(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5771363
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】クリップ付きキャップ
(51)【国際特許分類】
B43K 23/08 20060101AFI20150806BHJP
B43K 25/02 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
B43K9/00 F
B43K25/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-105568(P2010-105568)
(22)【出願日】2010年4月30日
(65)【公開番号】特開2011-230486(P2011-230486A)
(43)【公開日】2011年11月17日
【審査請求日】2013年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小泉 裕介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳史
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−211793(JP,A)
【文献】
特開2001−71675(JP,A)
【文献】
実開平3−16294(JP,U)
【文献】
実開平6−45780(JP,U)
【文献】
特開2005−329576(JP,A)
【文献】
特開2008−93845(JP,A)
【文献】
特開平9−169196(JP,A)
【文献】
実開平7−31387(JP,U)
【文献】
実開昭55−49936(JP,U)
【文献】
LOOK UP 2007/2007年パイロット総合カタログ,日本,株式会社パイロットコーポレーション,2007年 1月 1日,p.208
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 23/08−23/12
B43K 25/00−25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体とクリップが嵌合するクリップ付きキャップにおいて、
キャップ本体は、一端はクリップと嵌合する凹凸部が形成された略筒形状からなり、
クリップは長手方向の一端はキャップ本体と嵌合する基部と、基部と長手方向の他端に位置し内側はキャップ本体の外周面と当接する玉部と、基部と玉部を接続する腕状部とからなり、
キャップ本体とクリップが嵌合した際の軸断面において、玉部から前方にかけて腕状部の内側とキャップ本体の表面との隙間に起立壁が形成されると共に、起立壁は、軸断面方向において腕状部とキャップ本体との接点と当接し、キャップ本体表面から外側に向けて形成されていることを特徴とするクリップ付きキャップ。
【請求項2】
キャップ本体とクリップが嵌合するクリップ付きキャップにおいて、
キャップ本体は、一端はクリップと嵌合する凹凸部が形成された略筒形状からなり、
クリップは長手方向の一端はキャップ本体と嵌合する基部と、基部と長手方向の他端に位置し内側はキャップ本体の外周面と当接する玉部と、基部と玉部を接続する腕状部とからなり、
キャップ本体とクリップが嵌合した際の軸断面において、玉部から前方にかけて腕状部の内側とキャップ本体の表面との隙間に起立壁が形成され、前記起立壁は、キャップ表面から外側に向けて形成されると共に、クリップ内側に起立壁と対向した窪部を形成したことを特徴とするクリップ付きキャップ。
【請求項3】
キャップ本体の側面部に面削ぎ部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のクリップ付きキャップ。
【請求項4】
キャップ本体とクリップが嵌合するクリップ付きキャップにおいて、
キャップ本体は、一端はクリップと嵌合する凹凸部が形成された略筒形状からなり、
クリップは長手方向の一端はキャップ本体と嵌合する基部と、基部と長手方向の他端に位置し内側はキャップ本体の外周面と当接する玉部と、基部と玉部を接続する腕状部とからなり、
キャップ本体とクリップが嵌合した際の軸断面において、玉部から前方にかけて腕状部の内側とキャップ本体の表面との隙間に起立壁が形成され、
キャップ本体の前方の内径部の内側に第1の凹凸部が形成されると共に、クリップ腕状部の長手方向一端部のクリップ基部の外径部の外側に第2の凹凸部が形成されており、第1および第2の凹凸部同士が嵌合してキャップ本体にクリップが固定し、起立壁は前記第1および第2の凹凸部より前方に位置することを特徴とするクリップ付きキャップ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載のクリップ付きキャップを軸体に嵌合したことを特徴とする筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具あるいは塗布具等のクリップとキャップを別部品として嵌合により固定するクリップ付きキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具(以下、液体塗布体等も含む)の筆記あるいは塗布先端部をキャップ体で覆うが、服等のポケットに筆記具を収容する際に、収容時にぐら付かないように、キャップ体にクリップが設けられているのが通常である。そして、クリップのデザインの自由度を上げるために、クリップとキャップ(キャップ本体)を別部品でそれぞれ作成し、それら同士を嵌着させてクリップ付きキャップを作ることが行われている。
【0003】
クリップの玉部(クリップのキャップ側に突出した側面視半円状の突起部)とキャップの間の隙間をできるだけ少なくして、筆記具をポケットなどに入れてクリップを指す場合はクリップとキャップで布を緊密に挟み付けて筆記具の落下を防ぐ必要がある。
【0004】
また別部品を嵌着させてクリップ付きキャップを作る場合、クリップ玉部とキャップの設計時には隙間のないように設定されていても、クリップやキャップの形状によって、特に成形部品においては隙間が発生する場合があり、隙間が空いた場合はポケット(通常胸ポケット)等にクリップを引っ掛けた場合に抜け落ち易くなる問題が生じる。一方、クリップ玉部とキャップ外径(外周面部)とによる押さえ力が極端に大きい場合には、クリップに常時、強い応力が発生して破損し易くなるので、ある程度以上は抑え力を強くする設定ができず、前記の隙間発生を効果的に防止できないという問題点があった。そこでクリップ全体をその玉部がクリップ本体外周面に接する方向に傾くようにして、クリップとキャップ側面との間で胸ポケット等にクリップを指したときにクリップを確実に引っ掛けることができるクリップ付きキャップが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−172887
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のクリップ付きキャップは、クリップ腕状部とキャップ外周面でなす角度が狭い場合、クリップとキャップの間に紙面を奥まで挟むと、クリップ腕状部とキャップとの付け根部の隙間には紙など薄いものが挟まり食いつく場合があるので、紙などへの皺の発生や破断をすることがある。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に着目してなされたもので、クリップとキャップとの間に紙面等を挟持しても紙面の皺や破断を防ぐことができるクリップ付きキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、発明者は鋭意開発の末、以下の発明を実現するに至った。
キャップ本体は、一端はクリップと嵌合する凹凸部が形成された略筒形状からなり、クリップは長手方向の一端はキャップ本体と嵌合する基部と、基部と長手方向の他端に位置し内側はキャップ本体の外周面と当接する玉部と、基部と玉部を接続する腕状部とからなり、キャップ本体とクリップの嵌合はキャップ本体の前方の内径部の内側に第1の凹凸部が形成されると共に、クリップ腕状部の長手方向一端部のクリップ基部の外径部の外側に第2の凹凸部が形成されており、第1および第2の凹凸部同士が嵌合し、キャップ本体とクリップが嵌合した際の軸断面においては、腕状部とキャップ本体との接点と当接し、
キャップ本体表面から外側に向けて形成されている起立壁を形成したクリップ付きキャップを搭載した筆記具である。
また、クリップ内側に起立壁と対向した窪部を形成し、キャップ本体の側面部には面削ぎ部を形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のキャップ本体とクリップとの付け根部に起立壁を形成することにより、クリップ腕状部とキャップ外周面でなす角度が狭いクリップ付きキャップにおいて、クリップとキャップとの間に紙面を奥まで挟んでも、不用意に紙面に皺が発生したり破断したりすることが無くなる。
また、クリップ内側に起立壁と対向した窪部を形成することで、組立性を容易にすることができる。
さらに、側面部に面削ぎ部を形成することで容易に持ちやすくしたり、パーツフィーダーでの搬送を容易にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明における実施形態の筆記具を示す全体図である。
【
図2】本発明における実施形態のクリップ付きキャップを示す部品図である。
【
図3】本発明における実施形態のクリップを示す部品図である。
【
図4】本発明における実施形態のキャップ本体を示す部品図である。
【
図5】本発明における実施形態のクリップとキャップ本体の組立方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面にもとづき本発明の実施形態を示す。ただし、これに限られるものではない。
なお、本明細書中において、筆記する側を「前方」、その他方の側を「後方」と呼ぶ。
また、軸線に対し中心線側を「内側」、その反対側を「外側」と呼ぶ。
【0011】
図1は実施形態における筆記具の外観を示す全体図であり、
図1(a)は正面図、
図1(b)は
図1(a)の断面図、
図1(c)はクリップ付きキャップ1を軸体4から外した正面図である。筆記具は、軸体4に筆記体6の筆記部を保護するクリップ付きキャップ1を嵌合した一般的なキャップ式筆記具である。
【0012】
図2は実施形態におけるクリップ付きキャップ1を示す部品図であり、
図2(a)は左側面図、
図2(b)は平面図、
図2(c)は正面図、
図2(d)は
図2(c)の断面図、
図2(e)は右側面図、
図2(f)は
図2(d)におけるV−V断面の断面図、
図2(g)は前方からの斜視図、
図2(h)は後方からの斜視図である。
クリップ2とキャップ本体3は容易に取り外れないように係止されており、また玉部23がキャップの胴部32と当接していることにより玉部23と胴部32の間に紙面等を挟んでも適度な保持力が確保されている。クリップ2とキャップ本体3に挟まれた前方には紙面より狭い間隔の隙間Wがある。隙間Wはクリップ2とキャップ本体3に挟まれた後方より狭い空間となっている。隙間Wの傍にはキャップ本体3から外側に形成された起立壁31がある。紙面等を挟む際に前方まで押し込んでも起立壁31の後方の端部で当接することから、紙面が隙間Wへの前方の端まで到達しないので紙面等への食いつきを防ぎ、紙面への皺や破断を防止することができる。
【0013】
尚、起立壁31は本実施形態ではキャップ本体3に形成されているが、キャップ本体3でなくクリップ2の腕状部22の内側、又はキャップ本体3とクリップ2の両方に起立壁31を形成してもよい。
【0014】
図3は実施形態におけるクリップ2を示す部品図であり、
図3(a)は左側面図、
図3(b)は平面図、
図3(c)は正面図、
図3(d)は背面図、
図3(e)は
図3(c)の断面図、
図3(f)は右側面図、
図3(g)は前方からの斜視図、
図3(h)は後方からの斜視図である。
クリップ2の構造について説明する。クリップ2はキャップ本体3と嵌合する基部21と、キャップ本体3と係止後キャップ本体21に当接する玉部23と、基部21と玉部23を接続する腕状部22とからなる。基部21にはクリップ付きキャップ1完成後、空気を流通可能とする通気孔24とキャップ本体3と係止可能に凹凸状の段差を形成した凹凸部25からなる。通気孔24は筆記体6をシール可能な構造にしてもよい。腕状部22は後方から前方に向かって内側に曲線を描いた状態で形成され、外側への応力を与えると内側に弾発する構造が望ましい。また腕状部22の背面には窪部26を形成することで、成形時における腕状部外側の表面のヒケ防止とキャップ本体3への組立性の向上を得ることができる。玉部23は腕状部22の内側から突出して形成され、クリップ付きキャップにおいては紙面等の保持部となる。また玉部23は本実施形態では1つであるが2つ以上形成して保持力を向上させてもよい。
【0015】
図4は実施形態におけるキャップ本体3を示す部品図であり、
図4(a)は左側面図、
図4(b)は平面図、
図4(c)は正面図、
図4(d)は背面図、
図4(e)は
図4(c)の断面図、
図4(f)は右側面図、
図4(g)は後方からの斜視図である。
キャップ本体3について説明する。キャップ本体3は略円筒状の胴部32からなり、胴部32の前方には外側に向かって起立壁31が形成されている。起立壁31は、胴部32と別の部品で構成されてもよい。また、起立壁31は平面方向の視点から略五角形状で形成されているが、四角形状、円形状、等にしてもよい。起立壁31の周方向の幅は、クリップの腕状部22の周方向の幅より小さく形成することが望ましい。胴部32の側面の一部には胴部32より外径が小さい面削ぎ部33と面削ぎ部33によって形成された掛部34がある。掛け部34は、キャップ本体3の前方を下向きにして部品供給装置で搬送する際、部品供給装置のレールに引っ掛けることが容易で生産性の向上を実現することができる。胴部32内部には、後方から軸体4の嵌合部45と嵌合可能な軸嵌合部35、軸体4の尾端44と嵌合可能な尾端嵌合部36、クリップ2の凹凸部25と係止可能なクリップ凹凸部37が形成されている。軸嵌合部35と尾端嵌合部36は内側に向かって複数の突起が形成されている。突起ではなく内側全周に形成してもよいが、キャップと軸は取付取外しの繰返し動作があるため、嵌合力の調整が容易な突起で4箇所の形成が望ましい。
【0016】
図5は実施形態におけるクリップとキャップ本体の組立方法を示す図であり、
図5(a)は正面図、
図5(b)は
図5(a)の断面図である。
組立方法については、クリップ2をキャップ本体3に対し後方に移動することでクリップの凹凸部25がキャップ本体のクリップ凹凸部37を後方に乗り越え互いに係止することで、クリップ付きキャップ1が完成する。
【0017】
これより軸体4について説明する。軸体4は把持部41、把持部41と尾端44を接続する軸中央部42、軸中央部の一部を刳り貫いた窓部43、軸体後方の尾端44、クリップ付きキャップと嵌合する嵌合部45で構成される。把持部41は、軸表面から複数の凹部を形成することで筆記する際に手の滑りを防ぐことができる。把持部41と軸中央部42と尾端44は本実施形態においては、熱可塑性エラストマーで一体形成することが望ましい。窓部43と嵌合部45は一体に形成されており、筆記体6のインク量が見えるように透明性の高くかつ摩耗に強い樹脂を用いる。窓部43と軸中央部42や尾端44と一体にして筆記体6が見えないように形成してもよい。軸体4の形成方法は切削加工によるもの、射出成形によるもの等が挙げられるが、例えば窓部43と嵌合部45を透明性のある樹脂にして把持部41、軸中央部42、尾端44をエラストマー等にした2種類の材質を組み合わせる場合は、二色成形による射出成形法が望ましい。
【0018】
口プラ5は、筆記体6を軸体4から脱落しないように保持するため軸体4の前方に取り付けられる。口プラ5の軸体4への取り付け方法はネジによる嵌合、接着剤等の液体による接着、圧入による固着等が挙げられるが、筆記体6の交換を容易にするのであれば、ネジによる嵌合が望ましい。また口プラ5はプラスチック製が望ましいが、金属製や木製でも軸体4と取り付け可能であれば材質は特に指定しない。
【0019】
筆記体6について説明する。実施形態における筆記体6は軸体4と口プラ5内に収容され、筆記部を口プラから露出したボールペン形態であるが、軸体4と口プラ5内へ十分収容可能かつ紙面等への筆記が可能であればマーカーペン形態、筆形態、万年筆形態等、特に指定しない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のことから本発明は、クリップとキャップとの間に紙面等を挟持しても紙面の皺や破断を防ぐことができるクリップ付きキャップであり、産業上の利用可能性のある有益な発明である。
【符号の説明】
【0021】
1 クリップ付きキャップ
2 クリップ
21 基部
22 腕状部
23 玉部
24 通気孔
25 凹凸部
26 窪部
3 キャップ本体
31 起立壁
32 胴部
33 面削ぎ部
34 掛部
35 軸嵌合部
36 尾端嵌合部
37 クリップ凹凸部
4 軸体
41 把持部
42 軸中央部
43 窓部
44 尾端
45 嵌合部
5 口プラ
6 筆記体
W 隙間