(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の微多孔金属箔の製造装置において、前記パターンロール又は前記硬質ロールのいずれかの軸受けに振動モータが取り付けられており、前記振動モータにより前記金属箔の穿孔中に前記パターンロール及び前記硬質ロールの少なくとも一方に機械的振動が付与されることを特徴とする装置。
請求項1〜3のいずれかに記載の微多孔金属箔の製造装置において、前記穿孔装置の下流にバフロールが設けられており、前記バフロールは前記微多孔金属箔の表面に摺接して、微細な貫通孔の縁部に残った金属箔の破片を除去することを特徴とする装置。
請求項1〜4のいずれかに記載の微多孔金属箔の製造装置において、前記穿孔装置の下流に平坦な表面を有する一対のプレスロールが設けられており、前記プレスロールは前記微多孔金属箔を圧延して平坦化することを特徴とする装置。
請求項1〜5のいずれかに記載の微多孔金属箔の製造装置において、前記パターンロールが鋭い角部を有するモース硬度5以上の多数の高硬度微粒子を表面に有することを特徴とする装置。
請求項1〜10のいずれかに記載の微多孔金属箔の製造装置において、前記金属箔の厚さが5〜50μmであり、前記硬質プラスチックフィルムの厚さが6〜20μmであり、前記軟質プラスチックフィルムの厚さが25〜300μmであることを特徴とする装置。
請求項1〜12のいずれかに記載の微多孔金属箔の製造装置において、前記硬質プラスチックフィルムがポリエステルフィルムであり、前記軟質プラスチックフィルムがポリエチレンフィルムであることを特徴とする装置。
請求項1〜14のいずれかに記載の微多孔金属箔の製造装置において、前記軟質プラスチックフィルムが、高い引張強度及び硬度を有するベースフィルムに、柔軟な樹脂からなる層を設けた複合フィルムであることを特徴とする装置。
請求項15に記載の微多孔金属箔の製造装置において、前記ベースフィルムがポリエステルフィルムであり、前記柔軟な樹脂層がポリエチレン層であることを特徴とする装置。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のエネルギー密度を高めるためには、集電体に貫通孔を設けて正極電位を下げるのが好ましい。集電体としては、アルミニウム箔が広く使用されており、貫通孔は種々の方法により形成されている。
【0003】
例えば、特開2011-74468号(特許文献1)は、多数の貫通孔を有するアルミニウム箔に引張加工及び曲げ加工を同時に行うことにより高強度アルミニウム貫通箔を製造する方法を開示している。貫通孔は0.2〜5μmの内径を有し、塩酸を主成分とする電解液中での直流エッチングによりエッチングピットを形成し、ケミカルエッチングによりエッチングピット径を制御することにより形成される。しかし、エッチングピットは内径が小さいので、貫通孔内に十分な量の活物質が入らず、エネルギー密度を十分に高くできない。その上、エッチングによる貫通孔の形成は生産性が低いので、微多孔金属箔を安価に製造するのに適さない。
【0004】
特開2011-165637号(特許文献2)は、正極活物質層の形成によりリチウムイオン電池用正極体となる正極集電体であって、アルミニウム合金箔の表面(正極活物質層が形成される側)に複数のピット状孔が形成されており、前記孔の平均孔径が1.0〜5μmで、平均孔径/平均孔深さが1.0以下である正極集電体を製造する方法であって、アルミニウム合金箔の表面を直流電解エッチングした後、有機ホスホン酸水溶液で処理する方法を開示している。しかし、直流電解エッチングにより形成されたピット状孔の平均孔径は5μm以下と小さいので、やはりピット状孔内に十分な量の活物質が入らないという問題がある。また、特許文献1と同様に、エッチングによる貫通孔の形成は生産性が低いので、微多孔金属箔を安価に製造するのに適さない。
【0005】
特開2012-186142号(特許文献3)は、活物質が充填された複数のシート状アルミニウム多孔体が積層された電気化学デバイス用電極を製造する方法であって、活物質を充填した後圧縮により薄くした複数のシート状アルミニウム多孔体を積層することを特徴とする方法を開示している。シート状アルミニウム多孔体は、例えば三次元網目状構造を有する発泡樹脂の骨格に、メッキ法、蒸着法、スパッタ法、CVD法等より、Alの融点以下で共晶合金を形成する金属の皮膜を形成した後、Al粉末、結着剤及び有機溶剤を主成分とするペーストに含浸し、次いで非酸化性雰囲気中で550〜750℃の温度で熱処理をすることにより製造される。しかし、このシート状アルミニウム多孔体には、製造方法が複雑であるだけでなく、三次元網目状構造のために機械的強度に劣り、さらに生産性が低いために微多孔金属箔を安価に製造するのに適さないという問題がある。
【0006】
上記の方法はいずれも微多孔金属箔を安価に製造するのに適さない。これは、上記の方法が量産に適さないからである。微多孔金属箔を安価に製造するには、量産装置が必要である。従って、活物質を保持するのに十分な微細貫通孔を有するとともに、高い機械的強度を有し、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等に使用するのに好適な多孔アルミニウム箔等の微多孔金属箔を安価に製造する装置が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、活物質を保持するのに十分な微細貫通孔を有するとともに、高い機械的強度を有する微多孔金属箔を安価にかつ効率良く製造する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、表面に多数の高硬度微粒子を有するパターンロールと対向する硬質ロールとの間に比較的薄い金属箔を押圧しながら通すことにより多数の微細貫通孔を形成する場合に、前記金属箔に直接高硬度微粒子を当接させると、前記金属箔が破断するおそれがあるが、前記金属箔と前記パターンロールとの間に比較的薄い硬質プラスチックフィルムを介在させるとともに、前記金属箔と前記硬質ロールとの間に比較的厚い軟質プラスチックフィルムを介在させると、(a) 前記金属箔に破断することなく多数の貫通孔を形成できるともに、(b) 穿孔により生じた前記金属箔の破片が前記軟質プラスチックに付着することにより、高開口率の微多孔金属箔を効率良く製造できることを発見し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、微多孔金属箔を製造する本発明の装置は、
表面に多数の高硬度微粒子を有するパターンロール、及び前記パターンロールに対向するように隙間を介して配置された硬質ロールを具備する穿孔装置と、
前記パターンロールと前記硬質ロールとの隙間に金属箔を通すための第一のガイド手段と、
前記パターンロールと前記金属箔との隙間に薄い硬質プラスチックフィルムを通すための第二のガイド手段と、
前記硬質ロールと前記金属箔との隙間に前記硬質プラスチックフィルムと比較して厚い軟質プラスチックフィルムを通すための第三のガイド手段とを具備し、
前記金属箔、前記硬質プラスチックフィルム及び前記軟質プラスチックフィルムにかかる張力を穿孔時に前記金属箔が破断しない程度に同じに設定するための調節手段が、前記第一〜第三のガイド手段に設けられており、
もって前記硬質プラスチックフィルム、前記金属箔及び前記軟質プラスチックフィルムは、前記パターンロール側からこの順に積層された状態で、前記パターンロールと前記硬質ロールとの隙間を通過し、微細な貫通孔が形成された微多孔金属箔となることを特徴とする。
【0011】
前記パターンロール又は前記硬質ロールのいずれかの軸受けに振動モータが取り付けられており、前記振動モータにより前記金属箔の穿孔中に前記パターンロール及び前記硬質ロールの少なくとも一方に機械的振動が付与されるのが好ましい。前記機械的振動の周波数が30〜1000 Hzであるのが好ましい。
【0012】
前記穿孔装置の下流にバフロールが設けられており、前記バフロールは前記微多孔金属箔の表面に摺接して、微細な貫通孔の縁部に残った金属箔の破片を除去するのが好ましい。
【0013】
前記穿孔装置の下流に平坦な表面を有する一対のプレスロールが設けられており、前記プレスロールは前記微多孔金属箔を圧延して平坦化するのが好ましい。
【0014】
前記パターンロールは鋭い角部を有するモース硬度5以上の多数の高硬度微粒子を表面に有するのが好ましい。前記高硬度微粒子は100〜500μmの範囲内の粒径を有するのが好ましい。前記微粒子はロール面に30〜80%の面積率で付着しているのが好ましい。前記高硬度微粒子のアスペクト比は1〜2の範囲内であるのが好ましい。
【0015】
前記硬質ロールは金属ロール又は硬質ゴムロールであるのが好ましい。
【0016】
前記金属箔の厚さは5〜50μmであり、前記硬質プラスチックフィルムの厚さは6〜20μmであり、前記軟質プラスチックフィルムの厚さは25〜300μmであるのが好ましい。
【0017】
前記金属箔がアルミニウム箔又は銅箔であるのが好ましい。
【0018】
前記硬質プラスチックフィルムはポリエステルフィルムであり、前記軟質プラスチックフィルムはポリエチレンフィルムであるのが好ましい。前記硬質プラスチックフィルムは前記金属箔の側に金属薄膜を有するのが好ましい。
【0019】
前記軟質プラスチックフィルムは、高い引張強度及び硬度を有するベースフィルムに、柔軟な樹脂からなる層を設けた複合フィルムであるのが好ましい。前記ベースフィルムはポリエステルフィルムであるのが好ましく、前記柔軟な樹脂層はポリエチレン層であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の微多孔金属箔の製造装置では、表面に多数の高硬度微粒子を有するパターンロールと硬質ロールとの間に金属箔を押圧しながら通すことにより金属箔に多数の微細貫通孔を形成する際に、前記金属箔と前記パターンロールとの間に比較的薄い硬質プラスチックフィルムを介在させるとともに、前記金属箔と前記硬質ロールとの間に比較的厚い軟質プラスチックフィルムを介在させるので、(a) 前記金属箔にしわや破断なしに微細な貫通孔を高密度に形成できるだけでなく、(b) 形成された全貫通孔のうち、金属箔の破片が除去された縁部を有する貫通孔の割合が高く、かつ(c) 微細な貫通孔の形成により生じる微細な金属箔屑のほとんどを軟質プラスチックフィルムにトラップすることができる。そのため、高密度に微細な貫通孔が形成された金属箔を安価にかつ効率良く製造することができる。本発明の装置により製造された微多孔金属箔は、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の集電体等に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明するが、特に断りがなければ一つの実施形態に関する説明は他の実施形態にも適用される。また下記説明は限定的ではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更を施しても良い。
【0023】
[1] 製造装置
図1及び
図2に示す微多孔金属箔の製造装置は、穿孔装置を構成するパターンロール1及び硬質ロール2と、第一〜第六のリール3〜8と、パターンロール1及び硬質ロール2のバックアップロール11,12と、第一〜第三のガイドロール13,14,15と、第二のガイドロール14に対向するバフロール16と、平坦な表面を有する一対のプレスロール17,18とを具備する。金属箔31用の第一のリール3、硬質プラスチックフィルム32用の第二のリール4、及び軟質プラスチックフィルム33用の第三のリール5には、金属箔31、硬質プラスチックフィルム32及び軟質プラスチックフィルム33の張力を実質的に同じに設定するために、位置調節手段(図示せず)が設けられている。必要に応じて、金属箔31、硬質プラスチックフィルム32及び軟質プラスチックフィルム33の各々に接する1つ又は複数の張力微調整用ロール131,132,133を設けても良い。
【0024】
(1) 穿孔装置
図2に示す穿孔装置では、上から順にバックアップロール11、パターンロール1、硬質ロール2及びバックアップロール12がそれぞれ軸受け27,21,22,28を介して一対のフレーム30,30に回転自在に支持されている。バックアップロール11,12は金属ロールでもゴムロールでも良い。図示の例では、パターンロール1及び硬質ロール2の両方とも駆動ロールであり、また硬質ロール2の両軸受け22,22に振動モータ42,42が取り付けられている。パターンロール1の軸受け21,21はフレーム30,30に固定されており、上下のバックアップロール11,12及び硬質ロール2の軸受け27,27,28,28,22,22は一対のフレーム30,30に沿って上下動自在である。上方のバックアップロール11の両軸受け27,27に駆動手段44,44が取り付けられており、下方のバックアップロール12の両軸受け28,28に駆動手段46,46が取り付けられている。上方のバックアップロール11はパターンロール1を下方に押圧し、下方のバックアップロール12は硬質ロール2を上方に押圧する。バックアップロール12の押圧により硬質ロール2は軟質プラスチックフィルム33/金属箔31/硬質プラスチックフィルム32を介してパターンロール1に押圧される。パターンロール1及び硬質ロール2はそれぞれバックアップロール11,12に押圧されるので、穿孔中の弾性変形が防止される。
【0025】
(2) パターンロール
パターンロール1は、
図3に詳細に示すように、ロール本体1aの表面に鋭い角部を有するモース硬度5以上の多数の高硬度微粒子10をランダムに有するロールが好ましく、例えば特開平5-131557号、特開平9-57860号及び特開2002-59487号に記載されているロールが好ましい。
【0026】
鋭い角部を有する高硬度微粒子10はダイヤモンド微粒子であるのが好ましく、特にダイヤモンドの粉砕微粒子が好ましい。高硬度微粒子10の粒径は100〜600μmが好ましく、200〜500μmがより好ましく、250〜400μmが最も好ましい。金属箔31に微細な貫通孔を多数形成するには、高硬度微粒子10の粒径はできるだけ均一であるのが好ましい。そのため、高硬度微粒子10に分級処理を施すのが好ましい。パターンロール1における高硬度微粒子10の面積率(高硬度微粒子10がロール表面を占める割合)は30〜80%が好ましく、50〜80%がより好ましい。高硬度微粒子10はニッケルめっき層1b等によりロール本体1aに固着されている。
【0027】
金属箔31の穿孔中にパターンロール1が撓むのを防止するために、パターンロール1のロール本体1aは硬質金属により形成するのが好ましい。硬質金属としては、SKD11のようなダイス鋼が挙げられる。
【0028】
(3) 硬質ロール
パターンロール1と対向して配置される硬質ロール2は平坦なロール面を有する。金属箔31の穿孔中にロール面が凹まない程度の硬度を有するものであれば、金属ロールでも硬質ゴムロールでも良い。硬質ロール2も、穿孔中の撓みを防止するために、ダイス鋼のような硬質金属により形成するのが好ましい。硬質ゴムロールの場合、ショアA硬度は80〜95であるのが好ましい。
【0029】
(4) バフロール
穿孔したままの微多孔金属箔31aには、破片(バリ)の付着がない縁部を有する完全な貫通孔だけでなく、縁部に金属箔の破片が付着した(バリが残った)貫通孔もある。縁部に付着した金属箔の破片のうち脱落しやすいものがあると、後工程で脱落した金属箔の破片がリチウムイオン電池やキャパシタ等に対して悪作用をするおそれがある。このような問題を回避するために、脱落しやすい金属箔の破片は予め除去しておくのが好ましい。これには、
図1に示すようにガイドロール14と、それに対向するバフロール16との間に穿孔したままの微多孔金属箔31aを通し、バフロール16の回転速度を微多孔金属箔31aの周速より早くして、脱落しやすい金属箔の破片を除去するバフィングを行うのが好ましい。金属箔破片の除去工程で微多孔金属箔31aが破断しないように、バフロール16の材質及び回転速度を調整しなければならない。そのためには、例えば、微多孔金属箔31aが破断しない程度に柔軟なファイバーを有するバフロール16を、多孔金属箔31aが破断しない程度の速度で回転させるのが好ましい。
【0030】
(5) プレスロール
バフィングした微多孔金属箔31bでも、貫通孔の縁部にめくれがあったり、一部の貫通孔の縁部に金属箔の破片がしっかり付着したままであったりするので、元の金属箔31より見掛け上厚い。薄い微多孔金属箔を所望する場合には、プレス加工により微多孔金属箔31bの貫通孔のバリを平坦化する。微多孔金属箔31bのプレス加工には、平坦な表面を有する一対のプレスロール17,18を用いるのが好ましい。各プレスロール17,18は硬質金属からなるのが好ましい。プレス加工により貫通孔の縁部に付着したままの金属箔の破片は平坦化され、微多孔金属箔31bより薄い(金属箔31とほぼ同じ厚さの)微多孔金属箔31cが得られる。プレスした微多孔金属箔31cでは、平坦化された金属箔の破片が貫通孔を部分的に覆うので、開口率は若干低下する。
【0031】
[2] 製造方法
(1) 金属箔
穿孔すべき金属箔31としては、アルミニウム箔、銅箔又はステンレススチール箔が好ましい。特にアルミニウム箔は、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等の集電体に使用でき、銅箔はリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの負極又は正極に使用できる。本発明の装置は5〜50μm程度の厚さの金属箔31の穿孔に使用できる。微多孔金属箔31をリチウムイオン電池の集電体等に用いるのに好適なように、金属箔31の厚さの上限は好ましくは40μm、より好ましくは30μm、最も好ましくは25μmである。また、金属箔31の厚さの下限は実用的には10μmでも良い。
【0032】
(2) 硬質プラスチックフィルム
パターンロール1と金属箔31との間に介在する硬質プラスチックフィルム32は、(a) 穿孔すべき金属箔31にかける張力でも延びないだけでなく、(b) 高硬度微粒子10が貫通してもフィルム本体がほとんど変形しない程度に高い引張強度及び硬度、並びに適度な厚さを有し、かつ(c) 押圧された高硬度微粒子10が容易に貫通できる程度の柔軟性及び厚さを有する必要がある。そのため、硬質プラスチックフィルム32は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ナイロン(Ny)等のポリアミド類、延伸ポリプロピレン(OPP)等の熱可塑性可撓性ポリマーにより形成するのが好ましい。
【0033】
硬質プラスチックフィルム32の厚さは、上記条件(a)〜(c) を満たすように、硬質プラスチックの種類に応じて適宜決めれば良い。例えば硬質プラスチックフィルム32がPETからなる場合、その厚さは6〜20μmが好ましい。その他の硬質プラスチックを用いる場合も考慮して、硬質プラスチックフィルム32の厚さは一般的に5〜30μm程度で良い。硬質プラスチックフィルム32が5μmより薄いと、十分な引張強度を有さないので、穿孔すべき金属箔31にかける張力や穿孔にかかる応力により変形し、もって金属箔31の破断の原因となるおそれがある。一方、硬質プラスチックフィルム32が30μmより厚いと、高硬度微粒子10の貫通が困難であり、金属箔31に貫通孔を高密度に形成することができない。硬質プラスチックフィルム32の好ましい厚さは8〜15μmである。
【0034】
穿孔したままの微多孔金属箔31aからの剥離性を向上するために、硬質プラスチックフィルム32の金属箔側の表面に、金属薄膜を形成するのが好ましい。金属薄膜としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、カーボン等の薄膜が好ましく、低コストの観点からアルミニウム薄膜がより好ましい。微多孔金属箔31aの剥離性を確保できる限り、金属薄膜の厚さは限定的でない。金属薄膜は、物理蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等により形成することができる。
【0035】
(3) 軟質プラスチックフィルム
金属箔31の外側(硬質プラスチックフィルム32と反対側)に位置して、パターンロール1と硬質ロール2の間を通過するときに金属箔31と硬質ロール2との間に介在する軟質プラスチックフィルム33は、(a) 硬質プラスチックフィルム32及び金属箔31を貫通した高硬度微粒子10が食い込むことができる程度の柔軟性及び厚さを有するとともに、(b) 高硬度微粒子10が金属箔31を貫通するのに必要な押圧力を硬質ロール2から伝達できる程度の強度及び硬度を有する必要がある。そのため、軟質プラスチックフィルム33は、ポリオレフィン類、軟質ポリ塩化ビニル等の柔軟な熱可塑性ポリマーにより形成するのが好ましい。ポリオレフィン類としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)等が挙げられる。
【0036】
軟質プラスチックフィルム33の厚さは30〜300μmであるのが好ましい。軟質プラスチックフィルム33の厚さが30μm未満であると、硬質プラスチックフィルム32及び金属箔31を貫通した高硬度微粒子10が軟質プラスチックフィルム33も貫通して、硬質ゴムロール2に当たるおそれがある。一方、軟質プラスチックフィルム33の厚さが300μm超であると、金属箔31の穿孔時に軟質プラスチックフィルム33の変形量が大きすぎ、金属箔31が破断するおそれがある。軟質プラスチックフィルム33の厚さはより好ましくは40〜250μmであり、最も好ましくは50〜200μmである。
【0037】
軟質プラスチックフィルム33は、PETやOPPのような高い引張強度及び硬度を有するベースフィルムに、LLDPEやEVAcのような柔軟な樹脂からなる層(シーラント層)を設けた複合フィルムとするのが好ましい。ベースフィルムの材質は硬質プラスチックフィルム32の材質と同じで良い。また、シーラント層の材質は軟質プラスチックフィルム33の材質と同じで良い。シーラント層の厚さは一般に20〜200μmであるのが好ましい。硬質ロール2が金属ロールである場合、シーラント層の厚さは100〜200μmが好ましい。また、硬質ロール2が硬質ゴムロールである場合、シーラント層の厚さは20〜100μmが好ましい。軟質プラスチックフィルム33が複合フィルムの場合、シーラント層は金属箔31の側に位置する。
【0038】
(4) 張力
パターンロール1と硬質ロール2で金属箔31に貫通孔を形成するときに、金属箔31にかかる張力が硬質プラスチックフィルム32及び軟質プラスチックフィルム33にかかる張力より大きいと、金属箔31に過重な応力がかかって金属箔31が破断する。一方、金属箔31にかかる張力が硬質プラスチックフィルム32及び軟質プラスチックフィルム33にかかる張力より小さいと、金属箔31にしわが生じる。ここで、「張力が実質的に同じ」とは、金属箔31、硬質プラスチックフィルム32及び軟質プラスチックフィルム33にかかる張力が完全に同じ場合に限らず、金属箔31の穿孔の全工程(金属箔31がパターンロール1に接触してから、硬質プラスチックフィルム32及び軟質プラスチックフィルム33を剥離するまで)において、金属箔31の破断やしわを十分に防止できる程度に、金属箔31、硬質プラスチックフィルム32及び軟質プラスチックフィルム33にかかる張力が近いことを意味する。
【0039】
金属箔31、硬質プラスチックフィルム32及び軟質プラスチックフィルム33にかかる張力を実質的に同じに設定するためには、第一〜第三のリール3〜5の軸に位置調節手段(図示せず)が設け、それぞれの張力を感知し、それらの張力が同じになるように第一〜第三のリール3〜5の位置を調節するのが好ましい。張力は各リール3〜5に設けた位置調節手段で感知しても良いし、途中に設けたガイドロール131,132,133で感知しても良い。ガイドロール131,132,133を可動にすることにより、張力微調整用ロールとして機能させることもできる。
【0040】
(5) 穿孔方法
図1に示すように、パターンロール1側から順に硬質プラスチックフィルム32、金属箔31及び軟質プラスチックフィルム33が位置するように、これらをパターンロール1に接触させる。硬質プラスチックフィルム32、金属箔31及び軟質プラスチックフィルム33がパターンロール1に接触する位置はいずれもパターンロール1と硬質ゴムロールの間隙(金属箔31の押圧位置)より上流側であるのが好ましい。勿論、別のロール(図示せず)により硬質プラスチックフィルム32、金属箔31及び軟質プラスチックフィルム33を実質的に同じ張力で重ねた後、パターンロール1と硬質ゴムロールの間隙に進入させても良い。
【0041】
硬質プラスチックフィルム32、金属箔31及び軟質プラスチックフィルム33が重ねられた状態でパターンロール1と硬質ロール2との隙間を押圧されながら通過すると、
図3に示すように、パターンロール1の高硬度微粒子10は硬質プラスチックフィルム32を貫通した後、金属箔31も貫通し、さらに軟質プラスチックフィルム33に食い込む。このとき、貫通孔の形成により生じた金属箔31の破片35は、(1) 貫通孔の縁部から離脱して、軟質プラスチックフィルム33に埋設されるか、(2) 貫通孔の縁部に部分的に付着しているかのいずれかである。高硬度微粒子10には粒径分布があるが、軟質プラスチックフィルム33は十分に厚いので、軟質プラスチックフィルム33に食い込んだ高硬度微粒子10が硬質ロール2に達することはない。
【0042】
金属箔31に多数の貫通孔を形成するために、パターンロール1の押圧力は線圧で50〜600 kgf/cmであるのが好ましい。ここで、押圧力は、パターンロール1の両軸にかける負荷を金属箔31の幅で割った値で、例えばパターンロール1の両軸に3トン+3トンの負荷を掛けて、幅30 cmの金属箔31を穿孔したときの押圧力は(3000+3000)÷30=200 kgf/cmである。パターンロール1の押圧力が50 kgf/cm未満であると、十分な数の貫通孔が形成されない。一方、パターンロール1の押圧力が600 kgf/cm超であると、金属箔31が破断するおそれがある。より好ましい押圧力は100〜400 kgf/cmである。
【0043】
硬質プラスチックフィルム32の軟質プラスチックフィルム33は十分に大きな耐圧縮性を有するので、上記押圧力で金属箔31を貫通した高硬度微粒子10が進入する際に、圧縮変形することはない。そのため、高硬度微粒子10は金属箔31にきれいな貫通孔を形成し、その際金属箔31に皺を形成したり、破断したりすることはない。
【0044】
(6) 振動
パターンロール1の高硬度微粒子10により金属箔31に貫通孔を形成する際に、パターンロール1及び硬質ロール2を機械的に振動させると、(a) 高硬度微粒子10が金属箔31に深く進入して貫通孔の数が多くなるだけでなく、貫通孔の平均孔径も大きくなり、かつ(b) 貫通孔の形成により生じた破片(バリ)35が軟質プラスチックフィルム33の方に付着し、金属箔31から軟質プラスチックフィルム33を剥離するときにバリが金属箔31から脱離する傾向があり、その結果、貫通孔の縁部にバリが少ない微多孔金属箔31aが得られることが分った。前記機械的振動は、少なくとも金属箔31に垂直な成分(パターンロール1の高硬度微粒子10が金属箔31を貫通する方向の成分)を有する必要がある。
【0045】
パターンロール1及び硬質ロール2に付与する振動は、パターンロール1の両軸受け又は硬質ロール2の両軸受けに取り付けた振動モータから得ることができる。
図2に示す例では、振動モータ42,42は硬質ロール2の両軸受け22,22に取り付けられている。いずれにしても、パターンロール1及び硬質ロール2の両方とも激しく振動する程度の大きさの機械的振動を付与するのが好ましい。
【0046】
図2に示す例では、振動モータ42は、モータの回転軸に取り付けたアンバランスウエイトの回転により振動を発生させる構造を有する。そのため、振動モータ42の回転軸が硬質ロール2の回転軸と平行になるように振動モータ42,42を硬質ロール2の両軸受け22,22に取り付けると、発生する振動はパターンロール1と硬質ロール2との間隙に垂直な方向(パターンロール1の高硬度微粒子10を金属箔31に垂直に押圧する方向)の成分を有する。このような振動モータ42として、例えばユーラステクノ株式会社のユーラスバイブレータを使用することができる。振動の周波数は30〜1000 Hzの範囲内で適宜設定すれば良い。
【0047】
振動により上記効果(a) 及び(b) が得られる理由は、金属箔31を押圧するパターンロール1の高硬度微粒子10に機械的振動が付与されると、高硬度微粒子10がよりシャープな角部(エッジ)を有するように機能し、高硬度微粒子10による金属箔31の開口、及び貫通孔形成により生じたバリ35の金属箔31からの脱離が容易になるためであると考えられる。このような機能を発揮させるため、パターンロール1及び硬質ロール2全体が振動するのが好ましい。パターンロール1及び硬質ロール2に付与する高パワーの振動は、例えば超音波振動ではエネルギー不足のために得られない。
【0048】
(7) 微多孔金属箔の剥離
パターンロール1と硬質ロール2の間を押圧されながら通過した金属箔31は穿孔され、微多孔金属箔31aとなる。微多孔金属箔31aがパターンロール1及び硬質ロール2から離脱する際、使用済みの硬質プラスチックフィルム32’及び軟質プラスチックフィルム33’を穿孔されたままの微多孔金属箔31aから剥離する。使用済みの硬質プラスチックフィルム32’は第一のガイドロール13を経て第五のリール7に巻き取られ、使用済みの軟質プラスチックフィルム33’は硬質ロール2を経て第六のリール8に巻き取られる。
【0049】
使用済みの硬質プラスチックフィルム32’は、実質的に延伸等の変形がないので、穿孔されたままの微多孔金属箔31aから容易に剥離される。また、使用済みの軟質プラスチックフィルム33’には貫通孔の形成により生じた金属箔31の破片(バリ)35がしっかり付着しているので、穿孔されたままの微多孔金属箔31aを剥離すると、破片35が縁部から離脱した貫通孔が得られる。勿論、貫通孔の縁部に比較的強固に付着している破片は、使用済みの軟質プラスチックフィルム33’の剥離後でも、穿孔されたままの微多孔金属箔31aに付着したままである。その結果、破片が離脱した縁部を有する貫通孔と、破片が部分的に縁部に付着した貫通孔とを有するために、元の金属箔31より見掛け上僅かに厚くなった、穿孔されたままの微多孔金属箔31aが得られる。
【0050】
(8) バフィング
パターンロール1及び硬質ロール2の下流の第二のガイドロール14に対向させてバフロール16を設けるとともに、バフロール16を微多孔金属箔31aの周速より高い回転速度で回転させながら、バフロール16と第二のガイドロール14との隙間に穿孔されたままの微多孔金属箔31aを通過させることにより、穿孔されたままの微多孔金属箔31aにバフィング処理を行い、比較的容易に離脱し得る金属箔31の破片35を貫通孔の縁部から取り除くのが好ましい。勿論、バフィング処理は場合によっては省略しても良い。
【0051】
バフロール16は、プラスチックファイバー、天然繊維等からなるブラシを有するロールが好ましく、ブラシは、貫通孔の縁部から金属箔31の破片35を取り除く過程で、穿孔されたままの微多孔金属箔31aを破断させない程度の柔軟性を有していなければならない。バフィングした微多孔金属箔31bから、後工程で金属箔31の破片35が脱落することがないので、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタ等に使用したときに品質が安定する。
【0052】
(9) プレス
微多孔金属箔31bには貫通孔の縁部に僅かなめくれがあったり、縁部に部分的に金属箔31の破片が付着したりしているので、元の金属箔31より見掛け上厚くなっている。そのため、必要に応じて、微多孔金属箔31bをプレスすることにより、元の厚さの微多孔金属箔31cにするのが好ましい。勿論、例えばリチウムイオン電池に使用する場合に、正極材料を塗布した後でプレスするときには、微多孔金属箔31bをプレスする工程を省略できる。アルミニウムや銅の薄い箔からなる微多孔金属箔31bは非常に柔軟であるので、微多孔金属箔31bのプレスは、(a) 縁部のめくれや、縁部に部分的に付着した金属箔31の破片35を平坦化できるとともに、(b) 微多孔金属箔31bを破断させない程度の押圧力で行う必要がある。具体的なプレス圧は、金属箔31の材質及び厚さに応じて決めれば良い。
【0053】
[3] 微多孔金属箔
本発明の装置により得られた微多孔金属箔は多数の貫通孔を有し、また貫通孔の中では、バリのない縁部を有するものの割合が高い。例えば粒径100〜600μmのダイヤモンド微粒子10を30〜80%の面積率で表面に有するダイヤモンドロール1を用いて、厚さ6〜20μmの硬質プラスチックフィルムと厚さ30〜300μmの軟質プラスチックフィルムで挟んだ厚さ5〜50μmの金属箔31に対して50〜600 kgf/cmの押圧力で貫通孔を形成した場合、貫通孔の孔径はほぼ50〜150μmの範囲内にあり、約20%以上の貫通孔にはバリがない。ただし、縁部にバリが付着した貫通孔もあるので、微多孔金属箔31aの貫通孔の面積率を透光率により評価するのが適切である。透光率(%)は、波長660 nmの入射光I
0に対する微多孔金属箔31aの透過光Iの割合(I/I
0×100)である。本発明の装置により製造された微多孔金属箔31aの透光率は、製造条件により異なるが、一般に2〜10%であり、好ましくは3〜6.5%である。
【0054】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0055】
実施例1
図2に示す穿孔装置に、外径200 mmのSKD11製ロールにニッケルめっきにより粒径分布が250〜350μmのダイヤモンド微粒子10を付着させたパターンロール1、及び外径200 mmのSKD11製硬質ロール2を取り付け、硬質ロール2の両軸受け22,22に振動モータ(ユーラステクノ株式会社の「ユーラスバイブレータ」型式:KEE-6-2B)32,32を取り付けた。各振動モータ42の回転軸は硬質ロール2の回転軸と平行であった。この振動モータは偏心ウエイトの回転により振動を発生する構造であり、回転する硬質ロール2に付与した振動(両ロール1,2の間隙に垂直な方向の振動)は120 Hzの周波数を有していた。
【0056】
金属箔31として厚さ12μmのAl箔を用い、硬質プラスチックフィルム32として厚さ12μmのPETフィルムの一面にAlを蒸着したものを用い、軟質プラスチックフィルム33として厚さ60μmのLLDPE層と厚さ12μmのPET層からなる複合フィルムを用いて、
図1に示す装置によりAl箔31を穿孔した。回転する両ロール1,2の間隙を、233 kgf/cmの押圧力(線圧)かつ1.5 m/秒の速度で通過したのは、パターンロール1の側から順にAl蒸着PETフィルム32(Al蒸着層はパターンロール1の反対側)と、Al箔31と、LLDPE/PET複合フィルム33(LLDPE層がAl箔31の側)であった。この際、Al箔31、Al蒸着PETフィルム32及びLLDPE/PET複合フィルム33のいずれにも0.1 kgf/cmと同じ張力(幅1 cm当たりの負荷)を掛けた。
【0057】
両ロール1,2の間隙を通過した穿孔したままの微多孔Al箔31aから、使用済みの硬質プラスチックフィルム32’及び軟質プラスチックフィルム33’を剥離した。得られた微多孔Al箔31aには破断やしわ等の欠陥が認められなかった。
【0058】
実施例1の微多孔Al箔31aの光学顕微鏡写真(50倍及び200倍)をそれぞれ
図4及び
図5に示す。
図4及び
図5から明らかなように、実施例1の微多孔Al箔31aは均一な大きさの貫通孔を多数有し、貫通孔の孔径分布はほぼ150〜200μmであった。また、縁部にAl箔の破片が付着していない完全な貫通孔の割合は約20%以上であった。微多孔Al箔31aの透光率は5%であった。
【0059】
比較例1
アルミニウム箔31とバフロール1との間に硬質プラスチックフィルム32を介在させない以外実施例1と同様にして、
図1及び
図2に示す装置により微多孔アルミニウム箔31aを作製した。その結果、穿孔中にアルミニウム箔31の破断が起こった。
【0060】
比較例2
アルミニウム箔31と硬質ロール2との間に軟質プラスチックフィルム33を介在させない以外比較例1と同様にして、微多孔アルミニウム箔31aを作製したところ、ダイヤモンド微粒子10が硬質ロール2に当たったために、アルミニウム箔31に形成された貫通孔の数が非常に少なかった。
【0061】
比較例3
硬質プラスチックフィルム32及び軟質プラスチックフィルム33を用いずに、アルミニウム箔31に対してパターンロール1及び硬質ロール2により穿孔を行おうとしたところ、貫通孔がほとんど形成されなかっただけでなく、アルミニウム箔31が破断した。
【0062】
実施例2
(1) アルミニウム箔の代わりに厚さ12μmの銅箔を用い、(2) 押圧力を333 kgf/cmに変更し、かつ(3) 硬質ロール2に付与する振動周波数を60 Hzに変更した以外実施例1と同様にして、微多孔銅箔31aを作製した。両ロール1,2の間隙を通過した穿孔したままの微多孔銅箔31aから、使用済みの硬質プラスチックフィルム32’及び軟質プラスチックフィルム33’を剥離した。得られた微多孔銅箔31aには破断やしわ等の欠陥が認められなかった。
【0063】
実施例2の微多孔銅箔31aの光学顕微鏡写真(50倍及び200倍)をそれぞれ
図6及び
図7に示し、また使用済み軟質プラスチックフィルム33’の光学顕微鏡写真(50倍)を
図8に示す。
図6及び
図7から明らかなように、実施例2の微多孔銅箔31aは均一な大きさの貫通孔を多数有し、貫通孔の孔径分布はほぼ150〜200μmであった。また、縁部に金属箔の破片が付着していない完全な貫通孔の割合は約30%であった。微多孔銅箔31aの透光率は7%であった。
【0064】
図8から明らかなように、使用済み軟質プラスチックフィルム33’には、貫通孔の形成により生じた銅箔31の破片が多数付着していた。これから、貫通孔の形成により生じた銅箔31の破片の多くは軟質プラスチックフィルム33にトラップされることが分かる。
【0065】
実施例3
押圧力を300 kgf/cmに変更した以外実施例2と同様にして、微多孔銅箔31aを作製した。両ロール1,2の間隙を通過した穿孔したままの微多孔銅箔31aから、使用済みの硬質プラスチックフィルム32’及び軟質プラスチックフィルム33’を剥離した。得られた微多孔銅箔31aには破断やしわ等の欠陥が認められなかった。
【0066】
実施例3の微多孔銅箔31aの光学顕微鏡写真(50倍及び200倍)をそれぞれ
図9及び
図10に示す。
図9及び
図10から明らかなように、実施例3の微多孔銅箔31aは均一な大きさの貫通孔を多数有し、貫通孔の孔径分布はほぼ150〜200μmであった。また、縁部に金属箔の破片が付着していない完全な貫通孔の割合は約20%であった。微多孔銅箔31aの透光率は5%であった。
【0067】
実施例4
(1) 押圧力を133 kgf/cmに変更し、(2) 銅箔31の送給速度を0.5 m/秒に変更し、かつ(3) 硬質ロール2に付与する振動周波数を40 Hzに変更した以外実施例1と同様にして、微多孔銅箔31aを作製した。両ロール1,2の間隙を通過した穿孔したままの微多孔銅箔31aから、使用済みの硬質プラスチックフィルム32’及び軟質プラスチックフィルム33’を剥離した。得られた微多孔銅箔31aには破断やしわ等の欠陥が認められなかった。
【0068】
実施例4の微多孔銅箔31aの光学顕微鏡写真(50倍及び200倍)をそれぞれ
図11及び
図12に示し、また使用済み軟質プラスチックフィルム33’の光学顕微鏡写真(50倍)を
図13に示す。
図11及び
図12から明らかなように、実施例4の微多孔銅箔31aは均一な大きさの貫通孔を多数有し、貫通孔の孔径分布はほぼ150〜200μmであった。また、縁部に金属箔の破片が付着していない完全な貫通孔の割合は約20%以上であった。微多孔銅箔31aの透光率は5%であった。
【0069】
図13から明らかなように、使用済み軟質プラスチックフィルム33’には、貫通孔の形成により生じた銅箔31の破片が多数付着していた。これから、貫通孔の形成により生じた銅箔31の破片の多くは軟質プラスチックフィルム33にトラップされることが分かる。
【0070】
実施例5
硬質プラスチックフィルム32としてAl蒸着層がない厚さ12μmのPETフィルムを用いた以外、実施例1と同様にして、微多孔Al箔31aを作製した。両ロール1,2の間隙を通過した穿孔したままの微多孔Al箔31aから、使用済みの硬質プラスチックフィルム32’及び軟質プラスチックフィルム33’を剥離した。得られた微多孔Al箔31aには破断やしわ等の欠陥が認められなかった。光学顕微鏡観察の結果、微多孔Al箔31aは均一な大きさの貫通孔を多数有し、貫通孔の孔径分布はほぼ150〜200μmであることが分った。また、縁部にAl箔の破片が付着していない完全な貫通孔の割合は約10%であった。微多孔Al箔31aの透光率は2%であった。
【0071】
実施例6
軟質プラスチックフィルム33として厚さ100μmのHDPE単体のフィルムを用いた以外、実施例1と同様にして、微多孔Al箔31aを作製した。両ロール1,2の間隙を通過した穿孔したままの微多孔Al箔31aから、使用済みの硬質プラスチックフィルム32’及び軟質プラスチックフィルム33’を剥離した。得られた微多孔Al箔31aには破断やしわ等の欠陥が認められなかった。光学顕微鏡観察の結果、微多孔Al箔31aは均一な大きさの貫通孔を多数有し、貫通孔の孔径分布はほぼ150〜200μmであることが分った。また、縁部にAl箔の破片が付着していない完全な貫通孔の割合は約10%であった。微多孔Al箔31aの透光率は2%であった。
【0072】
実施例7
硬質プラスチックフィルム32としてAl蒸着した厚さ20μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを用いた以外、実施例1と同様にして、微多孔Al箔31aを作製した。両ロール1,2の間隙を通過した穿孔したままの微多孔Al箔31aから、使用済みの硬質プラスチックフィルム32’及び軟質プラスチックフィルム33’を剥離した。得られた微多孔Al箔31aには破断やしわ等の欠陥が認められなかった。光学顕微鏡観察の結果、微多孔Al箔31aは均一な大きさの貫通孔を多数有し、貫通孔の孔径分布はほぼ150〜200μmであることが分った。また、縁部にAl箔の破片が付着していない完全な貫通孔の割合は約10%であった。微多孔Al箔31aの透光率は3%であった。
【0073】
実施例8
軟質プラスチックフィルム33として厚さ200μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムを用いた以外、実施例1と同様にして、微多孔Al箔31aを作製した。両ロール1,2の間隙を通過した穿孔したままの微多孔Al箔31aから、使用済みの硬質プラスチックフィルム32’及び軟質プラスチックフィルム33’を剥離した。得られた微多孔Al箔31aには破断やしわ等の欠陥が認められなかった。光学顕微鏡観察の結果、微多孔Al箔31aは均一な大きさの貫通孔を多数有し、貫通孔の孔径分布はほぼ150〜200μmであることが分った。また、縁部にAl箔の破片が付着していない完全な貫通孔の割合は約15%であった。微多孔Al箔31aの透光率は3%であった。
【0074】
参考例1
実施例1の微多孔アルミニウム箔の両面にリチウムイオン電池の正極材料を塗布し、120℃で乾燥した後、ロールプレスした。正極材料の組成は、活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガンオキサイド(NCM)100重量部、導電助剤1としてアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製HS-100)3重量部、導電助剤2としてグラファイト粉(ティムカル社製KS6L)3重量部、バインダとしてポリフッ化ビニリデンPVDF 3重量部、及び溶剤としてN-メチル-2-ピロリドン61重量部であった。顕微鏡観察の結果、正極材料が貫通孔に充填されていることが確認された。これから、本発明の装置により得られた微多孔アルミニウム箔は、リチウムイオン電池の集電体に好適であることが分かる。
【解決手段】 (a) 表面に多数の高硬度微粒子を有するパターンロールと硬質ロールとの間に金属箔を押圧しながら通すことにより金属箔に多数の微細貫通孔を形成する際に、金属箔とパターンロールとの間に比較的薄い硬質プラスチックフィルムを介在させるとともに、金属箔と硬質ロールとの間に比較的厚い軟質プラスチックフィルムを介在させ、(b) 金属箔、硬質プラスチックフィルム及び軟質プラスチックフィルムにかかる張力を、穿孔時に金属箔が破断しない程度に同じに設定する微多孔金属箔の製造装置。