特許第5771336号(P5771336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5771336-向上した触媒安定性を有する酢酸の製造 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771336
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】向上した触媒安定性を有する酢酸の製造
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/12 20060101AFI20150806BHJP
   C07C 53/08 20060101ALI20150806BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150806BHJP
   C07F 9/54 20060101ALN20150806BHJP
【FI】
   C07C51/12
   C07C53/08
   !C07B61/00 300
   !C07F9/54
【請求項の数】22
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-547483(P2014-547483)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-500838(P2015-500838A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】US2012069748
(87)【国際公開番号】WO2013090720
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】61/576,514
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ル・ベール,キャロル・マリー
(72)【発明者】
【氏名】グエン,デュック・ハン
(72)【発明者】
【氏名】セルプ,フィリップ・ジル
(72)【発明者】
【氏名】カルク,フィリップ・ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】トーレンス,ジー・ポール
【審査官】 緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−524705(JP,A)
【文献】 特開昭60−239434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
C07B 31/00− 63/04
C07F 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体を含む反応器内において、一酸化炭素を、メタノール、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメチルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の反応物質と液相中で反応させて、酢酸を含む液体反応生成物を生成させる工程、ここで、反応媒体は、有限量の水、ロジウムを含む均一触媒、アルキルハロゲン化物促進剤、及び非対称ホスホニウムカチオン:[PR(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して置換又は非置換のC以上のアルキルである)をヨウ化物塩として含む触媒安定剤を含み;そして
反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として、3〜35重量%の全ヨウ化物イオン濃度及び1重量%より高いアルキルハロゲン化物促進剤濃度に維持する工程;
を含む酢酸の製造方法。
【請求項2】
、R、R、及びRは、全てが同じ、置換又は非置換のC以上のアルキル基という訳ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非対称ホスホニウムカチオンが、[RPR’]又は[RPR’(式中、Rは、直鎖又は分岐のブチル、ヘキシル、又はオクチルであり;R’は、エチル、プロピル、或いは直鎖又は分岐のブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、又はヘキサデシルであり、但しRとR’は異なる)で表されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ホスホニウムカチオンを、反応媒体中において、反応媒体の全重量を基準として1.5重量%〜28重量%の濃度に維持する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
反応媒体中の水濃度を0.1重量%〜8重量%に維持する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
方法が10〜40モル/L/時のカルボニル化速度を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法が15〜20モル/L/時のカルボニル化速度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
反応媒体を25:1〜950:1の全ヨウ化物イオンと触媒とのモル比に維持する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応媒体が金属ヨウ化物塩を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応媒体が、1:10〜10:1のホスホニウムとアルカリ又はアルカリ土類金属とのモル比の、アルカリ又はアルカリ土類金属ヨウ化物塩を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
均一触媒の少なくとも99%が、少なくとも20℃に冷却された際に反応媒体中において可溶化状態に維持される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アルキルハロゲン化物促進剤を反応媒体中において5重量%より高い濃度に維持する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
反応媒体が酢酸メチルを更に含み、方法が、反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として0.5〜20重量%の酢酸メチル濃度に維持する工程を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
反応媒体が酢酸メチルを更に含み、方法が、反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として0.5〜10重量%の酢酸メチル濃度に維持する工程を更に含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
反応媒体を4〜35重量%の全ヨウ化物濃度に維持する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
触媒安定剤が170℃未満の融点を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
触媒安定剤が25℃において液体である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
触媒安定剤がトリブチル(エチル)ホスホニウムイオン、トリブチル(オクチル)ホスホニウムイオン、及びトリオクチル(エチル)ホスホニウムイオンからなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
、R、及びRが同一であり、C(ヘキシル)、C(オクチル)、C10(デシル)、C12(ドデシル)、C14(テトラデシル)、及びC16(ヘキサデシル)からなる群から選択され、RがC以上のアルキルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項20】
が、C(エチル)、C(ブチル)、C(ペンチル)、C(ヘキシル)、C(オクチル)、C10(デシル)、及びC12(ドデシル)からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
R’が、C(エチル)、C(ブチル)、C(ヘキシル)、C(オクチル)、C10(デシル)、及びC12(ドデシル)からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項22】
触媒安定剤が、トリス(2−メチルプロピル)(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリス(2−メチルブチル)(3−メチルブチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリデシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、トリオクチル(デシル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 優先権主張
本出願は、2011年12月16日出願の米国仮出願(その全部を参照として本明細書中に包含する)に対する優先権を主張する。
【0002】
[0002] 技術分野
本発明は、概して酢酸を製造するためのメタノールのカルボニル化、特に1種類以上の非対称ホスホニウム塩を用いてかかるプロセスにおける触媒安定剤を向上させることに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]酢酸を合成するための広範囲に用いられて成功している商業的プロセスは、一酸化炭素によるメタノールの触媒カルボニル化を含む。触媒は、ロジウム及び/又はイリジウム、並びにハロゲン促進剤、通常はヨウ化メチルを含む。反応は、その中に触媒を溶解させた液体反応媒体を通して一酸化炭素を連続的にバブリングすることによって行う。反応媒体は、酢酸、酢酸メチル、水、ヨウ化メチル、及び触媒を含む。メタノールをカルボニル化するための従来の商業的プロセスとしては、米国特許3,769,329、5,001,259、5,026,908、及び5,144,068(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)に記載されているものが挙げられる。他の従来のメタノールカルボニル化プロセスとしては、Jones, J.H. (2002), "The Cativa Process for the Manufacture of Acetic Acid", Platinum Metals Review, 44 (3): 94-105(その全部を参照として本明細書中に包含する)において議論されているCativa(登録商標)プロセスが挙げられる。
【0004】
[0004]文献においては、処理工程中の触媒の安定性を向上させ、及び/又は触媒の損失を抑止するために、種々の成分をカルボニル化反応媒体に加えることが記載されている。例えば、ヨーロッパ特許0153834(その全部を参照として本明細書中に包含する)においては、ロジウム触媒、ヨウ化物又は臭化物成分、イミダゾール安定化化合物、水、及び酢酸を含む液体反応媒体中においてメタノール供給材料をカルボニル化することによって酢酸を製造する方法が開示されている。好適なイミダゾール安定化化合物は、一般式:
【0005】
【化1】
【0006】
(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、又はアルカリールヒドロカルビル基である)
を有する。
【0007】
[0005]米国特許5,442,107(その全部を参照として本明細書中に包含する)においては、(a)少なくとも約0.1〜15重量%の量の水;(b)2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−tert−ブチルピリジン、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、及び4−ヒドロキシピリジンからなる群から選択される複素環式窒素化合物の第4級アンモニウムヨウ化物である触媒安定剤;(c)アルコールに対応するヨウ化物誘導体;(d)カルボン酸とアルコールのエステル;(e)ロジウム触媒;及び(f)カルボン酸;を含む液体反応媒体中において、一酸化炭素をロジウム触媒の存在下でアルコールと反応させることによってカルボン酸を製造する方法が開示されている。
【0008】
[0006]米国特許7,115,774(その全部を参照として本明細書中に包含する)においては、方法が式:Q(式中、Qは第4級アンモニウム及び/又は第4級ホスホニウムカチオンを表し、Aは90℃より低い温度で液体塩を形成することができるアニオンである)の少なくとも1種類の塩を含む少なくとも1種類の非水性イオン液体中のハロゲン化促進剤を含む、アルコールを液相中で一酸化炭素によってカルボニル化する方法が開示されている。好適な第4級アンモニウム及び/又は第4級ホスホニウムカチオンとしては、N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、ピリジニウムフルオロスルホネート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホネート、3−ブチル−1−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド、トリメチルフェニルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、及びテトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0009】
[0007]米国特許7,582,792(その全部を参照として本明細書中に包含する)においては、反応区域内において、アルカノール、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、又はこれらの化合物を含む第VIII族金属カルボニル化触媒;1,3−ジアルキルイミダゾリウムヨージド、又はN−アルキルピリジニウムヨージドを含むオニウム塩化合物;及び一酸化炭素;を含むカルボニル化供給材料化合物を、カルボニル化条件の圧力及び温度下において化合させ、カルボニル化プロセスに対して外因性又は外来性のヨウ化水素もヨウ化アルキルも反応区域に添加又は供給しないことによってカルボン酸を製造するカルボニル化方法が開示されている。
【0010】
[0008]米国特許5,144,068(その全部を参照として本明細書中に包含する)においては、ロジウム(Rh)触媒を含み、水、酢酸、ヨウ化メチル、及び酢酸メチルを含む液体反応媒体中において、メタノールを一酸化炭素と反応させ、反応の経過中において、約0.1重量%乃至14重量%未満の水を、(a)約2重量%〜約20重量%の範囲の有効量の、反応温度において有効濃度で反応媒体中に可溶であるヨウ化物塩からなる群から選択される触媒安定剤、(b)約5重量%〜約20重量%のヨウ化メチル、及び(c)約0.5重量%〜約30重量%の酢酸メチルと一緒に反応媒体中において維持することによって、反応中の触媒の安定性を維持することによって酢酸を製造する方法が開示されている。好適なヨウ化物塩は、第4級ヨウ化物塩、又は周期律表の第IA及び第IIA族の金属からなる群の元素のヨウ化物塩であってよい。
【0011】
[0009]米国特許7,005,541(その全部を参照として本明細書中に包含する)においては、第VIII族金属触媒、即ちロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、又は白金(Pt)、ハロゲン促進剤(即ち、ヨウ化メチルのようなヨウ化アルキル)、及び安定剤/共促進剤を含む触媒系の存在下において一酸化炭素をメタノールと反応させる、低い含水量を有する反応媒体中でメタノールをカルボニル化することによって酢酸を製造する方法が開示されている。触媒系は、酢酸メチル、酢酸、有限量(例えば少なくとも約0.1重量%)の水、及び任意の他の相溶性溶媒を含む液体媒体中に溶解する。触媒系の安定剤/共促進剤は、反応媒体中に有効量のヨウ化物イオンを生成させる、アルカリ金属、アルカリ土類金属からの可溶性塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩、特にヨウ化物又はアセテート塩の形態であってよい。反応媒体中に存在するヨウ化物の量は約2〜20重量%の間であり、反応媒体中のヨウ化アルキル(即ちヨウ化メチル)の濃度は約2〜30重量%の間である。好適な触媒安定剤又は共促進剤としては、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
[0010]米国特許7,678,939(その全部を参照として本明細書中に包含する)においては、反応媒体中にハロゲン促進剤及びヨウ化物塩共促進剤を有するロジウムベースの触媒系を保持することによって触媒安定性を達成し、ヨウ化物塩共促進剤は約3重量%より高いヨウ化物濃度を有する、メタノールのカルボニル化によって酢酸を製造する方法が開示されている。好適なヨウ化物塩共促進剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の可溶性塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩が挙げられる。また、少なくとも1種類のルテニウム触媒安定剤、少なくとも1種類のスズ触媒安定剤、又はこれらの混合物も触媒系中に含ませる。反応媒体の水濃度は0.1〜14重量%の間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許3,769,329
【特許文献2】米国特許5,001,259
【特許文献3】米国特許5,026,908
【特許文献4】米国特許5,144,068
【特許文献5】ヨーロッパ特許0153834
【特許文献6】米国特許5,442,107
【特許文献7】米国特許7,115,774
【特許文献8】米国特許7,582,792
【特許文献9】米国特許5,144,068
【特許文献10】米国特許7,005,541
【特許文献11】米国特許7,678,939
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Jones, J.H. (2002), "The Cativa Process for the Manufacture of Acetic Acid", Platinum Metals Review, 44 (3): 94-105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
[0011]上記に示されているように、例えばロジウムベースの触媒のような第VIII族金属触媒をハロゲン促進剤及び/又は安定剤と共に含む触媒系を用いて酢酸を製造するための種々の方法が存在する。上記の参照文献においては、促進剤及び/又は安定剤として、アルカリ金属、アルカリ土類金属からの可溶性塩、或いは第4級アンモニウム又はホスホニウム塩(例えば、第4級ヨウ化物塩;複素環式窒素化合物の第4級アンモニウムヨウ化物)を用いることが開示されている。しかしながら、上記記載の方法を考慮しても、向上した触媒安定性で酢酸を製造するための新規なプロセスに対する必要性が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
[0012]本発明は、反応媒体に対する1種類以上の非対称ホスホニウム塩の特定の濃度を維持することによって酢酸製造プロセスにおける触媒安定性を有利に向上させる改良された方法を提供する。ここで驚くべきことに且つ予期しなかったことに、反応条件において不溶のロジウム錯体を形成するテトラブチルホスホニウムカチオンのような対称ホスホニウムカチオンとは異なり、トリブチル(エチル)ホスホニウムカチオンのような幾つかの非対称ホスホニウムカチオンは向上した触媒安定性をもたらし、それによって反応器の運転中の触媒の沈殿及びロジウムカルボニル錯体の結晶化を阻止又は抑止することが見出された。
【0017】
[0013]第1の態様においては、本発明は酢酸を製造する方法に関する。この方法は、反応媒体を含む反応器内において、一酸化炭素を、メタノール、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメチルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の反応物質と液相中で反応させて、酢酸を含む反応生成物を生成させることを含む。反応媒体は、有限量の水、ロジウム及び/又はイリジウムのような均一触媒、アルキルハロゲン化物促進剤、及び非対称ホスホニウムカチオン:[PR(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して置換又は非置換のアルキル又はシクロアルキル基である)をヨウ化物塩として含む触媒安定剤を含む。反応媒体は、反応媒体の全重量を基準として、2〜35重量%、例えば3〜35重量%の全ヨウ化物イオン濃度、及び1重量%より高いアルキルハロゲン化物促進剤濃度に維持する。R、R、R、及びRは、好ましくは、全てが同じ、置換又は非置換のアルキル又はシクロアルキル基という訳ではない。一形態においては、R、R、R、及びRは、全てC以上(C2+)のアルキル又はシクロアルキル基である。他の形態においては、R、R、及びRは同一であり、C(ブチル)、C(ヘキシル)、C(オクチル)、C10(デシル)、C12(ドデシル)、C14(テトラデシル)、C16(ヘキサデシル)、シクロペンチル、及びシクロヘキシルからなる群から選択され、RはC以上のアルキルである。場合によっては、Rは、C(メチル)、C(エチル)、C(ブチル)、C(ペンチル)、C(ヘキシル)、C(オクチル)、C10(デシル)、及びC12(ドデシル)からなる群から選択される。場合によっては、ホスホニウムイオンはトリブチル(エチル)ホスホニウムイオンである。
【0018】
[0014]他の態様においては、本発明は、反応媒体を含む反応器内において、一酸化炭素を、メタノール、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメチルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の反応物質と液相中で反応させて、酢酸を含む反応生成物を生成させることを含み、ここで、反応媒体は、有限量の水、ロジウム及び/又はイリジウムのような均一触媒、アルキルハロゲン化物促進剤、及びホスホニウムカチオン:[RPR’]又は[RPR’(式中、Rは、直鎖又は分岐のブチル、ヘキシル、又はオクチル、或いはシクロアルキルであり;R’は、メチル、エチル、プロピル、或いは直鎖又は分岐のブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、又はヘキサデシル、或いはシクロアルキルであり、但しRとR’は異なる)を含む触媒安定剤を含む酢酸の製造方法に関する。反応媒体は、好ましくは、反応媒体の全重量を基準として、2〜35重量%、例えば3〜35重量%の全ヨウ化物イオン濃度、及び1重量%より高いアルキルハロゲン化物促進剤濃度に維持する。R及びR’は、好ましくはC2+アルキル基である。
【0019】
[0015]場合によっては、ホスホニウムカチオンは、反応媒体中において、反応媒体の全重量を基準として1.5重量%〜28重量%の濃度に維持する。触媒安定剤は、好ましくは、少なくとも20℃に冷却した際に均一触媒の少なくとも99%を反応媒体中で可溶化状態に維持するのに有効なものである。アルキルハロゲン化物促進剤は、好ましくは、反応媒体中において5重量%より高い濃度に維持する。
【0020】
[0016]本発明方法において用いる特定の触媒安定剤は変化してよいが、場合によっては170℃未満の融点を有していてよく、或いは25℃において液体であってよい。幾つかの好ましい形態においては、触媒安定剤は、トリブチル(エチル)ホスホニウムイオン、トリブチル(オクチル)ホスホニウムイオン、トリオクチル(メチル)ホスホニウムイオン、又はトリオクチル(エチル)ホスホニウムイオンを含む。他の態様においては、触媒安定剤は、トリス(2−メチルプロピル)(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリス(2−メチルブチル)(3−メチルブチル)ホスホニウムヨージド、トリシクロヘキシル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリデシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、トリオクチル(デシル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0021】
[0017]反応媒体中の水濃度は0.1重量%〜8重量%に維持する。本方法は、場合によっては、10〜40モル/L/時、例えば15〜20モル/L/時のカルボニル化速度を与える。反応媒体は、好ましくは、25:1〜950:1の全ヨウ化物イオンと触媒とのモル比に維持する。反応媒体は、場合によっては、金属ヨウ化物塩、例えばLiIを更に含む。一形態においては、反応媒体は、1:100〜100:1、例えば1:10〜10:1のホスホニウムとアルカリ又はアルカリ土類金属とのモル比のアルカリ又はアルカリ土類金属ヨウ化物塩を更に含む。反応媒体は場合によっては酢酸メチルを更に含み、本方法は、反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として0.5〜20重量%、例えば0.5〜10重量%の酢酸メチル濃度に維持する工程を更に含む。
【0022】
[0018]他の態様においては、本発明は、本発明の発明方法によって形成される酢酸に関する。
[0019]本発明は添付の非限定的な図面を考慮するとより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一態様による代表的なカルボニル化システムを示す。
図2図2は、実施例S〜W及び37〜54からのBuRPIとしての反応器内のヨウ化物含量の関数として必要なロジウム供給量をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
序論:
[0022]メタノールのようなアルコールの一酸化炭素によるカルボニル化は、米国特許3,769,329(その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する)において開示されているように酢酸を製造するために広く用いられている。ハロゲン含有触媒促進剤(例えばヨウ化メチル)に加えて、ロジウムベース又はイリジウムベースの触媒がかかるプロセスにおいて一般的に用いられている。例えば、米国特許3,769,329においては、液体反応媒体中に溶解又は分散させているか或いは不活性の固体の上に担持させたロジウムベースのカルボニル化触媒を、ヨウ化メチルのようなハロゲン含有触媒促進剤と共に用いることが開示されている。
【0025】
[0023]アルコールのカルボニル化によって酢酸を製造するように設計されているプロセスに関連する1つの主要な課題は、反応速度に悪影響を与えることなく、(1)触媒が不活性化するか又は反応媒体若しくはフラッシュ容器から沈殿除去されることを阻止又は抑止し;そして(2)ロジウムカルボニル錯体の結晶化を阻止又は抑止する、酢酸を製造するための新規で有効な方法を発見することを含む。特に商業的状況においては、触媒の不活性化及び沈殿によって、より遅い反応速度、ユニット運転における障害、及び/又は完全な反応器の停止が引き起こされる可能性がある。
【0026】
[0024]例えば、可溶性金属ヨウ化物又は第4級ヨウ化物塩のような触媒安定剤を用いることによって触媒安定性に関する問題を最小にすることができることが報告されているが、得られる触媒安定性の増加は、しばしば反応速度に対するマイナス効果の犠牲の下に得られる。即ち、向上した触媒安定性を有するように(即ち、第4級ヨウ化物塩触媒安定剤を用いることによって)プロセスを修正した場合であっても、修正されたプロセスの認められる反応速度は、元の条件下で期待されるものの半分未満である可能性がある。したがって、優れた触媒安定性を与えるだけでなく、反応速度に対するマイナス効果を生成させることなくそれを与える酢酸を製造する方法を提供することが有用であろう。
【0027】
[0025]ここで驚くべきことに且つ予期しなかったことに、カルボニル化反応器媒体中に、非対称の第4級ホスホニウムカチオンを、場合によっては1種類以上の無機ヨウ化物塩(例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、又はヨウ化カリウム)と組み合わせて含ませることによって、酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスにおける触媒安定性を大きく向上させることができることが見出された。この文脈において、「非対称」という用語は、ホスホニウムカチオン:[PR(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、直鎖又は分岐で置換又は非置換のアルキル又はシクロアルキル基であり、但し、R、R、R、及びRは、全てが同じ、アルキル又はシクロアルキル基という訳ではないが、R、R、R、及びRの一部は同じアルキル又はシクロアルキル基であってよい)を有するホスホニウム塩を指す。
【0028】
[0026]本発明方法の特に驚くべき特徴としては、(1)カルボニル化速度に対する悪影響を生成することなく増加したロジウム触媒の安定性;(2)反応運転中における触媒の沈殿の抑制又は不存在;及び(3)反応運転中におけるロジウムカルボニル錯体の結晶化の抑制又は不存在;が挙げられるが、これらに限定されない。カルボニル化によって酢酸を製造する方法のための触媒系中に非対称ホスホニウムイオンを存在させることによって、触媒安定性に関する優れた結果が得られると考えられる。
【0029】
[0027]上記を考慮すると、一態様においては、本発明は、反応媒体を含む反応器内において、一酸化炭素を、メタノール、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメチルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の反応物質と液相中で反応させて、酢酸を含む反応生成物を生成させ;そして、反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として2〜35重量%の全ヨウ化物イオン濃度、及び1重量%より高く、例えば5重量%より高いアルキルハロゲン化物促進剤濃度に維持する;工程を含む酢酸の製造方法に関する。一態様においては、反応媒体は、有限量の水、均一触媒、及びアルキルハロゲン化物促進剤を含む。反応媒体はまた、非対称ホスホニウムカチオン:[PR(式中、R、R、R、及びRのそれぞれは、直鎖又は分岐で置換又は非置換のアルキル又はシクロアルキルである)を、好ましくはヨウ化物塩として含む触媒安定剤を含む。R、R、R、及びRの少なくとも1つは他のものと異なることが好ましい。一形態においては、R、R、R、及びRのそれぞれはC2+基(即ち2以上の炭素原子を含む)であるが、全てが同じC2+基という訳ではない。好ましい態様においては、ヨウ化リチウムのような無機ヨウ化物安定剤を、ホスホニウムカチオン含有触媒安定剤と組み合わせて用いる。
【0030】
アルコールのカルボニル化:
[0028]本発明は、アルキルアルコール、アルキルアルコールの反応性誘導体、及びこれらの混合物のカルボニル化によって酢酸を製造する方法に関する。特に、本発明は、かかるカルボニル化プロセスを、その中でカルボニル化反応を行う反応媒体の0.1重量%〜14重量%の水濃度において行うことに関する。更に、本明細書に記載する方法は、反応媒体中に2重量%より高く、場合によっては3重量%より高い値に相当するヨウ化物イオン濃度を与えるハロゲン触媒促進剤、場合によっては元素状イオウ(I)、ヨウ化水素(HI)、又はヨウ化メチルのような有機ヨウ化物、並びに1種類以上の安定剤の存在下でロジウムベース又はイリジウムベースの触媒系によって触媒するカルボニル化反応に関する。本発明によれば、1種類以上の安定剤としては、反応媒体中においてハロゲン促進剤を導入したロジウムベースの触媒系を安定化する少なくとも1種類の非対称ホスホニウム塩、より好ましくは非対称ホスホニウムヨウ化物塩が挙げられる。1つの随意的な態様においては、1種類以上のヨウ化物塩は、ホスホニウム塩を、リチウム、ナトリウム、又はカリウムのヨウ化物のような無機ヨウ化物塩共促進剤と組み合わせて含む。
【0031】
[0029]本明細書に記載する方法の重要な特徴は、非対称ホスホニウムカチオン(これは、場合によってはヨウ化リチウムのような無機ヨウ化物塩共促進剤と組み合わせて、好ましくは低水カルボニル化雰囲気中で用いることができる)を反応媒体中に導入することによってカルボニル化触媒の安定性を有利に向上させることができるという驚くべき且つ予期しなかった発見である。また、非対称ホスホニウムカチオンを用いると、カルボニル化速度が認められるほどには減少せず、幾つかの態様においてはカルボニル化速度を向上させることが示された。例えば幾つかの態様においては、カルボニル化速度は、少なくとも15.0モル/L/時、少なくとも15.5モル/L/時、少なくとも16.0モル/L/時、少なくとも17.0又は少なくとも18.0モル/L/時にすることができる。範囲に関しては、カルボニル化速度は、場合によっては10.0〜40.0モル/L/時、15.0〜20.0モル/L/時、16.0〜20.0モル/L/時、17.0〜20.0モル/L/時、又は18.0〜20.0モル/L/時の範囲である。
【0032】
[0030]触媒安定剤は、好ましくは、式:[PRのホスホニウムカチオンを、ヨウ化物、水酸化物、又はカルボキシレート塩、例えば酢酸塩として含む。上式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して置換又は非置換のアルキル又はシクロアルキル基であるが、全てが同じ、アルキル又はシクロアルキル基という訳ではない。しかしながら、R、R、R、及びRの一部は同じ基であってよい。好適なシクロアルキル基の代表例としてはシクロペンチル及びシクロヘキシル基が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、及びヘキサデシルが挙げられる。幾つかの態様においては、R、R、R、及びRは置換化合物であってよい。好適な置換基の代表例としてはヒドロキシル基及びハロゲン化物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ホスホニウムカチオンは芳香族置換基を含まず、例えばフェニル基を含まない。これは、このような基が存在すると、ロジウムカルボニル錯体の結晶化が増大して減少した触媒活性がもたらされる可能性があるからである。
【0033】
[0031]幾つかの態様においては、本明細書に記載する方法における反応媒体中の水濃度は、0.1重量%〜14重量%に維持する。より好ましくは、本明細書に記載する反応媒体中の水濃度は、0.1重量%〜8重量%に維持する。他の態様においては、本明細書に記載する方法における反応媒体中の水濃度は、0.1重量%〜6重量%に維持する。更に他の態様においては、本明細書に記載する方法における反応媒体中の水濃度は、0.1重量%〜4重量%又は0.1重量%〜2重量%に維持する。
【0034】
[0032]反応媒体中に少なくとも1種類の非対称ホスホニウム塩を含ませることによって、ロジウムベースの触媒系中のロジウムが酢酸の製造及び精製中に結晶化するか及び/又は溶液から沈殿除去される傾向が減少する。ロジウム化合物は特に不安定になりやすく、これにより特にフラッシャーユニット内での酢酸の回収中にロジウム触媒がRhIとして沈殿するようになる。ロジウムは非常に高価な金属であり、沈殿によってこの金属が損失することは、触媒の使用量及び高生産の維持に影響を与えることによって商業的な酢酸製造プロセスに対して大きなマイナスの経済的影響を与える可能性がある。
【0035】
[0033]公知のシステムのいずれも、本出願において特許請求しているタイプの非対称ホスホニウムカチオンを、低水条件下での均一カルボニル化プロセスにおいて用いて、ロジウムカルボニル錯体の沈殿又は結晶化を引き起こすことなくロジウムを安定化させることは開示していない。本明細書に記載する方法においては、カルボニル化系成分のこの独特の組み合わせによって、ロジウムベースの均一触媒系に大きな安定性が与えられることが認められる。好ましい態様においては、本明細書に記載する方法はロジウムベースの触媒系を用いることに関するが、これらはまた、イリジウムベースの触媒系、又はロジウム及びイリジウムの両方を含む系においても用いることができる。本発明の目的のためには、「ロジウムベースの触媒系」又は「ロジウムベースの触媒」とは、メタノールカルボニル化反応媒体中に少なくとも300wppmのロジウム金属濃度を与える触媒系を意味する。
【0036】
[0034]幾つかの態様においては、本明細書に記載するロジウムベースの触媒系は、反応媒体中に300wppm〜5,000wppmのロジウムを与える。他の態様においては、本明細書に記載するロジウムベースの触媒系は、反応媒体中に1,000wppm〜4,000wppmのロジウムを与える。更に他の態様においては、本明細書に記載するロジウムベースの触媒系は、反応媒体中に2,000wppm〜3,000wppmのロジウムを与える。幾つかの態様においては、反応媒体中のロジウム濃度は少なくとも1000wppmである。他の態様においては、反応媒体中のロジウム濃度は少なくとも1500wppmである。更に他の態様においては、反応媒体中のロジウム濃度は少なくとも2000wppmである。
【0037】
[0035]ロジウム及び/又はイリジウムに加えて、本明細書に記載する方法の反応媒体はまた、元素状ヨウ素、ヨウ化水素、及び/又は有機ヨウ化物のようなハロゲン促進剤、並びにヨウ化リチウムのようなアルカリ又はアルカリ土類金属ヨウ化物塩共促進剤の使用も包含することができる。幾つかの態様においては、有機ヨウ化物はヨウ化メチルのようなアルキルヨウ化物である。アルキルヨウ化物は、例えば反応媒体中において2.0重量%〜30重量%の濃度に維持することができる。他の態様においては、アルキルヨウ化物は、5.0重量%〜15重量%の反応媒体中における濃度に維持する。更に他の態様においては、アルキルヨウ化物は、反応媒体中において5.0重量%〜10.0重量%の濃度に維持する。
【0038】
[0036]本発明によれば、反応媒体中において用いる安定剤としては、少なくとも1種類のホスホニウム塩、好ましくは非対称ホスホニウム塩が挙げられる。一態様においては、ホスホニウム塩はホスホニウムヨウ化物塩を含む。他の態様においては、ホスホニウム安定剤は、ホスホニウムのカルボン酸塩(例えば酢酸塩)、ハロゲン化物、水酸化物、又はこれらの混合物を含む。
【0039】
[0037]ホスホニウム塩安定剤は、ヨウ化物塩、又は反応媒体中においてヨウ化物塩を生成する非ヨウ化物塩として反応媒体に加えることができる。かかる場合においては、非ヨウ化物塩は、次式:
HI + P → P + HY
(式中、Yは、ヨウ化物アニオン以外のアニオン、例えばカルボン酸塩(場合によっては酢酸塩)、水酸化物、又はヨウ化物以外のハロゲン化物である)
によってHIと反応して対応するホスホニウムヨウ化物塩に転化する。
【0040】
[0038]ホスホニウム安定剤に加えて、本方法においては、場合によっては、好ましくはアルカリ金属の可溶性無機塩、場合によってはヨウ化リチウム又はヨウ化ナトリウム、或いはアルカリ土類金属の可溶性無機塩である共促進剤を用いることができる。例えば、ヨウ化リチウム、酢酸リチウム、又はこれらの混合物を用いることができる。無機塩共促進剤は、反応溶液中においてヨウ化物塩を生成する非ヨウ化物塩として加えることができる。ヨウ化物触媒安定剤は反応系中に直接導入することができる。或いは、反応システムの運転条件下においては、広範囲の非ヨウ化物塩前駆体がヨウ化メチルと反応して対応する共促進剤のヨウ化物塩安定剤を生成するので、ヨウ化物塩をその場で生成させることができる。ヨウ化物塩の生成に関する更なる詳細については、Smithらの米国特許5,001,259;Smithらの5,026,908;及びSmithらの5,144,068(これらの全部を参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0041】
[0039]他の態様においては、ホスホニウム安定剤は、その場で有機ホスフィン反応物質から形成することができる。この形態においては、1種類以上のホスフィンを反応媒体に加えて、アルキルヨウ化物と反応させて所望のホスホニウムヨウ化物塩を生成させることができる。例えば一態様においては、トリブチルホスフィン及びヨウ化メチルを反応媒体に加えて、反応器内でトリブチル(メチル)ホスホニウムヨージドを生成させる。
【0042】
[0040]ホスホニウムヨウ化物塩は、好ましくは、反応媒体中において、ロジウム又はイリジウム触媒を有効に安定化するのに十分な量に維持する。ホスホニウムヨウ化物及び随意的な無機共促進剤、例えばLiIの濃度は、2重量%より高く、場合によっては3重量%より高く、場合によっては2〜35重量%、3〜35重量%、4〜35重量%、又は5〜35重量%の反応媒体中の全ヨウ化物イオン濃度を維持するようなものである。更に他の態様においては、これらの1種類又は複数の共促進剤の濃度は、2〜20重量%、例えば5〜15重量%、又は5〜10重量%の反応媒体中の全ヨウ化物イオン濃度を維持するようなものである。幾つかの形態においては、ホスホニウムカチオンは、例えば20〜35重量%、20〜30重量%、又は20〜25重量%の反応媒体中における驚くほど高い全ヨウ化物濃度を可能にすることができる。ホスホニウムカチオンそれ自体は、好ましくは、反応溶液の全重量を基準として1.5重量%〜28重量%、例えば2〜23重量%、又は5〜18重量%の量で反応媒体中に保持する。下限に関しては、反応媒体中の1種類又は複数の触媒安定剤/1種類又は複数の共促進剤の濃度は、好ましくは、反応媒体の全重量を基準として少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%の反応媒体中のヨウ化物イオン濃度を維持するようなものである。上限に関しては、反応媒体中の1種類又は複数の触媒安定剤/1種類又は複数の共促進剤は、好ましくは、反応媒体の全重量を基準として35重量%未満、例えば30重量%未満、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、又は10重量%未満のヨウ化物イオン濃度を維持するようなものである。
【0043】
[0041]ホスホニウムヨウ化物塩をヨウ化リチウムのような無機ヨウ化物塩と組み合わせて保持する場合には、かかる塩は、反応溶液中における所望のヨウ化物濃度を維持するのに十分な量で存在させることが好ましい。2つの成分の相対比は広く変化させることができる。例えば一態様においては、反応溶液中のホスホニウムカチオンとアルカリ又はアルカリ土類金属カチオンとのモル比は、1:100〜100:1、例えば1:50〜50:1、1:10〜10:1、1:3〜1:1、又は1:2に維持する。
【0044】
[0042]1種類又は複数の安定化ヨウ化物共促進剤は、反応媒体中において、1:1〜1000:1の全ヨウ化物イオンと均一触媒(通常はロジウム又はイリジウム)とのモル比で維持することができる。他の態様においては、全ヨウ化物濃度は、反応媒体中において25:1〜950:1又は40:1〜120:1の全ヨウ化物イオンとロジウム/イリジウムとのモル濃度で維持することができる。更に他の態様においては、全ヨウ化物濃度は、反応媒体中において60:1〜100:1の全ヨウ化物イオンとロジウム/イリジウムとのモル濃度で維持することができる。
【0045】
[0043]一般に、ホスホニウム塩は、カルボニル化反応を行う温度より低い融点を有することが好ましい。ヨウ化物塩の融点は、部分的に、リン原子に結合する特定の炭化水素基(R、R、R、及びR)、並びにホスホニウムカチオンの対称度又は非対称度によって定まる。好ましい態様においては、R、R、R、及びRは、低い融点を有する塩を与えるように選択する。この目的のために、ヨウ化物塩の融点は、一般に、存在する炭素原子の数が増加するにつれて低下する。また、(直鎖に対して)分岐鎖構造を存在させることによっても融点を低下させることができる。更に、R、R、R、及びRを、それらが全てが同じという訳ではないように選択することによっても、ヨウ化物塩の融点を低下させることができる。
【0046】
[0044]幾つかの態様においては、用いるホスホニウム塩は、170℃未満、例えば160℃未満、155℃未満、150℃未満、145℃未満、又は140℃未満の融点を有する。下限に関しては、反応媒体のホスホニウム塩は、少なくとも−100℃、少なくとも0℃、少なくとも20℃、少なくとも50℃、少なくとも70℃、少なくとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも125℃、又は少なくとも140℃の融点を有していてよい。範囲に関しては、反応媒体のホスホニウム塩は、−100℃〜170℃、例えば0℃〜160℃、20℃〜160℃、50℃〜155℃、100℃〜150℃、又は125℃〜150℃の範囲の融点を有していてよい。一態様においては、ホスホニウム塩は、室温(25℃)及び1気圧において液体である。
【0047】
[0045]上述したように、R、R、R、及びRの幾つかは、それらが全てが同一ではない限りにおいて同一であってよく、或いはそれらは全て異なっていてよい。一態様においては、RとRは同一であり、RとRは同一であるが、R/RはR/Rとは異なる。他の態様においては、R、R、R、及びRの3つは同一であり、R、R、R、及びRの1つは異なる。幾つかの態様においては、R、R、R、及びRは全てC2+アルキル基である。1つの非限定的な態様においては、ホスホニウムイオンは、式:[RPR’]又は[RPR’(式中、Rは、直鎖又は分岐のブチル、ヘキシル、又はオクチル、或いはシクロアルキルであり;R’は、メチル、エチル、プロピル、或いは直鎖又は分岐のブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、又はヘキサデシル、或いはシクロアルキルであり、但しRとR’は異なる)のイオンを含む。
【0048】
[0046]他の態様においては、R、R、及びRは全て同一で、Rとは異なっていてよい。かかる態様においては、R、R、及びRは、例えば、C(ブチル)、C(ヘキシル)、C(オクチル)、C12(ドデシル)、C14(テトラデシル)、C16(ヘキサデシル)、シクロペンチル、及びシクロヘキシルからなる群から選択することができ、Rは、メチル又はC以上のアルキルである。場合によっては、ホスホニウムイオンはトリブチル(エチル)ホスホニウムイオンである。
【0049】
[0047]幾つかの態様においては、触媒安定剤/共促進剤は、トリス(2−メチルプロピル)(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリス(2−メチルブチル)(3−メチルブチル)ホスホニウムヨージド、トリブチル(エチル)ホスホニウム、トリオクチル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリブチル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリシクロヘキシル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリデシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、トリオクチル(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリオクチル(デシル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、及びこれらの混合物からなる群から選択される。このリストは排他的ではなく、発明の範囲を限定することは意図しない。
【0050】
[0048]上記に示したように、用いる具体的な非対称ホスホニウム塩は、用いるホスホニウムカチオンが上記に規定するように非対称である限りにおいて広く変化させることができる。本発明のホスホニウム塩に適している更なる代表的な(しかしながら排他的ではない)非対称ホスホニウムカチオンを下表1に与える。反応媒体に加えるホスホニウム塩中において用いる具体的な対イオン(例えばヨウ化物又はカルボン酸塩(例えば酢酸塩)アニオン)に関係なく、ここでは安定化ホスホニウムヨウ化物の形態が生成することを理解すべきである。
【0051】
【表1】
【0052】
[0049]触媒の結晶化及び沈殿は、通常の反応温度より低い温度における反応媒体に関する特有の問題である可能性がある。かかるより低い温度は、例えば反応器の始動時又は停止時に遭遇する可能性がある。しかしながら、本発明の反応媒体は、かかる低い温度においても触媒の結晶化及び沈殿に対して特に抵抗性であることができる。したがって一態様においては、均一触媒の少なくとも99%は、少なくとも25℃又は少なくとも20℃に冷却した際に反応媒体中において可溶化状態に維持される。
【0053】
[0050]本明細書に記載するカルボニル化反応を与えるために、全ての選択された反応媒体成分を反応媒体容器又は反応器中に溶解又は分散させる。活性反応の期間中は、反応媒体を含む反応器にメタノール及び一酸化炭素を連続的に供給して、一酸化炭素の所望の分圧を維持する。カルボニル化反応器は、通常はその内部で反応する液体成分を一定のレベルに維持する撹拌オートクレーブである。反応器中に、新しいメタノール、反応媒体中の水の所望の濃度を維持するのに十分な水、フラッシャー底部から再循環される触媒溶液、及び通常はヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラムの塔頂から再循環されるヨウ化メチル及び酢酸メチルを供給する。幾つかの態様においては、酢酸メチルは、反応媒体中において0.5重量%〜30重量%、例えば0.5〜20重量%、又は0.5〜10重量%の濃度に維持する。粗酢酸を回収して、反応器に触媒溶液、ヨウ化メチル、及び酢酸メチルを再循環する手段が与えられる限りにおいては、別の蒸留システムを用いることができる。一酸化炭素は、内容物を撹拌するのに用いる撹拌器の直下において反応器中に連続的に導入する。一酸化炭素は反応媒体全体に十分に分散させる。反応器のヘッドから気体パージ流を排気して、気体状副生成物の蓄積を抑止し、与えられた全反応器圧における設定一酸化炭素分圧を維持する。反応器の温度を制御し、一定の全反応器圧を維持するのに十分な速度で一酸化炭素を導入する。全反応器圧は1.5MPa〜4.5MPa絶対圧であり、反応温度は通常は150℃〜250℃に維持する。
【0054】
[0051]反応媒体の一定のレベルを維持するのに十分な速度で液体生成物をカルボニル化反応器から排出して、フラッシャーユニットに導入する。フラッシャーユニットにおいては、触媒溶液を、主として、ロジウム/イリジウム触媒、ヨウ化物塩促進剤、及びホスホニウム安定剤を、より少量の酢酸メチル、ハロゲン促進剤、及び水と共に含む酢酸が導入された塔底流として排出する。フラッシャーからの塔頂流は、主として生成物の酢酸を、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水と共に含む。一酸化炭素の一部、並びにメタン、水素、及び二酸化炭素のような気体状副生成物が、フラッシャーの頂部から排出される。酢酸製造システム及びスキームに関する更なる情報に関しては、Singletonらの米国特許4,433,166;Smithらの米国特許5,144,068;Huckmanらの米国特許6,677,480;及びTorrenceの米国特許7,053,241(これらのそれぞれはその全部を参照として本明細書中に包含する)を参照。カルボニル化反応によって酢酸を製造するための具体的なプロセスに関する更なる情報に関しては、文献:Graub, M.、Seidel、A.、Torrence、P.、Heymanns, P., Synthesis of Acetic Acid and Acetic Acid Anhydride from Methanol, Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds (1996), vol.1, 104 138; 編者: Cornils, B.、Herrmann, W.、出版社: VCH, Weinheim,ドイツ(これらのそれぞれはその全部を参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0055】
[0052]上記に示したように、カルボニル化システムは好ましくは均一カルボニル化システムであり、これは触媒及び反応器溶液が好ましくは同じ相、例えば液相であることを意味する。本明細書に記載する本発明方法の幾つかの態様は、均一触媒系、好ましくは均一ロジウムベース又はイリジウムベース触媒系を使用することに関する。
【0056】
[0053]非限定的な代表的カルボニル化システムを添付の図1に示す。示されているように、図1は、本発明に関連して好ましく用いられる種類のカルボニル化ユニット10を含む。ユニット10は、反応器12、フラッシャー14、軽質留分カラム16、乾燥又は脱水カラム18、並びに場合によってはより高沸点の不純物を除去するための重質留分カラムのような更なる精製装置(図示せず)を含む。反応器12は反応媒体を含み、それにメタノール及び一酸化炭素を供給する。反応媒体の一部はライン22を通してフラッシャー14に連続的に供給して、そこで粗生成物をフラッシングして、高温の蒸気供給流としてライン24を通して軽質留分カラム16に送る。
【0057】
[0054]カラム16においては、生成物から軽質成分を除去し、ライン26を通してカラムから排出して、第1の凝縮器28内で凝縮させて、次にデカンター30内でデカンテーションする。通常は、デカンター30からの液相はライン32を通してカラムに還流し、一方、デカンター30からの重質相はライン34、35を通して反応器に戻す。示してはいないが、システム中に材料を再循環するために用いる吸収器及びストリッパーも与えられる。
【0058】
[0055]精製された生成物流40がカラム16から(好ましくは液体の)側流として排出され、これを乾燥カラム18に供給して、そこで部分的に精製された生成物から水を除去する。生成物がライン42を通して排出される。必要な場合には、更なる精製を行うことができる。塔頂流及び一部の生成物酢酸は、カラム18への還流として用いるか、或いはライン44を通して反応器に再循環する。カラム16において液体残渣流52が生成し、これは通常は、示されているようにフラッシャー残渣と共に反応器に再循環する。
【0059】
[0056]幾つかの態様においては、上記に記載のカルボニル化プロセスのための原材料(又は反応器供給材料)の少なくとも一部は、部分的か又は完全にシンガスから誘導することができる。例えば、上記に記載したように酢酸はメタノール及び一酸化炭素から形成することができ、これらは両方ともシンガスから誘導することができる。例えば、メタノールはシンガスを水蒸気改質することによって形成することができ、一酸化炭素はシンガスから分離することができる。他の態様においては、メタノールは、例えばEP2076480;EP1923380;EP2072490;EP1914219;EP1904426;EP2072487;EO2072492;EP2072486;EP2060553;EP1741692;EP1907344;EP2060555;EP2186787;EP2072488;及び米国特許7842844(これらは参照として本明細書中に包含する)に記載されているような一酸化炭素ユニットにおいて形成することができる。勿論、これらのメタノール源のリストは単に例示であり、限定することは意図しない。次にシンガスは、種々の炭素源から誘導することができる。炭素源は、例えば天然ガス、オイル、石油、石炭、バイオマス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。本発明方法に関連して用いる原材料は、天然ガス、石油、石炭、バイオマスなどをはじめとする任意の好適な源から誘導することができる。
【0060】
[0057]石油及び天然ガスの価格は変動してより高価か又はより安価のいずれかになるので、代替の炭素源からメタノール及び一酸化炭素のような酢酸中間体を製造する方法に益々興味が持たれている。特に、石油が比較的高価である場合には、より利用しやすい炭素源から誘導される合成ガス(シンガス)から酢酸を製造することが有利になる可能性がある。したがって幾つかの態様においては、上記に記載のカルボニル化のための原材料の一部又は全部を、部分的か又は完全にシンガスから誘導することができる。例えば、メタノール及び一酸化炭素の両方をシンガスから誘導することができる。シンガスは、部分酸化改質又は水蒸気改質によって形成することができ、一酸化炭素はシンガスから分離することができる。次にシンガスは種々の炭素源から誘導することができる。炭素源は、例えば、天然ガス、オイル、石油、石炭、バイオマス、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。シンガス又は水素はまた、埋立地又は農業廃棄物によって生成する生物由来のメタンガスのような生物由来のメタンガスから得ることもできる。
【0061】
[0058]バイオマスの例としては、農業廃棄物、林産物、芝類、及び他のセルロース材料、木材収穫残渣、軟材チップ、硬材チップ、木の枝、木の切り株、葉、樹皮、おがくず、規格外紙パルプ、トウモロコシ、トウモロコシ茎葉、麦藁、稲藁、サトウキビバガス、スイッチグラス、茅、動物糞尿、都市厨芥、都市下水、商業廃棄物、ブドウ絞り滓、アーモンド殻、ペカン殻、ココナツ殻、コーヒー出し殻、芝ペレット、干し草ペレット、木材ペレット、段ボール、紙、プラスチック、及び布帛が挙げられるが、これらに限定されない。例えば米国特許7,884,253(その全部を参照として本明細書中に包含する)を参照。他のバイオマス源は、木材をパルプ(これを次に乾燥して紙を製造する)に変化させるためのクラフトプロセスの副生成物である濃厚な暗色の液体である黒液である。黒液は、リグニン残渣、ヘミセルロース、及び無機化学物質の水溶液である。
【0062】
[0059]また、米国特許RE35,377(参照として本明細書中に包含する)においては、石油、石炭、天然ガス、及びバイオマス材料のような炭素質材料を転化させることによってメタノールを製造する方法が開示されている。このプロセスは、固体及び/又は液体の炭素質材料を水素添加ガス化してプロセスガスを得て、これを追加の天然ガスで蒸気熱分解して合成ガスを形成することを含む。シンガスをメタノールに転化させ、これを酢酸にカルボニル化することができる。酢酸は、次に水素化してエタノール及び/又はエタノール誘導体を形成することができる。酢酸を水素化してエタノールを形成する方法は、例えば、米国特許7,608,744;7,863,489;米国公開US2010/0197985;US2011/0190547;US2011/0190548;US2011/0275862;US2011/0282110;及び米国特許出願13/197,743;13/197,738;13/299,816(これらのそれぞれはその全部を参照として本明細書中に包含する);に記載されている。
【0063】
[0060]上記で議論したように、ロジウム触媒の沈殿は、生成物回収システム、特にフラッシャーユニットにおいてしばしば経験する。ロジウム触媒の沈殿を減少させる本明細書に記載するシステムの利点を、以下の実験評価によって例示する。
【実施例】
【0064】
[0061]例A〜Q及び1〜32においては、他に示す場合を除いて、次の条件:1000wppmのロジウム、190℃、30barのCO、2重量%の水、2重量%の酢酸メチル、及び10重量%のヨウ化メチル:の下で、種々の連続カルボニル化反応をベンチスケールで行った。始動時及び反応運転中に結晶化及び沈殿に関する観察を行った。他に示す場合を除いて、反応は最長で5〜8時間連続的に運転し、或いは触媒の結晶化又は沈殿を観察する場合にはこの時間の前に終了した。実験は、沈殿又は結晶化が起こるまで、合計で約35時間まで毎日繰り返した。
【0065】
[0062]例A〜Q及び1〜32は、小型のベンチスケールジルコニウム反応器内において連続条件下で運転した。このユニットは、ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラムを用いないで運転した。MeI、水、MeOAc、及びMeOHの溶液をカルボニル化反応器に連続的に供給し、水、MeI、MeOAc、及び酢酸を含むフラッシャー塔頂粗生成物を回収した。この溶液を分析してメタノールカルボニル化速度を求め、これをgモル−酢酸/L/時(STY)として表す。得られたメタノールカルボニル化速度を実験中に消費されたCOと比較し、これをモル−CO/L/時として表す。ロジウムの安定性は、実験中の運転条件において、及び反応器試料を分析のために採取した時点に室温において、或いは実験の終了時において、反応溶液中でのロジウム触媒の沈殿又は結晶化の量に基づいて測定した。
【0066】
比較例A〜E:
[0063]例A〜Eは種々のヨウ化物濃度を用いて行い、全てのヨウ化物はヨウ化リチウムから得た。ホスホニウム共安定剤は含めなかった。実験結果を表2に示し、これは9.5重量%以上のヨウ化物濃度までは触媒の安定化は達成されなかったことを示している。
【0067】
比較例F〜H(対称ホスホニウムヨウ化物塩):
[0064]例F〜Hは、種々の対称ホスホニウムヨウ化物(PI)塩を用い、ヨウ化リチウムを用いないで運転した。結果を表2に示し、これは9.0重量%の高いヨウ化物濃度においても全ての実験で結晶化が起こったことを示している。
【0068】
【表2】
【0069】
比較例I〜K(対称ホスホニウムヨウ化物塩+LiI):
[0065]例I〜Kは、14重量%の全ヨウ化物濃度の対称ホスホニウムヨウ化物塩及びヨウ化リチウムの組み合わせを用いて運転した。全ての実験において結晶化が観察された。実験結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
例L、M、及び1〜17(非対称ホスホニウムヨウ化物塩):
[0066]例L、M、及び1〜17は、種々の非対称ホスホニウムヨウ化物塩を用いたが、ヨウ化リチウムを用いないで、及び表4に示す種々のヨウ化物装填量で運転した。驚くべきことに、4.5重量%程度の低いヨウ化物濃度において安定化が観察された。フェニル含有ホスホニウムカチオンを用いた場合には安定化は達成されなかった。実験結果を表4に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
例18〜24(非対称ホスホニウムヨウ化物塩+LiI):
[0067]例18〜24は、種々の非対称ホスホニウムヨウ化物塩及びヨウ化リチウムを、実験結果と共に表5に示す種々の全ヨウ化物装填量で用いて運転した。
【0074】
【表5】
【0075】
例N〜Q及び25〜32(異なる水濃度における非対称ホスホニウムヨウ化物塩):
[0068]例25〜32は、種々の水濃度、具体的には0.5、1.0、及び5.0重量%の水における非対称ホスホニウムヨウ化物の種々の組み合わせを示す。例N〜Qは、ホスホニウムヨウ化物からのヨウ化物の寄与を有しない種々の水含量における比較例を示す。結果を表6に示す。
【0076】
【表6】
【0077】
例R及び33〜36(バッチカルボニル化):
[0069]他に示す場合を除いて、例R及び33〜36は、次の出発条件:8重量%の水、25重量%のMeOAc、10重量%のMeI、1000ppmのロジウム、205℃、30barのCOの全圧:を用いてバッチ条件下で4分間運転した。例35は1500ppmのロジウムを用いて開始し、例36は5重量%の水及び15重量%のMeOAcにおいて開始した。結果を表7に示す。これらの例は、等式:
MeOAc+HO→MeOH+AcOH
にしたがってメタノールをその場で形成するために連続実験よりも高いMeOAc及び水濃度を用いて開始して行った。
【0078】
[0070]カルボニル化によってメタノールがCOと共に消費されて酢酸が生成した。水及びMeOAcの濃度は、カルボニル化速度に応じて時間と共に減少した。
【0079】
【表7】
【0080】
例S〜W及び37〜54(長時間連続カルボニル化):
[0071]例S〜W及び37〜54は、種々の非対称ホスホニウムヨウ化物塩を用い、触媒共促進剤/安定剤としてヨウ化リチウムを用いるか又は用いない場合の、表8に示す種々の全ヨウ化物装填量における触媒系の長時間の熱的及び化学的安定性を示すために、中断を行わずに従前の連続実施例よりも大きな反応器内でより長い連続条件下で運転した。LiIのような無機ヨウ化及び/又は種々の有機ホスホニウムヨウ化物塩としての反応器内の全ヨウ化物濃度を変化させた他は、これらの実施例のそれぞれにおいて反応条件を繰り返して、触媒安定性に対する非対称ホスホニウムヨウ化物塩の効果を示した。
【0081】
[0072]用いた連続均一反応システムは、(a)液相カルボニル化反応器、(b)フラッシャー、及び(c)ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラムを含んでいた。カルボニル化反応器は、その内部で反応する液体の内容物を自動的に一定のレベルに維持する撹拌オートクレーブであった。この反応器中に、次の成分:新しいメタノール、フラッシャー底部から再循環された触媒溶液、及びヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラムの塔頂から再循環されたヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水:を連続的に導入した。水は反応媒体中において約2重量%に維持し、ヨウ化メチルは約10重量%に維持し、酢酸メチルは約3.5重量%に維持した。フラッシャーからの残渣は反応器に再循環した。カルボニル化反応器中に一酸化炭素を連続的に導入して、その中で十分に分散させた。気体パージ流を反応器のヘッドから排気して、気体状副生成物の蓄積を抑止し、与えられた全反応器圧における設定一酸化炭素分圧を維持した。
【0082】
[0073]その中における一定のレベルを維持するのに十分な速度で粗液体生成物をカルボニル化反応器から排出し、フラッシャーに、その頂部と底部との間の中間点において導入した。フラッシャー内において、触媒溶液を、主として酢酸、ロジウム触媒、及びヨウ化物塩を、より少量の酢酸メチル、ヨウ化メチル、及び水と共に含む塔底流として排出し、一方、フラッシャーの凝縮塔頂流は、主として粗生成物の酢酸を、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水と共に含んでいた。一酸化炭素の一部が、メタン、水素、及び二酸化炭素のような気体状副生成物と共にフラッシャーの頂部から排出された。
【0083】
[0074]乾燥した酢酸(<1500ppmの水)を、所望の最終精製のために、ヨウ化メチル−酢酸スプリッターカラムの底部から排出した(また、底部付近において側流として排出することもできる)。主としてヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水を含むヨウ化メチル−酢酸スプリッターからの塔頂流は、カルボニル化反応器に再循環した。
【0084】
[0075]これらの実験に関するより長い連続運転時間のために、実験中に一定の反応器ロジウム濃度を維持するために、希釈濃度(300〜700wppm)の酢酸ロジウムを反応器に連続的に供給して(mg−Rh/時:ロジウム使用量)、フラッシャー内における不溶の三ヨウ化ロジウム(RhI)の沈殿による長時間のロジウム損失を補った。これらの実験におけるロジウムの安定性は、ロジウム使用量によって評価した。表8及び図2に示す結果は、非対称ホスホニウムヨウ化物塩を用いた場合には、無機ヨウ化物塩を用いても用いなくても、向上したロジウム安定性(より低いロジウム使用量)が得られることを明白に示している。これらの全ての実験において、試料を分析のために一定時間毎に採取した際に、室温における反応器溶液からの触媒の沈殿又は結晶化は観察されなかった。
【0085】
【表8】
【0086】
[0076]本発明を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲内の変更は当業者に容易に明らかになるであろう。上記及び/又は特許請求の範囲において示されている本発明の複数の形態並びに種々の態様及び種々の特徴の複数の部分を、完全か又は部分的に結合又は交換することができることを理解すべきである。当業者に認められるように、種々の態様の上記の記載においては他の態様を示すこれらの態様を他の態様と適当に組み合わせることができる。更に、当業者であれば、上記の記載は例示のみの目的であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
反応媒体を含む反応器内において、一酸化炭素を、メタノール、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメチルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の反応物質と液相中で反応させて、酢酸を含む反応生成物を生成させる工程、ここで、反応媒体は、有限量の水、均一触媒、アルキルハロゲン化物促進剤、及び非対称ホスホニウムカチオン:[PR(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して置換又は非置換のアルキル又はシクロアルキルである)をヨウ化物塩として含む触媒安定剤を含み;そして
反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として、2〜35重量%の全ヨウ化物イオン濃度及び1重量%より高いアルキルハロゲン化物促進剤濃度に維持する工程;
を含む酢酸の製造方法。
[請求項2]
、R、R、及びRは、全てが同じ、置換又は非置換のアルキル又はシクロアルキル基という訳ではない、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
ホスホニウムカチオンを、反応媒体中において、反応媒体の全重量を基準として1.5重量%〜28重量%の濃度に維持する、請求項1に記載の方法。
[請求項4]
反応媒体中の水濃度を0.1重量%〜8重量%に維持する、請求項1に記載の方法。
[請求項5]
方法が10〜40モル/L/時のカルボニル化速度を有する、請求項1に記載の方法。
[請求項6]
方法が15〜20モル/L/時のカルボニル化速度を有する、請求項1に記載の方法。
[請求項7]
反応媒体を25:1〜950:1の全ヨウ化物イオンと触媒とのモル比に維持する、請求項1に記載の方法。
[請求項8]
反応媒体が金属ヨウ化物塩を更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項9]
反応媒体が、1:10〜10:1のホスホニウムとアルカリ又はアルカリ土類金属とのモル比の、アルカリ又はアルカリ土類金属ヨウ化物塩を更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項10]
均一触媒がロジウムを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項11]
均一触媒の少なくとも99%が、少なくとも20℃に冷却された際に反応媒体中において可溶化状態に維持される、請求項1に記載の方法。
[請求項12]
アルキルハロゲン化物促進剤を反応媒体中において5重量%より高い濃度に維持する、請求項1に記載の方法。
[請求項13]
反応媒体が酢酸メチルを更に含み、方法が、反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として0.5〜20重量%の酢酸メチル濃度に維持する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項14]
反応媒体が酢酸メチルを更に含み、方法が、反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として0.5〜10重量%の酢酸メチル濃度に維持する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
[請求項15]
反応媒体を3〜35重量%の全ヨウ化物濃度に維持する、請求項1に記載の方法。
[請求項16]
触媒安定剤が170℃未満の融点を有する、請求項1に記載の方法。
[請求項17]
触媒安定剤が25℃において液体である、請求項1に記載の方法。
[請求項18]
、R、R、及びRが全てC以上のアルキル又はシクロアルキル基である、請求項1に記載の方法。
[請求項19]
触媒安定剤がトリブチル(エチル)ホスホニウムイオンを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項20]
触媒安定剤がトリブチル(オクチル)ホスホニウムイオンを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項21]
触媒安定剤がトリオクチル(メチル)ホスホニウムイオンを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項22]
触媒安定剤がトリオクチル(エチル)ホスホニウムイオンを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項23]
、R、及びRが同一であり、C(ヘキシル)、C(オクチル)、C10(デシル)、C12(ドデシル)、C14(テトラデシル)、C16(ヘキサデシル)、シクロペンチル、及びシクロヘキシルからなる群から選択され、RがC以上のアルキルである、請求項1に記載の方法。
[請求項24]
が、C(エチル)、C(ブチル)、C(ペンチル)、C(ヘキシル)、C(オクチル)、C10(デシル)、及びC12(ドデシル)からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
[請求項25]
触媒安定剤が、トリス(2−メチルプロピル)(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリス(2−メチルブチル)(3−メチルブチル)ホスホニウムヨージド、トリシクロヘキシル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリデシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、トリオクチル(デシル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
[請求項26]
請求項1に記載の方法によって形成される酢酸。
[請求項27]
反応媒体を含む反応器内において、一酸化炭素を、メタノール、酢酸メチル、ギ酸メチル、ジメチルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の反応物質と液相中で反応させて、酢酸を含む反応生成物を生成させる工程、ここで、反応媒体は、有限量の水、均一触媒、アルキルハロゲン化物促進剤、及びホスホニウムカチオン:[RPR’]又は[RPR’(式中、Rは、直鎖又は分岐のブチル、ヘキシル、又はオクチル、或いはシクロアルキルであり;R’は、メチル、エチル、プロピル、或いは直鎖又は分岐のブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、又はヘキサデシル、或いはシクロアルキルであり、但しRとR’は異なる)を含む触媒安定剤を含み;そして
反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として、2〜35重量%の全ヨウ化物イオン濃度及び1重量%より高いアルキルハロゲン化物促進剤濃度に維持する工程;
を含む酢酸の製造方法。
[請求項28]
ホスホニウムカチオンが、反応媒体の全重量を基準として1.5重量%〜28重量%の濃度で反応媒体中に存在する、請求項27に記載の方法。
[請求項29]
反応媒体中の水濃度を0.1重量%〜8重量%に維持する、請求項27に記載の方法
[請求項30]
方法が10〜40モル/L/時のカルボニル化速度を有する、請求項27に記載の方法。
[請求項31]
方法が15〜20モル/L/時のカルボニル化速度を有する、請求項27に記載の方法。
[請求項32]
反応媒体を25:1〜950:1の全ヨウ化物イオンと触媒とのモル比に維持する、請求項27に記載の方法。
[請求項33]
反応媒体が金属ヨウ化物塩を更に含む、請求項27に記載の方法。
[請求項34]
反応媒体が、1:10〜10:1のホスホニウムとアルカリ又はアルカリ土類金属とのモル比の、アルカリ又はアルカリ土類金属ヨウ化物を更に含む、請求項27に記載の方法。
[請求項35]
均一触媒がロジウムを含む、請求項27に記載の方法。
[請求項36]
均一触媒の少なくとも99%が、少なくとも20℃に冷却された際に反応媒体中において可溶化状態に維持される、請求項27に記載の方法。
[請求項37]
アルキルハロゲン化物促進剤を反応媒体中において5重量%より高い濃度に維持する、請求項27に記載の方法。
[請求項38]
反応媒体が酢酸メチルを更に含み、方法が、反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として0.5〜20重量%の酢酸メチル濃度に維持する工程を更に含む、請求項27に記載の方法。
[請求項39]
反応媒体が酢酸メチルを更に含み、方法が、反応媒体を、反応媒体の全重量を基準として0.5〜10重量%の酢酸メチル濃度に維持する工程を更に含む、請求項27に記載の方法。
[請求項40]
反応媒体を3〜35重量%の全ヨウ化物濃度に維持する、請求項27に記載の方法。
[請求項41]
触媒安定剤が170℃未満の融点を有する、請求項27に記載の方法。
[請求項42]
触媒安定剤が25℃において液体である、請求項27に記載の方法。
[請求項43]
R及びR’がC2+アルキル基である、請求項27に記載の方法。
[請求項44]
触媒安定剤がトリブチル(エチル)ホスホニウムイオンを含む、請求項27に記載の方法。
[請求項45]
触媒安定剤がトリブチル(オクチル)ホスホニウムイオンを含む、請求項27に記載の方法。
[請求項46]
触媒安定剤がトリオクチル(メチル)ホスホニウムイオンを含む、請求項27に記載の方法。
[請求項47]
触媒安定剤がトリオクチル(エチル)ホスホニウムイオンを含む、請求項27に記載の方法。
[請求項48]
R’が、C(エチル)、C(ブチル)、C(ヘキシル)、C(オクチル)、C10(デシル)、及びC12(ドデシル)からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
[請求項49]
触媒安定剤が、トリス(2−メチルプロピル)(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリス(2−メチルブチル)(3−メチルブチル)ホスホニウムヨージド、トリシクロヘキシル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(エチル)ホスホニウムヨージド、トリデシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、トリオクチル(デシル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(ブチル)ホスホニウムヨージド、トリヘキシル(オクチル)ホスホニウムヨージド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
[請求項50]
請求項27に記載の方法によって形成される酢酸。
図1
図2