特許第5771337号(P5771337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5771337後施工アンカー、後施工アンカーの施工方法および後施工アンカーシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5771337
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】後施工アンカー、後施工アンカーの施工方法および後施工アンカーシステム
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/41 20060101AFI20150806BHJP
   F16B 13/04 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   E04B1/41 503F
   E04B1/41 503B
   F16B13/04 H
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-549026(P2014-549026)
(86)(22)【出願日】2014年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2014000452
【審査請求日】2014年10月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-168037(P2013-168037)
(32)【優先日】2013年8月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-236250(P2013-236250)
(32)【優先日】2013年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506162828
【氏名又は名称】FSテクニカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】特許業務法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 正吾
【審査官】 土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭60−500966(JP,A)
【文献】 特開昭55−51113(JP,A)
【文献】 実開平6−44810(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
F16B 13/04 − 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下穴の所定の深さ位置に拡径部を形成したアンカー穴にアンカリングされる後施工アンカーであって、
前記アンカー穴に挿入される円筒状の筒状本体と、前記筒状本体の先端側に連なる拡開部と、前記拡開部を内側から拡開させるコーン部と、を備え、
前記拡開部は、
前記拡径部に対応する主拡開部と、
前記主拡開部の基端側に連なる基端側拡開部と、
前記主拡開部の先端側に連なる先端側拡開部と、
前記基端側拡開部と前記主拡開部との間、および前記主拡開部と前記先端側拡開部との間の少なくとも一方に介設され、前記コーン部による拡開に際し、前記主拡開部、前記基端側拡開部および前記先端側拡開部に優先して変形する第1変形部と、を有していることを特徴とする後施工アンカー。
【請求項2】
前記先端側拡開部は、前記主拡開部よりも細径に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の後施工アンカー。
【請求項3】
前記基端側拡開部および前記主拡開部は、前記筒状本体と同径に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の後施工アンカー。
【請求項4】
前記第1変形部は、前記拡開部の外周面に形成された環状溝により形成された薄肉部であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の後施工アンカー。
【請求項5】
前記第1変形部は、前記基端側拡開部と前記主拡開部との間、および前記主拡開部と前記先端側拡開部との間の2箇所に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の後施工アンカー。
【請求項6】
前記2箇所の第1変形部は、体積が同一になるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載の後施工アンカー。
【請求項7】
前記拡開部は、
前記筒状本体と前記基端側拡開部との間に介設され、前記コーン部による拡開に際し、前記筒状本体および前記基端側拡開部に優先して変形する第2変形部を、更に有していることを特徴とする請求項5または6に記載の後施工アンカー。
【請求項8】
先端から前記第2変形部まで延在する複数のスリットを、更に備えたことを特徴とする請求項7に記載の後施工アンカー。
【請求項9】
前記筒状本体に対し前記コーン部が打ち込まれるコーン打ち込み式であり、
前記拡開部の内周面は、先細りのテーパー形状に形成され、
前記コーン部は、前記主拡開部の位置に打ち込まれるサイズに形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の後施工アンカー。
【請求項10】
前記コーン部は、先細りのテーパー形状に形成されたテーパー部と、前記テーパー部の基端側に連なり、前記テーパー部の元径と同径に形成されたストレート部と、を有していることを特徴とする請求項9に記載の後施工アンカー。
【請求項11】
前記コーン部は、先細りのテーパー形状に形成されたテーパー部と、前記テーパー部の基端側に連なり、先太りのテーパー形状に形成された逆テーパー部と、を有していることを特徴とする請求項9に記載の後施工アンカー。
【請求項12】
前記コーン部は、球形および太鼓形のいずれかの形状に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の後施工アンカー。
【請求項13】
前記コーン部に対し前記筒状本体が打ち込まれる本体打込み式であり、
前記コーン部は、前記拡開部を拡開させるコーン部本体と、前記コーン部本体に連なり、前記コーン部本体より細径に形成され且つ前記アンカー穴の穴底に突き当てられる被突当て部と、を有し、
前記拡開部の内周面は、先太りのテーパー形状に形成され、
前記コーン部本体は、前記主拡開部の位置に打ち込まれるサイズに形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の後施工アンカー。
【請求項14】
前記コーン部本体は、前記筒状本体に向かって先細りのテーパー形状に形成されたテーパー部と、前記テーパー部の基端側に連なり、前記テーパー部の元径と同径に形成されたストレート部と、を有していることを特徴とする請求項13に記載の後施工アンカー。
【請求項15】
前記コーン部本体は、前記筒状本体に向かって先細りのテーパー形状に形成されたテーパー部と、前記テーパー部の基端側に連なり、先太りのテーパー形状に形成された逆テーパー部と、有していることを特徴とする請求項13に記載の後施工アンカー。
【請求項16】
前記コーン部本体は、球形および太鼓形のいずれかの形状に形成されていることを特徴とする請求項13に記載の後施工アンカー。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかに記載の後施工アンカーの施工方法であって、
前記下穴を穿孔する穿孔工程と、
前記下穴に拡径部を形成する拡径工程と、
前記後施工アンカーを、前記アンカー穴に挿入する挿入工程と、
前記コーン部により前記拡開部を拡開させるアンカリング工程と、を備えたことを特徴とする後施工アンカーの施工方法。
【請求項18】
前記拡径工程と前記挿入工程との間に、前記アンカー穴に接着剤を注入する注入工程を、更に備えたことを特徴とする請求項17に記載の後施工アンカーの施工方法。
【請求項19】
請求項1ないし16のいずれかに記載の後施工アンカーと、
先端部において、前記アンカー穴に拡径部を研削する切刃部を有する拡径用ドリルビットと、を備え、
軸方向において、前記主拡開部の長さに対し前記切刃部の長さが長く形成され、且つ前記後施工アンカーの先端から前記主拡開部の中間位置までの距離と、前記拡径用ドリルビットの先端から前記切刃部の中間位置までの距離と、が同一に形成されていることを特徴とする後施工アンカーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等の躯体に穿孔したアンカー穴にアンカリングされる後施工アンカー、後施工アンカーの施工方法および後施工アンカーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の後施工アンカーとして、天井板などの吊り下げ物をコンクリートスラブなどの躯体に固定する場合に用いられる後施工アンカー(以下、「アンカー」と言う)が知られている(特許文献1参照)。このアンカーは、特殊形状の下孔に打ち込まれるものであり、下孔は、下孔一般部と、下孔一般部に連なる拡径されたテーパー孔部と、テーパー孔部に連なると共に下孔一般部より小径のストレート孔部と、を有している。
アンカーは、基部側の大径軸部と、大径軸部に連なるプラグと、プラグに装着されたスリーブとを備えている。プラグは、環状突起部およびこれに連なるテーパー面を有し、スリーブは、この環状突起部およびテーパー面に対応して嵌合溝および拡張部を有している。そして、アンカーを下孔に投入すると、拡張部の下端がテーパー孔部の底に当接する。
この状態で、大径軸部を打ち込むと、プラグのテーパー面がスリーブの拡張部を押し開くと同時に、プラグの環状突起部がスリーブの嵌合溝に嵌合する。押し開かれた拡張部はテーパー孔部に圧接され、これによりスリーブが躯体にアンカリングされる。また、嵌合溝に嵌合した環状突起部は抜止め状態となり、引き抜き方向において、スリーブ、プラグおよび大径軸部が一体化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−183707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の後施工アンカーでは、大径軸部およびプラグに対し、スリーブが別部材で構成され、打ち込みにより、スリーブがアンカリングされると同時にスリーブがプラグに抜止め状態となる。このため、各部材の製造誤差により、下孔のテーパー面に対する拡張部の圧接状態が緩くなると、或いはスリーブに対するプラグの嵌合状態が緩くなると、引抜き強度が低下してアンカーが下孔から抜け落ち易くなる。特に、地震等による揺れや振動を繰り返し受けると、経時的にアンカーが下孔から抜け落ちるおそれがある。
【0005】
本発明は、引抜き強度が経時的に低下するのを防止することができる後施工アンカー、後施工アンカーの施工方法および後施工アンカーシステムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の後施工アンカーは、下穴の所定の深さ位置に拡径部を形成したアンカー穴にアンカリングされる後施工アンカーであって、アンカー穴に挿入される円筒状の筒状本体と、筒状本体の先端側に連なる拡開部と、拡開部を内側から拡開させるコーン部と、を備え、拡開部は、拡径部に対応する主拡開部と、主拡開部の基端側に連なる基端側拡開部と、主拡開部の先端側に連なる先端側拡開部と、基端側拡開部と主拡開部との間、および主拡開部と先端側拡開部との間の少なくとも一方に介設され、コーン部による拡開に際し、主拡開部、基端側拡開部および先端側拡開部に優先して変形する第1変形部と、を有していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、拡開部が、主拡開部、基端側拡開部および先端側拡開部を有し、主拡開部がアンカー穴の拡径部に対応する構成になっている。すなわち、アンカー穴に挿入された状態で、主拡開部は拡径部に対峙し、基端側拡開部は下穴の拡径部近傍の部位(基端側)に対峙し、先端側拡開部は下穴の拡径部近傍の部位(先端側)に対峙する。このため、コーン部の打込み等により拡開部の拡開すると、主拡開部は拡径部に向かって拡開し、基端側拡開部は下穴の基端側部位に向かって拡開し、先端側拡開部は下穴の先端側部位に向かって拡開する。
このとき、主拡開部に挟んで片側或いは両側に形成した第1変形部が優先的に変形するため、基端側拡開部および先端側拡開部は下穴の拡径部近傍部位に圧接されるが、これと同時に、主拡開部は大きく拡開して、拡径部に圧接される。すなわち、主拡開部は、アンカー穴の拡径部に無理なく係止(圧接)され、拡径部に対し抜止め状態(拡径部の環状段部に引っかかる)にアンカリングされる。
また、主拡開部に連なる基端側拡開部および先端側拡開部も、下穴の部に圧接されるため、全体としてガタつき(グラつき)が生ずることがなく、振動等により緩みを生じ難くなる。しかも、主拡開部は大きく拡開させることができるので、予め主拡開部を他の部分に比して太径に形成しておく必要がなく、後施工アンカーの径とアンカー穴の径との間の寸法差を極力小さくすることができる。この点でも、ガタつきが生じ難い構造とすることができる。
したがって、後施工アンカーをアンカー穴に強固に固定することができるだけでなく、振動等によるガタつきが抑制され、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
【0008】
この場合、先端側拡開部は、主拡開部よりも細径に形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、先端側拡開部が主拡開部より細く形成されているため、コーン部を深く打ち込むこができ、主拡開部を十分に拡開することができる。したがって、施工後の後施工アンカーに振動等が繰り返し生ずることがあっても、後施工アンカーが緩むことがない。
【0010】
この場合、基端側拡開部および主拡開部は、筒状本体と同径に形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、最も細い先端側拡開部を除いて、筒状本体、基端側拡開部および主拡開部は、同径となる。したがって、アンカー穴の下穴は、筒状本体、基端側拡開部および主拡開部より僅かに太径に形成すればよい。例えば、後施工アンカーの外径に対し、0.5mm前後太径の下穴を形成すれば、後施工アンカーをアンカー穴に無理なく嵌合挿入することができる。すなわち、後施工アンカーを、ガタつきを生ずることなくアンカリングすることができる。
【0012】
また、第1変形部は、拡開部の外周面に形成された環状溝により形成された薄肉部であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、拡開部の外周面を研削或いは絞り込むだけで、第1変形部を簡単に形成することができる。なお、環状溝の溝底は、応力集中が生じないように、断面半円状とすることが好ましい。
【0014】
そして、第1変形部は、基端側拡開部と主拡開部との間、および主拡開部と先端側拡開部との間の2箇所に設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、軸方向において、主拡開部の両側に第1変形部が設けられるため、コーン部の打ち込み等により、主拡開部を大きく且つ無理なく拡開させることができる。これにより、主拡開部を、アンカー穴の拡径部に確実に圧接させることができる。
【0016】
この場合、2箇所の第1変形部は、体積が同一になるように形成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、2箇所の第1変形部を物理的に同一条件で変形させることができる。このため、主拡開部を拡径部に倣って均一に拡開させることができる。
【0018】
これらの場合、拡開部は、筒状本体と基端側拡開部との間に介設され、コーン部による拡開に際し、筒状本体および基端側拡開部に優先して変形する第2変形部を、更に有していることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、筒状本体と基端側拡開部との間に第2変形部を設けるようにしているため、基端側拡開部を、コーン部により無理なく拡開させることができる。すなわち、基端側拡開部を、下穴の基端側部位に確実に圧接させることができる。
【0020】
一方、先端から第2変形部まで延在する複数のスリットを、更に備えることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、この複数のスリットと複数の変形部とにより、拡開部の拡開形態を自在にコントロールすることができる。
【0022】
また、筒状本体に対しコーン部が打ち込まれるコーン打ち込み式であり、拡開部の内周面は、先細りのテーパー形状に形成され、コーン部は、主拡開部の位置に打ち込まれるサイズに形成されていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、コーン部を打ち込むと主拡開部の位置に達し、主拡開部を拡開させる。また、基端側拡開部の圧接による反力が、コーン部を包み込むように作用する。これにより、打ち込んだコーン部の振動等による抜けが抑制される。
【0024】
この場合、コーン部は、先細りのテーパー形状に形成されたテーパー部と、テーパー部の基端側に連なり、テーパー部の元径と同径に形成されたストレート部と、を有していることが好ましい。
【0025】
同様に、コーン部は、先細りのテーパー形状に形成されたテーパー部と、テーパー部の基端側に連なり、先太りのテーパー形状に形成された逆テーパー部と、を有していることが好ましい。
【0026】
これらの構成によれば、基端側拡開部の圧接による反力が、コーン部の基端側を包み込むように作用したときに、基端側拡開部の内周面が、コーン部の基端の形状に倣って僅かに変形する。このため、打ち込んだコーン部の振動等による抜けを防止することができる。
【0027】
同様に、コーン部は、球形および太鼓形のいずれかの形状に形成されていることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、コーン部を打ち込むことにより、主拡開部を効率良く拡開させることができる。また、拡開部の反力がコーン部を包み込むように作用し、コーン部の抜けを防止する。
【0029】
また、コーン部に対し筒状本体が打ち込まれる本体打込み式であり、コーン部は、拡開部を拡開させるコーン部本体と、コーン部本体に連なり、コーン部本体より細径に形成され且つアンカー穴の穴底に突き当てられる被突当て部と、を有し、拡開部の内周面は、先太りのテーパー形状に形成され、コーン部本体は、主拡開部の位置に打ち込まれるサイズに形成されていることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、筒状本体の打込みによりコーン部本体が主拡開部の位置に達し、主拡開部を拡開させる。また、先端側拡開部の圧接による反力が、コーン部本体を包み込むように作用する。これにより、打ち込んだコーン部の振動等による抜けが抑制される。
【0031】
この場合、コーン部本体は、筒状本体に向かって先細りのテーパー形状に形成されたテーパー部と、テーパー部の基端側に連なり、テーパー部の元径と同径に形成されたストレート部と、を有していることが好ましい。
【0032】
同様に、コーン部本体は、筒状本体に向かって先細りのテーパー形状に形成されたテーパー部と、テーパー部の基端側に連なり、先太りのテーパー形状に形成された逆テーパー部と、有していることが好ましい。
【0033】
これらの構成によれば、先端側拡開部の圧接による反力が、コーン部本体の基端側を包み込むように作用したときに、先端側拡開部の内周面が、コーン部本体の基端の形状に倣って僅かに変形する。このため、打ち込んだコーン部の振動等による抜けを防止することができる。
【0034】
同様に、コーン部本体は、球形および太鼓形のいずれかの形状に形成されていることが好ましい。
【0035】
この構成によれば、コーン部を打ち込むことにより、主拡開部を効率良く拡開させることができる。また、拡開部の反力がコーン部を包み込むように作用し、コーン部の抜けを防止する。
【0036】
本発明の後施工アンカーの施工方法は、上記した後施工アンカーの施工方法であって、下穴を穿孔する穿孔工程と、下穴に拡径部を形成する拡径工程と、後施工アンカーを、アンカー穴に挿入する挿入工程と、コーン部により拡開部を拡開させるアンカリング工程と、を備えたことを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、拡開部を拡開(アンカリング)させると、主拡開部は、アンカー穴の拡径部に無理なく係止(圧接)される。また同時に、基端側拡開部および先端側拡開部も、拡径部近傍に下穴の部位に圧接される。特に、主拡開部は、拡径部の環状段部の部分に対し抜止め状態となるため、振動等により緩みを生じても抜け落ちてしまうことがない。また、主拡開部は大きく拡開させることができるので、予め主拡開部を他の部分に比して太径に形成しておく必要がなく、後施工アンカーの径とアンカー穴の径との間の寸法差を極力小さくすることができる。この点でも、ガタつきが生じ難い構成とすることができる。したがって、後施工アンカーをアンカー穴に強固に固定することができるだけでなく、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
【0038】
この場合、拡径工程と挿入工程との間に、アンカー穴に接着剤を注入する注入工程を、更に備えることが好ましい。
【0039】
この構成によれば、後施工アンカーを、アンカー穴に対しメカニカルに定着させ得るだけでなく、接着剤によって定着させることができる。したがって、後施工アンカーをアンカー穴により強固に固定(グラつき防止)することができ、且つ引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
【0040】
本発明の後施工アンカーシステムは、上記した後施工アンカーと、先端部において、アンカー穴に拡径部を研削する切刃部を有する拡径用ドリルビットと、を備え、軸方向において、主拡開部の長さに対し切刃部の長さが長く形成され、且つ後施工アンカーの先端から主拡開部の中間位置までの距離と、拡径用ドリルビットの先端から切刃部の中間位置までの距離と、が同一に形成されていることを特徴とする。
【0041】
この構成によれば、拡径用ドリルビットによりアンカー穴に形成した拡径部の位置と、アンカー穴にアンカリングされた後施工アンカーの主拡開部の位置と、を合致させることができる。このため、アンカー穴にアンカリングされた後施工アンカーは、主拡開部が拡径部にアンカリング(圧接)され、拡径部の環状段部の部分に対し抜止め状態となる。このため、振動等により緩みを生じても抜け落ちてしまうことがない。したがって、後施工アンカーをアンカー穴に強固に固定することができるだけでなく、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】後施工アンカーがアンカリングされるアンカー穴の断面図である。
図2】第1実施形態に係る後施工アンカーの正面図(a)および下面図(b)である。
図3】第1実施形態に係る後施工アンカーの断面図である。
図4】後施工アンカーのコーン部の構造図である。
図5】変形例に係るコーン部の構造図である。
図6】第1実施形態に係る後施工アンカーの施工手順(a)、(b)、(c)を表した断面図である。
図7】第1実施形態に係る後施工アンカーの施工手順(d)、(e)を表した断面図である。
図8】第2実施形態に係る後施工アンカーの正面図(a)および断面図(b)である。
図9】第3実施形態に係る後施工アンカーの断面図(a)および打込み状態の断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る後施工アンカー、後施工アンカーの施工方法および後施工アンカーシステムについて説明する。この後施工アンカーは、スラブ、外壁、内壁等のコンクリートの躯体に対し、構造体を支持するために設けられる、いわゆる金属拡張アンカーである。特に、本実施形態の後施工アンカーは、建物の耐震補強や設備機器の設置に用いられ、特殊形状のアンカー穴と協働して、地震等の振動による経時的な引抜き強度の低下を防止し得るものである。また、後施工アンカーシステムは、後施工アンカーと、この特殊形状のアンカー穴を形成するための拡径用ドリルビットと、をシステム化したものである。そこで、後施工アンカーの説明の前に、この特殊形状のアンカー穴について、簡単に説明する。
【0044】
図1は、コンクリート等の躯体に形成されたアンカー穴を表している。同図に示すように、アンカー穴1は、躯体2に穿孔されたストレート形状の下穴部3(下穴)と、下穴部3の奥部(先端部)に、下穴部3よりも太径に形成された拡径部4とを有している。この場合、拡径部4は、2箇所の環状段部5を存して下穴部3から外側に張り出した円筒状の部分で構成されている。また、下穴部3は、拡径部4を挟んで開口部3a側の長い開口側穴部3bと、穴底側の短い底側穴部3cと、を有している。詳細は後述するが、下穴部3と拡径部4とは、異なるドリルビットを用いて形成される。
【0045】
図2は、第1実施形態に係る後施工アンカーの正面図(a)および下面図(b)であり、図3は、その断面図である。両図に示すように、第1実施形態の後施工アンカー10は、いわゆる内部コーン打込み式のアンカーであり、アンカー穴1に挿入される円筒状の筒状本体11と、筒状本体11の先端に連なる拡開部12と、拡開部12を内側から拡開させるコーン部13と、を備えている。筒状本体11と拡開部12とは、軟質のスチールやステンレス等で一体に形成されている。また、コーン部13も、軟質のスチールやステンレス等で一体に形成されている。
【0046】
筒状本体11の内周面には、雌ねじ15が形成されており。この雌ねじ15には、図示しないが、支持対象物のための吊りボルトや繋ぎボルトなどの連結ボルト(一般的には、全ねじボルト)がねじ込まれる。なお、アンカリングされた後施工アンカー10のグラつき(ガタつき)を防止すべく、筒状本体11の基端部外周面に、アンカー穴1の開口部3aに食い込むように嵌合する嵌合部16を、設けるようにしてもよい(図3に、仮想線にて図示)。
【0047】
拡開部12は、アンカー穴1の拡径部4に対応する主拡開部21と、主拡開部21の基端側に連なる基端側拡開部22と、主拡開部21の先端側に連なる先端側拡開部23と、を有している。また、拡開部12は、基端側拡開部22と主拡開部21との間に介設した基端側薄肉部24(第1変形部)と、主拡開部21と先端側拡開部23との間に介設した先端側薄肉部25(第1変形部)と、筒状本体11と基端側拡開部22との間に介設したサブ薄肉部26(第2変形部)と、を有している。すなわち、拡開部12には、筒状本体11側から順に、サブ薄肉部26、基端側拡開部22、基端側薄肉部24、主拡開部21、先端側薄肉部25および先端側拡開部23が配設されている。
【0048】
また、拡開部12には、その先端から切り込んだ複数のスリット31が形成されている。この実施形態では、周方向に均等配置した4つのスリット31が設けられており(図2(b)参照)、各スリット31は、先端側拡開部23の先端からサブ薄肉部26の位置まで、軸方向に延在している。言うまでもないが、この4つのスリット31は、コーン部13の打ち込みによる拡開部12の拡開を促進する。なお、スリット31の数は2つ或いは3つであってもよい(いずれも、周方向に均等配置する)。
【0049】
拡開部12の内周面には、先細りテーパー形状のコーン受容部32が形成されており、このコーン受容部32にコーン部13が打ち込まれる。コーン受容部32は、サブ薄肉部26の位置から先端側拡開部23の先端まで延びている。この場合、コーン受容部32のテーパーと、コーン部13のテーパーとは、同一の角度に形成されている。なお、このコーン受容部32と上記の雌ねじ部15との間には、雌ねじ部15より細径の連通孔17が形成されている。
【0050】
基端側拡開部22、主拡開部21および先端側拡開部23は、いずれも環状に形成されている。基端側拡開部22および主拡開部21は、筒状本体11と同径に形成されている。また、先端側拡開部23は、基端側拡開部22および主拡開部21よりもわずかに細径(0.5mm程度細径)に形成されている。一方、軸方向において、主拡開部21が最も長く、次いで基端側拡開部22、先端側拡開部23の順となり、これらは、例えば6:5:4の寸法比率で形成されている。なお、先端側拡開部23は、主拡開部21等と同径に形成してもよい。
【0051】
この場合、主拡開部21は、後施工アンカー10をアンカー穴1に投入したときに、拡径部4の深さ位置に合致するように設けられている。また、主拡開部21は、軸方向において拡径部4より幾分短い寸法に形成されている。詳細は後述するが、先端側拡開部23の先端は、コーン部13を打ち込む際にアンカー穴1の穴底に突き当てられる。一方、拡径部4の穴底からの位置は、後述する拡径装置52との関係で規定される(図6(b)参照)。このため、先端側拡開部23の軸方向の長さは、拡径装置52との関係で設計されている。
【0052】
基端側薄肉部24および先端側薄肉部25は、上記の寸法比率で言えば「3」の寸法に形成されている。また、基端側薄肉部24および先端側薄肉部25は、拡開部12の外周面に形成した環状溝34により形成されている。環状溝34の溝底は、変形時に応力集中が生じないように、断面半円形に形成されている。テーパー形状のコーン受容部32に面する基端側薄肉部24および先端側薄肉部25は、それぞれの肉厚が同一となるように、基端側薄肉部24の環状溝34に比して先端側薄肉部25の環状溝34が深く形成されている。より好ましくは、基端側薄肉部24の体積と先端側薄肉部25の体積と、を同一にする。これにより、基端側薄肉部24および先端側薄肉部25は、物理的に略同一条件で変形する。
【0053】
同様に、サブ薄肉部26は、上記の寸法比率で言えば「2」の寸法に形成されている。この場合も、サブ薄肉部26は、拡開部12の外周面に形成した環状溝34により形成されている。そして、サブ薄肉部26の肉厚も、基端側薄肉部24や先端側薄肉部25の肉厚と同一となるように形成されている。
【0054】
このように、先端側薄肉部25、基端側薄肉部24およびサブ薄肉部26は、先端側拡開部23、主拡開部21および基端側拡開部22に比して十分に薄肉に形成されている。このため、打ち込んだコーン部13の拡開力により、先端側薄肉部25、基端側薄肉部24およびサブ薄肉部26は、先端側拡開部23、主拡開部21および基端側拡開部22に優先して変形する。
【0055】
より具体的には、先端側薄肉部25は、先端側拡開部23および主拡開部21に優先して変形し、基端側薄肉部24は、主拡開部21および基端側拡開部22に優先して変形し、さらにサブ薄肉部26は、基端側拡開部22および筒状本体11に優先して変形する。もっとも、筒状本体11には、スリット31が形成されていないため、サブ薄肉部26は、基端側拡開部22に優先して変形することとなる。そして、幅広の先端側薄肉部25および基端側拡開部24に挟まれた主拡開部21は、大きな拡開の自由度を有している。
【0056】
上述のように、主拡開部21は、アンカー穴1の拡径部4に対応している。このため、後施工アンカー10をアンカー穴1に挿填すると、主拡開部21が拡径部4に、基端側拡開部22が拡径部4近傍の開口側穴部3bに、さらに先端側拡開部23が拡径部4近傍の底側穴部3cに対峙する(図7(d)参照)。この状態から、コーン部13を打ち込むと、コーン部13は、主に主拡開部21の位置に喰い込む。これにより、拡開部12には、主拡開部21を中心に拡開力が作用するが、サブ薄肉部26、基端側薄肉部24および先端側薄肉部25が適宜変形するため、拡開部12は、アンカー穴1に倣った形状に変形する。
【0057】
具体的には、基端側拡開部22は拡径部4近傍の開口側穴部3bに倣って、主拡開部21は拡径部4に倣って、さらに先端側拡開部23が拡径部4近傍の底側穴部3cに倣って変形する。すなわち、基端側拡開部22は開口側穴部3bに圧接され、主拡開部21は拡径部4に圧接され、先端側拡開部23は底側穴部3cに圧接される(図7(e)参照)。
【0058】
図3および図4に示すように、コーン部13は、主体を為すテーパー部41と、テーパー部41の基端側に連なる被打込み部42と、を有している。コーン受容部32に接するテーパー部41の長さは、主拡開部21の長さに対応している。すなわち、テーパー部41の長さは、主拡開部21の長さと略同一とすることが好ましい。実施形態のコーン部13の長さは、上記の寸法比率で言えば「6」から「12」の間の「9」の寸法に形成されている。そして、コーン部13のサイズは、主拡開部21の位置に打ち込まれるよう設計されている(図7(e)参照)。
【0059】
テーパー部41は、先細りのテーパー形状(円錐台形状)に形成されており、上述のように、コーン受容部32と同一のテーパー角度に形成されている。これにより、拡開部12(主拡開部21)は、外方に平行移動するように拡開する。
【0060】
被打込み部42は、後述する打込みピン68が突き当てられる部分であり、テーパー部41の基端側に連なり、テーパー部41の元径と同径のストレート部43と、ストレート部43に連なり、ストレート部43より細径に形成された細径部44とで構成されている。上述のように、コーン部13は、設計上、主拡開部21の位置に打ち込まれるが、このとき。基端側拡開部22の圧接による反力が、コーン部13の基端側を包み込むように作用する。
【0061】
したがって、基端側拡開部22の内周面(実質的には、基端側薄肉部24の内周面)が、ストレート部43および細径部44の形状に倣って僅かに変形する。これにより、ストレート部43と細径部44との間の段部が引っ掛かりとなって、打ち込んだコーン部13の抜けが防止される(図7(e)参照)。なお、製品の状態において、コーン13は、コーン受容部32に軽く打ち込まれて固定されているか、或いは接着剤によりコーン受容部32に接着されていることが好ましい。
【0062】
次に、図5を参照して、コーン部13の変形例について説明する。
図5(a)のコーン部13では、被打込み部42(逆テーパー部)は、先太りのテーパー形状に形成されている。すなわち、テーパー部41に対し、被打込み部42が逆テーパー形状に形成されている。この場合も、基端側拡開部22の内周面(実質的には、基端側薄肉部24の内周面)が、被打込み部42の形状に倣って僅かに変形し、コーン部13の抜けが防止される。
【0063】
一方、図5(b)のコーン部13は、球形に形成され、図5(c)のコーン部13は、太鼓形に形成されている。これらコーン部13も、主拡開部21の位置に打ち込まれるサイズに形成されている。そして、この場合も、打ち込まれたコーン部13に対し拡開部12が包み込むように作用し、コーン部13の抜けが防止される。
【0064】
次に、図6および図7を参照して、後施工アンカー10の施工方法(施工手順)について説明する。この施工方法は、穿孔装置51を用いて下穴部3を穿孔する穿孔工程(図6(a))と、拡径装置52を用いて下穴部3に拡径部4を形成する拡径工程(図6(b))と、注入装置53を用いてアンカー穴1に接着剤Aを注入する注入工程(図6(c))と、アンカー穴1に後施工アンカー10を挿入装着する挿入工程(図7(d))、挿入した後施工アンカー10の拡開部12を拡開させるアンカリング工程(図7(e))と、を備えている。
【0065】
穿孔装置51は、電動ドリル(図示省略)にダイヤモンドコアビット55を装着して構成されている。ダイヤモンドコアビット55は、例えば円筒状の切刃部56と、切刃部56を支持するシャンク部57とから成り、切刃部56によりコンクリートのコアを抜くようにして、躯体2に下穴部3を穿孔する(図6(a)参照)。なお、ダイヤモンドコアビット55に代えて、ダイヤモンドのノンコアビットを用いてもよいし、振動ドリルにより穿孔を行ってもよい。
【0066】
拡径装置52は、電動ドリル(図示省略)に拡径用ドリルビット61を装着して構成されている。拡径用ドリルビット61は、例えば一対の切刃部62と、一対の切刃部62を径方向に移動自在に保持する切刃保持部63と、切刃保持部63を支持するシャンク部64とから成り、遠心力(回転)により一対の切刃部62を径方向に拡開して、拡径部4を形成する(図6(b)参照)。
【0067】
そして、後施工アンカー10の先端(先端拡開部23の先端)からの主拡開部21の中間位置までの寸法は、拡径用ドリルビット61の先端(切刃保持部63の先端)からの切刃部62の中間位置までの寸法と、が同一になるように設計されている。また、主拡開部21の長さに対し切刃部62の長さが長く形成されている。すなわち、切刃部62により形成される拡径部4に対し、アンカー穴1にアンカリングされる後施工アンカー10の主拡開部21を、位置合せし得るようにしている。
【0068】
注入装置53は、ポンプ部(図示省略)とノズル部66とから成り、ポンプ部のポンピングにより、ポンプ部に貯留されている接着剤Aが、ノズル部66の先端から吐出しアンカー穴1に注入される(図6(c)参照)。
【0069】
図6(a)の穿孔工程では、電動ドリルによりダイヤモンドコアビット55を回転させ、後施工アンカー10の長さに対応する深さの下穴部3を穿孔する。この場合、下穴部3の径(直径)が、後施工アンカー10の径(外径)より0.5mm前後の太い径となるダイヤモンドコアビット55を用いるものとする。なお、このダイヤモンドコアビット55では、シャンク部57を介して切刃部56に冷却液を供給するようになっている。
【0070】
図6(b)の拡径工程では、拡径用ドリルビット61を、穴底に突き当てるように下穴部3に挿入し、電動ドリルにより拡径用ドリルビット61を回転させて、拡径部4を研削する。なお、この拡径用ドリルビット61でも、一対の切刃部62に冷却液を供給するようになっている。そして、拡径部4を形成した後にも、僅かな時間、冷却液の供給を続行し、アンカー穴1の洗浄を行うようにしている。これにより、注入工程に先立つアンカー穴1の清掃は不要となる。
【0071】
図6(c)の注入工程では、ノズル部66を穴底に突き当てるようにアンカー穴1に挿入し、接着剤Aをアンカー穴1の最奥部から注入する。この場合、接着剤Aは、例えばエポキシ樹脂系の接着剤Aを用いる。また、接着剤Aの注入量は、アンカー穴1(拡径部4を含む)の体積から後施工アンカー10の体積を減算した量とする。これにより、アンカー穴1に後施工アンカー10を挿入したときに、接着剤Aがアンカー穴1からはみ出すのを防止することができる。
【0072】
図7(d)の挿入工程では、後施工アンカー10を、穴底に突き当てるようにアンカー穴1内に挿入する。この挿入により、後施工アンカー10の主拡開部21が、アンカー穴1の拡径部4と合致した状態となる。
【0073】
図7(e)のアンカリング工程では、打込み棒68を、コーン部13に当接するように筒状本体11に挿入し、ハンマー69等により、打込み棒68を介してコーン部13を打ち込む。これにより、コーン部13が拡開部12(主拡開部21)に強く押し込まれ、拡開部12を構成する基端側拡開部22、主拡開部21および先端側拡開部23が、アンカー穴1の拡径部4廻りの形状に倣って拡開する。これにより、基端側拡開部22は開口側穴部3bに圧接され、主拡開部21は拡径部4に圧接され、先端側拡開部23は底側穴部3cに圧接される。
【0074】
このように、第1実施形態の後施工アンカー10によれば、コーン部13の打ち込みにより、基端側拡開部22は開口側穴部3bに圧接され、主拡開部21は拡径部4に圧接され、先端側拡開部23は底側穴部3cに圧接される。特に、基端側拡開部22および先端側拡開部23の下穴部3への圧接は、後施工アンカー10のガタつき(グラつき)を防止し、振動等による後施工アンカー10の緩みを抑制する。また、主拡開部21の拡径部4への圧接は、環状段部5に対する引っ掛かりとなり、後施工アンカー10の引抜き強度を高める。
【0075】
さらに、主拡開部21は、基端側薄肉部24および先端側薄肉部25の変形により、大きく拡開させ得るため、拡径部4に適切に圧接させることができるだけでなく、筒状本体11と同径に形成しておくことができる。したがって、後施工アンカー10の挿入を考慮した下穴部3の径と後施工アンカー10の径との差を小さくすることができ(0.5mm前後)、この点でも、施工後の後施工アンカー10をガタつき(グラつき)の生じ難い構造とすることができる。
【0076】
しかも、拡開部12が拡径部4廻りの形状に倣って変形(拡開)することを利用し、コーン部13の被打込み部42の形状を工夫することにより、振動等によるコーン部13の抜けも防止することができる。したがって、後施工アンカー10をアンカー穴1に強固に固定することができるだけでなく、振動等によるガタつきが抑制され、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
【0077】
なお、コーン部13の抜け防止をより確実にするため、上記の連通孔17に雌ねじを形成し、この部分に雄ねじを螺合し、或いは砲金や鉛の塊(円柱状または球状)を打ち込んでおくようにしてもよい。
【0078】
次に、図8を参照して、第2実施形態に係る後施工アンカー10Aについて説明する。この後施工アンカー10Aでは、上記のサブ薄肉部26が無く、基部側拡開部22は、筒状本体11に一体に連設されている。もっとも、4つのスリット31は、基部側拡開部22の位置まで延設されている。したがって、コーン部13が打ち込まれると(この場合も、主拡開部21の位置まで打ち込まれる)、基端側薄肉部24および先端側薄肉部25に挟まれた主拡開部21は大きく拡開され、基部側拡開部22および先端側拡開部23は小さく拡開される。すなわち、基端側拡開部22は開口側穴部3bに圧接され、主拡開部21は拡径部4に圧接され、先端側拡開部23は底側穴部3cに圧接される。
【0079】
一方、コーン部13は、単純な先細りのテーパー形状に形成されており、この場合も、コーン受容部32と同一のテーパー角度に形成されている。また、コーン受容部32と雌ねじ部15との間に位置する連通孔17には、雌ねじが形成されている。図示しないが、この連通孔17には、六角穴付きの雄ねじが螺合するようになっており、コーン部13を打ち込んだ後、連通孔17に雄ねじを螺合することで、コーン部13の抜けが防止される。なお、上記のように、雄ねじに代えて、砲金や鉛の塊(円柱状または球状)を打ち込んでもよい。
【0080】
このような、第2実施形態の後施工アンカー10Aにおいても、後施工アンカー10Aのガタつき(グラつき)が有効に防止され、且つ主拡開部21の拡径部4への圧接により、後施工アンカー10Aの引抜き強度を高めることができる。したがって、後施工アンカー10Aをアンカー穴1に強固に固定することができるだけでなく、振動等によるガタつきが抑制され、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
【0081】
なお、上記の実施形態では、本発明を内部コーン打込み式のアンカーに適用した場合について説明したが、本発明は、打込みに際し拡開部12が移動することのない、心棒打込み式のアンカーや締付け方式のアンカー(テーパーボルト式、ダブルコーンナット式、ウェッジ式)にも適用可能である。また、主拡開部21を大きく拡開させ得る限りにおいて、基端側薄肉部24および先端側薄肉部25のうち、いずれか一方を省略する構成とすることも可能である。
【0082】
次に、図9を参照して、第3実施形態に係る後施工アンカー10Bについて説明する。この後施工アンカー10Bは、本発明を本体打込み式のアンカーに適用したものである。同図に示すように、第3実施形態の後施工アンカー10Bは、第1実施形態の後施工アンカー10と同様に、筒状本体11と、拡開部12と、拡開部12の先端部に設けたコーン部13と、を備えている。
【0083】
同様に、拡開部12は、主拡開部21と基端側拡開部22と先端側拡開部23とを有している。また、拡開部12は、基端側薄肉部24(第1変形部)と先端側薄肉部25(第1変形部)とサブ薄肉部26(第2変形部)とを有している。すなわち、拡開部12には、筒状本体11側から順に、サブ薄肉部26、基端側拡開部22、基端側薄肉部24、主拡開部21、先端側薄肉部25および先端側拡開部23が配設されている。さらに、拡開部12には、その先端からサブ薄肉部26まで切り込んだ複数のスリット31が形成されている。
【0084】
拡開部12の内周面には、第1実施形態のコーン受容部32に対し逆テーパーとなる先太りテーパー形状のコーン受容部32が形成されている。そして、このコーン受容部32の先端部にコーン部13が取り付けられている。コーン部13の基端を下穴部3の穴底に突き当てた状態で、筒状本体11を打ち込むことにより、コーン部13が拡開部12に相対的に打ち込まれ、拡開部12が拡開する。
【0085】
この場合も、基端側拡開部22および主拡開部21は、筒状本体11と同径に形成されている。また、先端側拡開部23は、基端側拡開部22および主拡開部21よりもわずかに細径に形成されている。また、主拡開部21は、後施工アンカー10Bをアンカリングした(打ち込んだ)ときに、拡径部4の深さ位置に合致するようになっている。そして、コーン部13の拡開力により、先端側薄肉部25、基端側薄肉部24およびサブ薄肉部26は、先端側拡開部23、主拡開部21および基端側拡開部22に優先して変形する。
【0086】
すなわち、筒状本体11を打ち込むと、コーン部13は、主に主拡開部21の位置に相対的に喰い込む。これにより、第1実施形態と同様に、拡開部12には、主拡開部21を中心に拡開力が作用するが、サブ薄肉部26、基端側薄肉部24および先端側薄肉部25が適宜変形するため、拡開部12は、アンカー穴1に倣った形状に変形する。具体的には、基端側拡開部22は拡径部4近傍の開口側穴部3bに倣って、主拡開部21は拡径部4に倣って、さらに先端側拡開部23が拡径部4近傍の底側穴部3cに倣って変形する。すなわち、基端側拡開部22は開口側穴部3bに圧接され、主拡開部21は拡径部4に圧接され、先端側拡開部23は底側穴部3cに圧接される(図9(b)参照)。
【0087】
なお、打込みによる拡開部12における各部の拡開は、コーン部13を除く各部がアンカー穴1内を前進しながら行われる。このため、実施形態の拡開部12では、その主拡開部21の全体が拡径部4に入り込む前に、開口側穴部3bにつかえてしまわないように、主拡開部21の基端側端部に面取り部21aが形成されている。
【0088】
第3実施形態のコーン部13は、第1実施形態のコーン部13を逆向きにした基本形態を有している。このコーン部13は、拡開部12を拡開させるコーン部本体71と、コーン部本体71に連なり、コーン部本体71の元径より細径に形成され且つアンカー穴1の穴底に突き当てられる被突当て部72と、を有している。被突当て部72は、円柱状に形成されており、その長さは、筒状本体11を打ち込んだときに、コーン部本体71が主拡開部21の位置に、相対的に打ち込まれるように設計されている(図9(b))。
【0089】
コーン部本体71は、筒状本体11に向かって先細りのテーパー形状に形成されたテーパー部73と、テーパー部73の基端側に連なりテーパー部73の元径と同径のストレート部74と、を有している。この場合も、コーン受容部32に接するテーパー部73の長さは、主拡開部21の長さに対応している。また、コーン部13のサイズは、主拡開部21の位置に打ち込まれるよう設計されている(図9(b)参照)。
【0090】
上述のように、コーン部13は、設計上、主拡開部21の位置に打ち込まれるが、このとき、先端側拡開部23の圧接による反力が、コーン部13の基端側を包み込むように作用する。したがって、先端側拡開部23の内周面(実質的には、先端側薄肉部25の内周面)が、ストレート部74の形状に倣って僅かに変形する。これにより、コーン部13の抜けが防止される(図9(b)参照)。
【0091】
なお、第1実施形態の変形例と同様に、コーン部本体71のストレート部74に代えて、テーパー部73に対し逆テーパーとなる逆テーパー部を設けるようにしてもよい。また、コーン部本体71の形状を、球形或いは太鼓形としてもよい。
【0092】
このように、第3実施形態の後施工アンカー10Bによれば、第1実施形態と同様に、基端側拡開部22および先端側拡開部23の下穴部3への圧接は、後施工アンカー10Bのガタつき(グラつき)を防止し、振動等による後施工アンカー10Bの緩みを抑制する。また、主拡開部21の拡径部4への圧接は、環状段部5に対する引っ掛かりとなり、後施工アンカー10Bの引抜き強度を高める。
【0093】
また、主拡開部21は、拡径部4に適切に圧接させることができるだけでなく、筒状本体11と同径に形成しておくことができる。したがって、後施工アンカー10の挿入を考慮した下穴部3の径と後施工アンカー10Bの径との差を小さくすることができ(0.5mm前後)、この点でも、施工後の後施工アンカー10Bをガタつき(グラつき)の生じ難い構造とすることができる。
【0094】
しかも、拡開部12が拡径部4廻りの形状に倣って変形(拡開)することを利用し、コーン部本体の形状を工夫することにより、振動等によるコーン部13の抜けも防止することができる。したがって、後施工アンカー10Bをアンカー穴1に強固に固定することができるだけでなく、振動等によるガタつきが抑制され、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。なお、本発明は、打込みに際し拡開部12が移動する、スリーブ打込み式のアンカーにも適用可能である。また、本実施形態では、拡径部4を、2箇所の環状段部5を存して下穴部3から外側に張り出した円筒状の部分としているが、拡径部4は、基端側の環状段部5を有する限りにおいてその形状は、厳密に円筒状ではなく円筒様でよい。
【符号の説明】
【0095】
1 アンカー穴、2 躯体、3 下穴部、4 拡径部、10、10A、10B 後施工アンカー、11 筒状本体、12 拡開部、13 コーン部、21 主拡開部、22 基端側拡開部、23 先端側拡開部、24 基端側薄肉部、25 先端側薄肉部、26 サブ薄肉部、32 コーン受容部、34 環状溝、41 テーパー部、42 被打込み部、43 ストレート部、44 細径部、51 穿孔装置、52 拡径装置、53 注入装置、61 拡径用ドリルビット、62 切刃部、71 コーン部本体、72 被突当て部、73 テーパー部、74 ストレート部、A 接着剤
【要約】
引抜き強度が経時的に低下するのを防止することができる後施工アンカー等を提供する。下穴部3の所定の深さ位置に拡径部4を形成したアンカー穴1にアンカリングされる後施工アンカー10であって、円筒状の筒状本体11と、筒状本体11の先端側一体に形成された拡開部12と、拡開部12を拡開させるコーン部13と、を備え、拡開部12は、拡径部4に対応する主拡開部21と、主拡開部21の基端側に連なる基端側拡開部22と、主拡開部21の先端側に連なる先端側拡開部23と、基端側拡開部22と主拡開部21との間に介設された基端側薄肉部24と、主拡開部21と先端側拡開部23との間に介設された先端側薄肉部25と、を有している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9