列回路がスケーリングされる。たとえばESDパルスの立ち上がり時間は約20nsである。ここで、コンデンサおよび第2の抵抗は、RC直列回路の時定数が通常のESDパルスの立ち上がり時間より長くなるように、スケーリングされる。
【0015】
他の実施形態では、このRC直列回路は、特に電界効果トランジスタのゲート端子に対して、第1の接続端子での既知の立ち上がり時間を有する有効信号(Nutzsignal)のエッジ(Flanke)がフィルタあるいはフィルタ除去される。たとえば、第1の接続端子が入力/出力端子であると、これを介してパルス状の有効信号が伝搬される。このようなパルス状の有効信号の信号形状は、通常はある限界値で規定され、有効信号の信号エッジの立ち上がり時間はほぼ既知である。コンデンサおよび第2の抵抗は、パルス形状の有効信号が、エッジの急峻さに基づいて、電界効果トランジスタのゲート端子に到達しないように、またこれによりこの有効信号に基づく電界効果トランジスタのON制御が行われないように選択される。
【0016】
RC直列回路のスケーリングは、とりわけローパスフィルタの遮断周波数に関して、とりわけESDパルスについても、またパルス形状の有効信号についても行われ、これら両者に対して所望の応答が得られるようにされる。
【0017】
第2の接続端子は、回路装置の様々な実施形態で、基準電位端子または電源電位端子である。たとえば電界効果トランジスタがnチャネル電界効果トランジスタで実装されると、この場合には第1の接続端子から第2の接続端子へのバイパスが行われ、この第2の接続端子は基準電位端子または接地電位端子として実装される。他の実施形態で、この電界効果トランジスタはpチャネル電界効果トランジスタで実装されると、この場合には電源電位端子へのバイパスが行われる。
【0018】
この電界効果トランジスタは、低電圧アプリケーションまたは高電圧アプリケーションに適用することができる。進歩する技術に関連して、低電圧アプリケーションは、たとえば電界効果トランジスタのゲート端子の最高電圧が5V,3.3V,または1.8Vとなっている。しかしながら一般的に高電圧領域は、低電圧領域とは逆に、とりわけ集積回路においては、要求されている動作電圧が電界効果トランジスタの酸化ゲートの絶縁破壊電圧を越えるように設定されかねない。これに対応して、この高電圧アプリケーションの場合には、電界効果トランジスタのゲート端子での電圧制限を行うことが望ましい。
【0019】
これに対応して、回路装置の1つの実施形態では、補償装置は、電界効果トランジスタのゲート端子と第2の接続端子との間に、電圧リミッタを備える。この電圧リミッタは、電界効果トランジスタのゲート電圧を電界効果トランジスタのゲート絶縁破壊電圧より小さくするように設定されている。これによって、高電圧アプリケーションの場合でも、確実で信頼性の高い回路装置の動作を保証することができる。
【0020】
たとえばこの電圧リミッタは、様々な実施形態例において複数のダイオードあるいはダイオードとして接続されたトランジスタを備える。ここでこれらのダイオードの各々あるいはダイオードとして接続されたトランジスタの各々は、規定の順方向電圧を有し、これによって、電界効果トランジスタのゲート端子での限界値は個々の順方向電圧の和で与えられる。この結果、要求された限界値と既知の順方向電圧とから、必要なダイオードの数あるいはダイオードとして接続されたトランジスタの数が求められる。
【0021】
様々な実施形態で、この回路装置は、集積回路を、とりわけ組み込まれていない状態で保護する。ただし、集積回路は、組み込まれた状態では、このような保護は要求されておらず、あるいは必要でない。たとえば、人による接続端子への接触に基づく静電気放電に対する保護は、主に集積回路が組み込まれていない状態で必要である。
【0022】
もう1つの実施形態では、この回路装置は、たとえば停止装置を備える。この停止装置は、停止信号に基づいて、電界効果トランジスタのゲート端子と第2の接続端子とを接続し、特に低抵抗で接続する。このゲート端子の第2の接続端子との接続によって、電界効果トランジスタのON制御およびこれによる第1および第2の接続端子間の導通チャネルの形成が阻止される。これに伴い、補償装置は、対応した停止信号によって停止される。
【0023】
たとえば、この停止装置は、電界効果トランジスタのゲート端子を第2の接続端子に接続するトランジスタスイッチを備える。これにより、このトランジスタスイッチがON制御されると、補償装置は停止される。
【0024】
様々な実施形態において、このトランジスタスイッチはバイアス電流によって制御可能である。たとえばこのバイアス電流はバイアス電流源から供給されるが、このバイアス電流源は保護される集積回路の一部であり得る。とりわけこのスイッチングトランジスタを制御するバイアス電流は、充分な駆動電圧が存在するという場合に供給される。
【0025】
このトランジスタスイッチは、電源電位端子における電圧に基づいて制御することができる。たとえばパワーオンリセットすなわちPORスイッチが設けられ、このスイッチは充分な駆動電圧が存在する場合に、この回路の稼働状態を示すデジタル信号を供給する。このトランジスタスイッチは、このデジタル信号によって、上記の補償装置を停止するようにON制御される。
【0026】
上記の様々な実施形態は、使用目的に適合した回路装置、とりわけ適合した補償装置を得るために任意に組み合わせることができる。
【0027】
本発明は、複数の実施形態について図を参照して以下に詳細に説明される。機能あるいは作用が同等の要素はここでは同じ符号としている。以下の図において、同じ符号の要素について、図中の各要素の説明および定義は同様である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】静電気放電保護用の回路装置の実施形態を示す図である。
図2】静電気放電保護用の回路装置のもう1つの実施形態を示す図である。
図3】静電気放電保護用の回路装置のもう1つの実施形態を示す図である。
図4】静電気放電保護用の回路装置のもう1つの実施形態を示す図である。
【0029】
図1は、静電気放電保護用の回路装置の1つの実施形態を示す。この実施形態では、第1の接続端子IOと第2の接続端子VSSとの間にバイパス装置ECLが接続されている。この第1の接続端子は、たとえば入力/出力端子であるが、第2の接続端子VSSは、たとえば基準電位端子または接地電位端子である。さらに、これら第1および第2の接続端子IO,VSSの間には、補償装置1が接続されており、この補償装置は第1の抵抗RSとnチャネル電界効果トランジスタT1とを備える。ここでこの第1の抵抗が第1の接続端子IOでの第1の端子と、トランジスタT1のドレイン端子での第2の端子とに接続されているが、このトランジスタT1のソース端子は、第2の接続端子VSSと接続されている。この第1の抵抗RSとトランジスタT1との間の接続ノードK1は、第2の抵抗RFとコンデンサCFとからなるRC直列回路を介してこのトランジスタT1のゲート端子G1と接続されている。
【0030】
バイパス装置ECLは、たとえば第1の接続端子IOと第2の接続端子VSSとの間でのESD発生による静電気放電をバイパスするように配設されている。このバイパス装置は、たとえばここでは一般的な電界効果トランジスタまたはバイポーラトランジスタを備え、あるいはより高電圧をバイパスするための他の公知の半導体素子を備える。さらに、様々な実施形態で、このようなバイパス装置は、第1の接続端子IOでの適合した電圧の印加または適合したパルスの生成の際にバイパス素子を制御するように作用する、適合したトリガ装置を備える。
【0031】
このバイパス装置ECLの動作信頼性試験の場合および実際のESDパルスが第1の接続端子IOに生じる場合では、いわゆるこの第1の接続端子への、たとえば帯電源(geladenen Quelle)の近接によるプリチャージが起こり、これによりこの第1の接続端子IOでのプリチャージ電圧が生成される。このようなプリチャージ電圧は、通常では高速に発生するESDパルスに比べ、低周波成分のみを含んでいる。RC直列回路RF,CFは、この際このプリチャージ電圧の低い周波数成分が、ミラーコンデンサとして作用するコンデンサCFを介して、トランジスタT1のゲート端子G1に到達してこのトランジスタT1の制御経路をON制御するように、スケーリングされている。このプリチャージあるいはプリチャージ電圧は、次に第1の抵抗RSおよびON制御されたトランジスタT1を介して第2の接続端子VSSに流れる。これに伴い、第1の接続端子での電圧は少なくともトランジスタT1の閾値電圧まで低下する。
【0032】
実際のESDパルスのプリチャージのバイパスが行われた後、または行われる時に、このESDパルスが上記のバイパス装置によって良好に検知され、このESDパルスのバイパスが高い信頼性で行われる。さらに、このバイパス装置でのトリガー発生はより高速に行うことができ、ESDパルスによって起こり得る障害状態が速やかに解消される。ESDパルスによる電圧が、RC直列回路RF,CFのフィルタ作用のためにゲート端子G1に到達せず、したがって実際のESDパルスの場合にはトランジスタT1の望ましくないON制御は行われない。
【0033】
このRC回路RF,CFは、様々な実施形態においてとりわけ、第1の接続端子IOでのESDパルスでも、パルス状の有効信号でもトランジスタT1がON制御されないようにスケーリングされる。このため、とりわけローパスフィルタとして作用するRC直列回路RF,CFの時定数は、適切な抵抗およびコンデンサのスケーリングにより、この時定数がパルスエッジあるいはESDパルスの予測される立ち上がり時間より長くなるように選択される。さらに、RC直列回路RF,CFのスケーリングの際には、トランジスタT1のゲートとドレインとの間のコンデンサ容量も考慮されてよい。このRC直列回路RF,CFはこのように、第1の接続端子とゲート端子G1との間のローパスフィルタのように作用する。
【0034】
このRC回路RF,CFを用いて、とりわけ第1の接続端子でのプリチャージ電圧の瞬時的な波形が、電界効果トランジスタT1をON制御し、プリチャージ電圧をバイパスするために、ゲート端子G1に入力されることができる。
【0035】
たとえば、この第1の抵抗RSの値を最大で1kΩに設定すると、電界効果トランジスタT1の電流制限を可能とし、また充分かつ信頼性のある、過電圧のバイパスも可能とすることができる。電界効果トランジスタの制御経路の電流制限を行う、この第1の抵抗RSを介して、たとえば電界効果トランジスタT1のスナップバック(Spannungsruckschlag)が阻止される。
【0036】
図2は、静電気放電保護用の回路装置のもう1つの実施形態を示し、特に図1に示す実施形態の変形例を形成する。図1に示す要素に追加されているものでは、補償装置1は、トランジスタT1のゲート端子G1と第2の接続端子VSSとの間に接続された電圧リミッタ2を備える。この電圧リミッタ2は複数の、ダイオードとして接続されたトランジスタT2,T3,T4を備える。これらのトランジスタT2,T3,T4は、たとえばnチャネル電界効果トランジスタで実装されている。
【0037】
補償装置1は、さらに停止装置3を備え、この停止装置は、そのゲート端子G1が第2の接続端子VSSと接続されたトランジスタT5を含む。トランジスタスイッチT5は、他のもう1つのカレントミラートランジスタT6に接続されており、この制御経路はバイアス電流源4から電源供給されている。このバイアス電流源4は、電源電位端子VDDと接続されている。
【0038】
この電圧リミッタ2によって、トランジスタT2,T3,T4がそれぞれ、ゲート端子G1でのゲート電圧は所定の値に上昇することができる。この所定の値はトランジスタT2,T3,T4の順方向電圧に対応する。これによって、ゲート端子G1でのゲート電圧が、このトランジスタT1のゲート酸化層が損傷または破損される電圧である許容ゲート絶縁破壊電圧より上昇することを阻止することができる。したがって、この回路装置あるいは保護される集積回路の通常の動作においても、上記のトランジスタT1のゲート絶縁破壊電圧より高い電圧が発生する場合に、このような電圧リミッタはとりわけ望ましいものである。
【0039】
ここでは3つのトランジスタT2、T3、T4のみが示されているが、この電圧制限を確定するためにダイオードとして接続されるトランジスタをさらに直列に接続して、所望の電圧制限を行ってよい。トランジスタT1の適切なスケーリングを行う場合は、特にそのゲート絶縁破壊電圧に関しては、この電圧リミッタ2は省いてもよい。
【0040】
この停止装置3を用いて、トランジスタT5のON制御を行うことによって、ゲート端子G1と第2の接続端子VSSとの間に低抵抗接続を形成することができる。これにより、トランジスタT1のON制御および導通チャネルの形成を阻止される。これに伴い、補償装置1は、そのバイパス機能が停止される。
【0041】
たとえば、保護される集積回路の動作中では、第1の接続端子IOの電圧が他にバイパスされることを阻止することが望ましい。このため、適切な電源電圧の電源電位端子VDDへの印加の際には、バイアス電流源4を介して適切なバイアス電流が生成され、このバイアス電流は、トランジスタT6のON制御およびトランジスタT5のカレントミラー回路のために作用する。この結果、この補償装置1は、停止信号として適切なバイアス電流を供給することによって、あるいは適切な電源電圧を供給することによって停止される。
【0042】
この停止装置3は、とりわけ補償装置2が、保護される回路が取付けられていない状態でのみ動作可能である場合に有利である。この取付けられていない状態では、すなわち電源電圧が無いために停止信号が供給されず、したがってこの補償装置1は動作中である。実際のESDパルスに先だって、プリチャージに基づく過電圧がバイパスされることができ、これに対しこの回路装置を有する集積回路の取付け後、あるいは動作中に、供給される電源電圧に基づいて補償装置1が自動停止される。
【0043】
図3は、静電気放電保護用の回路装置のもう1つの実施形態を示し、図1に示す実施形態あるいは図2に示す実施形態の変形例である。図2に示す実施形態と異なり、停止装置3は、ゲート端子G1と第2の接続端子VSSとの間に接続されたトランジスタT5のみを備える。このトランジスタT5は、パワーオンリセット回路5によって駆動される。このパワーオンリセット回路は、電源電圧端子VDDに充分な電源電圧がある場合に、停止装置3あるいはトランジスタT5の停止信号として作用する適切な信号を生成する。その他、図3に示す実施形態での停止の原理は、図2で説明した原理の通りである。
【0044】
上記に記載した実施形態では、第1の抵抗RSおよび電界効果トランジスタT1の直列回路は、入力/出力端子と基準電位端子との間に接続されており、ここでトランジスタT1は、nチャネル電界効果トランジスタとして実装されている。しかしながら、様々な実施形態および変形例では、pチャネル電界効果トランジスタを用いることもでき、この際には極性の適切なマッチングが考慮される。
【0045】
図4は、図1に示す実施形態の変形例である、静電気放電保護用の回路装置の1つの実施形態を示す。ここでこの電界効果トランジスタT1は、pチャネル電界効果トランジスタとして実装されており、そのソース端子は電源電位端子VDDに接続されている。この電源電位端子VDDは、同時に第2の接続端子を形成し、これに対し第1の接続端子IOはここでも入力/出力端子によって形成されている。第1の抵抗RS、バイパス装置ECLおよびRC直列回路RF,CFは、それぞれ上記で説明した実施形態で示す要素に対応する。
【0046】
これに対応して、図4に示す実施形態の動作および作用は、図1に示す実施形態で極性の変更を考慮したものと同じかまたは同様である。図2および図3に示す変形例あるいは応用例では、とりわけ電圧リミッタ2および停止装置3は、図4に示す実施形態を補完している。
図1
図2
図3
図4