(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ポリオレフィン系樹脂のうち、少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂の融点ピーク温度が112℃以上であり、少なくとも他の1種のポリオレフィン系樹脂の融点ピーク温度が112℃未満であるか又は融点ピーク温度が存在しない請求項1に記載の熱回復物品。
上記他の1種のポリオレフィン系樹脂がエチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレンゴム、又はブテン、ヘキセン及びオクテンの少なくともいずれかとエチレンとを共重合させたポリエチレン系エラストマーである請求項2に記載の熱回復物品。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施形態の説明]
上記課題を検討するにあたり、本発明者らは、基材層の融点ピーク温度を所定の範囲内にすることにより熱回復物品が適切な温度範囲で熱収縮することと、基材層の融点ピーク温度を1つにし、かつ基材層の樹脂成分全体の融解熱量を所定の範囲内にし、さらに基材層の酸化誘導温度を所定の範囲内にすることによりブルーム及びブリードの発生が少なくなり、熱回復物品が耐銅害性に優れるようになることとを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は、基材層を備える円筒状の熱回復物品であって、上記基材層が酸化防止剤と2種以上のポリオレフィン系樹脂とを含有し、上記基材層が1つの融点ピーク温度を有し、この融点ピーク温度が112℃以上128℃以下であり、上記基材層の樹脂成分全体の融解熱量が80J/g以上130J/g以下であり、かつこの基材層の酸化誘導温度が265℃以上280℃以下である熱回復物品である。
【0016】
当該熱回復物品は、基材層の融点ピーク温度が1つである。基材層の融点ピーク温度が1つの場合、基材層は2種以上のポリオレフィン系樹脂が略均一に混合している状態であり、このために酸化防止剤もポリオレフィン系樹脂中に略均一に分散することができる。
このように酸化防止剤がポリオレフィン系樹脂中に略均一に分散することにより、ブルーム及びブリードが発生し難くなる。また、熱回復物品の熱収縮は基材層の融点ピーク温度付近で起きるので、融点ピーク温度が1つであることによって加熱時に熱回復物品が段階的に熱収縮せずに一気に熱収縮する。熱回復物品が段階的に熱収縮すると熱収縮した外観が不均質となるおそれがあるが、当該熱回復物品は一気に熱収縮するので、熱収縮した外観が均質になる。
【0017】
また、当該熱回復物品の熱収縮は基材層の融点ピーク温度付近で起きるので、上記基材層の融点ピーク温度が上記下限未満であると、熱回復物品が低い温度で熱収縮するので扱い難いおそれがある。また、この融点ピーク温度が上記上限を超えると、熱回復物品が熱収縮する温度が高くなり、熱回復物品で被覆される物品に悪影響が生じるおそれがある。
しかしながら、当該熱回復物品は、基材層の融点ピーク温度が上記範囲内であることにより適切な温度範囲で熱収縮する。このことにより当該熱回復物品は被覆材として好適に使用できる。なお、「基材層が有する融点ピーク温度」とは、180℃で2分間加熱した基材層を示差走査熱量測定装置によって室温から200℃まで10℃/分で昇温させ、この昇温時の基材層における時間当たりの吸熱量が極大(ピーク)になる温度をいう。
【0018】
この基材層の樹脂成分全体の融解熱量が上記上限を超えるのは、基材層中の結晶質のポリオレフィン系樹脂が多く、ゴム成分やエラストマー成分の非晶質のポリオレフィン系樹脂が少ない場合である。酸化防止剤は非晶質のポリオレフィン系樹脂中に分散して保持されるので、非晶質のポリオレフィン系樹脂が多いほど酸化防止剤が基材層表面に移行せず、ブルーム及びブリードが発生し難くなり、基材層の酸化が防止される。従って、基材層の樹脂成分全体の融解熱量が上記上限を超えると、基材層中の結晶質のポリオレフィン系樹脂が多く、非晶質のポリオレフィン系樹脂が少ないので、ブルーム及びブリードが発生し易くなり、基材層が酸化し易くなるおそれがある。
【0019】
一方、基材層の樹脂成分全体の融解熱量が上記下限未満であると、非晶質のポリオレフィン系樹脂が多すぎるために基材層が柔らかすぎ、熱回復物品として使用できないおそれがある。なお、「基材層の樹脂成分全体の融解熱量」とは、基材層の吸熱が全てポリオレフィン系樹脂及び基材層に含まれる他の樹脂成分によって行われると仮定し、上記融点ピーク温度を測定したときの室温から200℃までの昇温中における基材層の吸熱量(J)を基材層中の樹脂成分全体の質量(g)で除した値(J/g)をいう。
【0020】
また、基材層中の酸化防止剤の含有量と基材層の酸化誘導温度とは、基材層中の酸化防止剤の含有量を増やすと基材層の酸化誘導温度が上昇する関係にあることから、基材層の酸化誘導温度が上記下限未満であると、基材層中の酸化防止剤の含有量が少なすぎ、基材層が酸化し易いおそれがある。また、基材層の酸化誘導温度が上記上限を超えると、酸化防止剤の含有量が多いために、ブルーム及びブリードが発生するおそれがある。なお、「酸化誘導温度」とは、示差走査熱量計を用い、酸素雰囲気下にて被測定物を150℃より2℃/分で昇温したとき、発熱による温度上昇が極大(ピーク)となる温度をいう。
【0021】
上記ポリオレフィン系樹脂のうち、少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂の融点ピーク温度が112℃以上であり、少なくとも他の1種のポリオレフィン系樹脂の融点ピーク温度が112℃未満であるか又は融点ピーク温度が存在しないことが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の構成をこのようにすることにより、基材層の融点ピーク温度及び基材層の樹脂成分全体の融解熱量を上記範囲内に容易かつ確実に調整できる。
【0022】
上記他の1種のポリオレフィン系樹脂が、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレンゴム、又はブテン、ヘキセン及びオクテンの少なくともいずれかとエチレンとを共重合させたポリエチレン系エラストマーであることが好ましい。このことにより基材層の融点ピーク温度及び基材層の樹脂成分全体の融解熱量を上記範囲内により容易かつ確実に調整できる。
【0023】
上記基材層が難燃剤を含有することが好ましく、この場合、この基材層の融解熱量としては60J/g以上85J/g以下が好ましい。この基材層に含有される難燃剤や無機フィラー等の量が多いと、この基材層の融解熱量が少なくなる。従って、この基材層の融解熱量が上記下限未満であると、基材層に含有される難燃剤や無機フィラー等の量が多すぎる可能性があり、そのために、伸びの低下、裂け易さの増大等のおそれがある。また、この基材層の融解熱量が上記上限を超えると、熱回復物品として必要な難燃性、靭性、又は伸びが悪くなるおそれがある。なお、「基材層の融解熱量」とは、上記融点ピーク温度を測定したときの室温から200℃までの昇温中における基材層の吸熱量(J)を基材層の質量(g)で除した値(J/g)をいう。
【0024】
当該熱回復物品は、上記基材層の内周面に積層される接着剤層を備えるとよい。接着剤層を備えることにより、熱回復物品が被覆する被覆部分と基材層との密着性を高め、絶縁性、防水性、防食性等を向上させることができる。
【0025】
上記接着剤層がエチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミドを含有することが好ましい。このような構成にすることにより、より確実に熱回復物品が被覆する被覆部分と基材層との密着性を高め、絶縁性、防水性、防食性等を向上させることができる。
【0026】
上記接着剤層の酸化誘導温度としては255℃以上が好ましい。電線等の銅材を熱回復物品で被覆する場合、本発明者らは、接着剤層にも酸化防止剤を含有させることにより、熱回復物品が劣化し難くなるという知見を得た。これは、接着剤層中の酸化防止剤が銅による接着剤層の酸化を防止すると共に、接着剤層中の酸化防止剤が基材層に移行し、イオン化して基材層に移行した銅による基材層の酸化、及び熱回復物品の周囲の酸素による基材層の酸化を防止するためと考えられる。また、接着剤層中の酸化防止剤の含有量と接着剤層の酸化誘導温度とは、接着剤層中の酸化防止剤の含有量を増やすと接着剤層の酸化誘導温度が上昇する関係にあることから、接着剤層の酸化誘導温度が上記下限未満であると接着剤層中の酸化防止剤の含有量が少な過ぎ、基材層が酸化し易いおそれがある。
【0027】
また、本発明は、導体及びその外側に積層される絶縁層を有する複数本のワイヤと、上記複数本のワイヤの導体同士が接続された部分に被着された当該熱回復物品を熱収縮させたチューブとを備えるワイヤスプライスを含む。
【0028】
当該ワイヤスプライスは、上述のように耐銅害性に優れた当該熱回復物品を熱収縮させたチューブを備えている。そのため、当該ワイヤスプライスは、長寿命化が図られ、ワイヤ及びその接続部分の保護、絶縁、防水、防食等の保護状態を長期間維持することが可能となる。
【0029】
さらに本発明は、導体及びその外側に積層される絶縁層を有する複数本のワイヤと、上記複数本のワイヤに被着された当該熱回復物品を熱収縮させたチューブとを備えるワイヤハーネスを含む。
【0030】
当該ワイヤハーネスは、上述のように耐銅害性に優れた当該熱回復物品を熱収縮させたチューブを備えている。そのため、当該ワイヤハーネスは、長寿命化が図られ、ワイヤの保護、絶縁、防水、防食等の保護状態を長期間維持することが可能となる。
【0031】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る熱回復物品、ワイヤスプライス及びワイヤハーネスを説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等な意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
【0032】
[熱回復物品]
まず、熱回復物品の実施形態について以下に説明する。
【0033】
[第一実施形態]
図1〜
図3に示す第一実施形態の熱回復物品1は、例えば絶縁電線同士の接続部分、配線の端末、金属管等の保護、絶縁、防水、防食等のための被覆として使用される。この熱回復物品1は、円筒状の基材層10を備える。
【0034】
<基材層>
基材層10は、酸化防止剤と主成分としての2種以上のポリオレフィン系樹脂とを含有する。この「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。基材層10は、加熱されることで縮径するチューブとして形成される。
また、基材層10には難燃性を向上させる目的で難燃剤を添加することが好ましい。さらに、この基材層10に必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。そのような添加剤としては、例えば銅害防止剤、滑材、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0035】
<基材層の融点ピーク温度>
基材層10は1つの融点ピーク温度を有する。融点ピーク温度が1つの状態とは、2種以上のポリオレフィン系樹脂が略均一に混合している状態であり、酸化防止剤をポリオレフィン系樹脂中に略均一に分散させることができる。このように酸化防止剤がポリオレフィン系樹脂中に略均一に分散していることにより、ブルーム及びブリードが発生し難くなる。また、熱回復物品の熱収縮は基材層の融点ピーク温度付近で起きるので、融点ピーク温度が1つであることによって加熱時に熱回復物品が段階的に熱収縮せずに一気に熱収縮する。熱回復物品が段階的に熱収縮すると熱収縮した外観が不均質となるおそれがあるが、当該熱回復物品は一気に熱収縮するので、熱収縮した外観が均質になる。
【0036】
基材層10の融点ピーク温度の下限としては、112℃であり、115℃が好ましい。
また、基材層10の融点ピーク温度の上限としては、128℃であり、123℃が好ましい。この融点ピーク温度が上記下限未満であると、熱回復物品1が低い温度で熱収縮するので扱い難いおそれがある。また、融点ピーク温度が上記上限を超えると、熱回復物品1が熱収縮する温度が高くなり、熱回復物品で被覆される物品に悪影響が生じるおそれがある。
【0037】
この基材層10の樹脂成分全体の融解熱量の下限としては、80J/gであり、90J/gが好ましい。また、この基材層10の樹脂成分全体の融解熱量の上限としては、130J/gであり、125J/gが好ましい。
【0038】
この基材層10の樹脂成分全体の融解熱量が上記上限を超えるのは、基材層10中の結晶質のポリオレフィン系樹脂が多く、ゴム成分やエラストマー成分の非晶質のポリオレフィン系樹脂が少ない場合である。酸化防止剤は非晶質のポリオレフィン系樹脂中に分散して保持されるので、非晶質のポリオレフィン系樹脂が多いほど、ブルーム及びブリードが発生し難くなり、基材層10の酸化が防止される。従って、基材層10の樹脂成分全体の融解熱量が上記上限を超えると、基材層10中の結晶質のポリオレフィン系樹脂が多く、非晶質のポリオレフィン系樹脂が少ないので、ブルーム及びブリードが発生し易くなり、基材層10が酸化し易くなるおそれがある。また、基材層10の融点ピーク温度が高くなり、熱収縮する温度が高くなるおそれがある。
【0039】
一方、基材層10の樹脂成分全体の融解熱量が上記下限未満であると、非晶質のポリオレフィン系樹脂が多すぎるために基材層10が柔らかすぎ、熱回復物品1として使用できないおそれがある。また、基材層10の融点ピーク温度が低くなり、低温で収縮するおそれがある。
【0040】
<基材層の酸化誘導温度>
基材層10の酸化誘導温度の下限としては、265℃であり、270℃が好ましい。また、基材層10の酸化誘導温度の上限としては、280℃であり、275℃が好ましい。
この酸化誘導温度が上記下限未満であると、基材層10が酸化し易くなり、熱回復物品が劣化するおそれがある。また、酸化誘導温度が上記上限を超えると、酸化防止剤の含有量が多いために、ブルーム及びブリードが発生するおそれがある。
【0041】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系ゴム等が挙げられる。
【0042】
このポリオレフィン系樹脂のMFR(メルトフローレート)の下限としては、0.1g/10分が好ましく、0.4g/10分がより好ましい。MFRが上記下限未満であると、基材層10を押出成形するのに大きな圧力が必要になる。一方、ポリオレフィン系樹脂のMFRの上限としては、10g/10分が好ましく、4g/10分がより好ましい。MFRが上記上限を超えると、樹脂が流れすぎ、基材層の形状を均一にすることが困難になる。なお、MFRとは、JIS−K6760:1997で規定された押出し形プラストメータを用い、JIS−K7210:1997に準拠して温度190℃、荷重21.6kgの条件で測定した値を意味する。
【0043】
ポリエチレンとしては、高圧ラジカル重合法による低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン重合ポリエチレン等が挙げられる。
【0044】
ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等が挙げられる。
【0045】
エチレン−αオレフィン共重合体のαオレフィンとしては、炭素数3〜20程度のαオレフィン等が挙げられる。より具体的には、αオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1テトラデセン等が挙げられる。
【0046】
エチレン−ビニルエステル共重合体のビニルエステルとしては、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0047】
エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体のα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル等が挙げられる。
【0048】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、低密度ポリエチレンエラストマー、超低密度ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー等が挙げられる。
【0049】
オレフィン系ゴムとしては、エチレンプロピレン系ゴム、ブタジエン系ゴム、イソプレン系ゴムなどが挙げられる。
【0050】
エチレンプロピレン系ゴムとしては、エチレン及びプロピレンを主成分とするランダム共重合体、及び第3成分としてジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエンモノマーを加えたものを主成分とするランダム共重合体等が挙げられる。
【0051】
ブタジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその水添または部分水添誘導体であるスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、1,2−ポリブタジエン、無水マレイン酸変性のスチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、コアシェル構造を有する変性ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0052】
イソプレン系ゴムとしては、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水添または部分水添誘導体であるスチレン−エチレン−イソプレン−スチレン共重合体、無水マレイン酸変性のスチレン−エチレン−イソプレン−スチレン共重合体、コアシェル構造を有する変性イソプレンゴム等が挙げられる。
【0053】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤又はアミン系酸化防止剤が好ましい。これら酸化防止剤を用いることにより耐銅害性を向上できる。なお、酸化防止剤としては、上述した以外に硫黄系酸化防止剤及び亜リン酸エステル系酸化防止剤等を単独又は併用で用いることができる。
【0054】
また、基材層10における酸化防止剤の含有量の下限としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましい。一方、酸化防止剤の含有量の上限としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して5質量部が好ましく、3質量部がより好ましい。酸化防止剤の含有量が上記下限未満であると、基材層10が酸化し易くなり、当該熱回復物品1が劣化するおそれがある。また、酸化防止剤の含有量が上記上限を超えると、酸化防止剤が基材層10の表面に移行し、酸化防止剤が表面で結晶化する所謂ブルームや、酸化防止剤が表面に液体状で滲み出る所謂ブリードが発生し、外観不良となるおそれがある。
【0055】
(フェノール系酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス−[メチレン−3−(3′5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6−(4−ヒドロキシ−3,5−−ジ−tert−ブチル・アニリノ)−2,4−ビス・オクチル−チオ−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。
【0056】
(アミン系酸化防止剤)
アミン系酸化防止剤としては、4,4’(α、αージメチルベンジル)ジフェニルアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン等を挙げることができる。
【0057】
また、上記ポリオレフィン系樹脂のうち、少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂の融点ピーク温度の下限としては112℃以上が好ましく、115℃以上がより好ましい。この場合、少なくとも他の1種のポリオレフィン系樹脂の融点ピーク温度の上限としては112℃未満が好ましく、110℃未満がより好ましい。又は、この他の1種のポリオレフィン系樹脂が融点ピーク温度を有しないことが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の構成をこのようにすることにより、基材層10の融点ピーク温度及び基材層の樹脂成分全体の融解熱量を上記範囲内に容易かつ確実に調整できる。
【0058】
上記他の1種のポリオレフィン系樹脂が、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレンゴム、又はブテン、ヘキセン及びオクテンの少なくともいずれかとエチレンとを共重合させたポリエチレン系エラストマーであることが好ましい。このことにより、基材層10の融点ピーク温度及び基材層の樹脂成分全体の融解熱量を上記範囲内により容易かつ確実に調整できる。
【0059】
(難燃剤)
難燃剤としては、
塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェニル、パークロルペンタシクロデカン等の塩素系難燃剤;
1,2−ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)エタン、エチレンビスペンタブロモベンゼン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、テトラブロモエタン、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタール酸、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、臭化アンモニウム等の臭素系難燃剤;
トリアリルホスフェート、アルキルアリルホスフェート、アルキルホスフェート、ジメチルホスフォネート、ホスフォリネート、ハロゲン化ホスフォリネートエステル、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3ジブロモプロピル)2,3ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、ポリホスホネート、ポリホスフェート、芳香族ポリホスフェート、ジブロモネオペンチルグリコール、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミ等のリン酸エステル又はリン化合物;
ホスホネート型ポリオール、ホスフェート型ポリオール、ハロゲン元素含有ポリオール等のポリオール類;
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、三塩化アンチモン、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンチモン、ホウ酸、モリブテン酸アンチモン、酸化モリブテン、リン・窒素化合物、カルシウム・アルミニウムシリケート、ジルコニウム化合物、錫化合物、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム水和物、酸化銅、金属銅粉、炭酸カルシウム、メタホウ酸バリウム等の金属粉又は無機化合物;
メラミンシアヌレート、トリアジン、イソシアヌレート、尿素、グアニジン等の窒素化合物;
シリコーン系ポリマー、フェロセン、フマール酸、マレイン酸等のその他の化合物などが挙げられる。これらの中でも、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤が好ましい。臭素系難燃剤及び塩素系難燃剤は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記臭素系難燃剤の含有量の下限としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。また、臭素系難燃剤の含有量の上限としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して50質量部が好ましく、40質量部がより好ましい。また、難燃剤全体の含有量の下限としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。また、難燃剤全体の含有量の上限としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して100質量部が好ましく、80質量部がより好ましい。臭素系難燃剤又は難燃剤全体の含有量が上記下限未満であると、難燃性付与の効果が得られないおそれがある。また、臭素系難燃剤又は難燃剤全体の含有量が上記上限を超えると、熱回復物品として必要な靭性や伸びが悪くなるおそれがある。
【0061】
基材層10が難燃剤を含有する場合、基材層10の融解熱量の下限としては、60J/gが好ましく、65J/gがより好ましい。また、基材層10の融解熱量の上限としては、85J/gが好ましく、80J/gがより好ましい。この基材層10に含有される難燃剤や無機フィラー等の量が多いと、この基材層10の融解熱量が少なくなる。従って、この基材層10の融解熱量が上記下限未満であると、基材層10に含有される難燃剤や無機フィラー等の量が多すぎる可能性があり、そのために、伸びの低下、裂け易さの増大等のおそれがある。一方、この融解熱量が上記上限を超えると、熱回復物品として必要な難燃性、靭性、又は伸びが悪くなるおそれがある。
【0062】
(銅害防止剤)
銅害防止剤としては、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、2,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]プロピオノヒドラジド等を挙げることができる。基材層10に銅害防止剤を含有させることによって、銅害を防止することが期待される。
【0063】
上記銅害防止剤の含有量の範囲は、例えば銅害防止剤が3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールの場合、下限としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。また、上限としては、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して10質量部が好ましく、5質量部がより好ましい。上記銅害防止剤の含有量が上記下限未満であると、銅害防止剤の効果が得られないおそれがある。また、上記銅害防止剤の含有量が上記上限を超えても、銅害防止効果の向上が得られない。
【0064】
<熱回復物品の製造方法>
熱回復物品1は、例えば以下の工程により製造することができる。
(1)基材層10を形成するための基材層樹脂組成物を調製する工程
(2)基材層樹脂組成物を溶融押出成形機を用いて押出すことで押出成形品を形成する工程
(3)押出成形品を拡径させて熱回復物品とする工程
【0065】
(1)組成物の調製工程
基材層樹脂組成物は、樹脂成分、酸化防止剤、及び必要に応じて添加剤を溶融混合機により混合することで調製できる。溶融混合機としては、公知のもの、例えばオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、単軸混合機、多軸混合機等を使用できる。
【0066】
(2)押出成形品形成工程
押出成形品は、基材層樹脂組成物を公知の溶融押出成形機を用いて押出成形することで形成される。押出成形品は、基材層の構成材料を架橋することにより、耐熱性を向上させてもよい。架橋方法としては、例えば電離性放射線の照射による架橋、化学架橋、熱架橋等の方法が挙げられる。
【0067】
押出成形品の寸法は、用途等に応じて設計することができる。基材層10に対応する押出成形品の寸法は、一例において、内径及び肉厚のそれぞれが、1.0mm〜30mm及び0.1mm〜10mmとされる。
【0068】
(3)押出成形品の拡径工程
押出成形品の拡径は、押出成形品を融点以上の温度に加熱した状態で内部に圧縮空気を導入する等の方法により所定の内径となるように膨張させた後、冷却して形状を固定させることで行われる。このような押出成形品の拡径は、例えば押出成形品の内径が2倍〜4倍程度となるように行われる。このようにして押出成形品を拡径させて形状固定したものが熱回復物品となる。
【0069】
<利点>
当該熱回復物品1は、基材層10の融点ピーク温度が1つであり、かつこの融点ピーク温度及び基材層10の樹脂成分全体の融解熱量が上記範囲内であり、さらに基材層10の酸化誘導温度が上記範囲内であるため、適切な温度範囲で熱収縮し、かつブルーム及びブリードの発生が少なく、耐銅害性に優れる。
【0070】
[第二実施形態]
図4〜
図6に第二実施形態の熱回復物品1Aを示す。この熱回復物品1Aにおいて第一実施形態の熱回復物品1と同様の構成物には同一符号を付して説明を省略する。第二実施形態の熱回復物品1Aは、基材層10の内周面に積層される接着剤層11を備えた多層の熱回復物品である。
【0071】
<接着剤層>
接着剤層11は、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミドを含有することが好ましい。接着剤層11は、熱回復物品1Aが被覆する被覆部分と基材層10との密着性を高め、防水性等を向上させるためのものである。また、接着剤層11には、熱回復物品1Aに形成された後での粘度を調整する目的で無機フィラーを添加することが好ましい。さらに、この接着剤層11に必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。そのような添加剤としては、例えば酸化防止剤、銅害防止剤、劣化抑制剤、粘度特性改良剤、難燃剤、滑材、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、粘着剤等が挙げられる。
【0072】
<接着剤層の酸化誘導温度>
接着剤層11の酸化誘導温度の下限としては、255℃が好ましく、258℃がより好ましい。また、接着剤層11の酸化誘導温度の上限としては、270℃が好ましく、265℃がより好ましい。上記酸化誘導温度が上記下限未満であると、接着剤層11及び基材層10が酸化し易くなり、多層熱回復物品が劣化するおそれがある。また、上記酸化誘導温度が上記上限を超えても、接着剤層11及び基材層10の酸化防止効果の向上が得られない。
【0073】
(エチレン−酢酸ビニル共重合体)
エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニルの含有量の下限としては12質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、19質量%がさらに好ましい。また、上記酢酸ビニルの含有量の上限としては46質量%が好ましく、35質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。上記酢酸ビニルの含有量が上記下限未満であると、十分な柔軟性が得られないおそれがある。一方、上記酢酸ビニルの含有量が上記上限を超えると、接着剤層11の押出成形時に、接着剤層11を形成するための接着剤組成物がダイス、金型等に固着し、取扱いが困難となるおそれがある。
【0074】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRの下限としては、50g/10分が好ましく、100g/10分がより好ましい。MFRが上記下限未満であると、接着剤層11を押出成形するのに大きな圧力が必要になる。また、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRの上限としては、600g/10分が好ましく、500g/10分がより好ましい。MFRが上記上限を超えると、樹脂が流れすぎ、接着剤層11の形状を均一にすることが困難になる。
【0075】
(無機フィラー)
無機フィラーとしては、有機処理層状珪酸塩、有機処理膨潤性雲母、炭酸カルシウム、カーボン等を挙げることができる。無機フィラーを含有させることによって、接着剤層11の粘度を容易に調整でき、接着剤層11の厚みを均一にすることができる。
【0076】
上記無機フィラーの含有量の範囲は、例えば無機フィラーが有機処理層状珪酸塩の場合、下限としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミド100質量部に対して0.5質量部が好ましく、2質量部がより好ましい。また、上限としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミド100質量部に対して40質量部が好ましく、30質量部がより好ましい。上記無機フィラーの含有量が上記下限未満であると、無機フィラーの効果が得られないおそれがある。また、上記無機フィラーの含有量が上記上限を超えると、接着剤層11の柔軟性が低下するおそれがある。
【0077】
(有機処理層状珪酸塩)
有機処理層状珪酸塩とは、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイト等の層状珪酸塩(粘土鉱物、クレー)を有機処理したものである。層状に積層した珪酸塩平面の間には、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等の中間層カチオンが存在して層状の結晶構造を保っている。層状珪酸塩を有機処理することでこの中間層カチオンが有機カチオンとイオン交換される。このように有機化合物が珪酸塩平面の表面に化学的に結合して層間に導入(インターカレーション)されることで珪酸塩平面間の層間距離が大きくなり、熱可塑性樹脂への分散性が向上する。層状珪酸塩としては天然品、合成品のいずれも使用できる。
【0078】
<酸化防止剤>
接着剤層11の酸化防止剤には基材層10と同様の酸化防止剤を用いることができる。
また、接着剤層11における酸化防止剤の含有量の下限としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミド100質量部に対して4質量部が好ましく、6質量部がより好ましい。一方、酸化防止剤の含有量の上限としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミド100質量部に対して14質量部が好ましく、9質量部がより好ましい。酸化防止剤の含有量が上記下限未満であると、接着剤層11及び基材層10が酸化し易くなり、熱回復物品1Aが劣化するおそれがある。また、酸化防止剤の含有量が上記上限を超えても、接着剤層11及び基材層10の酸化防止効果の向上が得られない。
【0079】
(銅害防止剤)
銅害防止剤としては、基材層10の銅害防止剤と同様のものを挙げることができる。接着剤層11に銅害防止剤を含有させることによって、銅害を防止することが期待される。
【0080】
(劣化抑制剤)
劣化抑制剤は熱回復物品1Aが被着される被着体の劣化を抑制するためのものである。
典型的には、劣化抑制剤は、絶縁電線の絶縁層あるいは熱回復物品1Aの接着剤層11に含まれる塩基性成分に起因する絶縁層の割れの発生を抑制するためのものである。この劣化抑制剤は、粘度特性改良剤としての役割をも果たしうる。劣化抑制剤としては、被着体が劣化する要因に応じて選択すればよいが、例えば塩基性成分に起因する被着体の劣化を抑制する場合、塩基性成分による脱塩酸反応が生じることを抑制する化合物、又は塩酸反応により生成した塩化水素、塩化物イオン等を捕捉もしくは中和することができる化合物を使用することができる。このような劣化抑制剤としては、例えば活性白土、ハイドロタルサイト、リンを有する酸化防止剤(酸価10mgKOH/g以上)等を挙げることができる。これらの劣化抑制剤を接着剤層11に含有させることで、例えば窒素含有化合物を吸着し、アニオンを取り込み、脱塩酸反応により生じた塩化水素を捕捉する等して接着剤層11の塩基性成分に起因する被着体の劣化を抑制できる。
【0081】
<熱回復物品の製造方法>
熱回復物品1Aは、例えば以下の工程により製造することができる。
(1)基材層10を形成するための基材層樹脂組成物、及び接着剤層11を形成するための接着剤組成物を調製する工程
(2)基材層樹脂組成物及び接着剤組成物を溶融押出成形機を用いて押出成形することで多層押出成形品を形成する工程
(3)多層押出成形品を拡径させて熱回復物品1Aとする工程
【0082】
(1)組成物の調製工程
基材層樹脂組成物は、樹脂成分、酸化防止剤、及び必要に応じて添加剤を溶融混合機により混合することで調製できる。溶融混合機としては、公知のもの、例えばオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、単軸混合機、多軸混合機等を使用できる。
【0083】
接着剤組成物は、樹脂成分、好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体又はポリアミド、と必要に応じた添加剤とを溶融混合機により混合することで調製できる。溶融混合機としては、基材層樹脂組成物を調製する場合と同様のものを使用できる。
【0084】
(2)多層押出成形品形成工程
多層押出成形品は、基材層樹脂組成物と接着剤組成物とを公知の溶融押出成形機を用いて、基材層樹脂組成物及び接着剤組成物を同時に押出成形することで、基材層10に対応する外層の内周面に接着剤層11に対応する内層が積層されたものとして形成される。多層押出成形品は、外層の構成材料を架橋することにより、耐熱性を向上させてもよい。架橋方法としては、例えば電離性放射線の照射による架橋、化学架橋、熱架橋等の方法が挙げられる。
【0085】
多層押出成形品の寸法は、用途等に応じて設計することができる。多層押出成形品の基材層10に対応する層の寸法は、一例において、内径及び肉厚のそれぞれが、1.0mm〜30mm及び0.1mm〜10mmとされる。多層押出成形品の接着剤層11に対応する層の寸法は、一例において、内径及び肉厚のそれぞれが、0.1mm〜10mm及び0.1mm〜8.5mmとされる。
【0086】
(3)多層押出成形品の拡径工程
多層押出成形品の拡径は、多層押出成形品を融点以上の温度に加熱した状態で内部に圧縮空気を導入する等の方法により所定の内径となるように膨張させた後、冷却して形状を固定させることで行われる。このような多層押出成形品の拡径は、例えば多層押出成形品の内径が2倍〜4倍程度となるように行われる。このようにして多層押出成形品を拡径させて形状固定したものが熱回復物品1Aとなる。
【0087】
<利点>
当該熱回復物品1Aは接着剤層11を備えるので、当該熱回復物品1Aが被覆する被覆部分と基材層10との密着性を高め、絶縁性、防水性、防食性等を向上させることができる。また、接着剤層11が酸化防止剤を含有することにより、基材層10の酸化を防止することができる。
【0088】
[ワイヤスプライス及びワイヤハーネス]
本発明の熱回復物品は、例えば、導体を被覆する絶縁層がポリエチレン(PE)であるPE電線又はPEケーブル、絶縁層がポリビニルクロライド(PVC)であるPVC電線又はPVCケーブル等のワイヤの保護、絶縁、防水、防食等のために使用することができる。具体的には、熱回復物品は、ワイヤスプライス及びワイヤハーネスに適用することができる。
【0089】
図7は当該熱回復物品をワイヤスプライスに適用した例を、
図8及び
図9は当該熱回復物品をワイヤハーネスに適用した例を示している。
【0090】
図7のワイヤスプライスは、一対のワイヤ20の導体線21同士を撚って接続し、この接続部分に
図1の熱回復物品1又は
図4の熱回復物品1Aを熱収縮させたチューブ2を被着したものである。ワイヤ20は、PE電線若しくはPVC電線等の絶縁電線又はケーブルである。ワイヤ20としては、例えば最外層に位置する絶縁層が、ポリビニルクロライドを主成分とするものが使用される。絶縁層におけるポリビニルクロライドの含有量は、例えば50質量%以上95質量%以下である。このようなワイヤスプライスにおいて、チューブ2は、接続部分の保護、絶縁、防水、防食等に寄与することができる。
【0091】
図8及び
図9のワイヤハーネスは、複数本のワイヤ30を
図1の熱回復物品1又は
図4の熱回復物品1Aを熱収縮させたチューブ2により結束し、複数本のワイヤ30の端部に多ピンコネクタ31を設けたものである。ワイヤ30は、
図7に示したワイヤスプライスのワイヤ20と同様のものである。このワイヤハーネスにおいて、チューブ2は、単に各ワイヤ30を結束する役割を果たすだけでなく、個々のワイヤ30を保護する等の役割を果たす。
【0092】
なお、本発明のワイヤスプライスとワイヤハーネスとは、厳格に区別できない場合があり、ワイヤスプライスであって、なおかつワイヤハーネスであるという場合もあり得る。
【0093】
<他の実施の形態>
本発明の熱回復物品は、
図1〜
図6に示したチューブ状に基材層10が形成された熱回復物品に限らず、例えば
図10に示したキャップ状に基材層10Aが形成された熱回復物品であってもよい。この熱回復物品は、
図1に示した熱回復物品の一端部を加熱収縮させて一端部を閉じたものである。この熱回復物品は、例えば配線の端末処理に好適に使用することができる。
【0094】
上記第二実施形態の熱回復物品は、基材層と接着剤層とを個別に押出成形することで形成してもよい。この場合の熱回復物品は、押出成形後に膨張させた基材層の内部に接着剤層をセットし、これを被着体に被着させた上で基材層を熱収縮させることにより使用される。
【0095】
本発明のワイヤスプライスは、ワイヤ同士の接続部分に熱回復物品が被着されたものであればよく、1本のワイヤを複数本のワイヤに接続したもの、複数本のワイヤ同士を接続したもの又は配線の端末処理のように複数本のワイヤの端部をまとめて接続したものであってもよく、その他の形態とすることもできる。
【0096】
本発明のワイヤハーネスは、複数本のワイヤを平面状に束ねた、いわゆるフラットハーネスとして構成することもでき、その他の形態とすることもできる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
[実施例及び比較例]
基材層の構成を変えて実施例及び比較例の熱回復物品を製造した。具体的には、熱回復物品を上述した押出成形品形成工程及び拡径工程により、表1及び表2に示す構成で製造した。押出成形品の基材層に対応する層における外径を4.6mmとし、内径を2.8mmとし、肉厚を0.9mmとした。そして、拡径工程によって外径が7.5mmになるように押出成形品を拡径した。このようにして、No.1〜7の熱回復物品を実施例とし、No.8〜15の熱回復物品を比較例として製造した。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
表1及び表2における各成分の詳細は以下の通りである。なお、以下に示すMFRは、JIS−K6760:1997で規定された押出し形プラストメータを用い、JIS−K7210:1997に準拠して温度190℃、荷重21.6kgの条件で測定した。またmpは融点ピーク温度を表す。
【0102】
高密度ポリエチレン:MFR0.8g/10分、mp130℃、密度0.95g/ml
低密度ポリエチレン:MFR1.5g/10分、mp108℃、密度0.92g/ml
直鎖状低密度ポリエチレン:MFR0.8g/10分、mp120℃、密度0.92g/ml
超低密度ポリエチレンエラストマー:MFR0.5g/10分、mp55℃、密度0.87g/ml
エチレン−プロピレンゴム:ムーニー粘度(ML
1+4、125℃)25
エチレン−酢酸ビニル共重合体:MFR2.5g/10分、酢酸ビニル含量19wt%、mp84℃、密度0.94g/mL
臭素系難燃剤:1,2−ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)エタン
三酸化アンチモン:平均粒径1μm品
酸化防止剤1:フェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトールテトラキス[3−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
酸化防止剤2:アミン系酸化防止剤、4,4’(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
【0103】
<融点ピーク温度、基材層の融解熱量及び基材層の樹脂成分全体の融解熱量>
No.1〜15の熱回復物品における融点ピーク温度、基材層の融解熱量及び基材層の樹脂成分全体の融解熱量を表1及び表2に示す。また、それぞれの測定方法は以下の通りである。
【0104】
(融点ピーク温度)
180℃で2分間加熱した熱回復物品を、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー製の「DSC8500」)によって室温から200℃まで10℃/minで昇温させ、この昇温時の基材層における時間当たりの吸熱量が極大になる温度とした。
【0105】
(基材層の融解熱量)
上記融点ピーク温度を測定したときの熱回復物品の吸熱量(J)を、基材層の質量(g)で除した値(J/g)とした。
【0106】
(基材層の樹脂成分全体の融解熱量)
上記融点ピーク温度を測定したときの熱回復物品の吸熱量(J)を、基材層中のポリオレフィン系樹脂全体の質量(g)で除した値(J/g)とした。
【0107】
<基材層の酸化誘導温度>
No.1〜15の熱回復物品における基材層の酸化誘導温度を表1及び表2に示す。この酸化誘導温度は、示差走査熱量計(株式会社島津製作所の「TA−60」)を用い、酸素雰囲気下にて150℃より2℃/minで昇温し、発熱による温度上昇がピークとなる温度として求めた。
【0108】
<熱回復物品の評価>
No.1〜15の熱回復物品の評価として透明性、低温収縮性、形状保持性、難燃性、引張伸び、銅接触老化及びブルームを評価した。評価結果を表1及び表2に示す。各評価項目の試験方法は以下の通りである。なお、表中の「−」の記載は、評価しなかったことを示すものである。
【0109】
(透明性)
熱回復物品内に印字された鉄棒を挿入し、印字された文字が読めるものをAとし、読めないものをBとした。なお、難燃剤を含有するものは透明でないので、透明性を評価していない。
【0110】
(低温収縮性)
140℃で5分間加熱したときの収縮回復率が85%以上を合格としてAとし、収縮回復率が85%未満を不合格としてBとした。なお、収縮回復率は、以下の式で求められる値である。
収縮回復率(%)=(拡径工程による膨張後の外径−熱収縮後の外径)/(拡径工程による膨張後の外径−押出成形後の外径)×100
【0111】
(形状保持性)
100℃で5分間加熱したときの収縮回復率が20%未満を合格としてAとし、20%以上を不合格としてBとした。
【0112】
(難燃性)
2.8mmφの銅棒に熱回復物品を被せ、180℃で2分間加熱して熱収縮させた。熱収縮させた熱回復物品に、UL規格224に記載のVW−1の垂直燃焼試験を行った。垂直燃焼試験では、垂直に立てた熱回復物品に15秒間の着火を5回繰り返して行い、着火後60秒以内に消炎した場合を合格としてAとし、60秒以内に消炎しなかった場合を不合格としてBとした。なお、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含有していないものは難燃性を求められない用途に用いるものなので、難燃性を評価していない。
【0113】
(引張伸び)
180℃で2分間加熱し、完全収縮させたサンプルを引張試験機にて、引張速度200mm/分で引張試験を実施した。伸び100%以上を合格としてAとし、伸び100%未満を不合格としてBとした。
【0114】
(銅接触老化)
3.0mmφの銅棒に二層構造の熱回復物品を被せ、150℃で1分間加熱して熱回復物品を収縮させた。その後、158℃で168時間加熱し、銅棒を抜き取り、熱回復物品の引張試験を実施して伸びを測定した。引張速度は、500mm/分とした。伸びが100%以上を合格としてAとし、伸びが100%未満を不合格としてBとした。
【0115】
(ブルーム1)
膨張工程完了時に熱回復物品の表面にブルーム及びブリードが生じていないものを合格としてAとし、表面にブルーム又はブリードが生じているものを不合格としてBとした。
【0116】
(ブルーム2)
室温で5ヶ月間保管した後において熱回復物品の表面にブルーム及びブリードが生じていないものを合格としてAとし、表面にブルーム又はブリードが生じているものを不合格としてBとした。
【0117】
(結果)
No.1〜7の熱回復物品は、銅接触老化、ブルーム1及びブルーム2がいずれも合格であった。一方、No.8〜15の熱回復物品は、銅接触老化、ブルーム1及びブルーム2のいずれかで不合格となった。
本発明は、適切な温度範囲で熱収縮し、かつブルーム及びブリードの発生が少なく、耐銅害性に優れた熱回復物品、この熱回復物品を使用したワイヤスプライス及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。本発明に係る熱回復物品は、基材層を備える円筒状の熱回復物品であって、上記基材層が酸化防止剤と2種以上のポリオレフィン系樹脂とを含有し、上記基材層が1つの融点ピーク温度を有し、この融点ピーク温度が112℃以上128℃以下であり、上記基材層の樹脂成分全体の融解熱量が80J/g以上130J/g以下であり、かつこの基材層の酸化誘導温度が265℃以上280℃以下である。